結論
北陸電気工事は、北陸電力グループの電気工事会社だ。内線・空調管の設備工事が売上の柱で、北陸電力送配電から配電線の工事も受ける。筆者の結論は、今の値段はやや高い、というものだ。事業の質は良いが、稼ぐ力は資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。
2026 年 3 月期の営業利益率は 8.4% だった。過去 10 年の最高は 10.6% で、今は山の手前にある。人手不足で単価が通り、受注残も過去最高水準にある。ただ、同業の大手が 10〜12% を出す中で、この会社は 10% 前後が天井とみる。
財務は厚い。自己資本比率は 74% で、純現金は時価総額の 4 割ある。ただ、配当は自己資本の 3% を目安にし、現金はたまる一方だ。安全域にはなるが、株主に戻る額は限られる。
気になるのは親会社だ。北陸電力は 2027 年 3 月期の営業利益が半分以下になる見込みで、系列の発注が細る芽がある。関東への進出と買収は種まきだが、成果はこれからだ。
10 年後の価値は、今の値段を 1 割ほど下回る。ここまで株価が上がれば、安全域を取る余地は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業は悪くない。地元で信用を積んだ電気工事会社で、配電の保守は止められない。財務が厚く、有利子負債がほとんどない点は、安全域として評価する。
一方で、稼ぐ力は並みだ。事業の資本利益率は、資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。現金がたまるほど ROE は薄まり、ためた利益は、額面どおりの価値にならない。
経営の資本の使い方は、堅実だ。無理な大型買収は避け、小さな会社を重ねている。ただ、現金の使い道が限られる中で、自社株買いなどの株主還元は控えめである。オーナーとして持ち続けたい会社かと問われれば、答えは慎重になる。
払う値段に安全域があるかを問うと、厚い純現金は支えだが、利益率の天井は低い。今の値段は、中計の達成をおおむね織り込んでいる。大きな割安は見えない。割安と呼べるのは、現金が株主へ戻る道筋が見えた時だろう。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、建物と電力設備の電気工事だ。本社は富山市で、地盤は富山・石川・福井の越前地域と岐阜の一部にある。
中心は内線・空調管工事で、単体の完成工事高の 3 分の 2 を占める。ビルや工場、病院などの電気、空調、給排水の設備を請け負う。民間の再開発や、北陸新幹線の敦賀延伸後の街づくりが需要になる。
次が配電線工事と送変電・土木工事で、合わせて単体の約 3 分の 1 だ。北陸電力送配電からの受注は完成工事高の約 3 割で、配電線の大半を占める。地域の停電復旧や設備更新を担う、止められない仕事である。
関東と関西の大都市圏にも出ている。2023 年に横浜の設備工事会社、日建を買い、福井のスカルトや新潟の蒲原設備工業も傘下に入れた。
2025 年 8 月に、北陸電力の議決権比率が 49.5% に下がり、持分法適用会社になった。従業員向けの株式給付信託を導入するため、自己株式を処分した結果だ。
中計は、内線・空調管・送変電は大都市圏、配電は北陸を重点の地域と定める。内線と空調管を一括で受ける営業も進める。2024 年の能登半島地震では、被災地の復旧にいち早く動いた。技能者の確保が、受注を増やせるかどうかを左右する。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、地元の信用と電力設備の施工力だ。北陸電力送配電の仕事は、設備を知る地元の工事会社でなければ回らない。災害時の復旧にも、すぐ動ける。
もう一つの強みは、財務の厚さだ。自己資本比率は 74% で、有利子負債は僅少だ。研修施設や技能五輪への投資を続け、人を育てる仕組みも持つ。人手が制約の業界では、これが武器になる。
弱みは 3 つある。第一に、規模が小さい。売上は 600 億円台で、関電工やきんでんなど電力系の大手の数分の一だ。大都市圏では、規模で戦いにくい。
第二に、値段を自分で決めきれない。民間工事は入札と相見積りが多く、利益率は同業の大手に届かない。第三に、親会社の影響だ。北陸電力の設備投資が弱まれば、系列の発注も縮む。資本の面でも、親会社の方針に左右される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の電気工事の受注は、2023 年度で約 3.4 兆円ある。再エネの接続、データセンターと半導体工場の受電設備、EV 充電器など、新しい需要が積み上がっている。
制約は人手だ。2024 年の残業上限規制の後、技能者の高齢化と不足が構造になった。業界は仕事を選び、単価を上げる方向に動いた。北陸電気工事も、罰則付き上限規制の違反ゼロを達成している。
電力系の電気工事は、各地域に 1 社ずつある準寡占の構造だ。きんでん、関電工、中電工、トーエネック、ユアテック、四電工、クラフティアが並ぶ。北陸電気工事はその中で、売上が最も小さい部類に入る。同じ電力系の仕組みで、地域の発注という下支えを持つ点は変わらない。
10 年後を考える。配電設備は高経年化が進み、更新は続く。一方で、北陸の人口は減る。民間の新設は実質で伸びにくく、大都市圏への出方が成否を分ける。親会社の北陸電力が、設備投資の計画をどう変えるかも、大きな分かれ目になる。
競争の軸は、再エネとデータセンターの工事の取り合いに移りつつある。大都市圏へ出る北陸電気工事は、そこで規模の大きい同業と直接ぶつかる。地元の信用だけでは勝てない場面が増える。
資本政策と M&A
