結論
ミライト・ワンは、通信工事を軸にした総合の工事会社だ。NTT 東西やドコモの設備工事に加え、ビル・土木の建設、測量、システム開発まで手を広げている。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は、稼ぐ力が資本コストにわずかに届かないからだ。利益率は改善しているが、10 年後の ROE は 8% 前後にとどまる。
2026 年 3 月期は売上 6,000 億円、営業利益 340 億円と、ともに過去最高だった。通信の利益率改善は、会社が掲げた目標を前倒しで達成した。
弱みは 2 つある。通信の工事量は人口減で伸びにくい。もうひとつは、買収した建設会社の利益率が低いことだ。
10 年後の中立の時価総額は、今より 1 割強高い 3,200 億円台。還元を足しても、資本コストを稼ぐには足りない。
還元には前向きだ。総還元性向 50〜70% を掲げ、自社株買いも続けている。ただ、事業の稼ぎが伸びなければ、還元は価値の底上げにはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ミライト・ワンは「悪くないが、安くもない会社」だ。事業は消えない。通信設備は誰かが直し続ける。ただ、預金より増える見込みが大きいとは言えない。
10 年後も事業はある。だが堀は広がらない。顧客は少数で、競合は同じ出自だ。強くなる材料は ICT とデータセンターに限られる。
オーナーの手元に残る利益は、純利益の 4 割ほどだ。残りは配当と自社株買いで戻る。設備投資が軽く、利益が現金になりやすい点は好ましい。
気になるのは資本の使い方だ。買収で広げた事業の利益率は低く、ROE は資本コストに届かない。これを上げるのが経営の仕事であり、会社も ROE 10% を掲げる。進捗を見たい。
安全域は薄い。借金は純資産の 2 割ほどで重くはないが、現金が余っているわけでもない。筆者なら、10 年先の ROE が 8% を超える確信が持てるまで待つ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、通信設備の工事だ。NTT 東日本と西日本で売上の 4 分の 1 を占める。光回線やモバイル基地局の工事、品質改善が中身になる。
通信以外の比率は 6 割に達した。会社は 4 つの事業を持つ。NTT 事業、マルチキャリア事業、環境・社会イノベーション事業、ICT ソリューション事業だ。
環境・社会は、ゼネコンの西武建設、測量や地理空間情報の国際航業、再エネ工事などを束ねる。売上の 3 割台半ばを占め、いまやグループ最大の塊になった。ただ利益率は 3% 台と低い。
ICT は、企業や自治体のシステム構築とネットワーク構築が中心だ。売上は全体の 4 分の 1 ほどになる。
グループの従業員は連結で約 1.8 万人。工事は人手がすべてなので、売上は「人数 × 1 人当たり売上」でほぼ決まる。人数は増やしにくい。伸びは単価に頼る。
受注の中身も変わってきた。2026 年 3 月期の受注高は 6,600 億円弱と、売上を上回って積み上がった。NTT 事業と ICT が牽引した。
このため、本稿では通信基盤、環境・社会、ICT の 3 つに分けて見る。人数は売上に比例して配分した推定値だ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客との関係の深さにある。NTT 系の通信工事は、長年の取引と施工品質で成り立つ。新しい会社が割って入るのは難しい。
ただ、堀は狭い。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。顧客は少数で、価格は発注者が握る。競争相手のコムシスやエクシオも、同じ顧客を取り合う。
収益力は高くない。営業利益率は 6% に届かず、過去には 3% 台まで落ちた。ROE は 10 年の中央値で 8% 弱と、資本コストに届かない年が多い。
良い変化もある。NTT とマルチキャリア向けの利益率は、中計の改善目標を前倒しで達成した。環境・社会でも、粗利率は 2 ポイント改善した。
気になるのは、買収した事業の採算だ。西武建設は売上 600 億円に対し営業利益が 15 億円ほどにとどまる。工期が延びる大型案件が重しだ。
筆者が好むのは、競争が緩く、伸ばさなくても現金が出る会社だ。ミライト・ワンは、その条件を満たしていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
通信工事は、成熟した需要と新しい投資の波が混ざる市場だ。光回線は行き渡り、新規の敷設は減っていく。一方で、老朽設備の更新、モバイルの品質改善、データセンター間の光網の工事が増えている。
追い風はデータセンターと次世代通信だ。国内のデータセンター市場は、2028 年に 5 兆円規模へ拡大するとの見方がある。ただ、建物の電気・空調を一括で請ける会社が恩恵を受けやすい。通信工事だけの会社は、その外側にとどまりやすい。
