結論
熊谷組は、ビルや工場を建てる建築と、トンネル・ダムなどを造る土木を二本柱とする準大手ゼネコンだ。筆者の結論は「やや割高」。直近の利益は戻ったが、10年で見た稼ぐ力は、株主が求める水準にわずかに届かない。
最大の事実は、利益率の振れ幅だ。営業利益率は2023年3月期から3期続けて2.9%に沈み、2026年3月期に5.6%へ跳ねた。中身が受注の選別による改善なら続くが、景気の山なら戻る。筆者は、半分は続き、半分は戻ると見る。
国内の建設は人口減で、実質の量が伸びない。人手不足は採算を守る一方、売上の伸びを縛る。10年の中立では、営業利益は310億円ほどで、直近の水準をやや下回る。
強みは、筆頭株主の住友林業と組んだ木造の中大規模ビルと、手元の財務の安定感だ。純現金で自己資本比率は4割を超える。ただ、それだけで割高を打ち消せるほどではない。
今の値段は、直近の好調が長く続く姿をかなり織り込んでいる。筆者は、そこまで払うなら安全域が足りないと考える。事業が悪いのではなく、払う値段が高いという見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ゼネコンは「よく見えて、実は難しい」事業だ。資本は少なくて済むが、毎年新しい工事を取り直さなければならず、利益は景気の山と谷で大きく振れる。熊谷組は、過去20年に赤字を2回出している。
株主が自由に使える利益は、純利益の7割ほどだと筆者は見る。工場も店も要らない事業なので、再投資は少なくて済む。それでも、大型の不採算工事が1本出れば、その年の利益は吹き飛ぶ。
財務は堅い。純現金で、自己資本比率は4割を超える。ただ、建設会社の現金は、発注者から先に受け取る前受金に支えられている面があり、見かけほど余ってはいない。
安全域は薄い。楽観の筋書きでも今の値段を大きくは上回らず、悲観では大きく割れる。事業の質が悪いのではなく、払う値段が本質価値を超えているなら、筆者は手を出さない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は国内の建築だ。オフィス、工場、物流施設、マンションなどを、デベロッパーや製造業から請け負って建てる。2026年3月期は、受注の量を絞り、採算のよい工事を選んだ。売上は減ったが、利益は倍近くになった。
土木は、官公庁が発注するトンネル、ダム、道路、治水が主体だ。国土強靱化の予算が続く間は、受注が底堅い。熊谷組はトンネル工事を得意としてきた。建築より利益率は安定するが、入札で競るため、値段は自社で決めにくい。
三つ目に、海外と不動産開発、子会社の工事がある。東南アジアなどでの工事と、国内の開発が中心で、全体の2割台を占める。利益率は低めだ。
将来の芽は木造だ。住友林業とは2017年に資本業務提携を結んだ。ブランド「with TREE」を立ち上げ、札幌では10階建ての耐火木造ビルを共同で施工した。ただし、木造が全社の利益を押し上げる規模になるかは、まだ見えない。筆者は大きくは織り込まない。
熊谷組の特徴は、規模が小さいぶん、1本の大きな工事が利益を左右することだ。だから工事を選ぶ力が、そのまま稼ぐ力になる。
優良さと弱いところ
優良さは「普通の準大手」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、スーパーゼネコンほど深くない。
強みは三つある。一つ目は、土木のトンネル工事で積んだ実績。二つ目は、住友林業と組む木造の施工。三つ目は、純現金で自己資本比率が4割を超える財務の安定だ。
弱みも三つある。一つ目は、価格を決める力の弱さ。発注者は入札で競わせる。二つ目は、利益の振れの大きさだ。営業利益率は直近3期が2.9%で、2026年3月期に5.6%へ跳ねた。2009年と2013年の3月期には赤字も出している。三つ目は、2003年3月期に約3,000億円の純損失を出した過去だ。バブル期の負債を整理した時期で、今は別の会社だが、財務の脆さが一度表に出た会社だと筆者は見る。
資本の使い方は改善途上だ。中計はROE10%以上を掲げ、2026年3月期は10.7%に届いた。ただ、これを毎年続けられるかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、量が増えない成熟市場だ。人口が減り、地方の工事は先細る。それでも今は「作れば儲かる」局面にある。2024年4月に残業の上限規制が始まり、技能者が足りなくなった。受け手のゼネコンが仕事を選べるようになり、値上げが通る。上場ゼネコン50社の2025年度の受注は16兆円台で、繰越も過去最高だ。
準大手は、スーパーゼネコンより価格を決める力が弱い。顧客は中堅デベロッパーや地方の製造業、官公庁に広がり、入札で競う場面が多い。熊谷組の競合は、戸田建設、安藤・間、西松建設、奥村組、東急建設だ。市場は分散していて、地場のゼネコンも多い。
追い風は国土強靱化だ。2026年度から5年で20兆円強の計画があり、橋・トンネル・上下水道の更新が続く。トンネルに強い熊谷組には向く。データセンターや工場の民間投資も当面は強い。
