結論
川崎設備工業は、ビルや工場の空調・給排水・電気の設備を設計して施工する会社だ。本店は名古屋で、東部・中部・西部の3地域で稼ぐ。親会社は関電工で、議決権の50%を持つ。筆者の結論は「適正」。今の7倍台という倍率は一見安いが、山の利益で測った数字にすぎない。
ここ2年で業績は一変した。2026年3月期の完成工事高は376億円と29%増え、営業利益は49億円と81%増えた。営業利益率は13.0%で、2年前の5.9%から倍以上になった。同業の大手サブコンでも7〜9%だから、突出している。
この水準は続かない、と筆者は考える。大型の工場案件が重なった年の利益であり、受注残の8割は1年ほどで消化される。中立の筋書きは、利益率が10年で9%台に戻ることだ。それでも営業利益は49億円と、足元に並ぶ。物価の上昇が売上を押し上げるからである。
財務は強く、純現金は30億円。自己資本比率は62%だ。ただし、これは建設会社の運転資金の性格が強く、余った現金とは言えない。
10年の価値は、今の時価総額とほぼ同じだ。親会社の持分が厚く、少数株主に利益が届きにくい点は、弱みとして残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、川崎設備工業は「よい年の利益に、割安な値段がついた会社」だ。2026年3月期の純利益37億円に対し、時価総額は278億円。7〜8倍の水準である。
ただ、よい年の利益をそのまま使うのは危ない。営業利益率13%は同業の倍で、続く保証がない。10年の筋書きでは、利益率が9%台まで戻り、純利益は35億円ほどで横ばいになる。
それでも、自己資本は164億円で、この10年は利益と配当を適度に分け合う。自己資本利益率は9%前後で、資本コストを少し上回る。倍率は12倍程度が妥当だ。
安全域は薄い。利益率が山のまま続けば割安だが、同業並みに戻ると今の値段にほぼ並ぶ。親会社が過半を持つ点も気になる。少数株主にとって、現金の使い道は経営が決める。
この会社を持ち続けたいかと問われれば、人手の確保と親会社の意向という二つの条件つきで、持ちたいと答える。
何で稼ぐ会社か
事業は設備工事の請負だ。空調、給排水・衛生、電気、防災などの設備を、設計から施工まで引き受ける。ゼネコン(総合建設会社)や施主から直接受注し、下請けの職人を束ねて完成させる。
2026年3月期の完成工事高376億円の内訳は、一般ビル工事が7割、産業施設工事が2割、電気工事が1割。一般ビルには事務所、病院、商業施設が入る。産業施設は工場の空調や排水設備で、前期は22%増えた。
地域は三つに分かれる。中部が売上の44%と最大で、名古屋と豊田、岐阜を押さえる。東部が34%、西部が22%だ。利益は中部が最も厚く、売上に対して2割近い。自動車関連の工場が多い中部の強さが、全体の利益を引き上げている。
顧客の偏りもある。川崎重工業が完成工事高の14%を占める。親会社の関電工とは営業と施工で連携し、案件を分け合う。
受注残は297億円で、年間の完成工事高の8割にあたる。受注は402億円と完成工事高を上回り、残りは増えている。ただし、受注残の積み上がりは大型案件が支えており、案件が切れれば残高は急に減る。
従業員は454人と少数で、施工は下請けの職人に頼る。人手の確保が業績の上限を決める事業だ。
優良さと弱いところ
川崎設備工業の堀は、中部の工場に食い込んだ実績と、関電工の営業網にある。設備工事は一度施工した建物の保守・改修も受けやすく、顧客との関係が長く続く。
利益率は異例に高い。営業利益率は2026年3月期に13.0%と、過去12年の最高を更新した。それ以前の最高は2020年3月期の7.0%だ。高さの理由は、公式の説明から確かめられない。大型の工場案件の採算が良かった年と見るのが自然である。
値決め力は中くらいだ。受注は請負契約で、資材や労務費の上昇はスライド条項(価格の見直し)の交渉で対応する。ただ、ゼネコンの下請けとして受ける案件では、価格を決める側にいない。
資本効率は急に良くなった。自己資本利益率は22%に達したが、10年の中央値は13%、2023年3月期は6.5%まで落ちた。高い数字は一時の山と見る。
経営は堅実である。純現金を持ち、配当は安定配当を基本とする。前期は特別配当を上乗せしたが、配当性向は3割ほどにとどまる。政策保有株は削減の方針だ。
筆者が気にするのは、人手の確保と親会社の存在である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
設備工事の市場は、ビルの空調更新、データセンター、半導体工場がけん引する。国内の空調工事の市場規模は、2024年度の約5,000億円から2030年度に約5,700億円へ広がる見通しだ。脱炭素による既存ビルの更新(ZEB化)が、構造的な柱として残る。
業界の課題は人手だ。職人の高齢化と若手不足は続き、川崎設備工業も経営計画で「慢性的な人材不足」を挙げる。人手が足りなければ、受注があっても完成工事高は伸びない。反面、人手が希少なほど、工事の値段は上がりやすい。同社の平均年収は865万円で、前年から14%上がった。賃金は上がっている。
競争は準寡占だ。大手は高砂熱学工業、ダイダン、三機工業、大気社、新日本空調などが並び、半導体クリーンルームやデータセンターのような高度な工事は上位に集まる。川崎設備工業は中部・東部・西部の地域で戦う中堅で、大手と取り合う案件は限られる。親会社の関電工は電気設備の最大手で、電気と空調を組み合わせた提案で連携できる。
10年の見通しはこうだ。完成工事高は、実質でわずかに伸び、名目では年4%ほどになる。ただ、足元の利益率は同業の倍近く高く、競争で薄まる前提を置く。
脅威は、データセンターや半導体の投資が海外へ移ることと、ゼネコンの発注が絞られることだ。逆に、国内で工場の再投資が続けば、数量は上振れする。
資本政策と M&A
親会社の関電工が議決権の50.10%を握る。取引先持株会が16.5%、従業員持株会が3.4%、川崎重工業が1.8%で、少数株主の持ち分は小さい。親子上場であり、会社が余った現金を少数株主に配る保証はない。
配当は安定配当が基本だ。2026年3月期は、普通配当に特別配当を上乗せした。特別配当を出すほど利益が出たが、来期から同じ水準が続くとは限らない。
