結論
日本電技は、ビルの空調を自動で制御する装置を取り付け、調整する専業の工事会社だ。温度や風量をセンサーで測って機器を動かす仕組みを、設計から保守まで手がける。2026 年 3 月期は売上・利益・受注がいずれも過去最高だった。
筆者の結論は、今の値段は大きく割高というものだ。会社の質は高い。ただ営業利益率は 25% 台まで上がり、10 年前の 2 倍以上になった。社長自身が「上限に近い」と話している。この高さが 10 年続くとは置きにくい。
稼ぎの源は、ビルの更新だ。制御装置は入れ替えのたびに、設備を知り尽くした工事会社が選ばれやすい。足元の増益も、古いビルの大型改修が引っ張った。堀、つまり他社がまねできない強みは、この改修と保守の囲い込みにある。
財務は強い。実質的に無借金で、自己資本比率は 76% ある。還元は配当性向 40% 以上か DOE 7% 以上の累進配当で、株主に厚い。
弱みは、人手と単一メーカーへの寄りかかりだ。工事量は技術者の数で決まり、売上は人員の増え方を超えて伸ばせない。また、制御機器の大手アズビルの特約店という立場は、メーカー次第で条件が変わりうる。
中立の筋書きは、利益率が 18% 台へ戻る姿だ。そのとき会社は「特別に儲かる会社」から「改修と保守を握る、強い専業会社」へ評価が移る。会社の質を高く見ることと、今の値段を高いと見ることは、両立する。
バリュー投資の観点から
事業の本質は、ビルの制御を握る専業の工事だ。ビルが建っているかぎり制御は必要で、入れ替えのたびに仕事が来る。設備投資が小さく、稼いだ利益を返せる。この点は、バリュー投資の観点では好ましい。
一方で、10 年先の姿は読み切れない。メーカーの意向、人手、同業の動きで、取り分は変わりうる。「ここは 10 年後も今の倍の利益率を保つ」と言い切れる事業ではない。
ここ 3 年で、営業利益は 2 倍以上になった。この変化のうち、半分は本物の改善で、半分は改修の山という追い風だと筆者は見る。受注の選別は本物だが、同業が人を増やせば、取り合いは戻る。
経営の質は、数字では堅実だ。利益率が山に近いと自分で語る姿勢は、むやみに強気を煽らない。ただ、成長投資の枠が大きく、買収が価値を壊す危険は残る。資本配分は、成果が出るまで判断を保留する。
払う値段については、最も楽観の筋書きでも、10 年の年率は 7% 弱で資本コストに届かない。筆者が持ち続けたい会社の条件は満たすが、今の値段には安全域がない。会社が悪いのではなく、値段が先に走りすぎている。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は、ビルの空調計装だ。空調計装とは、空調設備に温度や湿度のセンサーと制御盤を付け、自動で最適に動かす工事のことをいう。売上の約 9 割を占める。
工事は 2 つに分かれる。新しいビルに入れる新設工事と、すでにあるビルの装置を入れ替える既設工事だ。2026 年 3 月期は既設が約 270 億円、新設が約 140 億円だった。既設は大型改修を中心に 2 割ほど伸びた。新設は逆に減っている。
顧客は、ゼネコンや大手の空調工事会社、そしてビルの持ち主やテナントだ。制御機器は、同社が最大手の特約店を務めるアズビルの製品が中心になる。特約店とは、メーカーの製品を仕入れて工事と一緒に売る販売会社のことだ。
もう 1 つの事業は、産業向けの制御工事だ。工場やプラントの設備を自動で動かす仕組みを手がけ、売上は約 47 億円だった。こちらは利益が約 2 倍になったが、規模は小さい。
工事の売上は、受注から完成まで時間がかかる。だから受注高は先行指標になる。2026 年 3 月期の受注は約 540 億円と過去最高で、繰越高は約 335 億円ある。会社は施工の余力を見ながら受注しているため、受注が売上の上限を決めるのではなく、人員が上限を決める。
従業員は単体で 954 名。2030 年度末に 1,100 名へ増やす計画だ。人を増やせた分だけ、売上は伸びる。会社は人材を最大のボトルネックと位置づけている。
工場や店舗は持たず、必要なのは人と技術だ。設備投資が小さいので、稼いだ利益を株主に返しやすい。
優良さと弱いところ
堀は、既設ビルの囲い込みにある。制御の仕組みは、ビルの配管や機器と一体で動く。入れ替えの時期が来ると、中身を知っている工事会社が有利になる。保守で関係が続くので、改修の話が早く入る。
工事の粗利率は 47% に達した。値段を自分で決めやすい仕事に、受注を絞ってきた結果である。売上の大半を握る空調計装でこの水準なのは、別格だ。
規模は小さいが、専業の強みがある。空調計装の市場は 1,700 億円前後とされ、日本電技の売上はその 2 割強に当たると推定する。制御機器大手の特約店として最大手に位置し、業界の草分けでもある。
資本効率も高い。ROE は 10 年の中央値で 11% 台、直近は 18% になった。無借金に近く、利益の多くを返しているのに、自己資本は 10 年で 3 倍に増えた。
経営の姿勢にも触れておく。会社は中期計画の目標を、実績が先に超えたため引き上げてきた。計画を低めに置く癖は、あるのだろう。一方で、社長が利益率を「上限に近い」と自分で語る点は、筆者は好ましいと見る。
