結論
テノックスは、建物や橋を支える杭を打ち、軟らかい地盤を固める基礎工事の専門会社だ。筆者の結論は、技術と財務は堅いが、稼ぐ力は資本コストに届かず、価値は今の時価総額とほぼ並ぶ、というものだ。
強みは、自社で開発した工法を、設計の段階で図面に織り込ませる営業だ。鉄道橋や道路橋、工場、空港で採用され、値引き合戦になりにくい。売上総利益率は直近で 19% と、10 年で最も高い。
弱みは、元請けのゼネコンの下で働く立場だ。工事量は建設投資の波に左右され、利益率は過去 12 年で 2〜10% を行き来した。北海道新幹線の大型工事も山を越えた。
財務は厚い。現金は時価総額の 8 割にあたり、借入は無い。配当は純資産の 3% を払う。この現金が、価値の下を支える。
10 年の中立では、営業利益は 15 億円前後、ROE は 6% 程度だ。データセンターや防衛の工事が追い風になれば、上に開ける。
逆に、大型工事の山が去って利益率が過去の水準に戻れば、現金の厚さだけが頼りになる。筆者は、その両方を同じくらいありうると見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、テノックスは「誠実で堅いが、平凡な事業」だ。自社の工法を図面に織り込む営業は賢く、長年の実績が信用になっている。借金は無く、現金は厚い。
だが、基礎工事は建設投資の波に乗る仕事で、利益の大きさは自分では決めにくい。元請けの下で働く以上、良い年の利益も、元請けとの交渉で削られる。過去の ROE が資本コストを上回った年は、ほとんど無い。
筆者がこの会社で注目するのは、現金の使い方だ。ベトナムの工場の買収や地盤調査の会社への出資が、資本コストを超える稼ぎを生むかどうか。もし生まないなら、その現金は株主に戻した方が価値が高い。
今の値段は、事業の価値と現金をほぼ正しく映している。安全域は、厚い現金の分だけある。
もう 1 つの見どころは、光通信という大株主の存在だ。現金の厚い会社に、還元の強化を促す株主がいることは、少数株主にとって悪い話ではない。経営がそれにどう応えるかで、この会社の値打ちは変わりうる。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は国内の基礎工事で、売上の 9 割強を占める。杭の工事は、工場で作ったコンクリートや鋼の杭を地中に埋め込む。鉄道橋や道路橋に使う「ガンテツパイル」、空港や大型施設向けの工法などをそろえる。地盤改良は、セメントと土を混ぜて柱状に固める「テノコラム」が主力で、工場や倉庫、住宅の下の地盤を強くする。
稼ぎ方の特徴は、設計の段階から入ることだ。設計事務所や建設コンサルタントに技術を提案し、自社の工法を図面に織り込ませる。そうなれば、元請けのゼネコンは当社に発注するしかない。工事は自前の重機と技術者で行い、品質の管理まで一貫して担う。
海外はベトナムで、日系と現地の工場の杭と地盤改良を手がける。売上は 10 億円弱と小さいが、2024 年に現地の施工会社を買い、パイル工場の買収も交渉している。
ほかに、地盤の調査や設計の相談を受ける事業が小さくある。2026 年 3 月期には、住宅の地盤調査を手がけるジャパンホームシールドに出資し、持分法の会社にした。
工事は全国の営業所が受け、首都圏、杭、地域の 3 つの事業本部が営業と施工を一体で回す。2025 年の組織の見直しで、工事ごとに目標を決め、機械の稼働を目に見える形で管理するようになった。
優良さと弱いところ
堀は中くらいだと見る。自社の工法が設計に織り込まれれば、価格競争に巻き込まれにくい。鉄道や道路の基礎は品質の要求が厳しく、実績のない会社は入れない。国土交通省の技術の評価を受けた工法も多い。
ただ、基礎工事は元請けのゼネコンから受ける下請けの仕事だ。工事の量は建設投資の波に従い、利益率も揺れる。過去 12 年の営業利益率は、最低 1.9%、最高 9.9% だった。2020〜2024 年 3 月期は 2〜4% に沈んだ。
直近は改善した。工事ごとに目標を決めて機械の稼働を上げ、赤字の工事を減らし、契約の条件も見直した。売上総利益率は 2025 年度の上期に 19% と、10 年で最も高い。この改善がどこまで続くかが、価値を左右する。
資本効率は低い。自己資本の半分以上が現金で、ROE は 7% 前後にとどまる。会社は ROE 8% を目標に掲げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設投資は、名目で年 77 兆円前後と底堅い。インフラの老朽化への対策、防衛施設、半導体やデータセンターの工場が、基礎工事の需要を押し上げる。データセンターの市場は 2029 年まで年 6% 程度伸び、新設のピークは 2026〜2028 年とされる。
一方で、住宅の着工は細る。コンクリートの杭の需要量は年 200 万トン強で、10 年前より減った。大型の工事が終わると、地方の工事は谷になる。北海道新幹線の工事も、山を越えた。
最大の制約は人だ。杭打ちの重機を扱う技術者は高齢化し、若い担い手が集まりにくい。時間外労働の規制も始まった。人手が足りないことは、裏を返せば、腕のある会社に仕事と値段が集まることでもある。
