結論
明星工業は、工場やプラントの配管・タンクを断熱する工事の専門会社だ。LNG(液化天然ガス)の貯槽、石油化学の設備、半導体のクリーンルームが主な現場になる。空調会社と間違われやすいが、事業はまったく別物である。
筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、現金が株主に戻れば割安に傾くというものだ。支えは 2 つある。営業利益率が過去 10 年、11〜16% の狭い幅で安定してきたこと。時価総額の半分近い現金を持っていることだ。
稼ぎの源は、定期修理の保温の巻き替えにある。プラントは数年に一度止めて点検し、そのたびに保温工事が出る。景気に左右されにくい仕事で、そこに LNG タンクのような大型案件が乗る。
弱い点も書いておく。国内の製油所、石油化学、石炭火力は、長い目で見れば減っていく。会社は水素・アンモニア・ボイラへ手を広げているが、まだ小さい。
もう一つの問いは現金の行き先だ。純現金は約 360 億円ある。直近の 1 年は、還元が純利益とほぼ同じ額まで増えた。この流れが続くかどうかで、株主の取り分が大きく変わる。
バリュー投資の観点から
事業の本質は、他人の設備の熱を守る専門工事だ。大きな設備投資が要らず、稼いだ現金がたまる。バリュー投資の観点では、持ち続けたい型の事業である。
10 年先も、プラントは止まり、保温は巻き替えられる。ただ需要の中身は、石油・石炭から LNG・水素へゆっくり移る。この移り変わりを技術でつかめるかが、堀の寿命を決める。筆者は、減る分をかなり補えると見る。
資本の使い方は、評価が割れる。10 年間は現金を積み上げた。この 1 年は還元に傾いたが、利益を上回る額を払い続けることはできない。還元の水準が戻るのか、定着するのか。安全域の厚みはそこに懸かる。
払う値段を考える。時価総額の約半分が純現金なので、事業そのものには、今の時価総額の約半分しか払っていない計算になる。事業の稼ぐ力は、中立の筋書きでも今より大きい。
中立の筋書きは、今の時価総額を上回る。ただしそれは、現金が株主に戻ることを前提にしている。戻らなければ、余った現金の価値は大きく目減りする。評価はこの一点で上下に分かれる。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は建設工事事業で、売上の約 9 割を占める。中身は、熱を逃がさない・入れない工事だ。マイナス 253℃の液化水素から 2,000℃級の工業炉まで、配管・タンク・炉に保温材や耐火材を巻き、張る。設計と施工に加え、保温材をつくる子会社の日本ケイカルまで持つ。
顧客は電力、ガス、石油化学、鉄鋼の大手だ。提出会社の工事は民間向けが中心で、海外はシンガポールなどの拠点が受け持つ。会社は連結の海外比率を約 1 割と説明している。
特徴は、メンテナンスが厚いことだ。プラントは数年ごとに止めて点検し、そのたびに古い保温を剥がして新しく巻く。仕事を決めるのは新設の波より、設備の数と古さである。2025 年 3 月期の利益が過去最高になったのは、この定期修理と大型案件が重なったからだ。2026 年 3 月期は売上が 9% 減ったが、受注は 2% 増えた。
工事のなかの別枠として、子会社の明星建工がクリーンルームの内装を請け負う。半導体やバイオの工場向けである。
もう一つの柱がボイラ事業で、売上の約 1 割だ。産業用ボイラやバイオマス向けの機器をつくる。新しい工場を建てたが、立ち上げの費用がかさみ、減損も出した。利益は薄く、会社のなかでは弱い部分だ。
2027 年 3 月期までの中期計画は、断熱以外への多角化と海外の拡大を掲げる。3 年の営業キャッシュフロー約 150 億円のうち、約 130 億円を投資に回す計画だ。水素・アンモニア向けの防熱技術の開発も進めている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、極低温の保冷だ。LNG タンクの保冷は、保温材の選び方も巻き方も、一つ間違えれば事故につながる。発注者は安さより実績を見る。川崎重工向けの液化タンクの保冷工事が、繰越工事の主な案件になっているのはその表れだ。
もう一つの強みは、全国の協力会社と熟練工のネットワークだ。会社は「人的サプライチェーン」と呼ぶ。繁忙期や大型案件でも人を回せる。人手不足の時代に、これは効く。
数字にも出ている。営業利益率は過去 10 年、11〜16% の間にある。同じ建設業でも、振れの小さい部類だ。定期修理の比率が高く、景気の波を受けにくいからだと筆者は読む。
弱い点は 3 つある。顧客が重厚長大の産業に偏ること。大口の LNG 案件で利益が動き、2025 年 3 月期の過去最高のあとに 2026 年 3 月期は 28% の減益になったこと。新設したボイラ工場がまだ稼げていないことだ。