10年先は、そうした投資が一巡する。その後は実質で横ばいか緩やかな縮小に向かうと筆者は見る。人手が足りない業界では、売上を伸ばす力より、採算を守る力が会社の差になる。
再編も進みやすい。地場の事業承継型の買収や準大手どうしの統合が、この領域の次の焦点だ。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、住友林業との関係の見直しと、還元の強化だ。住友林業は議決権の15.4%を持つ筆頭株主で、熊谷組は住友林業の持分法適用会社にあたる。2026年1月、両社は相互に持つ株の一部を同じ割合で売り、資本効率を上げる方針を発表した。業務提携は続く。
還元は、配当性向40%を目安にしつつ、自社株買いで上乗せする。2026年1月には上限35億円の自社株買いを決め、前回分は約8割を消却する方針を示した。
買収は小粒で、大きな買収で価値を壊すタイプではない。一方、株主構成を見ると、住友林業が動けば経営の自由度が変わりうる。参考として、kabufu の試算では10年以内の買収や統合の確率は16%ほどだ。
資本を事業の稼ぎに回せるかが、これからの焦点だ。売却で得た現金を、割高な自社株買いで使い切るのではなく、稼ぎの確かな工事に回してほしい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設業の構造が変わった。受け手が仕事を選べる時代になり、熊谷組は国内建築の受注を絞って、採算のよい工事だけを取りにいった。受注時の採算は改善し、2026年3月期の営業利益は前期の倍近くになった。会社の予想は、2027年3月期も営業利益309億円と、さらに上を見る。
資本の使い方も変わった。ROEは10.7%まで上がり、中計の目標に届いた。住友林業との相互保有の整理も始まり、自社株買いと消却で、資本効率を意識する姿勢が見える。
成長の芽もある。国土強靱化の20兆円は、トンネルに強い熊谷組の土木を押し上げる。住友林業と組む木造ビルは、まだ小さいが、採算のよい新しい受注の柱になりうる。
財務の安全域もある。純現金で自己資本比率は4割を超え、景気の谷で一気に傾く会社ではない。中計の最終年度が過ぎても、利益は高止まりすると見るのが自然だ。
今の株価は、10年の平均の利益を低く見すぎている。直近の営業利益271億円が続くだけでも、価値は今の時価総額を上回る、という見方だ。
慎重な見方
好調は景気の山の利益だ。営業利益率は直近3期が2.9%で、2026年3月期だけが5.6%だ。たった1期の改善を、構造の変化とみなすのは早い。資材高や人手不足を転嫁できるのは、今の需給が締まっているからで、民間投資が一巡すれば崩れうる。
国内の工事量は、人口減で実質では増えない。しかも施工を決めるのは人手だ。人が足りなければ売上は伸びず、人件費の上昇は利益を削る。2027年3月期の会社計画も、売上は微増なのに営業利益の伸びは小さい。
過去の赤字も軽くない。2009年と2013年の3月期に赤字を出し、2003年3月期には約3,000億円の純損失があった。財務が傷む時は、一度に大きく出る。
住友林業が相互保有を減らし始めたことは、安定株主が薄くなることでもある。木造は魅力的だが、全社の利益を動かす規模には遠い。
結局、今の利益を10年続く前提で値段が付いているなら、それは楽観の筋書きにしか合わない。中立の利益で測れば、値段は先に進みすぎている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。直近の回復は事実で、強気の見方に分がある部分もある。ただ、3期連続の2.9%という低さは、利益が山にあることを示す。値段を決めるのは、10年の平均で資本コストを超えられるかどうかで、そこでは慎重な見方が勝つ。確率は中立に4割弱を置き、やや悲観を準大手の中でも厚めにした。悲観を1割強に置いたのは、過去の赤字の深さを無視できないからだ。強気の見方が強調する財務の堅さは、悲観の床を支えるが、中立の利益を上げるものではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,536 円2,611 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 714 円1,214 億円)。 今の値に割り戻すと 1,266 円2,152 億円、今との差 +5.1%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,653 円4,508 億円 | 883 円1,500 億円 | +193.4% | +11.4% | 212 円360 億円 |
| やや楽観 | 16% | 2,261 円3,843 億円 | 824 円1,400 億円 | +156.0% | +9.9% | 494 円839 億円 |
| 中立 | 38% | 1,880 円3,196 億円 | 765 円1,300 億円 | +119.5% | +8.2% | 1,005 円1,708 億円 |