競争は寡占に近い。大手はコムシス、エクシオグループ、ミライト・ワンの 3 社で、売上はエクシオが約 7,900 億円、コムシスが約 6,300 億円。ミライト・ワンは約 6,000 億円で、規模は近い。同じ顧客を取り合うので、大幅な値上げは難しい。
通信以外では、建設と測量の市場に出ている。ここは競争相手が多く、大手ゼネコンや測量会社が相手になる。通信会社の系列という強みは効きにくい。
最大の制約は人手だ。残業規制が強まった 2024 年以降、技能者の確保が難しい。仕事を増やせないなら、単価で稼ぐしかない。この数年の増益は、その単価転嫁の表れだ。
資本政策と M&A
株主還元は、積極的になった。総還元性向 50〜70% を目標に置き、配当を増やし、自社株買いを続ける。2026 年 5 月には上限 60 億円の自社株買いを決め、利用目的のない自己株式は消却する方針だ。
成長投資は、M&A が柱だ。2019 年にソルコム、2022 年に西武建設、2023 年に国際航業を連結にした。会社は、残る約 450 億円を M&A などに回しても、格付けを保てると見ている。
買う側としての力は確かにある。ただ、買った事業の利益率は低く、のれんの重さと採算が課題になる。筆者は、次の大型買収が価値を壊すかどうかを最も気にしている。
遊休不動産と政策保有株の売却は、目標の 8 割弱まで進んだ。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。
大株主の住友電気工業は、持株比率を 19% 前後から 4% 台まで下げてきた。2019 年には投資ファンドのオアシスが、独立した社外取締役を求めて株主提案をした。統治への目は、いまも続くとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぐ力は、まだ上がる。通信の利益率改善は、会社が掲げた目標を前倒しで達成した。人手不足で、工事ができる会社が限られる。単価を上げやすい局面が続く。
買収した事業も、ようやく実を結ぶ。西武建設の工期問題は、大型案件の完了とともに解ける。国際航業は、測量と地理空間情報を成長の柱にできる。環境・社会の粗利率はすでに 2 ポイント改善した。
ICT はデータセンターと企業の DX の波に乗る。通信から離れた事業が全体の 6 割まで増え、顧客の偏りも薄まった。NTT 向けは 4 分の 1 まで下がった。
資本政策にも余地がある。総還元性向 50〜70% を掲げ、自社株買いを続ける。保有株の売却は 8 割弱まで進んだ。利益が 10 年で 5 割増え、ROE が 10% に近づけば、倍率も 12 倍台に評価される。
同業のコムシスやエクシオと比べても、規模と顧客は近い。利益率が追いつけば、稼ぐ力も追いつく。
慎重な見方
利益率の改善は、山の可能性がある。モバイルの品質改善工事と人手不足の単価転嫁が重なった結果で、続く保証はない。
NTT 向けが売上の 4 分の 1 を占め、設備投資の方針が変われば、受注は一度に減る。ドコモ向けの品質改善は、いずれ一巡する。光回線は人口減で伸びない。
買収した事業の採算は低い。西武建設は売上の割に利益がほとんど出ていない。のれんの償却も重い。国際航業の測量は、公共予算に左右される。
大型案件では、ゼネコンや電気工事の大手が元請けを握る。ミライト・ワンの取り分は下請けに近づく。人件費が物価並みに上がるなら、利益率は広がらない。
過去の ROE は中央値で 8% 弱と、資本コストを下回ってきた。今の改善は、まだ 2 年ほどの実績だ。10 年先まで続くと見るのは強気にすぎる。
そのうえ、借金が純資産の 2 割ほどあり、利払いは金利上昇で増える。大型の買収を重ねれば、さらに重くなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。通信の改善は本物だが、ROE が資本コストを安定して上回る 10 年は描きにくい。買収した建設・測量の利益率が上がらなければ、全体の稼ぐ力は伸びない。
このため、確率は中立に厚く置きつつ、悲観側の確率を強気側より少し重くした。強気の筋書きでも、今の値段を大きく上回る姿にはならない。
通信で積んだ改善は、買収事業の低採算と相殺される。この差が、割高の判断の最大の理由だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,303 円3,747 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,852 円1,613 億円)。 今の値に割り戻すと 3,315 円2,887 億円、今との差 −0.6%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,862 円5,976 億円 | 2,272 円1,979 億円 | +173.8% | +10.6% | 913 円795 億円 |
| やや楽観 | 24% | 5,622 円4,896 億円 | 2,063 円1,797 億円 | +130.4% | +8.7% | 1,844 円1,606 億円 |
