結論
四電工は四国電力グループの電気設備工事会社である。送配電線の工事と、ビル・工場の電気・空調工事が二本柱で、売上の約半分は四国電力と四国電力送配電から来る。筆者の結論は割高だ。最大の理由は、今の利益が過去最高の山にあり、10年後に同じ水準を保つ根拠が薄いことにある。
2026年3月期は営業利益率が8.9%と過去最高だった。技能者不足で工事単価が上がり、受注も過去最高を記録した。会社は2030年度に営業利益110億円、ROE10%を掲げる。ただ、10年の過去の中央値は営業利益率で約5%台、ROEで7%にとどまる。山を平らな道とみなして値付けするのは危うい。
成長の鍵は首都圏・関西圏だ。ここで買収した設備工事会社を束ね、2030年度に売上を200億円ほど積み増す計画である。一方、本拠の四国は人口が減り、新設工事は縮む。送配電の更新が下支えになるが、数量は人手が上限で、大きくは伸びない。
財務は堅い。自己資本比率は68%、実質は無借金で、還元は配当性向60%程度に引き上げる。ただ、堅さは安全域であって、成長の理由ではない。10年で名目の売上は3割ほど増えても、ROEは資本コストをわずかに上回る程度に落ち着く。今の時価総額は、その見立てより高いと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くはないが安くない」と筆者は見る。
良い点は三つある。親会社の工事という止められない需要が土台にあること。財務が堅く、危機に強いこと。会社が還元を厚くする方向に舵を切ったことだ。いずれも安全域を支える材料である。
悩ましいのは稼ぐ力の持続だ。今の営業利益率は人手不足という追い風の上に立っており、それが10年続くとは考えにくい。ROEが資本コストをわずかに上回る程度の会社に、高い倍率を払う理由はない。成長の主役である首都圏は、規模もブランドもない後発であり、買収した人が定着して初めて価値を生む。
親会社への依存も気になる。売上の約半分を一社が決める事業は、堀のようで、実は他人任せでもある。四国電力が発注の方針を変えれば、四電工は止められない。
結局、10年後に手元に残る利益は、今の市場の期待ほどには増えない。確信度は中程度だ。今の値段は、増えた利益を先取りした水準に見える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。一つは四国電力の設備の工事、もう一つは民間の建物の電気・空調工事だ。
送配電設備工事は、四国電力と四国電力送配電が発注する。電柱を立て、電線を張り、引込線や変電設備をつくり直す。台風や老朽化に備えた更新が増えており、止められない工事なので景気に左右されにくい。四国電力と四国電力送配電からの受注は売上の5割ほどを占める(2024年6月提出の資料)。この比率の高さは安定であり、同時に弱みでもある。
建築設備工事は、ビル・工場・公共施設の電気、空調、給排水、情報通信を扱う。四国が本拠で、近年は首都圏・関西圏に力を入れている。買収した設備工事会社は7社に上り、宇都宮の横山工業や岡山のベルテックなどがある。2030年度までの5年間で、M&A に150億円を投じる計画だ。
人が収益を生む仕事である。会社単体の従業員は約2,300人で、2030年度に2,450人へ増やす目標を掲げる。1級施工管理技士という資格者を750人まで増やす計画もある。仕事は取れても、人がいなければ受けられない。数量は人員で決まり、単価は労務費の上昇に合わせて上がる。それが電気工事の経済性である。
四国電力は筆頭株主で、31.7%を持つ。持分法適用会社であり、四電工は連結子会社ではない。親会社の発注方針が、そのまま四電工の工事量に響く構造だ。
優良さと弱いところ
堀は「四国の送配電設備を長年手がけてきた実績」と「親会社との関係」だ。筆者はこの堀を並みの強さと見る。
送配電の工事は、図面も設備の癖も現場でしか身につかない。四国電力が発注先を急に変えるのは難しく、これが安定した工事量を生んできた。ただ、強いのは四国の中だけだ。首都圏では関電工やきんでんなど大手と並ぶ小さな後発であり、ブランドも規模もない。
利益率は上がった。営業利益率は10年前の2%台から2026年3月期の8.9%まで改善した。人手不足で工事単価が上がり、選別受注で採算の悪い仕事を減らした成果だ。だが電気工事は入札や相見積りの世界で、値段を自分で決められるわけではない。技能者が足りない間は強気で売れるが、需給が緩めば値段は戻る。
経営の資本の使い方は評価が割れる。純現金を厚く積み、これまで還元は控えめだった。2026年1月の新指針で、配当性向を60%程度、DOEを5%程度へ引き上げたのは前進だ。自社株買いは検討課題にとどまる。
資本効率は、過去10年のROE中央値が7%と高くない。自己資本が厚いのが理由で、事業の稼ぐ力が弱いわけではない。それでも、資本を食う成長と厚い手元資金の両立は、これからの課題である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電気工事の需要は強い。データセンター・半導体工場・再開発に加え、再生可能エネルギーの接続や配電設備の更新が重なっている。国内の電気工事の受注は2023年度で約3.4兆円、2025年9月の単月は前年同月比で13.6%増えた。
