結論
第一建設工業は、JR東日本の線路と土木工事を請け負う鉄道工事会社だ。売上の7割強をJR東日本1社が占める。建築と不動産は脇役にとどまる。
筆者の結論は「適正」だ。堅い会社だが、稼ぐ力は資本コストに届かず、10年後の価値は今の値段をわずかに下回る。
強みは、競争のない特命工事だ。土木の受注の95%は相手を決めた契約で、JR東日本は筆頭株主でもある。借金はゼロで、自己資本比率は86%を超える。
弱みは、客が1社しかないことだ。JR東日本が発注の形や価格を変えれば、稼ぎは一度に動く。しかも2026年3月期の営業利益率11.5%は、過去10年でも高い方にある。
10年の見立てでは、人手が増えない国で数量は伸びず、単価だけが物価並みに上がる。2031年度からの新幹線大規模改修は追い風だ。ただ、機械化が進めば人の数は要らなくなる。
還元は厚い。配当は5年で4倍になり、DOE3.5%以上と配当性向50%以上を掲げる。それでも利益の半分は社内に残り、自己資本が積み上がってROEを押し下げる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、第一建設は「鉄道会社の子会社に近い、堅実な預金」のような会社だ。借金がなく、配当は増え続ける。事業が消える心配は小さい。ただ、預金より増える見込みが大きいわけではない。
10年後も、線路は敷かれ、直され続ける。しかし堀は広がらない。顧客は1社で、価格も量も相手が握る。強くなる材料は、新幹線の大規模改修と機械化の技術に限られる。
利益の半分は会社に残る。残った分は自己資本になり、ROEを押し下げる。大型の保線機械を除けば大きな設備投資が要らず、利益の大半が現金になる点は好ましい。
気になるのは、利益が山にあることだ。営業利益率は11%台で、会社の予想でも今期は営業利益が1割以上減る。
安全域は、今の値段にほとんどない。純現金が時価総額の4分の1あるのは心強い。だが、事業の稼ぐ力は資本コストに届かない。筆者は、今の値段を割安とも割高とも言い切れない、適正の範囲と見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、JR東日本の線路を直し、新しく敷く仕事だ。線路の保守と更新、橋やトンネルなどの土木工事がこれにあたる。2026年3月期の完成工事高は、土木が約396億円、建築が約193億円だ。不動産は11億円ほどにとどまる。
顧客は事実上1社だ。JR東日本向けの売上は433億円で、全体の72%を占める。土木の受注の95%は特命、つまり相手を決めた契約だ。入札で戦う仕事ではない。
建築は別の顔をしている。受注の6割が競争入札で、民間のビルや学校、住宅が中心になる。利益の内訳は開示されないが、競争で受ける分、利益率は土木より低いとみる。鉄道の仕事で稼ぎ、建築で現場の人を遊ばせない役回りだ。
不動産は売上の2%の賃貸事業だ。中期計画は、遊休地の活用で広げるとしている。
社員は約1,000人で、事業所は40ある。借入金はゼロだ。工事は人手がすべてで、売上は「人の数×1人当たりの工事高」でほぼ決まる。この構造が、人手不足の時代に会社の伸びを縛る。
そのぶん、仕事の質は高い。線路の工事は、列車を止められない夜間の短い時間に行う。安全を守りながら決まった時刻までに終える段取りは、一朝一夕に身につかない。会社の財産は、この現場の力と人にある。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、堀というより「指定席」にある。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。線路の保守は安全が命で、長年の取引と技術の蓄積がものをいう。JR東日本が発注先を替えるのは簡単でない。
ただ、その席は借り物だ。決めるのは発注者で、会社ではない。売上の7割強が1社に依存し、価格も量もJR東日本の方針に従う。同じ客を取り合う東鉄工業や鉄建建設に対して、技術で圧倒的な差があるとは言いにくい。
資本の使い方は無難だ。借金はなく、自己資本比率は86%を超える。大型の保線機械への投資は要るが、利益の大半が現金になる。配当は5年で4倍に増えた。
弱いのは稼ぐ力だ。ROEは7%で、資本コストを下回る。無借金で現金を抱える分、自己資本が膨らみ、利益率が高くても資本効率は上がらない。
筆者が好むのは、競争が緩く、再投資の要らない会社だ。第一建設はこの条件を半分だけ満たす。競争は緩いが、客が1人しかいない。この1点が、安全域を厚く求める理由になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鉄道の線路工事は、需要が安定した成熟市場だ。列車が走る限り、線路はすり減り、橋や設備は傷む。保守と更新の仕事は、景気に左右されにくい。
構造の変化は2つある。ひとつは人手の減少だ。JR東日本は、軌道工事に携わる人が10年で約2割減ったと明らかにした。作業は終電後の限られた時間に行うため、機械化も一筋縄ではいかない。もうひとつはインフラの老朽化だ。東北・上越新幹線は開業から40年を超え、2031年度から10年、総額約1兆円の大規模改修に入る。
