結論
高田工業所は、製鉄所や化学工場の設備を建て、直し、保つ会社だ。1940年に北九州で創業した。売上の4割は製鉄、4割弱は化学で、最大の客は日本製鉄である。連結従業員は1,666人で、人の数が仕事の量を決める労務提供の商売だ。
筆者の結論は、やや割高である。時価総額は純資産の6割で安く見えるが、稼ぐ力が資本コストに届かない。2026年3月期の営業利益は18億円と4割減った。営業利益率は3.3%で、過去12年の中でも低い。
救いは受注の厚みだ。受注残は前期末より7割多い291億円になり、日揮が20%の筆頭株主として提携した。ただ、2027年3月期の会社予想の営業利益は18億円と横ばいで、受注の増加が利益に出るのは先だ。
10年先の中立は、営業利益が26億円まで緩やかに増える姿だ。製鉄への依存と、借入に付いた財務上の条件が重しになる。この重さが、筆者の見立てが割高側に傾く理由である。配当は年5億円で、利回りは4%を超えるが、増える見込みは薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「受注は厚いが、安全域は薄い」という型だ。時価総額は純資産の6割で、安く見える。しかし、純資産の多くは売掛金と契約資産、つまり工事の代金を受け取る権利で、現金ではない。
営業利益率が3%台の会社で、特定の客の比率が3割を超えるのは重い。客の設備投資の方針が変わるだけで、利益が大きく動く。事業の経済性は、資本コストを賄うところまで届いていない。
経営はこれまで堅実で、優先株を処理し、日揮という強い提携先も得た。それでも筆者は、長く持つなら、営業利益率が4%台に戻ることを確かめたい。現状の値段は、その回復をある程度織り込んでおり、払う値段に十分な余裕があるとは言えない。借金の条件を考えると、安全域はさらに薄くなる。10年持つ株主には、利益率が上がる確かな根拠がほしい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、産業設備の工事だ。製鉄所の炉や搬送設備を据え付け、化学工場の配管と電気・計装を組み、年に一度の定期修理で止めて直す。連結の売上は537億円で、設計から製作、据付、保全までを一社で通せる。半導体のウエハ洗浄装置や超音波カッティング装置も手がけるが、規模は小さい。
客先の業種で見ると、提出会社の完成工事高470億円のうち、製鉄が41%、化学が38%、半導体工場などのエレクトロニクス関連が11%を占める。石油・天然ガスと電力は合わせて6%にとどまる。
日本製鉄の比率は連結売上の30%まで上がった。保全工事の9割は特命、つまり競争入札でなく指名で受ける。建設工事の特命は5割だ。シンガポール、マレーシア、タイに子会社があり、売上の1割強を海外が占める。
2026年3月期の売上は7%減った。国内の化学と石油・天然ガスの定期修理が閑散期で、工事量が減ったためだ。定期修理は2年ごとに山と谷が来る。一部の建設工事は、工期が翌期にずれた。一方で、受注は連結で658億円と2割強増え、翌期以降の売上の種は厚い。
優良さと弱いところ
強みは、製鉄・化学の現場で積み上げた施工と保全の技術と、特命で受ける客との長い関係だ。保全工事の9割が特命というのは、客が技術と信頼で選んでいる証拠である。受注残も厚く、2026年3月期末は291億円だった。
2025年3月に、日揮が資本業務提携で20%の株を持つ筆頭株主になった。大型プラントの建設資源の確保と、DXによる効率化、保全体制の強化が狙いだ。日揮の案件が回れば、売上の底が固くなる。
弱みは3つある。1つは日本製鉄への依存で、連結売上の30%を占める。2つ目は薄い利益率で、営業利益率は過去12年で2.5〜5.1%の範囲に収まる。3つ目は財務で、有利子負債は123億円、営業キャッシュフローは12億円の支出だった。借入の一部には、純資産の維持や2期連続の経常損失の回避という条件が付いている。
筆者は、堀を弱めに見る。仕事は人の手に依存し、人を増やさなければ売上も増えない。ブランドで値段を決める会社ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の製鉄所と化学工場は、設備の老朽化が進んでいる。建て替えと大規模な修理の需要は続く。一方、製鉄は国内の生産が細り、高炉を減らして電炉に移す流れがある。脱炭素の工事は増えるが、国内の粗鋼生産の縮小は、保全の量を中長期で押し下げる。
化学プラントの定期修理は、周期で山谷が来る。2026年3月期は谷だったが、2027年3月期以降は山に向かう。ここは数量の見通しを助ける。
競争の形は、大手プラントエンジニアリングと、地場の専門工事会社の二層だ。日揮ホールディングスや千代田化工建設のような大手は設計と調達を取り、高田工業所は施工と保全を担う。人手不足は業界共通の制約で、技能者の確保が仕事の量を決める。連結の従業員は1,666人で、平均年収は606万円と前期から9%近く上がった。賃金は年3%で上がり、受注価格に転嫁できるかが利益率を決める。
今後の鍵は、日本製鉄の国内設備投資の方針、化学の定期修理の周期、そして日揮との協業が新しい案件を生むかである。人手を増やせるかも、どの鍵とも結びつく。製鉄所や化学工場の修理を請け負える会社は限られ、技能者の確保が参入の壁になる。
資本政策と M&A
資本政策は、財務の立て直しを終えて、安定配当を続ける段階だ。かつて福岡銀行が持っていた優先株は、2024年3月期に買い戻しを終えた。配当は年5億円で、ここ数年は据え置きに近い。
2025年3月には日揮に第三者割当を行い、約13億円を調達した。日揮はあわせて既存株主から約8%を買い取り、議決権の約20%を握る。持分法適用の関連会社になる見込みだ。光通信系のファンドも、あわせて約17%を持つ。