ただし、四電工が立つ場所は、その波の中心ではない。四国は人口減が全国でも速く、民間の新設工事は伸びにくい。需要の厚い首都圏・関西圏では、関電工、きんでん、ユアテックといった電力系の大手や、高砂熱学工業のような空調専業の大手とも競り合う。人材を奪い合う競争でもある。
足元の追い風は人手不足だ。2024年の残業規制を境に、技能者の確保が難しくなった。業界全体が値上げを受け入れてもらいやすい環境にあり、四電工の利益率もその恩恵を受けた。同時に、人が足りなければ仕事を断らざるをえず、数量の伸びは頭打ちになる。
10年先を考えると、四国では送配電の更新が続く。電柱や鉄塔、変電設備の老朽化は進み、更新は止められない。再生可能エネルギーの系統接続も増える。だが四国電力の設備投資が計画どおりに出るかは、電気料金の水準と親会社の財務に左右される。更新の需要は確かでも、その額と時期を四電工は決められない。ここが他の電力系同業と大きく違う点だ。
資本政策と M&A
還元は引き上げの途上にある。2026年1月に示した中期経営指針2030は、連結配当性向を60%程度、DOEを5%程度とする。従来の40%以上から大幅な引き上げだ。配当は厚くなるが、自社株買いは今後の検討課題で、流動性の向上が優先とされる。
買収は首都圏・関西圏に集中する。これまでに設備工事会社を7社グループに入れ、今後5年で150億円を投じる計画だ。目的は人と地盤を一度に買うことにある。小粒な案件が多く、のれんの額は限られるが、買った先の人が定着するかがすべてである。
四国電力が31.7%を持つ筆頭株主で、安定株主である。TOB の対象になる可能性は低いが、親会社との関係が変わる局面(親会社による完全子会社化や、持分の売却)は選択肢として残る。親会社は議決権の過半を持たないので、少数株主に不利な取引は起こしにくい。
純現金は97億円で、時価総額の1割に満たない。買収と還元の引き上げで、今後はさらに減る。余った現金として別に見る額は立てなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
四国電力の送配電設備の更新は止められない仕事であり、四電工はその地元の担い手として長年の実績を持つ。台風や老朽化に備えた投資は増え、親会社の工事量は今後も底堅い。人手不足で工事単価が上がる環境は、すでに収益を押し上げ始めた。2026年3月期は営業利益率が8.9%と過去最高になり、受注も過去最高だった。
首都圏・関西圏では、買収した設備工事会社7社を束ね、2030年度に売上を200億円ほど積み増す計画だ。最初の中計は1年前倒しで目標を達成しており、会社の計画は保守的な部類に入る。データセンターや再開発といった需要の厚い市場で、電気・空調・情報通信の全部を扱える設備工事会社は強い。
財務も堅い。自己資本比率は68%で、実質は無借金。配当性向を60%程度に引き上げる方針で、株主還元の厚さはこれまでの控えめな姿から大きく変わる。M&A に150億円の枠もあり、足りない人材を買って補う戦略が回り始めれば、10年後は営業利益が今の1.3倍を超える姿もある。四国の人口減は、更新の需要と単価の上昇で十分に埋められる。
慎重な見方
今の利益は山の上にある。営業利益率8.9%は過去最高で、10年前の2%台や、過去10年の純利益÷営業利益の中央値から見ても高い。人手不足による単価上昇は、需給が緩めば戻る性格のものだ。技能者が足りない状況が続いても、その分は仕事を断ることになり、数量は伸びない。
売上の約半分を四国電力と四国電力送配電に頼る構造は、安定ではあるが、自分で値段も量も決められないという意味でもある。四国電力が設備投資を絞れば工事量は減り、発注先を広げれば競争が増える。四国は人口減が全国でも速く、民間の新設工事は縮む一方だ。
成長の柱である首都圏・関西圏は、関電工やきんでんなど大手がいる市場に、小さな後発が小粒な買収で入っていく構図だ。人は買えても定着するとは限らず、小粒な会社の寄せ集めは、統合の手間が思ったより大きい。計画の200億円の積み増しは達成できるか疑わしい。
ROEは過去10年の中央値が7%にとどまる。自己資本が厚く、稼ぐ力に対して資本が余っているためだ。還元を引き上げても、事業の稼ぐ力が上がるわけではない。今の時価総額は、山の利益を長く続ける前提に近い値付けだと見る。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分には実現性がある。四国の更新工事は確実で、首都圏の拡大も一部は実を結ぶだろう。ただ、強気が頼る単価上昇と人手不足は、いつまで続くか分からない外部の条件である。