| やや悲観 | 28% | 828 円1,408 億円 | 677 円1,150 億円 | +24.9% | +2.2% | 421 円716 億円 |
| 悲観 | 12% | 575 円977 億円 | 412 円700 億円 | −18.1% | −2.0% | 118 円201 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,536 円2,611 億円 | 714 円1,214 億円 | +86.8% | +6.4% | 2,251 円3,825 億円 |
今の株価時価総額 1,205 円2,048 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 選別受注と木造・土木で稼ぐ力が定着 利益 279 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 2,653 円4,508 億円
10年かけて、受注を選ぶ姿勢が定着する。建築は利益率6%台半ばを保ち、住友林業と組んだ木造の中大規模ビルが新しい受注の柱になる。土木はトンネルや治水の更新工事を取り切り、実質の量がやや増える。国内の需要が実質で伸びない点は変わらないが、採算と価格でそれを補う。営業利益は400億円ほどになり、還元も厚く続く。自己資本が積み上がりすぎず、ROEは10%に届く。筆者が描ける最良の姿だが、ここまで揃うには、10年間大きな工事の失敗がないことが前提になる。住友林業との関係が深まり、木造ビルの受注が全社の採算を押し上げる。
- 国内建築:数量 364(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 3,484 億円・営業利益 226 億円。364万人日換算 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 6.5%
- 国内土木:数量 161(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,618 億円・営業利益 105 億円。161万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 6.5%
- 海外・開発・子会社その他:数量 150(工事・サービス量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,511 億円・営業利益 68 億円。150万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 279 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.87 倍、時価総額 4,428 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年を通じて採算を選び、木造も土木も成功する筋書き。連続して当たる必要があり、確率は低い。
やや楽観 16% 採算改善が続き、資本効率が上向く 利益 246 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 2,261 円3,843 億円
値上げが物価並みに通り、採算の改善が続く。建築は利益率6%、土木も6%を保つ。量は実質で横ばいに近く、2%ほど減る程度で済む。住友林業との木造事業は、全体を押し上げるほどの規模にはならないが、採算のよい受注として積み上がる。営業利益は350億円台で、会社の中計の水準に近い。ROEは9%まで上がり、資本コストにあと一歩のところまで来る。自社株買いと配当で、還元は純利益の6割を超える。強靱化の予算に支えられ、土木が建築の波を和らげる。ただ、木造や土木だけでは、建築の量の減りを埋めきれない。還元は自社株買いと配当で厚く、自己資本は積み上がりすぎない。
- 国内建築:数量 357(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 3,414 億円・営業利益 205 億円。357万人日換算 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 6.0%
- 国内土木:数量 153(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,541 億円・営業利益 92 億円。153万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 6.0%
- 海外・開発・子会社その他:数量 147(工事・サービス量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,480 億円・営業利益 59 億円。147万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 4.0%
