結論
徳倉建設は、名古屋に本社を置く中堅ゼネコンだ。工場や店舗などの建築と、港湾・道路などの土木で稼ぐ。筆者の結論は「適正圏」。財務は軽く、足元の利益も過去最高圏にある。ただ、その利益は景気と人手不足が生んだ山の高さだ。
強みは財務の軽さにある。手元の現金は有利子負債を80億円ほど上回り、自己資本比率は4割を超えた。純現金は時価総額の半分近い。ただ、建設は工事代金の入りと払いで現金が年に数十億円動く。手元の現金の大半は運転資金で、自由に使える余りは小さい。
利益は山にいる。直近の営業利益率は4.3%で、過去12年の最高4.7%に近い。土木の粗利率は前年の2倍以上に跳ねた。10年の標準の姿では、これを3.9%まで戻して見る。国内の工事量は実質で減るが、価格は物価並みに上がる。
還元の薄さも気になる。配当性向は2割前後で、稼ぎの多くは内部にたまる。ためた現金が事業にも株主にも回らなければ、ROEは資本コストを下回る。割安と言えるのは、会社が還元を厚くした時だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、徳倉建設は「財務は魅力的、事業は普通」の会社だ。ゼネコンは工場も店も要らず、資本は少なくて済む。ただ、毎年新しい工事を取り直さなければならず、利益は景気の山と谷で大きく振れる。過去20年にも、赤字になった年が2回ある。
株主が自由に使える利益は、純利益の7割ほどだと筆者は見る。ただ、実際に株主へ戻るのは2割前後だ。残りは現金として積み上がる。この現金が妥当な値段で事業に回るなら歓迎だが、回らなければ株主にとっての価値は目減りする。
最大の論点は、純現金80億円の中身だ。建設は、工事代金を受け取ってから下請けに払う。現金の大半は、この回転に必要な運転資金だ。筆者は、そのうち自由に使える分を23億円ほどに絞って見た。
安全域は、楽観でも悲観でも測る。楽観では今の値段を大きく上回るが、悲観では半分に割れる。確率を加えると、今の値段は妥当圏に収まる。取らない選択も含め、判断を急ぐ必要はない。
何で稼ぐ会社か
徳倉建設は、1947年創業の総合建設会社だ。名古屋を地盤に、東京・大阪・三河・九州・東北に支店を置く。連結従業員は約800人。直近の売上は682億円で、建築が約3分の2、土木が約3分の1、不動産とその他は2%ほどだ。
稼ぎの柱は建築だ。工場や店舗などの民間の建物を、発注者から請け負って建てる(受注先の内訳は開示を確かめられなかった)。粗利は直近で約44億円。ただし受注は波が大きい。2026年3月期の第3四半期までの建築受注は、前年より18%減った。
土木は、港湾・海洋工事から出発した事業だ。今は道路、河川、橋などの官公庁工事が中心になる。第3四半期までの受注は34%増え、粗利は前年の約2.6倍の28億円に跳ねた。国土強靱化の予算が追い風だが、この粗利率は過去5期の平均を大きく上回る。
海外は小さいが、会社の個性がある。途上国への政府開発援助(ODA)の港湾・道路工事から始まり、グアテマラの国道改良などの実績を持つ。近年は日系企業の海外工場の建築にも広げた。ブラジルとインドネシアには2012年に現地法人を置いた。
不動産は賃貸と売却で、売上は6億円ほどだ。規模が小さく、全体の利益を動かす力はない。公民連携(PPP・PFI)にいち早く取り組んだ点は、官公庁との接点として生きている。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「財務は堅いが、堀は浅い普通のゼネコン」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、大手のようには深くない。
強みは三つある。一つ目は財務だ。有利子負債を1年で59億円から35億円へ減らし、自己資本比率は37%から43%へ上がった。二つ目は港湾・海洋土木の専門性で、地場の同業との差になりうる。三つ目は海外のODA工事で培った、途上国での施工の経験だ。
弱みも三つある。一つ目は価格を決める力の弱さだ。建築は入札や相見積もりで競り合い、資材高の転嫁も顧客との交渉次第になる。二つ目は利益の振れの大きさだ。営業利益は2022年3月期の26億円から翌年に6億円へ落ちた。三つ目は人手だ。施工量を決めるのは技能者の数で、確保できなければ売上を伸ばせない。
資本の使い方は、守りに偏る。ROEは直近で10%に届いたが、配当性向は2割前後と低い。投資ファンドや光通信系の組合が大株主に並ぶのは、この余力の大きさを見ているからだと筆者は考える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、量が増えない成熟市場だ。人口が減り、地方の工事は先細る。それでも今は「作れば儲かる」局面にある。2024年4月に残業の上限規制が始まり、技能者が足りなくなった。受け手が仕事を選べるようになり、資材高の値上げも通りやすい。上場ゼネコン50社の2025年度の受注は16兆円台で、利益率も集計以来の最高水準だった。
徳倉建設は準大手より一回り小さい中堅で、競争相手は地場のゼネコンだ。同じ愛知県の矢作建設工業のほか、東海圏の各社がいる。民間の大型案件では、スーパーゼネコンの名古屋支店とも競る。市場は分散していて、価格を決める力は大手より弱い。
追い風は二つある。一つは国土強靱化だ。2026年度から5年で20兆円強の計画があり、橋、上下水道、港湾の更新が続く。もう一つは民間の工場・物流の建て替えだ。
