結論
福田組は、新潟市に本社を置く創業120年超の総合建設会社だ。土木と建築が柱で、道路舗装の福田道路を100%子会社に持つ。筆者の結論は「やや割高」。堅実さは本物だが、その堅実さに見合う以上の値段が付いている。
強みは財務の厚さと、繰越工事の多さだ。自己資本比率は61%で、実質の借金はない。手元の現金は借金を約300億円上回り、時価総額の4割近い。建築を中心に、先の工事も1,400億円ほど積み上がっている。
弱みは、稼ぐ力が資本に見合わないことだ。営業利益率は直近で4.6%、自己資本利益率(ROE)は6%台にとどまる。人手が足りず、受注があっても売上に変えにくい。前の中期計画は、売上も利益も未達で終わった。
10年の中立の筋書きでは、営業利益は100億円強まで伸びる。会社の目標を下回るが、物価と施工量の伸びを素直に積んだ姿だ。それでもROEは資本コストに届かず、倍率は上がらない。ためた現金を株主に返す力が上がるかどうかが、評価の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、福田組は「安全だが、割安とは言い切れない会社」だ。事業は10年後も残る。公共の治水・道路と、地方の建築需要は、人口が減っても消えない。ただ、持ち主として長く持ちたいかと問えば、答えは慎重になる。
理由は、稼ぎの質だ。利益率は過去12年で3〜5.6%の狭い帯にとどまり、5%を超えたのは2年だけだ。建設は、受注を選べる時は儲かり、人が足りなくなれば売上が止まる。値段を決める力を持たない事業では、強い堀は期待できない。
一方、守りは固い。借金がなく、現金が厚い。過去には赤字が4期あったが、そのたびに生き残ってきた。悪い局面で潰れにくいことは、安全域の一部になる。
問題は、現金の使い道だ。事業に必要な資金の外に、150億円ほどは余っているとみる。会社はここ数年、配当と自己株式で返し始めたが、ROEの目標は6.7%と、資本コストを下回ったままだ。資本を割り引いて評価する以上、「現金が多いから割安」とは言えない。
筆者は、中立の筋書きで売上を2,200億円超に置く。それでも倍率は資本コストの手前の会社として置くので、今の値段に安全域は見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、建築と土木の二つだ。連結の売上は直近で1,680億円。建築が約5割、土木が約4割を占める。個別の福田組本体は、このうち5割強だ。
建築は、商業施設、工場、物流施設、マンションなどを請け負う。大型案件の受注が増え、直近の利益率は5%台まで上がった。土木は、河川、道路、トンネルなど官公庁発注が中心で、新潟の治水や維持更新に強い。単体の売上では、官公庁向けが16%、民間が84%を占める。
子会社が三つ目の柱だ。福田道路は道路舗装と舗装材料の製造を営み、グループ売上の1割超を稼ぐ。重仮設材のリースや、都心の改修工事を手がける子会社もある。災害復旧の工事がこれらの利益を支えてきた。
不動産は小さな事業だ。自社で造成・開発して売る仕事で、売上は年ごとに大きく振れる。前の期の56億円から、直近は23億円に落ちた。福岡県古賀市の物流用地など、次の大型案件の仕込みが中期計画の課題だ。
地盤は新潟だが、北海道、東北、東京、名古屋、大阪、九州にも拠点を持つ。ただ従業員は連結で約2,200人。人が増えない限り、売上も増えない会社だ。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば、「堅実だが、飛び抜けてはいない」会社だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、準大手の中でも浅い。
強みは三つある。一つ目は国土交通省の工事成績優秀企業に認定され続けていることで、官公庁の技術提案で有利に立てる。二つ目は、舗装・合材・リースまで持つグループの総合力だ。三つ目は、手元資金の厚さで、不況でも受注を選べる体力がある。
弱みも三つある。一つ目は、値段を決める力の弱さだ。民間の工事は競争が厳しく、材料や人件費の上昇を価格に移すには時間がかかる。二つ目は、人が足りないこと。前の中期計画で、会社自身が「受注は旺盛だが人的制約で未達」と総括した。三つ目は、安全と品質だ。計画の振り返りで、複数の重大事故があったと認めている。
資本の使い方は、ようやく動き出した段階だ。配当性向を50%に上げる目標を掲げ、2026年8月には20億円の自己株式を買った。ただ、10年かけて積み上がった現金を使い切れてはいない。ROEの目標も6.7%と控えめで、資本コストの水準にはまだ遠い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
新潟を中心とする地方の建設市場は、需要が悪くはないが、伸びる市場でもない。人口が減るため、施工する量は実質で横ばいか、少し減る。ただ、国土強靱化の予算と、老朽化した道路・橋・河川の更新が、土木の下支えになる。
今の最大の制約は、需要でなく人手だ。技能者の高齢化と、残業規制の強化で、施工量を決めるのは人の数になった。建築では引き合いが旺盛なのに、福田組自身が2026年の受注を前期より2割ほど絞る計画を立てている。人が足りない市場では、受注を選べる会社の採算は守られるが、売上は伸びない。
競争は二重構造だ。大型の建築や再開発では、スーパーゼネコンや準大手と競う。地元の土木や中規模の建築では、新潟の地場ゼネコンと、官公庁の入札で競る。談合規制の強化で、無理な安値受注は減ったが、価格の決定力が強まったわけではない。
