結論
ロゴスホールディングスは、北海道の高断熱住宅を出発点に、地場工務店の買収と新規出店で商圏を広げる住宅会社である。筆者は現在の時価総額約59億円を、危うさを十分考えても長期の稼ぐ力に対して割安と判断する。ただし、大手住宅メーカーのように安定した利益を期待できる会社ではない。
2026年5月期には年間1,457棟を引き渡し、売上高は約495億円になった。注文住宅が売上の約8割を占め、北海道の戸建住宅市場では会社推計で約11%のシェアがある。ここには寒冷地で培った断熱技術と、集客から設計までの工程を効率化する強みがある。一方、全国の戸建て市場でのシェアはまだ小さく、出店や買収で取れる余地もある。
最大の問題は貸借対照表だ。2026年5月末の自己資本は約40億円で、総資産に占める割合は17%にすぎない。2027年5月期第1四半期には引渡しの季節偏重に伴う赤字で約31億円まで縮み、買収で生じたのれんも厚い。札証物産の在庫処分益は一時的であり、アエラホームの事業承継には統合費用の不確実性が残る。
10年後も家は建てられるが、国内の新築戸数は人口と世帯の変化で減りやすい。その中で会社が勝つには、販売棟数を市場以上に伸ばし、工事の集中を減らして利益率を守る必要がある。強い競争優位が確立したとは言えないため、悲観側の確率を厚くした。それでも、控えめな利益率で営業規模が広がれば、現在の値段に対する安全域は大きいと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、家という必需品を売ることと、継続的に高い株主利益を得られることは別の話である。住宅は景気が悪くても長く必要とされる。しかし、顧客が購入するのは何十年に一度で、ブランドへの習慣的な再購入が利益を守ってくれない。ロゴスホールディングスの競争力は、地元の知名度、寒冷地の施工経験、合理的な設計・建築手順にあり、これらが価格競争でどれだけ残るかを見なければならない。
オーナーの利益とは、会計上の純利益だけではない。展示場や工場の更新、土地の仕入れ、職人確保、買収先の立て直しに使う資金を差し引いた後に、持ち主へ残る現金である。2026年5月期の設備投資は約9億円と会計上の減価償却費約2億円を大きく上回り、拡張投資を続ける間は純利益がすべて自由に使えるわけではない。昔取得した設備の償却費だけを物価で膨らませず、新設・更新に使う現金の増加を重くみる。
最大の不確実性は買収の巧拙だ。北海道で成功した営業手法や工場のノウハウを買収先に移し、各地の設計・施工力を生かせれば、投じた資本から十分な利益を回収できる。逆にアエラホームなどの再建に追加資金がかさめば、帳簿上ののれんは価値を守らない。高い過去ROEは薄い自己資本と借入金によっても生じるため、増分のROICと現金の積み上がりで確かめたい。
その留保をしても、現在の企業価値は大きくない。長期的に住宅引渡の規模を広げ、利益率を大きく崩さなければ、持ち主が得る利益と還元の現在価値は現在の時価総額を超える。強い堀のない会社だからこそ悲観の損失をきちんと計算するが、危うさがあるという理由だけで安い値段を否定するべきでもない。
何で稼ぐ会社か
主業は個人向けの新築戸建住宅である。ロゴスホームは北海道で育てた断熱・耐震性能と適正価格を売りにし、豊栄建設は札幌周辺で自由設計の住宅を提供する。栃木のGALLERY HOUSE、新潟の坂井建設も、それぞれの地域ブランドを残して展開する。2026年5月期の売上構成は注文住宅77.3%、分譲住宅6.5%、宅地販売9.9%、その他6.3%だった。会計上は実質的に単一セグメントだが、需要と資金負担が異なるため、この分析では五つの収益源に分けて考える。
注文住宅では客が契約し、施工を終えて引き渡す時にまとまった売上が立つ。年間1,457棟という全社の引渡実績から、注文住宅を約1,365棟、分譲住宅を約92棟と仮に振り分けると、それぞれの売上から平均単価の規模が分かる。内訳の棟数は会社の開示値ではなく推計であり、土地の販売や付帯手数料を含む連結売上を、そのまま住宅一棟の価格と取り違えないことが重要だ。
宅地販売は住宅購入に伴う土地取引であり、住宅本体以上に在庫資金と市況の影響を受ける。その他にはリノベーション、障がい者向け共同住宅の建築、住宅に伴う手数料、工務店支援が含まれる。ROOT LINKとフィリピンの設計支援会社は、CAD図面作成や設計補助などを受託する。この一部は人の作業時間で売る事業なので、AIエージェントによる代替を別に考える。
同社の仕組みを支えるのは、自社の集客と営業支援システムによる見込み客管理である。苫小牧のモジュール工場では壁や床を工場で組み、現場の大工工期を自社比較で約半減させる工法も用いる。ただし、工場で製造する方式がグループの全住宅に広がっているわけではない。受注から引渡しまでの時間差が大きく、期末への完成集中で外注費が増えると、売上が伸びても利益を失う構造である。
優良さと弱いところ
一番評価できるのは、北海道で積んできた施工経験と地域の認知度だ。高断熱・高気密住宅を普通の家庭が届く価格で提供し、モデルハウスを通じて性能を体感してもらう。北海道の市場シェアが2024年度の会社推計7.9%から2025年度には10.93%へ高まったことは、地域での競争力を示している。建材の仕入れや設計の標準化にも、棟数を増やすほど効率が上がる余地がある。