慎重な見方のほうが重いと筆者は見る。親会社への依存と四国の人口減は構造の問題で、首都圏の拡大は人が定着するかに左右される。このため、確率はやや悲観側に寄せた。10年後のROEは資本コストをわずかに上回る程度とみて、今の時価総額は筆者の見立てより高いと結論する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,314 円1,096 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 953 円451 億円)。 今の値に割り戻すと 1,786 円846 億円、今との差 −19.5%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,964 円1,878 億円 | 1,127 円534 億円 | +129.4% | +8.7% | 509 円241 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,130 円1,483 億円 | 1,066 円505 億円 | +89.0% | +6.6% | 923 円437 億円 |
| 中立 | 33% | 2,551 円1,208 億円 | 994 円471 億円 | +59.7% | +4.8% | 1,170 円554 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,186 円562 億円 | 899 円426 億円 | −6.0% | −0.6% | 521 円247 億円 |
| 悲観 | 10% | 901 円427 億円 | 528 円250 億円 | −35.7% | −4.3% | 143 円68 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,314 円1,096 億円 | 953 円451 億円 | +47.1% | +3.9% | 3,267 円1,547 億円 |
今の株価時価総額 2,220 円1,052 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:首都圏・関西圏の買収が当たり、四国の更新工事も厚くなる 利益 119 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 3,964 円1,878 億円
首都圏・関西圏で買い足した設備工事会社が根づき、四国から人を回さなくても受注を取れる体制ができる。人員は今の2倍超になり、データセンターや再開発の電気・空調工事を継続して取る。四国では送配電設備の更新が計画より早く進み、四国電力からの工事が厚くなる。人手不足は続くが、四国電力向けの単価は物価並みに上がり、首都圏でも値上げが通る。配当性向6割の還元は続き、買収にも資金を回せる。ただ、小さな会社がここまで広がるには、買収後の人材定着が欠かせない。条件は多い。売上は名目で今の1.7倍近くになり、営業利益は160億円を超える。中計の2030年度目標(110億円)を大きく上回る姿だ。資本は買収と還元に回り、自己資本の積み上がりは抑えられるので、ROEは10%台に上がる。
- 送配電設備工事(四国・近隣圏):数量 1,100(従事者数(人、推定))× 価格 59(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 647 億円・営業利益 65 億円。四国の更新需要が前倒しで出る
- 建築設備工事(四国・近隣圏):数量 1,000(従事者数(人、推定))× 価格 49(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 493 億円・営業利益 47 億円。四国の民間も首都圏の人材を回して堅調
- 建築設備工事(首都圏・関西圏):数量 1,400(従事者数(人、推定))× 価格 38(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 538 億円・営業利益 54 億円。買収が当たり施工体制が倍以上に
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.78 倍、時価総額 1,878 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:四国の更新工事と首都圏の人材確保がどちらも計画を上回る組み合わせ。実現すれば別の会社になるが、小さな会社が買収で人を2倍以上に増やすのは難しく、1割にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:四国の更新需要と首都圏の拡大が人口減を打ち消す 利益 99 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 3,130 円1,483 億円