競合は、ジャパンパイル、三谷セキサン、日本コンクリート工業など、杭を作って施工まで担う会社だ。テノックスは工場を持たず、施工と工法に絞る。杭の値段の上下に左右されにくい代わりに、工事の量に利益が縛られる。
筆者は、基礎工事の需要そのものより、担い手の数が業界の天井を決めると見る。人を確保できる会社だけが、増える需要を利益に変えられる。テノックスの従業員は 10 年で最も多い水準まで増えており、この点では一歩先にいる。
資本政策と M&A
還元の目安を、配当性向 30% から、純資産配当率(DOE)2% 以上に変えた。2026 年 3 月期の配当総額は約 4 億円で、DOE は 3% だった。利益が落ちても配当が下がりにくい形だ。自己株の取得は株式報酬の分に限られる。
手元の現金は約 78 億円で、借入は無い。会社は、運転資金と災害などへの備えに 50 億円を残すとし、その上で成長投資と既存の設備に計 60 億円を振り向ける計画だ。ベトナムのパイル工場の買収(約 10 億円)は交渉中だ。
大株主には、光通信が 7% を持つ。現金の厚さと低い株価の倍率から、還元の強化を求める声はこれからも出るだろう。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
基礎工事の需要は、これから 10 年が本番だ。高度成長期に造った橋や道路の架け替え、防衛施設、半導体とデータセンターの工場が、杭と地盤改良を大量に必要とする。データセンターの新設は 2026〜2028 年がピークだ。
当社は、自社の工法を設計に織り込ませる力で、値引き合戦を避けられる。売上総利益率は 10 年で最も高い 19% に達した。人手の不足で、腕のある会社に仕事と値段が集まる流れも追い風だ。
財務は鉄壁だ。借入は無く、現金は時価総額の 8 割ある。配当は純資産の 3% で、利益が落ちても下がりにくい。ベトナムでは工場の買収で一貫の体制を作り、海外の柱を育てる。営業利益が 20 億円を超えれば、今の値段は安い。
光通信が 7% を持つことも見逃せない。現金の厚い会社に、還元を促す株主がいる。自己株の取得が始まれば、1 株あたりの価値は目に見えて上がる。会社自身も ROE 8% を目標に掲げ、資本の効率に目を向け始めた。工事ごとの目標の管理で、赤字の工事も減っている。
慎重な見方
利益率の改善は、北海道新幹線のような採算の良い大型工事に支えられた面が大きい。山を越えれば、利益率は過去の 3〜5% に戻りやすい。過去 12 年で、営業利益率が 7% を超えたのは 1 期だけだ。
元請けのゼネコンとの力の差も変わらない。工事の量は建設投資の波に従い、谷の年には赤字の工事も出る。住宅の着工は細り、地盤改良の数も減る。
現金の使い道も心配だ。ベトナムの工場の買収や地盤調査の会社への出資は、本業より稼ぎが読みにくい。資本コストを下回る投資に現金が流れれば、厚い財務はむしろ株主の重荷になる。ROE 8% の目標にも、まだ届いていない。
人手の不足も、追い風だけではない。当社もまた技術者の確保に苦しみ、人件費は物価以上に上がる。需要があっても受けきれず、受けた工事の利益も人件費に削られる。2020〜2024 年 3 月期の利益率 2〜4% は、遠い過去の話ではない。光通信の存在も、経営が還元に動く保証にはならない。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分は拮抗する。需要の追い風と利益率の改善は事実だが、それが大型工事の山によるものか、構造の変化かはまだ見えない。確率は中立を厚くし、厚い現金で悲観の深さが限られる分、やや楽観をやや悲観より少し重くした。受注残と売上総利益率が大型工事の後も高いままなら、確率を楽観の側へ移す。逆に利益率が 15% を割り込めば、慎重な側へ寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,752 円184 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 676 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 1,843 円123 億円、今との差 +26.4%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,694 円314 億円 | 886 円59 億円 | +282.8% | +14.4% | 558 円37 億円 |
| やや楽観 | 25% | 3,622 円243 億円 | 798 円53 億円 | +203.1% | +11.7% | 1,105 円74 億円 |
| 中立 | 40% | 2,806 円188 億円 | 694 円46 億円 | +140.1% | +9.2% | 1,400 円94 億円 |
| やや悲観 | 17% | 1,224 円82 億円 | 473 円32 億円 | +16.3% | +1.5% | 288 円19 億円 |