経営の姿勢は、「チャレンジはするが冒険はしない」と説明される。堅実さは財務に表れ、自己資本比率は 80% を超え、借金はほぼない。ただし堅実さは、資本を余らせる形にもなっている。ROE は 10 年の中央値で 9% 台と、堅さのわりに低い。余った現金が分母を膨らませているからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の断熱工事は、新設ではなく設備の数と古さで決まる成熟市場だ。市場規模を示す公的な統計はなく、筆者は競合の売上から見積もっている。ニチアスなどの数社が、プラント向けの保温工事で競い合う。大きな案件は、実績のある数社に集まる。
追い風は 3 つある。
1 つは LNG だ。石炭や石油から天然ガスへの切り替えが進めば、貯槽や受け入れ基地の工事が出る。マイナス 162℃の保冷は、技術の差がそのまま受注の差になる。
2 つめは、老朽化したプラントの更新と定期修理だ。高度成長期に建った製油所や化学工場は、保温の巻き替えが欠かせない。
3 つめは新しいエネルギーだ。水素、アンモニア、CO2 を地下に貯める CCS は、極低温や高温の断熱を必要とする。ただし、どれも本格的に立ち上がるのは先で、補助金や政策にも左右される。
向かい風もある。国内の製油所、石油化学、石炭火力は、統廃合と脱炭素で長い目では減る。需要の根っこが縮むということだ。人手不足も強い制約になる。技能者の高齢化が進み、仕事があっても人が足りない。
半導体やバイオの工場向けは、クリーンルームの内装が仕事になる。ただし工場の投資は波が大きく、この部分は景気に左右されやすい。
筆者の見立てでは、国内の施工量は 10 年で横ばいから少し減る程度だ。単価は人件費の上昇を映して、物価並みに上がる。
資本政策と M&A
資本政策は、いま転換点にある。方針は、株主資本配当率(DOE)4% 以上、配当性向 30〜40% を目安に、自社株買いを機動的に行うというものだ。2026 年 3 月期は配当性向が 55.6% に上がり、自社株買いも 27 億円行った。還元の総額は約 58 億円で、純利益とほぼ同じである。
背景には、株主の目があると筆者は見る。大株主の 1 位と 4 位は、名前から同じ運用者とみられる海外ファンド 2 本で、合わせて 13.9% を持つ。ただし狙いは、公表資料からは確かめられていない。
それでも 10 年の通算では、純現金が 130 億円から 360 億円まで積み上がってきた。ためる会社だった。還元の増加が定着するかは、まだ分からない。
政策保有株、つまり取引先の株は 30 銘柄で、帳簿の額は約 46 億円と小さい。売却も進んでいる。
買収で大きく失敗した記録はない。ただ中期計画は断熱以外への多角化を掲げており、現金が厚い会社の多角化は、高値づかみになりやすい。筆者はここを注意して見ている。TOB(株式の公開買い付け)の話は出ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
明星工業の利益の安定は、偶然ではない。定期修理の保温は、プラントが動く限り必ず出る。営業利益率は 10 年間、11% を割らなかった。景気が悪くても、止められない仕事が土台にある。
LNG が新しい柱になる。川崎重工向けの LNG タンク保冷は 2029 年の完成予定で、受注残の太い部分をつくる。水素・アンモニア・CCS の貯蔵設備は、極低温や高温の断熱を必要とし、会社はその技術を持つ。
財務は鉄壁だ。純現金は 360 億円、自己資本比率は 80% を超える。13.9% を持つ海外ファンドが株主にいて、2026 年 3 月期は利益並みの還元に踏み込んだ。余った現金が株主に戻れば、時価総額のほぼ半分は確実に回収できる。
人手不足は、むしろ追い風になる。技能者と協力会社を束ねる力が、価格の交渉力になるからだ。単価は物価以上に上がる余地がある。
事業の安定と現金の厚みを足し合わせれば、今の値段は低すぎる。
慎重な見方
国内のプラントは、長い目で見れば減る。製油所と石油化学は統廃合が進み、石炭火力は止まる。保温の需要の根っこは設備の数だ。数が減れば、定期修理の仕事も減る。
LNG は一時の山である。大型の LNG タンクは、10 年に何本も建たない。川崎重工向けが終われば、次の大型案件がある保証はない。2026 年 3 月期に営業利益が 28% 減ったのは大口工事が一巡した反動で、この波は今後も繰り返す。
水素やアンモニア、CCS は政府の補助金頼みだ。立ち上がる時期も規模も読めない。新設したボイラ工場は減損を出した。多角化の第一歩でつまずいた事実は重い。
現金は、持つだけでは価値を生まない。10 年間、現金を積み上げてきた会社が、1 年の増配で変わったと見るのは早い。利益を上回る還元は続かない。現金が戻らないなら、時価総額の半分は評価できない。
技能者の不足は、受注があっても施工できない状況を生む。人件費を価格に転嫁できなければ、11〜16% の利益率は守れない。
どちらに重みを置いたか
事業の安定と現金は、強気の見方が強い。国内プラントの縮小は、慎重な見方が強い。どちらも事実だが、10 年で効く力は違う。
利益率が 10 年安定してきた事実は重い。中立は、施工量が横ばいで、利益率は 12% とした。確率は、やや強気の側に少し寄せ、悲観は 10% と薄くした。
