結論
太洋基礎工業は、名古屋を地盤に杭や地中壁、下水管の推進工事、戸建住宅の地盤改良を手がける専門工事会社だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正で、割安とまでは言えない。
時価総額は約45億円で、純現金はその8割に迫る35億円ある。数字だけを見れば、事業がほぼタダで手に入る。だが筆頭株主の個人が約28%を持ち、配当性向は2〜3割にとどまる。自社株買いの実行もない。現金は帳簿に積まれたまま、少数株主には届きにくい。
本業の稼ぐ力も強くない。過去12年の営業利益率は1〜5%台を行き来し、ROE は5%前後で資本コストに届かない。受注残が過去最高の70億円に積み上がり、値上げも通り始めたのは追い風だ。それでも、住宅の地盤改良は着工の減少をそのまま受ける。
筆者は、現金の価値を半分ほどに割り引き、事業の価値を足した所に本質価値を置く。資本の使い方が変われば、評価は大きく変わる会社でもある。自社株買いの実行や還元の目標の引き上げが、その分かれ目になる。来期には会長と社長が代わる予定で、新しい経営陣の最初の一手に注目している。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは典型的な「安いが、持ち主に価値が届かない会社」だ。
良い点ははっきりしている。地盤の専門技術は長く必要とされ、財務は鉄壁で、受注残は厚い。10年後もこの会社が存在しているかと問われれば、筆者は迷わず「ある」と答える。地盤を固め、杭を打つ仕事は、建物とインフラがある限りなくならない。
問題は、稼いだお金の行き先だ。本業が稼ぐ利益は年に4〜6億円で、その半分以上が配当されずに帳簿へ積まれる。積まれた現金は2%の利息しか生まない。資本コストの8%強を下回る使い方を続ける限り、ためた利益は株主にとって額面未満の価値になる。
安全域は、現金の厚さにある。最悪でも倒産はしない。ただ、筆頭株主の方針が変わるまで、その現金に満額の値段は払えない。経営が自社株買いや増配に踏み出せば、評価は一段上がる。筆者がこの会社で見続けたいのは、受注の数字より、還元の方針の文言だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。都市の地下で使う特殊土木と、戸建住宅の地盤改良だ。2026年1月期の売上145億円のうち、特殊土木が約48%、住宅関連が約29%を占める。
特殊土木は、ビルの基礎になる場所打ち杭や、地下を掘る前に周りを固める地中連続壁、下水管を地中で押し進める推進工事などだ。顧客はゼネコンと自治体で、名古屋圏の再開発や下水道の更新が仕事の源になる。大型の機械と熟練の職人を抱えることが、参入の壁になっている。
住宅関連は、ハウスメーカーや工務店から受ける地盤調査と地盤改良だ。1棟あたりの代金は数十万円と小さいが、件数で稼ぐ。新設住宅の着工に連動するので、人口が減る国では数量が細っていく。
残りは2021年に独立させた建築部門と、井戸・土壌汚染対策などの環境工事、太陽光の売電だ。建築は売上の約16%を占めるが、2026年1月期は営業赤字だった。会社は不動産開発への参入とベトナムでの泥土の再利用も掲げるが、まだ小さな種にとどまる。全社の従業員は221人で、大手のような分厚い設計部門は持たない。現場の施工力で勝負する会社だ。受注のおよそ半分は名古屋圏で、地元のゼネコンや自治体との長い付き合いが仕事を運んでくる。
優良さと弱いところ
強みは、地盤を扱う技術と機械、そして中部の得意先との長い付き合いだ。杭や地中壁の工事は、失敗すれば建物が傾く。実績のある会社に頼みたいという発注者の心理が、値段を支える。受注残は70億円と過去最高で、人手不足の今は選んで取れる立場にある。
弱みは、値決め力が限られることだ。仕事の多くはゼネコンの下請で、公共工事は入札になる。過去12年の営業利益率は平均で4%前後、2024年1月期と2025年1月期は1%台まで落ちた。好況でも6%に届かない構造は、筆者には軽くない。
財務は極めて堅い。自己資本比率は76%、借入はほぼない。ただ、それは稼いだ現金を使い道のないまま積み上げた結果でもある。ROE が5%前後にとどまる最大の理由は、この現金の重さにある。事業そのものの利益率も低いので、現金を返しても ROE は8%に届かない。稼ぐ力そのものを上げることが、もう一つの宿題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
基礎工事の需要は、二つの流れに分かれる。都市の再開発とインフラの更新は底堅く、戸建住宅は細る。
都市の側では、国土強靱化の中期計画が2026年度から5年間で事業規模20兆円強を投じる。下水道や橋の老朽化は待ったなしで、推進工事や地盤改良の出番は増える。名古屋ではリニア中央新幹線の駅周辺の再開発が控え、杭と地中壁の仕事が続く。
住宅の側は逆風だ。新設住宅の着工は長く減り続け、持ち家は特に落ち込みが大きい。地盤改良の件数は着工の数でほぼ決まるので、単価を上げても数量の減りは止められない。
