結論
世紀東急工業は、道路の舗装工事とアスファルト合材(舗装に使う混ぜ物)の製造を手がける中堅だ。2026年3月期は売上953億円、営業利益64億円。純現金を持ち、東急建設が24%を握る安定株主でもある。
筆者の結論はこうだ。今の値段は、利益が横ばいで続く姿を織り込んでなお、やや高い。割安と言える材料は見当たらない。
理由は単純だ。10年前の営業利益は45億円で、今も64億円しかない。この間に物価は上がったのに、利益は実質で伸びていない。直近2年の改善は合材の採算が戻った効果が大きく、山の一部と筆者は見る。
舗装需要そのものは落ちない。橋やトンネルの老朽化で補修は増え、高速道路会社の発注も底堅い。ただ、合材の出荷量は人口減で細り続け、工場は余っている。量が細るぶんを値上げで取り返せるかが、この会社の10年を決める。
還元は配当が中心だ。純資産に対する配当率6%を目標に掲げ、自社株買いはここ2年していない。堀(他社がまねできない強み)は薄いが、財務の安全域は厚い。大きく傷つきにくい会社だが、買って大きく報われる値段ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は優良株の入り口に立てない。
まず、10年後も事業は残る。道路は誰かが直し続ける。この点は安心できる。
次に、堀の広さだ。合材は地域の寡占だが、量が細り、公共の入札で値段が決まる。値決めの力は弱い。
三つ目は、オーナーに残る利益だ。工場の更新や機械の入れ替えに、毎年20億円前後が要る。営業の現金収入が114億円と大きく見えても、実際は運転資金の動きによる。会計の利益のほうが、実力に近い。
四つ目は、経営の資本の使い方だ。無駄な買収をせず、持ち合いを手放し、配当に回す。この姿勢は評価できる。
最後に、安全域だ。純現金は78億円あり、借り入れは軽い。悲観の筋書きでも、事業の価値と資産の売却値で、大きな穴にはなりにくい。
しかし、10年でならすと、利益の伸びは物価並みにとどまる。資本コストに比べて、ROEが高くない。こうした会社に、安全域を取れるだけの値段は付いていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は二つある。工事と、合材の製造販売だ。
建設事業は売上の約8割を占める。道路や空港、駐車場の舗装工事が中心で、橋の床版や土木工事も受ける。発注者は東日本・中日本・西日本の高速道路会社、阪神高速、国土交通省の地方整備局、自治体などだ。単体の工事高は、官公庁より民間のほうが2倍ほど大きい。物流倉庫や工場、商業施設の舗装も多く、公共だけの会社ではない。
舗装資材製造販売事業は、全国の合材工場でアスファルト合材と乳剤をつくって売る。自社の工事に回す分と、他社への外販の分がある。2026年3月期の利益は約30億円と前期の約2倍に戻り、全社の利益を支えた。原料のストレートアスファルトは原油に連動して動くため、採算は値上げの通り方に左右される。
子会社は地域の舗装会社が多い。2019年に舗道工業、2020年に日東道路を全株取得した。大きな買収はなく、地域の補強を積み重ねる型だ。海外はミャンマーに拠点があるが、全体への影響は小さい。
従業員は連結で約1,200人。合材工場の更新に約36億円を投じる計画で、設備は自己資金でまかなう。
優良さと弱いところ
堀は薄い。ただ、足場は固い。
舗装は工事も合材も、地域で顔を知られた会社が受ける仕事だ。合材は運べる距離に限りがあるため、工場がある地域では一定の強みを持てる。世紀東急は全国に工場を持ち、高速道路会社との付き合いも長い。ここまでは堀と言える。
しかし、公共工事は入札で値段が決まる。合材は原油と骨材の値上がりを転嫁するのに時間がかかる。2023年3月期には営業利益が27億円まで落ち、純利益は11億円に沈んだ。値決めの力が弱いことを示した出来事だ。
同業の大手8社のうち、6社がゼネコンや石油元売りなどの子会社だ。親から仕事が回る会社と、独立系で戦う会社の差は、長い目で響く。世紀東急は東急建設が24%を持つが、完全子会社ではなく、仕事の保証もない。
資本の使い方は誠実だ。株主への還元は配当が主で、DOE(純資産に対する配当の率)6%を目標にする。上場株式の持ち合いはゼロになり、純現金78億円を抱える。借り入れは65億円と軽い。弱点は、ROE(自己資本利益率)が資本コストをかろうじて上回る程度で、資本の稼ぎ力が高くないことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舗装は、国内の公共インフラを維持するための、地味で息の長い市場だ。道路の延長は伸びないが、傷んだ舗装は直し続けなければならない。高速道路会社は更新工事に大きな予算を組み、橋の補修も増える。工事の総量は、緩やかに伸びるか横ばいが続くと筆者は見る。
問題は合材の側だ。人口が減る地域では道路の新設が止まり、出荷量が細っている。新潟県では2013年から2024年度にかけて、合材の出荷量が4割ほど減った。大手の社長は、全国の工場の稼働は1990年代の半分で、設備は8割が残ると語っている。工場が余ると、値引きの誘惑が生まれる。
