結論
テスホールディングスは、工場の省エネ設備や蓄電池の工事を請け負い、自社の太陽光・バイオマス発電所で電気も売る大阪の会社だ。筆者の結論は、今の値段は割高ということである。一番の理由は借入の重さにある。
2026 年 6 月期の営業利益は 53 億円。これに対し借入は 928 億円ある。利払いは営業利益の約 3 割を食っている。金利が上がる 10 年では、この負担は借り換えと新規の借入で 5 割ほど増える。稼いだ利益の多くは貸し手に回る。
成長の話は明るい。受注残 433 億円のほぼ全部が蓄電池で、会社は 2030 年 6 月期に営業利益 134 億円を掲げる。ただ、蓄電池の工事は施主が決まってから請ける仕事が中心で、利益率は 1 割に届かない。発電所の売電は固定価格買取制度(FIT)で単価が決まっており、物価が上がっても収入は増えない。
会社の計画がほぼ通る強気の筋書きでも、10 年後に株主の手元に残る額は今の時価総額に届かない。借入の大半は発電所を担保にしたもので、すぐ崩れる会社ではない。だが安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後も強い事業か」を問う。ここは弱い。蓄電池の工事は参入が相次ぐ請負で、発電は固定単価の資産だ。値段を自分で決める力が乏しい。
次に、稼いだお金の使い道を見る。この会社は借入で資産を積み、利益の多くが利払いに消える。純利益を自己資本で割った利益率は 4% 前後と、資本コストに遠く及ばない。ためた利益が額面どおりの価値を持たない典型である。
安全域も薄い。売れる資産の価値は、借入などの負債を上回るが、その差は自己資本の 4 分の 1 ほどにすぎない。厳しい局面では、株主の取り分は大きく削られる。
最後に、読みやすさ。蓄電池の工事は案件の完成時に利益が立つため、来期の姿が読みにくい。バイオマスの不採算案件や為替予約の評価損のように、利益の振れも大きい。
成長の絵は魅力的だが、払う値段は利益の質で決まる。確信度は低めに置いた。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 本ある。
1 本目はエンジニアリング事業だ。工場や物流倉庫の省エネ設備、太陽光、蓄電池を、設計から施工まで一括で請け負う。2026 年 6 月期は売上の 4 割強を占めた。いま伸びているのは蓄電池で、受注残 433 億円のほぼ全部がこれである。施主は東京センチュリーや大和エナジー・インフラなど、リースや金融の会社が目立つ。自社で用地と送電網への接続枠を開発して売る「開発型」もあるが、売上の中心は施主から請ける「受託型」だ。
2 本目はエネルギーサプライ事業で、売上の約 6 割を占める。自社の太陽光とバイオマスの発電所で電気を売る。連結子会社が持つ発電容量は約 375MW。2025 年 4 月には佐賀伊万里バイオマス発電所(46MW、FIT で単価固定の 20 年)が動き出した。ほかに、他社の発電所の保守(O&M)と、市場価格に連動する電気小売も手がける。
利益の出どころは偏っている。筆者の推定では、営業利益の約 6 割は自社発電が生む。工事は売上が大きいわりに利益が薄い。会社は、工事で顧客をつかみ、完成後に保守や売電でストック収入を得る循環を描く。
燃料も自前にこだわる。インドネシアでは農業の残りかすからペレット燃料を作る工場を建てた。ただしグループ外への販売実績はまだない。
優良さと弱いところ
優良な会社かといえば、成長の入口に立つが、堀は浅いと筆者は見る。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。
工事の受注は価格と納期の勝負で、蓄電池の施主は大手のリース会社だ。値段を決める力は施主側にある。自社発電は、FIT の固定単価と 20 年の期間が収入を守る。ただ、権利そのものは誰でも取れた制度であり、強みとは呼べない。
利益の波は大きい。営業利益率は 2023 年 6 月期の 19.9% から、2024 年 6 月期は 7.7% まで落ちた。2025 年 6 月期は為替予約の評価損で経常赤字になった。ROE の中央値は 6% 台と低く、資本コストを継続して超えた実績がない。
資本の使い方にも疑問が残る。発電所を借入で積み増すと、利益の増え方より利払いの増え方が速い。バイオマスの工事では不採算案件が出て、引当金を積んだ。経営は成長を急ぎ、収益性は後回しに見える。
救いは、発電所の収入が長期契約で読みやすいことと、東京センチュリーという資金力のある提携先を持つことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社が戦う市場は 3 つで、蓄電池の工事、省エネ・再エネの工事、再エネの発電である。