業界全体では、2024年の残業規制以降、技能者の不足が値上げを後押ししている。上場ゼネコンの9割で粗利率が改善した。専門工事会社も、取れる仕事を選び、値段を上げる側に回り始めた。ただ、下請の立場では、ゼネコンが値上げを受け入れる範囲でしか利幅は広がらない。景気が冷えれば、価格競争に戻るのも早い。名古屋圏ではリニアの開業時期の遅れも、工事の山をずらす要因になる。10年で見れば、都市の仕事は物価並みに伸び、住宅は細る。その差し引きが、この会社の売上の形を決める。下水道の老朽化は全国で進み、推進工事の需要は長く続く。
資本政策と M&A
資本の使い方が、この会社の評価をいちばん左右する。配当は減配なしの安定配当が方針で、中期計画は DOE、つまり自己資本に対する配当の割合1.5%を目標に掲げる。2026年1月期の配当総額は約1.2億円で、純利益の約26%にとどまる。自社株買いの実行はない。
株主の顔ぶれも動きを鈍くする。筆頭の個人が約28%を持ち、瀧上工業、日本エコシステム、徳倉建設、ナガワと資本提携を結んで株を持ち合う。提携先と銀行を合わせると、安定株主は4割を超える。
会社は PBR 1倍以上を長期の目標とし、政策保有株の縮減も掲げる。株主資本コストを4.5〜5.9%と低く見積もっている点は、筆者の見方と大きく違う。だが、35億円の純現金をどう使うかの数字は示していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注の積み上がりは本物だ。2026年1月期の受注高は163億円と18%増え、繰越工事高は70億円と過去最高になった。人手不足で専門工事の値段は上がり続けており、太洋基礎工業は仕事を選べる立場にある。中期計画の営業利益7.5億円は、今の受注残から見て十分に届く。
名古屋圏は、リニアの駅周辺の再開発と下水道の更新が10年続く。杭と地中壁の機械を持つ地元の会社は限られ、取り合いになるのは発注者の方だ。下水道の更新は全国の自治体が抱える課題で、推進工事の出番も増える。営業利益率は2014年1月期に9%を出した実績があり、値上げが定着すれば6%台は無理な数字ではない。
何より、純現金35億円は時価総額の8割に迫る。会社は PBR 1倍以上を目標に掲げ、政策保有株の縮減も始めた。還元を少し厚くするだけで、株主の取り分は大きく変わる。事業の価値をほぼタダで買える値段は、下値の堅さとして十分だ。経営陣の交代も予定され、資本の使い方が変わる節目にもなりうる。現金を半分に割り引いても、なお下値は堅い。
慎重な見方
利益の質が低い。過去12年の営業利益率は1〜5%台で、好況の年でも6%に届かない。2024年1月期と2025年1月期は1%台まで落ちた。値上げが効いているのは今の局面だけで、景気が冷えればゼネコンはすぐに値下げを求める。
住宅の地盤改良は、売上の約3割を占める第2の柱だ。新設住宅の着工は長期で減り続け、件数の減少は単価の引き上げでは埋めきれない。建築部門は独立から5年たっても赤字で、元請の採算管理に慣れていない。不動産開発やベトナムは種の段階にとどまる。
そして現金は、株主のものになりにくい。筆頭株主の個人が約28%、提携先と銀行を合わせると安定株主は4割を超える。配当性向は2〜3割で、自社株買いの実行はない。中期計画の還元目標は DOE 1.5%と控えめだ。現金が厚いことは倒産しない理由にはなるが、株主の価値が上がる理由にはならない。10年たっても現金が積まれるだけなら、値段は今と変わらない。現金を差し引いた事業の価値も、利益率の低さを考えれば高くはない。
どちらに重みを置いたか
受注残と値上げの追い風は確かだが、利益率の低さと住宅の縮小、現金の使い方の弱さも同じくらい確かだ。確率は中立を中心に、強気側を3割、悲観側を3割に置いた。資本の使い方が変わる兆しは、まだ数字で示されていない。同じ領域の会社とほぼ同じ形にそろえた。中立は受注残と値上げの効果を認めつつ、利益率を過去の平均よりわずかに上に置く落としどころだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 4,789 円96 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 810 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 3,012 円60 億円、今との差 +35.2%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,650 円153 億円 | 1,050 円21 億円 | +290.5% | +14.6% | 696 円14 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,220 円124 億円 | 930 円19 億円 | +220.9% | +12.4% | 1,573 円31 億円 |