業界の再編も進む。後継者のいない地場ゼネコンの事業承継や、準大手同士の統合が起きやすい。福田組は上場会社として、買い手にも、買われる側にもなりうる。ただ、会社に今その動きはなく、統合は中期計画にも出てこない。
資本政策と M&A
資本政策は「ため込みから、返す側へ」の転換点にいる。10年前は小さな純現金だったが、直近は約300億円に積み上がった。その間、自己資本利益率は直近5年で4〜8%にとどまった。
転機は最近だ。2025年12月期に配当を3割引き上げ、新しい中期計画で配当性向50%を掲げた。2026年8月には、上限20億円の自己株式取得を決め、約3週間で買い切った。株式も1株を2株に分割した。
政策保有株式は小さい。上場株28銘柄で計33億円と、自己資本の4%にすぎない。含み益で資産を水増しするほどの規模ではなく、売却による資本効率の改善余地も限られる。大株主は、公益財団法人の福田育英会が約8%で最大だ。親会社はなく、敵対的な買収は考えにくい。
M&Aは、中期計画に大型の買収の話はない。過去の設備・成長投資は年に十数億円と小さく、投資額も計画の9割弱にとどまった。筆者がいちばん気にしているのは、現金の使い道だ。事業に積極投資するのか、株主に返すのか。方針がはっきりすれば、評価は変わる。
実行済みの自社株買い(約20億円)は、株数と自己資本の起点に反映し、10年の還元には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
福田組は、数年かけて「ため込む会社」から「返す会社」へ変わる途中にいる。中期計画は、配当性向を50%にすると明言した。2026年8月には20億円の自己株式を買い、株式分割で買いやすさも整えた。現金は約300億円あり、時価総額のほぼ4割に当たる。これを配当や自己株式で返せば、ROEは目標を上回って上がる。
事業の足元も悪くない。建築の受注は前期に1,000億円を超え、繰越工事は1,400億円まで増えた。建築の利益率は5%台まで上がり、受注の時点の採算も改善している。人手の制約があるなら、受注を選んで採算を上げる局面が続く。
新潟では、治水と道路の更新が長く続く。国の防災・減災の予算は5年で20兆円規模だ。官公庁向けの工事成績が優秀という実績は、技術提案での有利さにつながる。
グループの厚みも見逃せない。福田道路と、重仮設のリース子会社が、本体の波を和らげる。会社の目標どおり、2035年に売上2,200億円、営業利益率6.5%まで届けば、利益は今の1.8倍になる。この姿なら、ROEは8%台に乗り、今の評価が安く見える。
慎重な見方
会社の目標は、過去の実績から遠い。営業利益率は過去12年で最高でも5.6%だ。2035年の6.5%という数字は、一度も届いたことのない水準で、人手不足と労務費の上昇が続く中では楽観が過ぎる。前の中期計画も、売上・利益・ROE・投資のすべてで未達に終わった。
ROEの目標も気になる。2030年で6.7%以上は、資本コストの7〜8%台を下回る。つまり、会社自身が資本コストを超える計画を示していない。現金が多いのは、事業で使い道がないことの裏返しでもある。10年かけて純現金は12億円から300億円に増えたのに、PBR(株価純資産倍率)は長く0.5倍前後だった。
地域も弱い。新潟の人口は全国より速く減る。官公庁の予算は伸びず、地場ゼネコンとの入札競争は続く。建築の大型案件は、東京や大阪のゼネコンが得意とする分野で、地方の準大手が勝ち続ける保証はない。
最後に、安全だ。会社は複数の重大事故を認めた。一度の重大事故が、受注停止や信用の低下につながる業界で、この傷は小さくない。今の値段は、この現金がうまく返ることを前提にしているように見える。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。現金の厚さと配当方針の転換は本物で、強気の見方に分がある。ただ、値段を決めるのは、稼ぐ力が資本コストを超えられるかどうかだ。そこで、過去12年の利益率の帯と、ROEの目標の低さが重くのしかかる。
確率は中立に4割弱を置き、残りは慎重側にやや厚くした。強気の筋書きは、会社の目標に近い姿として7%に置いた。悲観を1割強にしたのは、過去に赤字が4期あり、安全面の傷もあるからだ。
現金は、一部だけを価値に足した。返す実績が育ちかけているが、ROEが上がるまで全額は見ない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 6,368 円1,010 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,123 円337 億円)。 今の値に割り戻すと 4,658 円739 億円、今との差 −5.2%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 11,277 円1,788 億円 | 2,977 円472 億円 | +190.0% | +11.2% | 998 円158 億円 |
| やや楽観 | 17% | 9,028 円1,431 億円 | 2,536 円402 億円 | +135.3% | +8.9% | 1,966 円312 億円 |
| 中立 | 38% | 7,334 円1,163 億円 | 2,157 円342 億円 | +93.1% | +6.8% | 3,607 円572 億円 |
