結論
日本アクアは、住宅や建物に硬質ウレタンフォームを現場で吹き付けて断熱する専業で、「アクアフォーム」の名で知られる。2025年12月期は売上337億円、営業利益28億円、ROE17%。親会社はヒノキヤグループ(ヤマダホールディングスの完全子会社)で、議決権の約55%を持つ。
筆者の結論は「やや割安」に近い。10年後の中立でも、売上は今の1.5倍、営業利益は4割ほど増える。住宅の戸数が減る中でも、断熱の義務化と等級の引き上げで1棟あたりの断熱の量が増え、防水と建築物の分野が伸びるためだ。ただし、会社が掲げた営業利益率10%とROE20%は、ともに届いていない。
追い風は、省エネ基準の引き上げ(2027年にZEH水準を引き上げる予定)と、戸建の施工棟数の伸び(2025年は前年比11%増)だ。中間期の経常利益は会社予想を36%上回り、配当は性向50%を目標に累進で増やす方針を掲げる。
弱みは、住宅市場の縮みと、価格競争、原料(石油由来)の変動だ。中期計画は2025年2月に下方修正され、建築物部門は着工の遅れで通期予想を見直した。親会社の意向で、少数株主に不利な決定が出る可能性も残る。
バリュー投資の観点から
事業の本質は「石油由来の原料を、現場で吹き付けて断熱する施工業」だ。住宅には断熱が必要で、基準が上がる流れは10年続く。ただし、原料は外から買い、施工は人手に頼るため、品質と人員の確保が競争力のすべてだ。
オーナー利益で見ると、悪くない。ROEが10年の中央値で17%と高く、設備投資は営業利益より小さい。ただし、物流拠点と機械への投資が増え、営業キャッシュフローだけでは足りない年もある。配当に半分を払うため、内部に残る利益は多くない。
堀は中程度だ。施工実績と全国網は競合が簡単に真似できないが、断熱材そのものは入れ替えが利き、価格競争を完全には避けられない。安全域は、財務の堅さと、親会社の販売網(ヒノキヤグループ、ヤマダ)による受注の安定にある。
経営の資本配分は、成長投資と配当のバランスが焦点で、親会社の意向が強い。累進配当を維持しながら施工人員を増やし続けられるかを、毎期確かめたい。
何で稼ぐ会社か
売上の47%を戸建部門が占める。工務店やハウスメーカーの新築住宅に、硬質ウレタンフォーム(アクアフォーム)を現場で吹き付けて断熱する。認定施工店と自社の施工部門を組み合わせ、全国に45の事業所を持つ。2025年は戸建の売上が158億円で、施工棟数は前年比11.1%増えた。
建築物部門(売上99億円)は、工場・倉庫・店舗などの非住宅に、不燃性のあるアクアモエンNEOなどを施工する。防水部門(売上15億円)は、ポリウレア防水材「アクアハジクン」で屋上や屋根を防水する工事で、2025年は大型の物流施設や全国チェーンの店舗の受注で2倍超に伸びた。
ほかに、外部の施工店に原料を売る原料販売(売上21億円)と、吹付機械や副資材を売るその他部門(44億円)がある。原料は自社で作らず、国内の委託加工先6社に製造を任せ、素原料は北米やアジアを含めて分散して調達する。
従業員は710人、平均年齢は35歳と若く、平均給与は556万円。施工人員(工務社員、技能実習生、認定施工店の合計)は、2020年12月の780人から2025年6月に1,153人に増えた。取引先では伊藤忠建材が売上の8.8%を占める。
優良さと弱いところ
強みは三つある。一つ目は、現場発泡ウレタン断熱の施工実績で国内の首位級であり、全国45か所の事業所網と認定施工店を持つこと。二つ目は、ROEが過去10年の中央値で17%と、少ない資本で稼ぐこと。三つ目は、若い施工人員を増やし続け、施工量の天井を自ら押し上げていることだ。
弱みは、利益率が安定しないことだ。営業利益率は2018年12月期に3.9%、2021年12月期に5.9%まで下がる一方、2023年12月期には10.2%を付けた。2025年は8.2%で、会社が目標に置く10%には届かない。原料の価格が上がると、転嫁には遅れが出る。
財務は中程度だ。自己資本比率は45%、純有利子負債は24億円で自己資本の0.2倍、営業利益は支払利息の69倍ある。借金に問題はないが、中期計画は営業キャッシュフローが足りなければ借入で賄う前提で、物流拠点や機械への投資が重い。
過去には、2009年2月期に営業利益率がマイナス15.7%の赤字を出した。住宅市場が崩れると、利益が一気に消える構造は今も変わらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
新設住宅の着工戸数は、人口減と世帯数の頭打ちで長期的に減っていく。10年後は今の6〜7割まで縮むという見方が多い。一方で、省エネ基準の義務化と、2027年のZEH基準の引き上げ(断熱等級6の標準化)で、1棟あたりの断熱材の量と質は上がる。戸数の減少を単価の上昇がどこまで埋めるかが、戸建部門の分かれ目になる。
断熱材の競争は、グラスウールやロックウールなど繊維系の安価な材料と、発泡プラスチック系、そして現場発泡ウレタンの三つ巴だ。現場発泡は気密が取りやすく、高い断熱等級に向くが、材料と施工の費用が高い。有報は「高性能断熱材の新規参入」をリスクに挙げ、価格競争も激しいと述べている。
非住宅の建築物は、工場・倉庫・店舗の省エネ義務化が追い風になるが、同社は2024年から2026年にかけて、他社の前工程の遅れや原材料不足による「手待ち」で、計画より伸びが鈍った。防水は、物流施設の大型案件が寄与し、2025年は2倍になった。
