結論
シンクレイヤは、地方のケーブルテレビ局に伝送の機器を売り、光回線への切り替え工事を請け負う名古屋の会社だ。筆者の結論はやや割高である。PBRは0.5倍と安く見えるが、稼ぎの源である光回線化の工事は10年のうちに山を越え、その後の仕事の量は細ると見るからだ。
今の業績は谷から戻りつつある。2025年12月期は資材の調達が遅れ、顧客の工期もずれて営業利益が半分近くに減った。2026年は中間で増益に戻り、通期で営業利益5億円を見込む。受注残も40億円近くある。
ただ、利益率は高い年でも9%、普通の年は4〜6%にとどまる。顧客のケーブル局は加入者の減少と大手通信会社との競争に追われ、工事の値段を厳しく見る。自己資本は62億円あるが、その稼ぐ力は4〜6%で、資本コストに届かない。
配当性向は5割あり、2026年には自社株を買って消却もした。還元の姿勢は悪くない。それでも、事業の稼ぐ力が資本の重さに見合わない以上、帳簿の値段は払う値段の支えにならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、シンクレイヤは「帳簿は厚いが、それを生かす市場が細る」会社に見える。自己資本62億円に対し、時価総額は32億円しかない。数字だけ見れば安い。
だが、筆者が見るのは10年先も続く稼ぎだ。光化の工事は大きな波で、その波はやがて引く。波が引いた後の仕事は、機器の更新と保守、自治体の網の工事が中心になる。その量で、今の自己資本に見合う利益を出し続けるのは難しい。
還元は厚い。利益の半分を配当に出し、自社株も買った。経営は資本の重さを分かっている。それでも、事業の稼ぐ力が資本コストに届かない限り、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。
安全域は、光化の後の需要がどれだけ残るかにかかる。そこが見えるまで、帳簿の安さだけでオーナーになりたいとは思わない。
一方で、買い手が現れれば話は変わる。それを当てにはしない。
何で稼ぐ会社か
事業は2つの部門に分かれる。顧客はほぼ全国のケーブルテレビ局と自治体、共同受信の施設だ。
1つ目はトータル・インテグレーション部門で、売上は約55億円ある。ケーブル局の設備の設計から工事、保守までを一括で請け負う。今の主な仕事は、同軸ケーブルで組まれた網を、家庭まで光ファイバーを引く方式(FTTH)へ切り替える工事だ。工事は案件ごとの受注で、資材の調達や顧客の工期で売上の時期がずれる。
2つ目は機器インテグレーション部門で、売上は約50億円ある。光の送受信機、増幅器、局の中に置く伝送の装置などを自社で企画し、中国の子会社でも作って売る。10ギガの光回線の機器に加え、次の世代の50ギガの機器も国内で初めて実地で試している。電柱の上に置く小さな中継局は、人の少ない地域で光化の費用を下げる製品として売り込んでいる。
2つの部門は互いに客を呼び合う。機器を入れた局が工事も任せ、工事をした局が保守と更新の機器も買う。地方の中小のケーブル局が中心で、最大手のJ:COMのような大きな局は自前の力が強い。
新しい芽として、Wi-Fiの電波で家の中の人の動きを見て安否を確かめるサービスも始めた。ただ、まだ売上の柱と呼べる規模ではない。
優良さと弱いところ
優良さは中程度より下と筆者は見る。強みは、地方のケーブル局との長い付き合いだ。局の網を熟知し、機器と工事を一緒に出せる会社は多くない。ある局の網を一度組めば、保守と更新の仕事も続きやすい。
弱みは3つある。1つ目は値段の力の弱さだ。顧客のケーブル局は加入者の減少と大手通信会社との競争で余裕が無く、工事は入札や見積もりの競争になる。2つ目は仕事の波だ。光化の工事は一度終われば20年近く大きな更新が無く、売上は100億円前後から上にも下にも大きく振れてきた。3つ目は資本の効率だ。自己資本は6年で2倍以上に増えたが、営業利益は4〜12億円の幅で横ばいだ。
他社がまねできない強み、つまり堀と呼べるものは小さい。顧客との関係は粘り強いが、顧客そのものが細る市場にいる。
経営は堅実で、借金はほとんど無い。だが堅実さだけでは、細る市場で稼ぐ力は上がらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ケーブルテレビの業界は、成熟から縮小の入り口にある。テレビの視聴は動画配信に移り、インターネットの回線も大手通信会社の光回線と争う。地方の局は人口の減少で加入者を増やしにくい。
それでも、ここ数年は設備の投資が続いてきた。古い同軸の網では速い回線を出せないので、局は光ファイバーへの切り替えを急いでいる。最大手のJ:COMも自社の網の光化を進めている。この光化の波が、シンクレイヤの工事と機器の需要を支えている。
問題はその先だ。光化は一度終われば長く持つ。10年後には多くの局で切り替えが終わり、工事の量は今より細ると筆者は見る。代わりの需要は、10ギガから50ギガへの機器の更新、自治体の防災や地域の無線網、古い共同受信の施設の更新などだが、光化の山ほどの量は無い。