筆者が注意するのは、財務上の条件が付いた借入だ。残高は92億円で、純資産の維持と、2期連続の経常損失の回避が条件になっている。大きな赤字が出ると、借入の返済を迫られかねない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益は谷にある。2026年3月期の営業利益は定期修理の閑散期で4割減ったが、受注は連結で658億円と2割増え、受注残は291億円と7割増えた。2027年3月期は定期修理が山に向かい、売上は伸びる。営業利益率も、過去の山の5%台に近づく余地がある。2025年3月期には、営業利益が29億円まで伸びた実績がある。受注残が増えれば、固定費を割る効果も出る。日揮の人材と調達力を使えば、これまで受けられなかった規模の案件にも手が届く。
日揮は議決権の約20%を握り、プラント建設の人手を共同で確保する。大型の脱炭素案件が来れば、売上の底が固くなる。保全工事の9割は特命で、価格競争の影響を受けにくい。
時価総額は純資産の6割で、配当利回りは4%台だ。営業利益率が4.5%に戻れば、純利益は20億円を超え、配当を増やす余地が生まれる。2年周期の山谷でならせば、谷の年の数字だけで会社を決めつけるのは早い。直近の4〜6月期は、経常利益が黒字に転じたと報じられた。
慎重な見方
稼ぐ力が資本コストに届かない。営業利益率は過去12年で2.5〜5.1%にとどまり、10年のうち8年が4%台以下だ。2026年3月期のROEは5.8%で、資本コストを下回る。純資産の6割という値段は、割安ではなく、適正な割引にすぎない。
日本製鉄への依存は連結売上の30%に達し、製鉄と化学で売上の8割弱を占める。国内の製鉄は粗鋼生産が細り、高炉の休止が続く。日本製鉄は国内の設備投資を絞りつつあり、客の方針ひとつで工事が消えるリスクがある。客の設備投資が1年止まるだけで、工事量が激減する。
2026年3月期の営業キャッシュフローは12億円の支出で、借入は増えた。条件付きの借入が92億円あり、赤字が2期続くと返済を迫られる。受注が増えても、人手が足りず、利益にならない恐れがある。人件費が先に膨らみ、売上の増加が利益に届かない期もあった。直近の営業利益率は3.3%で、事業の稼ぐ力が弱まっている兆しがある。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。受注の厚みと日揮の提携は事実だが、稼ぐ力の天井が低く、依存度も高い。中立は、営業利益が26億円まで緩やかに増える姿で、営業利益率は3.5%に置いた。
確率は、中立を最も厚く、やや悲観にも2割台を置いた。楽観は、日揮との案件が膨らみ、営業利益率が4%を超えた展開で、1割に満たない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,548 円187 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 697 円51 億円)。 今の値に割り戻すと 1,654 円121 億円、今との差 −0.8%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,760 円349 億円 | 1,092 円80 億円 | +250.9% | +13.4% | 410 円30 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,566 円261 億円 | 887 円65 億円 | +167.0% | +10.3% | 891 円65 億円 |
| 中立 | 38% | 2,883 円211 億円 | 751 円55 億円 | +117.9% | +8.1% | 1,381 円101 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,223 円90 億円 | 614 円45 億円 | +10.2% | +1.0% | 423 円31 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,038 円76 億円 | 137 円10 億円 | −29.6% | −3.5% | 141 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,548 円187 億円 | 697 円51 億円 | +94.5% | +6.9% | 3,245 円238 億円 |
今の株価時価総額 1,668 円122 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 日揮との案件が膨らみ、利益率が4%を超える 利益 27 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 4,760 円349 億円
日揮と共同で、国内の老朽プラントの更新と脱炭素の案件を受ける。人員を増やし、従事人数は今より2割弱増える。値上げは物価を上回って通る。
製鉄は電炉への切り替え工事が増え、保全の量も保たれる。化学は定期修理の山と更新で、営業利益率は5%に届く。
営業利益は今の2倍を超える。借入は返済が進み、配当も増える。財務の条件も問題にならない。日揮との共同案件が実績になり、他の大型の客も呼び込む好循環に入る。人員の確保も進み、技能者の採用と育成に投資できる。賃金の上昇も、値上げで吸収できる。10年後には、国内プラントの保全を担う有力な一社として、地位を固めている。
- 製鉄プラント(建設・保全):数量 620(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.46(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 284 億円・営業利益 12 億円。人数+5%・価格1.42倍
- 化学・石油ガス・電力・その他の工事:数量 880(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.46(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 403 億円・営業利益 20 億円。人数+24%・価格1.42倍
