結論
佐藤渡辺は、道路舗装の工事とアスファルト合材の製造販売を営む中堅の会社だ。有利子負債はなく、現預金は 64 億円、自己資本比率は 7 割に近い。
筆者の結論は、やや割高だ。営業利益は 11 億円前後、利益率は 3% 前後で、自己資本 229 億円に対する ROE は 4% にとどまり、資本コストを下回る。現金は厚いが、その一部は工事の支払いと回収の時間差で、すべてが余っているわけではない。
2026 年 3 月期は売上が 17% 減り、受注と繰越も 14% 減った。今期は売上 380 億円、営業利益 11 億円の予想で、回復は穏やかにとどまる。
還元は配当性向 56% で、配当は 2026 年度まで下げない方針だ。2026 年には自己株の市場外買付けも実施した。ただし筆頭株主の佐藤工業(20.8%)を含め、同業・取引先の持ち合いが厚い。
公共の舗装需要は底堅いが、利益率が上がる材料は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅実だが、資本が眠った会社」だ。
自己資本は時価総額の 2 倍ある。だが、その中身は現預金、完成工事の未収入金、土地と工場で、利益を生む力は小さい。ROE は過去 10 年の中央値で 6% 台、足元は 4% で、資本コストの 7.8% を下回る。
事業の経済性は中の下だ。公共の入札で価格が決まり、原価の上昇は後から転嫁される。自社の合材工場は強みだが、競合も同様に持つ。
経営の資本配分は穏やかで、配当性向 56%、自社株取得も実施した。だが、持ち合いが厚く、積み上がる現金を株主に戻す強い動機は見えない。
安全域は、無借金と現金の厚さにある。ただし、現金の一部は工事の資金繰りに要るため、すべてを余りと数えなかった。
株主に配るか、現金のまま積むかの判断は、持ち合い構造の中で経営に委ねられている。10 年後に現金がさらに積み上がっていれば、その価値は株主に届かない恐れがある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、道路舗装の工事だ。2026 年 3 月期の売上 337 億円のうち、工事部門が 286 億円、製品等の販売部門が 51 億円を占める。
工事は、国・自治体・高速道路会社などの舗装の新設と補修が中心と見る。需要は老朽道路の補修と防災が支え、工事の大半は公共の発注だ。受注残は 146 億円で、売上の 5 か月分ほどだ。
製品等の販売は、自社の合材工場で作るアスファルト合材などで、自社の工事に使うほか外部へも売る。原油と骨材の価格が原価に響く。
営業利益は 11 億円、利益率は 3.2%。ほかに経常で 3 億円の営業外収益があり、現金の利息や持ち合い株の配当が主だ(推定)。
2026 年 10 月に完全子会社のSWテクノ(建設機械のレンタル)を吸収合併し、グループの管理を簡素にした。工事部門と製品部門の利益の内訳は開示されず、数量と単価も開示がない。面積(万㎡)と合材量(万t)は筆者の推定だ。
社員は連結で 530 人ほどで、多くは現場の施工と合材工場の運転に関わる。自社で合材を作れるため、工事の品質と納期を自分で管理でき、外部の合材に頼る同業より価格調整の余地がある。ただし合材工場は設備の維持費が重く、稼働が落ちると固定費が利益を圧迫する。
優良さと弱いところ
堀は、工事の技術力と自社の合材工場、公共の発注先との長い取引にとどまる。ただし、舗装の工事は入札で、価格を自分で決める力は弱い。
良い点は三つある。第一に、無借金で現預金が厚く、自己資本比率が 7 割に近い。第二に、公共の舗装補修という、景気に左右されにくい需要を持つ。第三に、配当を据え置く方針で、還元の姿勢が見える。
悪い点も三つある。第一に、利益率の低さだ。営業利益率は過去 10 年で 1.6% から 6.7% の間を動き、足元は 3% 前後。2002〜2006 年には赤字が続き、自己資本が 4 割減った前歴がある。第二に、原油・骨材・人件費の上昇が、入札価格に転嫁しきれない点。第三に、同業や取引先の持ち合いが厚く、資本の使い方に外から圧力が届きにくい点だ。
筆者は、事業としては堅実だが、資本の効率は低いと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
道路舗装は、成熟した公共依存の産業だ。
需要は、道路の補修・維持と防災の予算に直結する。国土強靱化の予算が続き、道路の老朽化が進むため、新設より補修が増える。需要の大きな落ち込みは考えにくい。
一方で、供給側の制約が重い。作業員の高齢化と人手不足で、施工できる量に上限がある。賃金は物価以上に上がり、入札の予定価格への反映は遅れる。
合材は、原油(アスファルト)と骨材の価格で原価が動き、発注者との価格調整の仕組みが利益を左右する。
同業は、大手の準大手から地域の中堅まで多く、受注は価格競争になりやすい。業界内では、持ち合いと協力関係が根づいている。
工事の売上は、年度の発注の時期と天候で、四半期ごとに大きく動く。
全国では、道路の維持修繕に予算が回り、舗装は橋やトンネルより更新の周期が短い。新設が減る一方、既存の道路を打ち替える工事が安定して出る。再生合材の使用が増え、骨材の調達と廃材の処理が競争力の鍵になっている。