蓄電池は国の後押しで急に立ち上がった市場だ。再エネが増えると、余った昼の電気を貯めて夜に使う仕組みが要る。国の長期脱炭素電源の入札でも、蓄電池が大きな枠を取った。数量が伸びる点は疑いがない。
だが、工事で稼ぐ会社の取り分は薄くなると筆者は考える。蓄電池の本体価格は世界で下がり続けており、工事の請負額も下がる。送電網につなぐ工事費の負担金が上がり、会社の大口案件が解約された例もある。商社、リース、電力、外資の参入も相次ぐ。
発電のほうは、新規の FIT 案件は終わり、これからは自家消費向けの電気の長期売買契約(PPA)と市場連動の FIP が主役になる。単価は FIT より低く、太陽光の出力が昼に集中して市場価格が下がる問題もある。2012〜2014 年ごろの高単価の FIT は、2030 年代前半に期間が終わる。
省エネ工事は、電気代の高止まりを背景に工場の需要が底堅い。ただ国内の人口は減り、数量は 10 年で横ばいから微減とみる。
最後に金利がある。発電所は借入で作る事業なので、金利が 1% 上がるごとに利益の質が変わる。
資本政策と M&A
資本政策は、借入で発電所を積み増す成長投資が中心だ。有利子負債は 928 億円、現金は 128 億円ある。三菱 UFJ 銀行など 11 行のグリーンローン 200 億円で伊万里の発電所を建てた。
株主還元は、連結配当性向 30% を目安にする。減益の予想でも配当は据え置く方針だ。自社株買いの実績は乏しく、過去には株数が増えた期(2024 年 6 月期)もある。株主優待は 1,000 株で 3,000 ポイント。年間の費用は開示がなく、原価ベースでは 1 億円未満と見て、還元には加えなかった。
2024 年 12 月に東京センチュリーと資本業務提携を結んだ。当時の筆頭株主らが保有株の 5% を譲り、蓄電所の案件を共同で進める。現在の筆頭株主は 7% 台の合同会社で、支配株主はいない。買収の標的になりうる一方、提携先との関係から、敵対的な動きは考えにくい。
M&A は大型のものがなく、福岡みやこメガソーラー発電所を連結に加えた程度だ。筆者が気にするのは、利益が伸びる局面でも借入が減らない点である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
蓄電池は国策で必ず伸びる市場だ。再エネが増えるほど、電気を貯める設備の需要は増える。テスは送電網への接続を早くから申し込んでおり、これまでに開発に関わった容量は累計約 2,900MW、受託の引き合いは 470 件を超える。
受注の中身も良い。大口は東京センチュリーや大和エナジー・インフラなど信用力のある施主で、受注残は 433 億円と、今期の営業利益の 8 倍を超える。2030 年 6 月期に系統用蓄電所の施工 700MW、自社保有の再エネ発電 470MW という目標も、すでに受注が 376MW まで積み上がっている。
発電所は 20 年の長期契約で、毎年の収入が積み上がる。蓄電池を併設すれば、市場価格の高い夜に売れる。工事で顧客をつかみ、保守と売電で長く稼ぐ循環が回れば、営業利益 130 億円、ROE は 1 割近くに戻る。
インドネシアのペレット工場が軌道に乗れば、燃料を自前で調達できるぶん、バイオマスの利益率も上がる。営業利益の下振れは今期だけの人件費と研究費で、構造の問題ではない。
慎重な見方
利益の山は、蓄電池の初期のブームに乗ったものだ。2026 年 6 月期の営業利益は 53 億円だが、今期の会社予想は 47 億円に下がる。中期計画の 64 億円には届かない。
蓄電池の工事は施主の都合に左右される。大口案件が接続工事費の高騰で解約になった例もあり、130 億円の大口受注には「開発要件が整わなければ解除」の条件が付く。工事の利益率は 1 割に届かず、売上が増えても利益はあまり増えない。
そして借入だ。有利子負債は 928 億円、営業利益の 17 倍にあたる。借り換えと新規の借入で金利が 3.5% 前後に上がると、利払いは今の約 17 億円から 27 億円前後に増える。営業利益が 50 億円のままなら、税引き後の利益は 10 億円台まで細る。
発電所は固定単価で、物価が上がっても収入は増えない。燃料や人件費だけが上がる。伊万里の売電単価は 20 年変わらず、燃料価格と為替で採算が崩れうる。会社の ROE は 5% に届かず、資本コストを大きく下回る。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。蓄電池の需要の伸びは疑わないが、請負の利益は薄く、借入の利払いが利益を食う構造は変わらない。会社の計画が通っても、株主の取り分は今の値段に届かない。