しかし、顧客は家を生涯に何度も買うわけではなく、乗り換えにくさが繰り返しの収益を守る事業ではない。比較先は一条工務店、セキスイハイム、土屋ホーム、地場の工務店など多数ある。断熱性能も模倣可能で、価格を自由に引き上げれば住宅ローンの返済負担で顧客が離れる。会社が進めた値上げは原材料費の転嫁の証拠ではあるが、物価を上回る恒常的な値決め力の証拠にはまだならない。
MCB工法は施工職人不足への有効な対応策になり得る。ただ、専用工場の固定費を回収するほど棟数が増え、標準化できる商品比率が高まらなければ、規模拡大が利益の拡大を保証しない。2022年には営業利益率が4%台だったが、2023年には赤字、2025年には1%台へ落ちた。2026年の売上急増でも利益率は3%弱にとどまり、効率化の成果はまだ不安定だ。
自己資本の薄さも堀を弱くする。2026年5月末には約26億円ののれんがあり、簿価の自己資本約40億円をそのまま清算価値と考えられない。金融機関の借り換え、土地在庫、職人の確保が同時に悪化すれば、増分の投資収益率は資本コストを下回りうる。地域ブランドと設計の効率は評価するが、強い堀が十年維持される企業とは見なさない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の戸建住宅市場は縮む市場である。会社が国土交通省の着工統計から計算した2025年度の戸建市場は全国で約8.1兆円、北海道で約2,342億円だった。会社の売上ベースのシェアは全国で0.40%、北海道で10.93%と地域差が大きい。北海道と既進出の本州地域を合わせた市場は約2.1兆円で、シェアは1.52%である。北海道の存在感を全国へそのまま広げられるかが長期成長の分かれ目になる。
競争相手は、北海道では一条工務店、土屋ホーム、セキスイハイム、ジョンソンホームズなどで、本州ではタマホームや積水ハウス、地元工務店が加わる。会社別の売上シェアを全地域で同じ定義で比較できる開示は乏しい。ただし、住宅産業新聞の集計では、2025年度の大手10社の住宅販売戸数は計約11.5万戸で、新設住宅着工総戸数に対する割合は15.6%だった。大手でも市場を独占しておらず、地域の施工力と商品・価格で勝負する余地はある。
もっとも、住宅着工は人口減と実質賃金、住宅ローン金利に左右される。業種ノートに沿い、国内全体の年間新設住宅着工は足元の70万戸台から10年後には60万戸台へ緩やかに減るとみる。名目価格は物価3%のもとで上がるが、建材費と職人の賃金も上がる。金融費用と生活費が膨らめば購入可能な予算が上限になり、全社が物価を超えて販売単価を上げ続けることはできない。
2025年の建築基準法改正による省エネ・構造審査の長期化は工期と引渡時期を揺らした。省エネ基準への対応は北海道仕様を得意とする同社には追い風にもなるが、申請や施工の負担も増やす。工務店の後継者不足はM&Aの機会を増やす一方、買った会社の人材を失えば地元の顧客基盤も一緒に失う。AIは図面作成を速めても現場施工を丸ごと代替できず、職人不足や金利の問題まで解決するものではない。
資本政策と M&A
会社は中期的な目標として全国50拠点を掲げ、2027年5月期には新規5店舗を計画する。2027年5月期は売上高約543億円、営業利益約21億円、純利益約12億円を予想するが、札証物産から承継した販売用不動産の売却による営業利益約3〜4億円は一時的なものだ。2030年度などを期限とする売上高、営業利益率、ROEの具体的な数値の約束は、確認した中長期方針にはない。
買収は事業戦略の柱である。2022年のGALLERY HOUSE、2024年末の坂井建設に続き、2026年には民事再生中の札証物産の在庫資産を取得し、アエラホームの住宅事業を事業承継した。後者は既存契約166件を引き継ぎ、統合費用がまだ確定していない。拡大で売上は伸びたが、2026年5月期には大きなのれんが残り、買収資金の投下に見合う増分ROICが継続して高いとまでは証明されていない。
株主還元の具体的な方針はDOE5%を下限、連結配当性向30%を目標とするものである。2027年5月期の配当予想総額は約3.5億円だ。2026年に導入し拡充した株主優待は原資の年額上限を約0.3億円とし、継続すれば10年で約3億円を株主へ移す。各筋書きの還元合計にはこれも含めた。
2026年にはエンデバー・ユナイテッドの大規模売出しが行われたが、これは既存株主の売却であって会社の自社株買いではない。資本余力が乏しい現状では、増配を続けながら展示場の更新、住宅在庫、買収代金を賄えるかを先に見るべきだ。余剰現金の株主への戻り方は、配当実績があるものの利益の半分以上の還元や継続的な自社株買いは確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北海道市場では既に会社推計で1割超のシェアを持ち、寒冷地の住まいを適正価格で作る技術が顧客に受け入れられている。全国での戸建販売シェアはまだ0.4%にすぎず、住宅着工が全国では減っても、既存の大手や後継者不足の工務店からシェアを取れば販売棟数は増やせる。名古屋、四日市などの新店では受注が計画を上回り、地域を超えて商品が通用する初期の兆候もある。