発注者側にも事情がある。自治体の財政は厳しく、補修の優先順位をつけて先送りする例が多い。予定価格の積算が実勢に追いつかない地域では、応札者が現れない不調も増えている。
資本政策と M&A
還元は穏やかな水準だ。配当は年 5 億円ほどで、配当性向は 56%。2024〜2026 年度は 1 株配当を前期以上とする方針で、2027 年 3 月期も同額の予想だ。
2026 年には ToSTNeT-3 による自己株の取得を実施した。流通株は 609 万株になった。
借入はなく、リースも小さいと見る。現預金は 64 億円。ただし 2025 年 3 月期には現預金 50 億円に対し借入 28 億円があり、純現金は 22 億円まで減った。年度末の工事代金の回収で、純現金は 40 億円ほど動く。
大株主は、佐藤工業 20.8%、創翔 10.6%、東亜道路工業 7.7%、アスカ 6.3%、UBE三菱セメント 5.2%。親会社はないが、取引先・同業の持ち合いが厚い。株主優待は確認できなかった。
減価償却費は年 5〜6 億円と見られ、投資は 4 億円前後で、償却の範囲に収まる。
2026 年 3 月期の営業キャッシュフローは 51 億円と、売上の減少で運転資金が戻った分が大きい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
有利子負債はなく、現預金 64 億円が時価総額の半分を占める。自己資本は時価総額の 2 倍で、足元の株価は事業の稼ぎを割り引きすぎている。
公共の舗装補修は国土強靱化の予算で底堅く、老朽化した道路の補修は今後も増える。受注残は 146 億円あり、今期は売上 380 億円、営業利益 11 億円へ戻る見通しだ。
配当は下げない方針で、利回りは 4% を超える。2026 年には自己株の取得も実施し、株主還元に前向きだ。
同業・取引先の持ち合いは、安定株主として経営を守る面もあり、佐藤工業との提携で受注の拡大も期待できる。合材価格の改善が進めば、利益率は 5% 台に戻りうる。
足元の売上減は、大型案件の完成と発注の端境期という一時要因が大きい。受注は底を打ち、繰越も 146 億円残る。財務の余力が大きいので、工場の更新や人材の確保に先行投資でき、不況期に他社が縮む中で差をつけられる。
加えて、無借金で現金があるため、同業の再編や設備の買収にも動ける。持ち合いの相手に同業が多く、業界内の統合の窓口になりうる点も、他の中堅にない選択肢だ。
慎重な見方
利益率は 3% 前後で、ROE は資本コストを下回る。過去 10 年の営業利益は 6〜27 億円と振れ幅が大きく、2002〜2006 年には赤字が続き自己資本が 4 割減った。
人手不足で施工量に上限があり、賃金と材料費の上昇を入札価格に転嫁するのは遅れる。受注と繰越は 14% 減っていて、売上の戻りは予想頼みだ。
現預金 64 億円は、年度末の工事代金の回収で一時的にふくらんでいる。前年の純現金は 22 億円で、実際に余っている額は小さい。
持ち合いが厚く、積み上がる現金や自己資本が、株主に戻る保証はない。配当性向は高いが、利益が下がれば維持も難しい。
10 年前の利益の山(営業利益 20 億円台)は、アスファルト価格の下落と大型案件が重なった特殊な時期で、再現は難しい。現金が厚いのに ROE が 4% では、資本の置き場として非効率であり、株価がそれを映すのは自然だ。
佐藤工業との提携は 2022 年に始まったが、利益率に目に見える改善は出ていない。受注の拡大という目的が果たせたのか、数字で確かめられない。提携や持ち合いが株主の利益になる保証はない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。無借金と現金は事実だが、利益で測れば資本コストを下回る。利益の底堅さは評価し、悲観側の確率は 4 割にとどめた。持ち合いの解消や提携の進展があれば、見方は変わりうる。中立を 38% とし、やや悲観と悲観を合わせて 40% に置いた。確率は、悲観側に 4 割、楽観側に 2 割余りを置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,215 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 918 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 1,676 円102 億円、今との差 −12.6%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,999 円244 億円 | 1,477 円90 億円 | +185.6% | +11.1% | 383 円23 億円 |
| やや楽観 | 15% | 3,200 円195 億円 | 1,149 円70 億円 | +126.8% | +8.5% | 652 円40 億円 |
