結論
TANAKENは、ビルなどの解体工事を元請として受ける専業の会社だ。自社で重機や職人を抱えず、施工管理に徹する「持たざる経営」で、営業利益率は14〜19%と建設業では異例に高い。借金はなく、自己資本比率は76%ある。
筆者の見立ては、今の値段は10年後の価値に対して安い側にあるというものだ。高度成長期に建った建物が解体の時期を迎え、元請の解体市場は続けて伸びる。大型の再開発案件で信用力を積み、受注残は119億円と年商の8割に達した。
弱みは人手である。施工管理者は53人しかおらず、受注を増やしても現場を回せる人数が成長の天井になる。粗利率が前の期の26.9%から21.6%に下がった点も気になる。
筆者が一番重く見るのは、この人手の制約が10年の間に緩むかどうかだ。緩めば楽観の筋書きが開く。緩まなければ、利益は物価の上昇分を取り込むにとどまる。確率はそれを反映して置いた。なお、第1四半期は売上が前年同期比で20%増え、足元の勢いは計画を上回っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で好ましいのは、この事業の経済性が単純なことだ。顧客から前もって仕事を受け、協力会社に作業を任せ、差額を利益にする。重い設備が要らないため、稼いだ利益のほとんどを株主に回せる。売上が増えても、増やすべき投資は運転資金程度だ。
堀は中くらいだ。技術の差で守られているわけではなく、安全な施工という信用と、無借金の財務に守られている。解体で一度事故を起こすと発注が止まるので、発注者は安全の実績にお金を払う。この信用は時間をかけて積むもので、新参者には短期間に作れない。
気がかりは、成長の制約が人であることだ。施工管理者を増やすには時間がかかり、育てる前に辞めるリスクもある。計画どおりに人員が増えなければ、受注を断らざるを得なくなる。
安全域の観点では、今の値段は事業の利益に対して割安に映る。ただし、筆者は粗利率の低下と未収入金の膨らみを見て、中立の利益率を過去最高より低く置いた。それでも10年の価値は今の時価総額と同水準か上に出る。
経営者は創業者の持株会社を通じて会社の過半を持つ。オーナーとして自分のお金で会社を見ており、無理な買収に走る気配もない。
何で稼ぐ会社か
事業は、建築物の解体工事の施工管理だ。顧客はデベロッパー(2026年3月期の売上の42%)、エンドユーザー(24%)、再開発組合など(24%)、ゼネコン(10%)に分かれる。元請比率は94%で、顧客から直接受注して、実際の作業は協力会社に出す。
付帯工事も取り込む。杭の引き抜き、地下の躯体の解体、山留め、アスベストの除去、土壌汚染の対策などだ。上屋の解体から地下までを一括で受けると、1件あたりの金額が大きくなる。
受注の流れは、相談から始まる。営業案件のストック(見込み案件の残高)は689億円あり、会社はこの水準を400億円超に保つ方針だ。2026年3月期の受注高は186億円、期末の受注残は119億円だった。
工事は大型化している。100百万円を超える案件の件数が全体の6割に達し、工期が1年を超える工事も増えた。新築と解体を別々に発注する流れが強まり、ゼネコン経由の売上は減って、デベロッパーからの直接受注が増えている。
自社の人員は110人。うち施工人員が53人で、現場の管理を担う。重機などの設備を持たないため、固定資産が小さい。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、元請で大型の解体を安全に仕上げられるという信用だ。解体は事故が起きれば事業が止まる仕事で、デベロッパーは実績と財務の厚い会社に発注する。自己資本比率76%、借入なし、借入枠140億円という体力が、受注の入口で効く。リピート顧客の比率は64%だ。
利益率の高さの源は、持たざる経営にある。重機と職人は協力会社が持ち、自社は管理と営業に集中するため、仕事が増えても設備投資がほとんど要らない。過去10年の営業利益率は12〜19%、自己資本利益率は14〜29%だった。
一方で、堀と呼べるほどの壁は高くない。解体の許可業者は全国で約6.9万社あり、投資ファンドや建設会社の新規参入も続く。技術の差は小さく、同じ元請の大型案件を取りに来る競合は増える。
弱点は三つある。第一は人手で、施工人員の純増は2026年3月期に12人にとどまった。第二は売上の取りこぼしで、完成工事の未収入金が72億円まで増え、現預金は30億円に減った。第三は粗利率で、大型案件が増えて下がった。
経営の資本配分は堅実だ。配当性向30%以上を掲げ、無理な買収をしていない。筆頭株主は創業者の資産管理会社で、59.6%を持つ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