| やや悲観 | 26% | 3,427 円543 億円 | 1,955 円310 億円 | +9.5% | +0.9% | 1,399 円222 億円 |
| 悲観 | 12% | 3,047 円483 億円 | 1,293 円205 億円 | −11.7% | −1.2% | 521 円83 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,368 円1,010 億円 | 2,123 円337 億円 | +72.7% | +5.6% | 8,490 円1,346 億円 |
今の株価時価総額 4,915 円779 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 会社の目標に届く、噛み合った10年 利益 108 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 11,277 円1,788 億円
会社の目標にほぼ届く、最も良い姿だ。建築で大型の案件を取り続け、データセンターや都市部の再開発、改修工事に広がる。人手の確保が進んで施工量は1割強増え、受注を選べる局面が続き、建築の利益率は6%を超える。
土木は、国土強靱化の予算に支えられ、官公庁の更新工事で安定して稼ぐ。福田道路の舗装も、老朽化した道路の補修で量を伸ばす。不動産は、物流用地などの大型案件で収益が膨らむ。
資本の使い方も変わる。配当性向は5割を超え、自己株式の取得も続く。ROEは9%近くに上がり、資本コストを越えて評価が見直される。ただ、これは人手不足を乗り越え、受注と採算の両方がうまく噛み合う前提だ。10年続けるのは難しい。
- 建築:数量 131(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.85(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,288 億円・営業利益 80 億円。130.7×9.8532、利益率 6.2%
- 土木:数量 96.2(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 996 億円・営業利益 56 億円。96.2×10.35、利益率 5.6%
- 建設附帯・その他:数量 19.5(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 202 億円・営業利益 6 億円。19.5×10.35、利益率 3.0%
- 不動産:数量 224(開発・賃貸に投じた資産の規模(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.23(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 51 億円・営業利益 9 億円。224.0×0.2267、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 106 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)98 億円。全体の PER 15.92 倍、時価総額 1,788 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手の確保と大型案件の受注が両方うまくいく姿で、会社の2035年目標(営業利益143億円)に近い。人手不足と労務費の上昇が続く中では、10年続けるのは難しい。確率は7%。
やや楽観 17% 中期計画を守って、着実に伸びる 利益 92 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 9,028 円1,431 億円
会社の中期計画をほぼ守り、その先も着実に伸ばす姿だ。建築の受注は大型案件で伸び、施工量は6%ほど増える。土木は横ばいを保ち、官公庁の更新工事が下支えする。営業利益率は5%を超え、中計の5%を少し上回る。
人手は、採用の強化と、DXによる省力化で、なんとか回る。労務費の上昇は、受注時の採算改善で吸収できる。福田道路と附帯事業も、安定した利益を出す。
配当と自己株式で、利益の6割近くを返す。それでも自己資本は積み上がり、ROEは8%近くに届くが、資本コストをわずかに下回る。評価が大きく見直されるほどの変化ではないが、堅実な会社が一歩ずつ前へ進む姿だ。人手の確保にめどがつくかが、この筋書きの前提になる。
- 建築:数量 124(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.71(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,201 億円・営業利益 70 億円。123.7×9.7104、利益率 5.8%
- 土木:数量 91.6(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 934 億円・営業利益 49 億円。91.6×10.2、利益率 5.2%
- 建設附帯・その他:数量 18.8(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 192 億円・営業利益 4 億円。18.8×10.2、利益率 2.0%
