結論
東亜道路工業は、道路の舗装工事とアスファルト合材の製造を手がける、舗装大手では数少ない独立系だ。2026年3月期は売上高1,213億円、営業利益58億円。利益の大半は全国の合材工場が稼ぐ。
筆者の結論は、今の値段は事業の価値より高い、というものだ。営業利益は11年前の55億円からほとんど増えていない。国内の合材の量は人口と新設工事の減少で細り続け、その分を値上げで埋めてきた会社だ。10年でならしても、利益の伸びは物価並みにとどまる。
株主への姿勢は悪くない。配当性向100%を基準に、自己資本配当率8%を目指すと掲げる。だが、それは稼いだ利益を使い切るということで、会社の中にお金は積み上がらない。自己資本は、ここ2年で縮んでいる。
買収の芽はある。NIPPO、前田道路、日本道路と、上位が次々に非上場になった。東亜道路はゼネコン系列に入らず残った、数少ない独立系だ。買われる可能性は無視できない。ただ、買い手は事業の価値を払うものだ。今の値段が買収を先取りしているなら、報われる余地は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、東亜道路は悪い会社ではないが、持ち主として儲かる会社でもない。
まず、オーナー利益を見る。舗装は、工場の更新と車両の入れ替えに毎年お金がかかる。営業利益58億円のうち、株主が自由に使えるのは4割ほどにとどまる。しかも、利益は11年間ほぼ動いていない。物価が上がる世界では、利益が横ばいということは、実質で細っていることを意味する。
次に、資本の使い方。利益を全部配当に回す会社は、再投資しても稼げないと自分で認めているようなものだ。それは誠実だが、価値を増やす仕組みではない。
最後に、安全域。純現金は93億円あり、財務は堅い。倒産の心配はない。ただ、堅さは値段の安全域とは別の話で、今の時価総額は10年後の利益の価値を先に払っている。買収があるかもしれないという期待まで乗っている。
長く持ちたい会社かと問われれば、答えはまだ見えない。独立を保つなら、効率を上げて利益率を引き上げる実績が要る。それが示されるまで、払ってよい値段は、今より低い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。アスファルト製品・環境事業と、建設事業だ。コンサルティングは小さな補助的な事業である。
アスファルト製品・環境事業は、道路を舗装する時の材料、アスファルト合材を作って売る。合材は熱いうちに敷かなければならず、遠くへ運べない。そのため工場ごとに商圏が決まり、地域で寡占になりやすい。上期は売上217億円で営業利益12.8億円と、利益の大半を出した。一方で燃料と輸送費の上昇、出荷量の減少、販売価格の低下が重なり、通期の会社予想は届かなかった。
建設事業は、道路・駐車場・空港・鉄道敷地などの舗装工事である。売上は大きいが利益は薄く、上期の売上297億円に対し利益は3.4億円だった。受注残は447億円と前年を17.5%上回り、数量面の足場は固い。
コンサルティングは、自治体の舗装の点検や診断を受ける。舗装維持管理システムや路面調査車を持ち、技術者が足りない自治体の助けになる。規模は小さいが、利益率は他より高い。
三つは別々の事業に見えて、一つの輪になっている。工場で作った合材を自社の工事で使い、点検の結果が補修工事の受注につながる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、工場の立地とゼネコンに属さない独立性にある。
合材は運べる距離が限られる。工場がある地域では、その工場が事実上の供給元になる。新しく工場を建てるには用地も許認可も要り、簡単には参入できない。この堀は本物だが、強くはない。道路の発注者が公共で、入札で値段が決まる工事が多いからだ。
価格を決める力は限られる。燃料や骨材が上がっても、販売価格に転嫁するまでに時間がかかる。実際、上期は販売価格の低下と燃料高が利益を押し下げた。合材の量は1990年代のピークから半減し、設備は8割ほど残ったと、前田道路の社長が2020年に語っている。工場が余っている業界では、値引き競争が起こりやすい。
資本の使い方は、利益をすべて返すという意味では株主に優しい。ただ、成長に再投資して稼ぎを増やしてきたわけではない。営業利益は11年たっても同じ水準で、自己資本利益率は6〜7%台と、資本コストを下回る年が目立つ。筆者は、堀より体質の弱さを気にしている。独立の道を選んだ代償として、規模の力で仕入れや配送を安くすることが難しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の舗装需要は、新しく作る工事から、直す工事へと移っている。
道路の総延長はもう増えない。新設が減り、合材の出荷量は長期で細ってきた。新潟県の例では、2013年の155万トンから2024年度の約90万トンまで、4割ほど縮んだ。2025年度は10%増えたが、構造が変わったとは言えない。全国でも傾向は同じとみられる。一方で、建設後50年を超える橋や道路が増え、補修の需要は緩やかに伸びる。国は2026年度から5年で約20兆円強の国土強靱化を進める。