MCB工法は、大工が不足しても工期を短くできる現実的な仕組みだ。自社の比較では現場の大工工期が約半分になり、量が増えれば品質管理と材料調達の標準化が効いてくる。さらに営業・設計・見積りをグループの共通基盤に集めれば、各地域で一から仕組みを作る必要がなくなる。苫小牧工場の稼働率を上げ、期末の工事集中を解消すれば、売上成長以上に利益が増える可能性がある。
買収先のブランドを壊さず裏側の管理を統合する手法にも魅力がある。坂井建設に加えて、アエラホームから引き継いだ事業の再建が進めば、全国への出店を一から進めるより速く顧客を獲得できる。DOE下限を設けた還元も少数株主への目配りであり、利益が拡大するなら内部留保と配当を両立できる。まだ中堅の会社に対して現在の時価総額は小さく、長く保有した際の上振れは大きい。
慎重な見方
北海道で約11%のシェアがあっても、それは北海道という特定市場での実績である。一条工務店や積水ハウス、各地の地場工務店が競い合う本州では、顧客が期待する商品、土地価格、広告費、施工の担い手が異なる。新店が増えれば家賃、人件費、広告費は販売棟数に先行して増え、受注が期待に届かなければ損失が早く広がる。国内の住宅着工は十年先に減る見通しで、金利3%の世界は住宅購入の資金負担も重い。
財務は想像以上に脆い。2026年5月末の自己資本比率は17%で、のれん約26億円を除いた自己資本の実体は小さい。翌四半期には自己資本が約31億円まで減少し、土地在庫と未成工事受入金、借入金の変動が大きかった。販売用不動産の評価を下げ、買収先の収益見通しが崩れてのれんを減損すれば、債務条項や資金調達にも影響する。
特にアエラホームの再建は、住宅需要が弱い地域に固定費と未完成の契約を引き受けることでもある。札証物産の不動産処分益を恒常利益とみなして買収を続けると、売上の大きさに反して自由な現金が残らない。過去には赤字も経験し、薄い営業利益率が資材高や職人不足で簡単に消える。小さな設計受託部門もAIエージェントが作図・積算を代替して単価が下がり得る。会社が拡大を急ぎすぎれば、十年後の価値は資産処分で残るわずかな額にとどまる。
どちらに重みを置いたか
成長余地の大きさは認めるが、競争上の堀と財務余力については慎重な見方に分がある。過去の増収には買収と連結期間の変更が含まれ、アエラホームの承継後の利益も未確定だからだ。上側を24%、下側を44%と非対称にしたのは、住宅需要の縮小と自己資本の薄さ、買収の失敗が同時に起きる危険を重視したためである。AI代替の直接対象は小さいが、そこも楽観視しない。それでも長期価値が割安側になるのは、北海道外での控えめなシェア拡大だけでも利益が現在の企業価値に対して十分大きくなり得るためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 5,909 円232 億円(+ 還元の換算額還元の合計 996 円39 億円)。 今の値に割り戻すと 3,276 円129 億円、今との差 +134.5%、 期待の年率 +19.6%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 17,593 円690 億円 | 2,166 円85 億円 | +1,314.4% | +34.5% | 1,581 円62 億円 |
| やや楽観 | 16% | 12,204 円479 億円 | 1,631 円64 億円 | +890.4% | +29.2% | 2,214 円87 億円 |
| 中立 | 32% | 6,758 円265 億円 | 1,070 円42 億円 | +460.3% | +21.2% | 2,505 円98 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,203 円47 億円 | 765 円30 億円 | +40.8% | +4.4% | 531 円21 億円 |
| 悲観 | 17% | 360 円14 億円 | 76 円3 億円 | −68.7% | −11.7% | 74 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,909 円232 億円 | 996 円39 億円 | +394.3% | +19.6% | 6,905 円271 億円 |
今の株価時価総額 1,397 円55 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 地域網と工場の稼働率が同時に伸びる 利益 48 億円 · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 17,593 円690 億円
北海道の地域ブランドが衰えず、本州の新規出店でも価格と性能の評判が定着する。後継者不足の地方工務店を選別して買収し、アエラホームから引き継いだ顧客と施工網も維持できる。国内の住宅着工は減るが、会社自身の販売棟数は全国市場でシェアを取ることで伸び、注文住宅の引渡しは3,000棟に達する。全国の戸建市場に対する売上シェアは現在の0.4%から大きく上がる。
MCB工法の標準化がグループに広まり、建築現場の大工不足を補って工期を短くする。期末の引渡集中も解消し、外注費が膨らむことなく新店の固定費を吸収できる。営業利益率は過去の最高期を上回る水準へ改善するが、これは工場の稼働率向上と新店の成熟がともに起きる結果である。設計受託はAIエージェントで単純な作図需要が減るため、人月は現在を超えない。