| 中立 | 40% | 5,389 円108 億円 | 830 円17 億円 | +179.1% | +10.8% | 2,487 円50 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,411 円48 億円 | 745 円15 億円 | +41.7% | +3.5% | 631 円13 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,710 円34 億円 | 400 円8 億円 | −5.3% | −0.5% | 211 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,789 円96 億円 | 810 円16 億円 | +151.3% | +9.7% | 5,599 円112 億円 |
今の株価時価総額 2,228 円45 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 都市の再開発と値上げが重なり、営業利益率が過去の山に近づく 利益 9 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 7,650 円153 億円
人手不足が専門工事の値段を押し上げる。太洋基礎工業は杭と地中壁の機械と人を持ち、名古屋圏の再開発とリニアの関連工事で選ばれる側に立つ。特殊土木の1人あたり完成工事高は名目で1.45倍に上がり、人員も機械化で1割増える。
住宅の地盤改良は着工の減少で件数が5%減るが、単価の引き上げで売上は保つ。赤字の建築は採算を選んで黒字に戻る。
売上は約200億円、営業利益は約12億円になる。今の倍近い利益で、中期計画の7.5億円を大きく超える。現金は配当で少しずつ返すが、筆頭株主の方針は変わらず、溜まる現金は残る。それでも稼ぐ力そのものが倍になれば、値段は事業の側から上がる。
- 特殊土木工事:数量 110(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 1.01(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 111 億円・営業利益 7 億円。数量 1.10倍・単価 1.45倍・営業利益率 6.5%
- 住宅関連工事:数量 5,795(施工件数(件・推定))× 価格 0.01(1件あたり工事代金(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。数量 0.95倍・単価 1.38倍・営業利益率 4.5%
- 建築:数量 24.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 1.58(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。数量 1.20倍・単価 1.38倍・営業利益率 3.0%
- 環境・その他:数量 19.2(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.86(1人あたり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量 1.20倍・単価 1.40倍・営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)18 億円。全体の PER 14.85 倍、時価総額 153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:名古屋圏の再開発、下水道の更新、人手不足による値上げの三つが同時に進む筋書き。2014年1月期に営業利益率9%を出した実績はあるが、その後12年で一度も6%に届いていない。同じ領域の強気(8〜10%)に合わせた。
やや楽観 22% 中期計画どおり利益が戻り、値上げが定着する 利益 8 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,220 円124 億円
特殊土木は値上げが定着し、1人あたり完成工事高は名目1.40倍になる。人員は採用と機械化で5%増える。
住宅の地盤改良は着工の減少で件数が1割減るが、単価は物価並みに上がる。建築は小さな黒字に戻る。
売上は約180億円、営業利益は約10億円で、中期計画の水準を10年かけて上回る。ROE は6%台に上がるが、資本コストには届かない。還元は配当が中心で、現金は厚いまま残る。それでも受注の積み上がりと値上げが、利益の底を一段引き上げる。名古屋圏の再開発が続くことが、この筋書きの前提になる。会社の中期計画をなぞる形で、無理のない上振れだ。
- 特殊土木工事:数量 105(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.98(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 102 億円・営業利益 6 億円。数量 1.05倍・単価 1.40倍・営業利益率 5.8%
- 住宅関連工事:数量 5,490(施工件数(件・推定))× 価格 0.01(1件あたり工事代金(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90倍・単価 1.36倍・営業利益率 4.0%