この改修は追い風だが、恩恵の大きさは読みにくい。JR東日本は機械化と工程管理の技術を磨き、少ない人手で進める方針を示している。工事量が増えても、元請けの売上は人の数で頭打ちになりやすい。
競争の相手は、同じJR東日本の持分法適用会社である東鉄工業と鉄建建設だ。JR東日本は3社の株を同じ時期に取得した。発注先を並べて競わせる力を、手放さない姿勢とも読める。
民間鉄道は別の市場だ。中期計画は首都圏の私鉄からの受注を増やす方針を掲げる。ただJR東日本の特命と違い、価格競争が待っている。
数量は人手に縛られ、価格だけが物価並みに上がる。それがこの市場の基本形だ。
資本政策と M&A
還元は厚い方だ。2026年5月に発表した中期計画「変革2030」は、DOE3.5%以上と配当性向50%以上を掲げる。DOEとは、自己資本に対する配当の割合のことだ。配当は減らさず維持か増やす累進配当で、自社株買いは機動的に行う。配当は2022年3月期から2026年3月期にかけて、4倍に増えた。
前の計画は、総還元性向100%以上と、5年で50億円以上の自社株買いを掲げていた。新しい計画は自社株買いの数字を示さない。還元が配当中心に傾く可能性がある。
投資は5年で270億円だ。成長投資が160億円で、M&Aと不動産開発、デジタル化に充てる。事業基盤が110億円で、大型の保線機械などの更新にあたる。M&Aは市場シェアの拡大が狙いとされ、具体的な相手は示されていない。
資本関係では、JR東日本が筆頭株主だ。2022年に買い増して持分法適用会社とした。持株比率は集計の時点によって17%台から20%台とされる。10年以内のTOBは、kabufuの推計で約19%と出るが、JR東日本が完全子会社にする理由は薄いと筆者は見る。
政策保有株の額は、今回は確かめられなかった。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新幹線の大規模改修が、この会社の10年を変える。東北・上越新幹線の改修は2031年度から10年、総額約1兆円だ。線路と土木の特命工事を握る第一建設に、仕事が流れ込む。JR東日本は、改修を支える工事会社を確実に確保したいはずだ。
人手不足は、むしろ価格を押し上げる。軌道工事の担い手は10年で約2割減った。工事ができる会社が少なければ、単価は物価を上回って上がる。特命のため、値引きを迫られる場面も少ない。
資本政策にも余地がある。純現金は148億円で、時価総額の4分の1にあたる。ROE9%以上の目標を掲げ、DOEの下限も導入した。方針が徹底されれば、自社株買いで自己資本の膨らみが抑えられ、ROEは目標に届く。
不動産とM&Aも伸びしろだ。成長投資160億円で地方の軌道会社や建築会社を買い、シェアを広げれば、人員が増え、売上の天井が上がる。営業利益率が12%台で定着すれば、純利益は80億円を超え、倍率も評価される。
慎重な見方
今の利益は、すでに山の上にある。営業利益率11.5%は、過去10年でも最高水準だ。会社自身が、今期は営業利益が1割以上減ると見ている。大型工事の一巡と、工事コストの上昇が重なるためだ。
顧客が1社しかないことが、最大の弱点だ。売上の72%がJR東日本で、価格も量も相手が決める。JR東日本は機械化を進め、少ない人手で工事を進める方針だ。人が要らなくなれば、請け負う側の売上も減る。
競合も同じJR東日本の持分法適用会社だ。東鉄工業と鉄建建設を並べて競わせる力は、発注者の手にある。新幹線の大規模改修でも、特命が競争に変わる可能性は否定できない。
資本効率も低い。ROEは7%で、資本コストを下回る。現金を抱えたまま自己資本が積み上がる。成長を買うM&Aは、高く買えばROEをさらに下げる。
人手が増えない以上、売上は単価だけで伸びる。単価の上昇は人件費の上昇に食われ、高い利益率が続く理由は見当たらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。新幹線の改修は本物の追い風で、無借金と還元の厚みは安全域になる。ただ、客が1社で、数量は人手に縛られ、10年後のROEも資本コストに届かない。この弱みのほうが、価値への影響は大きい。
確率は中立に厚く置き、悲観側をやや厚くした。特命の安定と、客1社のもろさが釣り合うため、結論は適正の範囲に収まった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,907 円692 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,186 円387 億円)。 今の値に割り戻すと 3,298 円584 億円、今との差 −2.9%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,450 円1,142 億円 | 3,236 円573 億円 | +185.3% | +11.1% | 969 円172 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,013 円888 億円 | 2,722 円482 億円 | +127.8% | +8.6% | 1,702 円301 億円 |