局の再編も進む。地方の局は大手の傘下に入るか、互いに統合する動きがあり、買い手が大きくなれば値段の交渉は厳しくなる。半面、大手の局が自前で工事を抱えるより外に出す方を選べば、仕事がまとまって来る可能性もある。
部材の値段や工事の人手の費用は物価以上に上がっている。それを工事の値段に転嫁できるかが、利益率を左右する。
資本政策と M&A
還元の姿勢は、この規模の会社としては良い方だ。2025年12月期の配当は総額約1.3億円で配当性向は5割を超え、2026年は1株あたりをさらに増やす予定だ。2026年には自社株を買い、ためていた自社株も40万株消却した。会社はROEを上げる手段として自社株買いを挙げている。
筆頭株主は株式会社MASBuddyで、持ち分は2割弱だ。親会社は無く、過半を握る株主もいない。時価総額が30億円台と小さく、自己資本の半分の値段で買えるので、同業や通信機器の会社、投資ファンドに買われる可能性はある。ただ、その動きは今のところ無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
光化の波はまだ半ばだ。地方の中小のケーブル局の多くは、まだ同軸の網を抱えている。人の少ない地域ほど光化の費用が重く、シンクレイヤの柱上型の小さな中継局のような安い方法が要る。この需要は、少なくとも2030年過ぎまで続く。
光化の次には、10ギガから50ギガへの機器の更新が来る。シンクレイヤは国内で初めて50ギガの機器を実地で試した。遠隔の医療や高精細の映像、工場のロボットなど、遅れの許されない使い方が広がれば、局は再び網に投資する。
自治体の仕事も増える。防災の無線や地域の網、古い共同受信の施設の更新は、人口が減っても止められない投資だ。Wi-Fiで安否を見るサービスは、高齢化が進む地方で新しい稼ぎになりうる。
財務は堅く、配当性向は5割、自社株も買った。業績が戻れば営業利益は10億円近くに届き、時価総額は今の2倍を超えてよい。
地方の局と長く付き合ってきた会社は少ない。局が統合されても、網を知る会社への発注は続く。
慎重な見方
光化の工事は一度きりの波だ。一度光にした網は20年近く大きな更新が要らない。10年後には多くの局で切り替えが終わり、工事の量は今の7割以下に落ちる。
顧客の体力も落ちている。ケーブル局は動画配信と大手通信会社の光回線に客を取られ、加入者は減っている。局が大手の傘下に入って統合されれば、工事の発注はまとまり、値段の交渉はさらに厳しくなる。最大手のJ:COMは自前の力が強く、シンクレイヤの主な客ではない。
50ギガの機器は技術の見せ場だが、需要が育つかは分からない。海外の大手の通信機器の会社も同じ製品を出しており、値段の競争になれば利益は薄い。
利益率は良い年でも9%で、2025年は3%まで落ちた。部材や人手の費用が上がる中、値段に転嫁できなければ赤字の年も出る。自己資本の稼ぐ力は資本コストの半分程度にとどまる。
PBRの安さは、市場がこの先細りをすでに見ているからだ。帳簿の厚さは、稼ぐ力の無さを埋めない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強いと筆者は判断した。光化の需要がしばらく続くことは認めるが、10年という長さで見れば工事の波が引く方が確かだ。50ギガや自治体の仕事は、光化の山を埋めるほどの量の裏付けがまだ無い。確率は中立を4割とし、悲観側を3割強、楽観側を3割弱に置いた。受注残の推移と、光化の後の更新の需要が、確率を見直す分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 979 円44 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 316 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 656 円29 億円、今との差 −8.1%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,063 円92 億円 | 438 円20 億円 | +250.7% | +13.4% | 200 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,371 円61 億円 | 386 円17 億円 | +146.4% | +9.4% | 351 円16 億円 |
| 中立 | 40% | 915 円41 億円 | 351 円16 億円 | +77.5% | +5.9% | 506 円23 億円 |
| やや悲観 | 20% | 579 円26 億円 | 272 円12 億円 | +19.5% | +1.8% | 170 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 484 円22 億円 | 71 円3 億円 | −22.0% | −2.5% | 67 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 979 円44 億円 | 316 円14 億円 | +81.6% | +6.1% | 1,295 円58 億円 |