10年先は、この波が一巡する。その後は、実質で横ばいか緩やかな縮小に向かうと筆者は見る。人手が足りない業界では、売上の伸びより採算を守る力が会社の差になる。地場ゼネコンの後継者難を背景に、事業承継型の再編も進みやすい。小さい会社には、買う側にも買われる側にもなる可能性がある。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、還元の薄さと現金の厚さだ。2026年3月期の配当性向は2割に届かず、2027年3月期は通常配当を増やし、創立80周年の記念配当を足す計画だ。それでも性向は2割強にとどまる。自社株買いは2024年に1億円余りで、自己株の比率は4%ほどだ。
有利子負債は1年で24億円減った。借入返済を優先し、手元の現金は100億円台を保つ。ただ、2023年3月期から2026年3月期までの純利益の合計は約55億円で、自己資本は約60億円増えた。稼ぎの大半は内部にたまっている。
株主は、持株会が約10%で筆頭、光通信系の投資組合が約6%、三徳物産が約6%、UHパートナーズ2の投資組合が約6%だ。上位4者で約28%を占め、投資家からの還元要求が強まる素地はある。
買収は目立たない。過去は2006年に坂田建設、2017年に九州建設を連結子会社にした程度で、大きな買収で価値を壊す会社ではない。逆に、外から買われる可能性は、株主構成を見るとゼロではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設業は、構造が変わった。技能者が足りず、受け手が仕事を選べる。徳倉建設は採算の悪い工事を断れる側に立ち、直近の営業利益は前年の1.9倍になった。会社の2027年3月期の計画も、増収増益で過去最高益を見込む。
財務は、安全域だ。有利子負債を1年で40%減らし、自己資本比率は43%になった。実質無借金で、金利が上がっても利払いは増えず、受取利息が増える。景気が悪くなっても、この現金が会社を支える。
株主構成も追い風だ。投資ファンドや光通信系の組合が大株主に並び、現金を積み上げたまま放置する経営は許されにくい。配当性向は2割と低いから、引き上げの余地は大きい。還元が3割、4割へ進めば、資本の効率は上がる。
土木は国土強靱化の予算に守られる。港湾・海洋という専門分野を持つ会社は少ない。海外のODA工事で培った経験は、日系企業の海外工場の需要にも使える。10年後も、地味でも堅実に稼ぐ会社として残る。
慎重な見方
今の利益は山の高さだ。営業利益率4.3%は、過去12年の最高4.7%に近い。土木の粗利率は前年の5%から13%へ跳ねたが、これは一時的な設計変更や追加工事の可能性が高い。2023年3月期には、営業利益が26億円から6億円へ落ちた。同じことは、また起こる。
受注の質にも不安がある。直近の建築受注は、第3四半期までで前年比18%減だった。土木が補ったが、公共工事の波は読みにくい。人手不足は採算を守る一方で、売上の伸びを縛る。
現金は、見かけほど自由ではない。2025年3月期は営業キャッシュフローが62億円の赤字になり、翌期は23億円の黒字に戻った。年に数十億円も動く現金の大半は、運転資金だ。純現金を時価総額の半分と見るのは、数字だけの見方になる。
還元は薄いままだろう。持株会が筆頭株主で、経営の安定が優先されやすい。投資組合が大株主でも、会社が動く保証はない。現金が積み上がるだけなら、ROEは資本コストを下回り、PBRは1倍割れで放置される。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。強気の見方が言う財務の安全域は本物だが、現金の大半が運転資金だという指摘に反論がしにくい。利益の山の高さも、土木の粗利率を見ればごまかせない。確率は、中立に4割弱、やや悲観に25%、悲観に12%を置いた。強気の見方の中心である還元の増加は、楽観・やや楽観の筋書きに入れたが、確率は低くとどめた。結果として、今の値段は中立の価値にほぼ等しい。ここに安全域はあるが、割安とまでは言えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 20,345 円427 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,963 円83 億円)。 今の値に割り戻すと 12,897 円271 億円、今との差 +61.2%、 期待の年率 +11.8%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 40,000 円840 億円 | 6,996 円147 億円 | +487.4% | +19.4% | 3,290 円69 億円 |
| やや楽観 | 18% | 30,761 円646 億円 | 5,378 円113 億円 | +351.7% | +16.3% | 6,505 円137 億円 |
| 中立 | 38% | 24,254 円510 億円 | 4,188 円88 億円 | +255.5% | +13.5% | 10,808 円227 億円 |
| やや悲観 | 25% | 9,345 円196 億円 | 2,856 円60 億円 | +52.5% | +4.3% | 3,050 円64 億円 |