現金については、戻る前提を基本とする。ただし戻り方には不確かさが残る。やや悲観と悲観の筋書きでは、現金が食われる形で織り込んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,918 円1,340 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 940 円431 億円)。 今の値に割り戻すと 2,153 円989 億円、今との差 +25.2%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,891 円2,245 億円 | 1,220 円560 億円 | +255.3% | +13.5% | 489 円224 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,966 円1,821 億円 | 1,089 円500 億円 | +193.9% | +11.4% | 1,112 円511 億円 |
| 中立 | 38% | 3,218 円1,477 億円 | 980 円450 億円 | +144.1% | +9.3% | 1,595 円732 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,711 円785 億円 | 828 円380 億円 | +47.6% | +4.0% | 558 円256 億円 |
| 悲観 | 10% | 552 円254 億円 | 479 円220 億円 | −40.0% | −5.0% | 103 円47 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,918 円1,340 億円 | 940 円431 億円 | +124.3% | +8.4% | 3,858 円1,771 億円 |
今の株価時価総額 1,720 円790 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% LNG・水素・半導体が重なり、施工量も利益率も伸びる 利益 110 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 4,891 円2,245 億円
LNG タンクの更新と新設が続き、水素・アンモニア・CCS の設備が国内で立ち上がる。会社は極低温の保冷の実績を武器に、大型案件を継続して受ける。半導体とバイオ工場の増設で、クリーンルームの内装も伸びる。
人手不足のなかで技能者を確保できた分だけ、受注を選べる。単価は物価をやや上回り、利益率は 14% まで上がる。ボイラは新工場が軌道に乗り、バイオマス向けを中心に倍近くに伸びる。
還元は、利益の大半を株主に戻す形が定着する。余った現金も還元に使われる。自己資本の伸びは小さく、ROE は 14% 台に高まる。
こうなれば、会社は「プラントの保温屋」から「エネルギー転換の断熱を担う会社」へ評価が移る。ただし、人を集める力が先に尽きる点だけは、この筋書きでも変わらない。
- 熱絶縁・耐火・クリーンルーム工事:数量 3,300(施工量(人年。自社と協力会社の技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.28(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 926 億円・営業利益 130 億円。施工量は今の 1.22 倍、価格は今の 1.40 倍、営業利益率 14%
- ボイラ・産業機械:数量 85.0(出荷・据付量(ボイラ相当の台数・実質))× 価格 1.44(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 9 億円。出荷量は今の 1.42 倍、価格は今の 1.40 倍、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 19.08 倍、時価総額 2,245 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:定期修理に LNG・水素の大型案件と半導体の投資が同時に重なる必要がある。国内プラントの縮小という逆風を考えると、重なる確率は高くない。
やや楽観 22% 新しいエネルギーが国内の縮小を埋め、じわり伸びる 利益 92 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 3,966 円1,821 億円
製油所や石油化学の統廃合は進むが、LNG の貯槽と基地の工事、老朽設備の更新が穴を埋める。川崎重工向けのような大型案件が 2〜3 件続き、水素やバイオマスの設備も少しずつ受注に乗る。