経営計画は2026年度の完成工事高390億円、営業利益50億円を掲げる。ROE10%以上という目標は、今の22%より低い。山の利益を前提にしない慎重な設定である。
政策保有株は削減の方針で、川崎重工業の株などを持つ。額は小さく、価値には足さない。
買収については、親会社が完全子会社化する可能性が外部の推計で2割程度ある。ただし、取引の条件は少数株主に有利とは限らない。筋書きの確率には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
設備投資は国内で動き出している。半導体、データセンター、自動車の電動化に関連する工場が、中部と東部で増えている。川崎設備工業の受注は402億円と前期比30%増え、受注残も297億円に積み上がった。中部の営業利益率は2割近い。
人手不足は、価格を上げる味方になる。職人が足りないので、発注者は価格より施工の確保を優先する。同社は平均年収を14%上げて人材をつなぎ止めつつ、利益率を保った。ゼネコンに対しても、工期と品質で選ばれる側に立っている。
親会社の関電工との連携で、電気と空調を組み合わせた大型案件を取れる。関電工の営業網は全国に広がり、川崎設備工業は中部・東部・西部の3拠点で受け皿になる。
利益の使い道も株主寄りだ。前期は特別配当を出した。自己資本利益率10%以上という会社の目標は低く、実績が上回れば還元を厚くする余地がある。
この筋書きなら、10年後の営業利益率は12%台を保ち、純利益は60億円に近づく。
慎重な見方
利益率13%は山だ。同業の大手でも7〜9%であり、川崎設備工業は過去12年の平均が5%台である。大型の工場案件が重なった年の利益であって、構造が変わった証拠ではない。公式の説明も、率が上がった理由を示していない。
受注残は297億円で、完成工事高の8割にすぎない。大型案件が終われば、次の案件が同じ採算で取れる保証はない。2027年3月期の第1四半期は、経常利益が前年比14%減った。
人手不足は、利益を守る側にも壊す側にも働く。賃金は14%上がり、下請けの労務費も上がる。スライド条項で転嫁できなければ、利益率はすぐ削られる。
親会社が過半を持ち、少数株主の取り分は小さい。特別配当は臨時の還元で、来期からは出ないかもしれない。完全子会社化の話が出ても、条件は親会社が決める。
川崎重工業が売上の14%を占める点も危うい。一社の投資計画が変われば、数量が動く。
この筋書きなら、利益率は5%台に戻り、純利益は15億円ほどに落ちる。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実に基づく。強気は人手不足による値上げの力と受注の積み上がりを突き、慎重な見方は、利益率が同業の倍という異常さと大型案件への依存を突く。筆者は、利益率が同業並みの9%台に戻る前提を中立に置いた。それでも今の値段はほぼ妥当である。
確率は慎重な側に寄せた。強気側は28%、やや弱気と弱気で35%とし、中立に37%を置いた。山の利益率を長く維持する筋書きは、重く置かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,026 円601 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,146 円137 億円)。 今の値に割り戻すと 3,304 円395 億円、今との差 +43.7%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,344 円1,238 億円 | 1,605 円192 億円 | +419.7% | +17.9% | 956 円114 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,273 円990 億円 | 1,421 円170 億円 | +321.7% | +15.5% | 1,939 円232 億円 |
| 中立 | 37% | 5,816 円696 億円 | 1,187 円142 億円 | +204.6% | +11.8% | 2,591 円310 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,466 円175 億円 | 978 円117 億円 | +6.3% | +0.6% | 611 円73 億円 |
| 悲観 | 10% | 251 円30 億円 | 501 円60 億円 | −67.3% | −10.6% | 75 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,026 円601 億円 | 1,146 円137 億円 | +168.5% | +10.4% | 6,172 円738 億円 |
今の株価時価総額 2,299 円275 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 工場とデータセンターの投資が続き、利益率12%台を保つ 利益 59 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 10,344 円1,238 億円
国内で工場とデータセンターの投資が続き、人手不足が価格を押し上げる。完成工事高は実質で3割増え、名目では10年で1.7倍になる。受注は中部を中心に積み上がり、受注残は年間の完成工事高に近い水準を保つ。
営業利益率は12%台を保つ。同業の倍近い水準で、足元の山がそのまま続く筋書きだ。関電工との連携で大型案件が取れ、下請けへの転嫁も通る。
本社費などの全社費用は物価で増える。人件費の増加は、価格に転嫁できる。
減価償却は小さく、物価の影響は限られる。配当は純利益の4割を保ち、特別配当もときどき出す。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。純現金の受取利息がわずかに増える。
- 東部(東京・関東ほか):数量 130(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.71(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 223 億円・営業利益 36 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 16.0%