原料は石油由来で、原油・ナフサの価格と為替の影響を受ける。業界ノートに断熱工事の節はなく、建設業の共通前提(物価年3%、価格転嫁の定着、人手不足)に従った。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、成長投資と株主還元の両立だ。中期計画(2024〜2026年)は、営業キャッシュフロー65〜85億円を見込み、物流拠点15億円以上、機械や防水などの投資30〜40億円、株主還元33億円以上に配分する。足りなければ借入で賄う方針だ。
配当性向は50%を目標とし、2024年11月に累進配当を導入した。2025年12月期の配当は純利益の約59%にあたる総額11億円、2026年12月期の予定は性向50%超。ただし、会社の利益が伸びないと、累進配当は重荷になる。
設備投資は2025年に5億円で、熊本・鹿児島の営業所の用地が中心。土地代と建設費の上昇で、物流拠点の予算は増えた。M&Aは見当たらない。現預金は24億円、借入は短期を中心に増えており、純有利子負債は24億円。
親会社のヒノキヤグループが議決権の約55%を持つ。親会社の方針で、株主還元や投資の優先順位が変わる可能性があり、TOB(完全子会社化)の可能性も、市場は一定程度織り込んでいる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
戸建の施工棟数は2025年に11%増え、住宅の戸数が減る中でも伸びている。省エネ基準の引き上げ(2027年に断熱等級6が標準化)で1棟あたりの施工量が増え、同社は認定施工店と自社の人員(1,153人)を増やして受け皿を作った。
防水部門が2倍に伸び、建築物では不燃断熱で他社との差を付けている。中間期の経常利益は会社予想を36%上回り、会社が通期予想を据え置いたことは、下期に余力があることを示す。
ROEは10年の中央値で17%と高く、少ない資本で稼ぐ。配当性向50%と累進配当の方針で、株主還元の意思が明確だ。親会社のヒノキヤグループ、ヤマダの販売網を使えるため、受注は安定する。
営業利益率が10%に届けば、ROEは20%に近づく。10年後の中立でも、売上は今の1.5倍、営業利益は4割増える。
現場発泡ウレタンの施工は、施工人員を育てるのに時間がかかるため、競合が急に追いつくことは難しい。この参入障壁が、価格競争の下でも利益を守る土台になる。
慎重な見方
利益率は安定しない。営業利益率は過去12年で3.9〜10.2%、2025年は8.2%で目標の10%に届かない。中期計画は2025年2月に下方修正され、2026年12月期の営業利益の目標は45億円から34億円に下がり、足元の予想は29億円と、さらに下だ。
住宅の戸数は10年で3割ほど減る。断熱の質が上がっても、価格競争が強まれば、利益は減る。グラスウールなどの安価な材料と、新規参入の高性能材が、単価を押し下げるおそれがある。
原料は石油由来で、価格と為替の変動に弱い。委託加工先6社に製造を依存しており、1社の稼働停止でも供給に響く。借入は増える傾向で、投資が続くと財務の余裕は薄れる。
親会社が議決権の約55%を持ち、少数株主の意向が通りにくい。累進配当は利益が伸びないと負担になり、減配の圧力も出る。
2024年12月期は計画の初年度から下回り、2025年も目標に届かなかった。会社の見通しが続けて甘かった事実は、10年の予想の確度を下げる要因になる。
どちらに重みを置いたか
足元の勢いとROEの高さでは強気の見方に分があるが、住宅の縮みと利益率の不安定さでは慎重な見方の指摘が正しい。そこで、中立の営業利益率は2025年の水準(8.2%)よりやや低い8.0%に置き、会社の目標(10%)は楽観側の水準とした。
確率は、やや悲観を少し厚めに置いた。会社計画が2024年、2025年と続けて下方修正されており、見通しが甘くなりやすい会社だからだ。倍率は、ROEが高い分を認めつつ、親会社の影響と住宅市場への依存を割り引いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,205 円388 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 411 円132 億円)。 今の値に割り戻すと 838 円269 億円、今との差 +9.5%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,293 円737 億円 | 550 円177 億円 | +271.7% | +14.0% | 171 円55 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,840 円592 億円 | 485 円156 億円 | +203.9% | +11.8% | 419 円135 億円 |
| 中立 | 38% | 1,404 円452 億円 | 429 円138 億円 | +139.6% | +9.1% | 697 円224 億円 |
| やや悲観 | 27% | 700 円225 億円 | 339 円109 億円 | +35.8% | +3.1% | 281 円90 億円 |
| 悲観 | 11% | 125 円40 億円 | 326 円105 億円 | −40.9% | −5.1% | 50 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,205 円388 億円 | 411 円132 億円 | +111.2% | +7.8% | 1,616 円520 億円 |