今の株価時価総額 713 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 光化の後も50ギガと自治体の網で仕事が続く 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,063 円92 億円
地方の中小の局は2030年過ぎまで光化を続け、その後すぐに10ギガから50ギガへの機器の更新が始まる。遠隔の医療や工場の無線など、遅れの許されない使い方が広がり、局は網への投資を止めない。
自治体の防災の無線と地域の網、古い共同受信の施設の更新も重なり、市場は実質で今の1.08倍に広がる。シンクレイヤは柱上型の中継局と50ギガの機器で先に立ち、シェアを工事で15%、機器で10%伸ばす。
部材と人手の費用の上昇は値段に転嫁でき、利益率は工事で6.5%、機器で8.5%と過去の良い年の水準に戻る。営業利益は約10億円になる。それでも自己資本の稼ぐ力は8%弱で、資本コストにわずかに届かない。
- トータル・インテグレーション(設計・工事・保守):数量 2,700(国内の地域通信インフラ(ケーブル局・自治体・共同受信)の設備投資(億円・実質、推定))× 価格 3.4%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 91 億円・営業利益 6 億円。市場2,700億円(実質)×シェア2.5%×値段1.34倍、利益率6.5%
- 機器インテグレーション(伝送機器):数量 2,700(国内の地域通信インフラの設備投資(億円・実質、推定))× 価格 2.9%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。シェア2.2%×値段1.30倍、利益率8.5%
倍率:ROE 7.7%(純利益7.62億円÷自己資本98.6億円)が k 8.25% に届かないので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=12.12 倍。楽観でも上限の10割までとした。
確率:光化の需要が長引き、50ギガの更新と自治体の網が重なる筋書き。どれも芽はあるが、10年そろって大きく育つ確率は低いので8%とした。
やや楽観 20% 光化が長引き、機器の更新が後を継ぐ 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,371 円61 億円
人の少ない地域の光化は費用が重く、局の投資はゆっくり続く。柱上型の中継局がその費用を下げ、シンクレイヤの受注を支える。2030年代に入ると10ギガの機器の更新が始まり、市場は実質で今の0.98倍とほぼ保たれる。
シェアは工事で1割、機器で5%伸びる。部材の値上がりは時間をかけて転嫁でき、利益率は工事で5.5%、機器で7.5%になる。営業利益は約6.6億円で、2024年の水準を少し上回る。
配当性向は4割前後を続け、自社株買いも時々行う。自己資本の稼ぐ力は6%前後で、資本コストには届かない。
自治体の防災の網や共同受信の施設の更新も、少しずつ仕事の量を足す。
- トータル・インテグレーション(設計・工事・保守):数量 2,450(国内の地域通信インフラ(ケーブル局・自治体・共同受信)の設備投資(億円・実質、推定))× 価格 3.2%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。市場2,450億円×シェア2.4%×値段1.32倍、利益率5.5%
- 機器インテグレーション(伝送機器):数量 2,450(国内の地域通信インフラの設備投資(億円・実質、推定))× 価格 2.7%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。シェア2.1%×値段1.28倍、利益率7.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光化の需要が今の想定より長く続き、10ギガ機器の更新が後を継ぐ筋書き。中期計画の修正後の数字と直近の受注残の回復に近いので2割とした。
中立 40% 光化の山を越え、仕事の量が1割強細る 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 915 円41 億円
地方の局の光化は2030年前後に多くが終わる。その後の仕事は、10ギガの機器の更新と保守、自治体の網の工事が中心になる。市場は実質で今の0.88倍に細る。
シンクレイヤは地方の局との長い付き合いで、工事のシェアを少し伸ばす。機器のシェアは保つ。ただ、顧客の局は加入者の減少で余裕が無く、部材と人手の値上がりを全部は転嫁できない。値段は10年で工事が1.30倍、機器が1.25倍と物価に少し届かない。
利益率は工事で5%、機器で7%と、過去の平均に近い。本社の費用は物価並みに増える。営業利益は約4.5億円で、今とほぼ同じ水準にとどまる。自己資本は利益の積み上げで80億円を超えるが、稼ぐ力は4%強で、資本コストの半分ほどだ。