制約は、需要より人手だ。ダンプの運転手が足りず、運搬が詰まる地域もある。2024年の残業規制以降、施工量は人の数で頭打ちになる。
業界の姿は、この数年で大きく変わった。NIPPOはENEOSの主導で非上場となり、前田道路は前田建設の傘下で上場を終えた。清水建設は日本道路を完全子会社にした。大手8社のうち、NIPPOと東亜道路を除く6社はゼネコン系列だ。ゼネコンは舗装を自社の工事の一部として囲い込める。独立系の東亜道路は、受注の入り口で不利になりやすい。
それでも、上位の非上場化が進むほど、独立して残る数少ない会社に買い手の目が向く。再編はまだ終わっていない。
資本政策と M&A
還元は利益を使い切る形だ。配当性向100%を基準に、自己資本配当率8%を目指す。年間の配当総額は約42億円で、純利益34億円の1.2倍にあたる。その結果、自己資本は2025年3月期の554億円から536億円に縮んでいる。
背景には物言う株主がいる。2024年の株主総会では、ストラテジックキャピタルが共同で株主提案を出した。提案の一部は取り下げられ、会社は翌2025年2月に還元方針を引き上げた。2025年12月には同社が3.97%を保有する報告が出ている。
政策保有株は、2024年3月期の39.6億円を2027年3月までに3分の1ほどへ減らす計画で、2025年3月期で27.6億円まで減った。売却益は一時の利益で、これからは減る。
成長投資は、3か年で50億円、設備の更新で100億円と小さい。M&Aは検討項目に入っているが、実績は目立たない。
買われる側の目で見ると、時価総額は約730億円と、日本道路を飲み込んだ清水建設のような大手には小さな買い物だ。持ち合いと取引先持株会が厚いので、友好的に動く余地もある。参考として、10年以内に買収や非公開化の話が出る確率の見積もりは16%ほどである。
還元の置き方:配当性向100%・DOE8%を目指す方針に対し、10年の中立は純利益の合計の約96%で、方針の内側。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
独立系の合材メーカーは、これから評価される側に回る。ゼネコン系列が相次いで非上場になる中で、東亜道路は取引先を選ばず、どの発注者とも組める中立の位置にいる。ゼネコン系列の舗装会社は系列の工事を優先するが、独立系は系列に縛られない。
合材の供給は余っている。工場の統廃合が進めば、残った工場の稼働率が上がり、同じ量でも利益が増える。業界の再編が進むほど、地域で寡占になる工場の価格交渉力は強まる。燃料や骨材の転嫁も、上期の遅れを下期で取り戻す動きがある。
需要は底堅い。建設後50年を超えた道路や橋は増え続け、国土強靱化の20兆円強が後押しする。補修は新設と違って景気で消えない。自治体の技術者不足は深刻で、点検や診断の受託は伸びる。
還元も厚い。配当性向100%、自己資本配当率8%という方針は、利益が増えれば配当も同じだけ増える。ゼネコン系の大手が非上場になった今、残る独立系には、上場会社として買い手の目が向く。買収があれば、その価格は事業の価値より高く出る可能性もある。
慎重な見方
利益は11年間、動いていない。営業利益は2015年3月期の55億円から、2026年3月期の58億円まで横ばいだ。この間、合材の量は細り、値上げでようやく支えてきた。物価が3%で進む世界では、同じ営業利益が続けば実質で目減りする。
合材の量は、1990年代のピークから半減し、設備は8割残った。余った工場を抱える業界では、燃料高を転嫁できず、値引きで量を取りに行く会社が出る。上期の販売価格の低下は、その兆しだ。会社の予想も、営業利益65億円に対し、実績は58億円と届かなかった。中期経営計画も営業利益75億円から60億円へ引き下げられた。
ゼネコン系列との差も開く。大手6社はゼネコンの傘下にあり、仕入れも人も工事の受注も系列で融通できる。独立系は、その規模の力に勝てない。
利益を使い切る還元は、自己資本を細らせる。2025年3月期の554億円から536億円へ縮み、利益が配当に届かない年もある。お金が積み上がらない会社に、再投資で伸びる力はない。買収の話を期待するのは、価値の根拠でなく、期待で値段を払うことになる。
どちらに重みを置いたか
事実の重みでは、慎重な見方が強い。強気の見方は、需要の底堅さと再編の可能性で正しい。ただ、10年の利益は数量と価格と利益率の積で決まる。数量は細り、利益は11年間横ばい、設備は余っている。そこで確率は、中立に最も厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて3割とし、強気側は合わせて3割強とした。買収は上振れの要素だが、買い手は事業の価値を払うものなので、独立した筋書きにはしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,366 円632 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 775 円359 億円)。 今の値に割り戻すと 1,203 円556 億円、今との差 −23.7%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,463 円1,140 億円 | 1,081 円500 億円 | +124.8% | +8.4% | 354 円164 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,870 円865 億円 | 951 円440 億円 | +79.0% | +6.0% | 621 円287 億円 |