四国の送配電設備の更新が着実に進み、四国電力からの工事量は今より少し増える。四国の民間の新設は人口減で細るが、更新や空調の改修で単価を保つ。首都圏・関西圏は買収した会社を通じて人が増え、中計が描く拡大の大半を実現する。利益率は今より少し高い水準で落ち着く。配当性向6割の方針も守られ、株主還元は厚いままだ。派手さはないが、四国電力の安定した需要と首都圏の伸びが噛み合う、起伏の少ない10年になる。売上は名目で今の1.5倍ほどに増える。中計の目標には届くが、大きくは超えない。四国電力という安定した顧客と、首都圏という成長の場の両方が機能し、ROEは資本コストを上回って推移する。
- 送配電設備工事(四国・近隣圏):数量 1,050(従事者数(人、推定))× 価格 58(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 604 億円・営業利益 57 億円。更新需要が数量を支える
- 建築設備工事(四国・近隣圏):数量 950(従事者数(人、推定))× 価格 48(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 458 億円・営業利益 40 億円。四国の人口減を単価で補う
- 建築設備工事(首都圏・関西圏):数量 1,150(従事者数(人、推定))× 価格 38(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 431 億円・営業利益 40 億円。買収の統合が計画どおり進む
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.93 倍、時価総額 1,478 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:送配電の更新需要は実現性が高く、首都圏でも一定の成果は出る。人手の制約と四国の人口減を考え、中立より薄い2割強に置いた。
中立 33% 中立:四国は横ばい、首都圏は計画の7割ほどで着地する 利益 82 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,551 円1,208 億円
四国では送配電の更新工事が下支えとなり、四国電力向けの数量は横ばいで推移する。一方で四国の民間の新設工事は人口減で細り、会社全体の人員は大きく増えない。首都圏・関西圏は買収の効果で広がるが、中計の目標には届かない。人手が足りず、取れる仕事を選ぶことになる。単価は物価並みに上がり、利益率は今の高い水準から少し下がる。還元は配当性向6割に近い水準を保つ。売上は名目で3割ほど増えるが、1人当たりの利益は急には伸びない10年である。営業利益は110億円強で、会社の2030年度目標とほぼ同じ水準に落ち着く。ただし首都圏の拡大は目標の7割にとどまり、その分を単価の上昇が補う姿だ。ROEは8%ほどで、資本コストをわずかに上回る。
- 送配電設備工事(四国・近隣圏):数量 1,000(従事者数(人、推定))× 価格 56(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 563 億円・営業利益 51 億円。人手が上限で数量は横ばい、単価は物価並み
- 建築設備工事(四国・近隣圏):数量 900(従事者数(人、推定))× 価格 47(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 424 億円・営業利益 34 億円。四国の新設は縮み、単価の上がりも鈍い
- 建築設備工事(首都圏・関西圏):数量 950(従事者数(人、推定))× 価格 37(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 349 億円・営業利益 30 億円。計画の拡大に届かず、単価上昇も小さめ
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.27 倍、時価総額 1,170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の拡大を7割ほど達成し、四国は横ばいという落としどころ。電力系電気工事の中立の前提(名目で緩やかに伸びる)に沿う最も厚い筋書き。
やや悲観 25% やや悲観:四国電力の工事量が細り、首都圏の拡大も鈍る 利益 56 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 1,186 円562 億円
四国電力が送配電設備の投資を抑え、工事量が今より減る。四国の民間の新設も人口減で縮み、値下げ圧力が出る。首都圏・関西圏の買収先では人の入れ替わりが続き、拡大のペースが鈍る。利益率は今の8.9%から2ポイントほど落ち、中計の目標とは別の姿になる。それでも財務は厚く、配当は保つが、自己資本が積み上がる割に稼ぐ力は伸びない。利益に対して資本が余る状態が続き、ROEが資本コストを割る。優良さがじわじわ薄れる10年である。売上は名目で1割ほどしか伸びず、数量が減る分を単価の上昇が埋めきれない。営業利益は今の9割弱に落ちる。
- 送配電設備工事(四国・近隣圏):数量 900(従事者数(人、推定))× 価格 55(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 491 億円・営業利益 39 億円。四国電力の工事量が絞られる