今の株価時価総額 765 円246 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 省エネ基準の引き上げで1棟あたりの断熱が増え、防水と建築物が伸び、利益率が10%を超える 利益 45 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 2,293 円737 億円
戸建は住宅の戸数が減っても、断熱等級6の標準化と気密測定の普及で、1棟あたりの施工量と単価が上がる。同社は認定施工店と自社の人員を増やし、施工棟数は1割ほど増える。
建築物は不燃断熱の差別化と、非住宅の省エネ義務化で施工面積が7割増え、手待ちの問題も解消する。防水は物流施設を中心に、10年で3倍近くに育つ。
営業利益率は10%に届き、会社の目標を達成する。原料の値上がりは、価格改定で遅れずに転嫁できる。
配当は性向50%で続き、ROEは17%台に上がる。親会社の販売網も追い風になる。
10年後の売上は今の2倍に近づき、営業利益は2倍以上に増える。ただし、これは会社が自ら掲げた目標を、一度も下方修正せずに達成し続けた場合の姿であり、実現の難しさは大きい。
- 戸建部門(アクアフォーム):数量 1.8(戸建の施工棟数(万棟、推定))× 価格 138(1棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 247 億円・営業利益 28 億円。1.79万棟 × 137.9万円/棟(今の1.40倍)、利益率 11.5%
- 建築物部門:数量 425(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.55(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 236 億円・営業利益 22 億円。425万㎡ × 0.55万円/㎡(今の1.40倍)、利益率 9.5%
- 防水部門(アクアハジクン):数量 84.0(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.71(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 7 億円。84万㎡ × 0.71万円/㎡(今の1.40倍)、利益率 12.0%
- 原料販売・副資材・機械:数量 182(外部の施工店向け供給の吹付け換算面積(万㎡、推定))× 価格 0.70(1㎡あたり供給額(万円・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 10 億円。182万㎡ × 0.7万円/㎡(今の1.40倍)、利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.21 倍、時価総額 733 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率10%超と、全部門の高成長が同時に必要。会社の計画が2期連続で下方修正されている会社には条件が重い。
やや楽観 18% 戸建が微増、建築物と防水が着実に伸び、利益率は9%台に乗る 利益 37 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 1,840 円592 億円
戸建の施工棟数は住宅の縮みを相殺して8%増える。価格は物価を少し上回る1.37倍で通る。
建築物は施工面積が5割増え、防水は2倍強になる。営業利益率は9%で、2023年12月期の10.2%には届かないが、足元(7.8%)より改善する。
原料販売は外部の施工店向けが伸び、東南アジア展開も寄与する。配当性向は50%台半ばで、自己資本は2倍強になる。
営業利益は今より9割ほど多く、ROEは15%台に保たれる。2023年12月期に付けた利益率の最高(10.2%)を、10年間の平均では下回る形で置いた。
防水と建築物の伸びが戸建の縮みを補い、全体としては緩やかに成長する。親会社の販売網による受注の安定も、この筋書きを支える。
- 戸建部門(アクアフォーム):数量 1.7(戸建の施工棟数(万棟、推定))× 価格 135(1棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 233 億円・営業利益 25 億円。1.73万棟 × 134.95万円/棟(今の1.37倍)、利益率 10.8%
- 建築物部門:数量 375(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.54(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 203 億円・営業利益 17 億円。375万㎡ × 0.54万円/㎡(今の1.37倍)、利益率 8.5%
- 防水部門(アクアハジクン):数量 69.0(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.69(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 5 億円。69万㎡ × 0.69万円/㎡(今の1.37倍)、利益率 10.0%