還元の方針は、2025 年に変わった。配当性向 30% の目安を改め、連結株主資本配当率、つまり自己資本に対する配当の割合を 3.0% にするとした。2026 年 3 月期の配当は増配で、2027 年 3 月期も同額を予想する。
中計の 3 年間では、営業キャッシュフローの約 135 億円のうち、成長投資に約 65 億円、配当に約 40 億円、残りは手元に置く計画だ。成長投資は買収と人への投資にあてる。
問題は、現金が積み上がることだ。純現金は 173 億円ある。自己資本に連動する配当は、利益が増えても現金を使い切れない。自社株買いの方針は、今のところ示されていない。
買収は小ぶりに重ね、3 年間で売上 30 億円超を見込む。親会社の北陸電力は、議決権の 49.5% を持つ。2015 年に公開買付けで子会社にした経緯がある。今は持分法適用会社で、将来の資本関係は動きうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北陸電気工事は、北陸電力送配電の仕事を土台に、民間で伸びる。配電線の更新は設備の高経年化で長く続き、能登半島の復旧や北陸新幹線の延伸後の再開発も需要になる。受注残は過去最高の水準にある。
中計は、前の計画を上回る形で終わった。2024 年度の経常利益は目標の 35 億円に対し 46 億円で、2027 年度の目標は 60 億円だ。同じ計画で、買収による売上の上乗せも見込んでいる。
人手が足りない業界で、教育に投資する会社は有利だ。研修施設を持ち、技能五輪でも成果を出している。人員が増えれば、受注も増やせる。
財務は堅い。自己資本比率は 74% で、純現金は時価総額の 4 割ある。大型の買収にも、配当の増額にも動ける。DOE の導入で、還元の姿勢も明確になった。大都市圏での買収が成功すれば、評価は大きく変わる。
電力系の工事会社は、親会社の発注という下支えを持つ。景気が悪くなっても、止められない保守の仕事が残る。谷が浅い会社は、長く持つほど有利になる。
慎重な見方
営業利益率は 8.4% で、過去最高ではないが、同業の大手より低い。関電工、きんでんなどが 10% を超える中で、規模の小さい北陸電気工事が追いつく理由は乏しい。
親会社の北陸電力は、2027 年 3 月期の営業利益が半分以下になる見込みだ。電力会社が設備投資を絞れば、系列の発注という下支えは細る。持分法適用会社になった今、親会社の支えが弱まる面もある。
北陸の人口は減る。民間の新設は実質で伸びず、大都市圏では大手と競うことになる。買収した会社の統合にも、時間と費用がかかる。
現金が積み上がる構造も問題だ。DOE 3.0% の配当では、利益が増えても現金は使い切れない。ROE は 8% 前後にとどまり、資本コストをわずかに上回る程度だ。ためた現金は、株主のもとに戻るとは限らない。
今の値段は、すでに中計の達成を織り込んでいるとも読める。
買収で関東に出ても、既存の大手が地盤を固めている。小さな会社が受注を取るには、値引きに頼る場面が増えるだろう。
どちらに重みを置いたか
配電の保守という下支えと、厚い財務は本物だ。ただ、稼ぐ力が資本コストに近く、利益率には天井がある。10 年後の価値は、今の値段を 1 割ほど下回る。
筆者は、親会社の弱り方を重く見て、悲観側にやや多く確率を置いた。楽観を 10%、悲観を 12% にし、やや悲観に 23% を置いた。一方で、買収の種まきと厚い財務は、下値を支える。結果として、やや割高という見立てになった。厚い財務が、割高の度合いを小さくしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,599 円715 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 642 円177 億円)。 今の値に割り戻すと 1,674 円460 億円、今との差 +13.2%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,006 円1,102 億円 | 854 円235 億円 | +228.6% | +12.6% | 486 円134 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,405 円937 億円 | 782 円215 億円 | +183.1% | +11.0% | 921 円253 億円 |
| 中立 | 33% | 2,924 円804 億円 | 673 円185 億円 | +143.1% | +9.3% | 1,187 円326 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,581 円435 億円 | 545 円150 億円 | +43.8% | +3.7% | 489 円135 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,006 円277 億円 | 309 円85 億円 | −11.1% | −1.2% | 158 円43 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,599 円715 億円 | 642 円177 億円 | +119.1% | +8.2% | 3,241 円891 億円 |
今の株価時価総額 1,479 円407 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:電力の更新と大都市圏の買収が、そろって実る 利益 72 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 4,006 円1,102 億円
北陸新幹線の延伸後の再開発と、能登の復旧・復興が続く。系統用の蓄電池や再エネの接続工事も増え、配電と送変電の仕事が厚くなる。
