結論
朝日工業社は、半導体工場やデータセンター、病院、オフィスの空調と衛生設備を設計し、施工する工事会社だ。売上は約 1,050 億円で、高砂熱学工業やダイダン、新日本空調に次ぐ準大手にいる。筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。事業の力は確かだが、利益率が過去に例のない高さにある。
2026 年 3 月期の営業利益率は 11.1% だった。10 年前は 2% 台、その後も 3〜5% で長く推移した会社だ。受注は 25% 増え、繰越高も厚い。目先の見通しは明るい。ただ、この利益率が 10 年続くとは置きにくい。
稼ぎの源は単純だ。工場やデータセンターが建つたび、古い設備を替えるたびに工事を受ける。国内の工事量は人手の制約で頭打ちになりやすい。物価の上昇は工事の値段に乗る。筆者は数量が小さく伸び、値段は物価並みという地味な成長を中心に見る。
中立の筋書きは、利益率が 7.5% 前後へ戻る姿だ。それでも普通に強い工事会社として残る。借金を引いても 180 億円ほどの現金があるが、工事会社の現金は顧客からの前受金などの預かりを含む。全部が自由なお金ではない。
会社は 2029 年 3 月期に営業利益 135 億円、ROE 15% 以上を目指す。この計画どおりに行く姿は、上位の筋書きに置いた。配当を DOE 6% 以上とした新方針は、持ち主に厚い。ただ、それで利益率の山の高さは変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、10 年後にこの事業が今より強いかだ。空調工事は、建物がある限り更新が続くので、事業は消えない。ただ、強くなる保証はない。値段を決めるのは顧客で、競争は続く。
次に、株主が自由に使える利益を見る。工事会社は大きな設備を持たないので、純利益の多くを配当に回せる。これは長所だ。一方、利益の質は景気に左右される。今の利益の一部は、高採算の大型案件が重なった山の分だ。この分を、長く続く利益として評価しない。
経営の資本配分は堅実だ。借金を使った無理な拡大がなく、還元の方針も明確だ。弱みは、成長投資と借入が中計に並ぶ点で、大きな買収に踏み出せば、割高な値段を払う恐れがある。
最後に安全域だ。10 年後に今の利益を維持できれば、今の値段は妥当に見える。しかし維持できる確率は、半分を大きく超えない。利益率が平常へ戻る筋書きが中心だからだ。そこでは今の値段との間に、安全域はほとんどない。
良い会社である。ただ、良い会社を高く買えば、満足できる成果は出にくい。筆者の見立てはそこにある。
何で稼ぐ会社か
売上の約 95% が設備工事で、残りが機器の製造販売だ。設備工事は、ビルや官公庁、商業施設の空調・衛生設備から、半導体や液晶の工場のクリーンルームまでを受け持つ。
稼ぎ頭は生産環境施設、つまり工場とデータセンターの空調だ。過去 5 年で受注が 2.2 倍になり、熊本の半導体工場や大型データセンターを受けた。温度・湿度・清浄度を厳しく保つ仕事なので、技術の差が値段に出やすい。会社はこの領域とリニューアル(既存設備の更新)を、高採算の柱としている。
機器製造販売は売上の 5% ほどだ。液晶や半導体向けの精密な環境制御機器、乾燥装置を作る。今は小さな赤字だが、設備工事との相乗を狙う。
もう一つの種が植物工場だ。1996 年から栽培の空調を研究してきた。米国の植物工場会社と資本・業務で提携し、つくばに研究所も建てた。まだ売上への貢献は小さい。
工事会社の仕事は、人で決まる。技術者と技能者の数が、受けられる工事の量の上限になる。会社も、来期の受注は施工体制を考えて前期並みに抑えると述べている。受注を取れることより、施工を回せることが成長の天井だ。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社に感じる強みは、生産環境施設での実績だ。クリーンルームの空調は、止まれば工場の歩留まりに響く。顧客は値段より実績を見る。ここで受注が 5 年で 2.2 倍になったのは、その表れだ。
ただ、堀は深くない。ビル向けの空調は、入札や相見積りで値段が決まる。高砂熱学は売上が約 4 倍、ダイダンは約 2.4 倍の規模で、同じ顧客を取り合う。新日本空調も半導体に強い。朝日工業社の強みは、中堅としての小回りと専門性にある。独占ではない。
利益率の高さにも目を向けたい。営業利益率は 2015 年 3 月期の 2% 台から 11% 台まで、10 年で 5 倍に上がった。値上げが通る局面と、高採算案件の竣工が重なった結果だ。会社自身が、来期は高採算案件の反動を見込んでいる。
財務は堅い。借金より現金が多く、自己資本比率は 50% を超える。ただ、これは堀の証拠ではない。前受金の入る工事会社は、財務が堅く見える。
経営は着実だ。リニューアルを売上の半分以上へ増やす方針は、景気に左右されにくい利益を厚くする狙いで、筆者は理にかなうと見る。弱みは、中計の資本配分に借入と成長投資が並び、手元の厚みが薄まりうる点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空調工事は、民間の設備投資の山と谷に沿って動く。過去の谷では、各社の粗利率が一桁台前半まで落ちた。今は山の側にいる。AI 向けのデータセンターと半導体工場が国内で建ち、工事会社は受注を選べる立場にある。