業界は再編が進んだ。NIPPOはENEOSの手で非上場になり、前田道路はインフロニアの傘下に入り、日本道路は清水建設の子会社になった。鹿島道路、大成ロテック、大林道路は、親のゼネコンの完全子会社だ。大手8社のうち、独立系は世紀東急と東亜道路の2社しか残っていない。
国内の舗装工事の市場は1.5兆円ほどとみて、世紀東急のシェアは6%ほどだ。トップのNIPPOは4,600億円を売り、世紀東急の5倍近い。規模の差はあるが、地域ごとに戦う仕事なので、規模がそのまま勝ちに直結するわけではない。
人手不足と資材高は、全社にのしかかる。値上げが通る間は利益が守られる。通らなければ、利益は薄くなる。
資本政策と M&A
還元の方針は明確だ。中期経営計画(2024〜2026年度)では、純資産に対する配当率(DOE)6%を目標にする。2026年3月期は配当性向は5割台半ばだ。以前は配当性向100%を暫定の方針としていたが、2025年3月期で終えた。自社株買いは2022年3月期の25億円前後が最後で、ここ2年はゼロだ。
政策保有株は整理がほぼ終わった。上場株式の保有はゼロ、非上場株は12銘柄で2億円に満たない。持ち合いで資本が眠る問題は、この会社にはない。
東急建設が24%を持つ筆頭株主で、東急も4%を持つ。東急建設は同社を持分法の関連会社にしている。親会社ほどの縛りはないが、再編の相手になりうる位置だ。業界ではNIPPOや日本道路、前田道路が相次いで親会社の傘下に入った。筆者は、この会社にも同じ流れが来る可能性を15%前後とみる。買収が起きれば、プレミアムが乗る。ただ、本質価値の計算には入れない。
過去には、ストラテジックキャピタルが2023年4月に15.6%まで買い増した例がある。その後は4.99%に下がり、今は主役ではない。
買収は地域の舗装会社を数社ずつ加える型で、大きな賭けはしていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
舗装は需要が消えない仕事だ。橋もトンネルも老朽化し、補修の仕事は増える。高速道路会社は更新に大きな予算を付けている。民間でも、物流倉庫やデータセンターの舗装が伸びる。単体の工事高の3分の2は民間だ。
合材はもう底を打った。2026年3月期は利益が約30億円と、前期の約2倍に戻った。原料高の転嫁が進み、工場の更新も済めば、この水準は保てる。会社は2030年に営業利益80億円を掲げる。物価が3%続けば、名目の利益は自然に膨らむ。
財務は余裕がある。純現金は78億円、自己資本比率は52%だ。持ち合い株は消え、配当は純資産の6%を約束している。景気が悪くなっても、配当が守られる安心感は大きい。
業界の再編も追い風だ。NIPPO、前田道路、日本道路が親の傘下に入り、独立系は希少になった。東急建設が24%を持つこの会社は、再編の相手にもなりうる。仮に買収が来れば、プレミアムが付く。そうでなくても、利益が80億円に届けば、時価総額は今の1.5倍に近づく。
慎重な見方
この会社の利益は、10年間まったく伸びていない。10年前の営業利益は45億円、今は64億円だ。その間に物価は3割以上上がったので、実質では縮んでいる。ROEも10%前後で、資本コストをかろうじて上回る程度だ。
足元の改善も、数字の割に脆い。合材が約2倍に戻ったのは、2025年3月期が低すぎたからだ。2023年3月期には営業利益が27億円、純利益が11億円まで落ちた。原油と骨材の値上がりを、価格にすぐ載せられなかった。この癖は直っていない。
合材の量は構造的に細る。人口減で道路の新設が止まり、全国の工場は1990年代の半分しか動いていない。工場が余ると、値引きの競争になる。ゼネコン系列の道路会社は、親会社から仕事をもらえる。独立系は、入札で戦うしかない。
公共工事は予算次第だ。国土強靱化の予算が縮めば、発注が先送りになる。技能者も減る。工事を受けたくても、人が足りない。
配当の約束は重い。純資産の6%を払い続ければ、自己資本は積み上がらず、利益が伸びない中で株主への還元だけが先に減る恐れがある。
どちらに重みを置いたか
強く出るのは慎重な見方だ。利益が10年伸びていないという事実は、強気の筋書きを重くする。合材の量が細るのも、構造として動かない。
一方で、悲観を深く置く理由は弱い。純現金があり、借り入れは軽く、配当の約束も崩れていない。需要が消える業界ではない。
そこで確率は、中立に4割弱を置き、やや悲観を楽観側と同じ水準にそろえた。悲観は1割にとどめる。強気の筋書きは、物価が伸びを支えるぶん成り立つが、利益率が山に戻るには証拠が足りない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,615 円592 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 786 円288 億円)。 今の値に割り戻すと 1,283 円471 億円、今との差 −11.6%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,828 円1,037 億円 | 1,036 円380 億円 | +166.1% | +10.3% | 309 円113 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,296 円842 億円 | 955 円350 億円 | +123.9% | +8.4% | 715 円262 億円 |