高い利益から配当を増やしながら展示場と買収先へ再投資し、金融機関との関係も維持する。住宅の価格競争は続くが、規格化により低いコストで建てられる利益が残る十年になる。
- 注文住宅(北海道・本州):数量 3,000(年間引渡棟数(棟、内訳推計))× 価格 0.42(住宅一棟当たり注文住宅売上(億円))→ 売上 1,260 億円・営業利益 76 億円。全国のシェア拡大で注文3,000棟。高断熱仕様の名目単価は今の1.50倍、利益率はMCBと成熟店の効率化が定着した上振れ。
- 分譲住宅:数量 250(年間分譲住宅引渡棟数(棟、推計))× 価格 0.54(分譲住宅一棟当たり売上(億円))→ 売上 135 億円・営業利益 7 億円。買収先の建売営業網を生かし250棟。土地付き平均単価が上昇。
- 宅地販売:数量 920(年間販売宅地区画(区画、推計))× 価格 0.15(一区画当たり宅地売上(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 6 億円。住宅契約の増加に連動して920区画、土地仕入の規律が保たれる。
- リノベーション・付帯業務・施設建築:数量 3,250(住宅引渡に連動する付帯収益換算件数(件、推計))× 価格 0.03(換算一件当たりの付帯売上(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 6 億円。リノベと施設建築が成長し、住宅引渡と付帯収益の換算件数が増える。
- 工務店向け設計・CAD受託支援:数量 120(対外設計・CAD支援の年間換算人月(人月、仮定))× 価格 0.02(人月当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を受けても人月は現状を超えない。価格は物価累積の範囲内。将来の永続成長はゼロ。
倍率:k8.5%、10年後ROEは48÷220=21.8%、堀は普通で超過収益の残存割合1/2。RONIC=8.5%+1/2×(21.8%−8.5%)=15.2%。g_longを2%とし、正当化PER=(1−2%÷15.2%)÷(8.5%−2%)=13.36倍。上振れ利益そのものを数量と粗利に入れ、倍率を市場の過去値で決めない。
確率:10年で注文住宅を約3,000棟へ倍増させ、アエラホームの承継と追加買収を無理なく収益化する必要がある。全国の新築戸数が減る中、地域をまたいだ連続成功には高い条件が必要なので8%にとどめる。
やや楽観 16% 本州の新店が成熟し買収も回る 利益 34 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 12,204 円479 億円
全国50拠点への展開が軌道に乗り、北海道の比率は下がっても、寒冷地仕様の高性能住宅という商品軸が東北、北陸、東海でも支持される。アエラホームの承継で加わった設計・施工スタッフを定着させ、坂井建設など既存買収先との管理システム統合を進める。注文住宅は2,600棟へ伸びるが、成長は国内市場の拡大ではなく他社からのシェア獲得によるものだ。
本州の住宅単価は地域差があるものの、全体の価格転嫁は物価におおむね沿う。標準仕様の広がりと着工・引渡しの平準化で外注費の浪費を減らし、営業利益率は4%台半ばへ上がる。住宅会社の営業拠点は効率化するが、建築現場の人手は引き続き必要であり、拡大しても無制限に利益率が上がるわけではない。
設計補助の対外受託はAIエージェントが作図や積算を引き受け、人月需要が減る。そこで失う利益よりも住宅本業での工程短縮効果が大きく、還元と内部留保を両立して借金依存度を徐々に下げる。
- 注文住宅(北海道・本州):数量 2,600(年間引渡棟数(棟、内訳推計))× 価格 0.39(住宅一棟当たり注文住宅売上(億円))→ 売上 1,001 億円・営業利益 55 億円。国内着工が減っても、出店と買収による全国シェア獲得で2,600棟へ。名目価格は今の1.37倍。
- 分譲住宅:数量 205(年間分譲住宅引渡棟数(棟、推計))× 価格 0.50(分譲住宅一棟当たり売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 5 億円。在庫回転の改善で205棟、平均単価は物価を少し上回る。
- 宅地販売:数量 800(年間販売宅地区画(区画、推計))× 価格 0.14(一区画当たり宅地売上(億円))→ 売上 112 億円・営業利益 4 億円。住宅引渡と一体の土地販売800区画、過剰な先行仕入は避ける。
- リノベーション・付帯業務・施設建築:数量 2,805(住宅引渡に連動する付帯収益換算件数(件、推計))× 価格 0.03(換算一件当たりの付帯売上(億円))→ 売上 76 億円・営業利益 5 億円。住宅付帯業務に再生・改修案件の上乗せ、共通費は別途控除。
- 工務店向け設計・CAD受託支援:数量 100(対外設計・CAD支援の年間換算人月(人月、仮定))× 価格 0.02(人月当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AI代替で工数は0.83倍。金額が増えても名目単価の上昇だけ。