需要の中身は 3 つに分かれる。1 つ目は工場とデータセンターだ。会社は、データセンターの需要が 2028 年まで年 13% 超で伸びると説明する。2 つ目は既存ビルの更新だ。省エネと脱炭素のために、古い空調を替える動きが続く。3 つ目は通常のオフィスや商業施設の新築だ。ここは人口減で伸びにくい。
供給の側には制約がある。技能労働者の不足と、2024 年の残業規制だ。これで、工事会社は取れる仕事を選び、値上げを通せるようになった。同じ制約は、受注を増やす上限にもなる。
競合は高砂熱学、ダイダン、新日本空調、大気社などだ。クリーンルームやデータセンターの大型案件は、技術と施工力のある上位に集まりやすい。朝日工業社は、その中で小回りと専門性で受注を取る立場だ。
10 年で見る時の論点は 2 つある。国内の工場・データセンター投資が続くか、それとも米国などの海外へ移るか。もう 1 つは、今の高い利益率が元請けの工事費抑制と同業の競争で削られるかだ。筆者は、国内の更新需要で数量は守られるが、利益率は今より下がると見る。
資本政策と M&A
還元は厚くなる。新しい中計では、連結の配当性向 40% 以上に加えて、自己資本に対する配当(DOE)6% 以上を設けた。高い方を配当にする。利益が落ちても、配当が自己資本に連動して下がりにくい作りだ。筆者は、持ち主に優しい決め方だと見る。
資本の使い方は、成長投資を含めて 3 年で 240 億円を優先する。必要なら借入も使う。研究所の建設や植物工場会社への出資に、すでにお金が出ている。今の純現金は、これで徐々に薄まる。
政策保有株、つまり取引先の株は、純資産の 20% 未満へ減らす方針だ。前の中計の目標は株高で達成できなかった。売れば現金になるが、売却益は一度きりで、本業の力ではない。
大株主は信託銀行、銀行、取引先の持株会が中心で、個人の保有も多い。親会社や上場子会社の関係はなく、買収の話も聞こえない。自社株買いは目立たない。
大型の買収で価値を壊した過去は見当たらない。事業の裾野を広げる動きは、植物工場への出資にとどまる。筆者は、これは小さく試す形で、悪くないと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
工場とデータセンターの建設は、まだ序盤だ。会社の説明では、データセンターの需要は 2028 年まで年 13% 超で伸びる。国内の半導体工場も、大型の計画が控える。朝日工業社は、すでに生産環境施設の受注を 5 年で 2.2 倍にした。この実績が、次の大型案件の指名につながる。
利益率が上がったのは、一時の運ではない。受注の時点で採算を確かめる方針に変え、高採算のリニューアルを増やした。人手の足りない業界では、断れる側が値段を決める。この構図は 10 年続く。会社は営業利益 135 億円を計画に置いたが、それを超えても不思議ではない。
財務も追い風だ。純現金があり、借入に頼らずに研究所と提携先に投資できた。配当を自己資本の 6% 以上とする方針は、自己資本が増えれば配当も増えることを意味する。
植物工場も種になる。栽培空調の知見が、事業の柱になりうる。まだ小さいが、設備工事と機器の両方に仕事が出る。
工場・データセンターの仕事は、技術と実績で指名される。入札の値下げ競争になりにくい領域が広がれば、利益率は高いまま残る。強気の人はそこに、構造の変化を見ている。
慎重な見方
今の利益率は異例だ。2015 年 3 月期は 2% 台、その後 10 年の大半は 3〜5% だった。高採算案件が重なった今の 11% を、通常の姿として置くのは危うい。会社自身が、来期は高採算案件の反動を見込んでいる。
工事会社は、元請けと施主の間に挟まれる。施主が工事費を抑え、競争が戻れば、値上げは効かなくなる。高砂熱学は売上で約 4 倍の規模を持ち、技術も人材も厚い。大型案件ほど、上位の会社に集まりやすい。
国内の工場・データセンター投資が、いつまでも続く保証はない。米国や中東へ向かえば、国内の工事量は先細る。会社も、来期の受注は前期並みと見ており、すでに天井が見えている。
人手の制約も重い。受注を増やしても、施工できなければ売上にならない。技能者を採るための賃上げは、利益率を削る。採算の悪い案件を抱えれば、一度で数年分の利益が飛ぶこともある。
中計は、成長投資と借入を並べた。大型の投資に踏み出せば、今の純現金の安心感は薄れる。機器製造販売は赤字が続き、植物工場への出資は成果が見えない。株価が利益の山を前提にしていれば、利益率が平常に戻るだけで、割高になる。
どちらに重みを置いたか
事業の強さと需要の追い風では、強気の見方が優勢だ。ただし、利益率の山の高さについては、慎重な見方の指摘が的を射ている。人手の制約が、成長の天井を決めるからだ。