- 中部(名古屋・豊田・岐阜):数量 130(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.21(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 287 億円・営業利益 50 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 17.5%
- 西部(関西・神戸ほか):数量 130(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.12(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 146 億円・営業利益 23 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍。全体の PER 19.96 倍、時価総額 1,178 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型案件が続き、利益率12%台を10年保つ道。同業の倍の水準で実績も短いため、8%にとどめた。
やや楽観 20% 工場投資が続き、利益率は11%台で落ち着く 利益 48 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 8,273 円990 億円
工場投資が続き、利益率は11%台で落ち着く。完成工事高は実質で18%増え、名目では6割増える。人手不足の価格転嫁は続くが、競争で利益率は足元から少し薄まる。
中部は2割近い利益率を保つが、東部と西部は伸び悩む。営業利益は67億円と、足元の1.4倍になる。
本社費などの全社費用は物価で増える。人件費の増加は、価格転嫁でほぼ吸収できる。
配当は純利益の35〜40%を保つ。
自己資本は10年で2.5倍ほどに増えるが、自己資本利益率は11%台を保つ。親会社の持分は変わらず、買収の話も出ない。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。減価償却は小さく、物価の影響は限られる。
- 東部(東京・関東ほか):数量 118(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.71(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 202 億円・営業利益 29 億円。数量 1.18 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 14.5%
- 中部(名古屋・豊田・岐阜):数量 118(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.21(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 261 億円・営業利益 43 億円。数量 1.18 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 16.5%
- 西部(関西・神戸ほか):数量 118(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.12(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 132 億円・営業利益 21 億円。数量 1.18 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 15.5%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.33 倍、時価総額 928 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足による値上げと工場投資が続き、利益率が11%台に落ち着く道。足元の受注の勢いを見て2割を置いた。
中立 37% 利益率は同業並みの9%台に戻り、営業利益は足元の水準で10年続く 利益 35 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 5,816 円696 億円
利益率は同業並みの9%台に戻る。完成工事高は実質で5%ほど増え、名目では4割増える。データセンターと脱炭素の更新需要が数量を支えるが、足元の山の利益率は競争で薄まる。
営業利益は49億円と、足元とほぼ同じ水準で10年が過ぎる。物価の分は売上に乗るが、利益率の低下がそれを打ち消す。
本社費などの全社費用は物価で1.34倍の24億円に増える。人件費の増加が利益を圧迫する。
減価償却は小さく、物価の影響は限られる。配当は純利益の4割ほどを保つ。自己資本は10年で2倍強に増え、自己資本利益率は9%台に下がる。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。
- 東部(東京・関東ほか):数量 105(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.71(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 180 億円・営業利益 23 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 13.0%
- 中部(名古屋・豊田・岐阜):数量 105(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.21(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 232 億円・営業利益 34 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 14.5%