弱い点は 3 つある。工事量が人員で決まること。アズビルという 1 つのメーカーに寄る立場であること。そして、今の利益率が過去に比べて異例に高いことだ。筆者がいちばん気にしているのは、3 つ目である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の空調計装は、需要が人口では増えない成熟市場だ。ただ、需要の質が変わった。
1 つは改修だ。1990 年代までに建った大型ビルの制御装置が、入れ替えの時期を迎えている。省エネ規制と電気代の上昇で、制御を新しくして電気代を下げる改修は、持ち主にとって回収しやすい投資になる。この需要は新築ほど景気で振れない。
もう 1 つは、都心の再開発とデータセンターだ。大型の新築は首都圏に偏る。データセンターは空調の量も難度も大きく、制御の工事も増える。ただ、投資が国内に十分来るかは、海外との立地競争次第だ。
同業は、制御機器メーカー自身の直営部門、外資系の制御会社、大手空調サブコンの制御部門などだ。市場が 1,700 億円前後と小さいので、1 社の動きで競争の様子が変わりやすい。いまは各社とも工事の採算が上がっているが、需要が落ち着けば受注の取り合いが戻る。
人手は最大の制約だ。技能者の高齢化で、協力会社の世代交代も課題になる。工事量は、人を集めて育てる力で決まる。これは同業も同じなので、人を増やせる会社が受注の選別で有利になる。
もう 1 つの課題は、建設業法の改正と取適法への対応だ。協力会社への支払いと条件が重くなれば、費用がかさむ。会社も今期の利益率の低下に、この影響を織り込んでいる。
物価の上昇は、価格に転嫁されやすい。人件費も材料費も上がるが、制御工事は付加価値が高いので、値上げが通りやすい。ただ、値上げ疲れが出れば、受注の選別が崩れる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 40% 以上か DOE 7% 以上を基準にした累進配当だ。2026 年 5 月にこの基準へ引き上げた。累進配当とは、減らさず増やし続ける約束のことだ。自社株買いは機動的に行うとする。2026 年 4 月には 1 株を 4 株に分ける分割も行った。
中期経営計画(2024〜2027 年度)の目標は、先に実績が超えたため大きく引き上げられた。2027 年度は売上 520 億円・営業利益 130 億円・ROE 15% 以上だ。長期の指針は、2030 年度に売上 600 億円・営業利益 150 億円になる。
資金の使い方は、2030 年度までに成長投資 380〜430 億円、株主還元 200〜250 億円とする。成長投資は M&A、新習志野の複合施設、デジタル、人への投資に向ける。2030 年度の目標は M&A を含まないので、買収が成功すれば上積みになる。
筆者が気にするのは、成長投資の枠の大きさだ。会社の今の純現金は約 136 億円しかない。枠の 380 億円超は、数年分の稼ぎをほぼ使い切る額になる。小さな専業会社が、買収で価値を壊した例は多い。ここは、成果が見えるまで厳しく見る。
株主は、従業員持ち株会と個人が上位に並ぶ。政策保有株の縮減方針や、親会社による支配は確認できなかった。TOB の対象になりうる規模でもあるが、特定の買い手の話は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本電技の利益率は、一時の追い風だけで上がったわけではない。会社が人員の余力に合わせて、採算の良い案件だけを受注してきた結果だ。この選別は、人手不足が続くかぎり同業にも続き、値引きの競争を和らげる。
需要の質も変わった。古いビルの制御装置は、入れ替えの時期に来ている。電気代を下げる改修は、持ち主にとって投資の回収が早い。新築の波と違い、改修は途切れにくい。
首都圏の再開発とデータセンターは、制御の工事を増やす。数がそろわなくても、1 件ごとの難度が高く、値段を取りやすい。
財務は実質的に無借金で、自己資本比率は 76% ある。配当性向 40% 以上か DOE 7% 以上の累進配当が決まり、自社株買いも使える。成長投資の枠が大きいことは、M&A で人材と顧客を取り込める余地でもある。
会社は利益目標を、実績が先に超えるたびに引き上げてきた。2030 年度の売上 600 億円・営業利益 150 億円は、さらに上の目標だ。人員は 954 名から 1,100 名へ増やす計画で、増えた人員が売上を押し上げる。
慎重な見方
2023 年 3 月期までの 9 年間、営業利益率は 9〜14% の範囲だった。今の 25% は、その倍近い。空調サブコンの大手が 10% 前後であることを考えると、特約店の工事会社がこの水準を保ち続けると置くのは、無理がある。
社長自身が、利益率は上限に近いと話している。来期の予想も、売上は 1 割増えるのに、営業利益は 6% の増加にとどまる。足元の増益は、利益率の高い大型の改修案件が完成した分で、これは繰り返さない。
立場の弱さもある。制御機器の主要メーカーであるアズビルの特約店という位置は、メーカーが直営を増やせば、取り分を削られる。市場は 1,700 億円前後と小さく、1 社の動きで競争が変わる。
人手の制約は、売上の上限になる。人員を増やすために採用を急げば、費用が先に出て利益率が下がる。協力会社の支払いの条件も、取適法で重くなる。
成長投資の枠は 380〜430 億円と、今の純現金の 3 倍にあたる。経営の手腕が試される買収で、価値を壊す危険がある。利益が倍になった直後の会社は、平常に戻る力の方が強い。
