結論
セレコーポレーションは、東京圏に絞ってアパートを建て、建てたあとも管理と家賃保証で稼ぎ続ける会社だ。筆者の見立ては、10 年の本質価値は今の時価総額とほぼ同じ、適正圏である。
理由は二つある。一つは現金だ。純現金は 158 億円で、時価総額の 1 倍を超える。ただし創業家の影響が強く、現金は 4 年ほど積まれたままだ。少数株主に戻る額は半分とみて数えた。
もう一つは事業の中身だ。営業利益の大半は、管理戸数 1 万 2,600 戸から入る安定した管理収入である。新築の請負は金利と建築費で振れるが、管理が土台を支える。反対に、請負の棟数は伸びず、堀と呼べるほどの強みもない。安く見えるのは現金のせいで、事業だけなら値段はおおむね妥当だ。
筆者が株主なら、現金の使い道が言葉でなく行動で示されるのを待つ。増配や自社株買いが現金の水準に見合う規模で出れば、評価は一段上がる。それまでは、割安とも割高とも言い切れない会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い管理業に平凡な建築請負が付いた会社である。
オーナー利益、つまり株主の手元に残る利益は年 12 億円前後だ。このうち管理事業が稼ぐ分は安定していて、10 年後も続くだろう。建築請負は景気と金利に左右される。
安全域は現金にある。ただし、現金が時価総額を超えることは割安の証拠にならない。経営がその現金を何に使うかが、株主の取り分を決める。使い方次第で 10 年後の価値は大きく変わる。
筆者なら、管理収入が積み上がる様子と、現金の使い道の宣言を確かめるまでは、今の値段を安いとは言わない。
逆に、悪い会社でもない。借金がなく、管理収入という地味で硬い稼ぎがある。経営が現金を株主のために使うと決めた時、この会社は見え方が変わる。そこまでは、適正な値段で持つ価値がある会社というのが、筆者の位置づけだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は三つある。
賃貸住宅事業は、土地のオーナーや投資家にアパートを設計・施工して引き渡す。売上は 95 億円で、年に 70 棟ほどを建てる。東京圏だけに絞り、自社ブランドの商品に集中している。
賃貸開発事業は、自社で土地を仕入れて建て、投資家に売る。2020 年に本格化した新しい事業で、売上は 14 億円。年ごとの振れが大きく、前の期は 47 億円あった。
賃貸経営事業が本体だ。建てたアパートの管理、家賃保証、入居の仲介、修繕を請け負う。管理戸数は 1 万 2,612 戸、入居率は 98.8%。売上は 105 億円で、営業利益率は 12% を超える。
建てて渡して終わりにせず、建物が建っているあいだ収益を取り続ける作りだ。請負で戸数を積み、管理で長く稼ぐ。この二段が会社の骨格である。
顧客は、相続対策や資産運用を目的に土地を持つオーナーと、物件を買う個人・法人の投資家だ。営業は直販が中心で、完成後の管理を会社に任せてもらうことで、請負の売上が管理の売上に変わっていく。新築の景気が悪くても、すでに積んだ管理戸数が利益を支える。
優良さと弱いところ
優良さは管理の安定と財務の厚みにあり、堀は強くない。
良い点は、管理収入のストックだ。入居率 98.8% が示すとおり、東京のアパートは空きが少ない。管理戸数は着実に増えている。自己資本比率は 86% で借金はなく、金利が上がっても利払いに追われない。
弱い点は、新築請負に独自の強みが見えないことだ。大東建託や大和ハウス工業のような大手と地場の工務店が競い、建築費の上昇を価格に移す力は同業も同じである。全体の ROE は 5% 台と低いが、これは現金が薄めている。現金を除いた事業の ROE は 1 割弱と、資本コストをわずかに超える程度だ。
経営は 2030 年に売上 400 億円・営業利益 40 億円を掲げる。目標は大きく、達成の実績はまだ乏しい。筆者は強い堀を置かず、普通の堀とみた。
経営の資本の使い方には評価が割れる。借金をしない堅実さは美点だが、時価総額に並ぶ現金を抱え続けるのは、株主から見れば資本の遊びである。ここが改まるかどうかが、この会社を保有したいかを決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
アパート建築の市場は、東京圏では底堅いが、伸びる市場ではない。
追い風は三つある。家賃の上昇、東京への人口流入、相続税の節税を目的としたアパート経営の需要だ。入居率は高止まりし、家賃は物価に連れて上がっている。
向かい風はそれ以上に重い。第一に金利だ。アパートの多くはローンで買われる。借入金利が上がれば投資の採算は悪化し、新築の棟数が減る。第二に建築費だ。人手不足と資材高で、同じ建物の値段が年々上がる。第三に人口だ。東京圏の世帯数も 2030 年代半ばに天井を打つ見通しである。サブリース(家賃保証)への規制強化も続く。
競争は大手と地場の工務店が入り乱れる。商品で差をつけにくく、差が出るのは営業力と、建てたあとの管理の質だ。勝つ会社は管理を積み上げた会社である。この会社の賃貸経営事業は、その差を作る装置に当たる。10 年で新築の棟数は伸びないが、管理戸数は小さく伸びるとみる。