| 中立 | 38% | 1,429 円661 億円 | 843 円390 億円 | +44.2% | +3.7% | 863 円399 億円 |
| やや悲観 | 20% | 595 円276 億円 | 584 円270 億円 | −25.2% | −2.9% | 236 円109 億円 |
| 悲観 | 10% | 465 円215 億円 | 205 円95 億円 | −57.5% | −8.2% | 67 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,366 円632 億円 | 775 円359 億円 | +35.9% | +3.1% | 2,141 円991 億円 |
今の株価時価総額 1,576 円729 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 工場の統廃合と値上げが定着し、独立系の強みが出る 利益 70 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 2,463 円1,140 億円
業界の再編が進み、余っていた合材工場の整理で、残った工場の稼働率が上がる。燃料や骨材の値上がりを価格に載せる力が強まり、1トンあたりの価格は物価を少し上回って上がる。量は国土強靱化の補修需要が支え、ほぼ今の水準を保つ。建設事業は、民間の物流施設や鉄道、PFIの舗装を取り込み、利益率を4%台に乗せる。コンサルティングは、自治体の技術者不足を背景に、受託が1.5倍になる。会社全体の営業利益率は6%を超え、過去に一度だけ届いた最高の水準に並ぶ。純利益は70億円ほどになり、配当性向100%の方針で、増えた利益はそのまま株主に戻る。自己資本はほとんど増えないが、利益が倍になるのでROEは12%台に上がる。
- アスファルト製品・環境事業:数量 300(合材等の換算出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 2.26(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 679 億円・営業利益 61 億円。出荷量1.0倍、価格1.40倍、営業利益率9%
- 建設事業(舗装・土木):数量 126(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 7.37(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 925 億円・営業利益 39 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率4.2%
- コンサルティング・その他:数量 7.5(受託業務量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 9 億円。業務量1.5倍、営業利益率12%
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.28 倍、時価総額 1,140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の統廃合で稼働率が上がり、燃料や骨材の転嫁も進み、民間の舗装も取れる筋書き。再編で独立系が評価される追い風もあるが、11年間利益が動かなかった履歴があり、一割にとどめる。
やや楽観 22% 需要は底堅く、利益は物価並みに伸びる 利益 57 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 1,870 円865 億円
合材の量はわずかに細るが、補修と強靱化の需要が下支えして、減り方は小さい。燃料や骨材の転嫁は遅れながらも効き、価格は物価並みに上がる。建設事業は人手の制約で施工量が伸びず、利益率は3%台半ばに上がる。コンサルティングは自治体の技術者不足で順調に伸びる。営業利益は80億円台半ばまで増え、中期経営計画が掲げる姿に近づく。ただ、ゼネコン系列との規模の差は残り、利益率が大きく上がることはない。会社の中期計画も、売上1,300億円・営業利益60億円という控えめな目標に見直されたばかりだ。還元は利益の全額に近く、自己資本は横ばいで、ROEは10%強になる。優良な地域寡占として評価されるが、成長会社にはならない。
- アスファルト製品・環境事業:数量 294(合材等の換算出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 2.17(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 637 億円・営業利益 51 億円。出荷量0.98倍、価格1.34倍、営業利益率8%