確率は、中立を中心にやや悲観側へ寄せた。強気の筋書きは、蓄電池の工事が 10 年続き、利益率も保ち、借入も増えすぎない条件が重なる。確率は 8% に絞った。悲観の 13% は、金利上昇と案件の解約が重なる姿である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 307 円217 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 84 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 170 円120 億円、今との差 −63.5%、 期待の年率 −1.8%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 847 円598 億円 | 171 円121 億円 | +117.9% | +8.1% | 81 円58 億円 |
| やや楽観 | 20% | 402 円284 億円 | 105 円74 億円 | +8.5% | +0.8% | 101 円72 億円 |
| 中立 | 34% | 271 円191 億円 | 88 円62 億円 | −23.2% | −2.6% | 122 円86 億円 |
| やや悲観 | 25% | 177 円125 億円 | 64 円45 億円 | −48.5% | −6.4% | 60 円43 億円 |
| 悲観 | 13% | 170 円120 億円 | 28 円20 億円 | −57.6% | −8.2% | 26 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 307 円217 億円 | 84 円59 億円 | −16.3% | −1.8% | 391 円276 億円 |
今の株価時価総額 467 円330 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:蓄電池の工事が 10 年続き、中期計画に迫る 利益 60 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 847 円598 億円
蓄電池の需要が国の後押しで伸び続け、テスは年 300MW の工事をこなす。施主は金融・リース系で、開発型の権利譲渡も増えて利益率は 12% に上がる。送電網の接続枠を押さえた強みが効く。
自社発電は 600MW 近くに増え、蓄電池を併設して夜の高い電気を売る。FIT の単価は据え置きでも、FIP と電気の長期売買契約が収入を支える。インドネシアのペレット燃料も軌道に乗り、バイオマスの利益率が上がる。
借入は 1,250 億円まで増えるが、営業利益が 125 億円に達し、利払いを賄える。会社の中期計画に近い姿で、営業利益は目標より遅れて届く。ただ、新規の借入は 3.5% 前後と重く、純利益は 60 億円、ROE は 7% 台にとどまる。うまくいっても、資本コストには届かない。
- 蓄電池・再エネ EPC:数量 300(年間の完成容量(MW、推定))× 価格 190(1MW あたり請負額(百万円))→ 売上 570 億円・営業利益 68 億円。受託と開発型が両方伸び、利益率も上がる
- 省エネ EPC:数量 62.0(年間の工事件数(件、推定))× 価格 162(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 100 億円・営業利益 14 億円。工場の更新需要が続く
- 自社再エネ発電:数量 960(年間の販売電力量(GWh、推定))× 価格 29(平均売電単価(円/kWh))→ 売上 274 億円・営業利益 55 億円。自社発電が 600MW 近くに増え、単価は FIP・PPA の混在
- 電気小売:数量 260(年間の供給電力量(GWh、推定))× 価格 25(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 64 億円・営業利益 3 億円。顧客が増える
- O&M(保守運用):数量 1,900(管理容量(MW、推定))× 価格 4.11(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 78 億円・営業利益 11 億円。自社施工分で管理容量が増える
倍率:事業の ROE 7.4% は k 10.0% 以下。伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 10 倍。利益率が高く、発電所は売却もできる資産で下値を支えるため、上限どおりの 10.0 倍に置いた。純利益 59.8 億円 × 10.0 倍で時価総額 598 億円。