| 悲観 | 12% | 3,798 円80 億円 | 1,666 円35 億円 | −31.7% | −3.7% | 656 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 20,345 円427 億円 | 3,963 円83 億円 | +203.9% | +11.8% | 24,308 円511 億円 |
今の株価時価総額 8,000 円168 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 採算を守り、還元も厚くなる 利益 43 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 40,000 円840 億円
10年間、建築は採算の合う工事だけを選び、営業利益率は4%台前半を保つ。工場の建て替えと物流施設の需要が、実質の工事量を今並みに支える。人手が足りない世界では受け手が強く、価格の転嫁は物価を少し上回って通る。土木は国土強靱化の予算に乗り、港湾・海洋の専門性で受注を伸ばして、利益率は5%台後半に届く。営業利益は50億円台に乗る。会社は投資家からの求めに応え、配当性向を4割台へ引き上げる。現金は積み上がらず、ROEは資本コストを上回る。海外は日系企業の工場建築で小さな黒字を重ねる。国内の工事量が増えない点は変わらないが、価格と採算でそれを補う、最も良い姿だ。土木で稼いだ現金は、港湾の機械や人材への投資に回り、受注の質をさらに高める。名古屋圏の大型工事でも、品質を理由に指名を受ける場面が増える。筆者は、この姿を実現するには会社の姿勢の変化が要ると考える。
- 建築:数量 62.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 629 億円・営業利益 26 億円。63 万人日換算 × 1 人日あたり 10.01 万円、営業利益率 4.2%
- 土木:数量 32.1(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 11(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 340 億円・営業利益 20 億円。32 万人日換算 × 1 人日あたり 10.60 万円、営業利益率 5.8%
- 不動産・その他:数量 2.0(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1 人日換算あたり売上(万円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 6 億円。2.0 万人日換算 × 1 人日あたり 10.02 万円、営業利益率 32%
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)17 億円。全体の PER 18.41 倍、時価総額 797 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年を通じて採算の良い工事を選び続け、会社が還元も増やす二つが重なる必要がある。連続して当たる筋書きなので、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 価格転嫁が続き、還元が少し増える 利益 34 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 30,761 円646 億円
建築の工事量は実質で4%ほど減るが、価格は物価に近く上がる。営業利益率は3.5%まで戻り、土木は5%を保つ。強靱化の予算は続き、港湾・海洋の受注が土木を支える。海外は小さな黒字にとどまる。営業利益は40億円強で、直近の山よりやや高い水準を保つ。会社は、株主からの求めを受けて配当性向を4割へ引き上げる。現金は積み上がり過ぎず、ROEは9%近くまで上がって資本コストをわずかに上回る。市場は、財務の堅い堅実な会社として今より高く評価する。ただ、国内の工事量が増えない制約は最後まで残る。2030年代半ばには、土木の更新工事が建築の波の一巡を和らげる。海外の日系工場の建築は、為替が安定すれば小さな黒字を積む。投資組合など大株主の目が厳しいので、現金の使い道は説明を求められ、還元は少しずつ前進する。
- 建築:数量 60.3(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.72(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 586 億円・営業利益 21 億円。60 万人日換算 × 1 人日あたり 9.72 万円、営業利益率 3.5%
- 土木:数量 30.4(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 313 億円・営業利益 16 億円。30 万人日換算 × 1 人日あたり 10.29 万円、営業利益率 5.0%