- 不動産:数量 182(開発・賃貸に投じた資産の規模(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.22(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 41 億円・営業利益 7 億円。182.0×0.2234、利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)98 億円。全体の PER 14.79 倍、時価総額 1,431 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の2030年の目標を守り、その先も着実に伸ばす姿。人手の確保が続く必要があり、筋書きの中では実現しやすいが中立を超える。確率は17%。
中立 38% 物価の分だけ伸びる、堅実な10年 利益 78 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 7,334 円1,163 億円
会社の目標には届かないが、悪くもない10年だ。売上は物価の分だけ伸び、営業利益は100億円強、利益率は4.8%になる。これは、今よりやや高く、過去12年でも上位の水準だ。建築は5%台前半を守り、土木は4%台後半で安定する。
人手の制約が、施工量の伸びを止める。建築はほぼ今のまま、土木は新潟の人口減で少し細る。受注を選べるため採算は守られるが、売上の拡大にはつながらない。不動産は大型案件が飛び飛びに入り、平均すれば利益は小さい。
配当性向は50%に近づき、自己株式も時々買う。それでも現金は積み上がり、ROEは6%台で資本コストに届かない。堅実な会社が、堅実なまま10年を終える筋書きで、評価も大きくは変わらない。
- 建築:数量 117(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 1,117 億円・営業利益 59 億円。116.7×9.5676、利益率 5.3%
- 土木:数量 88.9(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 893 億円・営業利益 43 億円。88.9×10.05、利益率 4.8%
- 建設附帯・その他:数量 18.1(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 2 億円。18.1×10.05、利益率 1.0%
- 不動産:数量 154(開発・賃貸に投じた資産の規模(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.22(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。154.0×0.2202、利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)98 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,148 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:施工量はほぼ横ばいで、物価の分だけ売上が伸び、利益率は今よりやや上がる姿。人手の制約で量が伸びないことと、受注を選べることが釣り合い、最も標準的。確率は38%。
やや悲観 26% 労務費に利益を削られる 利益 54 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 3,427 円543 億円
人手不足と労務費の上昇が、利益を削る10年だ。賃金は物価を上回って上がり、受注価格に移しきれない。建築の利益率は4%台前半に落ち、土木も3%台に下がる。
新潟の人口減で、地元の土木と建築の需要は実質で1割ほど細る。官公庁の予算は物価に追いつかず、入札の競争が激しくなる。不動産は大型案件が取れず、利益は小さいままだ。
営業利益は70億円台にとどまり、今の水準を下回る。配当は今の水準を保つため、還元の割合が高まり、自己資本の伸びは鈍る。ROEは5%を割り、現金はあっても使い道がなく、評価は資本コストの手前で止まる。地方の建設会社が、静かに競争力を失っていく姿だ。会社が掲げた目標は、遠いままだ。
- 建築:数量 105(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.28(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 975 億円・営業利益 42 億円。105.0×9.282、利益率 4.3%
- 土木:数量 82.4(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 9.75(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 803 億円・営業利益 31 億円。82.4×9.75、利益率 3.8%
- 建設附帯・その他:数量 16.7(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 9.75(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 163 億円・営業利益 0 億円。16.7×9.75、利益率 0.0%
