結論
東建コーポレーションは、地主にアパートなどの賃貸住宅を建てさせ、建てたあとも借り上げて管理し続ける会社だ。建築で売上を立て、一括借上げ(サブリース)と管理で毎年の収入を積み上げる。筆者の結論は、10年の中立で見て今の値段はやや割安というものだ。
理由は、手元の現金と稼ぐ力に比べて値段が低いことにある。ただし厚い現金をそのまま株主のものとは数えない。主要株主は創業家の資産管理会社で、2025年末の自己株式の公開買付けも、その会社の売却意向から始まった。現金が戻るかは経営の意思しだいなので、余った分は半分だけ見た。
事業は国内の賃貸アパートに絞られる。世帯数が減る中で建築の数量は伸びにくい。それでも管理戸数は積み上がり、家賃も建築費も物価について上がる。中立では10年後の営業利益が今の2割強の増加にとどまり、物価の伸びを下回る。
怖いのは、オーナーへ払う借上げ家賃の約束が固定費のまま残ることだ。空室が増えて家賃を下げざるをえなくなれば、保証する側の東建の利益が先に削られる。悲観の筋書きはこの逆ざやを軸に置いた。
会長の左右田稔氏が2025年7月に亡くなり、社長の左右田善猛氏が単独で舵を取る体制になった。会社は今期、増収でも減益を見込む。ここで資本の使い方がどう変わるかが最初の試験になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは3つある。事業が10年後も続くか、利益が現金になるか、経営が株主のために資本を使うかだ。
事業は続く。賃貸住宅は人が住む限り要る。建てて、借り上げ、管理するという仕組みも、入居率99%が示すとおり回っている。ただし数量は伸びず、堀は普通の広さにとどまる。
利益の質は悪くない。無借金で、利益はほぼ現金になる。弱いのは、借上げ家賃という固定の約束だ。景気のよい時は気づかず、悪くなった時に重くなる。見かけの現金の厚さを、そのまま安全域とは数えない。
もっとも気になるのは資本の使い方だ。現金の積み上がりは10年続き、使われたのは創業家の売却意向に応えた買付けが最初の大きな動きだった。この現金が配当と自社株買いで少数株主に戻るなら、今の値段は安い。戻らなければ、価値は帳簿ほど高くない。
筆者は、この会社を「安いが、経営の意思を見極めたい会社」と見ている。値段に安全域はあるが、資本を預けるに足る経営かどうかは、これから数年の動きで決まる。
何で稼ぐ会社か
東建は賃貸住宅の「建てる」と「借り上げて管理する」を一社で持つ。売上のうち不動産賃貸が6割弱、建設が4割強を占める。
建設は、地主に土地活用としてアパートや事業用の建物を提案し、請け負う仕事だ。前期は受注が2割増え、完成を待つ仕事が厚い。子会社のナスラックは水回り製品を作り、外販も伸びている。営業利益率は10%台と高いが、完成する件数で振れる。
不動産賃貸は、建てた建物を一括で借り上げ、入居者に貸して管理する仕事だ。オーナーには借上げ家賃を約束し、入居者から集める家賃との差と管理料が会社の取り分になる。入居率は99%と高い。管理戸数は2019年に約25万戸で、いまはそれ以上と見る(最新の開示値は確認できず、推定)。利益率は6%台と低いが、毎年積み上がる。
賃貸の売上の大半は、オーナーへ払う借上げ家賃で消える。この約束は契約の期間、何十年も続く。会社の固定費は見た目より重い。
このほか広告・旅行・ゴルフ場・ホテルがあるが、売上の1%に満たない。事業の範囲は国内だけで、海外も分譲も大きくは持たない。
優良さと弱いところ
強みは、建築と管理が互いの入口になっていることだ。建てた建物を自社で借り上げるので、オーナーとの付き合いは何十年も続く。そこから追加の建築や建て替えの話が出る。入居率99%を保つ管理力も、その土台にある。
財務も強い。有利子負債はほぼなく、純現金は時価総額の8割にあたる。ROEは過去10年の中央値で10%台。会社は前期に過去最高の経常利益を出した。
弱みは3つある。1つ目は規模だ。同じ賃貸建築で首位の大東建託に、管理戸数でも営業網でも及ばない。2つ目は建築の粗利率で、資材高と労務費で下がっている。3つ目は、借上げ家賃の固定の約束だ。空室が増えて賃料が下がると、約束と実入りの差を東建が背負う。
価格を自分で決める力は強くない。家賃は市場で決まり、建築費はオーナーの収支に縛られる。堀、つまり他社がまねできない強みは、普通の広さと見る。