- 建築設備工事(四国・近隣圏):数量 800(従事者数(人、推定))× 価格 45(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 359 億円・営業利益 23 億円。四国の民間が縮み、値下げ圧力が出る
- 建築設備工事(首都圏・関西圏):数量 750(従事者数(人、推定))× 価格 34(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 258 億円・営業利益 17 億円。買収先の定着が進まず人が増えない
倍率:事業の ROE 6.0% は資本コスト k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍。親会社の工事量が細り稼ぐ力が弱るので、上限の 7 割の 8.8 倍に置いた。事業 56 億円 × 8.8 倍で時価総額 493 億円。
確率:売上の約半分を四国電力に頼り、四国は人口減が全国でも速い地域。首都圏の買収は実行リスクもあり、強気より弱気の言い分が重いと見て、やや悲観を楽観側より厚くした。
悲観 10% 悲観:親会社依存が裏目に出て、首都圏の買収も実を結ばない 利益 11 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 901 円427 億円
四国電力が工事の内製化や他社への分散発注を進め、四電工の工事量は構造的に細る。親会社の保守・更新という下支えは残るが、数量と単価の両方が縮む。四国の民間の新設は人口減で急に減り、首都圏・関西圏の買収も人が定着せず赤字が残る。のれんの減損も出る。営業利益は年15億円ほどまで落ち、配当は貯めた現金から出すことになる。かつて約半分を占めた親会社の工事が、逆に弱みになった10年である。売上は今の7割に縮み、四電工は小さな会社に戻る。手元の現金と資産の売却で還元を保つが、稼ぐ力は戻らない。10年の還元の合計は、稼いだ利益の合計を上回る。差は貯めた現金と、使わなくなった資産の売却で埋める。時価総額は、売れる資産と現金の価値まで下がる。
- 送配電設備工事(四国・近隣圏):数量 700(従事者数(人、推定))× 価格 48(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 338 億円・営業利益 15 億円。四国電力が内製化・他社発注を広げ数量が細る
- 建築設備工事(四国・近隣圏):数量 600(従事者数(人、推定))× 価格 39(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 232 億円・営業利益 6 億円。四国の民間が構造的に縮む
- 建築設備工事(首都圏・関西圏):数量 400(従事者数(人、推定))× 価格 30(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 118 億円・営業利益 1 億円。買収が裏目に出て赤字が残る
倍率:構造的に工事量が細り、純利益は 11 億円。稼ぐ力は 138 億円ほどにしかならず、床は売れる資産で測る。総資産 1,039 億円(自己資本 711 億円 ÷ 自己資本比率 68.4%)を強制売却で 75% しか回収できず 779 億円、負債 328 億円は全額払うとして残る約 450 億円を、今の自己資本 711 億円に対する PBR 0.60 倍(時価総額 427 億円)に置いた。
確率:四国電力が発注先を広げる、買収が失敗する、四国の民間が縮む、が重なる負け筋。送配電の保守という止められない需要があるので、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
送配電設備工事(四国・近隣圏)
四国電力・四国電力送配電が発注する配電線・送電線・変電設備の建設、改修と保守。電柱・架線・引込線の工事が中心で、台風や老朽化に備えた更新が増えている。
| 数量従事者数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 42 | 420 | 40 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 56 | 563 | 51 |
取り方:中期経営指針2030の2030年度目標470億円(+50億円)から逆算して今の売上を約420億円と推定した。連結の従業員は約2,700人(単体2,320人+子会社、推定)で、うち約1,000人をこの区分に置く。数量は人数(実質)、価格は1人当たりの完成工事高(名目)。
建築設備工事(四国・近隣圏)
四国内のビル・工場・公共施設の電気・空調・管・情報通信工事。四電工の本拠で、民間の新設と改修が中心。
| 数量従事者数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 37 | 405 | 34 |
