結論
不動テトラは、地盤改良を稼ぎ頭にする中堅の土木会社だ。砂の杭を打って地盤を固める独自工法で知られ、海の工事と消波ブロックも手がける。2026年3月期は売上817億円、営業利益59億円と、いずれも過去の水準を大きく上回った。
筆者の結論は、今の値段にはやや余白がない、というものだ。利益の大半は地盤改良が出し、その営業利益率は前の期の倍近い15%台に跳ねた。独自工法の工事が重なった山の数字で、会社自身も今期は営業利益を48億円に落とすと見ている。
強みは本物だ。液状化対策や港の地盤では、この会社の工法が指名される場面が多い。ただし売上の4割を占める土木は、利益がほとんど出ない。規模も小さく、大型の赤字工事が1本出れば1年分の利益が飛ぶ。
株主構成も見逃せない。エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが27%超を持ち、重要な提案を行う余地を残している。これが還元の強化につながれば上振れ要因だ。一方で、従業員による架空発注の問題は、内部の管理の甘さを示した。
10年でならすと、利益は今の山より低い水準に落ち着くとみる。自己資本が厚く積み上がるわりに稼ぐ力が資本コストに届かないため、本質価値は今の時価総額を2割台後半ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、不動テトラは「腕のいい専門会社」だが、安く買える会社ではない。
まず利益の質を見る。地盤改良は独自技術の裏づけがあり、利益率が高い。それでも、前の期の15%台は工事の巡り合わせが良かった数字だ。長く続く力として見るなら、8〜11%ほどに置くのが妥当だと筆者は考える。
次に、資本の使い方。自己資本は厚く、借金は軽い。しかし事業が必要とする以上に自己資本が積み上がると、ROEは資本コストを下回りやすい。10年の見立てでも、ROEは7%前後にとどまる。ためた利益を無駄にしない経営かどうかが、持ち主としての最大の関心事になる。
最後に、安全域。今の時価総額は、会社の予想利益の10倍台前半、自己資本の約1.1倍にあたる。稼ぐ力が資本コストに届かない会社に、自己資本を超える値段を払う余白はない。大株主が動いて還元が増えれば景色は変わるが、それは筋書きの一つにすぎない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は地盤改良だ。軟らかい地盤に砂や固化材の杭を打ち込み、建物や港を支えられる地盤に変える。2026年3月期は売上461億円で、営業利益71億円とほぼ全部を稼いだ。
発注者は国と自治体だけではない。契約先の過半は民間の建設会社で、再開発、工場、倉庫、エネルギー施設の基礎に使われる。国土交通省向けは売上の1割強にとどまる。公共の予算に頼り切る会社ではない。米国にも現地法人を持ち、アジアでも施工する。
二つ目の柱は土木で、売上337億円。港の護岸や埋立などの海洋工事と、陸上の土木を請け負う。ただ利益は2.8億円と薄く、前の期の約半分に減った。採算が合わなかった工事が出たためだ。
三つ目はブロックで、売上23億円と小さい。波を消す消波ブロックや、岸壁の根を固めるブロックを供給し、型枠を貸し出す。老朽化対策や防衛関連の需要はあるが、型枠を貸す市場の悪化が重荷になってきた。
以上を足すと、利益の9割超は地盤改良に依存する。会社全体の姿は、地盤改良の腕で食べる専門工事会社に近い。土木とブロックは、その腕を支える現場と製品の位置づけだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、地盤改良の工法にある。
砂の杭を打つサンドコンパクションパイルは、この会社が世に出した工法だ。振動を抑えて砂を押し込むSAVEコンポーザー、発生土をそのまま使うリソイルPro、機械を自動で動かす打設システムなど、独自の技術が続く。難しい液状化対策では、技術を持つ会社が指名されやすい。2026年3月期の地盤改良の利益が倍に伸びたのも、独自工法を使った工事が採算を押し上げたからだ。
ただし堀は広くない。公共工事は入札で値段が決まり、民間の建設会社は価格に厳しい。ライト工業や日特建設などの専業、大手ゼネコンの地盤部門と競う場面も多い。土木とブロックには堀がほぼない。
弱点は規模と管理だ。売上は800億円ほどで、大型工事が1本ずれるだけで利益が揺れる。2025年には従業員による架空発注が判明した。協力会社との金の流れまで及んだと報じられ、調査は特別委員会に引き継がれた。損失の額は確かめられなかった。再発防止策は出たが、効果が出るのは先だ。