- 建設事業(舗装・土木):数量 123(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 7.37(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 907 億円・営業利益 32 億円。施工量0.98倍、価格1.34倍、営業利益率3.5%
- コンサルティング・その他:数量 5.8(受託業務量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 7 億円。業務量1.16倍、営業利益率11.5%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.18 倍、時価総額 865 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修需要が続き、転嫁も遅れながら進む筋書き。会社の中期計画の延長に近い。需要の足場は固いので2割強を置く。
中立 38% 量は細り、価格で支えて、利益は物価並みに伸びる 利益 47 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,429 円661 億円
合材の量は国内の需要の細りで今より5%ほど減り、補修と強靱化がその減り方を和らげる。価格は燃料や骨材の転嫁がほぼ追いつき、10年で物価の分だけ上がる。利益率は今の7%台後半を保ち、大きくは動かない。建設事業は、人手の制約で施工量が1割近く減るが、価格の上昇が補い、利益率は3%に乗る。コンサルティングは小さく伸びる。営業利益は70億円ほど、売上は1,550億円台になる。還元は配当性向100%に近いが、設備の更新と投資の分を残し、自己資本は550億円前後で横ばいとなる。ROEは8%台半ばで、資本コストをわずかに上回る程度だ。
- アスファルト製品・環境事業:数量 285(合材等の換算出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 2.17(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 618 億円・営業利益 43 億円。出荷量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率7%
- 建設事業(舗装・土木):数量 119(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 7.37(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 879 億円・営業利益 26 億円。施工量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率3%
- コンサルティング・その他:数量 6.0(受託業務量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 7 億円。業務量1.2倍、営業利益率11%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.07 倍、時価総額 661 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2人の議論の落としどころで最も厚く置く。量は細るが価格で支え、利益は11年の横ばいから物価並みに動く姿。
やや悲観 20% 合材の値引き競争が戻り、利益は今を下回る 利益 29 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 595 円276 億円
合材の量は今より1割ほど減り、余った工場を抱えた同業が値引きで量を取りに来る。燃料や骨材の値上がりを価格に載せきれず、価格は物価に追いつかない。製品の利益率は5%に下がる。建設事業も、入札の競争が強まって利益率が2%台に落ちる。ゼネコン系列との規模の差が開き、独立系は大きな工事から外されやすくなる。営業利益は45億円を下回り、今より小さい。還元は利益に合わせて絞り、配当性向100%の方針は守れなくなる。ROEは5%ほどで資本コストに届かず、貯めた自己資本はその分、価値を生まない。ただ、構造が壊れたわけではない。補修需要は残り、会社は黒字を保つ。2020年代の値上げは一時の追い風だったと、市場が受け入れる10年になる。
- アスファルト製品・環境事業:数量 264(合材等の換算出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 2.10(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 555 億円・営業利益 28 億円。出荷量0.88倍、価格1.30倍、営業利益率5%