関東と関西で内線・空調管の受注を広げ、日建のような買収を重ねる。人手不足で、値段は物価を少し上回って通る。
営業利益率は 10% 前後まで上がり、過去の山の 10.6% に並ぶ。中計の 2030 年の目標である売上 750 億円も、早く超える。
地方の電力系の工事会社が、全国で戦える設備会社へ変わる。評価も、その分だけ上がる。配当は自己資本とともに増え、現金の使い道も広がる。
- 電力系工事(配電線・送変電・土木):数量 450(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 55(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 250 億円・営業利益 28 億円。系統接続・蓄電池・送配電の更新が重なり、人も増やせる
- 設備工事(内線・空調管・子会社):数量 1,000(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 70(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 705 億円・営業利益 67 億円。大都市圏と買収で施工量が伸び、人手不足を単価に乗せる
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 14.72 倍、時価総額 1,102 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再エネ接続の波、北陸電力の発注の維持、関東の買収の根づきが同時に要る。重なる条件が多いので 10% にとどめた。
やや楽観 22% やや楽観:北陸の仕事が底堅く、買収が上乗せになる 利益 62 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,405 円937 億円
北陸電力送配電からの更新工事が着実に続き、民間も再開発や工場の需要で堅調に推移する。買収で入った関東の会社が営業網を広げ、人員が増える。
人手の確保には苦労するが、教育への投資で現場を回せる。単価は物価並みに通り、利益率は 9% 台に乗る。
配当は DOE 3.0% の方針どおりに増え、自己資本も厚く積み上がる。
会社は大きく変わらないまま、中計の延長線で堅実に伸びる。北陸の地盤は崩れず、関東の拠点が少しずつ収益に加わる。
人の確保では、教育への投資が実る。若手が早く戦力になり、協力会社の開拓も進んで、受注を断る場面が減る。単価の交渉も、適時に通せるようになる。
- 電力系工事(配電線・送変電・土木):数量 440(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 55(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 241 億円・営業利益 24 億円。更新工事が着実に増える
- 設備工事(内線・空調管・子会社):数量 950(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 68(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 651 億円・営業利益 57 億円。関東の買収先が根づき、北陸の再開発も続く
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 14.17 倍、時価総額 926 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電力の更新と買収の上乗せは、中計の延長で実現しやすい。ただ、民間の利益率が山を保つ前提は置きにくい。
中立 33% 中立:北陸の堅い仕事を土台に、利益率は今の延長にとどまる 利益 54 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 2,924 円804 億円
北陸電力送配電の工事は、設備の高経年化を背景に底堅い。民間の内線・空調管は、再開発や工場の需要を拾うが、新設は人口減で実質では伸びにくい。
買収で入った会社の分だけ人員が増え、数量は 2% ほど増える。値段は物価並みに上がる。
営業利益率は 8.4% 前後で、今の水準とほぼ同じだ。会社が 2027 年度に置く 8.5% と変わらない。
配当は DOE 3.0% に沿って増えるが、現金は使い切れず、ROE は 8% 前後にとどまる。10 年後も、堅実で目立たない会社である。
追い風が消えても、地元の信用と配電の保守が、利益の底を支える。大きく伸びはしないが、崩れもしない。中計の目標である売上 700 億円の次の 750 億円も、ゆっくりと見えてくる。
- 電力系工事(配電線・送変電・土木):数量 430(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 54(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 232 億円・営業利益 22 億円。人員は微減、単価は物価並み
- 設備工事(内線・空調管・子会社):数量 900(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 67(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 607 億円・営業利益 49 億円。買収分の人員が増え、新設は人口減で伸びない