倍率:k8.5%、ROE33.5÷171=19.6%、通常の堀でRONIC=14.0%。十年後以降の名目成長gは2%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.19倍を使う。出店と統合に伴う利益率の上振れは事業側にだけ反映し、倍率を割り増さない。
確率:北海道での販売モデルの横展開に成功し、坂井建設やアエラホームなどの既存拠点が一定の利益率に達するなら実現する。新店の立ち上げ負担が軽くなる可能性はあるが、競合と職人不足を考え16%。
中立 32% 住宅着工縮小を小幅なシェア拡大で上回る 利益 19 億円 · PER 12.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,758 円265 億円
北海道では世帯数と住宅着工がじわじわ減るが、高断熱住宅の地域ブランドを守り、市場全体より小さい落ち込みにとどめる。本州では新店の成長と買収した地場住宅会社の顧客基盤が寄与し、注文住宅2,000棟、分譲住宅145棟を引き渡す。全国の戸建市場は縮小しても、同社の全国シェアは今より高まる。ただし、50拠点をすべて高収益店にできるとは想定しない。
住宅価格は原材料と賃金の上昇におおむね連動するが、住宅ローン返済額を考慮すると継続的な超過値上げは難しい。売上が増える間に、期末の工事集中を減らす改善が進み、営業利益率は3%台半ばで落ち着く。MCBの生産性向上は本業の費用を抑えるものの、設計・展示場・営業スタッフへの投資は続く。
新店と在庫への再投資により自己資本が積み上がり、高かったROEは低下する。それでも配当性向30%を基本に還元を続けられ、2027年の札証物産の在庫処分益を恒常的な利益とせずとも、株主に残る利益は増える。CAD受託だけはAIエージェントで工数が約35%減り、名目単価の上昇も限定的になる。
- 注文住宅(北海道・本州):数量 2,000(年間引渡棟数(棟、内訳推計))× 価格 0.37(住宅一棟当たり注文住宅売上(億円))→ 売上 730 億円・営業利益 33 億円。国内戸建市場は縮小、全国シェアは拡大。注文2,000棟、単価は今の約1.30倍で物価1.34倍を少し下回る。
- 分譲住宅:数量 145(年間分譲住宅引渡棟数(棟、推計))× 価格 0.47(分譲住宅一棟当たり売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 3 億円。分譲145棟、単価は今の1.34倍。土地の在庫金利を吸収した利益。
- 宅地販売:数量 620(年間販売宅地区画(区画、推計))× 価格 0.13(一区画当たり宅地売上(億円))→ 売上 82 億円・営業利益 3 億円。住宅と連動する土地620区画、単価は今の約1.30倍。
- リノベーション・付帯業務・施設建築:数量 2,145(住宅引渡に連動する付帯収益換算件数(件、推計))× 価格 0.03(換算一件当たりの付帯売上(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。住宅付帯業務の換算件数は住宅引渡に沿い、単価はおおむね物価並み。
- 工務店向け設計・CAD受託支援:数量 78.0(対外設計・CAD支援の年間換算人月(人月、仮定))× 価格 0.02(人月当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人月型のAIエージェント代替で数量120→78、0.65倍。単価は1.13倍にとどめ、g_longは0%。
倍率:k8.5%、ROE18.5÷130=14.23%、普通の堀の残存割合1/2によりRONIC=11.36%。将来の戸数減を織り込む長期g=2%で、正当化PER=(1−2%÷11.36%)÷(8.5%−2%)=12.68倍。利益率は2026年よりやや改善するだけで、強い堀の割増を認めない。
確率:北海道のシェアは既に高く、今後の量の伸びは本州の出店と買収先の維持に依存する。全国で引渡を約2,100棟に伸ばすのは十分可能だが、平準化による収益改善を限定的とした中心の32%。 下に寄せる理由:買収のれんの大きさと四半期の資金繰り変動を踏まえ、下側の合計確率を上側より20ポイント高くした。
やや悲観 27% 地域展開の費用が先行し再建に手間取る 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,203 円47 億円
全国の住宅着工が減り、北海道では値引き競争が強まる。本州で店は増えるものの、名古屋や新潟以外の新拠点は集客費が高く、注文住宅の引渡はほぼ現在並みにとどまる。アエラホームなどの承継先で技術者や営業担当の離職が起こり、経営の共通化に時間がかかる。建築コストを販売価格に十分転嫁できず、同じ工事量でも利益の伸びが鈍い。
在庫を早く売るために分譲住宅や宅地の利益率を下げ、現場施工の人手不足を外注費で補う。展示場や工場の固定費を抑えられず、全社の営業利益率は2%未満になる。CAD設計支援の人月需要はAIエージェントで0.55倍まで縮み、単価も上がらないが、売上への直接影響より建設本体の利益の低さが痛い。
利益が小さいので配当はDOE下限を意識した水準に近づき、運転資金を維持するために新規買収を控える。銀行との関係は続き倒産には至らないが、自己資本を増やしても十分なROEを生めない、優良さの乏しい住宅会社として残る。