倍率:ROE 9.1%(純利益 246 億円 ÷ 自己資本 2,714 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(ROE − k)= 8.66%、長期の成長率 g 4% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 12.7 倍。国内は量の伸びない成熟市場で、景気の振れは k の quality で見ているので倍率では大きく引かず、上限のわずか下の 15.27 倍に置いた。
確率:値上げが物価並みに通り、採算の改善が続く姿。直近の回復が本物なら起こるが、国内の量が伸びない制約がある。
中立 38% 量は細り、価格だけ上がる成熟 利益 214 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 1,880 円3,196 億円
量は実質で5%ほど細り、価格は物価並みに上がる。国内の建築は、人口減と地方の縮小で量が伸びない。土木は更新工事で踏みとどまる。人手不足は採算を守る一方、売上の伸びを縛る。営業利益率は5%台前半に戻り、営業利益は310億円ほどだ。直近の水準よりやや低いが、これが普通の姿だと筆者は見る。ROEは8%で、資本コストをわずかに下回る。還元は純利益の6割台を続ける。堅実だが、株主にとっては物足りない10年になる。大きな失敗も成功もない、平らな道だ。土木のトンネル工事が、建築の波を和らげる役目を果たす。住友林業との協業は続くが、利益を動かす規模には育たない。会社の改善策が部分的に効く、標準の姿だ。
- 国内建築:数量 346(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 3,309 億円・営業利益 182 億円。346万人日換算 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 5.5%
- 国内土木:数量 149(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,494 億円・営業利益 82 億円。149万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 5.5%
- 海外・開発・子会社その他:数量 143(工事・サービス量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,435 億円・営業利益 50 億円。143万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 214 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.49 倍、時価総額 3,101 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は細り、価格は物価並み。会社の改善策が部分的に効く、最も標準的な姿。
やや悲観 28% 地方の縮小と採算の悪化に逆戻り 利益 147 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 828 円1,408 億円
直近の好調は景気の山で、元の水準に戻る。地方の人口減で量は実質で1割強減り、価格転嫁も止まる。営業利益率は3%台後半に沈み、直近3期のような低さに戻る。営業利益は220億円ほどだ。土木も低採算の工事が増える。それでも配当は守り、ROEは6%にとどまる。選別受注の効果が一時のものに終わり、人手不足の中で採算の悪い工事を抱え込む。資本の効率が上がらない会社として、倍率は低く評価される。住友林業との関係も、利益を押し上げるほどには育たない。配当を守る代わりに、成長投資に回せる資金は限られる。市場は、景気の波に利益を左右される会社として見続ける。
- 国内建築:数量 320(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 9.57(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 3,065 億円・営業利益 129 億円。320万人日換算 × 1人日あたり 9.57万円、利益率 4.2%
- 国内土木:数量 135(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,356 億円・営業利益 57 億円。135万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 4.2%
- 海外・開発・子会社その他:数量 132(工事・サービス量(万人日換算、実質。推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,330 億円・営業利益 37 億円。132万人日換算 × 1人日あたり 10.05万円、利益率 2.8%