- 建設事業(舗装・土木):数量 113(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 6.99(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 789 億円・営業利益 17 億円。施工量0.90倍、価格1.27倍、営業利益率2.2%
- コンサルティング・その他:数量 5.0(受託業務量(万人日、実質。推定))× 価格 9.50(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 4 億円。業務量1.0倍、価格1.25倍、営業利益率8%
倍率:ROE 5.0%(純利益 29 億円 ÷ 自己資本 582 億円)。ROE が k 7.5% に届かないので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍で、伸びても価値は増えない。値引き競争で利益が今を下回り、ためた自己資本が稼ぎに結びつかない局面なので、上限の 8 割弱の 9.5 倍に置いた。
確率:燃料高の転嫁が遅れ、工場余りで値引き競争が続く姿。上期に販売価格の低下が出ており、業界の歴史を見てもよく起きる。2割を置く。
悲観 10% 工場の余りと系列の囲い込みで、独立系の優良さを失う 利益 6 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 465 円215 億円
合材の量は今の4分の3まで縮み、余った工場が値引きで量を取り合う。ゼネコン系列は自社の工事に自社の合材を使い、独立系は大きな舗装工事の入り口から外される。価格は物価に追いつかず、製品の利益率は2%まで落ちる。建設事業はほぼ収支均衡、営業利益は10億円に届かない。工場の稼働率が下がり、一部は減損と閉鎖に追い込まれる。配当は大きく削られるが、財務の厚さで赤字は避ける。減損と閉鎖で自己資本は200億円近く失われ、ためた利益は価値に結びつかない。もう優良な地域寡占とは見なされず、残る価値は、純現金と、売れる工場用地や政策保有株の税引き後の額に近づく。
- アスファルト製品・環境事業:数量 225(合材等の換算出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 1.97(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 444 億円・営業利益 9 億円。出荷量0.75倍、価格1.22倍、営業利益率2%
- 建設事業(舗装・土木):数量 100(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 6.60(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 663 億円・営業利益 3 億円。施工量0.8倍、価格1.20倍、営業利益率0.5%
- コンサルティング・その他:数量 4.5(受託業務量(万人日、実質。推定))× 価格 8.97(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。業務量0.9倍、価格1.18倍、営業利益率5%
倍率:稼ぐ力は純利益 6 億円と小さく、k 7.5% で割っても 75 億円ほど。床は純現金と売れる資産の税後で測る。今の自己資本 536 億円に対する PBR 0.40 倍に置いた(時価総額は約 215 億円)。営業利益が小さいので EV ÷ 営業利益は意味がない。
確率:合材の値引き競争、ゼネコン系列の囲い込み、燃料高が重なる構造的な負け。自己資本が厚く財務は堅いので、全てが重なる確率は低く、1割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アスファルト製品・環境事業
道路舗装に使うアスファルト合材と乳剤の製造・販売、再生資材など。全国の合材工場が稼ぎ場で、利益の大半を出す。
| 数量合材等の換算出荷量(万トン、実質。推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1.62 | 485 | 38 |
| 10 年後 中立 | 285 | 2.17 | 618 | 43 |
取り方:通期の部門別の数字は短信の本表で確認できず、上期の開示(売上217億円・利益12.8億円)から、合材は冬から春に出荷が偏る季節性を見て、通期を売上約485億円・利益約38億円と推定した。出荷量は開示がないので、1トンあたり約1.6万円と置いて約300万トンに換算した。物価の分は価格に入り、数量は実質の量。
建設事業(舗装・土木)
道路や駐車場、空港、鉄道敷地などの舗装工事。公共が中心で、民間の物流施設や工場の舗装も受ける。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 126 | 5.50 | 690 | 20 |
| 10 年後 中立 | 119 | 7.37 | 879 | 26 |