中立は、利益率が 7.5% 前後へ戻る筋書きにした。確率は中立に 35%、やや悲観に 25% と、下側に厚めに置いた。上位は、会社の計画どおりか、それ以上に進む筋書きとして合わせて 28% にとどめた。
悲観には 12% を置いた。国内投資が海外へ移り、価格競争だけが残る負け筋だ。この会社は小さく、一度の大型案件の失敗の傷が深いことも考えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,898 円1,527 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,736 円449 億円)。 今の値に割り戻すと 4,071 円1,054 億円、今との差 +9.7%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,951 円3,352 億円 | 2,720 円704 億円 | +322.4% | +15.5% | 1,254 円325 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,287 円2,404 億円 | 2,140 円554 億円 | +208.0% | +11.9% | 2,285 円592 億円 |
| 中立 | 35% | 6,404 円1,658 億円 | 1,738 円450 億円 | +119.5% | +8.2% | 2,850 円738 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,701 円699 億円 | 1,410 円365 億円 | +10.8% | +1.0% | 1,028 円266 億円 |
| 悲観 | 12% | 734 円190 億円 | 1,082 円280 億円 | −51.1% | −6.9% | 218 円56 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,898 円1,527 億円 | 1,736 円449 億円 | +105.8% | +7.5% | 7,635 円1,976 億円 |
今の株価時価総額 3,710 円960 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 国内の工場とデータセンターの投資が 10 年続き、会社の計画を超えて伸びる 利益 164 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 12,951 円3,352 億円
工場・データセンターの大型案件を継ぎ続け、リニューアルも売上の半分を超える。技術者を採り続けて施工量を 1.25 倍に増やし、受注の採算を選ぶ姿勢で営業利益率 11% 近くを保つ。値段は物価を少し上回って上がる。半導体工場や AI 向けの大型データセンターの指名を継ぎ、元請けとの交渉でも優位に立つ。植物工場の仕事も、設備と機器の両方に出る。配当は DOE に連動して増え、ROE は 15% 前後に届く。会社の中計の営業利益 135 億円を、大きく超える 10 年だ。市場の目は、会社の説明に出てくる高採算のリニューアルと、直接受注の増加に向かう。人手の確保が追いつく限り、売上は物価と数量の両方で伸び、10 年後の売上は今の 1.7 倍を超える。純現金は厚いまま還元に回り、政策保有株の売却益は上乗せになる。
- 設備工事(空調・衛生・クリーンルーム):数量 2,375(施工量(人年。技術者と技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.73(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,735 億円・営業利益 191 億円。施工量 2375 人年(今の 1.25 倍)× 1 人年 0.7305 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 11.0%
- 機器製造販売:数量 170(機器の出荷(台・年、推定))× 価格 0.66(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 9 億円。170 台 × 1 台 0.663 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍。全体の PER 19.61 倍、時価総額 3,216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画を超える利益率と施工量の増加が 10 年そろう道。条件が重なるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 更新需要と産業投資が支え、利益率は高めで落ち着く 利益 121 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 9,287 円2,404 億円