どちらに重みを置いたか
会社の質と財務は強気の見方が優勢だが、利益率が 10 年続く点は慎重な見方に分がある。筆者は、中立の筋書きを、利益率が 25% から 18% 台へ戻る姿に置いた。
確率は、慎重な側に厚く寄せた。強気の筋書きは 7%、やや強気は 20%、中立は 35% だ。残りの 38% を、やや悲観の 26% と悲観の 12% に分けた。異例の高さの利益率が 10 年続く可能性より、平常に戻る可能性の方が高いと見るからだ。
会社の質を高く評価することと、今の値段を高いと見ることは、矛盾しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,171 円1,384 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 768 円490 億円)。 今の値に割り戻すと 1,589 円1,013 億円、今との差 −21.9%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,234 円2,699 億円 | 1,045 円666 億円 | +159.7% | +10.0% | 370 円236 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,360 円2,142 億円 | 886 円565 億円 | +108.9% | +7.6% | 849 円541 億円 |
| 中立 | 35% | 2,592 円1,652 億円 | 764 円487 億円 | +65.1% | +5.1% | 1,175 円749 億円 |
| やや悲観 | 26% | 969 円618 億円 | 679 円433 億円 | −18.9% | −2.1% | 429 円273 億円 |
| 悲観 | 12% | 361 円230 億円 | 617 円393 億円 | −51.9% | −7.1% | 117 円75 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,171 円1,384 億円 | 768 円490 億円 | +44.6% | +3.8% | 2,940 円1,874 億円 |
今の株価時価総額 2,033 円1,296 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% データセンターと改修が続き、高い利益率も保つ 利益 146 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 4,234 円2,699 億円
都心の再開発とデータセンターの建設が続き、古いビルの制御装置の入れ替えも途切れない。日本電技は施工に携わる人員を計画どおり増やし、協力会社との関係も保つ。受注の時点で採算を選ぶやり方が定着し、利益率は 24% 前後のまま 10 年続く。産業向けの制御工事も伸び、M&A で人材と顧客を取り込んで工事量が積み上がる。会社の長期目標の 2030 年度(売上 600 億円・営業利益 150 億円)を、そのまま延ばした姿に近い。値上げは物価並みかやや上で通り、人件費の上昇も転嫁できる。ビルの制御は、入れ替えのたびに設備を知り尽くした工事会社が選ばれやすい。この囲い込みが続く、理想に近い 10 年である。
- 空調計装(ビルの空調の自動制御):数量 1,495(施工量(人年。自社と協力会社の技術者の稼働を、今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.50(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 748 億円・営業利益 187 億円。施工量 1,495(今の 1.30 倍)× 0.5004 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 25.0%
- 産業システム・その他:数量 225(施工量(人年・実質))× 価格 0.49(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 16 億円。施工量 225(今の 1.50 倍)× 0.4946 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 146 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.55 倍、時価総額 2,699 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手の壁を越えて施工量を伸ばし、利益率が 24% 前後のまま 10 年続く必要がある。社長自身が「上限に近い」と話しており、同業の水準の倍を保つ筋書きは起きにくい。確率は小さく置いた。
やや楽観 20% 既設改修に支えられ、利益率は少し下がるだけ 利益 118 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 3,360 円2,142 億円