| 中立 | 38% | 2,570 円157 億円 | 1,017 円62 億円 | +87.1% | +6.5% | 1,363 円83 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,317 円80 億円 | 738 円45 億円 | +7.2% | +0.7% | 575 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 919 円56 億円 | 410 円25 億円 | −30.7% | −3.6% | 160 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,215 円135 億円 | 918 円56 億円 | +63.5% | +5.0% | 3,134 円191 億円 |
今の株価時価総額 1,917 円117 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 補修需要と価格転嫁が進み、営業利益が今の倍を超える 利益 18 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,999 円244 億円
老朽道路の補修が増え、施工面積は今の 1.07 倍になる。原油・骨材・賃金の上昇は予定価格へ早く反映され、単価は 1.39 倍、営業利益率は 5% に戻る。
合材の外販も伸び、製品部門が利益を支える。営業利益は 24 億円で、過去 10 年の上位に並ぶ。
配当は 1 割余り増え、自社株の取得も続く。ただし作業員の確保には限界があり、この水準を保つ難しさは残る。ただし同業が同じ追い風を受けるため、受注の取り合いは続く。利益率の上昇は、価格調整の制度が実際に働くかに依存する。
補修の発注が増えても、人手の確保が施工の上限になる。大手や準大手が先に職人を確保し、中堅は受けきれない仕事を断る場面も出る。それでも合材工場の稼働が上がり、固定費の負担が軽くなって、製品部門の利益率が上がる。
- 工事部門(道路舗装・土木):数量 800(年間の施工面積(万㎡))× 価格 5.30(1 ㎡あたりの完成工事高(千円))→ 売上 424 億円・営業利益 21 億円。施工面積 800 万㎡(1.07 倍)× 単価 5.30 千円(1.39 倍)、営業利益率 5.0%
- 製品等販売部門(アスファルト合材など):数量 38.0(年間の合材の販売量(万t))× 価格 19(1 tあたりの販売価格(千円))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。合材 38 万t(1.06 倍)× 単価 19.0 千円(1.35 倍)、営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.82 倍、時価総額 244 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の予算が続き、予定価格の調整が早く入る筋書き。足元の受注減を考えると難しいので 7%。
やや楽観 15% 転嫁が進み、営業利益は 19 億円に増える 利益 14 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,200 円195 億円
施工面積は今と同じ水準で、単価は物価の 9 割ほど上がる。営業利益率は 4% 台に戻り、営業利益は 19 億円になる。
製品部門は合材の値上げで利益率が 5% になる。配当は少し増えるが、性向は 5 割台のままで、現金は積み上がる。転嫁が追いつくまでの数年は、利益が伸びない時期が続く。そのため、回復は後半に偏る。
売上の増え方は緩やかで、増収は主に単価の上昇による。受注の質を選び、採算の悪い案件を減らす方針が実を結ぶ。現金は積み上がるが、持ち合いの厚さから、積極的な使い道の発表は期待しにくい。
営業利益は 19 億円で、10 年前の山には届かない。この水準でも ROE は 5% 台にとどまり、資本コストには届かないままである。
- 工事部門(道路舗装・土木):数量 760(年間の施工面積(万㎡))× 価格 5.00(1 ㎡あたりの完成工事高(千円))→ 売上 380 億円・営業利益 16 億円。施工面積 760 万㎡(1.01 倍)× 単価 5.00 千円(1.31 倍)、営業利益率 4.2%
- 製品等販売部門(アスファルト合材など):数量 36.0(年間の合材の販売量(万t))× 価格 18(1 tあたりの販売価格(千円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。合材 36 万t(横ばい)× 単価 18.3 千円(1.30 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.82 倍、時価総額 195 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修需要は堅調で、価格転嫁が遅れながらも追いつく筋書き。実現性は比較的高い。
中立 38% 補修需要は保たれるが、担い手不足と転嫁の遅れで、利益は今の延長にとどまる 利益 11 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,570 円157 億円
人手不足で施工面積は今の 97% にとどまり、単価は物価の 8 割強しか上がらない。営業利益率は 3.5%、営業利益は 14 億円。