価格の面では、請負額も家賃も物価に連れて上がる。建築費と人件費も同じ率で上がるので、利益率が物価で勝手に改善することはない。会社は商品の絞り込みで利益率を上げてきたが、それが続くかは競争次第である。
資本政策と M&A
資本政策は、評価の分かれ目になる。
配当は性向 30% を基準にしてきた。来期は増配し、性向は 4 割に近づく計画である。自社株買いは創業家側の株主から買い取る形が中心で、2026 年 3 月に 5 億円、7 月にも小口の買い付けがあった。
一方、現金の使い道は決まっていない。2022 年に不動産の売却で積んだ現金は、時価総額に並ぶ水準で残る。ビジョン 2030 では ROE 9%・PBR 1 倍を掲げた。実行されれば価値は上がるが、これまで現金を還元に回した実績は乏しい。筆者は戻り方を 0.5 とみて、悲観側ではさらに割り引いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
純現金は時価総額を上回る。事業はほぼ無料で手に入る計算だ。管理戸数は 1 万 2,600 戸まで積み上がり、入居率は 98.8%。景気が悪くても家賃は入る。会社は 2030 年に営業利益 40 億円を掲げ、今期の計画でも営業利益は 2 割増える。ROE 9%・PBR 1 倍の旗を立てた以上、増配か自社株買いで現金を使う圧力は強まる。創業家の持ち分を会社が買い取る動きも出た。東京の家賃は物価以上に上がる余地があり、管理収入の単価は伸びる。新築が苦しくても管理が利益の過半を稼ぐので、全体は崩れない。現金の半分が戻るだけでも、時価総額の 4 割にあたる。しかも、請負の利益率は価格の見直しで 9% から 12% に改善した実績がある。商品を絞った効果は続くと見る。さらに、金利が上がれば現金の運用益だけで年 3 億円が積み上がり、これは今の純利益の 4 分の 1 にあたる。事業が横ばいでも、利益は自然に増える。
慎重な見方
現金は少数株主のものではない。創業家の影響が強く、2022 年に積んだ現金は 4 年ほどほとんど動かなかった。増配も性向 4 割までで、現金の大半は残る。全体の ROE は 5% 台で資本コストを下回り、ためた利益は額面ほどの価値がない。新築請負は金利に弱い。借入金利が 3% を超えれば投資家の採算は悪化する。建築費が上がり続けるなか、請負の棟数は減っている。賃貸開発は年ごとの振れが大きく、来期は利益がほぼ出ない計画だ。2030 年の営業利益 40 億円は今の 2.4 倍で、達成の実績がない。家賃保証は逆ざやが出れば重荷になる。現金頼みの割安は、無謀な投資や買収で消えかねない。管理戸数の増え方も年 100 戸あまりと遅く、成長を管理に頼る絵は描きにくい。さらに、金利が上がれば現金の利息は増えるが、これは事業の稼ぎではなく、現金を使わないまま眠らせた結果にすぎない。株価を押し上げる力にはならない。
どちらに重みを置いたか
現金の戻りを半分とみる慎重な見方が、強気をわずかに上回る。ただ、管理収入の安定と ROE 目標の宣言が、悲観の確率を抑える。中立に 4 割を置き、悲観は 1 割にとどめた。総合の値は、今の時価総額に近い水準になる。現金の戻り方が上がる材料が出れば、確率は楽観側へ動かす。逆に、請負の棟数が 2 年続けて減れば、悲観側へ寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 9,138 円307 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,771 円60 億円)。 今の値に割り戻すと 5,668 円191 億円、今との差 +25.9%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 17,642 円593 億円 | 3,034 円102 億円 | +359.5% | +16.5% | 1,654 円56 億円 |
| やや楽観 | 17% | 13,396 円450 億円 | 2,290 円77 億円 | +248.6% | +13.3% | 2,667 円90 億円 |
| 中立 | 40% | 10,490 円353 億円 | 1,844 円62 億円 | +174.1% | +10.6% | 4,934 円166 億円 |
| やや悲観 | 25% | 4,182 円141 億円 | 1,309 円44 億円 | +22.0% | +2.0% | 1,373 円46 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,082 円70 億円 | 744 円25 億円 | −37.2% | −4.5% | 283 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,138 円307 億円 | 1,771 円60 億円 | +142.4% | +9.3% | 10,910 円367 億円 |
今の株価時価総額 4,500 円151 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:ビジョン 2030 に近い形で伸び、現金も株主に戻り始める 利益 29 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 17,642 円593 億円