施工量は 1 割ほど増え、単価は物価並みに上がる。利益率は過去 10 年の中心である 13% 前後で落ち着く。ボイラは新工場の稼働が安定し、赤字を脱する。
還元は配当性向 60% 前後に自社株買いを足す形で続く。余った現金の多くは、10 年のうちに株主へ戻る。
会社の姿は今とほとんど変わらない。変わるのは、国内の縮小を新しい仕事がわずかに上回る点だ。堅実で目立たない会社のまま、利益だけがゆっくり積み上がる。
- 熱絶縁・耐火・クリーンルーム工事:数量 3,000(施工量(人年。自社と協力会社の技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.27(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 824 億円・営業利益 107 億円。施工量は今の 1.11 倍、価格は今の 1.37 倍、営業利益率 13%
- ボイラ・産業機械:数量 72.0(出荷・据付量(ボイラ相当の台数・実質))× 価格 1.41(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 101 億円・営業利益 6 億円。出荷量は今の 1.20 倍、価格は今の 1.37 倍、営業利益率 6%
倍率:事業の純利益 89 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 18.17 倍、時価総額 1,821 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LNG と更新工事が国内の縮小を埋め、利益率が過去 10 年の中心(12〜13%)を保つ筋書き。10 年の実績に近く、実現しやすい。
中立 38% 国内の縮小を新しい仕事が補い、施工量は横ばいで安定 利益 75 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 3,218 円1,477 億円
製油所と石油化学は減るが、定期修理の巻き替えは続く。LNG の貯槽と基地、半導体工場の内装が、減る分を埋める。施工量は今とほぼ同じで、人手不足が上限を決める。
単価は人件費の上昇を映して物価並みに上がり、利益率は 12% で保たれる。過去 10 年の中心よりやや低いのは、技能者の確保に費用がかさむためだ。ボイラは黒字化するが、利益は小さい。
還元は純利益の 7 割ほどが続き、自己資本は緩やかに増える。ROE は 10% 前後に落ち着く。会社は目立たないまま、安定して稼ぎ続ける。
大きな失敗も大きな成功もない 10 年である。定期修理という土台が堅いので、中心の筋書きを一番厚く置くのが自然だ。
- 熱絶縁・耐火・クリーンルーム工事:数量 2,700(施工量(人年。自社と協力会社の技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.27(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 726 億円・営業利益 87 億円。施工量は今と同じ、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 12%
- ボイラ・産業機械:数量 60.0(出荷・据付量(ボイラ相当の台数・実質))× 価格 1.37(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 4 億円。出荷量は今と同じ、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 17.35 倍、時価総額 1,453 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:定期修理の厚さと LNG の積み上がりが、国内プラントの縮小とほぼ釣り合う中心の筋書き。利益率の安定という 10 年の実績にも合う。
やや悲観 22% 国内プラントの縮小が進み、利益率も下がる 利益 49 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,711 円785 億円
国内の製油所と石油化学の統廃合が進み、定期修理の件数が減る。LNG と水素の案件は一部しか取れず、補助金の見直しで立ち上がりも遅れる。施工量は 1 割以上落ちる。
同業が減った仕事を奪い合い、単価は物価を下回る。利益率は 9% に下がる。ボイラは新工場の固定費が重く、ほぼ利益が出ない。
会社は配当を保つが、自社株買いは細る。余った現金の一部は、多角化の買収や設備に使われる。ROE は 7% を割る。
堀が崩れたわけではないが、過去の安定した利益率という評価は外れる。現金は残るので、会社が傷むことはない。