- 原料販売・副資材・機械:数量 169(外部の施工店向け供給の吹付け換算面積(万㎡、推定))× 価格 0.68(1㎡あたり供給額(万円・名目))→ 売上 116 億円・営業利益 8 億円。169万㎡ × 0.68万円/㎡(今の1.37倍)、利益率 6.8%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.85 倍、時価総額 583 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:戸建の施工棟数が伸び、防水が2倍になるなど、足元の勢いは強い。それでも会社の目標が続けて下方修正された点を割り引いた。
中立 38% 戸建は横ばい、建築物と防水が伸び、利益率は8%で落ち着く 利益 29 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 1,404 円452 億円
戸建の施工棟数は、住宅の戸数の減少と、断熱の質の向上が釣り合い、横ばいになる。価格は物価並みの1.34倍。
建築物は施工面積が3割増え、防水は1.8倍になる。原料や副資材は、外部の施工店向けが緩やかに伸びる。
全体の営業利益率は8.0%で、2025年(8.2%)や2026年の予想(7.8%)と同じ水準。過去の最高(10.2%)や会社の目標(10%)には届かない。
配当は純利益の6割弱で、自己資本は10年で1.9倍になる。ROEは13%台に下がるが、k(8.5%)を大きく上回る。
売上は10年で5割強増えるが、その大半は物価の上昇によるもので、実質の成長は小さい。会社の中期計画のような高い伸びは、中立では置いていない。
- 戸建部門(アクアフォーム):数量 1.6(戸建の施工棟数(万棟、推定))× 価格 132(1棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 21 億円。1.6万棟 × 131.99万円/棟(今の1.34倍)、利益率 9.8%
- 建築物部門:数量 325(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.53(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 13 億円。325万㎡ × 0.53万円/㎡(今の1.34倍)、利益率 7.5%
- 防水部門(アクアハジクン):数量 54.0(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.68(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。54万㎡ × 0.68万円/㎡(今の1.34倍)、利益率 9.0%
- 原料販売・副資材・機械:数量 150(外部の施工店向け供給の吹付け換算面積(万㎡、推定))× 価格 0.67(1㎡あたり供給額(万円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 6 億円。149.5万㎡ × 0.67万円/㎡(今の1.34倍)、利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.38 倍、時価総額 438 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の利益率(8%前後)と、住宅の縮みを断熱の質の向上が埋める筋書きに最も厚く置いた。
やや悲観 27% 住宅が縮み、価格競争で利益率が6%に落ち、成長が止まる 利益 17 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 700 円225 億円
戸建の施工棟数は住宅の縮みで1割以上減り、価格は物価の上昇に届かず1.28倍にとどまる。グラスウールなど安価な材料と、新規参入の高性能材が単価を押し下げる。
建築物は手待ちの問題が長引き、施工面積は1割増にとどまる。防水は競争が強まり、利益率が6%まで下がる。
営業利益率は6.0%で、2021年12月期の5.9%に近い水準。累進配当は維持するが、利益を超える年も出て、借入が増える。
営業利益は今より1割ほど減り、会社が目標に置いた10%は遠のく。原料の値上がりを転嫁しきれず、粗利率は20%台前半に下がる。ROEは9%台に落ち、kとほぼ同じになる。
- 戸建部門(アクアフォーム):数量 1.4(戸建の施工棟数(万棟、推定))× 価格 126(1棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 178 億円・営業利益 13 億円。1.41万棟 × 126.08万円/棟(今の1.28倍)、利益率 7.5%
- 建築物部門:数量 275(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.51(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 8 億円。275万㎡ × 0.51万円/㎡(今の1.28倍)、利益率 5.8%