首都圏の家賃上昇に支えられて新築アパートの需要が続き、請負は年 80 棟まで伸びる。商品の絞り込みと価格の見直しが根づき、請負の利益率は 14% に乗る。賃貸開発は投資家向けの販売が軌道に乗り、年 14 棟を売る。管理戸数は 1.6 万戸に増え、家賃の上昇で 1 戸あたりの売上は物価を上回る。営業利益は 40 億円に迫る。ROE 9%・PBR 1 倍の旗のもとで、余った現金が増配と自社株買いに回り始める。創業家が資本効率に理解を示し、現金の使い道が株主に見える形になる。建築費の上昇は価格に転嫁でき、本社費の増加も売上の伸びに吸収される。
- 賃貸住宅事業(アパートの設計・施工):数量 80.0(年間の引渡し棟数(棟))× 価格 1.93(1 棟あたり請負額(億円))→ 売上 154 億円・営業利益 22 億円。n
- 賃貸開発事業(自社開発の物件販売):数量 14.0(年間の販売棟数(棟))× 価格 3.71(1 棟あたり販売額(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 5 億円。n
- 賃貸経営事業(管理・家賃保証・仲介):数量 16,000(管理戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり年間の売上(億円))→ 売上 187 億円・営業利益 24 億円。n
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)58 億円。全体の PER 19.05 倍、時価総額 587 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の目標(2030 年に営業利益 40 億円)に近づく筋書き。実績の乏しい目標なので 8% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:計画はおおむね進むが、ビジョンの数字には届かない 利益 23 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 13,396 円450 億円
会社の計画はおおむね進むが、ビジョンの数字には届かない。請負は年 74 棟、利益率は 13%。管理戸数は 1.48 万戸に増え、家賃は物価並みに上がる。開発事業は年 9 棟で安定する。営業利益は 30 億円。金利は落ち着き、大きな景気後退もない。余った現金は一部が増配に回り、還元は純利益の 45% に高まる。創業家と会社の距離は変わらないが、資本効率への圧力は少しずつ強まる。東京の賃貸需要は底堅く、管理の利益率は 12.5% を保つ。本社費は物価で増えるが、売上の伸びで吸収できる範囲にとどまる。
- 賃貸住宅事業(アパートの設計・施工):数量 74.0(年間の引渡し棟数(棟))× 価格 1.84(1 棟あたり請負額(億円))→ 売上 136 億円・営業利益 18 億円。n
- 賃貸開発事業(自社開発の物件販売):数量 9.0(年間の販売棟数(棟))× 価格 3.71(1 棟あたり販売額(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。n
- 賃貸経営事業(管理・家賃保証・仲介):数量 14,800(管理戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり年間の売上(億円))→ 売上 166 億円・営業利益 21 億円。n
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)58 億円。全体の PER 18.13 倍、時価総額 440 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画どおりに進む場合。実績で裏づけがある範囲なので楽観より厚く置いた。
中立 40% 中立:新築は伸びず、管理収入が全体を支える 利益 18 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 10,490 円353 億円
新築は伸びず、管理が全体を支える 10 年になる。請負は金利と建築費に押されて年 66 棟、請負額は物価並みに上がる。利益率は 12% を保つ。開発事業は年 6 棟。管理戸数は年 1% ほど増えて 1.39 万戸になり、家賃は物価並みに上がる。営業利益は 23 億円。現金の利息収入が増え、純利益は 18 億円に届く。本社費と販管費は物価で 1.34 倍に増える。還元は純利益の 4 割台にとどまり、余った現金の多くは手つかずで積み上がる。減価償却は建物・設備が小さく、利益への影響は軽い。本業の利益に加えて、現金に付く利息が年 3 億円ほど増える。この利息は事業の利益ではないので、倍率は事業の分だけにかける。
- 賃貸住宅事業(アパートの設計・施工):数量 66.0(年間の引渡し棟数(棟))× 価格 1.84(1 棟あたり請負額(億円))→ 売上 122 億円・営業利益 15 億円。n