- 西部(関西・神戸ほか):数量 105(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.12(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 118 億円・営業利益 16 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 13.5%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.1 倍、時価総額 634 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が同業並みの9%台に戻り、数量はわずかに伸びる最も自然な道。5つの中でいちばん高い37%を置いた。
やや悲観 25% 山の利益率が崩れ、過去の水準に近づく 利益 15 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,466 円175 億円
山の利益率が崩れ、過去の水準に近づく。完成工事高は実質で1割減り、値上げも競争で通りきらず、10年で1.30倍にとどまる。売上は名目で2割増にとどまる。
営業利益率は5%に下がる。大型案件が終わったあとの受注は採算が悪く、人手不足による賃上げも利益率を押し下げる。営業利益は21億円と、足元の4割に落ちる。
本社費などの全社費用は24億円と、売上が減っても削りきれない。
配当は維持するが、配当性向は上がる。自己資本利益率は5%まで下がる。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.30倍(物価に遅れる)。
- 東部(東京・関東ほか):数量 92.0(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.66(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 153 億円・営業利益 15 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 9.5%
- 中部(名古屋・豊田・岐阜):数量 92.0(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 2.14(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 197 億円・営業利益 21 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 10.5%
- 西部(関西・神戸ほか):数量 92.0(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.09(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 100 億円・営業利益 10 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 10.0%
倍率:自己資本利益率は5%でk以下。PERの上限は1÷k=12.1倍で、その約70%にあたる8.5倍に置いた。
確率:山の利益率が崩れ、過去の水準に近い5%に落ちる道。過去12年の実績に近く、親会社の影響もあるので25%を置いた。
悲観 10% 国内投資が細り、顧客を失い、価格競争に陥る 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 251 円30 億円
半導体・データセンターの国内投資が細り、川崎重工業向けも縮む。完成工事高は実質で25%減り、競争で値上げも通らず、10年で1.20倍にとどまる。
営業利益率は1%台まで落ちる。受注が細る中で、人件費と本社費は削りにくい。純利益は4億円。
配当は減らして維持するが、特別配当は出ない。親会社が過半を持つので、買収で報われる道は細い。少数株主には、現金の使い方を決められない。
自己資本は10年で小さく増えるだけで、自己資本利益率は1%台に落ちる。工場のある中部では案件が競合に流れ、東部と西部でも大手に押される。職人の賃金上昇を価格に転嫁できないまま、固定費だけが残る。純現金は運転資金に消え、手元の余裕もなくなっていく。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.20倍。
- 東部(東京・関東ほか):数量 75.0(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.53(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 115 億円・営業利益 9 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 8.0%
- 中部(名古屋・豊田・岐阜):数量 75.0(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.98(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 148 億円・営業利益 12 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 8.0%
- 西部(関西・神戸ほか):数量 75.0(完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100))× 価格 1.00(指数1点あたり完成工事高(億円、名目))→ 売上 75 億円・営業利益 6 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:利益がほとんど出ない筋書きなので、稼ぐ力(純利益4億円÷k=約48億円)と純現金30億円を見る。今の自己資本164億円に0.18倍を掛け、約30億円と置いた。純現金30億円と同じ水準で、親会社が過半を持つ点から稼ぐ力(約48億円)まで評価しなかった。