倍率:ROE 6.0%(純利益 147 億円 ÷ 自己資本 2,469 億円)。事業の ROE が資本コスト k 7.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍。国内は成熟市場で g は名目 3.5% 程度、利益の質は景気の山と谷で振れる準大手のもので、上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。
確率:直近3期は営業利益率が2.9%に沈んだ。今の回復が山の利益なら戻る可能性が高く、準大手の中では厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負け、低採算工事に頼る 利益 60 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 575 円977 億円
構造的に負ける。地方の建設市場が縮み、人手不足の中でも仕事を選べなくなる。低採算の工事を受けざるを得ず、利益率は2%台に落ちる。大型の不採算工事や、新しい事業での失敗が重なり、自己資本も目減りする。配当は維持しても、優良な会社とは見られなくなる。住友林業との関係も深まらず、再編の対象にもなりやすい。財務の体力は残るが、稼ぐ力の回復は見えない。需要の縮みは10年かけてじわじわ効き、ある年に急に表に出る。熊谷組は規模が小さく、1本の失敗の傷が深い。その間、配当を維持するために、還元は純利益の半分ほどに抑えられる。
- 国内建築:数量 273(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.93(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 2,437 億円・営業利益 61 億円。273万人日換算 × 1人日あたり 8.93万円、利益率 2.5%
- 国内土木:数量 115(施工量(万人日、実質。推定))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,078 億円・営業利益 27 億円。115万人日換算 × 1人日あたり 9.38万円、利益率 2.5%
- 海外・開発・子会社その他:数量 113(工事・サービス量(万人日換算、実質。推定))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 1,057 億円・営業利益 16 億円。113万人日換算 × 1人日あたり 9.38万円、利益率 1.5%
倍率:構造的に優良でなくなり、不採算工事と新規事業の減損も出た姿。谷の年の純利益は60億円で、稼ぐ力は700億円ほどにしかならず、床は売れる資産で測る。総資産約4,490億円を強制売却で8割しか回収できず、負債約2,610億円は全額払うとして残る約980億円を、今の自己資本1,879億円に対する PBR 0.52倍に置いた。谷の年の営業利益は小さく、EV÷営業利益は参考にならない。
確率:地方市場の縮小と不採算工事で、構造的に優良でなくなる筋書き。2009年・2013年の赤字と、直近3期の低採算の経験から、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内建築
オフィス・工場・物流施設・マンションなどを請け負って建てる主力。住友林業と組んだ中大規模木造も手がける。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 364 | 7.14 | 2,600 | 160 |
| 10 年後 中立 | 346 | 9.57 | 3,309 | 182 |
取り方:セグメント別の売上・利益は短信から確認できなかったため推定。個別の完成工事高3,731億円と国内建築の計画的な受注抑制を踏まえ、建築を約2,600億円、営業利益を160億円(利益率6%台前半)と置いた。施工量は1人日あたり売上を同じ準大手の戸田建設と同じ7.14万円と置いて約364万人日と推定した。物価の分は価格に入る。
国内土木
トンネル・ダム・道路・橋・治水など、官公庁が発注する工事。国土強靱化の恩恵を受ける。
| 数量施工量(万人日、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 153 | 7.50 | 1,150 | 75 |
| 10 年後 中立 | 149 | 10 | 1,494 | 82 |
取り方:個別の完成工事高3,731億円から建築を引き、土木を約1,150億円、営業利益を75億円と推定した。開示が無いため筆者の推定。1人日あたり売上は7.5万円と置き、施工量を約153万人日とした。
海外・開発・子会社その他
東南アジアなど海外の工事、不動産開発、子会社の工事と全社の調整。