- 建築:数量 22.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 1.56(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10倍・単価 1.36倍・営業利益率 2.0%
- 環境・その他:数量 17.6(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.84(1人あたり売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10倍・単価 1.36倍・営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)18 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年1月期は受注が18%増え、繰越工事高は70億円と過去最高に積み上がった。中期計画の営業利益7.5億円は届く範囲にある。値上げが続き、利益率が5%前後に戻る形を強気側の中心に置いた。
中立 40% 値上げで売上は物価並みに伸びるが、利益率は過去の平均にとどまる 利益 6 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 5,389 円108 億円
特殊土木の人員は横ばいで、1人あたり完成工事高は値上げで名目1.38倍になる。営業利益率は5.0%と、過去12年の平均よりやや上にとどまる。
住宅の地盤改良は、新設住宅着工の減少で件数が15%減る。単価は物価並みに上がり、売上はほぼ今の水準を保つ。建築は赤字を脱するが、利益は薄い。
売上は約190億円、営業利益は約8億円になる。純利益は6億円台で、厚い現金の利息も少し効く。ROE は5%台で、資本コストを下回り続ける。筆頭株主の方針が変わらない限り、現金は帳簿に残る。事業は堅実に続くが、株主の取り分は大きく増えない。
- 特殊土木工事:数量 100(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.96(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00倍・単価 1.38倍・営業利益率 5.0%
- 住宅関連工事:数量 5,185(施工件数(件・推定))× 価格 0.01(1件あたり工事代金(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85倍・単価 1.34倍・営業利益率 3.5%
- 建築:数量 20.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 1.53(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 1.5%
- 環境・その他:数量 16.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.83(1人あたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)18 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残の厚さと値上げの定着は確かだが、過去12年の営業利益率は1〜5%台を行き来し、住宅の件数は減り続ける。双方の言い分が釣り合う所を中心にした。同じ領域の中立(38〜40%)とそろえた。
やや悲観 20% 住宅の件数が細り、値上げも続かず利益が今を下回る 利益 4 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 2,411 円48 億円
新設住宅の着工が想定より早く減り、地盤改良の件数は25%減る。値上げは物価に届かず、単価は名目1.25倍にとどまる。
特殊土木も再開発の一巡で人員が8%減り、営業利益率は3.5%まで下がる。建築は損益ゼロが精一杯だ。
売上は約150億円、営業利益は約4億円で、2026年1月期を下回る。配当は DOE の方針で保つが、現金の一部は赤字の穴埋めと機械の更新に回る。ROE は3%台に沈み、帳簿の自己資本は価値の目安として役に立たなくなる。買い手が現れない限り、値段は稼ぐ力の側まで下がる。厚い現金が、かろうじて下値を支える。
- 特殊土木工事:数量 92.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.89(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 82 億円・営業利益 3 億円。数量 0.92倍・単価 1.28倍・営業利益率 3.5%
- 住宅関連工事:数量 4,575(施工件数(件・推定))× 価格 0.01(1件あたり工事代金(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。数量 0.75倍・単価 1.25倍・営業利益率 2.0%