| 中立 | 35% | 4,236 円750 億円 | 2,287 円405 億円 | +92.1% | +6.7% | 2,283 円404 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,084 円369 億円 | 1,711 円303 億円 | +11.8% | +1.1% | 835 円148 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,983 円351 億円 | 791 円140 億円 | −18.3% | −2.0% | 305 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,907 円692 億円 | 2,186 円387 億円 | +79.5% | +6.0% | 6,093 円1,079 億円 |
今の株価時価総額 3,395 円601 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 新幹線改修を追い風に特命の受け皿として伸びる 利益 83 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,450 円1,142 億円
JR東日本の新幹線大規模改修が計画どおりに動き、第一建設は特命工事の受け皿として存在感を増す。土木の数量は今より5%増え、1人当たりの工事高も機械化と付加価値の高い仕事で、物価を上回って伸びる。
首都圏の私鉄の工事を取り込み、M&Aで地域の軌道会社も加える。人員は増え、売上は900億円を超える。営業利益率は11%台で定着する。
還元は厚いまま続き、自社株買いが自己資本の膨らみを抑える。ROEは10%近くまで上がる。JR東日本にとって、第一建設は欠かせない軌道工事のパートナーになる。
不動産は遊休地の開発で広がり、利益の下支えになる。ただ、人手が足りない中で数量をここまで伸ばすには、採用・育成と機械化が噛み合う必要がある。起こりにくい姿だ。
- 土木(線路を含む):数量 682(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 91(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 623 億円・営業利益 81 億円。土木(線路を含む)
- 建築:数量 330(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 82(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 269 億円・営業利益 24 億円。建築
- 不動産:数量 40.0(担当人員(人、推定))× 価格 62(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。不動産
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.76 倍、時価総額 1,142 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の筋書き。新幹線改修と機械化がうまく噛み合い、人手の壁を越える必要があるため、1割に置いた。
やや楽観 22% 人員を増やさず単価を物価以上に上げる 利益 71 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 5,013 円888 億円
新幹線改修の需要が緩やかに立ち上がり、会社は人員を増やさずに単価を物価以上に上げる。土木の数量は横ばいで、1人当たりの工事高が機械化と付加価値の高い仕事で8%上乗せされる。
建築は民間工事の競争で数量が少し減るが、採算のよい案件に絞る。不動産は遊休地の活用で4割増える。売上は850億円ほどで、営業利益率は10%台後半に定着する。
還元は純利益の8割に近く、ROEは8%台に上がる。中期計画の目標9%には届かないが、資本コストを少し上回る水準だ。
JR東日本との関係は今のまま続き、特命の比率も大きく変わらない。派手さはないが、稼ぎの堅さが評価される10年だ。
- 土木(線路を含む):数量 650(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 88(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 573 億円・営業利益 69 億円。土木(線路を含む)
- 建築:数量 320(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 80(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 256 億円・営業利益 21 億円。建築