確率:蓄電池の工事が 10 年続き、利益率も保ち、借入も増やしすぎない条件が重なる必要がある。請負の薄い利益と金利を考え、8% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:蓄電池は伸びるが、競争で利益率は落ち着く 利益 28 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 402 円284 億円
蓄電池の工事は年 160MW まで育つが、競合の参入と電池価格の下落で、1MW あたりの請負額は物価ほど上がらない。利益率は 9% 台に落ち着く。
自社発電は約 500MW に増える。ただ、古い高単価の FIT が期間を終え始め、単価は今より下がる。売電収入は伸びるが、利益は借入の利息に吸い取られる。
借入は 1,100 億円で、営業利益は 73 億円。純利益は 28 億円にとどまり、配当は利益の 3 割を保つ。ROE は 4% 強だ。会社の言う「高収益化」は半ばで止まり、起伏の少ない 10 年になる。
- 蓄電池・再エネ EPC:数量 160(年間の完成容量(MW、推定))× 価格 182(1MW あたり請負額(百万円))→ 売上 290 億円・営業利益 28 億円。競争で利益率は 9% 台に
- 省エネ EPC:数量 58.0(年間の工事件数(件、推定))× 価格 162(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 94 億円・営業利益 13 億円。更新需要で緩やかに増える
- 自社再エネ発電:数量 880(年間の販売電力量(GWh、推定))× 価格 28(平均売電単価(円/kWh))→ 売上 245 億円・営業利益 44 億円。古い FIT の期間満了で単価が下がる
- 電気小売:数量 230(年間の供給電力量(GWh、推定))× 価格 25(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。顧客が緩やかに増える
- O&M(保守運用):数量 1,700(管理容量(MW、推定))× 価格 4.11(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 70 億円・営業利益 9 億円。管理容量が緩やかに増える
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 284 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近いが遅れる姿。蓄電池の工事は伸びるものの、競争と電池価格の下落で利益率が 1 割弱に落ちる。2 割とした。
中立 34% 中立:蓄電池の取り分は薄く、利益は横ばいで利払いが重い 利益 17 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 271 円191 億円
蓄電池の需要は伸び、工事は年 110MW に落ち着く。ただ、電池価格の下落で 1MW あたりの請負額は物価ほど伸びず、利益率は 8% 台にとどまる。受注残の 433 億円は 2027〜2029 年に消化し、その先は受注を取り続けられるかが問われる。
自社発電は約 520MW に増えるが、高単価の FIT が期間を終え、新しい契約は単価が低い。固定単価は物価で増えず、燃料と人件費だけが上がる。利益率は 16% に下がる。
営業利益は 51 億円と、今とほぼ同じ。名目で横ばいは、実質では目減りだ。借入は 930 億円で、プロジェクトの借入は固定金利が多い。借り換えが進む分と新規の借入で、利払いは約 27 億円に増える。純利益は 17 億円、ROE は 3% 弱だ。配当は据え置きだが、自己資本の積み上がりは遅い。
- 蓄電池・再エネ EPC:数量 110(年間の完成容量(MW、推定))× 価格 182(1MW あたり請負額(百万円))→ 売上 200 億円・営業利益 17 億円。需要は伸びるが請負額は伸びず、利益率 8% 台
- 省エネ EPC:数量 52.0(年間の工事件数(件、推定))× 価格 162(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 84 億円・営業利益 11 億円。国内は横ばいから微減
- 自社再エネ発電:数量 800(年間の販売電力量(GWh、推定))× 価格 27(平均売電単価(円/kWh))→ 売上 216 億円・営業利益 35 億円。FIT の期間満了と新規の低単価で単価が下がる(固定単価は物価で増えない)
- 電気小売:数量 200(年間の供給電力量(GWh、推定))× 価格 25(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。市場連動で薄利