資本の使い方は堅実で、自己資本比率は5割を超える。反面、この手厚い自己資本が、稼ぐ力に対して余っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は底堅い。政府は2026年度から5年間で約20兆円強の国土強靱化を進める。老朽化したインフラの更新と、南海トラフや首都直下の地震に備えた液状化対策は、何年も続く仕事だ。
ただし、この会社の中心は補修ではなく地盤改良である。橋の補修のような安定した維持管理市場は主戦場でなく、需要は新設や再開発の基礎にも左右される。民間の工事が景気で振れれば、地盤改良の受注も影響を受ける。
制約は需要より人手だ。2024年の残業規制以降、技能者が足りず、施工できる量に上限がある。業界は工事を選び、値上げを通す方向に変わった。不動テトラも、資材や労務費の上昇を価格に乗せて採算を守りたい。
海洋土木は五洋建設、東亜建設工業、東洋建設などの大手と重なる。洋上風力の基礎工事は期待されるが、国内の案件は立ち上がりが読みにくい。会社はブロック事業で洋上風力への参画を掲げるが、規模はまだ小さい。
以上から、数量は人手に縛られて伸びにくく、利益は価格と採算管理で決まる。10年の数量は、中立でも横ばいから小幅の減少とみる。
資本政策と M&A
還元は増配が中心で、自社株買いは前面に出ない。中期経営計画は配当性向40%程度、1株あたりの下限も定めて掲げた。実際の2026年3月期は配当総額が約17.6億円で、性向は39%だった。今期も同じ水準を予定する。そのうち4分の1強は合併20周年の記念配当で、普通の配当は性向4割ほどだ。
自己資本比率は5割を超え、計画の下限40%に対して厚い。にもかかわらず、3年の株主還元は35億円と控えめだ。計画の投資枠は255億円で、うち150億円を新しい事業や買収に回す。使い道が定まらないお金が積み上がるのが、この会社の課題だ。
大株主のエフィッシモが27%超を持つことが、変化の引き金になりうる。保有目的は、投資のほか、経営陣への助言や重要な提案も含む。還元の拡大や資本効率の改善を求める可能性は十分ある。
政策保有株は上場6銘柄で約13億円と小さい。残りは今期中に順次売る方針だ。
買収される可能性にも触れておく。時価総額は400億円台と小さく、大株主もいる。10年のうちにTOBの話が出る確率は、参考の見積もりで2割ほどある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地盤改良は、これから伸びる市場だ。南海トラフ地震や首都直下地震に備えた液状化対策は、国と自治体の予算がつく長期の需要である。民間の再開発、データセンター、物流施設、エネルギー施設の基礎工事も増える。独自工法を持つ不動テトラは、難しい現場で指名される立場にあり、2026年3月期に地盤改良の利益が倍になったのは偶然ではない。
価格を決める力も育っている。人手不足で工事を選ぶ時代になり、技術を持つ会社ほど値上げを通しやすい。地盤改良の営業利益率が10%を超える状態は、一時の山でなく新しい標準になりうる。
資本政策にも上振れがある。エフィッシモが27%超を持ち、自己資本比率は5割を超える。還元を総還元性向で6割に引き上げ、自社株買いを加えれば、ROEは資本コストを大きく上回る。この会社は小さく、TOBの対象にもなりうる。買い手が付けば、本質価値より高い値が付く場面もある。
加えて、洋上風力の基礎工事やブロックの新用途が立ち上がれば、地盤改良以外にも利益の柱が育つ。会社の計画はまだ小さいが、技術の裏づけはある。
慎重な見方
利益は山にある。2026年3月期の地盤改良の営業利益率は15%台で、前の期の約8%から倍近くに跳ねた。独自工法の工事が重なっただけで、今期は営業利益が19%減の48億円になる。計画で使う3年の営業利益率は地盤改良8%台、土木3%台である。10年でならせば、山の数字は続かない。
土木は稼げない。売上の4割を占めながら、営業利益は2.8億円しかなく、採算の合わない工事が出た。大型の赤字工事が1本出れば、地盤改良の利益を食う。
規模も小さい。売上は800億円ほどで、大手ゼネコンの地盤部門や専業のライト工業、日特建設と競う。民間の工事が景気で減れば、受注も落ちる。
最後に管理だ。従業員による架空発注が2025年に判明し、特別委員会の調査まで広がった。管理に穴がある会社に、高い倍率は付けにくい。工事の指名停止や評判の悪化が起きれば、構造的な負けにつながる。自己資本が厚いのに稼ぐ力が資本コストに届かないことも、倍率を押し下げる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。地盤改良の技術は本物だが、直近の利益は山で、10年の利益は今の山より低く置くのが筋だ。土木の薄さと管理の甘さも重い。確率は中立の38%を最も厚くし、やや悲観に22%、悲観に12%と慎重側へ寄せた。