- 注文住宅(北海道・本州):数量 1,370(年間引渡棟数(棟、内訳推計))× 価格 0.33(住宅一棟当たり注文住宅売上(億円))→ 売上 445 億円・営業利益 15 億円。住宅着工減と新店の不振で数量はほぼ横ばい、価格は10年で1.16倍と物価に大きく負ける。
- 分譲住宅:数量 92.0(年間分譲住宅引渡棟数(棟、推計))× 価格 0.41(分譲住宅一棟当たり売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。販売戸数を増やせず、土地在庫を値引きして回転。
- 宅地販売:数量 440(年間販売宅地区画(区画、推計))× 価格 0.12(一区画当たり宅地売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。区画数が減り、値上げも限定的。
- リノベーション・付帯業務・施設建築:数量 1,462(住宅引渡に連動する付帯収益換算件数(件、推計))× 価格 0.02(換算一件当たりの付帯売上(億円))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。住宅付帯取引の横ばいと改修案件の小幅増。
- 工務店向け設計・CAD受託支援:数量 66.0(対外設計・CAD支援の年間換算人月(人月、仮定))× 価格 0.02(人月当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替で工数0.55倍、単価は据え置かれる。
倍率:ROE4÷70.4=5.7%はk8.5%を下回る。新規投資に超過収益を期待できないので永久成長を付ける正当化倍率ではなく、稼ぐ力の上限1÷8.5%=11.76倍を使う。買収・値引き・住宅需要の縮小により継続利益が不安定なため、その範囲内の9倍で測る。過去の市場PERを根拠にしない。
確率:下に寄せる理由:2026年5月末の自己資本比率17.4%、買収のれん26億円、翌1Qの自己資本減少が重なっている。買収先の再建と新店採算が遅れる可能性を大きく評価して27%。
悲観 17% 買収失敗と需要減で実体資産だけが残る 利益 −11 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 360 円14 億円
北海道の販売シェアが下がり、本州の買収先でも商品が顧客に合わず、新店を閉じる。住宅着工が50万戸台へ減る局面で高金利が長引き、建材と大工の費用が上がっても価格を転嫁できない。注文住宅の引渡は900棟に減り、分譲住宅は60棟まで落ち込む。地域に根付いた施工会社は残るが、集団としての規模拡大戦略は失敗する。
アエラホームなどの取得事業に期待した利益は得られず、簿価ののれん約26億円を大きく減損する。住宅・土地在庫も値下げによって売り切る必要があり、未成工事受入金と建築費の支払いを優先して、配当を停止する。MCB工場や展示場は売却・縮小するが、立地と用途が限られ簡単には元値で売れない。CAD受託はAIエージェントに需要を奪われ、人月は半分以下になる。
10年の営業赤字が続くものの、年度途中には一部の黒字期もあり、最終時点の存続会社に残る売却可能資産を保守的に評価する。自己資本は累積損失と減損で大きく減るため、増えたはずの自己資本に簿価倍率を掛けて価値を水増ししない。
- 注文住宅(北海道・本州):数量 900(年間引渡棟数(棟、内訳推計))× 価格 0.29(住宅一棟当たり注文住宅売上(億円))→ 売上 261 億円・営業利益 2 億円。全国の引渡が900棟に後退、価格は今の約1.03倍だけで実質大幅な値下げ。
- 分譲住宅:数量 60.0(年間分譲住宅引渡棟数(棟、推計))× 価格 0.37(分譲住宅一棟当たり売上(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 −1 億円。在庫処分の値引きで赤字。
- 宅地販売:数量 250(年間販売宅地区画(区画、推計))× 価格 0.11(一区画当たり宅地売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。土地価格を上げられず、資金回収のため評価損を受け入れる。
- リノベーション・付帯業務・施設建築:数量 960(住宅引渡に連動する付帯収益換算件数(件、推計))× 価格 0.02(換算一件当たりの付帯売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。顧客数が減り、リフォームも固定費を吸収できない。
- 工務店向け設計・CAD受託支援:数量 55.0(対外設計・CAD支援の年間換算人月(人月、仮定))× 価格 0.01(人月当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替で工数0.46倍、単価も下がり、業務は縮小する。
倍率:赤字のためPERを使わない。2026年5月末の自己資本40.4億円から非現金ののれん26.4億円を除くと約14.0億円の有形の持分が残る。債務、前受金、工事引渡義務を優先した後の売れる土地・設備と事業残余の価値を14.14億円程度の床として、今の自己資本40.4億円に0.35を掛ける。2036年の自己資本11億円には掛けない。2026年8月末の純資産は約30.6億円まで下がっており、床が確実に現金化するとの意味ではない。