- 賃貸開発事業(自社開発の物件販売):数量 6.0(年間の販売棟数(棟))× 価格 3.71(1 棟あたり販売額(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。n
- 賃貸経営事業(管理・家賃保証・仲介):数量 13,900(管理戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり年間の売上(億円))→ 売上 155 億円・営業利益 18 億円。n
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)58 億円。全体の PER 17.14 倍、時価総額 340 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築の減少と管理の積み上げが相殺する、業界の見方にそろえた最も重い筋書き。
やや悲観 25% やや悲観:金利上昇でアパート投資の採算が悪化する 利益 10 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 4,182 円141 億円
金利の上昇で、アパート投資の採算が悪化する。請負は 55 棟に減り、競争で請負額の伸びは物価を下回る。利益率は 9.5% に落ちる。賃貸開発は在庫の売れ行きが鈍り、年 3 棟にとどまる。管理は戸数がほとんど増えず、家賃保証の逆ざやで利益率が下がる。営業利益は 14 億円。余った現金は谷で食われ、戻る額は今の 3/4 の半分で数える。還元は純利益の 4 割に下がる。本社費は物価で増え続けるため、売上が伸びなければ利益率はさらに削られる。金利の高止まりが続き、投資家はアパートより利回りの高い金融商品へ資金を移す。
- 賃貸住宅事業(アパートの設計・施工):数量 55.0(年間の引渡し棟数(棟))× 価格 1.78(1 棟あたり請負額(億円))→ 売上 98 億円・営業利益 9 億円。n
- 賃貸開発事業(自社開発の物件販売):数量 3.0(年間の販売棟数(棟))× 価格 3.50(1 棟あたり販売額(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。n
- 賃貸経営事業(管理・家賃保証・仲介):数量 13,000(管理戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり年間の売上(億円))→ 売上 137 億円・営業利益 14 億円。n
倍率:事業の ROE は k 以下なので PER は 1÷k(12.5 倍)が上限。ためた利益は額面を下回る価値で、構造的に利益率が落ちるので 9 倍に置いた(上限の 7 割強)。余った現金は帳簿の 3/4(86 億円)に戻り方 0.5。
確率:金利上昇は今の物価・金利の前提の延長で十分起こりうるので 25%。
悲観 10% 悲観:節税目的の新築アパート需要が崩れ、請負が縮む 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 2,082 円70 億円
構造的に負ける筋書き。相続税評価の見直しとアパートローンの規制強化で、節税目的の新築アパート需要が崩れる。請負は年 35 棟まで減り、利益率は 6%。開発は撤退に近い。サブリースは家賃保証の見直しを迫られ、管理の利益率が下がる。管理戸数は 1.15 万戸に減る。営業利益は数億円まで落ち、余った現金は買収の失敗や損失の穴埋めで目減りする。値段は、純現金と売れる資産に戻り方を掛けた床で決まる。事業の稼ぐ力そのものは、この床を下回る。会社は規模を縮めて管理に専念し、請負は最小限の人員で続ける。創業家は現金を手放さず、少数株主には何も戻らない。株主還元は純利益の 3 割台に落ちる。
- 賃貸住宅事業(アパートの設計・施工):数量 35.0(年間の引渡し棟数(棟))× 価格 1.70(1 棟あたり請負額(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。n
- 賃貸開発事業(自社開発の物件販売):数量 1.0(年間の販売棟数(棟))× 価格 3.30(1 棟あたり販売額(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。n
- 賃貸経営事業(管理・家賃保証・仲介):数量 11,500(管理戸数(戸))× 価格 0.01(1 戸あたり年間の売上(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 10 億円。n
倍率:悲観の床は純現金と売れる資産の税後に、戻り方 0.5 を掛けたもの。稼ぐ力(純利益 ÷ k)はこれを下回る。今の自己資本に対する PBR は 0.33 倍相当。
確率:構造的な負け。税制と融資規制の変更は過去にも起きており、10% 置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸住宅事業(アパートの設計・施工)
東京圏の土地オーナーや投資家に、アパートを設計・施工して引き渡す。