- 不動産:数量 34.0(担当人員(人、推定))× 価格 62(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。不動産
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.59 倍、時価総額 888 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新幹線改修の追い風と特命の安定が続く筋書き。起こりやすさは2割強と見る。
中立 35% 数量は人手に縛られ、単価で伸びる成熟した会社 利益 60 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,236 円750 億円
数量は人手に縛られて少し減り、単価が物価並みに上がる、成熟した会社になる。土木の人員は5%減り、機械化で1人当たりの工事高が物価の上乗せを6%ほど得る。建築は人口減で数量が5%減る。
新幹線改修は追い風だが、機械化と工程管理で必要な人手が減り、売上の天井は変わらない。売上は800億円で、中期計画の2031年度700億円は達成し、その後も物価並みに伸びる。
営業利益率は10%を割る水準に戻る。今の11%台は山で、会社自身も今期は8%台を見込む。純利益は60億円で、還元は純利益の75%に当たる。
ROEは7%を割る水準にとどまる。稼ぎは堅いが、増えない10年だ。JR東日本の発注構造は変わらず、特命の比率も保たれる。
- 土木(線路を含む):数量 618(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 87(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 535 億円・営業利益 59 億円。土木(線路を含む)
- 建築:数量 314(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 78(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 246 億円・営業利益 18 億円。建築
- 不動産:数量 31.0(担当人員(人、推定))× 価格 62(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。不動産
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 750 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばい、利益率は山から平均へ戻るというのがもっとも起こりやすい。確率は3割台半ばに置いた。
やや悲観 22% 特命が絞られ、利益率が7%台に戻る 利益 41 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,084 円369 億円
JR東日本が特命を絞り、競争入札を増やす。土木の数量は1割減り、競争で単価の上昇も物価に届かない。軌道工事で他社と値を競う場面が増え、営業利益率は7%台に戻る。
建築は競争で数量が15%減り、採算が悪化する。不動産は小さく、全体を支えるには足りない。売上は700億円を割る水準で、営業利益は55億円前後に下がる。
人件費は上がり続ける。還元は続くが増配の余地はなく、ROEは5%を割る。成長を買うM&Aに失敗すれば、さらに悪化する。
新幹線改修の仕事が来ても、機械化で人手が減り、第一建設の取り分は小さくなる。安定は残るが、稼ぐ力の弱い会社に戻る。
- 土木(線路を含む):数量 585(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 79(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 463 億円・営業利益 42 億円。土木(線路を含む)
- 建築:数量 280(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 76(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 213 億円・営業利益 12 億円。建築
- 不動産:数量 26.0(担当人員(人、推定))× 価格 62(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。不動産
倍率:ROE 4.7%(純利益 41 億円 ÷ 自己資本 877 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 8% + 残る割合 1/2 ×(ROE 4.7% − k)= 6.21%、長期の成長率 g 4% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 9.5 倍。ROE が k を下回るが、特命が一部残り稼ぎは続くため、上限の 9 割強の 9.0 倍に置いた。