- エレクトロニクス関連:数量 240(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.46(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 110 億円・営業利益 4 億円。人数+53%・価格1.42倍
- 子会社(海外・装置ほか):数量 330(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.46(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 151 億円・営業利益 6 億円。人数+58%・価格1.42倍
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 349 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日揮との協業が大型案件を生み、定期修理の山も重なり、営業利益率が4%を超える姿。強気が当たる部分に限り、1割未満とした。
やや楽観 20% 定期修理の山と更新需要で、利益率が戻る 利益 21 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,566 円261 億円
化学の定期修理が山に向かい、受注残の291億円が売上になる。従事人数は今より1割増え、値上げも物価を少し上回って通る。
製鉄は国内の設備更新が続き、日本製鉄向けの量は保たれる。日揮との協業の案件が少しずつ増える。人員の採用も計画どおり進む。
営業利益は今の1.8倍の32億円になり、営業利益率は4%に届かない程度まで戻る。借入は返済が進む。化学の更新工事と、半導体関連の設備投資が、さらに数量を押し上げる。人手は足りないが、日揮との協業で外部の力を借りられる。営業利益率は10年かけて3%台後半まで戻り、配当も段階的に増える。
- 製鉄プラント(建設・保全):数量 600(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 267 億円・営業利益 10 億円。人数+2%・価格1.38倍
- 化学・石油ガス・電力・その他の工事:数量 800(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 356 億円・営業利益 16 億円。人数+13%・価格1.38倍
- エレクトロニクス関連:数量 200(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 89 億円・営業利益 3 億円。人数+27%・価格1.38倍
- 子会社(海外・装置ほか):数量 280(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 125 億円・営業利益 5 億円。人数+34%・価格1.38倍
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 261 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:定期修理の山と更新需要で営業利益率が4%近くに戻る姿。受注残の厚みが利益になる。強気の根拠が半分当たる場合として2割に置いた。
中立 38% 受注は厚く、利益は緩やかに増えるが、利益率は3.5%どまり 利益 17 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,883 円211 億円
従事人数は今より5%ほど増える程度にとどまる。人を増やせないことが、売上の伸びを抑える。値上げは物価並みの1.34倍で、賃金の上昇を吸収するのがやっとだ。
製鉄は国内の粗鋼生産の縮小で数量が2%減り、化学とエレクトロニクスが補う。
営業利益は26億円と、2026年3月期の1.5倍に増える。ただし営業利益率は3.5%で、過去の山には届かない。純利益は17億円で、ROEは資本コストに届かない。受注残の厚みは数量の下支えになるが、利益率を押し上げる材料にはならない。人を増やせないため、売上が伸びても利益の伸びは限られる。製鉄は電炉への切り替え工事が補うが、量は減る。
- 製鉄プラント(建設・保全):数量 580(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.43(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 251 億円・営業利益 9 億円。人数-2%・価格1.34倍
- 化学・石油ガス・電力・その他の工事:数量 750(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.43(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 324 億円・営業利益 14 億円。人数+6%・価格1.34倍
- エレクトロニクス関連:数量 175(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.43(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。人数+11%・価格1.34倍
- 子会社(海外・装置ほか):数量 240(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.43(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 104 億円・営業利益 4 億円。人数+15%・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 211 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の厚みが売上になるが、人手の制約と賃金の上昇で利益率は戻りきらない姿。2つの見方の落としどころで、最も厚い3割台に置いた。