| 中立 | 35% | 4,528 円3,943 億円 | 1,874 円1,632 億円 | +91.9% | +6.7% | 2,241 円1,951 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,328 円2,027 億円 | 1,651 円1,438 億円 | +19.3% | +1.8% | 875 円762 億円 |
| 悲観 | 9% | 1,893 円1,649 億円 | 1,223 円1,065 億円 | −6.6% | −0.7% | 280 円244 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,303 円3,747 億円 | 1,852 円1,613 億円 | +84.5% | +6.3% | 6,154 円5,359 億円 |
今の株価時価総額 3,336 円2,905 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 通信の質改善とICTで稼ぐ力が一段上がる 利益 409 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 6,862 円5,976 億円
NTT 向けとモバイル向けの利益率改善が定着し、通信の稼ぎが一段上がる。データセンターや企業の DX 需要で ICT も伸び、全社の営業利益は 600 億円台に乗る。
買収した西武建設と国際航業の黒字が厚くなり、環境・社会の利益率は 5% に届く。工期が延びて利益が出にくい大型案件の問題が解消する筋書きだ。
人手不足で値段を上げやすい状況が続く。人は増やせないので、数量の伸びは ICT に限られる。
ROE は 10% 近くに上がり、総還元性向 60% でも自己資本は厚みを増す。ただ、ここまで揃う確率は高くない。
- 通信基盤:数量 6,936(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 48(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 3,349 億円・営業利益 268 億円。通信基盤
- 環境・社会イノベーション:数量 6,944(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 45(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 3,152 億円・営業利益 158 億円。環境・社会イノベーション
- ICT ソリューション:数量 6,357(担当人数(人、推定))× 価格 42(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,666 億円・営業利益 200 億円。ICTソリューション
倍率:事業の純利益 409 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.61 倍、時価総額 5,976 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の筋書きが全部そろう必要がある。通信の利益率改善の定着、ICT の伸び、買収した会社の黒字化が同時に起きる姿で、1 割に置いた。
やや楽観 24% 環境・社会の利益率が上がり、通信は堅調 利益 354 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 5,622 円4,896 億円
会社の計画に近い姿になる。通信は数量が 1 割弱減るが、値上げで売上を保つ。環境・社会は、西武建設の採算が改善し、国際航業の測量・空間情報が育つ。
ICT は企業の DX 需要を取り込み、10 年で売上が 6 割ほど増える。営業利益は 540 億円前後になる。
還元は純利益の 6 割。自社株買いも続き、自己資本の伸びは抑えられる。
大きな買収は織り込まない。小さな買い足しで足りる、穏やかな強気の筋書きだ。
人手不足は続くので、単価の転嫁で利益率を支える。ROE は 9% 近くまで上がるが、資本コストを大きく上回るほどではない。
- 通信基盤:数量 6,664(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 48(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 3,217 億円・営業利益 248 億円。通信基盤
- 環境・社会イノベーション:数量 6,572(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 45(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,983 億円・営業利益 134 億円。環境・社会イノベーション
- ICT ソリューション:数量 5,651(担当人数(人、推定))× 価格 42(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,370 億円・営業利益 164 億円。ICTソリューション