- 熱絶縁・耐火・クリーンルーム工事:数量 2,350(施工量(人年。自社と協力会社の技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.26(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 613 億円・営業利益 55 億円。施工量は今の 0.87 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 9%
- ボイラ・産業機械:数量 50.0(出荷・据付量(ボイラ相当の台数・実質))× 価格 1.33(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 1 億円。出荷量は今の 0.83 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 2%
倍率:余った現金・余り資産 150 億円を分けると、事業の純利益 47 億円(税後利息を除く)・事業の自己資本 686 億円・事業の ROE 6.84%。事業の ROE が資本コスト k 7% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 13.3 倍。上限の 8 割 5 分 の 12.54 倍に置いた。事業 47 億円 × 12.54 倍 + 余り 150 億円(帳簿 150 億円 × 戻り方 1)で時価総額 738 億円。
確率:国内の製油所・石化・石炭火力の縮小が、LNG や新エネルギーの立ち上がりより速く進む筋書き。大型案件の谷も重なり、現実味がある。
悲観 10% 国内の主力顧客が縮み、価格競争で優良さが消える 利益 18 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 552 円254 億円
国内の製油所、石油化学、石炭火力の閉鎖が一気に進み、定期修理という土台が細る。LNG の大型案件は海外の工事会社に流れ、水素やアンモニアは補助金が切れて立ち消えになる。
施工量は 3 割落ち、単価は物価に追いつかない。利益率は 4% まで下がる。新設したボイラ工場は赤字が続き、再び減損が出る。
多角化のための買収が裏目に出て、余った現金の半分は失われる。配当は DOE の下限で維持するが、それ以上は出ない。会社は存続するが、優良な専門工事会社ではなくなる。
還元は純利益の合計を大きく下回り、10 年のあいだ自己資本は積み上がる。ただし、その自己資本は稼ぐ力に結びつかない。
- 熱絶縁・耐火・クリーンルーム工事:数量 1,850(施工量(人年。自社と協力会社の技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.23(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 427 億円・営業利益 17 億円。施工量は今の 0.69 倍、価格は今の 1.15 倍、営業利益率 4%
- ボイラ・産業機械:数量 35.0(出荷・据付量(ボイラ相当の台数・実質))× 価格 1.18(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 −1 億円。出荷量は今の 0.58 倍、価格は今の 1.15 倍、営業利益率 -2%
倍率:国内の製油所・石化・石炭火力の閉鎖で定期修理の土台が細り、利益率が 4% まで下がる筋書き。ROE が k 7% 以下なので上限は 1÷k = 13.3 倍。悲観は、やや悲観よりさらに構造的に負けた姿なので、倍率をやや悲観(11.3 倍)より高くせず、全体の PER(現金込み)がやや悲観を超えない 9.3 倍に置いた。余った現金は悲観では今の5割に減るとみて、戻り方 1.0 を掛けた 107 億円を含む。時価総額 260 億円(全体の PER に直して 14.5 倍)。
確率:主力の石油・石化・石炭火力が構造的に縮み、LNG も新エネルギーも取りこぼす負け筋。加えて多角化の失敗で現金も食われる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
熱絶縁・耐火・クリーンルーム工事
プラントや LNG 設備の保温・保冷・耐火工事と、メンテナンス(定期修理)、半導体・バイオ工場のクリーンルーム内装を手がける本業。売上の約 9 割。
| 数量施工量(人年。自社と協力会社の技能者の稼働を今の値段で測った実質の工事量) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,700 | 0.20 | 541 | 73 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 0.27 | 726 | 87 |
取り方:完成工事高 541 億円、セグメント利益 73 億円(利益率 13.6%)。人年は開示がないので推定した。完成工事高の約半分が労務費(自社と協力会社)とみて、1 人年あたり約 1,000 万円で割り、約 2,700 人年とした。1 人年あたり完成工事高は約 0.2 億円。物価の上昇分は価格に入れる。
ボイラ・産業機械