- 建築:数量 18.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 1.43(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90倍・単価 1.25倍・営業利益率 0.0%
- 環境・その他:数量 16.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.77(1人あたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00倍・単価 1.25倍・営業利益率 6.0%
倍率:「ROE 3.5% は k 7% を下回り、ためた利益は額面未満の価値。PER の上限は 1÷k の 12.1 倍で、利益が細る筋書きなので、上限の約60%の7.3倍に置いた。」
確率:2024年1月期と2025年1月期には営業利益率が1%台まで落ちた。住宅の地盤改良は着工の減少をそのまま受ける。ゼネコンの下請が多く、値上げ疲れで価格競争に戻る展開を、同じ領域の悲観側と同じ程度に置いた。
悲観 10% 住宅と再開発がともに縮み、利益がほぼ消える 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,710 円34 億円
人口減で戸建の着工が細り、住宅の地盤改良は件数が4割減る。都市の再開発も金利の上昇で止まり、特殊土木の人員は25%減る。値上げは通らず、単価は名目1.1倍にとどまる。
建築は赤字が続き、撤退の判断が遅れる。機械の更新を先送りし、熟練の職人も他社へ流れる。売上は約110億円、営業利益はわずかな赤字になる。
純現金は厚く、倒産には至らない。ただ利益が無い会社の現金は、筆頭株主の方針の下で少数株主には届かない。価値は帳簿の自己資本でなく、売れる資産の床まで下がる。配当も細る。10年で配当の合計は8億円ほどにとどまる。
- 特殊土木工事:数量 75.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.77(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。数量 0.75倍・単価 1.10倍・営業利益率 1.0%
- 住宅関連工事:数量 3,660(施工件数(件・推定))× 価格 0.01(1件あたり工事代金(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60倍・単価 1.05倍・営業利益率 -1.0%
- 建築:数量 12.0(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 1.15(1人あたり完成工事高(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60倍・単価 1.00倍・営業利益率 -3.0%
- 環境・その他:数量 12.8(施工にあたる人員(人・推定))× 価格 0.65(1人あたり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80倍・単価 1.05倍・営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力はほぼ無い。売れる資産の床(floor_assets_oku)をそのまま時価総額に置き、今の自己資本95億円に対する PBR は約0.36倍。帳簿の自己資本は、利益の無い会社では床にならない。
確率:1758は1964年創業で、過去に赤字は2008年1月期の1回だけと少ない。純現金が時価総額の8割近くあり、倒産の筋は薄い。ただ住宅と都市の工事が同時に縮む展開は否定できず、同じ領域の悲観(8〜10%)に合わせた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
特殊土木工事
杭・地中連続壁・地盤改良・推進(下水管の埋設)など、都市の地下と基礎の専門工事。ゼネコンの下請と官公庁の元請が混じる。
| 数量施工にあたる人員(人・推定) | 価格1人あたり完成工事高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 100 | 0.70 | 70 | 3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.96 | 96 | 5 |
取り方:売上69.65億円を、特殊土木の人員約100人(従業員221人から全社30人を除き、売上の比で割り振った推定)で割った。下請への外注費を含む請負金額。
住宅関連工事
戸建住宅の地盤調査と地盤改良(柱状改良・小口径鋼管杭)。ハウスメーカーと工務店が顧客。