倍率:事業の純利益 354 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.83 倍、時価総額 4,896 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる利益率目標に近づく筋書きで、経営の進捗から 2 割台半ばに置いた。
中立 35% 数量は細り、単価で伸びる成熟した会社 利益 304 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 4,528 円3,943 億円
通信の数量は人口減と省力化で 1 割弱減る。NTT の設備投資の方針が大きく変わらなければ、値上げで売上は保てる。
環境・社会は数量が横ばいで、西武建設の工期問題が少しずつ解ける。営業利益率は 4% 前後にとどまる。ICT は 1 割ほど数量が増える。
全社の営業利益は 460 億円台。会社が掲げた利益率の目標には届かないが、今より 3 割以上増える。
還元は純利益の 6 割で、ROE は 8% に届かない。驚きの少ない、地味な 10 年だ。
NTT との関係も、競合との力関係も大きくは変わらない。ICT の伸びと、通信の細りが打ち消し合う。買収した事業の改善は進むが、利益率は低いままだ。
- 通信基盤:数量 6,324(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 48(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 3,053 億円・営業利益 223 億円。通信基盤
- 環境・社会イノベーション:数量 6,200(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 45(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,814 億円・営業利益 113 億円。環境・社会イノベーション
- ICT ソリューション:数量 5,180(担当人数(人、推定))× 価格 42(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,172 億円・営業利益 137 億円。ICTソリューション
倍率:事業の純利益 304 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.97 倍、時価総額 3,943 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通信の数量は細り、環境・社会の採算は改善途中にとどまる、が最も起こりやすい。3 割台半ばに置いた。
やや悲観 22% 値下げ圧力と数量減で、利益率が崩れる 利益 231 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,328 円2,027 億円
NTT が工事の発注価格を抑え、通信の数量は 1 割強減る。単価の上昇も物価に届かない。
環境・社会では、大型建設の工期遅れが繰り返され、利益率は 3% に戻る。ICT も値下げ競争を受け、横ばいにとどまる。
営業利益は 350 億円台。今より少し増えただけで、人件費の上昇に追いつかない。
還元は続ける。だが増配の余地は小さく、自己資本が積み上がる分だけ ROE は 6% 台に下がる。
通信の落ち込みを、他の事業で埋めきれない。買収した事業の改善が遅れ、固定費だけが残る。競合との値引き競争も続く。
- 通信基盤:数量 5,984(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 47(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,803 億円・営業利益 177 億円。通信基盤
- 環境・社会イノベーション:数量 5,890(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 44(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,593 億円・営業利益 86 億円。環境・社会イノベーション
- ICT ソリューション:数量 4,709(担当人数(人、推定))× 価格 41(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 1,916 億円・営業利益 102 億円。ICTソリューション
倍率:ROE 6.3%(純利益 231 億円 ÷ 自己資本 3,675 億円)。ROE が k 以下なので上限は 1÷k = 12.5 倍。利益率が戻り、堀が薄いとみて、上限の 7 割弱にあたる 8.5 倍に置いた。
確率:NTT 側の発注価格の抑制と、大型案件の採算悪化が重なる筋書き。やや悲観として 2 割強に置いた。