- 不動産・その他:数量 1.9(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 9.74(1 人日換算あたり売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 6 億円。1.9 万人日換算 × 1 人日あたり 9.74 万円、営業利益率 32%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)17 億円。全体の PER 17.24 倍、時価総額 596 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価並みに通り、会社が還元を少し増やす姿。人手不足と国土強靱化が続く限り十分ありうるので、中立に次ぐ厚みで置いた。
中立 38% 量は減り、価格は物価並み。利益は山から戻る 利益 28 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 24,254 円510 億円
建築の工事量は実質で8%ほど減り、価格だけが物価並みに上がる。営業利益率は今の4.3%から3.9%まで戻り、営業利益は34億円ほどになる。建築は3%、土木は4%台前半だ。土木の粗利率は直近の13%から、過去5期の平均に近い水準へ下がる。会社は人手不足の中で採算を守るが、売上は伸びない。還元は性向3割台半ばへ少しずつ上がるが、自己資本が厚くなる分、ROEは7%台にとどまる。海外と不動産は小さな黒字を保つ。大きな失敗も大きな成功もない、平らな10年だ。財務の堅さは変わらず、悲観の時は会社を支える。受注残は、直近で1年分を超える水準が続き、数年先までの売上は大きくは崩れない。ただ、人件費と資材費の上昇を吸収できるかは、工事ごとの値決めの巧さで決まる。
- 建築:数量 57.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.58(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 554 億円・営業利益 17 億円。58 万人日換算 × 1 人日あたり 9.58 万円、営業利益率 3.0%
- 土木:数量 29.2(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 296 億円・営業利益 12 億円。29 万人日換算 × 1 人日あたり 10.14 万円、営業利益率 4.2%
- 不動産・その他:数量 1.7(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 9.59(1 人日換算あたり売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。1.7 万人日換算 × 1 人日あたり 9.59 万円、営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)17 億円。全体の PER 16.04 倍、時価総額 453 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は実質で減り、価格だけが物価並みに上がり、利益率は山から平均の方へ戻る標準の姿。会社の改善が部分的に効く程度なので、最も厚く置いた。
やや悲観 25% 地方の縮小と人手不足で採算が細る 利益 17 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 9,345 円196 億円
地方の人口減と人手不足で、工事量が実質で1割以上減る。価格の転嫁は止まり、人件費の上昇だけが重くなる。建築の営業利益率は2%まで落ち、土木も入札の競り合いで3%に下がる。営業利益は20億円ほどで、2023年3月期の谷に近い水準へ戻る。会社は配当を守るが、増やす余力はなく、還元は3割にとどまる。現金は運転資金に食われ、余った現金は減る。海外は小さな赤字を出す年もある。市場からは「資本コストを稼げない会社」と見られ、倍率は低いままだ。会社は選別受注を貫けず、人手不足の中で採算の悪い工事を抱え込む。受注は、土木の公共工事が頼りになるが、予算の執行が遅れる年は穴があく。資材の値上がりを顧客に転嫁できず、粗利が薄い年が続く。
- 建築:数量 52.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.30(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 491 億円・営業利益 10 億円。53 万人日換算 × 1 人日あたり 9.29 万円、営業利益率 2.0%
- 土木:数量 26.9(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 9.69(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 261 億円・営業利益 8 億円。27 万人日換算 × 1 人日あたり 9.69 万円、営業利益率 3.0%
- 不動産・その他:数量 1.5(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 8.95(1 人日換算あたり売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 3 億円。1.5 万人日換算 × 1 人日あたり 8.95 万円、営業利益率 25%