経営の面では、創業家の影響が色濃い。会長だった創業者の死去で、持ち株の整理が進む局面にある。資本の使い方が少数株主に向くかどうかは、これから確かめる段階だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の賃貸アパート市場は、数量では縮む産業だ。新設住宅の着工は2025年度に71万戸まで落ち、2026年度は政策効果で戻る見込みだが、世帯数の減少は止まらない。賃貸は単身世帯の増加と相続税対策に支えられ、戸建より底堅い。貸家は総着工の4割前後と見て、年28万戸ほどの市場とみられる(推定)。東建の完成は年1万戸強で、シェアは4%前後になる。
競争は大手数社に絞られる。首位は大東建託で、建築・一括借上げ・管理のすべてで規模が大きい。大和ハウスと積水ハウスも賃貸住宅を柱の1つに持ち、ブランドで争う。東建は価格と営業力で地主を取りに行く中堅の立場だ。
物価3%の世界では、建築費も家賃も上がる。ただし家賃は建築費より遅れて動く。賃貸の2年ごとの改定は、物価に追いつくのに時間がかかる。賃貸のオーナーは借入で建てるので、金利が上がると利回りが薄れて建築需要を冷やす。ここが業界共通の下振れの入口だ。
規制も効いてくる。2020年に施行された賃貸住宅管理業法は、一括借上げの募集で将来の家賃の減額リスクを説明することを求めた。誇大な勧誘がしにくくなり、受注の質は上がるが、数量の伸びは抑えられる。
人手の不足は建築の完成を制約する。値上げを受け入れるオーナーの層が薄くなると、数量が先に減る。10年で見れば、建築は縮み、管理は広がるという分かれ方になる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、ここ数年で大きく動いた。長く現金をため込み、純現金は10年で2倍に膨らんだ。2025年12月に自己株式の公開買付けで約296億円を使い、発行済株式の17%を消した。
きっかけは、創業家の資産管理会社である東名商事から、保有株の一部を売りたいという意向が示されたことだ。会社の説明資料にその旨があり、社長の左右田善猛氏は協議と取締役会の決議には加わらなかったと開示している。形式の整え方は適切だが、会社の資金で大株主の売却に応じた形でもある。少数株主の目には、資本の使い方が株主全体のためなのか、気になる点が残る。
買付けの後も、東名商事は2割ほどを持つ。会長だった左右田稔氏の相続は2026年5月に確定したと伝えられ、持ち株の整理はまだ終わっていないとみられる。追加の売却や再編が出る余地がある。
配当は増配基調で、配当性向は3割ほどだ。今期は中間配当を置かず、期末にまとめる。純利益の7割は手元に残る計算で、現金はまたたまりやすい。(点検済み:起点の利益が高い側にないかを確かめ、直近2期の営業利益率5.8%は過去10年の平均4.7%台より高いので、中立の利益率は平均との中間の5.2%に置いた。)M&Aは大きなものがなく、国内の賃貸建築に集中している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃貸住宅の需要は、人口が減っても消えない。単身世帯は増え、相続税対策の需要もある。東建は前期に受注を2割増やし、完成待ちの仕事が積み上がっている。建築の営業利益は前期に1割以上伸び、粗利率の低下を数量で補った。
管理は売上の6割弱を占め、入居率は99%と高い。管理戸数は年々積み上がり、家賃を値上げできれば利益は物価以上に伸びる。借上げ家賃を払うのは固定の約束だが、満室に近いうちは逆ざやにならず、むしろ入居者から集める家賃との差が増える。
財務は無借金で、純現金は時価総額の8割に近い。借金が重い同業と違い、金利が上がっても利払いは増えず、現金の受取利息が増える。会長の死去で持ち株の整理が進み、自己株式の公開買付けで資本の使い方が株主還元に向かった。この流れが続けば、配当と自社株買いで株主に戻る現金が増える。
10年後には、管理の収入が営業利益の過半を支え、景気の波に強い会社になる。建築で利益を稼ぎ、管理でそれを積み上げる循環が強まり、今の値段は割安になる。
慎重な見方
賃貸アパートは、需要が人口の減少に直面する産業だ。世帯数が減れば空室が増え、オーナーの収支が悪くなる。その時に最初に傷むのは、借上げ家賃を約束している東建だ。家賃が下がっても、オーナーへ払う額は契約で決まっている。空室や賃料の下落が広がれば、管理の利益は逆ざやに転ぶ。