| 悲観 | 8% | 589 円39 億円 | 369 円25 億円 | −34.3% | −4.1% | 77 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,752 円184 億円 | 676 円45 億円 | +135.1% | +8.9% | 3,428 円230 億円 |
今の株価時価総額 1,458 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:インフラ更新と工場の波で量が増え、利益率 7.5% に 利益 18 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 4,694 円314 億円
高度成長期に造った橋と道路の架け替えが本格化し、防衛施設と工場の建設も続く。住宅の減りを上回って基礎工事の量は 5% 増える。人手が足りず、腕のある会社に仕事が集まる。値段は物価を上回って 1.40 倍になる。
当社は自社の工法を設計に織り込み続け、利益率は 7.5% に上がる。ベトナムではパイル工場を手に入れ、製造から施工まで一貫で請ける。海外の売上は 30 億円台に乗る。
営業利益は 24 億円を超え、ROE は 8% 台に届く。配当は DOE に沿って増え、現金の一部は自己株の取得にも回る。
光通信の後押しもあり、資本の使い方は株主寄りに変わる。
- 国内の基礎工事(杭・地盤改良・調査設計):数量 225(国内のコンクリートパイル需要(万トン、基礎工事の量の目安))× 価格 1.32(需要 1 トンあたりの当社の売上(万円))→ 売上 296 億円・営業利益 22 億円。量 1.05 倍、値段 1.40 倍
- 海外(ベトナム):数量 11.3(ベトナムの建設市場(兆円、実質))× 価格 1.40(値段の指数(今=1.0))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。ベトナムの市場の伸びとシェアで 2.5 倍
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 16.37 倍、時価総額 309 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター、防衛、橋の架け替えが重なって基礎工事の量が増え、人手の不足で値段も通る筋書き。過去 12 年で営業利益率 7% を超えたのは 1 期だけで、それが 10 年続くのは容易でないので 1 割に置いた。
やや楽観 25% やや楽観:量は保ち、利益率 6.5% が定着する 利益 14 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 3,622 円243 億円
基礎工事の量は、住宅の減りをインフラと工場が埋めて横ばいになる。人手の不足で、値段は物価をやや上回る 1.37 倍になる。
工事ごとに目標を決めて機械の稼働を上げる取り組みが根づき、利益率は 6.5% を保つ。赤字の工事は減る。ベトナムは売上が倍になり、小さな利益を出す。
営業利益は 19 億円前後、ROE は 7% 台だ。会社の ROE 8% の目標には少し届かないが、過去の平均よりは一段高い。配当は DOE 3% で増え続ける。
人手の不足は続くが、当社は採用と教育で技術者を増やし、受けられる工事の量を保つ。データセンターと防衛の工事が、地方の谷を埋める。
- 国内の基礎工事(杭・地盤改良・調査設計):数量 214(国内のコンクリートパイル需要(万トン、基礎工事の量の目安))× 価格 1.29(需要 1 トンあたりの当社の売上(万円))→ 売上 276 億円・営業利益 18 億円。量横ばい、値段 1.37 倍
- 海外(ベトナム):数量 9.0(ベトナムの建設市場(兆円、実質))× 価格 1.37(値段の指数(今=1.0))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。2 倍
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 15.3 倍、時価総額 235 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の売上総利益率の改善(19%)が工事ごとの管理の成果として定着し、需要は住宅の減りをインフラと工場が埋める筋書き。改善の実績があり、会社の中計の方向にも沿うので 2 割強に置いた。
中立 40% 中立:大型工事の山を越え、利益率 5.5% で落ち着く 利益 12 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 2,806 円188 億円
住宅の着工は細り、基礎工事の量は 5% 減る。インフラの更新と工場が下支えするが、住宅の減りを全部は埋めない。値段は物価並みに上がる。
利益率は 5.5% だ。工事の管理の改善は残るが、大型工事の山が去り、採算の良い仕事の比率は下がる。人件費は物価で上がり、値段で追いかける形が続く。ベトナムは市場の伸びに乗って売上を 2 倍強にするが、利益は小さい。