既設ビルの大型改修が毎年続き、新築の波が弱まっても受注残が切れない。施工余力が限られるため、会社は収益性の高い案件から取る。利益率は今の 25% からやや下がり、21% 台で落ち着く。人員は計画の 1,100 名に近づき、協力会社の世代交代も大きな混乱なく進む。産業向けの制御工事は着実に伸びる。小さな M&A はあっても、本業の稼ぎを壊すほどの規模にはならない。還元は配当性向 40% 以上と DOE 7% の基準どおりで、自社株買いも時々加わる。大きく外れない、会社の計画に近い道だが、利益率の高さが 10 年続くという前提は残る。
- 空調計装(ビルの空調の自動制御):数量 1,380(施工量(人年。自社と協力会社の技術者の稼働を、今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.49(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 676 億円・営業利益 152 億円。施工量 1,380(今の 1.20 倍)× 0.4896 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 22.5%
- 産業システム・その他:数量 195(施工量(人年・実質))× 価格 0.48(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 12 億円。施工量 195(今の 1.30 倍)× 0.484 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.8 倍、時価総額 2,097 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:既設の改修が長く続き、受注時の採算選別が定着する想定。人員を計画どおり増やせることも条件になる。実現すれば自然な上振れだが、利益率が過去の 2 倍近いままなのは重い仮定で、同業の置き方より薄めにした。
中立 35% 利益率は 18% 台へ戻る、堅い専業会社 利益 93 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 2,592 円1,652 億円
既設ビルの更新と省エネ改修が主役になり、新築は都心の再開発に偏る。施工量は人員の増加の範囲で 1 割ほど伸び、価格は物価並みに上がる。一方で、利益率は 25% 台から 18% 台へ戻る。会社が収益性の高い案件に絞れた時期は、同業も人員を増やしてくる。大型の新設案件も、利益率が低くても引き受ける場面が増える。社長が「上限に近い」と話すとおり、今が山だと見る。ここで稼ぐ力が壊れるわけではない。改修と保守を握る専業として、同業の倍の水準を保つ、地味で強い会社に落ち着く。配当は純利益とともに増え、自己資本の伸びは緩やかだ。ROE は 11% 近くに下がる。
- 空調計装(ビルの空調の自動制御):数量 1,288(施工量(人年。自社と協力会社の技術者の稼働を、今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.48(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 617 億円・営業利益 120 億円。施工量 1,288(今の 1.12 倍)× 0.4789 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 19.5%
- 産業システム・その他:数量 165(施工量(人年・実質))× 価格 0.47(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 9 億円。施工量 165(今の 1.10 倍)× 0.4734 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 93 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.88 倍、時価総額 1,570 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中心の筋書き。改修需要は底堅く、価格転嫁は進むが、利益率は過去の 10% 台と今の 25% の間まで戻る。会社の強みは残り、超過利益だけが薄れる姿を最も起きやすいと見る。
やや悲観 26% 取り合いが戻り、利益率は 14% 近くまで下がる 利益 60 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 969 円618 億円
好況の間に同業の大手サブコンやメーカー系の部門が制御工事の人員を増やし、受注の取り合いが戻る。ゼネコンも工事費を抑えにかかり、取適法の対応で協力会社への支払いも重くなる。利益率は 14% 近くまで下がるが、これは 10 年前より高い。施工量は人手の制約で伸びず、価格の上昇が売上を押し上げる。堀が崩れたわけではなく、特約店としての立場も続くが、「特別に儲かる会社」という評価は外れる。M&A に使った資金の一部は期待ほどの収益にならない。還元は利益に連れて細り、ROE は 8% 台に落ちて資本コストに届かなくなる。