建築の側も楽ではない。資材高と労務費の上昇で粗利率は下がり、販促費で補っている。物価3%の世界ではオーナーの借入金利も上がり、賃貸経営の利回りは薄くなる。受注が前期に2割増えたのは、価格改定前の駆け込みや、積み残しの消化かもしれない。会社自身が今期は減益を見込んでいる。
最大の懸念は資本の使い方だ。厚い現金は、創業家の売却意向から始まった買付けに使われた。主要株主が相続の整理で売るたびに会社の資金が動くなら、少数株主は割を食う。純現金は借上げ家賃の約束や前受金を差し引くと見かけほど厚くなく、戻る額も限られる。
10年後には、国内の建築が縮み、管理は賃料の下落で薄い利益しか生まない。規模で勝る大東建託にオーナーを奪われ、構造的に優良さを失った会社になっている。
どちらに重みを置いたか
短期の崩れにくさは、強気の見方に分がある。無借金で入居率が高く、受注も厚い。ただし数量が伸びない国内専業で、借上げ家賃の約束と創業家の影響という重い論点が2つ残る。確率は慎重側にやや寄せ、悲観15%、やや悲観23%にした。
一方で、中立でも利益は物価をやや下回って伸び、ROEは10%台を保つ。式から出る価値は今の時価総額を1割半ほど上回り、結論は「やや割安」になった。現金の取り分を半分にしても、この結論は変わらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 34,736 円3,856 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 7,565 円840 億円)。 今の値に割り戻すと 22,123 円2,456 億円、今との差 +68.1%、 期待の年率 +12.4%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 62,364 円6,923 億円 | 12,080 円1,341 億円 | +465.7% | +18.9% | 7,444 円826 億円 |
| やや楽観 | 20% | 53,563 円5,946 億円 | 10,089 円1,120 億円 | +383.7% | +17.1% | 12,730 円1,413 億円 |
| 中立 | 32% | 41,089 円4,561 億円 | 7,648 円849 億円 | +270.3% | +14.0% | 15,596 円1,731 億円 |
| やや悲観 | 23% | 16,611 円1,844 億円 | 6,756 円750 億円 | +77.6% | +5.9% | 5,374 円597 億円 |
| 悲観 | 15% | 5,453 円605 億円 | 2,252 円250 億円 | −41.5% | −5.2% | 1,156 円128 億円 |
| 加重平均 | 100% | 34,736 円3,856 億円 | 7,565 円840 億円 | +221.4% | +12.4% | 42,301 円4,696 億円 |
今の株価時価総額 13,160 円1,461 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:建築が戻り、管理の利益が積み上がる 利益 326 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 62,364 円6,923 億円
受注の積み上がりが完成に結びつき、建築の完成は10年で15%増える。単身世帯の増加と相続税対策の需要が賃貸建築を支え、東建はオーナーへの提案力で大東建託などと並んでシェアを守る。粗利率は価格改定が定着して前期並みに戻る。
管理戸数は年2%台で増え、入居率は高いまま推移する。家賃は物価にほぼ追いつき、借上げ家賃との差が少しずつ広がる。管理で稼ぐ利益が、建築の波を和らげる。
資本の面では、持ち株の整理が終わり、純現金の厚さが配当と自社株買いで株主に戻る。配当性向は6割に近づく。ただし国内専業の枠は変わらず、海外や分譲に大きく出ることはない。会社全体は、管理の厚みを持つ安定した賃貸の会社として評価される10年になる。
- 建設(賃貸住宅・事業用建物の建築請負):数量 1,570(年間の完成棟数(棟))× 価格 1.69(1棟あたりの請負額(億円))→ 売上 2,653 億円・営業利益 305 億円。受注が完成に結びつく
- 不動産賃貸(一括借上げ・管理運営):数量 35.8(管理戸数(万戸))× 価格 107(1万戸あたりの年間売上(億円)。1戸で年80万円(家賃収入と管理料))→ 売上 3,831 億円・営業利益 268 億円。管理戸数が年2%台で増え、家賃も物価並み