営業利益は 15 億円前後、純利益は 11 億円台になる。配当は DOE 3% を守り、手元の現金は少しずつ積み上がる。ROE は 6% 前後で、資本コストを下回る。
大きく崩れも、伸びもしない 10 年だ。
- 国内の基礎工事(杭・地盤改良・調査設計):数量 203(国内のコンクリートパイル需要(万トン、基礎工事の量の目安))× 価格 1.26(需要 1 トンあたりの当社の売上(万円))→ 売上 256 億円・営業利益 14 億円。量 0.95 倍、値段 1.34 倍
- 海外(ベトナム):数量 8.1(ベトナムの建設市場(兆円、実質))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.0))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。市場の伸びで 1.8 倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 14.09 倍、時価総額 178 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北海道新幹線の大型工事が山を越え、利益率が過去の中央値(5% 前後)より少し上で落ち着く姿。需要の追い風と下請けの立場が打ち消し合う。どちらにも決め手が無く、一番厚くした。
やや悲観 17% やや悲観:建設投資が細り、利益率は 3.5% に戻る 利益 6 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,224 円82 億円
建設費の高騰と人手の不足で、工場や住宅の計画が先送りされる。基礎工事の量は 15% 減り、元請けとの交渉で値段は物価に届かない。
利益率は 3.5% に下がり、2020〜2024 年 3 月期の水準に戻る。ベトナムは景気の波で伸びが鈍り、ほとんど利益を出さない。
営業利益は 8 億円前後に縮む。配当は DOE 2% の下限で払い、成長投資は絞る。ROE は 3% 台で、ためた現金は額面ほどの価値を持たない。
人件費は物価以上に上がり、利益をさらに削る。ベトナムのパイル工場の買収は見送られ、海外の柱は育たない。現金は積み上がるが、株主には戻らない。
- 国内の基礎工事(杭・地盤改良・調査設計):数量 182(国内のコンクリートパイル需要(万トン、基礎工事の量の目安))× 価格 1.18(需要 1 トンあたりの当社の売上(万円))→ 売上 214 億円・営業利益 8 億円。量 0.85 倍、値段 1.25 倍
- 海外(ベトナム):数量 5.9(ベトナムの建設市場(兆円、実質))× 価格 1.25(値段の指数(今=1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。1.3 倍
倍率:PER 9.0 倍。ROE 3% 台で k を大きく下回り、上限 12.5 倍の 72%。稼ぐ力(純利益÷k)を超えないように置いた。余った現金は 28 億円×0.75(谷で食う分)×0.75 を足す。
確率:2020〜2024 年 3 月期に営業利益率が 2〜4% だった実績に戻る筋書き。建設の人手不足で工事が先送りされ、元請けとの交渉で値段も削られる。実績に根拠があるが、厚い現金で深さは限られるので 2 割弱に置いた。
悲観 8% 悲観:建設不況と買収の失敗が重なり、赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 589 円39 億円
建設投資が大きく落ち込み、基礎工事の量は 3 割減る。各社が仕事を奪い合い、値段は物価に追いつかない。当社も赤字の工事を抱え、営業損益は赤字になる。
ベトナムでは、買収したパイル工場が稼働せず、損失を出す。地盤調査の会社への出資も減損になる。
赤字と減損で自己資本は伸びず、配当は DOE 2% の下限を割り込んで減らす。手元の現金は減るが、借金は無く、会社が行き詰まることはない。残るのは、縮んだ事業と、運転資金に縛られた現金だ。
現金が厚いぶん、会社は粘れるが、株主の取り分は細る。経営への批判が強まり、事業の売却や他社との再編が話題になる。
- 国内の基礎工事(杭・地盤改良・調査設計):数量 150(国内のコンクリートパイル需要(万トン、基礎工事の量の目安))× 価格 1.08(需要 1 トンあたりの当社の売上(万円))→ 売上 162 億円・営業利益 −2 億円。量 0.70 倍、値段 1.15 倍
- 海外(ベトナム):数量 4.5(ベトナムの建設市場(兆円、実質))× 価格 1.15(値段の指数(今=1.0))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。買収の失敗で赤字
倍率:PBR 0.294 倍を今の自己資本 135.8 億円に掛けた。稼ぐ力は赤字で、価値は売れる資産の床 40 億円で測る。積み上げた自己資本には掛けていない。
確率:2011〜2012 年 3 月期のような建設不況の赤字と、ベトナムの買収の損失が重なる筋書き。過去に赤字の期はあるが、無借金で現金が厚く、続けて赤字に沈むのは考えにくいので 1 割弱に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の基礎工事(杭・地盤改良・調査設計)