確率:半導体・データセンターの国内投資が細り、川崎重工業向けも縮み、価格競争になる複合の筋書き。頻度は低いが10年では無視できないので10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
東部(東京・関東ほか)
東部支社を中心とした、ビル・工場の空調・給排水・電気設備工事。
| 数量完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたり完成工事高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.28 | 128 | 20 |
| 10 年後 中立 | 105 | 1.71 | 180 | 23 |
取り方:2026年3月期の東部の完成工事高127.8億円・セグメント利益20.05億円(有価証券報告書。単体)。開示された数量はないため、完成工事高の実質量を指数100、単価1.278に分けた推定。数量は実質、価格は名目。
中部(名古屋・豊田・岐阜)
中部支社、豊田支店、岐阜支店を中心とした工事。自動車関連の工場が多く、利益が最も厚い。
| 数量完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたり完成工事高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.65 | 165 | 32 |
| 10 年後 中立 | 105 | 2.21 | 232 | 34 |
取り方:2026年3月期の中部の完成工事高165.0億円・セグメント利益32.24億円(有報)。数量は指数100・単価1.650の推定。
西部(関西・神戸ほか)
西部支社、神戸支店を中心とした工事。
| 数量完成工事高の実質量の指数(2026年3月期=100) | 価格指数1点あたり完成工事高(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.84 | 84 | 15 |
| 10 年後 中立 | 105 | 1.12 | 118 | 16 |
取り方:2026年3月期の西部の完成工事高83.7億円・セグメント利益14.96億円(有報)。数量は指数100・単価0.837の推定。全社の調整額(本社費など。営業利益49.04億円との差)はマイナス18.2億円。
リスクと懸念
利益率13%の持続性
営業利益率は2年で5.9%から13.0%に跳ね、同業大手の7〜9%を大きく上回る。理由は公式に説明されておらず、大型の工場案件の採算が良かった年である可能性が高い。受注残297億円が消化されたあと、同じ採算で次の案件を取れるかが分かれ目になる。
人手不足と労務費
施工は下請けの職人に頼り、従業員は454人にすぎない。職人が確保できなければ、受注があっても完成工事高は伸びない。平均年収は前年から14%上がっており、下請けの労務費も上がる。スライド条項で転嫁できなければ、利益率はすぐ削られる。
川崎重工業への集中
完成工事高の14%(53億円)を川崎重工業が占める。一社の設備投資が変われば、数量と利益が同時に動く。前年はこの比率が13%で、集中が高まっている。
親会社が過半を持つこと
関電工が議決権の50.10%を持つ親子上場である。余った現金の使い道、配当、完全子会社化の条件は、親会社の意向に左右される。少数株主が価値を受け取れる保証はない。
受注残の薄さ
受注残297億円は、年間の完成工事高の8割にあたる。大手サブコンに比べて見通しの利く期間が短く、案件の谷が来れば業績がすぐ落ちる。2027年3月期第1四半期の経常利益は前年比14%減だった。
データセンター・半導体の海外シフト
成長の柱が米国や中東に移れば、国内の工場・データセンター案件が細る。中部の自動車関連工場の電動化投資が止まる場合も、数量が減る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期連続で12%を超える
- 利益率の水準が構造変化だった可能性が高まり、強気の筋書きの確率が上がる。
- 受注高が完成工事高を下回り、受注残が減り始める
- 大型案件が切れた合図で、やや弱気の確率が上がる。
- 会社が完成工事総利益率や案件別の採算を開示する
- 13%の中身が確かめられ、中立の利益率を見直せる。
- 関電工が完全子会社化を発表する
- 少数株主の取り分は、提示される条件で決まる。
- 川崎重工業向けの完成工事高の比率が2割を超える
- 顧客集中が強まり、数量の振れが大きくなる。
- 賃上げの転嫁が遅れ、粗利率が2ポイント以上下がる
- 人件費が利益を食っており、中立の利益率を下げて見直す。
見ておくもの
- 営業利益率(13.0%)が維持されるか、同業並みに戻るか
- 受注高と受注残(297億円)の動き
- 川崎重工業向けの比率
- 平均年収と下請け労務費
- 特別配当の有無と配当性向
- 関電工の持分と親会社の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立の自己資本利益率は9%台でkをやや上回り、下限は1÷k=12.1倍、残る割合1/2の正当化PER上限は約12.8倍。山の利益率を前提にしない質の弱さと、親会社が過半を持つ点を見て、下限の近く12.3倍に置いた。強気は上限の95%、やや強気も95%。やや弱気はROEがk以下の上限1÷kの約70%。悲観側は今の自己資本に0.18倍を掛けた。kは基本7.5%に品質+0.75%を足して8.25%。今の株価や市場の倍率には寄せていない。
中立の営業利益率は、過去12年の山(2026年3月期13.0%)を下回る9%台に置いた。同業の7〜9%と、直前の2025年3月期9.3%を基準にした。本社費などは物価で1.34倍に増やした。減価償却は設備工事会社として小さく、物価での影響は限られる。新リース会計基準の影響は、営業車や事務所のリースが小さく限られる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→19.96 倍・やや楽観 PER 13.3→19.33 倍・中立 PER 12.3→18.1 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。