悲観 9% 通信投資の縮小と買収の失敗で優良でなくなる 利益 132 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,893 円1,649 億円
NTT の内製化と投資縮小で、通信の数量が 3 割近く減る。単価も物価に追いつかない。
買収した建設・測量の事業で大型案件の損失が続き、環境・社会の営業利益率は 2% まで落ちる。ICT も価格競争に巻き込まれる。
営業利益は 200 億円台。借金の利払いが重く、純利益は 130 億円にとどまる。
統合で広げた事業が、利益を生まない固定費になる。優良な会社の姿ではなくなる。
人口減、NTT の内製化、買収の失敗が同時に重なる。自己資本は厚いが、稼ぐ力は資本コストを大きく下回る。株主へ戻せる現金も細る。
- 通信基盤:数量 5,032(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 44(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,212 億円・営業利益 111 億円。通信基盤
- 環境・社会イノベーション:数量 5,270(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 41(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 2,178 億円・営業利益 48 億円。環境・社会イノベーション
- ICT ソリューション:数量 4,238(担当人数(人、推定))× 価格 38(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 1,618 億円・営業利益 61 億円。ICTソリューション
倍率:通信投資の縮小と NTT の内製化で数量が 3 割近く減り、買収した建設・測量でも損失が出る構造的な負け。純利益は 132 億円で、ROE は k 以下。稼ぐ力は純利益 ÷ k で約 1,650 億円。売れる資産の側は、総資産 5,740 億円を 8 割で回収し負債 2,940 億円を全額払うと残る約 1,650 億円。どちらも同じ水準で、今の自己資本 2,794 億円に対する PBR 0.59 倍(時価総額 1,649 億円)に置いた。
確率:顧客が少数で、買収した建設会社の損失も重なる構造的な負けの筋書き。1 割弱に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
通信基盤
NTT 東日本・西日本、ドコモ、他の通信会社向けの通信設備工事。光回線、基地局、局舎内機器の工事と品質改善。TTK、四国通建、ラントロビジョンなどの通信系の会社を含む。
| 数量施工に当たる人数(人、推定) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,800 | 36 | 2,450 | 181 |
| 10 年後 中立 | 6,324 | 48 | 3,053 | 223 |
取り方:2024 年度の NTT 事業 1,905 億円とマルチキャリア事業 410 億円の合計を、2026 年 3 月期の全社売上の伸びに合わせて 2,450 億円と推定した。営業利益率は 7.4% と置いた推定(通信の利益率改善の目標達成と、四国通建 10.7%・TTK 7.4% から)。連結従業員 17,709 人を売上と作業の重さで配分した。数量は実質、1 人当たり売上は名目で物価並みに上がる想定。
環境・社会イノベーション
西武建設のビル・土木建設、国際航業の測量・地理空間情報、ソルコム、再エネ、街づくり関連の工事。
| 数量施工に当たる人数(人、推定) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,200 | 34 | 2,100 | 80 |
| 10 年後 中立 | 6,200 | 45 | 2,814 | 113 |
取り方:2024 年度の環境・社会イノベーション事業 2,038 億円を伸びに合わせて 2,100 億円と推定した。西武建設 616 億円・15 億円、国際航業 496 億円・18 億円、ソルコム 372 億円・14 億円の水準から、利益率 3.8% と置いた推定。人数は売上に比例した推定で、建設の人手が多い分、1 人当たり売上は通信より低い。数量は実質、1 人当たり売上は名目。
ICT ソリューション
企業・自治体向けのネットワーク構築、システム開発、クラウド、データセンター関連の工事とサービス。ミライト・ワン・システムズなど。
| 数量担当人数(人、推定) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,709 | 31 | 1,474 | 91 |
| 10 年後 中立 | 5,180 | 42 | 2,172 | 137 |