| 中立 | 38% | 1,820 円667 億円 | 873 円320 億円 | +85.4% | +6.4% | 1,023 円375 億円 |
| やや悲観 | 22% | 700 円257 億円 | 586 円215 億円 | −11.4% | −1.2% | 283 円104 億円 |
| 悲観 | 10% | 386 円141 億円 | 327 円120 億円 | −50.9% | −6.9% | 71 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,615 円592 億円 | 786 円288 億円 | +65.4% | +5.2% | 2,402 円881 億円 |
今の株価時価総額 1,452 円532 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 舗装需要と値上げが続き、利益が80億円台後半に載る 利益 72 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,828 円1,037 億円
老朽化した橋や道路の補修が増え、高速道路会社の更新工事が続く。民間の物流施設やデータセンターの舗装も取れ、施工量は今の水準をほぼ保つ。
合材は原料の値上がりを価格に転嫁でき、工場の更新で採算が上がる。営業利益率は建設で1割強、合材で1割近くに乗り、会社が2030年に掲げる80億円を超える。独立系として地域の舗装会社を数社加え、受注の足場も広がる。
配当は純資産の6%を守り、余った現金の一部は自社株買いに回る。ROEは10%台に乗る。ただ、堀が薄いため、資本コストを大きく上回る姿ではない。10年目の物価は今の1.4倍近くになり、名目の利益を押し上げる。
- 建設事業(舗装・土木):数量 124(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.28(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 1,030 億円・営業利益 108 億円。施工量1.0倍、価格1.38倍、営業利益率10.5%
- 舗装資材製造販売事業:数量 252(合材等の出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 1.79(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 451 億円・営業利益 43 億円。出荷量0.98倍、価格1.38倍、営業利益率9.5%
- その他:数量 62.4(事業に投じた資産の規模(億円。賃貸不動産や関連会社の資産額。推定))× 価格 0.27(資産1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。規模1.2倍、営業利益率22%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.4 倍、時価総額 1,037 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:民間の物流施設や強靱化の予算が重なり、合材の値上げも通る姿。ただ、利益率が山に戻るには10年の持続が要り、証拠が足りないので1割弱にとどめる。
やや楽観 22% 補修需要が続き、利益は物価並みに伸びる 利益 62 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 2,296 円842 億円
舗装の補修需要は底堅い。工事の量はわずかに減る程度にとどまり、高速道路会社の更新工事も続く。合材は転嫁が遅れながらも進み、利益率は今より少し下がる。
建設事業は営業利益率が9〜10%の水準を保つ。合材は原料高の波を受けながら、8%台で安定する。民間の物流施設の舗装が穴を埋める。
営業利益は今の約1.4倍で、物価の伸びをやや上回る。還元は配当を中心に続き、自己資本は緩やかに増える。ROEは10%に届かないが、資本コストは上回る。会社の中期計画の延長にあたる筋書きで、無理のない姿だ。
公共の予算は大きく伸びないが、削られもしない。高速道路会社は更新の計画を前倒しで進め、舗装の打ち替えが途切れない。世紀東急は地域の工場網を生かし、仕事を安定して受け続ける。
- 建設事業(舗装・土木):数量 122(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.16(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 995 億円・営業利益 99 億円。施工量0.98倍、価格1.36倍、営業利益率9.9%