- O&M(保守運用):数量 1,450(管理容量(MW、推定))× 価格 4.11(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 60 億円・営業利益 7 億円。契約満了を新規が相殺
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.7% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 172 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:蓄電池の需要の伸びと、請負の薄い利益、金利上昇による利払いの増加がほぼ釣り合う姿。最も重みを置く。
やや悲観 25% やや悲観:蓄電池の稼ぎが細り、利払いで赤字になる 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 177 円125 億円
蓄電池の市場に商社、リース、外資が本格参入し、工事の取り合いになる。テスの工事は年 55MW まで減り、利益率は 5% に落ちる。大口案件は接続工事費の高騰で解約が続く。
自社発電は出力制御と低単価の契約で収入が伸びず、バイオマスは燃料価格の上昇で利益が薄い。老朽化した高単価の FIT は期間を終える。
営業利益は 21 億円まで減る一方、借入は 1,000 億円と減らず、利払いは 30 億円。営業利益で利息を賄えず、純利益は 5 億円の赤字になる。配当は縮めるが、株主の取り分は削られる。発電所の一部は減損で、自己資本も減る。
- 蓄電池・再エネ EPC:数量 55.0(年間の完成容量(MW、推定))× 価格 173(1MW あたり請負額(百万円))→ 売上 95 億円・営業利益 5 億円。競争と解約で工事が細る
- 省エネ EPC:数量 44.0(年間の工事件数(件、推定))× 価格 162(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 71 億円・営業利益 7 億円。更新需要が弱まる
- 自社再エネ発電:数量 720(年間の販売電力量(GWh、推定))× 価格 26(平均売電単価(円/kWh))→ 売上 184 億円・営業利益 22 億円。出力制御と低単価で収入が伸びない
- 電気小売:数量 160(年間の供給電力量(GWh、推定))× 価格 25(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。薄利が続く
- O&M(保守運用):数量 1,200(管理容量(MW、推定))× 価格 4.11(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 49 億円・営業利益 4 億円。契約満了を補えない
倍率:事業の利益が利払いに届かず赤字。稼ぐ力ではなく、売れる資産の税後から測る。発電所の減損で自己資本は 519 億円(減損 40 億円は純利益に入れていない)として、今の自己資本 521 億円に PBR 0.24 倍を掛けた(中立の PBR 0.25 倍を下回る)。EV÷営業利益(EV でも見た結果)は 24 倍と高いが、営業利益が小さい谷の年の値で参考にならない。
確率:競争と制度の変更で蓄電池の工事が細り、金利上昇が利益を超える姿。借入の重さを考え、2 割台半ばに置いた。
悲観 13% 悲観:蓄電池が崩れ、金利と減損で自己資本が削られる 利益 −19 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 170 円120 億円
制度の変更と競争で、蓄電池の工事は年 15MW に落ち込み、残る案件も電池価格の下落で採算が割れる。省エネの工事も国内の需要減で縮む。
自社発電では、伊万里の燃料の調達価格が上がり、固定単価では採算が合わない。出力制御と低単価の契約も重なる。発電所の一部は減損になり、自己資本が削られる。燃料を自前で調達する構想も採算が合わず、インドネシアのペレット工場は止まる。
営業利益は赤字に沈み、借入の利払いは 24 億円ある。財務制限条項に触れ、借り換えの条件が悪化する。配当は大きく減らし、資産を売って借入を返す。会社は成長の柱を失い、もう優良ではなくなった 10 年だ。
- 蓄電池・再エネ EPC:数量 15.0(年間の完成容量(MW、推定))× 価格 157(1MW あたり請負額(百万円))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。制度変更と競争で工事が激減