やや悲観 23% 製鉄の設備投資が細り、人件費が重くなる 利益 11 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,223 円90 億円
日本製鉄が国内の高炉を減らし、保全と更新の量が細る。製鉄向けの従事人数は15%減る。値上げは物価に届かず、10年で1.28倍にとどまる。
化学は定期修理の量を保つが、競合の地場会社と価格を競う。エレクトロニクスは投資の波で伸びない。
営業利益は18億円強にとどまり、営業利益率は2.5%を割る。純利益は11億円。条件付きの借入を守るため、配当は据え置きが精一杯になる。日本製鉄の国内投資が細る影響は、製鉄の保全だけでなく、新設の工事にも及ぶ。技能者の一部は他の事業に回すが、全体の稼働は下がる。固定費の負担が利益率を圧迫し、薄い利益はさらに薄くなる。財務上の条件が付いた借入があるため、配当の増額も慎重にならざるを得ない。
- 製鉄プラント(建設・保全):数量 500(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.41(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 206 億円・営業利益 6 億円。人数-15%・価格1.28倍
- 化学・石油ガス・電力・その他の工事:数量 700(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.41(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 289 億円・営業利益 10 億円。人数-1%・価格1.28倍
- エレクトロニクス関連:数量 160(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.41(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。人数+2%・価格1.28倍
- 子会社(海外・装置ほか):数量 220(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.41(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 91 億円・営業利益 3 億円。人数+5%・価格1.28倍
倍率:事業の ROE は約4%で k 8%を大きく下回る。ROE が k 以下なので上限は 1÷k の約11.4倍。製鉄が細る構造で稼ぐ力は伸びないため、上限の約7割の8倍に置いた。
確率:日本製鉄の国内投資が細り、人件費の上昇を価格に転嫁しきれない姿。製鉄依存の会社の本流として2割台に置いた。
悲観 12% 製鉄の投資が止まり、赤字が続いて借入の条件に触れる 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,038 円76 億円
日本製鉄が国内の設備を減らし、製鉄向けの工事が大きく細る。従事人数は3割強減る。値上げは止まり、10年で1.20倍にとどまる。
化学も定期修理の量が減り、地場会社との値引き競争になる。営業損益は赤字に近づき、純損失が出る。
財務上の条件に触れ、借入の返済や再交渉を迫られる。取引銀行は新規の融資に慎重になり、大型工事の受注にも影響が出る。自己資本は200億円強まで減り、配当は止まる。日揮が追加の出資や、より深い関与に動く可能性も出てくる。そうなれば、少数株主の立場は大きく変わる。ここまで来ると、事業の価値は設備と人の再評価で決まる。
- 製鉄プラント(建設・保全):数量 380(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.39(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 147 億円・営業利益 1 億円。人数-36%・価格1.20倍
- 化学・石油ガス・電力・その他の工事:数量 600(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.39(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 232 億円・営業利益 4 億円。人数-15%・価格1.20倍
- エレクトロニクス関連:数量 120(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.39(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 0 億円。人数-24%・価格1.20倍
- 子会社(海外・装置ほか):数量 180(従事人数(人、推定割り振り))× 価格 0.39(1人あたり売上(億円、名目))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。人数-14%・価格1.20倍
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼゼロ。残るのは売掛金・契約資産などの現金化できる資産と、設備の売却額だ。今の自己資本217億円の35%に置いた。EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益で見ると、この筋書きでは営業利益がほぼ無く、倍率は意味をなさない。
確率:国内製鉄の再編と投資の凍結で製鉄向けが3分の2に縮み、赤字が続く姿。条件付きの借入に触れる恐れがある。10年で起きる確率を1割強とみた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製鉄プラント(建設・保全)
製鉄所の炉や搬送設備の据付と、日常の保全・修理。日本製鉄が最大の客。
| 数量従事人数(人、推定割り振り) | 価格1人あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 590 | 0.32 | 190 | 7 |
| 10 年後 中立 | 580 | 0.43 | 251 | 9 |