解体市場の構造的な追い風は強い。コンクリートの建物は築40〜50年で解体の時期に入るため、解体の需要は45年前の建設投資に連動する。会社の試算では、市場規模は2034年度までに倍近くになる。ただしこれは会社の推定であり、筆者は2割ほど割り引いて見る。
国土交通省の統計では、はつり・解体工事業の完成工事高は1兆3,653億円で、前年度比18%増えた。このうち元請は4,043億円にとどまるが、前年度比44%増と伸びが大きい。下請から元請へ移る流れが強まっている。
人手の不足と費用の上昇は、小規模な事業者を追い込んでいる。産廃の処理費、人件費、資材が上がり、採算が悪化した事業者の倒産が増えた。その結果、財務が強く安全に施工できる会社に仕事が集まりやすい。
再開発は都心部で続く。商業施設、物流センター、データセンター、マンションや団地の建て替えが対象で、解体の発注は先行して出る。アスベストの規制強化も追い風で、除去工事の需要は増え続ける。
競合は、大手ゼネコンの解体部門、専業の中堅(日本国内に上場企業はほぼ無い)、地場の解体業者だ。同社が戦う都心の大型元請の分野では、安全の実績と財務で差がつく。
逆風は、新築と解体の分離発注が進んで、ゼネコンの下請の案件が減ること、そして職人の高齢化である。
資本政策と M&A
配当性向は30%以上を掲げ、2026年3月期の配当は性向32%程度の予想だった。利益の多くは内部に残るが、設備投資が小さい会社なので、余ったお金の使い道は限られる。自社株買いの実績はない。
借入は現在ゼロで、金融機関に140億円の借入枠がある。大型の元請案件が増え、未収入金が先に膨らむため、現預金は運転資金として必要な性格が強い。工事の期間が長くなるほど、立て替えの期間が延びる。
中期経営計画(2026〜2028年度)は、2029年3月期に売上200億円、営業利益26億円、ROE15%以上を掲げる。2027年3月期の計画は売上160億円、営業利益21億円で、第1四半期は売上が前年同期比20%増、営業利益が25%増と、計画を上回るペースだ。
M&Aは、施工管理を中心とした提携を探す方針にとどまり、具体的な案件はない。アスベスト調査会社と土壌調査会社との業務提携を結んだ。
筆頭株主はスリーハンドレッドホールディングスで、59.6%を持つ。以前の80%台から下がっており、流通株の増加は株価の追い風になりうる。TOBや非公開化の公表はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
解体市場は、高度成長期の建物が寿命を迎えて倍増に向かう。元請の解体市場は前年度に44%伸び、小規模な事業者が倒産していく中で、財務の強い元請に仕事が集まる。TANAKENは受注残が年商の8割、営業案件のストックが689億円ある。
中期計画の最終年度(2029年3月期)は売上200億円、営業利益26億円で、第1四半期の売上が20%増えていることを見れば、達成できる可能性が高い。デベロッパー向けの大型元請で、地下の躯体の解体までを一括で受けると、1件の利益が大きくなる。
持たざる経営なので、増収がそのまま利益になる。人員が80人に届けば、売上は今の1.4倍の水準に乗る。アスベストの除去や土壌汚染の対策といった環境分野が加われば、1件あたりの単価も上がる。
株主の構成も追い風だ。創業者の持株比率が下がっており、流通株が増えて機関投資家の買いが入りやすくなる。10年後の利益が今の2倍に近づくなら、PER9倍前後の今の値段は安すぎる。
慎重な見方
人手が足りない。施工人員は計画の70人に対して実績は53人で、人員計画は未達が続く。施工管理者の採用は難航しており、売上を伸ばす力に天井がある。人件費も上がり、新卒の初任給引き上げが利益を圧迫する。
粗利率は26.9%から21.6%へ5ポイント下がった。大型案件が増えると下請けへの支払いが膨らみ、利益率は薄くなる。2027年3月期の営業利益の計画は21億円と前年より減る。会社自身が、利益率の低下を織り込んでいる。
未収入金は72億円に増え、現預金は30億円に減った。工事が大型化し、入金までの期間が長くなっている。この傾向が続けば、借入を使う局面が来る。
解体の参入者は増え、許可業者は約6.9万社に達した。ファンドが業界に入り込み、元請の大型案件でも価格競争が起こりうる。安全事故が一度起きれば、信用で選ばれている会社だけに、受注は止まる。
現在のPERは低く見えるが、利益が高かった時期の数字であり、正常な水準は思ったより低い。
どちらに重みを置いたか
事業の質と、財務の強さ、市場の追い風では強気の見方が強い。慎重な見方が指摘する人手の天井と粗利率の低下も事実で、中立の利益率は過去の最高ではなく過去の中央値に近い水準に置いた。