ただしエフィッシモの存在と地盤改良の需要の長さは無視できないため、強気側にも合計で28%を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,209 円486 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,195 円181 億円)。 今の値に割り戻すと 2,390 円362 億円、今との差 −12.6%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,785 円1,028 億円 | 1,921 円291 億円 | +218.4% | +12.3% | 696 円106 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,773 円723 億円 | 1,544 円234 億円 | +131.1% | +8.7% | 1,263 円191 億円 |
| 中立 | 38% | 3,651 円553 億円 | 1,287 円195 億円 | +80.6% | +6.1% | 1,877 円284 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,064 円161 億円 | 891 円135 億円 | −28.5% | −3.3% | 430 円65 億円 |
| 悲観 | 12% | 754 円114 億円 | 396 円60 億円 | −57.9% | −8.3% | 138 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,209 円486 億円 | 1,195 円181 億円 | +61.1% | +4.9% | 4,405 円667 億円 |
今の株価時価総額 2,734 円414 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 地盤改良が新しい標準になり、還元も厚くなる 利益 63 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 6,785 円1,028 億円
民間の再開発とデータセンターなどの基礎工事が増え、独自工法が難工事を取り込む。地盤改良の施工量は1割ほど増え、価格は物価を少し上回って上がる。営業利益率は12%を保つ。土木は採算の管理が進み5%まで改善する。ブロックは老朽化対策と洋上風力で小さく黒字になる。
エフィッシモの提案を受け、総還元性向を6割に引き上げ、自社株買いも加わる。自己資本の積み上がりが抑えられ、ROEは11%前後になる。管理の問題は再発せず、信用も回復している。大型工事の採算管理も定着し、赤字工事は例外にとどまる。売上は1,200億円を超え、営業利益は90億円規模に乗る。
- 土木:数量 41.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 449 億円・営業利益 23 億円。施工量1.00倍、価格1.34倍、営業利益率5.0%
- 地盤改良:数量 44.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 17(1人日あたり売上(万円・名目。重機・材料・外注を含む請負単価))→ 売上 729 億円・営業利益 88 億円。施工量1.15倍、価格1.38倍、営業利益率12.0%
- ブロック:数量 12.1(ブロック供給・型枠賃貸の規模(万トン換算、実質。推定))× 価格 2.68(1万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。施工量1.05倍、価格1.34倍、営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.29 倍、時価総額 1,028 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:地盤改良の高い利益率の定着と、大株主の働きかけによる還元の拡大が重なる必要がある。山の数字がそのまま続く筋書きに近く、8%にとどめる。
やや楽観 20% 地盤改良の利益率は高止まり、土木は黒字を保つ 利益 50 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 4,773 円723 億円
地盤改良は施工量が7%増え、価格は物価並みに上がる。営業利益率は11%台で、直近の山よりは下がる。独自工法の優位は続き、液状化対策の指名も保てる。土木は4.5%、ブロックは4%の小さな黒字になる。民間の工事は景気で上下するが、国土強靱化と液状化対策が下支えする。土木は大型の赤字工事を避けられるが、利益は薄いままだ。海外の地盤改良は米国の提携先との連携で少しずつ伸びる。