- 防水部門(アクアハジクン):数量 42.0(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.65(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。42万㎡ × 0.65万円/㎡(今の1.28倍)、利益率 6.0%
- 原料販売・副資材・機械:数量 130(外部の施工店向け供給の吹付け換算面積(万㎡、推定))× 価格 0.64(1㎡あたり供給額(万円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。130万㎡ × 0.64万円/㎡(今の1.28倍)、利益率 4.5%
倍率:ROE 9% は k とほぼ同じ。式では 1÷k の 11.8 倍が上限に近く、価格競争の強まりを割り引いて 12.12 倍に置いた。
確率:価格競争が強い市場で、原料高の転嫁も遅れる。会社の計画が続けて未達になっているため、やや悲観を厚めにした。
悲観 11% 住宅の着工が崩れ、価格競争が激しくなり、利益がほぼ消える 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 125 円40 億円
戸建の施工棟数は3割以上減り、価格は物価の上昇に大きく届かず1.12倍。断熱材そのものが値下がりし、利益率は5%まで落ちる。
建築物は他社の前工程の遅れが続き、施工面積は2割減る。防水は大型案件が一巡し、横ばいに戻る。
営業利益はいまの3割ほどに減る。累進配当は撤回され、借入が増え、親会社の意向で再編が検討される。2009年2月期のような赤字ではないが、成長会社の評価は失われる。
施工人員を増やした分が固定費として重くなり、拠点の統廃合や人員の見直しを迫られる。委託加工先の稼働停止などの供給の混乱が重なる可能性もあり、立て直しには数年かかる。
- 戸建部門(アクアフォーム):数量 1.0(戸建の施工棟数(万棟、推定))× 価格 110(1棟あたり売上(万円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 6 億円。1.04万棟 × 110.32万円/棟(今の1.12倍)、利益率 5.0%
- 建築物部門:数量 200(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.44(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 89 億円・営業利益 3 億円。200万㎡ × 0.44万円/㎡(今の1.12倍)、利益率 3.5%
- 防水部門(アクアハジクン):数量 27.0(施工面積(万㎡、推定))× 価格 0.57(1㎡あたり売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。27万㎡ × 0.57万円/㎡(今の1.12倍)、利益率 1.0%
- 原料販売・副資材・機械:数量 91.0(外部の施工店向け供給の吹付け換算面積(万㎡、推定))× 価格 0.56(1㎡あたり供給額(万円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。91万㎡ × 0.56万円/㎡(今の1.12倍)、利益率 2.5%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k の 11.8 倍)の約 6 割を置いた。優良でなくなった後の利益で、自己資本の厚さは根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7 倍・時価総額 40 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:住宅の着工が崩れ、価格競争が激化する構造的な負け筋。過去に赤字を出した実績があり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
戸建部門(アクアフォーム)
新築の戸建住宅に硬質ウレタンフォームを吹き付けて断熱する工事。認定施工店と自社施工。売上の47%。
| 数量戸建の施工棟数(万棟、推定) | 価格1棟あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.6 | 99 | 158 | 17 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 132 | 211 | 21 |
取り方:戸建部門の売上157.7億円を、施工棟数の推定1.6万棟で割り、1棟あたり約98.5万円とした(棟数は非開示。施工棟数は2025年に前年比11.1%増と開示)。数量は実質、物価の上昇と等級の上昇は価格に入れる。部門利益は非開示のため、全社の営業利益27.7億円を、戸建10.5%・建築物7.3%・防水7.9%・原料等6.2%で配分し、共通費1.2億円を調整に入れた。
建築物部門
工場・倉庫・店舗などの非住宅に、不燃性のあるアクアモエンNEOなどを吹き付ける工事。売上の29%。
| 数量施工面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 0.40 | 99 | 7 |
| 10 年後 中立 | 325 | 0.53 | 173 | 13 |