子会社のよしみねが、産業用ボイラやバイオマス向け機器を製造・据付・保守する。売上の約 1 割。
| 数量出荷・据付量(ボイラ相当の台数・実質) | 価格1 台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1.03 | 62 | 2 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 1.37 | 82 | 4 |
取り方:ボイラ事業の売上 61.5 億円、セグメント利益 2.4 億円(利益率 3.9%)。台数は開示がないので、小型機・据付・保守を混ぜた 1 台あたり約 1 億円とみて、ボイラ相当 60 台とした。物価の上昇分は価格に入れる。全社の営業利益 77 億円との差は本社費・調整。
リスクと懸念
国内プラントの縮小
製油所、石油化学、石炭火力は、統廃合と脱炭素で長い目では減る。保温工事の需要は設備の数で決まるので、数が減れば定期修理の仕事も減る。LNG や水素がその分を埋められるかが最大の不確実性だ。
大口工事の波
LNG タンクのような大型案件は、数年に一度しか出ない。2025 年 3 月期は過去最高の利益だったが、2026 年 3 月期は営業利益が 28% 減った。案件の谷では、利益が 2 割以上動くことを前提にしておく必要がある。
現金が株主に戻らない
純現金は約 360 億円と、時価総額の半分近い。10 年間は積み上がる一方だった。直近の 1 年で還元は増えたが、元の水準に戻れば、余った現金の価値は大きく目減りする。ファンドの持ち分が減っても同じことが起きる。
ボイラ工場と多角化の失敗
新設したボイラ工場は、立ち上げ費用と減損で利益を削った。中期計画は断熱以外への多角化を掲げる。現金が厚い会社の買収は高値づかみになりやすく、一度つまずけば、現金の食われ方も大きくなる。
人手不足と技能者の高齢化
保温工事は人の腕に頼る。技能者が足りなければ、受注があっても施工できない。人件費の上昇を価格に転嫁できなければ、11〜16% の利益率は保てない。協力会社の確保も年々難しくなっている。
新エネルギーは補助金と政策次第
水素・アンモニア・CCS は、政府の支援の強さと時期に左右される。会社は技術開発を進めているが、立ち上がりが遅れたり、規模が小さいままだったりすれば、国内の縮小を埋める柱にはならない。
今後の分かれ目
- 定期修理の受注が 2 期連続で減ったら
- やや悲観の筋書きに確率を寄せる。国内プラントの縮小が想定より速いことを示す。
- 川崎重工向けに続く LNG の大型案件を取ったら
- やや強気の筋書きの確率を上げる。大口工事の波が、谷を作りにくくなる。
- 自社株買いと配当が、純利益の 7 割以上で 2 期続いたら
- 現金が戻る前提を強める。余った現金の価値が、そのまま株主に届く。
- ボイラ事業が黒字化して、中期計画の次の期に収益が定着したら
- 多角化の評価を引き上げる。失敗の筋書きの確率を下げる。
- 大規模な買収を発表したら
- 現金の戻り方を見直す。買収額と事業の稼ぐ力を比べ、高値づかみかを確かめる。
- 海外ファンドが持ち分を大きく減らしたら
- 還元の持続力を割り引く。やや悲観の確率を少し上げる。
見ておくもの
- 定期修理・メンテナンスの受注高と繰越工事高(特に LNG・川崎重工向け)
- 営業利益率が 11〜16% の幅に収まるか
- 配当・自社株買いの総額と、純現金の増減
- ボイラ事業の損益と、新工場の稼働率
- 中期計画の次の期(2027 年度〜)の方針と、買収の有無
倍率と資本コストの決め方
売上は『施工量(人年)× 1 人年あたり完成工事高』で積み、物価 3% は価格に入れた。国内の施工量は縮む需要と LNG などの新しい仕事が釣り合うとして、中立で今と同じとした。倍率は k 7%・g 4% の正当化 PER の上限の 8 割に置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。ROE が k を割る悲観側は 1÷k までの稼ぐ力を上限に、やや悲観より高くしない倍率で測った。余った現金は 200 億円を分け、戻り方は 1.0。純利益は営業利益に受取利息の増加(約 6 億円)を足し税を引いて出した。事務所などの賃借は小さく、新リース会計基準(2028/03 期)の影響は小さい。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.2→19.08 倍・やや楽観 PER 14.4→18.17 倍・中立 PER 12.6→17.35 倍・やや悲観 PER 11.3→12.54 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.0% = 7.5%。理由は quality_why。個別のリスク(大口工事の波・多角化の失敗・還元の持続)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。