取り方:上期の開示(売上297億円・利益3.4億円)は工事が下期に完成する季節性で小さく出るため、通期を売上約690億円・利益約20億円と推定した。労務量は開示がなく、舗装は材料と機械の比率が高いので1人日あたり売上を5.5万円とみて約126万人日と置いた。
コンサルティング・その他
舗装の点検・診断、舗装維持管理システム(PMS)、路面調査車(MWD plus)の受託など。自治体の技術者不足に応える小さな事業。
| 数量受託業務量(万人日、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 7.60 | 38 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 10 | 61 | 7 |
取り方:連結売上1,213億円から上の2事業の推定を引いた残りが約38億円。業務量は開示がなく、技術者1人日あたり約7.6万円と置いて約5万人日とした。利益率は10%強と推定。
リスクと懸念
合材の値引き競争が戻る
合材の量は1990年代のピークから半減し、設備は8割ほど残った。工場が余る業界では、値引きで量を取りに行く会社が出る。上期の販売価格の低下はその兆しで、製品の利益率が2ポイント下がれば、営業利益は10億円近く減る。
燃料・骨材の値上がりを転嫁しきれない
重油など燃料と骨材の価格は、中東情勢で揺れる。公共工事は入札で値段が決まり、転嫁に時間がかかる。会社も中期計画の営業利益目標を75億円から60億円に下げた。2026年3月期は、予想の65億円に対し実績は58億円だった。
ゼネコン系列に比べた規模の差
NIPPOは売上4,600億円超、大手8社のうち6社はゼネコン系列だ。系列は仕入れ、配送、工事の受注を融通できる。独立系の東亜道路は売上1,200億円で、規模の力が働きにくい。大型案件の入り口で外される恐れがある。
人手不足とダンプの運転手の不足
2024年の残業規制以降、技能者と運転手が足りない。合材は熱いうちに運ぶので、運搬の詰まりは出荷量に直結する。施工量には人手の天井があり、需要の伸びが売上に届かない。
配当が利益を超えている
年間の配当総額約42億円は、2026年3月期の純利益34億円の1.2倍にあたる。配当性向100%の方針では、利益が落ちれば配当も落ちる。自己資本は2025年3月期から縮んでおり、利益が戻らなければ、還元の水準を守れなくなる。
株主の動きと買収期待への依存
物言う株主の保有は2025年12月の報告で3.97%に下がった。株主の圧力が弱まれば、還元方針が見直されることもありうる。買収の期待が値段に乗っているなら、話が出ない年が続くだけで、期待は剥げる。
今後の分かれ目
- 清水建設や他のゼネコンが、東亜道路に買収や資本提携を持ちかける
- 買収価格は事業の価値より高く出る可能性がある。10年の筋書きに加え、一時の上振れとして確率を足す。ただし事業の価値そのものは変わらない。
- 合材の工場を統廃合し、稼働率と製品の営業利益率が8%を超えて定着する
- 強気側へ確率を移してよい。工場余りが整理されたサインで、価格を決める力の裏付けになる。
- 販売価格の低下が続き、製品の営業利益率が6%を割る
- 慎重側へ寄せる。値引き競争が戻ったサインで、やや悲観の筋書きを中心に置き直す。
- 配当が利益を超える年が続き、自己資本が500億円を割る
- 配当性向100%の方針が持たないサインとして、還元を絞る筋書きに重みを置く。
- 自治体からの点検・診断の受託が急増し、コンサルティングの売上が倍になる
- 補修需要を価格のよい仕事に変えられている証拠。コンサルティングの利益の筋書きを上方に見直す。
- 国土強靱化の予算が前倒しで増え、補修の発注が大きく増える
- 数量の前提が外れる。合材の量を今の水準で維持する筋書きに重みを移す。
見ておくもの
- 製品・環境事業の営業利益率と販売価格の動き
- 合材の工場の統廃合と稼働率
- 建設事業の受注残と利益率
- 配当総額と自己資本の推移
- 大株主の保有割合と、ゼネコンの舗装子会社の再編
倍率と資本コストの決め方
セグメントは出荷量と1トンあたり売上、施工量と1人日あたり売上で積み、物価3%を価格に入れ、数量は合材の細りと人手の制約から0.95倍とした。倍率は k 7.5%(基本 7.5% に値決め力 +0.25%、寿命 +0.25%)と g から式で出し、今・過去・同業の市場の倍率は見ていない。中立の PER は ROE が k をわずかに上回るので下限の 1÷k に落ちる。今の株価は ROE が低い割に高く、10年の利益を割り引くと今の時価総額を下回る。これは今の株価が倍でも半分でも動かない作りで、比べたのは最後だけだ。悲観の PBR は今の自己資本に掛け、純現金と売れる資産でも確かめた。営業利益は家賃を費用に入れた今と同じ形(新リース会計基準の適用前の形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→16.28 倍・やや楽観 PER 12.8→15.18 倍・中立 PER 12.5→14.07 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。