取り方:2024 年度の ICT ソリューション事業 1,433 億円を伸びに合わせて 1,474 億円と推定した。残りの人数(連結 17,709 人から通信と環境・社会を引いた分)を割り当て、営業利益率は 6.2% と置いた推定。全社の営業利益 343 億円から本社費など -9 億円を調整して合わせた。数量は実質、1 人当たり売上は名目。
リスクと懸念
NTT への依存
NTT 東西向けで売上の 4 分の 1 を占め、ドコモを含めると通信会社の設備投資に収益の多くが連動する。NTT が工事の内製化や発注の絞り込みに動けば、受注が一度に減る。交渉力は相手が握る。分散の効かない、構造的なリスクだ。
今の利益率が山の可能性
営業利益は過去最高になったが、利益率は 5.7% にとどまり、過去には 3% 台まで落ちた。モバイルの品質改善工事と人手不足の単価転嫁が重なった結果だ。改善工事が一巡し競争が戻れば、利益率は 4% 台に戻りうる。
買収した建設・測量の低採算
西武建設は売上 600 億円に対し営業利益が 15 億円ほど、国際航業とソルコムも利益率は 4% 前後にとどまる。大型案件の工期が延びる問題は、解消に時間がかかる。のれんの償却や追加の損失が、通信の稼ぎを食う恐れがある。
人手不足で数量を増やせない
工事は人手がすべてで、連結従業員は約 1.8 万人。2024 年の残業規制以降、技能者の確保が難しい。受注があっても施工できず、伸びは単価に頼る。採用と育成の費用が重く、賃金の上昇圧力も続く。
大型 M&A と資本効率
会社は成長投資に約 450 億円を残し、O&M の拡大に必要な M&A を続ける方針だ。高い値段で買えば、ROE がさらに下がる。買わなければ、現金が積み上がり資本効率を問う株主の目が強まる。規律が問われる。
金利上昇と借金
純有利子負債は 625 億円で、時価総額の 2 割を超える。借り換えのたびに金利が上がり、10 年で利益は税引前で約 16 億円削られる推定だ。景気が悪化して利益が落ちれば、借金が重くなる。
新リース会計基準
2028 年 3 月期から、賃借の資産と負債が貸借対照表に載る。自己資本比率や純有利子負債の見え方が変わる。事業の稼ぎは変わらないが、見かけの財務は弱く見える。同業と比べる時は同じ形にそろえる必要がある。
今後の分かれ目
- NTT グループが通信工事の内製化や発注の削減を打ち出した時
- 通信基盤の数量が大きく減り、利益は半分近くまで落ちる。10 年の悲観の筋書きに近づく。
- モバイル向けの品質改善工事が一巡し、通信の利益率が元に戻った時
- 今の利益が山だったと確認される。中立より悲観寄りに進む。
- 西武建設の大型案件が完了し、環境・社会の営業利益率が 5% に乗った時
- 強気の筋書きに近づく。買収の価値が確認され、倍率の見方も上がる。
- 大型 M&A を高い値段で決めた時
- ROE が下がり、のれんの償却も利益を削る。資本効率の面で評価が落ちる。
- データセンターや企業の DX 向けの受注が、計画を大きく上回って積み上がった時
- ICT と環境・社会の利益が全社を押し上げ、強気の筋書きに近づく。
- 他社からの TOB(公開買い付け)や、同業との再編が起きた時
- 買い付け価格は今の時価総額に上乗せされるのが普通で、上振れ要因になる。ただ可能性は低いと見て、確率には織り込まない。
見ておくもの
- NTT 東西・ドコモの設備投資計画と、通信の利益率の推移
- 環境・社会イノベーションの営業利益率(5% に乗るか)と西武建設の採算
- ICT ソリューションの売上と、データセンター関連の受注
- 総還元性向と自社株買いの規模、ROE の進捗(10% 目標)
- 次の M&A の規模と買収価格
- 連結従業員数と 1 人当たり売上(人手の確保と単価の転嫁)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE 6〜10% と g 4%(k 7.75%)から正当化 PER を出し、上限の約 7〜9 割(強気 9 割・中立は 1÷k に ROE÷k 0.99 と 9 割を掛けた 11.1 倍・やや悲観 7 割弱)に置いた。ROE が k に届かない会社は上限が 1÷k(12.5 倍)で、中立はそれより低い。今の株価や同業の倍率は基準にしていない。悲観は、稼ぐ力(純利益 ÷ k)と、総資産の 8 割回収・負債全額払いの残り(約 1,650 億円)がほぼ同じ水準だったため、今の自己資本に PBR 0.59 倍を掛けた。谷の PBR は使っていない。資本コストは基本 7.5% に quality 0.5% を足した 8.0%。同領域のコムシス(0%)より高いのは、買収した建設・測量の採算の低さと純有利子負債による。借金の利払いの増加(10 年で -16 億円、税前)は純利益に入れた。新リース会計基準で営業利益が少し増え純有利子負債が増えるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。理由は quality_why。個別のリスク(M&A の実行・統治など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。