倍率:事業の ROE は純利益 17.0 億円(現金の利息を除く)÷自己資本(余った現金を除く)351 億円で 4.9%。k 7.25% を大きく下回るので、ためた利益は額面より低い価値で、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。利益が谷に近く、資本の稼ぎも細る筋書きなので、ROE÷k(0.57)に応じて 7.5 倍に置いた。余った現金は谷で運転資金に食われて 0.75 倍とみた。
確率:地方の人口減と人手不足は、小さな会社に特に重い。値上げ疲れで利益率が平均へ戻る展開を、中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 構造的に負け、低採算工事に頼る 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 3,798 円80 億円
構造的に負ける。地方の建設市場が縮み、人手不足の中でも受注を選べなくなる。低採算の工事を受けざるをえず、建築の営業利益率は0.5%まで落ち、土木も1%台前半にとどまる。海外では支払い遅れや為替の損失が出て、不動産の評価も下がる。営業利益は5億円台で、ほぼ稼げない。配当は維持しても、優良な会社とは見られなくなる。現金は運転資金と赤字の穴埋めに食われ、余った現金は半分に減る。財務の体力は残るので倒産は遠いが、稼ぐ力の回復は見えず、再編の対象にもなりやすい。地方の需要の縮みは10年かけてじわじわ効き、どこかの年に急に表に出る。海外は撤退か縮小に追い込まれ、現地の事業の整理で損失が出る。名古屋圏の民間工事も、大手の価格攻勢に押されて取りこぼす。
- 建築:数量 44.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.58(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 378 億円・営業利益 2 億円。44 万人日換算 × 1 人日あたり 8.58 万円、営業利益率 0.5%
- 土木:数量 23.4(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 9.08(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 213 億円・営業利益 3 億円。23 万人日換算 × 1 人日あたり 9.08 万円、営業利益率 1.2%
- 不動産・その他:数量 1.2(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 8.23(1 人日換算あたり売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。1.2 万人日換算 × 1 人日あたり 8.23 万円、営業利益率 12%
倍率:構造的に優良でなくなり、稼ぐ力は細る姿。この筋書きの純利益は 5.2 億円で、稼ぐ力は純利益 5.0 億円 ÷ k 7.25% ≒ 59 億円に余った現金を足した約 65 億円にしかならない。他方で清算の側から見ても、純現金 80 億円は未成工事受入金・工事未払金を払う運転資金に消え、全額は株主に回らない。そこで今の自己資本 228 億円に対する PBR 0.35 倍(時価総額 約 80 億円)を、純現金の上限として置いた。
確率:地方市場の縮小と受注の失敗が重なり、優良ではなくなる筋書き。2回の赤字の経験と営業利益の急落の実績を踏まえ、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築
工場・店舗・倉庫・集合住宅などを請け負って建てる。売上の約 3 分の 2 を占める稼ぎ頭。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 62.8 | 7.15 | 449 | 12 |
| 10 年後 中立 | 57.8 | 9.58 | 554 | 17 |
取り方:建築の売上 449 億円(IR の開示を集めた irbank のセグメント表)。営業利益はセグメントの開示が無いので、売上総利益 44.1 億円から、全社の販売費及び一般管理費 48.5 億円(売上総利益 77.5 億円 − 営業利益 29.1 億円)を売上比で配って 12.3 億円とした。施工量は開示が無く、技能者の労務費を売上の約 35%、日当を約 2.5 万円と置いて 62.8 万人日と推定した。売上を施工量で割った 1 人日あたり売上が価格に当たり、物価の分は価格に入る。
土木
港湾・海洋、道路、河川、橋などの官公庁工事が中心。国土強靱化の恩恵を受ける。
| 数量施工量(万人日、実質。推定) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 29.2 | 7.57 | 221 | 13 |
| 10 年後 中立 | 29.2 | 10 | 296 | 12 |
取り方:土木の売上 221 億円・売上総利益 28.4 億円。直近期の粗利率は 12.9% と前年(5.2%)の 2 倍以上で、過去 5 期の平均 8.8% を大きく上回る山の値。営業利益は建築と同じく販管費を売上比で配って 12.9 億円とした。土木は機械・材料の割合が建築よりやや高いので労務費を売上の約 33% と置き、29.2 万人日と推定した。