- トータル・インテグレーション(設計・工事・保守):数量 2,200(国内の地域通信インフラ(ケーブル局・自治体・共同受信)の設備投資(億円・実質、推定))× 価格 3.0%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。市場2,200億円(今の0.88倍)×シェア2.3%×値段1.30倍、利益率5%
- 機器インテグレーション(伝送機器):数量 2,200(国内の地域通信インフラの設備投資(億円・実質、推定))× 価格 2.5%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 55 億円・営業利益 4 億円。シェア2.0%(今と同じ)×値段1.25倍、利益率7%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光化の需要が2030年前後に山を越え、更新と保守が中心になる中心の筋書き。過去の売上の振れと、顧客の加入者の減少をならした姿なので4割とした。
やや悲観 20% 局の統合で値段が下がり、利益が消えかける 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 579 円26 億円
光化は予定より早く終わり、2030年代の市場は実質で今の7割ほどに細る。地方の局は大手の傘下に入るか統合し、発注は大きな塊になる。買い手が強くなり、値段の交渉は厳しくなる。
工事のシェアは少し落ち、機器は海外の大手の通信機器の会社に値段で押される。部材と人手の値上がりは転嫁しきれず、利益率は工事で3.5%、機器で4%に下がる。本社の費用を引くと、営業利益は1億円を割る。
配当は1株の額を保とうとするが、利益の大半を出すことになる。自己資本は少しずつしか増えない。事業の稼ぐ力からはほとんど価値が出ず、支えは工事の売掛などの流動の資産だけになる。
- トータル・インテグレーション(設計・工事・保守):数量 1,800(国内の地域通信インフラ(ケーブル局・自治体・共同受信)の設備投資(億円・実質、推定))× 価格 2.6%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。市場1,800億円(今の0.72倍)×シェア2.1%×値段1.25倍、利益率3.5%
- 機器インテグレーション(伝送機器):数量 1,800(国内の地域通信インフラの設備投資(億円・実質、推定))× 価格 2.2%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。シェア1.8%×値段1.20倍、利益率4%
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益0.45億円(k 8.25%で割って約5億円)しかない。支えは流動資産から総負債を引いた約24.5億円(floor_assets_oku)で、今の自己資本62.1億円に0.4倍を掛けてその範囲に収めた。倍率は市場の値付けからでなく、売れる資産から置いた。
確率:光化が早めに終わり、局の統合で発注がまとまって値段が下がる筋書き。2025年に営業利益が半分近くに落ちた実例があるので2割とした。
悲観 12% 光化の後に仕事が消え、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 484 円22 億円
光化は2030年までに終わり、その後の更新の需要はほとんど育たない。50ギガの機器は使い道が広がらず、局は今の網を長く使う。市場は実質で今の56%に縮む。
地方の局は統合が進み、大手が自前で工事を抱えるか、全国の大手の工事会社にまとめて出す。シンクレイヤのシェアは工事で15%、機器で25%落ちる。機器は海外製の安い製品に値段で負け、赤字になる。
営業利益は赤字が続き、人を減らして耐える年が続く。配当は大きく減らす。会社は自己資本の多くを流動の資産で持つので倒れはしないが、事業の価値はほとんど残らない。買い手が現れても、帳簿の値段の半分にも届かない。
- トータル・インテグレーション(設計・工事・保守):数量 1,400(国内の地域通信インフラ(ケーブル局・自治体・共同受信)の設備投資(億円・実質、推定))× 価格 2.2%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。市場1,400億円(今の0.56倍)×シェア1.9%×値段1.20倍、利益率1%
- 機器インテグレーション(伝送機器):数量 1,400(国内の地域通信インフラの設備投資(億円・実質、推定))× 価格 1.7%(市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数)→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。シェア1.5%×値段1.15倍、赤字