杭の施工と地盤改良を、設計への工法の提案から施工・品質管理まで一貫で請ける。地盤の調査・設計の相談も含む。
| 数量国内のコンクリートパイル需要(万トン、基礎工事の量の目安) | 価格需要 1 トンあたりの当社の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 214 | 0.94 | 201 | 13 |
| 10 年後 中立 | 203 | 1.26 | 256 | 14 |
取り方:売上は連結 210.9 億円から海外の約 9.5 億円を引いた 201.4 億円(説明資料の 2026/03 期予想の内訳:国内 199.5・コンサル等 6.0 に沿う)。量の目安はコンクリートパイル・ポール協会の 2025 年度予測 214 万トンで、地盤改良も含めた当社の売上を 1 トンあたりに割った推定。利益は連結の営業利益からベトナムの分(約 0.2 億円)を引いた推定。
海外(ベトナム)
ベトナムの日系・現地の工場や施設の杭と地盤改良。2024 年に現地の施工会社を買収。
| 数量ベトナムの建設市場(兆円、実質) | 価格値段の指数(今=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 1.00 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.1 | 1.34 | 23 | 1 |
取り方:売上 9.5 億円は説明資料の海外建設事業。市場はベトナムの建設市場を約 300 億ドル(4.5 兆円)と置き、当社の取り分を rev_factor にした推定。利益は小さく 0.2 億円と推定。
リスクと懸念
大型工事の山を越えた後
北海道新幹線の大型工事はピークを越えた。採算の良い大型工事が減ると、直近の売上総利益率 19% は過去の 15% 前後に戻りやすい。利益の改善が構造の変化か、一時の山かが分かれ目だ。
建設投資の波
基礎工事は建設のいちばん初めの工程で、建設投資の変化を最初に受ける。景気の後退や建設費の高騰で工場や住宅の計画が先送りされれば、工事の量はすぐに減る。
元請けとの力の差
仕事の多くはゼネコンからの下請けだ。工法を設計に織り込めない工事では、値段は元請けとの交渉で決まり、利益が削られる。
担い手の不足
杭打ちの重機を扱う技術者は高齢化が進む。時間外労働の規制で、同じ人数でこなせる工事も減った。人を確保できなければ、需要があっても受けられない。
海外の買収と投資
ベトナムのパイル工場の買収(約 10 億円)は交渉中だ。工場の稼働や現地の景気しだいで、損失や減損を出すおそれがある。地盤調査の会社への出資も、稼ぎが読みにくい。
現金の使い方
現金は時価総額の 8 割にあたる。資本コストを下回る投資に回れば、厚い財務が株主の価値を薄める。還元の方針は配当が中心で、自己株の取得はほとんどない。
今後の分かれ目
- 大型工事の山を越えた後も、売上総利益率が 2 期続けて 17% を超える
- 工事の管理の改善が定着したとみて、中立の利益率を 5.5% から 6.5% に上げる。
- 受注残が 2 期続けて 80 億円を割る
- 量の山が去ったとみて、中立の量を 0.95 倍から 0.88 倍に下げる。
- 自己株の取得や総還元性向の目標が数字で示される
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げる。
- ベトナムのパイル工場の買収が決まり、2 年で黒字になる
- 海外の利益率を 4% から 6% に上げる。
- データセンターや防衛の基礎工事で大型の受注が続く
- やや楽観の確率を厚くする。
- 光通信など株主から還元の強化を求める提案が出る
- 現金の戻り方が変わる局面とみて、条件を見て見直す。
見ておくもの
- 受注残(2025 年 9 月末 99 億円)
- 売上総利益率(巡航 15% 前後、直近 19%)
- ベトナムのパイル工場の買収の進み具合
- DOE と自己株の取得
- データセンター・防衛・橋の架け替えの発注
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k(8.0%)から決め、ROE が k を下回る筋書きは上限 1÷k=12.5 倍の 72〜88%、わずかに上回る楽観は正当化 PER(約 12.8 倍)の 94% に置いた。PBR が 1 倍を割っていることや同業の倍率は見ていない。現金は会社が残す 50 億円を超える分だけを余った現金として足した。リースは小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.37 倍・やや楽観 PER 11→15.3 倍・中立 PER 10.5→14.09 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。同じ領域の済み会社は無い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。