確率は、中立の周りに厚く置き、楽観とやや楽観で合わせて3割半、やや悲観と悲観で3割とした。安全事故のような一度の失敗で信用が崩れる事業なので、悲観の確率を1割確保している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,111 円445 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 802 円70 億円)。 今の値に割り戻すと 3,238 円282 億円、今との差 +117.3%、 期待の年率 +14.8%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 8,665 円754 億円 | 1,177 円102 億円 | +560.6% | +20.8% | 1,181 円103 億円 |
| やや楽観 | 23% | 7,008 円610 億円 | 968 円84 億円 | +435.3% | +18.3% | 1,834 円160 億円 |
| 中立 | 35% | 5,815 円506 億円 | 791 円69 億円 | +343.4% | +16.1% | 2,312 円201 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,905 円166 億円 | 604 円53 億円 | +68.3% | +5.3% | 502 円44 億円 |
| 悲観 | 10% | 431 円38 億円 | 402 円35 億円 | −44.1% | −5.6% | 83 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,111 円445 億円 | 802 円70 億円 | +296.8% | +14.8% | 5,913 円514 億円 |
今の株価時価総額 1,490 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 12% 人員が増え、解体市場の倍増に乗る 利益 36 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 8,665 円754 億円
施工人員は90人まで増え、再開発、データセンター、団地の建て替えといった大型案件を元請で受ける。解体市場は会社の見立てに近い形で拡大し、同社は都心の大型元請で最も信用のある1社になる。
1人あたりの完成工事高は物価の分に生産性の改善が加わり、今の1.4倍の水準になる。売上は350億円規模。地下の躯体やアスベスト、土壌対策まで一括で受ける案件が増え、営業利益率は15%に上がる。
配当性向は4割に高まり、無借金は続く。大型案件が増えるため運転資金は膨らむが、利益から賄える。安全の実績が積み上がり、発注者が価格より信用を優先する姿が定着する。人員確保でも同社のブランドが効き、離職は少ない。
- 解体工事(元請の施工管理):数量 90.0(施工人員(人)。受注を現場で管理できる人数が供給の上限)× 価格 3.90(施工人員1人あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 351 億円・営業利益 53 億円
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.49 倍、時価総額 742 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手の天井を越えるには採用と育成の成功が必要で、計画の人員は何年も未達だった。実現すれば強いが、確率は1割強にとどめた。
やや楽観 23% 中計をほぼ達成し、その後も伸びる 利益 29 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 7,008 円610 億円
施工人員は82人まで増え、2029年3月期の売上200億円をほぼ達成する。その後は物価と数量の伸びで年に5〜6%伸びる。1人あたりの完成工事高は今の1.3倍で、大型案件の比率が高まった分、粗利率は2割台前半で安定する。
営業利益率は14.2%。過去10年の中央値に近い水準を保つ。配当性向は4割弱。アスベスト除去などの環境分野の売上が1割を占めるようになる。
ゼネコン経由の売上は減るが、デベロッパーとの直接取引が広がり、元請比率は9割台後半を維持する。人員の増加は計画より遅れ、売上の伸びも2029年以降は鈍るが、財務の強さと安全の実績で、ゆるやかな成長を保つ。