| 数量施工件数(件・推定) | 価格1件あたり工事代金(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 6,100 | 0.01 | 43 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5,185 | 0.01 | 49 | 2 |
取り方:売上42.67億円を、1件あたり約70万円(柱状改良の一般的な単価)で割った約6,100件の推定。開示された件数ではない。
建築
2021年に独立させた建築部門。工場・倉庫・共同住宅などの元請工事。
| 数量施工にあたる人員(人・推定) | 価格1人あたり完成工事高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 20.0 | 1.15 | 23 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 1.53 | 31 | 0 |
取り方:売上22.91億円を、建築部門の人員約20人(推定)で割った。営業損益は0.37億円の赤字。
環境・その他
井戸・土壌汚染対策などの環境工事に、機械の製造販売と太陽光の売電を合わせた。
| 数量施工にあたる人員(人・推定) | 価格1人あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 16.0 | 0.62 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 0.83 | 13 | 1 |
取り方:環境9.39億円・機械0.07億円・再エネ0.42億円の計9.88億円を、人員約16人(推定)で割った。
リスクと懸念
住宅着工の減少
住宅関連は売上の約3割を占め、件数は新設の戸建着工にほぼ連動する。着工は長く減り続け、単価を上げても数量の減りは埋めきれない。ハウスメーカーが地盤改良を内製化したり、安い業者に切り替えたりすれば、件数と単価が同時に下がる。
ゼネコンへの依存と値下げ要求
特殊土木の多くはゼネコンからの下請だ。好況の今は値上げが通るが、景気が冷えればゼネコンは真っ先に専門工事の値段を削る。過去12年の営業利益率が1〜5%台にとどまったのは、この立場の弱さの表れだ。
現金が株主に戻らない
純現金35億円は時価総額の8割に迫るが、配当性向は2〜3割で自社株買いの実行はない。筆頭株主の個人が約28%を持ち、提携先との持ち合いも厚い。現金が利息2%で眠り続ければ、ROE は資本コストを下回り続ける。
建築部門の赤字
2021年に独立させた建築部門は、2026年1月期も営業赤字だった。元請の建築は資材と労務の値上がりを抱え込みやすい。撤退の判断が遅れれば、本業の利益を食い続ける。
施工事故と人手不足
杭や地中壁の工事は、一度の事故や品質の問題で採算が大きく崩れ、信用も失う。熟練の職人の高齢化は進み、技術の伝承が遅れれば、機械を持っていても工事をこなせなくなる。
今後の分かれ目
- 自社株買いの実行や配当方針の引き上げ(総還元性向の目標など)が発表される
- 眠っていた現金が株主に戻り始める合図だ。戻り方の割引が小さくなり、評価は一段上がる。
- 2028年1月期に営業利益7.5億円の中期計画を達成する
- 値上げの定着が数字で確かめられる。やや強気の筋書きに寄る。
- 営業利益率が再び2%を割る
- 値上げが一巡し、価格競争に戻った合図だ。やや悲観の筋書きに寄る。
- 建築部門の縮小や撤退が決まる
- 赤字の穴がふさがり、利益率が上がる。資本の使い方を見直す姿勢の表れとしても前向きだ。
- 筆頭株主の持株が動く、または提携先との持ち合いが解消される
- 株主の顔ぶれが変わり、還元や再編の可能性が開く。買収の対象になる道も出てくる。
見ておくもの
- 受注高と繰越工事高
- 住宅関連の売上(新設住宅着工との比較)
- 営業利益率(5%を保てるか)
- 自社株買いと配当方針の変更
- 建築部門の損益
- 政策保有株の売却額
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに人員・件数と単価から利益を積み、倍率は式で置いた。ROE が k を下回るので PER の上限は1÷k、中立はその約75%で、同じ領域のテノックスや日本基礎技術と同じ割合にそろえた。今の PBR 0.47倍・PER 10倍前後には寄せていない。余った現金24億円は、運転資金として約12億円を残した額で、戻り方0.5を掛けて足した。持ち合い株の価値は、配当を利益に残すので足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→14.85 倍・やや楽観 PER 9.9→14.29 倍・中立 PER 9.1→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本7.5% + quality 0.75% = 8.25%。同じ領域のテノックス・日本基礎技術(8.0%)より、住宅の比率が高く建築が赤字の分を0.25%重くした。現金が株主に戻らない点は k に足さず、戻り方0.5で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。