還元は総還元性向で5割台に上がるが、自社株買いは限られる。自己資本は少しずつ積み上がり、ROEは9%弱にとどまる。売上は1,100億円台、営業利益は70億円台である。
- 土木:数量 41.1(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 441 億円・営業利益 20 億円。施工量0.98倍、価格1.34倍、営業利益率4.5%
- 地盤改良:数量 40.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 16(1人日あたり売上(万円・名目。重機・材料・外注を含む請負単価))→ 売上 658 億円・営業利益 72 億円。施工量1.07倍、価格1.34倍、営業利益率11.0%
- ブロック:数量 11.5(ブロック供給・型枠賃貸の規模(万トン換算、実質。推定))× 価格 2.68(1万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。施工量1.00倍、価格1.34倍、営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.55 倍、時価総額 723 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:独自工法の優位は続くが、利益率は山から少し戻る。土木が黒字を保てば成り立つ筋書きで、2割に置く。
中立 38% 施工量は人手で頭打ち、利益率は山から戻る 利益 42 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,651 円553 億円
国土強靱化と液状化対策の需要は続くが、技能者の減少で施工量は横ばいからやや減る。売上の伸びは物価の分が中心になる。地盤改良の営業利益率は10.5%と、直近の山から戻る。土木は4%、ブロックは3%の薄い黒字だ。
本社費用などの共通の費用も物価で増え、営業利益は60億円ほどになる。2026年3月期の山の59億円を、名目でようやく回復する水準だ。
還元は性向5割で、今期の記念配当を除き普通配当を継続する。民間の着工は景気で上下するが、10年を通せば大きな崩れはない。ただ、自己資本は積み上がり、ROEは7%台にとどまる。
- 土木:数量 39.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 427 億円・営業利益 17 億円。施工量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率4.0%
- 地盤改良:数量 38.2(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 16(1人日あたり売上(万円・名目。重機・材料・外注を含む請負単価))→ 売上 614 億円・営業利益 65 億円。施工量1.00倍、価格1.34倍、営業利益率10.5%
- ブロック:数量 11.5(ブロック供給・型枠賃貸の規模(万トン換算、実質。推定))× 価格 2.68(1万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。施工量1.00倍、価格1.34倍、営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 553 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要は底堅いが人手で数量が伸びず、利益率は山から戻る。2つの見方の落としどころなので、最も厚く3割台後半に置く。
やや悲観 22% 民間の工事が細り、地盤改良も価格競争に 利益 22 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,064 円161 億円
民間の建設投資が景気後退で細り、再開発や工場の着工が遅れる。地盤改良の施工量は1割弱減る。競争が強まり、価格は物価に届かない。営業利益率は8%に下がる。土木は大型の採算悪化が出て2.5%、ブロックは1%だ。
売上は1,000億円を割り、営業利益は30億円台になる。還元は性向を45%に下げるが、自己資本は残り、ROEは4%まで低下する。大株主の圧力が続けば自社株買いが出る可能性は残るが、その額は織り込まない。地盤改良の独自工法も、民間の価格交渉の前では値上げが通りにくくなり、利益率は直近の半分近くまで戻る。
- 土木:数量 37.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 392 億円・営業利益 10 億円。施工量0.90倍、価格1.30倍、営業利益率2.5%