- 空調計装(ビルの空調の自動制御):数量 1,150(施工量(人年。自社と協力会社の技術者の稼働を、今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.46(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 534 億円・営業利益 77 億円。施工量 1,150(今の 1.00 倍)× 0.4646 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 14.5%
- 産業システム・その他:数量 150(施工量(人年・実質))× 価格 0.46(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 6 億円。施工量 150(今の 1.00 倍)× 0.4593 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:ROE 8.0%(純利益 60 億円 ÷ 自己資本 758 億円)。事業の ROE が資本コスト k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。利益率が 14% 近くまで戻り、ROE は k にわずかに届かない。上限の 7 割 6 分にあたる 9.0 倍に置いた。
確率:同業の空調サブコンより利益率の水準が 2 倍も高く、戻る力が強く働く。人手不足下でも取れる案件を選べなくなれば、20% を割る方向は自然。強気側の主張が重くないため、慎重な側に厚く置いた。
悲観 12% 値決めの力を失い、普通の下請けになる 利益 28 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 361 円230 億円
制御機器を作るメーカーが、保守や改修を自社で直接受ける割合を増やす。特約店は取り分を削られ、同業との値引きも重なる。会社の 10 年後の姿は、価格競争の中で人員を抱える普通の設備工事会社だ。利益率は 7% 台まで下がり、かつての高い資本効率は消える。M&A に 400 億円規模を投じて収益が出なければ、自己資本の質も傷む。新設案件は採算を落としても取り、既設の改修は価格競争になる。それでも無借金に近く、配当は保つので、会社が傷むことはない。ただ、自社株買いは止まり、ROE は 4% 台まで落ちる。評価は、景気と同業の動きに左右される普通の下請けへ変わる。
- 空調計装(ビルの空調の自動制御):数量 1,035(施工量(人年。自社と協力会社の技術者の稼働を、今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.44(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 451 億円・営業利益 36 億円。施工量 1,035(今の 0.90 倍)× 0.436 億円(今の 1.22 倍)、営業利益率 8.0%
- 産業システム・その他:数量 135(施工量(人年・実質))× 価格 0.43(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。施工量 135(今の 0.90 倍)× 0.431 億円(今の 1.22 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:利益率が 7% 台に落ち、稼ぐ力は純利益 28 億円まで細る。ROE が k 7.5% 以下なので上限は 1÷k = 11.8 倍。悲観は、やや悲観よりさらに構造的に負けた姿なので、倍率をやや悲観(9.0 倍)より高くせず、その 9 割の 8.1 倍に置いた。時価総額 230 億円(全体の PER に直して 8.1 倍)。
確率:メーカーの直営化や、大手サブコン・外資の制御部門との値下げ競争で、特約店としての値決めが崩れる構造的な負け筋。単一メーカーに系列する専業で、事業が小さいぶん崩れ方も深くなりうる。同業と同じ 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
空調計装(ビルの空調の自動制御)
ビル空調を自動で制御する装置の設計・取り付け・調整・保守。売上の約 9 割。新設と、入れ替えの既設に分かれる。
| 数量施工量(人年。自社と協力会社の技術者の稼働を、今の値段で測った実質の工事量) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,150 | 0.36 | 411 | 112 |
| 10 年後 中立 | 1,288 | 0.48 | 617 | 120 |
取り方:空調計装の売上は 411 億円(開示)。開示のセグメント利益は約 165 億円で全社の営業利益 118 億円を上回るため、全社の共通費を配分したあとの利益として、利益率 27% = 112 億円と置いた(産業・その他と合わせて 118 億円)。単体 954 名と協力会社の稼働を合わせた実質の施工量を約 1,150 人年と推定し、1 人年あたり約 3,600 万円とした。物価の分は価格に入れる。
産業システム・その他
工場やプラントの制御工事と、制御機器の販売、その他。売上の約 1 割。
| 数量施工量(人年・実質) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.35 | 53 | 6 |