工場・データセンターの投資は山を越えても高い水準で残り、既存ビルの空調更新と省エネ改修が下支えする。施工量は 1.12 倍まで増え、値段は物価をやや上回る。利益率は今の山から 9.5% へ落ち着くが、過去の水準よりは高い。ゼネコン経由の仕事は価格競争が戻る場面もあるが、直接受ける仕事で補う。会社は着実に計画の数字へ近づく。配当は DOE 6% の下限を上回り、ROE は 12% 近くになる。人手の制約は残るので、施工量の伸びは緩やかだ。それでも受注の採算を選ぶ姿勢は保たれ、リニューアルと工場の更新が利益を支える。10 年後の売上は今の 1.5 倍ほどになり、利益は今の山から少し下がった位置で安定する。
- 設備工事(空調・衛生・クリーンルーム):数量 2,128(施工量(人年。技術者と技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.71(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,521 億円・営業利益 144 億円。施工量 2128 人年(今の 1.12 倍)× 1 人年 0.7149 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 9.5%
- 機器製造販売:数量 145(機器の出荷(台・年、推定))× 価格 0.65(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 5 億円。145 台 × 1 台 0.649 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 121 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.42 倍、時価総額 2,229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場・データセンターの投資が山を越えても高い水準で残り、利益率が高めに落ち着く道。同業の見通しの上位にあたるので 20% を置いた。
中立 35% 施工量は小幅に増え、利益率は平常へ戻る 利益 88 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 6,404 円1,658 億円
施工量は 5% ほど増える。人手の制約があり、工場・データセンターの伸びは頭打ちになる。値段は物価並みに上がる。営業利益率は今の山から 7.5% へ戻る。過去の水準よりは高いが、高砂熱学や新日本空調と並ぶ位置だ。元請けや施主の工事費の抑制が、値上げの余地を削る。リニューアルの比率は高まるが、大型案件の高採算は続かない。会社は普通に強い工事会社として残り、純利益は今とほぼ同じ水準になる。配当は DOE の下限で支えられ、ROE は 9% 台になる。人手の制約が成長の天井になるので、売上の伸びは物価分が中心になる。10 年後の売上は今の 1.4 倍ほどで、営業利益は今より 1 割ほど低い。会社の中計の 135 億円には届かない姿だが、事業の力が衰えたわけではない。
- 設備工事(空調・衛生・クリーンルーム):数量 1,995(施工量(人年。技術者と技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.70(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,395 億円・営業利益 105 億円。施工量 1995 人年(今の 1.05 倍)× 1 人年 0.6992 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 7.5%
- 機器製造販売:数量 130(機器の出荷(台・年、推定))× 価格 0.63(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 2 億円。130 台 × 1 台 0.634 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 88 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.73 倍、時価総額 1,472 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:施工量は小幅、値段は物価並み、利益率は今の山から 7.5% へ戻る道。同業の中心に揃え、最大の 35% を置いた。
やや悲観 25% 元請けの工事費抑制と同業の競争が戻り、利益率が過去の高い側へ落ちる 利益 54 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,701 円699 億円