不動産・その他
不動産の賃貸・売却と、建設資材などの周辺事業。規模は小さい。
| 数量事業量(万人日換算、実質。推定) | 価格1 人日換算あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.7 | 7.16 | 12 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 9.59 | 16 | 5 |
取り方:不動産の売上 6.2 億円とその他 5.9 億円の合計 12.1 億円。売上総利益は 4.7 億円で、販管費を売上比で配って営業利益を 3.85 億円とした(全社の営業利益 29.05 億円に合わせる残り)。数量は他の二つと同じ要領の換算で、1.69 万人日と推定した。
リスクと懸念
利益率の山が崩れる
直近の営業利益率は4.3%で、過去12年の最高4.7%に近い。土木の粗利率は前年の5%台から13%へ跳ねたが、追加工事や設計変更の一時要因を含む可能性がある。2023年3月期のように、資材高や工事の採算悪化で営業利益が1年で4分の1へ落ちる谷は、また来る。
受注の波と人手不足
2026年3月期は、第3四半期までの建築受注が前年比18%減った。土木が補ったが、公共工事の波は読みにくい。技能者が足りなければ、受注があっても施工できず、人件費の上昇は粗利を削る。徳倉建設は規模が小さく、人材の確保で大手に劣る。
現金が運転資金に消える
純現金は約80億円だが、営業キャッシュフローは2025年3月期に62億円の赤字、翌期に23億円の黒字と、年に数十億円も動く。工事代金の入りと払いの時期がずれるためで、手元の現金の大半は運転資金だ。純現金を余りと見ると、安全域を過大に見る。
還元が増えず現金がたまる
配当性向は2割前後で、自己資本は4年で約60億円増えた。持株会が筆頭株主で、経営は安定を優先しやすい。投資組合が株主に並んでも、会社が動く保証はない。現金が積み上がるほどROEは下がり、資本コストを下回る期間が長引く。
海外事業の不確実さ
ブラジル・インドネシアなど新興国で事業を営む。為替、政情、現地の支払い遅れが、日本の会社より大きな損失を生みうる。規模は小さく全体を揺らす力は限られるが、受注の失敗が重なれば、小さな会社の利益には響く。
地方の人口減と公共工事の縮小
国土強靱化の予算は5年で20兆円強とされるが、その先は不透明だ。人口が減る地方では、公共の更新需要そのものが縮む。官公庁工事は入札で競り合い、価格を決める力が弱いため、需要が細ると低採算の工事を取らざるをえなくなる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて3%を割ったら
- 利益の山が終わったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げ、中立の営業利益率を下げる。
- 配当性向を3割以上へ引き上げ、または自社株買いを大きく増やしたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ上げ、楽観側の確率を増やす。
- 営業キャッシュフローの赤字が2期続いたら
- 手元の現金が運転資金に消えたとみて、余った現金の額を下げる。
- 土木の粗利率が10%を割り、8%台へ戻ったら
- 直近の13%は一時的な山だったと確認でき、中立の利益水準を数億円下げる。
- 投資組合や光通信系の組合が持株比率を高め、経営に提案を出したら
- 還元の引き上げか再編に動きうるので、楽観側の確率を少し増やす。
- 同じ東海圏のゼネコンとの統合や、外部資本による買収の話が出たら
- 統合後の資本効率と価格次第。純現金の厚い会社なので、買う側に回る場合は価値を壊さない使い方かを見る。
見ておくもの
- 四半期ごとの建築・土木の受注高と繰越工事高
- 建築・土木の完成工事総利益率(粗利率)
- 営業キャッシュフローと手元の現金の増減
- 配当性向と自社株買いの有無
- 大株主(投資組合・光通信系)の持株比率の変化
- 国土強靱化予算の執行と土木の受注
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 7.25%(基本 7.5% + quality 1.0%)を下回る前提で、正当化 PER の上限 1÷k(約 11.8 倍)に ROE÷k と 9 割を掛けて置いた。悲観は過去の PBR の底からでなく、悲観の稼ぐ力と純現金で測った。今の株価や PER を見てから決めたわけではない。余った現金は、純現金 80 億円から運転資金(月商の約 1 か月分 57 億円)を引いた 23 億円とし、戻り方は 0.5 にした。営業キャッシュフローが年に数十億円動くため、これ以上は余りと見なさなかった。減価償却は物価で増やさず、今の約 4 億円(有報で確かめられず推定)に新しい設備の分を足して 10 年後に約 6 億円とみて、利益率に織り込んだ。更新投資は建築費の上昇で膨らむが、年 8 億円規模と小さく、現金の細りは数億円にとどまる。投資有価証券・賃貸不動産の含み益は、内訳を確かめられず足していない。リースは建設業で重くなく、新リース会計基準(2028 年 3 月期)の影響は小さいと見て、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.25%。