確率:下に寄せる理由:買収先の土地在庫と固定費を抱えたまま住宅市場が縮み、のれんが損失になると自己資本の耐久力が乏しい。現時点で継続企業の前提注記はないため倒産を基本線とせず、17%の構造的敗北を考える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
注文住宅(北海道・本州)
ロゴスホーム、豊栄建設、坂井建設、GALLERY HOUSEが販売する高断熱・自由設計・規格型の戸建住宅。
| 数量年間引渡棟数(棟、内訳推計) | 価格住宅一棟当たり注文住宅売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,365 | 0.28 | 383 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.37 | 730 | 33 |
取り方:2026年5月期有報の注文住宅売上382.67365億円と全社の引渡1,457棟を使用。注文住宅と分譲住宅の棟数別内訳は非開示なので、注文1,365棟・分譲92棟と推計し、注文の単価を約2,803万円と逆算した。実数の断定ではない。営業利益も区分別には非開示なので、住宅の粗利特性から16.2億円を仮配分し、共通費は全体調整に残した。全社の当期営業利益14.5億円に合わせて、全区分の仮配分利益21.0億円から本社・共通費6.5億円を控除する。
分譲住宅
土地付きの完成住宅などを自社で販売する事業で、販売前の仕入・建築在庫を必要とする。
| 数量年間分譲住宅引渡棟数(棟、推計) | 価格分譲住宅一棟当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 92.0 | 0.35 | 32 | 2 |
| 10 年後 中立 | 145 | 0.47 | 67 | 3 |
取り方:2026年5月期有報の分譲住宅売上32.03579億円を正とした。全社引渡1,457棟のうち分譲92棟と仮定し、平均約3,482万円の単価を構成した。棟数別の公式内訳は無く、土地の含有条件が住宅ごとに異なるため、数量と単価は誤差を伴う推計である。営業利益も1.6億円を仮配分。
宅地販売
戸建住宅の受注に伴う土地や分譲区画を仕入れて販売する。土地市況と在庫回転に左右される。
| 数量年間販売宅地区画(区画、推計) | 価格一区画当たり宅地売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 480 | 0.10 | 49 | 2 |
| 10 年後 中立 | 620 | 0.13 | 82 | 3 |
取り方:2026年5月期有報の宅地販売売上48.92741億円を使用。引渡1,457棟の約3分の1に相当する480区画が土地付き取引と仮定し、一区画約1,019万円とした。実際の売却区画数は非開示であり、土地だけの転売や新潟・本州の単価差を一つの平均に寄せたモデル上の推計。営業利益は1.7億円を仮配分。
リノベーション・付帯業務・施設建築
VINJOYの中古住宅再生、障がい者グループホームの建築、住宅に付随する手数料等のうちCAD受託を除く部分。
| 数量住宅引渡に連動する付帯収益換算件数(件、推計) | 価格換算一件当たりの付帯売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 1,457 | 0.02 | 30 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2,145 | 0.03 | 58 | 3 |
取り方:有報のその他売上31.39239億円のうち、対外設計支援を仮に1.8億円と切り分け、残る29.59239億円を計上した。独立した改修件数が開示されないため全社引渡1,457棟を付帯業務の換算件数とし、一件約203万円とした。実際には独立したリノベ案件も混じるため個々の工事単価ではない。営業利益1.9億円は会社別・商品別の未開示部分の推計。
工務店向け設計・CAD受託支援
ROOT LINKと海外設計支援拠点による作図、積算、工務店向け業務システム導入・設計補助。AI代替の対象になる。
| 数量対外設計・CAD支援の年間換算人月(人月、仮定) | 価格人月当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 120 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:有報では工務店支援とオフショアの個別売上を出していないため、その他31.39239億円のうち1.8億円、全社売上の0.36%を対外受託と仮定した感応度用の内訳で、開示された実績ではない。120人月に人月150万円を掛ける。仮配分の営業損失0.4億円は立ち上げ費用を想定。AIエージェント代替の型は人月・工数型で、解約率・独自データ・規制上の正本の証拠はなく、記録の正本型にはしない。会社内部の設計効率化は住宅事業の費用削減にのみ反映する。
リスクと懸念
自己資本の薄さと借り換え