- 省エネ EPC:数量 34.0(年間の工事件数(件、推定))× 価格 162(1 件あたり売上(百万円))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。国内需要の減少で縮む
- 自社再エネ発電:数量 620(年間の販売電力量(GWh、推定))× 価格 24(平均売電単価(円/kWh))→ 売上 149 億円・営業利益 9 億円。燃料高と出力制御で採算が割れる
- 電気小売:数量 120(年間の供給電力量(GWh、推定))× 価格 25(平均販売単価(円/kWh))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。撤退に近い縮小
- O&M(保守運用):数量 900(管理容量(MW、推定))× 価格 4.11(1MW あたり年間売上(百万円))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。契約満了で縮む
倍率:稼ぐ力はなく、床は売れる資産の税後で測る。減損で自己資本は 390 億円に減るとして、今の自己資本 521 億円に PBR 0.23 倍を掛けた。売れる資産の税後 130 億円が上限。
確率:蓄電池の工事が止まり、バイオマスの不採算と金利上昇が重なる姿。借入の重さと、経常赤字の過去を考え、13% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
蓄電池・再エネ EPC
系統用蓄電所、FIT 太陽光の FIP 転+蓄電池併設、太陽光の工事。施主から請ける受託型が中心で、開発型は一部。
| 数量年間の完成容量(MW、推定) | 価格1MW あたり請負額(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 92.0 | 165 | 152 | 12 |
| 10 年後 中立 | 110 | 182 | 200 | 17 |
取り方:受託型再エネ EPC の売上(2Q 累計 89.5 億円)と下期の見込み、開発型の権利譲渡を合わせて約 152 億円とした推定。1MW あたり約 1.65 億円は、静岡菊川(約 50 億円・約 30MW)と DEI α(約 40 億円・約 25MW)の比から。営業利益は粗利約 14〜15% から販管費を引いた推定。容量は実質、請負額は名目。10 年の価格は、電池本体の値下がり(実質で約 2 割)が物価を打ち消し、中立で 1.10 倍とした。
省エネ EPC
工場向けのコージェネ、ユーティリティ設備、燃料転換などの工事。
| 数量年間の工事件数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 55.0 | 121 | 67 | 9 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 162 | 84 | 11 |
取り方:省エネ EPC の売上(2Q 累計 36.1 億円)から通期を約 67 億円と置き、55 件・1 件約 1.2 億円に分けた推定。粗利率約 17% から販管費を引いた。
自社再エネ発電
連結子会社が持つ太陽光・バイオマス(伊万里)の売電と、オンサイト PPA。燃料供給の利益も含む。
| 数量年間の販売電力量(GWh、推定) | 価格平均売電単価(円/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 700 | 31 | 215 | 40 |
| 10 年後 中立 | 800 | 27 | 216 | 35 |
取り方:再エネ発電の売上(2Q 累計 105.5 億円)から通期を約 215 億円と置いた推定。伊万里が約 340GWh(46MW・FIT で単価固定)、太陽光が約 360GWh(FIT 高単価を含む)。単価は売上÷電力量。バイオマス燃料は連結消去され、粗利だけがここに入る。10 年の価格は、FIT が固定単価で物価に連動せず、高単価の旧 FIT の期間満了と低単価の新契約への入れ替わりで、中立で 0.88 倍とした。
電気小売
市場価格に連動するメニューで顧客に電気を供給する。
| 数量年間の供給電力量(GWh、推定) | 価格平均販売単価(円/kWh) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 180 | 18 | 33 | 1 |
| 10 年後 中立 | 200 | 25 | 49 | 2 |
取り方:電気小売の売上(2Q 累計 16.0 億円)の通期推定。利益率は薄い。
O&M(保守運用)
太陽光発電所などの保守運用。大型案件の契約満了で縮小している。