確率:発注者が1社なので、方針が少し変わるだけで利益率が動く。やや悲観は2割強に置いた。
悲観 11% 内製化と機械化で特命が崩れる 利益 18 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,983 円351 億円
JR東日本が軌道工事の機械化と内製化を進め、特命を大きく減らす。第一建設の土木の数量は3割減り、競争入札では単価も物価に追いつかない。営業利益率は5%を割る。
建築は民間の競争が激しく、利益はほぼなくなる。不動産で補えるほどの規模はない。売上は500億円台に縮み、営業利益は25億円前後になる。
技術を取り込む段階が終わり、JR東日本の発注の絞り込みが始まる。無借金で現金は厚いが、稼ぐ力は資本コストをはるかに下回る。機械や不動産の一部は減損の対象になる。
配当は大きく削られ、時価総額は売れる資産の水準まで下がる。優良会社ではなくなる筋書きだ。
- 土木(線路を含む):数量 455(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 73(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 334 億円・営業利益 18 億円。土木(線路を含む)
- 建築:数量 231(施工に当たる社員数(人、推定))× 価格 72(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 167 億円・営業利益 5 億円。建築
- 不動産:数量 24.0(担当人員(人、推定))× 価格 62(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。不動産
倍率:JR東日本の内製化・機械化で特命が崩れ、営業利益率が 5% を割る構造的な負け筋。純利益は 18 億円で、稼ぐ力は ÷k 8% で約 235 億円。売れる資産は総資産 864 億円のうち現金は全額・残りは 45% で回収し、負債 117 億円を引いて約 353 億円。大きい方の約 353 億円を、今の自己資本 747 億円に対する PBR 0.47 倍(時価総額 約 351 億円)に置いた。
確率:客が1社で、発注方式の転換に弱い構造的なリスク。JR東日本が筆頭株主で関係は深いため、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木(線路を含む)
JR 東日本の線路の保守・更新、橋・トンネルなどの土木工事。受注の約 95% が特命。
| 数量施工に当たる社員数(人、推定) | 価格1 人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 61 | 396 | 51 |
| 10 年後 中立 | 618 | 87 | 535 | 59 |
取り方:土木(線路を含む)の完成工事高は約 396 億円(建設事業 588.85 億円の約 67%)。人員は社員 1,004 人を売上に比例して土木 650・建築 330・不動産 24 に割り振った推定で、1 人当たり完成工事高は約 60.9 百万円。セグメント利益は建設事業の合計 68.25 億円しか開示されず、土木 12.8%・建築 9.1% は契約形態(土木は特命、建築は競争)を踏まえた推定。数量は実質、1 人当たり工事高は名目で物価並みに上がる想定。
建築
民間のビル・学校・住宅などの建築工事。受注の約 6 割が競争入札。
| 数量施工に当たる社員数(人、推定) | 価格1 人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 330 | 58 | 193 | 18 |
| 10 年後 中立 | 314 | 78 | 246 | 18 |
取り方:建築の完成工事高は約 193 億円(建設事業の約 33%)。人員は社員の按分による推定で 330 人、1 人当たり約 58.5 百万円。利益は建設事業の合計から土木の推定を引いた 17.55 億円(利益率 9.1%、推定)。数量は実質、1 人当たり工事高は名目。
不動産
賃貸用不動産の運営と遊休地の開発。売上の約 2%。
| 数量担当人員(人、推定) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.0 | 47 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 31.0 | 62 | 19 | 2 |
取り方:不動産事業の売上 11.18 億円・セグメント利益 0.87 億円(開示値)。物件数や床面積の開示がないため、担当人員 24 人を推定で置いた。数量は実質、1 人当たり売上は名目。
リスクと懸念
JR東日本1社への依存