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 13.6 倍、時価総額 772 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:配電の更新が下支えとなり、民間は人口減で新設が伸びない。中計の目標が達成されて止まる姿で、最も重い筋書き。
やや悲観 23% やや悲観:北陸電力の発注が絞られ、民間の競争も厳しくなる 利益 38 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,581 円435 億円
北陸電力の収益が弱り、設備投資を絞る。配電や送変電の工事は更新を先送りされ、人員も減る。
民間は、地方の新設が細り、大都市圏では関電工やきんでんなど大手との競争が続く。買収の効果も思ったほど出ず、単価は物価に届かない。
営業利益率は 7% 前後に落ちる。固定費の重い現場の人員を抱えたまま、受注の質が落ちるためだ。
赤字には落ちず、配当も続く。ただ、成長の物語は弱まる。会社は存続し、現金も厚いが、買収で広げた先の採算が足を引っ張る。
人員は減らしにくく、教育への投資も続ける。費用は固定的に残り、売上が縮むと利益はそれ以上に減る。株主への配当は守るが、現金の積み上がりは止まる。
- 電力系工事(配電線・送変電・土木):数量 415(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 51(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 214 億円・営業利益 18 億円。北陸電力の発注が絞られ人員が減る
- 設備工事(内線・空調管・子会社):数量 800(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 63(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 504 億円・営業利益 31 億円。競争で単価が物価に届かず、利益率が落ちる
倍率:余った現金 60 億円を分けると、事業の純利益 37 億円(現金の利息を除く)・事業の自己資本 614 億円・事業の ROE 6.0%。事業の ROE が資本コスト k 7.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍。事業の ROE が k を下回るので、正当化 PER は 1÷k が上限になる。さらに売上の縮みと採算の悪化を見て、上限の 7 割に置いた。 事業 37 億円 × 9.0 倍 + 余り 30 億円(帳簿 60 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 375 億円。
確率:北陸電力は 2027 年 3 月期の営業利益が半分以下に落ちる見込みで、系列の発注が細る芽がある。人口減と合わせて 23% を置いた。
悲観 12% 悲観:系列の発注が細り、地方の工事が構造的に縮む 利益 12 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,006 円277 億円
北陸電力が設備投資を大きく絞り、系列発注という土台が細る。北陸の人口減で、再開発も民間の新設も縮む。
関東への進出も実らず、買収した会社ののれんは減損を迫られる。大手との値下げ競争に巻き込まれ、単価は物価に追いつかない。
人員を減らしても固定費が残り、営業利益率は 2〜3% まで落ちる。利益の稼ぐ力は小さく、会社の価値は持つ資産で支えられる。
厚い現金を、配当と事業の維持に使う 10 年になる。優良な会社とは、もう呼べない。
配電の保守という最後の下支えは残る。それでも、利益の大半は消え、評価は資産の価値まで下がる。地方の電力系という安心感が、かえって変化への対応を遅らせる。
- 電力系工事(配電線・送変電・土木):数量 360(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 46(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 166 億円・営業利益 7 億円。発注の縮小と競争で、単価も下がる
- 設備工事(内線・空調管・子会社):数量 650(この区分の従事者数(人、推定))× 価格 53(1 人あたり完成工事高(百万円))→ 売上 344 億円・営業利益 7 億円。地方の新設が細り、固定費が残って利益が消える
倍率:構造的に採算が崩れた姿で、純利益は 11 億円ほどしか残らず、稼ぐ力では床を測れない。床は売れる資産で測る。総資産 620 億円(自己資本 461 億円 ÷ 自己資本比率 74.3%)を、強制売却で 70% の 434 億円しか回収できないとし、負債 159 億円は全額払うとして残る約 275 億円を、今の自己資本 461 億円に対する PBR 0.60 倍(時価総額 277 億円)に置いた。
確率:北陸電力の発注の縮小、人口減、買収の失敗が重なる深い負け筋。電力系の保守という下支えがあるので、10% 台にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力系工事(配電線・送変電・土木)
北陸電力送配電から受ける配電線の建設・保守・更新と、送変電設備の工事、土木工事。災害時の復旧も担う。
| 数量この区分の従事者数(人、推定) | 価格1 人あたり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 440 | 40 | 177 | 17 |
| 10 年後 中立 | 430 | 54 | 232 | 22 |