2026年5月末の自己資本比率は17.4%で、自己資本約40億円に対して借入金・社債は約88億円ある。期末の現預金約92億円は引渡集中後の一時点であり、翌四半期には借入が増えて現金も減った。金利が新規借入4%前後へ上がる環境では、返済原資とコミットメントラインの財務制限条項を継続して確認する必要がある。
のれん減損と再生案件の見誤り
2026年5月末ののれん約26億円は自己資本の大部分に相当する。坂井建設の利益やアエラホーム事業の再生が想定を下回れば、減損だけで株主資本が大きく減る。札証物産の販売用不動産の処分益3〜4億円を継続利益と取り違えて買収判断を行うと、資金が戻らず価値を壊す危険がある。
国内着工の長期縮小と住宅ローン金利
日本の新築住宅着工は人口や世帯構造によって緩やかに減る見通しで、北海道の地方部では減少が速い可能性がある。金利3%の世界で住宅ローンの返済負担が膨らめば、資材価格を販売価格へ十分転嫁できない。新規商圏で取れるシェアが想定を下回ると、出店した固定費だけが残る。
工事平準化と人手不足
2026年5月期は引渡しの期末集中で外注費が増え、売上高が上振れても利益は計画水準にとどまった。MCB工法が一部現場の大工工期を短縮しても、すべての施工工程を工場に移せるわけではない。建築確認の審査遅延、資材納期の悪化、技術者の不足が同時に起きれば、受注残が売上や現金に変わる速度が遅れる。
土地在庫と店・工場の固定費
分譲住宅や宅地は販売より先に土地と建築費を払うため、地価が下がると損失と借入負担が同時に生じる。自社展示場と苫小牧工場の建物も、住宅の受注が落ちれば利益を生まずに減価償却と維持費を発生させる。新リース基準で賃借展示場の負債が見えやすくなっても、実際の家賃支払義務は以前から存在する。
AIエージェント代替と工務店向けサービス
ROOT LINKなどの外部設計支援、CAD図面作成、積算、IT導入支援のうち、人月・工数を請求する部分はAIエージェントで顧客が内製できる。正確な売上の内訳は非開示なので規模の推定に幅がある。住宅本体は現場での施工が必要であり、同じ減収率を全社へ掛けないが、設計受託を長期成長の柱として高く評価することもしない。
今後の分かれ目
- 受注棟数の増加が連結期間の変化を除いて3年間続き、住宅引渡が2,000棟を安定して超えたら
- 本州でのシェア獲得が実証されたと判断し、注文住宅の中立数量を上げ、やや楽観側の確率を増やす。ただし新店の営業利益率と運転資金の増加を同時に確認する。
- 札証物産の処分益を除く営業利益率が3年続けて4%を超えたら
- 引渡しの平準化と工場の稼働効率が定着した証拠として中立の利益率を引き上げる。純利益への移り方は借り換え金利を控除した後で再確認する。
- アエラホーム承継後の事業で赤字や追加ののれん・在庫減損が続いたら
- 買収に充てた資本の増分利回りが資本コストを下回るとみなし、やや悲観・悲観の確率を増やす。新しい出店や買収が一時停止される場合は数量見通しも引き下げる。
- 自己資本比率が10%近くまで下がる一方で銀行借入が増え、財務制限条項への余裕がなくなったら
- 足元の薄い資本が存続リスクに近づく兆候であり、配当継続や資産の床を見直す。増資が実施される場合は既存株主の取り分も再計算する。
- 国内の持家着工が50万戸台へ急落し、北海道での自社シェアも低下したら
- 地域ブランドの堀が削られたと判断し、注文住宅・土地販売の数量を弱気側へ寄せる。値上げより在庫処分が優先されるなら利益率も大きく下げる。
- 工務店支援の設計・CAD受託売上がAIエージェントにより大幅減となったら
- 受託部分の人月と名目価格を下方修正し、長期成長率ゼロを維持する。自社住宅の設計費削減が決算数字で確認できた場合だけ、本業の利益率上昇として別に評価する。
見ておくもの
- 月次の受注棟数と引渡棟数の差、および買収で増えた分を除く既存店の伸び
- 北海道の戸建住宅売上シェアと本州進出地域での注文住宅の受注・引渡
- 札証物産の在庫処分益を除いた営業利益率と期末の工事集中費用
- アエラホーム承継166件の工事完了・追加費用・営業利益への寄与
- 現預金・有利子負債・未成工事受入金・販売用不動産と自己資本比率
- のれん残高と減損、工場と新規展示場の投資回収期間
- DOE5%・配当性向30%の実行と年0.3億円規模の株主優待費用
倍率と資本コストの決め方
2026年5月期の株価や当時のPERから将来の倍率を逆算していない。開示された引渡1,457棟と商品別売上を起点に、棟数・土地の区画数・付帯換算件数を分けて10年後の売上を作った。内訳の推定はhowに示し、物価は価格にのみ反映した。楽観〜中立のPERはk8.5%、普通の堀の残存割合1/2、人口減を含むg_long2%から決まる上限を使用した。悲観は、非現金ののれん26.4億円を取り除いた現在の有形持分約14億円を床として、10年後に積み上げた自己資本へPBRを掛けていない。将来の店舗賃貸は日本基準の新リース会計導入で表示が変わるが、全筋書きの営業利益は従来どおり家賃負担を含む形でそろえた。期末の現金は受入金と土地仕入れに要るため余剰現金として二重に足していない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、住宅収益の振れ0.5%と価格競争0.5%を加える。継続企業の前提の注記はなく、季節的な四半期赤字だけでdistressの上乗せはしない。