高砂熱学など上位の会社が大型案件を押さえ、朝日工業社は施工量が 5% 減る。同業の受注競争が戻り、値段は物価に届かない。営業利益率は 5.5% まで落ちる。利益率が上がり始めた 2024 年 3 月期の水準に近い。機器製造販売は赤字が続き、植物工場への出資も成果が小さい。それでも事業は続き、配当は DOE の下限が効いて、利益に対して重くなる。ROE は資本コストを下回る。10 年後の売上は今の 1.2 倍にとどまり、営業利益は今の 6 割ほどになる。それでも赤字には遠く、事業は安定して続く。ただ、利益の山が過ぎたあとの普通の工事会社として評価される。
- 設備工事(空調・衛生・クリーンルーム):数量 1,805(施工量(人年。技術者と技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.68(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,224 億円・営業利益 67 億円。施工量 1805 人年(今の 0.95 倍)× 1 人年 0.6783 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 5.5%
- 機器製造販売:数量 110(機器の出荷(台・年、推定))× 価格 0.62(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。110 台 × 1 台 0.615 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 1%
倍率:事業の純利益 54 億円・自己資本 874 億円・ROE 6.2%。ROE が資本コスト k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が上限。利益率が下がって稼ぐ力が細るので、上限を割り引いて 10.0 倍に置いた。純現金は工事の前受金などを含むので分けない。
確率:利益率が山にある会社で、元請けの工事費抑制と競争の復活は十分ありうる。上側より厚く、25% を置いた。
悲観 12% 国内の投資が海外へ移り、価格競争だけが残る 利益 20 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 734 円190 億円
国内の半導体・データセンター投資の多くが米国などに移り、工事量が 2 割ほど細る。残った需要は大手が押さえ、朝日工業社は値段で受注を取るしかなくなる。値段は物価に届かず、営業利益率は 3% まで落ちる。大型案件の採算悪化も重なり、機器製造販売の赤字も広がる。配当は利益の半分ほどに絞られ、DOE の目標は守れなくなる。優良な工事会社という評価は外れ、普通の下請けとして扱われる。10 年後の売上は今より 1 割弱小さい。技術者を抱えたまま仕事が減り、固定費が重くのしかかる。それでも借金が少ないので、会社が行き詰まる姿ではない。稼ぐ力だけが細る負け筋だ。
- 設備工事(空調・衛生・クリーンルーム):数量 1,482(施工量(人年。技術者と技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.63(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 928 億円・営業利益 28 億円。施工量 1482 人年(今の 0.78 倍)× 1 人年 0.6262 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 3.0%
- 機器製造販売:数量 80.0(機器の出荷(台・年、推定))× 価格 0.57(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 −2 億円。80 台 × 1 台 0.568 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 -5%
倍率:事業の純利益 20 億円・自己資本 789 億円・ROE 2.5%。ROE が資本コスト k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が上限。利益率が下がって稼ぐ力が細るので、上限を割り引いて 9.5 倍に置いた。純現金は工事の前受金などを含むので分けない。
確率:国内投資の海外シフトと価格競争が重なる構造的な負け筋。小さな会社で大型案件の失敗の傷も深いので、同業と同じ 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
設備工事(空調・衛生・クリーンルーム)
ビル・工場・データセンターの空調と衛生設備の設計・施工。売上の約 95%。
| 数量施工量(人年。技術者と技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,900 | 0.52 | 991 | 118 |
| 10 年後 中立 | 1,995 | 0.70 | 1,395 | 105 |