- 舗装資材製造販売事業:数量 246(合材等の出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 1.77(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 436 億円・営業利益 38 億円。出荷量0.96倍、価格1.36倍、営業利益率8.8%
- その他:数量 57.2(事業に投じた資産の規模(億円。賃貸不動産や関連会社の資産額。推定))× 価格 0.27(資産1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。規模1.1倍、営業利益率20%
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.58 倍、時価総額 842 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修の足場が固く、会社の中期計画の延長にあたる。2割強を置く。
中立 38% 量は細り、価格で支え、利益は物価並みに動く 利益 52 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,820 円667 億円
施工量は人手の制約と地方の道路の減少で、今より約5%減る。合材の出荷量は約7%減る。量の減りは、物価の値上げで補う。補修の需要は残るが、新設は戻らない。
建設事業の営業利益率は9%台、合材は8%で落ち着く。合材は今年の採算が高めなので、今より少し戻すと見る。全社の営業利益は74億円で、物価分を除けば今より小さい。
配当は純資産の6%を保ち、自社株買いは大きくならない。純利益は52億円、ROEは8%台前半にとどまる。堀が広がらず、資本の稼ぐ力も変わらない会社の姿だ。純現金は運転資金の中で上下し、財務の余裕は今と同じ程度に保たれる。
- 建設事業(舗装・土木):数量 118(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 8.04(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 950 億円・営業利益 88 億円。施工量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率9.3%
- 舗装資材製造販売事業:数量 239(合材等の出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 1.74(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 416 億円・営業利益 33 億円。出荷量0.93倍、価格1.34倍、営業利益率8.0%
- その他:数量 57.2(事業に投じた資産の規模(億円。賃貸不動産や関連会社の資産額。推定))× 価格 0.27(資産1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。規模1.1倍、営業利益率20%
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.83 倍、時価総額 667 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:二人の議論の落としどころで最も厚く置く。量は細るが価格で支え、利益は10年の横ばいから物価並みに動く姿。慎重な見方が強いので、確率を楽観側にはずらさない。
やや悲観 22% 値引き競争で、利益が今を大きく下回る 利益 27 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 700 円257 億円
原油が上がり、転嫁が遅れる。合材の出荷量は約12%減り、工場の稼働が下がって値引きが広がる。系列の道路会社との価格競争も強まる。
建設も、人手不足で受けられる量が減る。入札では価格競争が強まり、営業利益率は7%台に下がる。合材は6%まで薄くなる。2023年3月期の落ち込みが、もう一度来るような姿だ。
全社の営業利益は40億円で、2022年3月期から2024年3月期の水準に近い。配当の約束を保つため自己資本は増えず、ROEは5%前後に落ちる。資本コストを下回るので、積み上げた自己資本が稼ぎに結びつかない。
- 建設事業(舗装・土木):数量 112(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 7.80(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 874 億円・営業利益 66 億円。施工量0.90倍、価格1.30倍、営業利益率7.5%