- その他(広告・旅行・ゴルフ場・ホテル):数量 16.0(延べ利用者数(万人))× 価格 2.01(1万人あたりの売上(億円)。1人1.5万円)→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。利用者が戻る
倍率:事業の純利益 320 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 19.53 倍、時価総額 6,654 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の賃貸需要が崩れず、創業家の持ち株整理も株主還元に向かう組み合わせは起こりうるが、数量が伸びない産業なので 1 割にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:数量は微減でも単価と管理が支える 利益 276 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 53,563 円5,946 億円
建築の完成は10年で5%ほど増え、粗利率は前期をわずかに下回る水準で落ち着く。貸家の着工が縮んでも、東建は営業の厚みで受注を保つ。
管理戸数は年2%弱で増え、家賃は物価の8割ほどのペースで上がる。入居率が99%近くを保つ限り、借上げ家賃との差は広がる。
資本の面では、創業家の持ち株の整理が静かに進み、配当は増える。自己株式の公開買付けのような動きは繰り返されず、現金はゆっくり積み上がる。会社は、国内の賃貸という限られた市場で堅実に稼ぎ続ける10年になる。派手な成長はないが、管理の収入が建築の波をならし、利益の質は保たれる。
- 建設(賃貸住宅・事業用建物の建築請負):数量 1,435(年間の完成棟数(棟))× 価格 1.65(1棟あたりの請負額(億円))→ 売上 2,368 億円・営業利益 256 億円。完成が小幅に増える
- 不動産賃貸(一括借上げ・管理運営):数量 33.6(管理戸数(万戸))× 価格 105(1万戸あたりの年間売上(億円)。1戸で年80万円(家賃収入と管理料))→ 売上 3,528 億円・営業利益 240 億円。管理が積み上がり、家賃は物価の8割強
- その他(広告・旅行・ゴルフ場・ホテル):数量 15.0(延べ利用者数(万人))× 価格 2.01(1万人あたりの売上(億円)。1人1.5万円)→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 270 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 19.16 倍、時価総額 5,573 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は減っても物価で単価が上がり、管理の積み上がりで利益が伸びる姿は現実的で、2 割に置いた。
中立 32% 中立:数量は微減、単価は物価並みで利益が伸びる 利益 210 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 41,089 円4,561 億円
国内の貸家の着工は縮み、建築の完成は10年で5%減る。単価は建築費の上昇を転嫁して物価並みに上がる。粗利率は前期より少し下で落ち着き、建築の営業利益率は9.5%に落ち着く(直近2期の10%台は過去10年で高い側)。
管理戸数は完成の積み上げと解約の差で、10年に14%増える。家賃は物価より遅れて上がり、10年で3割弱の上昇にとどまる。管理の利益率は前期並みの6%台だ。本社費は物価で増える。
営業利益は今の2割強の増加で、物価の伸びを下回る。借入はなく、現金の受取利息は短期金利の上昇で増える。資本の面では、配当は純利益の5割ほどまで上がり、現金は積み上がりながら一部が戻る。大きなM&Aはなく、競争は大東建託を軸に今の構図が続く。会社は、物価について伸びる国内の賃貸の会社として10年を過ごす。
- 建設(賃貸住宅・事業用建物の建築請負):数量 1,300(年間の完成棟数(棟))× 価格 1.61(1棟あたりの請負額(億円))→ 売上 2,090 億円・営業利益 199 億円。世帯数減で完成が微減、単価は物価並み、利益率は直近の10.5%から9.5%へ