| 数量工事・サービス量(万人日換算、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 7.50 | 1,127 | 36 |
| 10 年後 中立 | 143 | 10 | 1,435 | 50 |
取り方:連結売上4,877億円から建築と土木を引いた約1,127億円と、営業利益の残り36億円(全社の調整を含む)。同じ要領で約150万人日に換算した。内訳は開示が乏しく筆者の推定。
リスクと懸念
景気の山の利益が元に戻る
営業利益率は2023年3月期から3期続けて2.9%に沈み、2026年3月期に5.6%へ跳ねた。この回復が受注の選別によるものか、需給が締まった局面の一時的な追い風か、1期では判断できない。後者なら、民間投資の一巡とともに利益は直近3期の水準へ戻る。
人手不足で施工量が頭打ちになる
2024年問題以降、技能者の確保が最大の制約になった。人が足りなければ受注があっても売上に変えられず、労務費の上昇は利益率を削る。会社の2027年3月期計画も、売上5,000億円に対し営業利益は309億円で、増収が増益に結びつきにくい構図が見える。
大型の不採算工事が出る
ゼネコンは、1本の大型工事の見積りの誤りで、1年分の利益が飛ぶ。熊谷組は2009年と2013年の3月期に赤字を出し、2003年3月期には約3,000億円の純損失を計上した。土木のトンネルは地質の読み違いが損失につながりやすい。
住友林業との関係が変わる
住友林業は議決権の15.4%を持つ筆頭株主だ。2026年1月に相互保有の一部売却と資本関係の見直しを発表した。協業は続くが、持株がさらに減れば安定株主が薄れ、経営の自由度や再編の可能性が変わる。木造事業の拡大も、提携の深さに左右される。
国土強靱化の予算執行が遅れる
2026年度から5年で20兆円強の計画があり、土木の追い風だ。ただ発注は入札で、執行が遅れたり、人手不足が一服して価格競争が再燃したりすれば、低採算の工事を取らざるを得なくなる。地場ゼネコンとの競争も続く。
還元が事業の稼ぎを増やさない
自社株買いと消却は1株あたりの価値を上げるが、事業の利益そのものは増やさない。売却で得た現金を割高な株の買い戻しに使えば、価値は壊れる。資本を事業の稼ぎに回し、ROEを資本コストの上に保てるかが問われる。
今後の分かれ目
- 建築の完成工事利益率が2期続けて低下したら
- 受注の選別による改善が山の利益だったと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 2028年3月期の営業利益が、会社予想の水準を50億円以上上回ったら
- 利益が構造的に高いと確かめられ、中立の利益を上方に直し、楽観側の確率を増やす。
- 大型の不採算工事で特別損失が出たら
- 見積りと管理の甘さが露わになり、悲観の確率を上げる。
- 住友林業が保有株をさらに減らしたら
- 安定株主が薄れる一方、資本効率の改善や再編の可能性が高まる。木造の協業が続くかを確かめて評価する。
- 国土強靱化の予算執行が遅れ、土木の受注が2期続けて減ったら
- 土木の利益率を5%台前半から下げ、中立の利益を数十億円削る。
- 準大手どうしの統合や、地場ゼネコンの事業承継型買収が出たら
- 統合後の資本効率次第。規模で採算が上がるなら価値を押し上げ、割高な買収なら下げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの建設受注高と受注時の採算
- 国内建築・土木の完成工事総利益率
- 住友林業の保有比率の変化と木造事業の受注
- 大型工事の追加損失の有無
- 国土強靱化予算の執行と土木の受注
- 自社株買いと消却の規模、ROEの推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年中立のROE8%が資本コスト k 7.25%(基本 7.5% + quality 0.75%)に届かない前提で、正当化 PER の上限(1÷k = 約12倍)の約8割に置いた。やや悲観・悲観は稼ぐ力と売れる資産で置き、悲観は総資産の8割回収・負債全額払いで残る約980億円を今の自己資本に対する PBR 0.52倍で書いた。谷の PBR は使っていない。今の株価や今の PER を見てから決めたわけではない。純現金は150億円で時価総額の約7%と1割に満たず、建設会社の前受金が支える面もあるので、余った現金は分けていない。数量は人日で推定した値で、内訳の分け方には誤差がある。なお、2028年3月期から新リース会計基準でBSの形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→15.87 倍・やや楽観 PER 12.6→15.27 倍・中立 PER 12→14.49 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。個別のリスク(大型の不採算工事・住友林業との関係の変化など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.25%。