| 数量年間の引渡し棟数(棟) | 価格1 棟あたり請負額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 69.0 | 1.38 | 95 | 11 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 1.84 | 122 | 15 |
取り方:推定。2026/02 期の賃貸住宅事業の売上 94.9 億円を、同期の建築実績の増加 69 棟(累計 2,925 棟)で割って 1 棟あたりの請負額を逆算した。単価は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)。棟数は東京の賃貸アパート着工が人口と金利で細ることを織り込む。
賃貸開発事業(自社開発の物件販売)
自社で土地を仕入れてアパートを建て、投資家に販売する。
| 数量年間の販売棟数(棟) | 価格1 棟あたり販売額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 5.0 | 2.77 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 3.71 | 22 | 2 |
取り方:推定。2026/02 期の売上 13.9 億円(前期は 46.6 億円と振れが大きい)を、1 棟 2.8 億円前後と置いて棟数に直した。開示は棟数を出していない。単価は中立で物価並み。
賃貸経営事業(管理・家賃保証・仲介)
建てたアパートの管理、家賃保証(サブリース)、入居の仲介、修繕。
| 数量管理戸数(戸) | 価格1 戸あたり年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 12,612 | 0.01 | 105 | 13 |
| 10 年後 中立 | 13,900 | 0.01 | 155 | 18 |
取り方:2026/02 期末の管理戸数 12,612 戸(開示。前期末比 +137 戸、入居率 98.8%)で売上 105.2 億円を割った。1 戸あたり年 83 万円は家賃保証の家賃収入を総額で計上する形の推定。価格は家賃の上昇で物価並みに上がるとみる。
リスクと懸念
金利の上昇で新築の採算が崩れる
アパートの買い手の多くはローンを使う。借入金利が上がれば投資の利回りが下がり、請負の棟数が減る。請負は売上の半分近くを占め、利益の振れは大きくなる。
税制・融資規制の変更
相続税の評価減を使った節税需要は、制度の見直しで消えうる。アパートローンの審査が厳しくなれば、投資家の数が減る。
家賃保証(サブリース)の逆ざや
管理戸数が増えるほど、空室や家賃下落の負担を会社が抱える。入居率が下がる局面では、利益率が薄くなる。サブリースへの規制強化も重荷だ。
現金の使い道が見えない
時価総額に並ぶ現金が、買収や不採算の投資、あるいは放置に回れば、少数株主の取り分は目減りする。創業家の影響が強く、株主が使い道を決められない。
賃貸開発の振れと在庫
自社で土地を仕入れて建てる事業は、売れ残れば在庫と金利の負担になる。前の期の 47 億円から 14 億円まで落ち、来期の計画も利益はわずかだ。
東京圏への集中
事業は東京圏だけに集中する。大地震や地価の下落は全社に響く。人口は 2030 年代半ばに天井を打つ見通しだ。
今後の分かれ目
- 自社株買いや大幅な増配を、現金の水準に見合う規模で発表する
- 戻り方が 1 に近づき、時価総額に対する本質価値の差は大きく割安側へ動く。
- 借入金利が 3% を超えてアパートの着工が減る
- 請負の棟数が落ち、やや悲観の筋書きに寄る。管理収入が下支えするが、利益は 3 割ほど減る。
- 賃貸開発で大型の用地を仕入れ、現金を在庫に回す
- 現金の質が下がる。売れ残れば悲観の床が崩れる。
- 管理戸数が毎年 3% 以上のペースで増える
- 楽観に近づく。管理収入は利益の柱になり、倍率の上限が上がる。
- 創業家の持ち分が整理され、資本政策が株主寄りに変わる
- 現金の戻り方を 1 に近づけてよく、評価は大きく上がる。
見ておくもの
- 管理戸数と入居率(決算説明資料)
- 請負の受注棟数と平均単価
- 自社株買い・増配の発表と、現金の水準
- アパートローンの金利と融資姿勢
- 賃貸開発の在庫と売却の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と k から式で決め、今の株価や PER には寄せていない。現金は戻り方 0.5 で数え、時価総額と並ぶことを割安の根拠にしなかった。新リース会計は本社・店舗の賃借が小さく、数字の形はほとんど変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→19.05 倍・やや楽観 PER 13.5→18.13 倍・中立 PER 12.5→17.14 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。理由は quality_why。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。