売上の72%、完成工事高の74%がJR東日本向けだ。土木の受注の95%は特命で、価格も量も発注者が決める。JR東日本が発注方式を競争に変えたり、内製化を進めたりすれば、利益は一度に動く。分散の効かない構造的なリスクで、安定と引き換えの弱みだ。
今の利益が山にある
2026年3月期の営業利益率11.5%は、過去10年でも高い水準にある。会社の予想でも、2027年3月期は営業利益が1割以上減る。大型工事の一巡と工事コストの上昇が重なる。平均の利益率は9%前後で、今は平均を2ポイントほど上回っている。
人手不足と機械化
軌道工事の担い手は10年で約2割減った。人が足りなければ、受注があっても施工できない。JR東日本は機械化で少ない人手で進める方針で、工事が増えても元請けの売上の天井は上がりにくい。人件費の上昇も続き、単価の転嫁が追いつかない年が出る。
特命から競争への転換
同じJR東日本の持分法適用会社である東鉄工業、鉄建建設との間で、発注先を競わせる流れが強まる恐れがある。新幹線の大規模改修のような大型案件ほど、価格競争の対象になりやすい。特命が競争に変われば、土木の利益率は一段と下がる。
建築・不動産の採算
建築は受注の6割が競争入札で、民間の景気や資材高の影響を受ける。利益率は土木より低いと見られ、採算を崩すと全体の足を引く。不動産は売上の2%で、中期計画が広げるとする遊休地の開発は、需要と価格の読み違いのリスクを伴う。
M&Aと資本効率
成長投資160億円の枠でM&Aを使う方針だが、相手は示されていない。高く買えば、ただでさえ資本コストを下回るROEがさらに下がる。買わなければ、現金が積み上がり、資本効率を問う声が強まる。規律ある買収ができるかが、10年のROEを左右する。
新リース会計基準
2028年3月期から、賃借の資産と負債が貸借対照表に載りうる。第一建設は事務所や社宅、機械の一部を借りる程度と見られ、影響は小さい。営業の稼ぎは変わらず、自己資本比率の見え方が少し変わるだけだ。10年後の数字は、今と同じ形でそろえて置いた。
今後の分かれ目
- JR東日本が軌道工事の内製化や特命の削減を打ち出した時
- 土木の数量と利益率が同時に落ち、10年の悲観の筋書きに近づく。時価総額は売れる資産の水準を目安に評価される。
- 新幹線の大規模改修の発注が、特命のまま第一建設に十分に流れた時
- 土木の数量と単価が上がり、強気の筋書きに近づく。営業利益率が12%台で定着すれば、倍率の評価も上がる。
- 営業利益率が今期予想どおり8%台まで下がり、その後も戻らない時
- 今の利益が山だったことが確かめられ、中立よりやや悲観の筋書きに寄る。倍率も10倍を割る方向に動く。
- 大型M&Aを高い価格で決めた時
- ROEが下がり、資本効率の面で評価が落ちる。のれんの償却が利益を削り、中立の水準を下回る恐れがある。
- 自社株買いを大きく増やし、自己資本の積み上がりを止めた時
- ROEが上がり、1株当たりの価値は増える。ただ事業の稼ぎは変わらず、倍率が大きく上がることはない。
- JR東日本がTOB(公開買い付け)で完全子会社にした時
- 買い付け価格は今の時価総額に上乗せされるのが普通で、上振れ要因になる。ただ可能性は低いと見て、確率には織り込んでいない。
見ておくもの
- JR東日本の設備投資計画と、東北・上越新幹線の大規模改修の発注方式(特命か競争か)
- 営業利益率の推移(8%台に下がるか、10%台を保つか)
- JR東日本向け売上の比率(72%から上がるか下がるか)
- 土木の受注高と人員・1人当たり工事高(人手の確保と機械化の効果)
- 配当・自社株買いの規模と、ROE9%の目標への近づき方
- JR東日本の持株比率の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE約5〜10%と成長率4%から正当化PERを出し、上限の8割〜9割弱に置いた。今のPER11倍台は基準にしていない。中立のROEは7%を割り、資本コストを下回るため、PERは 1÷k に ROE÷k(0.91)と 9 割を掛けた 10.5 倍とした。資本コストは基本7.5%にquality+0.25%(循環−0.25%・値決め+0.25%・寿命+0.25%)を足した7.75%で、同じJR東日本向けの東鉄工業と同じ型にそろえた。悲観は、現金は全額・他の資産は45%で回収し、負債を引いた約353億円(売れる資産)で測り、谷のPBRは使っていない。純現金148億円は時価総額の約25%あるが、売上600億円の工事を回す運転資金・工事未払金・5年110億円の保線機械投資に当たるため、余った現金は分けていない。新リース会計基準は2028年3月期から適用されうるが、借りる資産は小さいとみて、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。株価に寄せて動かした数字はない。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。理由は quality_why。個別のリスク(JR 東日本への依存・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.00%。