倍率:赤字で稼ぐ力からは価値が出ないので、流動資産から総負債を引いた約25億円(floor_assets_oku)を上限に、赤字で食う分を引いて、今の自己資本62.1億円に0.35倍を掛けた(やや悲観の0.4倍より低く)。
確率:光化の後の需要が育たず、局の統合と海外製の機器に挟まれる構造的な負けの筋書き。過去20年に5期の赤字があり、仕事の波に弱い会社なので12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
トータル・インテグレーション(設計・工事・保守)
ケーブル局や自治体の網の設計から光化の工事、保守までを一括で請け負う。
| 数量国内の地域通信インフラ(ケーブル局・自治体・共同受信)の設備投資(億円・実質、推定) | 価格市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 2.2% | 55 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,200 | 3.0% | 66 | 3 |
取り方:市場の開示が無いので、ケーブル局・自治体・共同受信の設備投資を年2,500億円(実質)と推定し、部門の売上54.73億円をシェア約2.2%とした。物価の分は値段の指数に入れ、市場は実質で置く。部門の利益は開示の形から推定(利益率約4.4%)。
機器インテグレーション(伝送機器)
光の送受信機・増幅器・局の伝送装置などを自社で企画し、中国の子会社でも作って売る。
| 数量国内の地域通信インフラの設備投資(億円・実質、推定) | 価格市場1億円あたりの売上(億円)=シェア×値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,500 | 2.0% | 50 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,200 | 2.5% | 55 | 4 |
取り方:同じ市場2,500億円に対し、部門の売上50.14億円でシェア約2.0%。部門の利益は推定(利益率約6.2%)。本社費を約2億円と見て、全社の営業利益3.5億円に合わせた。
リスクと懸念
光化の波が引く
今の工事の多くは、同軸の網を光ファイバーに切り替える一度きりの仕事だ。地方の局の光化が終われば、20年近く大きな更新は要らない。2030年前後から工事の量が細る恐れがある。
顧客の局の統合
地方のケーブル局は加入者の減少で大手の傘下に入るか統合する流れにある。発注がまとまれば買い手の交渉力が強まり、工事と機器の値段は下がる。最大手のJ:COMは自前の力が強く、主な客ではない。
部材と人手の費用
2025年は資材の調達が長引き、売上が翌期にずれて営業利益が半分近くに減った。部材と工事の人手の費用は物価以上に上がっており、値段に転嫁できなければ利益率は3%台に沈む。
海外製の機器との競争
光の伝送の機器は世界の大手の通信機器の会社も作っている。50ギガのような新しい規格では海外製が値段で先に出ることが多く、自社の機器の利益率が削られる。
新しい事業の育ち
Wi-Fiで安否を見るサービスや自治体の網など、新しい芽はあるが売上はまだ小さい。光化の山を埋める規模に育つかは分からず、育たなければ仕事の量は細る。
今後の分かれ目
- 受注残が2期続けて50億円を超えたら
- 光化の需要が長引いている。やや楽観の筋書きに近づくので、確率を楽観側へ寄せる。
- 50ギガの機器が複数の局で本採用されたら
- 光化の後の更新の需要が見えてくる。楽観の筋書きの確率を上げる。
- 地方の局の大型の統合が相次いだら
- 値段の交渉が厳しくなる。やや悲観の筋書きの確率を上げる。
- 営業利益率が2期続けて3%を割ったら
- 費用の転嫁ができていない。悲観側に重みを移す。
- 同業や通信機器の会社、ファンドが買収を提案したら
- 自己資本の厚さが評価され、帳簿の値段に近い値が付く可能性がある。
見ておくもの
- 受注残の推移と光化の工事の比率
- 営業利益率と部材の値上がりの転嫁
- 地方のケーブル局の統合の動き
- 50ギガ機器の採用の数
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRからでなく、ROEとkの関係だけで置いた。10年中立のROEは4.2%でk 8.25%を下回るので、PER の上限は1÷k=11.4倍とし、仕事の波を見て8割に置いた。今のPBRは0.5倍だが、それを割安の根拠にしていない。悲観側の床は帳簿の自己資本でなく、流動資産から総負債を引いた額で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.43→12.12 倍・やや楽観 PER 10.29→12.12 倍・中立 PER 9.14→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.25%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。