- 地盤改良:数量 35.2(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 16(1人日あたり売上(万円・名目。重機・材料・外注を含む請負単価))→ 売上 549 億円・営業利益 44 億円。施工量0.92倍、価格1.30倍、営業利益率8.0%
- ブロック:数量 10.3(ブロック供給・型枠賃貸の規模(万トン換算、実質。推定))× 価格 2.50(1万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。施工量0.90倍、価格1.25倍、営業利益率1.0%
倍率:ROE 4.0%(純利益 21.5 億円 ÷ 自己資本 537 億円)。k 7.5%。RONIC = 6.0%、g 4% から正当化 PER = 8.3 倍。ROE が k を下回り稼ぐ力が弱いので、式の 9 割の 7.5 倍に置いた。やや悲観の PBR は中立(0.78 倍)を下回る。
確率:民間の景気後退と採算の悪い工事が重なる筋書きは、この規模の会社では珍しくない。土木の薄さも考え、2割強に置く。
悲観 12% 大型の赤字工事と管理の失敗で、優良さを失う 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 754 円114 億円
大型工事で赤字が出て、管理の問題が再び表に出る。国や自治体から指名停止を受ける期間もあり、受注が落ちる。地盤改良は施工量が25%減り、価格は物価に追いつかない。営業利益率は5.5%に落ちる。土木は赤字を免れず、ブロックも赤字になる。
会社は費用を絞るが、本社の費用は物価で増える。営業利益はほぼゼロになり、配当も減らす。減損も出て、自己資本は今より少し増える程度にとどまる。もはや優良な専門工事会社とは見なされず、稼ぐ力は純利益で数億円に落ちる。ブロックの型枠賃貸も市場の悪化が続き、撤退や縮小に追い込まれる。
- 土木:数量 33.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.60(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 322 億円・営業利益 0 億円。施工量0.80倍、価格1.20倍、営業利益率0.0%
- 地盤改良:数量 28.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 14(1人日あたり売上(万円・名目。重機・材料・外注を含む請負単価))→ 売上 413 億円・営業利益 23 億円。施工量0.75倍、価格1.20倍、営業利益率5.5%
- ブロック:数量 8.0(ブロック供給・型枠賃貸の規模(万トン換算、実質。推定))× 価格 2.20(1万トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。施工量0.70倍、価格1.10倍、営業利益率-2.0%
倍率:稼ぐ力は純利益 1.7 億円を k 7.5% で割った約 21 億円にとどまる。床は売れる資産で測る。政策保有株の税後、機械・作業船・土地の売却、完成工事の未収入金の回収から、純有利子負債 50 億円を払って残る分を約 120 億円と見る。今の自己資本 381 億円に PBR 0.30 倍を掛けた。やや悲観の PBR(0.30 倍)を超えない。営業利益が小さく、EV(時価総額+純有利子負債)÷ 営業利益は意味がない。EV でも見て、純有利子負債 50 億円は床の資産で払える範囲と確かめた。
確率:大型の赤字工事、再発する不正や指名停止、民間の地盤改良の価格競争が重なる構造的な負け。この規模の会社の脆さを考え、1割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木
港の護岸・埋立などの海洋工事と、陸上の土木。売上の4割だが利益は薄い。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 41.9 | 8.00 | 335 | 3 |
| 10 年後 中立 | 39.8 | 11 | 427 | 17 |
取り方:土木の売上337億円(セグメント間取引を除いて約335億円)・利益2.8億円。労務量は開示がなく、作業船と機械が多いので1人日あたり売上を8万円とみて約42万人日と置いた。
地盤改良
砂杭や固化材で地盤を固める。独自工法を持ち、利益のほぼ全部を稼ぐ。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。重機・材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.3 | 12 | 459 | 72 |