- 舗装資材製造販売事業:数量 226(合材等の出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 1.66(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 376 億円・営業利益 23 億円。出荷量0.88倍、価格1.28倍、営業利益率6.0%
- その他:数量 52.0(事業に投じた資産の規模(億円。賃貸不動産や関連会社の資産額。推定))× 価格 0.25(資産1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。規模1.0倍、価格1.25倍、営業利益率15%
倍率:ROE 5.1%(純利益 27 億円 ÷ 自己資本 532 億円)。ROE が k 8.0% に届かないので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍で、伸びても価値は増えない。値引き競争で利益が今を下回る局面なので、上限の 8 割弱の 9.5 倍に置いた。
確率:原料高の転嫁が遅れ、工場余りで値引きが続く姿。2023年3月期に実際に起きており、2割強を置く。
悲観 10% ゼネコン系列に囲まれ、合材と入札で構造的に負ける 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 386 円141 億円
合材の出荷量が3割近く減り、工場の統廃合が遅れて稼働が下がる。ゼネコン系列の道路会社が、親会社の仕事を囲い込んで入札でも低い値段を付ける。原料高を価格に載せられない年も続く。
建設の利益率は4%、合材は3%まで落ちる。営業利益は一桁億円で、配当の約束は維持できず、減配に追い込まれる。
価値は稼ぐ力ではなく、工場や用地の売却値と純現金で測る水準まで下がる。ただし純現金と軽い借り入れで、存続の危機には至らない。再編で親会社の傘下に入る道も残る。独立系の弱さが全面に出る、構造的な負けの筋書きだ。
株主の動きも不安定になる。東急建設が持ち株を整理したり、物言う株主が再び現れたりすれば、経営は目先の対応に追われる。人手が減るなかで、新しい機械や工場への投資も先送りになり、競争力の低下に拍車がかかる。
- 建設事業(舗装・土木):数量 99.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定))× 価格 7.20(1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価))→ 売上 716 億円・営業利益 29 億円。施工量0.80倍、価格1.20倍、営業利益率4%
- 舗装資材製造販売事業:数量 185(合材等の出荷量(万トン、実質。推定))× 価格 1.50(1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む))→ 売上 276 億円・営業利益 8 億円。出荷量0.72倍、価格1.15倍、営業利益率3%
- その他:数量 46.8(事業に投じた資産の規模(億円。賃貸不動産や関連会社の資産額。推定))× 価格 0.22(資産1億円あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。規模0.9倍、価格1.10倍、営業利益率12%
倍率:稼ぐ力は純利益 3 億円と小さく、k 8.0% で割っても 40 億円ほど。床は純現金と売れる資産の税後で測る。今の自己資本 442 億円に対する PBR 0.32 倍(時価総額は約 141 億円)に置いた。営業利益が小さいので EV ÷ 営業利益は意味がない。
確率:合材の値引き、系列の囲い込み、原料高が重なる構造的な負け。純現金と軽い借り入れで全てが重なる確率は低いので、1割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設事業(舗装・土木)
道路・空港・駐車場などの舗装工事と土木工事。高速道路会社や国、自治体のほか、民間の物流施設や工場の舗装も受ける。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・機械・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 124 | 6.00 | 746 | 73 |
| 10 年後 中立 | 118 | 8.04 | 950 | 88 |
取り方:有報のセグメント(セグメント間取引を含む)は建設事業の売上746億円・利益72.5億円。労務量の開示はないので、舗装は材料と機械の比率が高いとみて1人日あたり売上を6.0万円と置き、約124万人日に換算した。物価の分は価格に入り、数量は実質の量。
舗装資材製造販売事業
道路舗装に使うアスファルト合材と乳剤の製造・販売。全国の合材工場が稼ぎ場で、自社の工事向けと外販の両方がある。
| 数量合材等の出荷量(万トン、実質。推定) | 価格1トンあたり売上(万円・名目。燃料・骨材の転嫁を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 257 | 1.30 | 334 | 30 |