- 不動産:数量 112(開発・賃貸に投じた資産の規模(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.21(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。112.0×0.2136、利益率 10.0%
倍率:ROE 4.83%(純利益 54 億円 ÷ 自己資本 1,118 億円)。事業のROEが資本コスト k 7.25% を大きく下回り、地方の建設市場が縮んで利益率が下がる局面なので、上限(1÷k = 11.8 倍)の7割の 8.2 倍に置いた。
確率:賃金上昇を受注価格に移しきれず、新潟の需要も細る姿。人手不足は強く、会社の過去の実績(2022〜23年の利益率3%台)に近い。慎重な見方がやや強いので、同業と同じ厚さに置いた。確率は26%。
悲観 12% 構造的に負け、再編の対象になる 利益 25 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 3,047 円483 億円
構造的に負ける姿だ。新潟の建設市場が縮み、東京の大手や準大手が地方の大型案件に入り込む。福田組は人手も採用も足りず、選別して採算を守る力を失い、低採算の工事を受けざるをえなくなる。
重大事故や品質の問題が重なり、受注停止や損失処理で信用が傷む。建築の利益率は3%を割り、土木も2%台まで落ちる。不動産の開発では、売れ残りの評価損が出る。
営業利益は30億円台、純利益は20億円台まで縮み、ROEは2%台に落ちる。現金は赤字の穴埋めと損失処理で減る。配当は維持しても、持ち続けたい会社とは言えなくなる。成長の目は消え、再編の対象になりやすい。地域の需要が縮む中で、人も受注も戻らない。
- 建築:数量 91.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 780 億円・営業利益 21 億円。91.0×8.568、利益率 2.7%
- 土木:数量 73.3(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 9.00(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 660 億円・営業利益 17 億円。73.3×9.0、利益率 2.5%
- 建設附帯・その他:数量 14.5(事業量(万人日換算、実質。推定))× 価格 9.00(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 −1 億円。14.5×9.0、利益率 -1.0%
- 不動産:数量 56.0(開発・賃貸に投じた資産の規模(億円、今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.20(規模1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。56.0×0.1972、利益率 0.0%
倍率:構造的に優良でなくなる姿。谷の年は純利益 25 億円で稼ぐ力は小さく、床は今の自己資本に対する倍率で置く。今の自己資本 898 億円に PBR 0.538 倍(約 483 億円)。減損と赤字で自己資本の約1割を失い、事業は選別受注の力も失うので、売れる資産の上限(約 600 億円)よりかなり低く置いた。EV ÷ 営業利益は谷の年の数字として参考にならない。
確率:地方市場の縮小と、人手・安全の問題が重なり、選別受注の力を失う姿。過去に赤字が4期あり、重大事故の履歴もあるため、同業と同じ1割強に置いた。確率は12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築
商業施設・工場・物流施設・マンションなどを請け負って建てる。連結の利益の過半を稼ぐ主力。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 117 | 7.14 | 833 | 45 |
| 10 年後 中立 | 117 | 9.57 | 1,117 | 59 |
取り方:直近の建築セグメントの売上833億円・営業利益44.5億円(決算説明資料)を、現場の労務量で割った。開示は無いため、技能者の労務費を売上の約35%、日当を約2.5万円と置き、施工量を約117万人日と推定した。売上を施工量で割った1人日あたり売上が価格に当たり、物価の分は価格に入る。
土木
河川・道路・トンネルなど官公庁発注が中心の工事。新潟の治水や維持更新に強い。
| 数量施工量(万人日、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 91.6 | 7.50 | 687 | 32 |
| 10 年後 中立 | 88.9 | 10 | 893 | 43 |
取り方:土木セグメントの売上687億円・営業利益31.8億円。建築と同じ要領で施工量を約92万人日と推定した。土木は機械・材料の割合がやや高いので、1人日あたり売上は建築より少し高く置いた。
建設附帯・その他
子会社の合材の製造・販売と、重仮設材のリース。その他の小さな事業を含む。
| 数量事業量(万人日換算、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18.1 | 7.50 | 136 | −1 |
| 10 年後 中立 | 18.1 | 10 | 182 | 2 |