取り方:建築物部門の売上99.0億円を、施工面積の推定250万㎡で割り、1㎡あたり約0.40万円とした(面積は非開示)。数量は実質、物価の分は価格に入れる。他社の前工程の遅れによる手待ちで、足元の伸びは4.2%にとどまる。
防水部門(アクアハジクン)
ポリウレア防水材による屋上・屋根の防水工事。大型物流施設や全国チェーンの店舗が中心。売上の5%。
| 数量施工面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 0.51 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 54.0 | 0.68 | 37 | 3 |
取り方:防水部門の売上15.2億円を、施工面積の推定30万㎡で割り、1㎡あたり約0.51万円とした(面積は非開示)。2025年に2倍超に伸びた。損益分岐点は売上5〜6億円と会社が説明している。
原料販売・副資材・機械
外部の施工店向けの原料販売、吹付機械、副資材の販売。売上の19%。
| 数量外部の施工店向け供給の吹付け換算面積(万㎡、推定) | 価格1㎡あたり供給額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 130 | 0.50 | 65 | 4 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.67 | 100 | 6 |
取り方:原料販売20.7億円と、副資材・機械などの商品販売44.2億円の合計64.9億円を、吹付け換算の供給面積の推定130万㎡で割り、1㎡あたり約0.50万円とした(面積は非開示の推定)。数量は実質、物価の分は価格に入れる。
リスクと懸念
住宅の着工戸数の減少
新設住宅は人口減で長期的に縮む。断熱の質が上がっても、戸数の減少を単価の上昇が埋められなければ、戸建部門(売上の47%)が減る。
価格競争と新規参入
グラスウールなどの安価な材料や、高性能断熱材の新規参入で、単価が下がる。有報は新規参入をリスクに挙げ、中期計画も価格競争の激化を認めている。
原料価格と委託加工先
原料は石油由来で、原油・ナフサと為替の影響を受ける。製造を任せる委託加工先は6社で、1社の稼働停止でも供給が止まる。
施工人員の確保
施工人員は1,153人(2025年6月)まで増やしたが、技能実習生に頼る部分が大きい。確保や定着に失敗すれば、受注を取りこぼす。
建築物部門の遅れ
2024年から他社の前工程の遅れや原材料不足による「手待ち」が続き、通期予想は見直された。非住宅の着工の遅れが長引けば、中期計画の柱が揺らぐ。
親会社の影響と少数株主
ヒノキヤグループが議決権の約55%を持つ。配当方針や投資の優先順位、完全子会社化の価格など、少数株主に不利な決定が出る可能性がある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が9%を超えて続き、会社目標の10%に近づいたら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。2026年12月期の予想(7.8%)を上回ったかを見る。
- 戸建の施工棟数が前年を割り込んだら
- 住宅の縮みが断熱の質の向上を上回り始めたと見て、やや悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が6%を割ったら
- 価格競争か原料高の転嫁失敗が構造化したと見て、悲観側へ確率を移す。
- 建築物部門の売上が前年比で2桁伸び、手待ちが解消したら
- 建築物の伸びを上方に見直し、中立の施工面積を引き上げる。
- 配当が累進のまま利益を超えるか、借入が増えて財務が悪化したら
- k の借金の項に加点し、悲観側へ確率を寄せる。
- 親会社がTOBや完全子会社化を発表したら
- 価格が少数株主に公正かを確かめ、確率を見直す。
見ておくもの
- 営業利益率(会社予想7.8%、目標10%)
- 戸建の施工棟数と1棟あたりの単価
- 建築物部門の売上と、手待ちの解消
- 防水部門の売上(2025年は15億円)
- 施工人員の数と、借入・現預金の増減
- 親会社ヒノキヤグループの持ち分と方針
倍率と資本コストの決め方
戸建は施工棟数×1棟あたりの金額、建築物と防水は施工面積×1平方メートルあたりの金額、原料・副資材は実質売上×物価で積み、数量は実質、価格は物価3%込みの名目(10年1.34倍)にした。k は基本 7.5% に quality +1.0% の 8.5%。中立の ROE は 13% で k を上回り、式では PER 13 倍台だが、住宅への依存と親会社の影響を割り引いて 12.5 倍を置いた。今の株価は市場の見方を知るためにだけ見て、倍率の根拠にはしていない。悲観は稼ぐ力から置き、過去の PBR は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→16.21 倍・やや楽観 PER 13.5→15.85 倍・中立 PER 12.5→15.38 倍・やや悲観 PER 10.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0%(循環 +0.5、値決め力 +0.5)を足して k 8%。準大手ゼネコン(8.2〜8.8%)と同じ水準。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。