取り方:提出会社の完成工事高のうち製鉄は190.1億円(開示)。人数は連結従業員1,666人を売上比で割り振った推定。利益は単一セグメントのため開示が無く、営業利益率3.5%と置いた推定。
化学・石油ガス・電力・その他の工事
化学プラントの定期修理と建設、石油・天然ガス、電力設備、社会インフラ。
| 数量従事人数(人、推定割り振り) | 価格1人あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 710 | 0.32 | 229 | 9 |
| 10 年後 中立 | 750 | 0.43 | 324 | 14 |
取り方:化学175.9億円、石油・天然ガス21.0億円、電力4.7億円、社会インフラ3.6億円、その他23.9億円の合計約229億円(提出会社、開示)。人数は売上比で割り振った推定。利益率は4.0%と置いた推定。
エレクトロニクス関連
半導体工場などの設備工事。景気や投資の波が大きい。
| 数量従事人数(人、推定割り振り) | 価格1人あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 157 | 0.32 | 51 | 2 |
| 10 年後 中立 | 175 | 0.43 | 76 | 2 |
取り方:提出会社のエレクトロニクス関連は50.6億円(開示)。人数は売上比の推定割り振り。利益率は3.0%と置いた推定。
子会社(海外・装置ほか)
シンガポール・マレーシア・タイの子会社と、ウエハ洗浄・超音波カッティングの装置事業。
| 数量従事人数(人、推定割り振り) | 価格1人あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 209 | 0.32 | 67 | 2 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.43 | 104 | 4 |
取り方:連結売上536.9億円から提出会社469.7億円を引いた約67億円。人数は売上比の推定割り振り。利益率は3.0%と置いた推定。本社費用はまとめて調整に入れた。
リスクと懸念
日本製鉄と製鉄業への依存
日本製鉄は連結売上の30%を占め、製鉄は提出会社の完成工事高の41%を占める。国内の粗鋼生産は細り、高炉の休止や再編が進む。客の設備投資の方針が変わるだけで、工事量が大きく動く。
定期修理の周期と利益の振れ
化学と石油・天然ガスの定期修理は、2年ごとの周期で山と谷が来る。2026年3月期は谷で、営業利益が4割減った。受注残の増加が売上と利益になる時期は、客の工事計画しだいである。
人手不足と賃金の上昇
施工と保全は人の手に頼る。売上を伸ばすには社員を増やすしかなく、増やせなければ仕事を断ることになる。賃金の上昇を受注価格に転嫁できなければ、営業利益率は下がる。
財務上の条件が付いた借入
92億円の借入に、純資産の維持と2期連続の経常損失の回避という条件が付く。2026年3月期は営業キャッシュフローが12億円の支出で、借入は増えた。大型工事の採算悪化や赤字が続けば、借入の再交渉が必要になる。
大型工事の採算と工期のずれ
一括請負の大型工事は、資材や外注費の上昇で採算が崩れるおそれがある。2026年3月期にも、一部の建設工事の工期が翌期にずれた。完成の遅れは、売上と資金繰りの両方に響く。
筆頭株主と大株主の動き
日揮が約20%、光通信系のファンドが約17%を持つ。日揮が持株を増やして子会社化に動く可能性は、プラスにもマイナスにもなり得る。光通信系は担保契約の締結を理由に大量保有の変更を出しており、株の動きが値段を揺らす。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が18億円を大きく上回る
- 受注残の増加が利益になっており、中立の営業利益率を上げる根拠になる。やや楽観の筋書きの重みが増す。
- 日揮との協業で大型の共同案件が発表される
- 売上の底が固くなり、人員の確保も進む。数量の置き方が上振れ、楽観に近づく。
- 日本製鉄が国内の高炉の休止や設備投資の縮小を打ち出す
- 製鉄向けの保全と更新の量が細る。やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- 経常損失が2期続きそうになる
- 財務上の条件に触れ、借入の返済や再交渉を迫られる。悲観の筋書きの重みが一気に増す。
- 日揮が持株を増やし、子会社化を目指す動きが出る
- 経営の自由度は下がるが、買い付け価格が加わる可能性がある。値段の見方が大きく変わる。
見ておくもの
- 受注残と、四半期ごとの営業利益率
- 日本製鉄の国内設備投資・高炉の休止の方針
- 化学プラントの定期修理の周期と、石油・天然ガス向けの動き
- 営業キャッシュフローと有利子負債、財務上の条件への抵触
- 日揮との協業案件の発表、日揮の持株比率の変化
- 最低賃金の上昇率と、受注価格への転嫁の程度
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE(ならした純利益と自己資本から約4〜8%)、k 8%、g 4% の式から出した正当化 PER を土台にした。ROE が k 以下の中立とやや悲観は、上限 1÷k に対し約7〜8割で、今の PER や同業の倍率は見ていない。純資産の6割という足元の値段は比べただけで、倍率の根拠にしていない。新リース会計基準は、今の形(賃借料を営業費用に入れる形)でそろえて置いた。減価償却は取得時の値段のままで、更新投資だけが建築費の上昇で膨らむ点は、営業利益率を3.5%に抑えた理由の一部である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.82 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality+1.25%を足して8.75%。個別の懸念は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。