- 解体工事(元請の施工管理):数量 82.0(施工人員(人)。受注を現場で管理できる人数が供給の上限)× 価格 3.65(施工人員1人あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 299 億円・営業利益 43 億円
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍。全体の PER 20.13 倍、時価総額 590 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の達成は第1四半期の進捗からみて現実味があるが、それ以降の人員増は不確実。実績に近い範囲の上振れとして2割台に置いた。
中立 35% 人手の制約の中で、物価並みに伸びる 利益 24 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 5,815 円506 億円
施工人員は75人まで増え、売上は260億円台になる。市場の拡大は会社の見立ての8割程度にとどまり、数量は10年で3割ほど増える。1人あたりの完成工事高は物価で上がるが、新人の比率が高く大型案件が増えるため、今の1.25倍にとどまる。
営業利益率は13.5%で、直近の14.7%や過去最高の18.9%には届かない。過去10年の中央値(14.4%)より少し低く置いた。人件費と下請費用が物価で上がり、値上げで取り返すのが精一杯だからだ。
無借金が続き、配当性向35%を守る。運転資金は利益で賄い、自己資本比率は7割台で保たれる。
- 解体工事(元請の施工管理):数量 75.0(施工人員(人)。受注を現場で管理できる人数が供給の上限)× 価格 3.50(施工人員1人あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 35 億円
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.73 倍、時価総額 479 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:粗利率の低下と人員計画の未達が示す制約を織り込みつつ、市場の追い風で数量は緩やかに伸びる姿。過去の中央値に近い利益率を置く。
やや悲観 20% 人手不足と価格競争で利益率が下がる 利益 15 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,905 円166 億円
施工人員は68人にとどまり、採用が追いつかず受注を断る。解体の許可業者の増加で大型案件でも価格競争が強まり、1人あたりの完成工事高は物価に追いつかず、今の1.14倍にとどまる。
売上は220億円弱で、営業利益率は10%まで下がる。人件費の上昇を転嫁できず、粗利率は19〜20%になる。配当性向は35%を守るが、配当は利益と一緒に下がる。
無借金は保つが、未収入金の回収に時間がかかり、借入枠を一部使うようになる。それでも財務は健全で、事故のような決定的な損失は起きない。ただし、成長の物語は薄れ、会社は堅実だが平凡な建設業者として評価される。
- 解体工事(元請の施工管理):数量 68.0(施工人員(人)。受注を現場で管理できる人数が供給の上限)× 価格 3.20(施工人員1人あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 218 億円・営業利益 22 億円
倍率:事業のROEは資本コストを少し上回る程度。残る割合0.5で式のPERを出し、悲観側として上限の7.5割に置いた。
確率:解体の新規参入が増え、人手が足りず、利益率が圧縮される構造。会社が計画する成長が半分しか実現しない筋書きを2割とした。
悲観 10% 重大事故と信用の失墜で、受注が細る 利益 5 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 431 円38 億円
解体の現場で重大な事故が起き、受注が数年にわたって止まる。デベロッパーは発注を他社に移し、同社は小さな案件の下請けに戻る。施工人員は55人に減り、売上は160億円前後、営業利益率は5%まで下がる。
補償と再発防止の費用、人員の離職が重なり、利益は今の3分の1まで縮む。それでも無借金のため会社は存続し、配当性向は35%を守る。
事業の価値は、小さくなった稼ぐ力で決まる。この筋書きでも現金と信用の残りが下支えになり、倒産には至らないが、株主の取り分は大きく減る。創業者の持株会社は経営を続け、再建を図る。
- 解体工事(元請の施工管理):数量 55.0(施工人員(人)。受注を現場で管理できる人数が供給の上限)× 価格 2.90(施工人員1人あたりの完成工事高(億円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 8 億円