取り方:単体の完成工事高のうち配電線工事 135 億円と送変電・土木工事 42 億円を合わせ、177 億円とした。従事者数は、単体の従業員数が約 1,140 人(第三者サイトの集計で年度不明)に子会社を加えた全社で 1,300 人前後と推定し、売上の比で 440 人に割った。利益率は開示がなく、民間より少し高い 9.6% とした。数量(人数)は実質、価格は物価で上がる名目。
設備工事(内線・空調管・子会社)
ビル・工場・病院などの内線、空調管、給排水の設備工事と、買収した子会社(日建、スカルトなど)の工事、その他の売上。
| 数量この区分の従事者数(人、推定) | 価格1 人あたり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 860 | 50 | 433 | 34 |
| 10 年後 中立 | 900 | 67 | 607 | 49 |
取り方:全社の売上 610 億円から電力系工事を除いた 433 億円で、単体の内線・空調管工事 353 億円と、子会社・その他の売上を含む。従事者数は全社の推定 1,300 人から電力系を引いた 860 人。営業利益は全社 51.2 億円から電力系の推定分を引いた残り。数量(人数)は実質、価格は物価で上がる名目。
リスクと懸念
親会社・北陸電力の弱り
北陸電力は 2027 年 3 月期の営業利益が半分以下になる見込みで、設備投資の見直しが続けば、配電や送変電の発注が細る。持分法適用会社になった今は、親会社の支えが以前より弱い面もある。
利益率の天井
営業利益率は 8.4% で、過去 10 年の最高は 10.6% だ。同業の大手は 10% を超えており、規模の小さい会社が追いつく理由は乏しい。人手不足の追い風が弱まれば、単価の伸びも止まる。
北陸の人口減
地盤の北陸は人口が減っており、民間の新設工事は実質で伸びにくい。北陸新幹線の延伸後の再開発は追い風だが、一巡すれば需要の層が薄くなる。大都市圏へ出る成否が分かれ目になる。
買収の実行
関東や関西の買収を重ねる方針だが、統合には時間と費用がかかる。買った会社ののれんは、期待した受注が出なければ減損の対象になる。小さな規模で、買収を続ける体力が試される。
技能者の確保
人手不足は業界の構造だ。人が足りなければ、値上げでは補えず、受注を絞ることになる。採用と育成の費用も重くなる。研修への投資が成果を出せるかが問われる。
現金がたまる構造
配当は自己資本に連動する DOE 3.0% が目安で、利益が増えても現金は使い切れない。純現金は安全域だが、株主へ戻らなければ価値としては割り引く。自社株買いの方針は示されていない。
資本関係の変化
北陸電力は議決権の 49.5% を持ち、持分法適用会社になった。将来、親会社が持ち分を動かせば、上場の形や株主構成が変わりうる。方針は示されておらず、読みにくい点である。
今後の分かれ目
- 北陸電力が配電設備の更新計画を縮小すると発表したら
- やや悲観側へ重みを移す。系列発注という下支えが細る証拠になる。
- 営業利益率が 10% を超えて安定したら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。単価の定着が確かめられ、利益率の天井を上げる必要が出る。
- 関東・関西の買収先で受注が伸び、売上が計画を上回ったら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。大都市圏への進出が実を結んだ証拠になる。
- 買収先ののれんの減損が出たら
- やや悲観側へ重みを移す。資本の使い方への評価を下げる。
- 自社株買いや配当の方針の見直しで、現金が株主に戻り始めたら
- 余った現金の戻り方を上げてよい。価値の見積りが、その分だけ上がる。
- 北陸電力が持ち分を売却する、または完全子会社化する動きが出たら
- 再編の可能性を評価に入れ直す。条件によって、確率の置き方が変わる。
見ておくもの
- 完成工事高・営業利益率の推移(配電線・内線空調管の区分別)
- 受注高・繰越工事高の推移
- 北陸電力の設備投資計画と、送配電の工事発注
- 関東・関西の買収先の売上と、のれんの状況
- 自己資本に対する配当(DOE)と、純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
数量は区分ごとの従事者数(実質)、価格は 1 人あたり完成工事高(物価 3% を含む名目)で積んだ。従事者数は第三者サイトの従業員数に子会社を加えた推定で、区分の利益率は開示がなく推定である。中立の価格は両区分とも物価並みの 1.34 倍で、民間の競争は利益率で表した。利益率は、今の 8.4% と中計の 8.5% の線を中立に置き、過去の最高 10.6% は楽観の上限にした。同じ領域のきんでん(12%)・関電工・中電工(10%)より低く置き、規模と入札の多さを理由にした。倍率は k 7.75%・g 4% の正当化 PER の 86% に置き、事業の ROE が k 近辺なので 1÷k を上限にした。悲観は稼ぐ力でなく、総資産の 70% 回収・負債全額払いで残る売れる資産で測った。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。今の株価と PER は、最後に比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→14.72 倍・やや楽観 PER 11.2→14.17 倍・中立 PER 10.4→13.6 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。親会社の弱りや買収の実行などの個別リスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。