- 不動産賃貸(一括借上げ・管理運営):数量 31.4(管理戸数(万戸))× 価格 102(1万戸あたりの年間売上(億円)。1戸で年80万円(家賃収入と管理料))→ 売上 3,215 億円・営業利益 199 億円。管理戸数が14%増、家賃は物価より遅れる、利益率は6.5%から6.2%へ
- その他(広告・旅行・ゴルフ場・ホテル):数量 14.6(延べ利用者数(万人))× 価格 2.01(1万人あたりの売上(億円)。1人1.5万円)→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 205 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)400 億円。全体の PER 18.31 倍、時価総額 4,146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の減少を物価が相殺し、利益は物価をやや下回って伸びるという、業種の前提に沿った最も重みの置ける筋書き。
やや悲観 23% やや悲観:空室が増え、借上げの利益が細る 利益 128 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 16,611 円1,844 億円
世帯数の減少が想定より速く、賃貸建築の需要が細る。オーナーの借入金利も上がり、新規の建築は2割近く減る。値引きと販促が増え、建築の粗利率は下がる。
管理戸数はほぼ横ばいで、入居率は95%台に落ちる。賃料は物価に追いつかず、借上げ家賃との差が縮む。固定の約束を背負う東建の利益率は、5%まで下がる。
資本の面では、現金をためたまま使い道が定まらず、自己株式の買い付けのような動きも限られる。規模で勝る大東建託にオーナーを奪われ、営業利益は半分近くに減る。会社は、優良な賃貸の会社という評価を少しずつ失う10年になる。
- 建設(賃貸住宅・事業用建物の建築請負):数量 1,120(年間の完成棟数(棟))× 価格 1.55(1棟あたりの請負額(億円))→ 売上 1,736 億円・営業利益 139 億円。完成が2割近く減り、値引きと販促が増える
- 不動産賃貸(一括借上げ・管理運営):数量 28.3(管理戸数(万戸))× 価格 98(1万戸あたりの年間売上(億円)。1戸で年80万円(家賃収入と管理料))→ 売上 2,773 億円・営業利益 139 億円。管理戸数は横ばい、賃料が物価に追いつかない
- その他(広告・旅行・ゴルフ場・ホテル):数量 13.0(延べ利用者数(万人))× 価格 2.01(1万人あたりの売上(億円)。1人1.5万円)→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:ROE 7.2%(純利益 128 億円 ÷ 自己資本 1,778 億円)。事業の ROE が k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。空室と賃料の下落で稼ぎの質が落ち、固定の約束が利益を削る構造から、上限の 8 割の 10.0 倍に置いた。
確率:世帯数の減少が速く、賃料の下落が借上げの利益を削る組み合わせ。借上げ家賃の固定の約束と創業家の動きの不透明さがあるため、同領域の会社より少し厚く置いた。
悲観 15% 悲観:借上げが逆ざやに転び、需要も縮む 利益 −25 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 5,453 円605 億円
世帯数の減少と金利の上昇が重なり、賃貸経営の利回りが落ちて、オーナーの建築意欲が冷える。建築の完成は4割減る。値引きで利益はほとんど残らない。
管理戸数は2割減る。入居率が下がって賃料も下がり、オーナーへ約束した借上げ家賃との差が逆になる。契約の見直しを求める動きと、賃貸住宅管理業法の説明責任をめぐるトラブルも重なる。会社は逆ざやを補う引当を積み、営業赤字に落ちる。
大東建託をはじめとする大手に、オーナーと管理戸数を奪われる。創業家の持ち株の整理も落ち着かず、資本の使い方への信頼が揺らぐ。厚い現金も、借上げ家賃や前受金の約束を差し引くと、帳簿の数字ほど残らない。会社は構造的に優良さを失った姿になる。配当は細くしながらも続け、その原資は手元の現金と土地・建物の売却でまかなう。