倍率:事業のROEは資本コストを下回る。式のPERは1÷kが上限で、構造的に負けた筋書きなので上限の6割に置いた。
確率:安全事故や発注者の信用悪化など、一度の失敗で受注が止まる構造的な負け。確率は1割とし、財務の強さでぎりぎり存続する形にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
解体工事(元請の施工管理)
ビルなどの建築物の解体、地下の躯体、アスベスト除去、土壌対策の施工管理。
| 数量施工人員(人)。受注を現場で管理できる人数が供給の上限 | 価格施工人員1人あたりの完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53.0 | 2.80 | 148 | 22 |
| 10 年後 中立 | 75.0 | 3.50 | 263 | 35 |
取り方:完成工事高148.2億円と営業利益21.85億円は2026年3月期の決算説明資料の値。施工人員53人は同資料の開示で、1人あたり完工高は148.2÷53で出した。外注に出す仕事が中心の会社なので、供給の天井は管理者の人数と見て、人数×単価で置いた。
リスクと懸念
施工管理者の不足
施工人員は計画70人に対して実績53人で、採用が難航している。受注を現場で管理できる人数が売上の天井になり、足りなければ受注を断る。初任給の引き上げなど人件費も上がり、利益を圧迫する。
粗利率の低下
粗利率は2025年3月期の26.9%から21.6%へ5ポイント下がった。大型案件では下請けへの支払いが増えて利益率が薄くなる。2027年3月期の営業利益計画も前年より減っている。
安全事故
解体は事故が起きると工事が止まり、発注者の信用を失う。信用で選ばれている会社だけに、重大事故が起きたときの受注への影響が大きい。補償費用も利益に響く。
運転資金の膨らみ
完成工事の未収入金が72億円に増え、現預金は30億円に減った。工期の長い大型案件が増えるほど、立て替えの期間が延びる。借入枠はあるが、回収の遅れや発注者の信用悪化があれば資金繰りに響く。
競合の増加
解体工事業の許可業者は約6.9万社あり、ファンド系や建設会社の新規参入も続く。元請の大型案件の入札で価格競争が強まれば、利益率が下がる。
分離発注による顧客構成の変化
新築と解体の分離発注が増え、ゼネコン経由の売上は減っている。デベロッパー直接の案件が増えるのは好ましいが、少数の大型案件への依存が高まる。
今後の分かれ目
- 施工人員が計画どおり増え、2029年3月期に80人に届いたら
- 売上200億円の計画の信頼度が上がる。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 粗利率が21%を下回って戻らなければ
- 中立の営業利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 重大な安全事故が起き、受注が止まったら
- 悲観の筋書きに近づく。再発防止の費用と受注の回復までの期間を見る。
- 大型案件の入金が遅れ、借入を使い始めたら
- 運転資金の負担が想定より重い。負債の利息を利益に入れ、中立の純利益を下げる。
- 創業者の持分がさらに下がり、流通株が増えたら
- 株式の流動性が上がる。一方で、支配株主の保有が薄れ、買収や再編の可能性が高まる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残(年商の8割以上を保てているか)
- 施工人員の純増と、1人あたり完成工事高
- 粗利率の推移(21%台を保てるか)
- 完成工事未収入金と現預金のバランス
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストを上回る会社なので、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で、残る割合は堀が中くらいなので0.5とし、上限の8割を中立に置いた。今のPERや同業の倍率は使っていない。数量は施工人員、価格は1人あたり完工高で、物価の1.34倍は価格にだけ入れた。この会社は無借金で、リースの賃借は本社の事務所程度であり、新リース会計の影響は小さい。償却は小さな固定資産のみで、物価で増やしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.56→20.49 倍・やや楽観 PER 13.04→20.13 倍・中立 PER 11.58→19.73 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。