取り方:建設附帯の売上129億円・営業利益−0.9億円と、その他の売上7億円・営業利益0.35億円の合計。事業量は約18万人日と換算した推定で、開示は無い。
不動産
自社で造成・開発して売る事業と、賃貸。大型案件で売上が大きく振れる。
| 数量開発・賃貸に投じた資産の規模(億円、今の値段で測った実質。推定) | 価格規模1億円あたりの年間売上(億円・名目。売却と賃貸の回転) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 0.16 | 23 | 4 |
| 10 年後 中立 | 154 | 0.22 | 34 | 5 |
取り方:売上23億円・営業利益3.6億円(前期は56億円・8.8億円)。中期計画は期間平均で売上26億円・利益率19%とする。資産規模は開示がなく、約140億円と推定した。
リスクと懸念
人手が足りず、売上が伸びない
技能者の高齢化と残業規制で、施工量を決めるのは人の数になった。福田組は前の中期計画で、受注は旺盛でも人的制約で売上と利益が未達に終わった。採用が計画の5年で550人超と大きく、確保できなければ、受注を絞ることになり、売上は伸びない。
労務費が受注価格に移せない
賃金は物価を上回って上がっている。民間の工事は競争が厳しく、受注時の見積りに上昇分を織り込みきれないと、利益率が削られる。会社の2026年12月期の計画は、増収でも営業利益が減る形で、この構図がすでに見える。
重大事故と品質の問題
会社は、前の中期計画の振り返りで、複数の重大事故があったと認めている。建設では、一度の重大事故が受注停止や指名停止につながり、信用を長く傷つける。安全は、利益を守る前提条件だ。
新潟の人口減と公共予算の頭打ち
地盤の新潟は、人口が全国より速く減る。官公庁の予算は物価に追いつかず、地場ゼネコンとの入札競争も続く。国土強靱化の予算が途切れた時に、地元の土木が実質で縮むリスクがある。
現金が使われないまま積み上がる
純現金は約300億円と、時価総額の4割近い。10年かけて積み上がった現金を、配当・自己株式・事業投資のどれで使うのか、実績はまだ短い。ROEの目標が6.7%と資本コストを下回るため、現金が資本効率を引き下げ続ける恐れがある。
不動産開発の振れ
不動産は売上が年ごとに大きく振れる。前の期の56億円から直近は23億円に落ち、2026年12月期も端境期と会社が説明している。開発物件に売れ残りが出れば、評価損が利益を削る。
営業利益率が過去に届かない水準を目指している
2035年の営業利益率6.5%は、過去12年で最高の5.6%を上回る。目標が高く、達成が遅れれば、投資家の期待が剥がれる。目標未達の履歴が、前の中期計画で一度ある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が3年続けて5.5%を超え、人手の制約が緩んだら
- 会社の目標に近い姿として、楽観側の確率を少し増やす。
- 配当性向を50%超に引き上げ、自己株式の取得を毎年続けたら
- 現金の戻りを評価し、余った現金を価値に足す割合を引き上げる。
- 複数の重大事故が再び起き、指名停止などの処分を受けたら
- 構造的な悪化の兆しと見て、悲観側の確率を上げる。
- 建築の受注が2期続けて計画を大きく下回り、繰越工事が減ったら
- 人手不足の問題でなく、需要の細りと判断して、慎重側の確率を厚くする。
- 同業との経営統合や、第三者による買収の話が出たら
- 事業の価値を再評価する。ただし統合の条件次第で、株主の取り分は大きく変わる。
- 新潟で大型の再開発や治水工事を、福田組が元請けとして取り続けたら
- 地盤での優位が続くと見て、土木と建築の利益率を上げる方向で見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの建築・土木の受注高と、繰越工事高の推移
- 建築・土木の完成工事総利益率(粗利率)
- 連結従業員数(目標は2030年に2,340人)と新規採用の達成度
- 配当性向と、自己株式の取得の継続
- 福田道路など子会社の利益率の推移
- 重大事故や指名停止の開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEと資本コスト k(8.5%=基本7.5%+quality 1.0%)から式で決めた。ROEが k に届かない前提なので、正当化PERは 1÷k の約11.8倍が上限で、中立はその8割の9.4倍に置いた。今の株価・過去の倍率・同業の倍率は使っていない。悲観の床は、売れる資産の税後から置き、過去のPBRの底は使わない。余った現金は150億円と見て、戻り方は0.5とした。今のPERが高いかどうかは、価値の計算に入れていない。結果は推定の積み重ねで、誤差がある。なお、2028年3月期から新リース会計基準が適用されるが、福田組は賃借する店舗や倉庫が小さく、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.7→15.92 倍・やや楽観 PER 10→14.79 倍・中立 PER 9.4→13.79 倍・悲観 PBR 0.45→0.538 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。理由は quality_why。個別のリスク(重大事故・人手不足)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.25%。