取り方:開示は人年で出ないので推定。工事は人が制約になるため、施工にあたる人の稼働を約 1,900 人年とし(1 人あたり完成工事高は約 5,200 万円。同業の新日本空調の置き方に揃えた)、設備工事の売上 991 億円・営業利益 118 億円(2026 年 3 月期の実績)を割った。物価の上昇分は価格に入れる。
機器製造販売
液晶・半導体向けの精密な環境制御機器と乾燥装置の製造販売。売上の約 5%。
| 数量機器の出荷(台・年、推定) | 価格1 台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.47 | 57 | −1 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.63 | 82 | 2 |
取り方:機器の売上 57 億円・営業損失 1 億円(2026 年 3 月期)を、年約 120 台の出荷と推定して 1 台あたり約 0.47 億円とした。台数は実質、物価と高機能化は 1 台あたり売上に入れる。
リスクと懸念
利益率の山が崩れる
営業利益率は 10 年で 2% 台から 11% 台へ上がった。高採算案件の竣工と値上げの定着が重なった山で、会社自身も来期は反動を見込む。元請けの工事費抑制や競争の復活で、数年で 7〜8% へ戻る可能性がある。
人手の制約が成長の天井になる
受注を増やしても、施工する技術者と技能者が足りなければ売上にならない。会社は来期の受注を前期並みに抑えると述べた。賃上げは販管費を押し上げ、採用の遅れは受注の機会損失になる。
国内の工場・データセンター投資の海外シフト
受注の伸びを担ったのは、熊本の半導体工場などの国内の大型投資だ。同種の投資が米国や中東へ向かえば、国内の工事量は想定より早く細る。少数の大型案件に集中する分、1 件の延期の影響も大きい。
上位との競争
高砂熱学は売上で約 4 倍、ダイダンは約 2.4 倍の規模で、新日本空調も半導体に強い。大型案件ほど上位に集まり、朝日工業社は値段か専門性で勝つ必要がある。技術で先を越されれば、指名を失う。
大型案件の採算悪化
工事は一件ごとに見積りが違い、資材高や工期遅れで赤字になる案件がある。会社は規模が小さいため、一度の事故で数年分の利益が削られうる。高採算案件が多い今は、損の出る案件の影響も見えにくい。
中計の資本配分
成長投資に 240 億円を優先し、必要なら借入も使う方針だ。研究所と植物工場会社への出資はすでに出ており、成果は見えない。大型の買収に踏み出せば、純現金の安心感は薄れる。
今後の分かれ目
- 次の決算で営業利益率が 11% を超えて定着したら
- 中立の利益率を 7.5% から上方へ見直す。ただし、採算が上がった理由が、リニューアルの比率なのか、大型案件の一時の山なのかを見分ける。
- 受注高が前期の高い水準を割り、繰越高が減り始めたら
- 施工量の前提を下げ、やや悲観の確率を上げる。工場・データセンターの投資の山が過ぎた合図になる。
- リニューアルの売上比率が計画どおり 50% に近づいたら
- 利益の質が改善するので、中立と上位の確率を少し増やす。景気に左右されにくい利益が厚くなる。
- 同業の大手が工場・データセンターの大型案件で値下げに動いたら
- 利益率の前提を下げ、やや悲観に確率を移す。入札型の仕事で影響が先に出る。
- 成長投資のために借入が増え、純現金が消えたら
- 自己資本と配当の余力を見直す。大型の買収が絡むなら、価値を壊す恐れがあるので悲観側の確率を上げる。
- 植物工場会社への出資が、設備工事の受注として実を結んだら
- 今は小さな種だが、設備と機器の両方に仕事が出る。成長の筋書きに少し重みを移してよい。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と繰越高、生産環境施設の受注比率
- 営業利益率と、リニューアルの売上比率
- 技術者の人数と離職、賃上げの水準
- 高砂熱学・ダイダン・新日本空調の受注と利益率の動き
- 政策保有株の縮減の進み方と純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
先に設備工事(施工量 × 1 人年あたり完成工事高)と機器を積み、10 年後の利益率を同業の準大手と同じ 7〜8% 台に置いて、純利益を出した。倍率は k 7.5% と g 4% から正当化 PER を出し、上限の 9.2〜9.3 割に置いた。今の株価や PER、同業の PER は根拠にしていない。今の利益率 11% は山と見て、中立では使わない。やや悲観・悲観は ROE が k を下回るので 1÷k 未満に置いた。新リース会計基準で営業利益や負債の形が変わるが、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.2→19.61 倍・やや楽観 PER 13→18.42 倍・中立 PER 11.8→16.73 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。個別のリスク(大型案件の採算・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。