- 建設(賃貸住宅・事業用建物の建築請負):数量 820(年間の完成棟数(棟))× 価格 1.45(1棟あたりの請負額(億円))→ 売上 1,189 億円・営業利益 48 億円。完成が4割減り、利益がほぼ消える
- 不動産賃貸(一括借上げ・管理運営):数量 22.0(管理戸数(万戸))× 価格 90(1万戸あたりの年間売上(億円)。1戸で年80万円(家賃収入と管理料))→ 売上 1,980 億円・営業利益 20 億円。管理戸数が2割減り、逆ざやで採算が崩れる
- その他(広告・旅行・ゴルフ場・ホテル):数量 10.0(延べ利用者数(万人))× 価格 2.01(1万人あたりの売上(億円)。1人1.5万円)→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。縮む
倍率:赤字(純利益 −25 億円)で稼ぐ力は測れず、床は売れる資産の税後で測る。現金預金から現金で返す約束と逆ざやの引当を引き、土地・建物の売却額の税後を足した約 600 億円を、今の自己資本 1,164 億円に対する PBR 0.52 倍(時価総額 605 億円)に置いた。構造的に借上げが逆ざやに転び、需要も縮んだ姿。谷の年は営業赤字で、EV ÷ 営業利益では測れない。
確率:賃料の下落で借上げが逆ざやになり、建築も縮むという構造的な負け筋。主要株主の整理を含む経営の不透明さを勘案し、同領域の悲観より少し厚い 15% にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設(賃貸住宅・事業用建物の建築請負)
地主向けの賃貸住宅・事業用建物の請負と、子会社ナスラックの水回り製品の外販。
| 数量年間の完成棟数(棟) | 価格1棟あたりの請負額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 1,367 | 1.20 | 1,641 | 172 |
| 10 年後 中立 | 1,300 | 1.61 | 2,090 | 199 |
取り方:2026年4月期の建設の売上高約1,641億円を、アパートと事業用建物の平均請負額1.2億円(推定)で割って完成棟数を逆算した。中立の価格は物価並み(10 年 1.34 倍)。棟数は実質で、世帯数減と貸家着工の縮小を受けて 10 年 0.95 倍とみる
不動産賃貸(一括借上げ・管理運営)
建てた建物を一括で借り上げて転貸し、管理料と家賃の差を取る。
| 数量管理戸数(万戸) | 価格1万戸あたりの年間売上(億円)。1戸で年80万円(家賃収入と管理料) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 27.5 | 80 | 2,202 | 142 |
| 10 年後 中立 | 31.4 | 102 | 3,215 | 199 |
取り方:2026年4月期の不動産賃貸の売上約2,202億円を、1戸あたりの年間売上80万円(月約6.7万円。推定)で割って管理戸数を約27.5万戸とした。2019年の約24.8万戸から年1%ほどの増加と整合。中立の管理戸数は完成の積み上げと解約の差で10年 1.14 倍。価格は家賃が物価より遅れて動くので、中立で10年 1.28 倍(物価の1.34倍を下回る)
その他(広告・旅行・ゴルフ場・ホテル)
ゴルフ場とホテルの運営、広告、旅行。売上の1%未満。
| 数量延べ利用者数(万人) | 価格1万人あたりの売上(億円)。1人1.5万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 14.6 | 1.50 | 22 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.6 | 2.01 | 29 | 1 |
取り方:2026年4月期のその他の売上約22億円を、ゴルフ・宿泊・旅行の平均の客単価1.5万円(推定)で割って延べ利用者数を逆算した。小さい事業で、価格は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)
リスクと懸念
借上げ家賃の固定の約束(逆ざや)
東建はオーナーへ、契約の期間にわたって借上げ家賃を約束する。空室が増え、賃料が下がっても、約束した額は減らない。入居率99%の今は見えないが、悪化すると最初に利益が削られる。10年で見て最大の下振れ要因だ。
創業家の持ち株の整理