| 数量管理容量(MW、推定) | 価格1MW あたり年間売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,500 | 3.07 | 46 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,450 | 4.11 | 60 | 7 |
取り方:O&M の売上(2Q 累計 23.4 億円)の通期推定。管理容量は仮定。
リスクと懸念
金利上昇と借入の重さ
有利子負債は 928 億円で、営業利益の 17 倍にあたる。支払利息は約 17 億円(平均 1.8%)だ。プロジェクトの借入は固定金利が多く、借り換えは徐々に進むが、新規の借入は 3.5% 前後になり、10 年後は約 27 億円に増える。発電所を担保にした借入が大半とはいえ、利益が落ちれば財務制限条項や借り換え条件に響く。
蓄電池の工事の利益率と解約
蓄電池の工事は受託型が中心で、利益率は 1 割に届かない。大口案件の一部は接続工事費の高騰で解約され、130 億円の大口には「開発要件が整わなければ解除」の条件が付く。受注残 433 億円のうち、実際に売上と利益になる額は読みにくい。
バイオマス発電と燃料の採算
伊万里の発電所は FIT の売電単価が 20 年固定で、燃料のヤシ殻(PKS)は輸入品だ。価格と為替で採算が揺れる。工事の側ではバイオマスの不採算案件も出た。燃料を自前化するペレット工場は実証段階で、収益化の時期は決まっていない。
固定単価は物価で増えない
FIT の収入は物価が上がっても増えない一方、人件費、保守費、燃料は上がる。高単価の初期の FIT 太陽光は 2030 年代前半に期間を終え、収入が大きく減る。新しい契約は単価が低い。利益率は時間とともに削られる。
制度と送電網の制約
系統用蓄電池は、国の入札の条件、接続の順番、工事費負担金で採算が変わる。太陽光は出力制御が増えている。制度の変更は案件ごと消えうる。
利益の振れと評価損
2025 年 6 月期は為替予約の評価損で経常赤字になった。ヘッジ会計の適用で今後は抑えられるが、繰延ヘッジ損益が自己資本の 1 割超を占める。為替と燃料価格の動きで、利益と自己資本が動く。
今後の分かれ目
- 受注残 433 億円のうち、大口案件が予定どおり完成して売上に立ったら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。受託型でも工事を完遂する力がある証拠になる。
- 蓄電池の工事の営業利益率が 1 割を超えて定着したら
- 中立の利益率を上げる。開発型の権利譲渡が育った合図になる。
- 借り換えで金利が 3.5% を超えて上がり、利払いが営業利益の半分を超えたら
- 悲観の確率を上げる。借入の重さが利益を食い尽くす局面に入る。
- ペレット燃料がグループ外へ売れ始めたら
- バイオマスの利益率の上振れ材料。ただし量と採算の確認が先。
- 東京センチュリーが持株を増やす、または公開買付けの動きが出たら
- 資本政策の前提が変わる。買付価格しだいで評価を見直す。
- 財務制限条項に触れる、または借り換え条件が悪化したら
- 悲観の確率を上げる。配当や投資の縮小もありうる。
見ておくもの
- 蓄電池の受注残と、完成・解約の件数
- エンジニアリング事業の売上総利益率
- 有利子負債と支払利息、借り換えの金利
- 佐賀伊万里の稼働率と燃料の調達価格
- 連結子会社の再エネ発電容量(中計の 470MW)
倍率と資本コストの決め方
数量と価格は、セグメントごとに MW・件・GWh と名目単価に分けた推定で、今の株価は使っていない。価格は物価 3% の 1.34 倍を基本に置き、蓄電池の請負額は電池価格の下落で 1.10 倍、自社発電は FIT の固定単価と契約の入れ替わりで 0.88 倍にした。倍率は ROE と k から式で出し、ROE が k 以下の筋書きは上限 1÷k の 7〜9 割に置いた。市場の倍率は見ていない。今の時価総額は最後に比べただけ。結論が強い割高になるのは、営業利益の約 5 割を利払いが占める借入の構造と、ROE が 3〜7% と資本コスト 10% に届かない点による。同じ領域の 1407 より k を 0.5% 高くしたのは、純有利子負債が営業利益の 15 倍に達する点のため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:やや楽観 PER 9.8→10 倍・中立 PER 9.5→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 2.5% = 10.0%。同じ領域の 1407 ウエストホールディングス(9.5%)より高いのは、純有利子負債が営業利益の 15 倍に達し、自己資本比率 32% でも利益の余裕が薄い点のため。個別のリスクは筋書きと確率で表した。