| 10 年後 中立 | 165 | 0.47 | 78 | 9 |
取り方:産業システム 47 億円(開示)に、残りの約 6 億円の売上を足して 53 億円とした。利益は、セグメント利益 8.7 億円から共通費を配分して 6 億円(利益率 11%)と置いた。施工量は規模から約 150 人年と推定。
リスクと懸念
利益率が平常に戻る
営業利益率は 25% 台と、2023 年 3 月期までの 9〜14% を大きく超えている。同業が人員を増やして取り合いが戻れば、売上が伸びても利益は伸びない。いちばん大きな不確実性だ。社長自身が上限に近いと話しており、戻る方向の力は常にある。利益の 3 割が薄れるだけで、本質価値の見方は大きく変わる。
単一メーカーへの寄りかかり
制御機器は、最大手の特約店を務めるアズビルの製品が中心だ。メーカーが保守や改修を直営で受ける割合を増やせば、特約店の取り分は削られる。条件の変更ひとつで、利益率が数ポイント動きうる。特約店契約の中身は開示されないので、外から見て読みにくい点でもある。
人手不足で工事量が増えない
工事量は、技術者と協力会社の数で決まる。単体の従業員は 954 名で、2030 年度末に 1,100 名へ増やす計画だが、採用が計画を下回れば受注があっても施工できない。協力会社の世代交代も進み、人件費の上昇を価格に転嫁できなければ利益を削る。
成長投資・M&A で価値を壊す
2030 年度までの成長投資枠は 380〜430 億円で、今の純現金(約 136 億円)の 3 倍にあたる。M&A は 2030 年度目標に含まれておらず、買収の目的や基準も開示されていない。高い価格で買えば、利益率の薄い会社を抱え込み、ROE を落とす。成果が見えるまで厳しく見る。
新設工事の減少と大型案件の採算
2026 年 3 月期は、新設工事の売上が 15% 減った。今期は利益率の低い大型の新設案件も予定されており、利益率は 25.5% から 24.3% へ下がる見通しだ。新築が弱い時に、工事量を保つために採算の低い案件を受ける場面が増えると、利益率の戻りが早まる。
取適法・建設業法の対応費用
協力会社への支払いと取引条件の規制が強まっている。協力会社の手取りを守る方向は、人手を確保するうえでは正しいが、費用は元請けに乗る。会社も今期予想にこの影響を織り込んでいる。想定より重くなれば、利益率を押し下げる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 23% を下回ったら
- やや悲観の筋書きへ確率を寄せる。受注の選別が効かなくなり、同業との取り合いが始まった兆しとみる。
- 営業利益率が 25% 前後を 3 期以上保ち、受注の質も変わらなかったら
- 強気側の確率を上げてよい。ただし、同業の利益率も同じ水準に上がるかを確かめる。
- 大型の M&A を発表し、買収額が 100 億円を超えたら
- 買収先の利益率と買収の目的を見て、成長か価値の毀損かを分ける。利益率が低い会社なら、悲観側に寄せる。
- アズビルが保守・改修の直営化を強めたら
- 悲観の筋書きが近い。特約店の取り分が構造的に削られるので、確率を大きく動かす。
- 受注高が 2 期連続で売上を下回ったら
- 繰越が薄くなり、利益率の戻りが早まる。やや悲観に確率を寄せる。
- 従業員数が計画の 1,100 名を上回るペースで増えたら
- 工事量の筋書きを引き上げる。人手の壁を越える道ができたとみる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高・繰越高と、既設・新設の比率
- 営業利益率(24〜25% を保てるか)
- 従業員数と協力会社の確保(1,100 名計画の進み)
- M&A の発表と成長投資枠の使い方
- アズビルとの特約店契約・直営の動き
倍率と資本コストの決め方
売上は『施工量 × 1 人年あたり完成工事高』で積み、物価 3% は価格に入れた。工事量は人員の増加の範囲に限られるとし、中立の 10 年で 1.12 倍とした。倍率は k 7.5%(基本 7.5% + quality 1.0%)・g 4% の正当化 PER の上限の約 9 割に置き、ROE が k を上回る中立でも 1÷k(11.8 倍)の下限を割らせない。悲観側は稼ぐ力(ROE が k 以下なので上限 1÷k)を上限に、やや悲観より高くしない倍率で測り、谷の PBR や今の株価の倍率は使っていない。中立は 12.0 倍で、今の約 16 倍には寄せていない。純現金は約 136 億円(時価総額のちょうど 1 割)だが、前受金・運転資金・成長投資枠に使うため、余った現金には分けていない。工事会社で店舗や倉庫の賃借が小さいので、新リース会計基準(2028/03 期)の影響は小さい。数字は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.6→18.55 倍・やや楽観 PER 12.6→17.8 倍・中立 PER 12→16.88 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。理由は quality_why。個別のリスク(成長投資・M&A の実行、特約店の立場など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。