配当は今の水準を保ち、性向は 5 割台。自社株の取得は散発的で、現金は緩やかに積み上がる。ROE は 4% 台で資本コストに届かない。受注の波で、年ごとの営業利益は 8〜20 億円の間を動く。10 年の平均が 14 億円という意味である。
舗装の補修需要そのものは保たれ、売上は名目で 400 億円前後に戻る。原油と骨材の上昇は、価格調整の仕組みで一部が戻るが、時間差で利益を削る。この筋書きが、利益率 3〜4% という足元の延長線上にある姿である。
単価が物価ほど上がらない理由は、予定価格の調整の遅れと、入札での値引きの二つである。
- 工事部門(道路舗装・土木):数量 730(年間の施工面積(万㎡))× 価格 4.75(1 ㎡あたりの完成工事高(千円))→ 売上 347 億円・営業利益 12 億円。施工面積 730 万㎡(0.97 倍)× 単価 4.75 千円(1.24 倍)、営業利益率 3.5%。単価を物価ほど上げない理由は、予定価格の調整が遅れ、入札の競争で値引きが入るため
- 製品等販売部門(アスファルト合材など):数量 35.0(年間の合材の販売量(万t))× 価格 17(1 tあたりの販売価格(千円))→ 売上 59 億円・営業利益 3 億円。合材 35 万t(0.97 倍)× 単価 16.9 千円(1.20 倍)、営業利益率 4.5%。単価を物価ほど上げない理由は、原油の下落局面と外販の競争で、値上げが定着しないため
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.82 倍、時価総額 157 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注は戻るが、賃金と材料の上昇が入札価格に遅れて反映される。もっとも自然な筋書き。
やや悲観 28% 公共予算が頭打ちになり、転嫁も遅れて利益が細る 利益 7 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 1,317 円80 億円
施工面積は今の 9 割弱に減り、単価は物価の 6 割ほどしか上がらない。営業利益率は 2% 台に落ち、営業利益は 7 億円台になる。
配当は今の水準を維持できず、減配する。現金は取り崩しを迫られ、余った現金は 3 割ほど減る。跡地や設備の処分にも費用がかかり、株主還元は縮む。
受注の競争が激しくなり、採算度外視の入札も出る。人件費の上昇は止まらず、合材の値上げも通らない。利益は小さくなるが、無借金のため赤字には至らず、経営は現金を守る方向に動く。
営業利益が 2023 年 3 月期の 6 億円に近い水準まで落ちる姿である。無借金のため財務の危機は起きないが、株価は低迷し、株主への還元も縮む。
- 工事部門(道路舗装・土木):数量 650(年間の施工面積(万㎡))× 価格 4.40(1 ㎡あたりの完成工事高(千円))→ 売上 286 億円・営業利益 7 億円。施工面積 650 万㎡(0.87 倍)× 単価 4.40 千円(1.15 倍)、営業利益率 2.4%
- 製品等販売部門(アスファルト合材など):数量 32.0(年間の合材の販売量(万t))× 価格 16(1 tあたりの販売価格(千円))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。合材 32 万t(0.89 倍)× 単価 15.5 千円(1.10 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 2.7% は k 7.8% を大きく下回る。RONIC は約 6.6%、g 0.5% の正当化 PER は約 12.2 倍。成長しない事業なので 7 割の 8.7 倍に置いた。
確率:補修予算が伸びず、原価の上昇が転嫁されない筋書き。2023 年 3 月期の営業利益 6 億円が再現する。
悲観 12% 公共予算の縮小と原価高で赤字が続き、自己資本が減る 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 919 円56 億円
公共の補修予算が大きく縮み、施工面積は今の 4 分の 3 になる。原価高は転嫁されず、営業利益はほぼゼロ、特損も出る。
配当は大幅に減り、現金は取引先への支払いに回る。同業との統合や工場の整理を迫られる。従業員や取引先の整理に時間がかかり、価値は事業でなく整理後の資産で測るしかない。
自己資本は赤字と減損で減るが、無借金のため破綻の危険は小さい。それでも株主の取り分は、整理後の資産で決まる。持ち合いの解消や同業との統合が進み、少数株主には厳しい条件になりうる。
2002〜2006 年の赤字の時期に、売上が 3 割近く落ち、自己資本が 4 割減った前例が、この筋書きの根拠である。
- 工事部門(道路舗装・土木):数量 560(年間の施工面積(万㎡))× 価格 4.20(1 ㎡あたりの完成工事高(千円))→ 売上 235 億円・営業利益 0 億円。施工面積 560 万㎡(0.75 倍)× 単価 4.20 千円(1.10 倍)、営業利益率 0%