| 10 年後 中立 | 239 | 1.74 | 416 | 33 |
取り方:有報のセグメント売上は333.7億円・利益30.0億円(自社の工事向けの内部売上を含む。外部向けは約205億円)。出荷量の開示はないので、1トンあたり約1.3万円と置いて約257万トンに換算した。利益は前期の約2倍に戻した直後の高い水準。
その他
不動産賃貸や小さな関連事業。全体に占める割合は小さい。
| 数量事業に投じた資産の規模(億円。賃貸不動産や関連会社の資産額。推定) | 価格資産1億円あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.0 | 0.20 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 57.2 | 0.27 | 15 | 3 |
取り方:有報のその他の売上10.4億円・利益2.2億円。資産の規模を約52億円と推定し、1億円あたり0.2億円の売上と置いた。調整はセグメント合計から連結営業利益64億円を引いた約-40億円で、全社費用とセグメント間の利益消去にあたる。
リスクと懸念
合材の量が構造的に細る
人口が減る地域では新しい道路が止まり、合材の出荷量が細っている。工場は余り、稼働を保つための値引きが起きやすい。量の減りを物価の値上げで取り返せるかが、利益の分かれ目になる。
原油と骨材の値上がりを転嫁できない
アスファルトの原料は原油に連動する。2023年3月期は転嫁が遅れ、営業利益が27億円まで落ちた。公共工事は入札で値段が決まるため、同じことがまた起きうる。
独立系で戦う弱さ
大手8社のうち、世紀東急と東亜道路以外は親会社の傘下にある。ゼネコン系列は親から仕事が回る。独立系は入札だけが頼りで、値引き競争になれば利益が先に削られる。
人手不足で工事を取りきれない
舗装の技能者は高齢化で減っている。受注が増えても、施工できる量に上限がある。人件費の上昇を価格に載せられなければ、利益率は下がる。
配当の約束が重い
DOE6%を目標にするため、利益が減っても配当を下げにくい。シンジケートローンには財務制限条項があり、利益が大きく落ちると借り入れの条件が厳しくなる。
東急グループとの取引と株主の動き
東急建設が24%を持ち、東急とも取引がある。親会社に準じた関係だが、仕事の保証はない。過去にはアクティビストが15%まで買い増した例もあり、株主構成が動く余地は残る。
今後の分かれ目
- 合材の出荷量が地域ごとに下げ止まる
- 工場の余りが解消に向かい、値引きの圧力が弱まる。合材の利益率は8%台を保てる見通しで、中立から強気の側に確率を寄せてよい。
- 原油が急騰し、転嫁が数四半期遅れる
- 2023年3月期の再現になる。営業利益は30億円台に落ち、中立の筋書きから、やや悲観の側に振れる。
- 東急建設や東急が持ち株を動かす、または買収の提案が出る
- 再編のプレミアムが乗る。ただ、独立した事業の価値は変わらず、親の傘下に入れば堀は広がる可能性がある。
- 営業利益が80億円(会社の2030年目標)に前倒しで届く
- 利益率が山に戻る強気の筋書きに近づく。ただし物価で膨らむ部分を除いて、実質の伸びがあるかを見る。
- 国土強靱化の予算が縮み、公共の発注が先送りされる
- 補修は先送りされ、施工量が減る。人手を抱えたまま利益が薄くなり、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 舗装資材の営業利益率(9%を保てるか)
- 合材の出荷量(地域別の前年比)
- ストレートアスファルトの価格と販売価格の差
- DOE6%を守るか、自社株買いを再開するか
- 東急建設・東急の持ち株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
セグメントは施工量(万人日)と1人日あたり売上、合材の出荷量と1トンあたり売上で積み、物価3%を価格に入れ、数量は合材の細りと人手の制約から0.93〜0.95倍とした。倍率は k 8.0%(基本 7.5% に値決め力 +0.25%、寿命 +0.25%)と g から式で出し、今・過去・同業の市場の倍率は見ていない。中立の PER は ROE が k をわずかに上回るので下限の 1÷k に落ちる。今の株価と比べたのは最後だけだ。悲観の PBR は今の自己資本に掛け、有形固定資産の売却見込みと純現金でも確かめた。営業利益は家賃を費用に入れた今と同じ形(新リース会計基準の適用前の形)でそろえた。調整(全社費用とセグメント間の利益消去)は約-40億円で、10年後は売上の伸びに合わせて増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→14.4 倍・やや楽観 PER 12.8→13.58 倍・中立 PER 12.5→12.83 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。