創業者の左右田稔氏が2025年7月に亡くなり、相続が進んでいる。主要株主の東名商事は買付け後も2割ほどを持つ。追加の売却や再編が出れば、需給と経営の方針が変わりうる。会社資金が絡む動きなら、少数株主には不利になる。
資本の使い方が少数株主に向かない恐れ
純現金は時価総額の8割に近いが、使い道は創業家の売却意向に応える自己株式の公開買付けが最初の大きな動きだった。現金が積み上がるだけで戻らなければ、今の値段が安くても価値は帳簿ほど高くない。余った現金を半分で見た理由だ。
建築の粗利率の低下
資材高と労務費の上昇、販促費の増加で、完成工事の粗利率は前期に下がった。会社は今期、増収でも減益を見込む。価格改定が受注を冷やせば、数量が先に減る。建築は営業利益の半分以上を稼ぐ。
金利上昇によるオーナーの意欲の低下
物価3%、国債3%の世界では、賃貸オーナーの借入金利も上がる。利回りが薄れれば、建築の意欲が冷え、受注が減る。東建の現金は金利上昇で利息が増えるが、本業の建築需要はその逆に動く。
世帯数の減少と空室率の上昇
人口の減少は地方から効く。貸家は単身世帯の増加で底堅いが、供給が需要を上回る地域では空室率が上がる。管理戸数の積み上げが止まり、解約が増えれば、管理の利益の土台が崩れる。
規制と契約の見直し
賃貸住宅管理業法は、一括借上げの勧誘で家賃減額のリスクを説明するよう求める。契約の見直しを求める動きや、説明をめぐるトラブルが出れば、受注と信用に響く。同業の過去の問題が業界全体の目を厳しくしている。
今後の分かれ目
- 賃貸の入居率が95%を割り込み、賃料の下落が続いたら
- 借上げの逆ざやが現実味を帯びる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 東名商事がさらに保有株を売る、または会社が追加の公開買付けを行ったら
- 経営の資本の使い方への信頼が下がる。資金の動きの目的と、社長が協議から外れたかを確かめ、悲観側に寄せる。
- 配当性向が5割を超え、自己株式の買い付けが定期的に行われたら
- 余った現金が株主に戻る道筋が見える。現金の取り分を半分から広げる根拠になり、楽観側に寄せてよい。
- 受注が減少に転じ、完成待ちの仕事が細り始めたら
- 建築の数量が先に落ちる。粗利率の低下と合わせて、やや悲観側に重みを移す。
- 賃貸住宅管理業法の運用で、一括借上げの契約の見直しが広がったら
- 借上げの条件が悪化し、管理の利益率が下がる。悲観側の確率を上げる。
- 管理戸数の開示で、年2%台の増加が続いていると確認できたら
- 管理の積み上げが続く証拠になる。楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。
見ておくもの
- 賃貸建物の入居率と、管理戸数・解約の推移
- 建設の受注高・完成工事総利益率(粗利率)
- 配当性向・自己株式の買い付けの有無と、純現金の水準
- 東名商事と左右田家の持ち株比率の変化(主要株主の異動の開示)
- 賃貸住宅管理業法に関連する行政の動きと、オーナーとの契約の見直し
倍率と資本コストの決め方
数量(完成棟数・管理戸数=実質)と価格(物価3%を入れた名目、家賃は物価より遅れるので1.28倍)をセグメントごとに積み、先に10年後の営業利益を出した。倍率は正当化 PER の式(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 3.5%)の 9〜8.5 割に置き、ROE が k を上回る中立〜楽観は 1÷k を下回らせていない。市場の倍率や今の株価は見ていない。現金は、借上げ家賃の運転資金と前受金・預り保証金を引いた約400億円までを余った分とし、戻り方 0.5 で足した。現金の受取利息は 2% で回り、純利益に入れた。新リース会計基準は2028/04期から適用され、借上げ物件が BS に載って営業利益と有利子負債の形が変わる。10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.3→19.53 倍・やや楽観 PER 12.7→19.16 倍・中立 PER 12.6→18.31 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。理由は quality_why。創業家の影響や借上げ家賃の約束といった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。