- 製品等販売部門(アスファルト合材など):数量 28.0(年間の合材の販売量(万t))× 価格 15(1 tあたりの販売価格(千円))→ 売上 41 億円・営業利益 0 億円。合材 28 万t(0.78 倍)× 単価 14.5 千円(1.03 倍)、営業利益率 0%
倍率:ROE がほぼ 0% で稼ぐ力は付けられない。自己資本 190 億円(今の 229 億円から減損と配当で減る)に PBR 0.295 倍(約 56 億円)を掛けた。今の自己資本に対しては 0.245 倍である。
確率:2002〜2006 年のように赤字が数年続く筋書き。起これば自己資本が 2 割減る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工事部門(道路舗装・土木)
国・自治体・高速道路会社の舗装の新設と補修。完成工事高が売上の 85%。
| 数量年間の施工面積(万㎡) | 価格1 ㎡あたりの完成工事高(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 750 | 3.82 | 287 | 8 |
| 10 年後 中立 | 730 | 4.75 | 347 | 12 |
取り方:完成工事高 286 億円は決算短信から取った。面積 750 万㎡と単価 3.82 千円は、この売上を成り立たせる推定(開示は金額のみ)。営業利益 8.2 億円は全体の 10.7 億円から製品部門の推定を引いた値。 年度の発注の時期で四半期の売上が大きく動くため、1 年の数字で見る。
製品等販売部門(アスファルト合材など)
自社工場の合材の外販と、工事への供給。
| 数量年間の合材の販売量(万t) | 価格1 tあたりの販売価格(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.0 | 14 | 51 | 3 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 17 | 59 | 3 |
取り方:製品売上 51 億円は決算短信から取った。販売量 36 万tと単価 14.1 千円は推定。営業利益 2.5 億円(利益率 5%)は筆者の推定で、開示はない。
リスクと懸念
公共予算と受注の波
売上の大半は公共の発注で、2026 年 3 月期は受注 14% 減・売上 17% 減だった。予算の配分と発注の時期で、利益は年ごとに大きく動く。
原価と人件費の転嫁の遅れ
原油・骨材・賃金の上昇は、入札の予定価格に後から反映される。その間、利益率が 3% を割る年が出る。
担い手不足
作業員の高齢化で、施工できる量に上限がある。受注があっても売上に変えられない年が出る。
運転資金と現金の見かけ
現預金 64 億円は、年度末の工事代金の回収でふくらんだ。前年の純現金は 22 億円で、すべてが余りとは言えない。
持ち合いと資本の効率
筆頭株主の佐藤工業 20.8% をはじめ、同業・取引先の持ち合いが厚い。資本の効率改善の圧力が届きにくく、現金が眠りやすい。
AI エージェント代替の影響は小さい
舗装の施工は現場の体が中心で、AI エージェントが代替する部分は事務と積算に限られる。むしろ積算の省力化は、コスト削減の機会になる。
今後の分かれ目
- 受注が 2 期続けて増え、営業利益率が 5% 台に戻る
- 価格転嫁が進んだ証拠。中立の利益率を引き上げ、楽観の確率を上げる。
- 配当性向を 7 割以上へ引き上げる、または自社株買いを繰り返す
- 現金が株主に戻る確度が上がる。戻り方の係数を見直し、中立の倍率を引き上げて見る。
- 持ち合いの解消や、第三者による買収の提案が出る
- 資本の使い方が変わる。買付価格が基準になり、含み資産の評価が焦点になる。
- 原油・骨材・賃金の上昇が止まらず、予定価格の調整が遅れる
- 利益率が下がる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 国土強靱化の予算が縮小、または補修の発注が大幅に減る
- 受注が細る。数量を下げて、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 受注高と繰越高(四半期)
- 工事部門と製品部門の利益率
- 年度末の現預金と純現金の動き
- 配当性向と自社株取得、持ち合いの変化
倍率と資本コストの決め方
本業の営業利益を、面積×単価と合材の量×単価から積み、現預金は工事代金の回収で年度末にふくらむため、全額ではなく 25 億円だけを余りとして足した。市場の PER や PBR は根拠にしていない。ROE が k を下回るので、倍率は 1÷k の 12.3 倍を上限に、式で出した値の 8〜9 割に置いた。自己資本の大半は債権・土地・工場で、売って現金化する前提ではない。減価償却は年 5〜6 億円で、投資は 4 億円前後と償却の範囲にあり、営業利益を押し上げる未償却はない(償却を水増しして利益を作ってはいない)。持ち合い株と土地は、悲観側の床にだけ使い、別枠で足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.82 倍・やや楽観 PER 10.5→12.82 倍・中立 PER 10→12.82 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。