| 10 年後 中立 | 900 | 47 | 424 | 34 |
取り方:2030年度目標360億円(−50億円)から逆算して今の売上を約405億円と推定した。人数は連結の約2,700人から他の区分を除いた推定。数量は実質、価格は名目。
建築設備工事(首都圏・関西圏)
首都圏・関西圏のビル・工場・データセンター等の電気・空調工事。買収した設備工事会社(7社を子会社化)を通じて広げている成長区分。
| 数量従事者数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 28 | 169 | 14 |
| 10 年後 中立 | 950 | 37 | 349 | 30 |
取り方:全社の売上994億円から上の2区分を除いた残りで、2030年度目標370億円(+200億円)の出発点。買収した小規模な会社が多いので、1人当たりの完成工事高は四国より低いと推定した。数量は実物(従事者数)で、設備工事会社を買収して人員を増やす成長区分の事実による増加。名目の市場の伸びは置いていない(単価は物価以下)。
リスクと懸念
親会社の発注方針
売上の約半分は四国電力と四国電力送配電が決める。設備投資の抑制や発注先の分散が起きれば、工事量が減る。四電工は持分法適用会社で、親会社が自社の工事を内製に戻す余地も残る。
四国の人口減
四国は全国でも人口減が速い。民間の新設工事は構造的に縮み、会社全体の数量を下げる。人口減は送配電の更新で埋められても、民間の需要は埋まらない。
首都圏・関西圏の拡大の実行
買収した小粒な設備工事会社は7社に及ぶ。人が定着せず、統合が思ったより手間取れば、計画の200億円の積み増しは達成できない。大手との人材の奪い合いにも巻き込まれる。
利益率の山の反動
営業利益率は人手不足と単価上昇で過去最高だ。技能者の需給が緩めば、単価は戻る。入札や相見積りで値段が決まる仕事なので、反動は想定より速く来ることがある。
人材の確保
売上は人が生む。2030年度に従業員を2,450人まで増やす計画だが、採用競争は厳しい。人が足りなければ、仕事は取れても受けられず、利益の伸びが止まる。
資本の使い方
配当性向60%程度、DOE5%程度への引き上げと、M&A 150億円の両立を会社は掲げる。成長投資が空回りすると、厚い還元だけが残り、資本効率は上がらない。
今後の分かれ目
- 四国電力が送配電の設備投資計画を引き上げ、四電工への発注が増えたら
- 楽観側の確率を上げてよい。更新需要が数量を押し上げる確かな証拠になる。
- 首都圏・関西圏の売上が計画どおり積み上がり、買収先の人員も定着したら
- やや楽観側に重みを移す。後発でも大手と並べる証拠になる。
- 四国電力が発注先の分散や内製化を打ち出したら
- 悲観側に重みを移す。売上の半分が細る構造的な負け筋に入る。
- 営業利益率が8%台を下回り、人手不足でも単価が上がらなくなったら
- やや悲観側に重みを移す。山の反動が始まったことになる。
- 買収先ののれんの減損が出たら
- やや悲観側に重みを移す。首都圏の拡大が計画どおりでないことを示す。
- 自社株買いが具体化し、還元の総額が増えたら
- 中立の確率は変えない。還元は価値を増やさず、手元の現金を前倒しで株主に戻す動きにすぎない。
見ておくもの
- 四国電力・四国電力送配電からの受注の比率と額
- 首都圏・関西圏の売上と従業員数の推移
- 営業利益率と受注高・繰越高
- 技能者数と1級施工管理技士の人数
- 買収先ののれんと減損の有無
倍率と資本コストの決め方
数量(四区分の従事者数=実質)と単価(1人当たり完成工事高=物価3%を入れた名目)を積み上げて10年の売上と営業利益を置き、そこから純利益と自己資本を流した。四国電力向けが売上の約半分という開示と、中期経営指針2030の区分別の目標(四国の送配電470億円・四国の建築360億円・首都圏関西370億円)を出発点にしたが、会社の目標はそのまま使わず、首都圏は7割ほどの達成にとどめた。倍率は利益で決め、新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC=k 7.5%+1/2×(ROE−k)、k=基本7.5%+quality0.5%)と長期g 4%(k−g≥3.5%)から正当化PERを出し、その 9 割前後(中立は 1÷k に ROE÷k 1.00 と 9 割を掛けた 11.3 倍、やや悲観は 7 割)に置いた。悲観は谷の利益でなく、総資産の75%回収・負債全額払いで残る売れる資産(約450億円)で測った。今の株価・PER・PBRは筋書きと倍率の決定に使わず、最後に比べただけ。同業の物差しとも揃え、四国電力依存と人口減の分だけ quality と確率を慎重側に置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。理由は quality_why。個別のリスク(親会社の発注方針・M&A の実行)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。