| 10 年後 中立 | 38.2 | 16 | 614 | 65 |
取り方:地盤改良の売上461億円(外部売上は約459億円)・利益71.6億円。重機と材料の比率が高いので1人日あたり売上を12万円とみて約38万人日と置いた。開示された数量ではなく推定。
ブロック
消波ブロック・根固めブロックの供給と型枠の賃貸。規模は小さい。
| 数量ブロック供給・型枠賃貸の規模(万トン換算、実質。推定) | 価格1万トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.5 | 2.00 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 2.68 | 31 | 1 |
取り方:ブロックの売上23億円・利益0.7億円。重量の開示はなく、売上23億円を1単位2億円で割った約11.5を規模の目安にした。
リスクと懸念
大型の赤字工事が出る
売上は800億円ほどで、1本の大型工事が赤字になるだけで年の利益が大きく削られる。土木は2026年3月期、採算が見込みを下回り、営業利益は前の期の半分に落ちた。地盤改良の利益に頼る構造は、この土木の穴を隠している。
地盤改良の利益率が山から戻る
地盤改良の営業利益率は前の期の約8%から15%台に跳ね、全社の営業利益を倍近くにした。独自工法の工事が重なった年の数字で、会社は今期の営業利益を約2割減と見込む。この山を続くものと見ると、利益を過大に見積もる。
架空発注と内部管理
2025年に従業員による架空発注が判明し、特別委員会の調査に発展した。協力会社との金の流れまで及んだと報じられている。損失の額は確かめられなかった。再発防止策は出たが、効果は時間をかけて見るしかない。指名停止などに広がれば受注に響く。
民間の建設投資の減速
契約先の過半は民間の建設会社で、再開発や工場、物流施設の基礎に使われる。景気後退で着工が止まれば、地盤改良の受注は国の予算と無関係に落ちる。公共に守られた会社と同じ安定性は期待できない。
人手不足と資材高
技能者の高齢化と残業規制で、施工できる量に上限がある。資材や労務費の上昇を価格に転嫁できない工事が残れば、利益が削られる。有価証券報告書も、担い手不足と費用の高騰を主要なリスクに挙げている。
自己資本が余り続ける
自己資本比率は5割を超える。還元は性向40%程度の方針で、3年の還元は35億円と控えめだ。事業が必要とする以上にためると、ROEは資本コストを下回る。大株主の提案で変われば上振れだが、変わらなければ価値を食う。
今後の分かれ目
- エフィッシモが具体的な株主提案や自社株買いの要求を出し、会社が総還元性向を引き上げる
- 強気側へ確率を移してよい。ためた自己資本が還元に回り、ROEが資本コストに近づく。
- 地盤改良の営業利益率が2期続けて12%を超える
- 独自工法の優位が山でなく定着したと読み、強気側の確率を上げる。
- 土木で赤字工事が再び出る、または再び架空発注に類する問題が表に出る
- 慎重側へ寄せる。管理の甘さが直っていないと分かり、倍率を下げる理由になる。
- 民間の着工が減り、地盤改良の受注高が2期続けて減る
- 数量の前提が崩れるので、やや悲観の確率を上げる。
- TOBが出る、または大株主が保有を一段と増やす
- 買収価格が本質価値を超えるかを見る。持ち続ける理由が薄れる局面になりうる。
見ておくもの
- 地盤改良の営業利益率と受注高(四半期ごとの変化)
- 土木事業の採算(赤字工事の有無)
- エフィッシモの保有割合の変化と、会社への提案内容
- 特別委員会の再発防止策の実行状況
- 2027年4月から始まる次の中期経営計画の目標と還元方針
倍率と資本コストの決め方
セグメントは施工量(実質)と1人日あたり売上(名目)で積み、物価3%を価格に入れた。数量は人手の制約から横ばいから0.95倍に置いた。倍率は k 7.5%(基本7.5%に循環+0.5%)と g 4% から式で出し、今・過去・同業の市場の倍率は見ていない。中立のROEは7%台で k を下回るため、PER は式の9割にした。今の株価が倍でも半分でも動かない。純利益は営業利益の0.68倍で、過去10年の中央値0.67に合わせた。営業利益は家賃を費用に入れた今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→16.29 倍・やや楽観 PER 12.5→14.55 倍・中立 PER 10.7→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。