結論
日本リーテックは、JR東日本の鉄道電気設備工事を主力とする専門工事会社だ。信号・電車線・通信など線路まわりの電気工事のほか、送電線、道路、ビルの電気設備も手がける。売上の約5割弱がJR東日本向けで、同社は議決権の約2割を持つ筆頭株主でもある。
筆者の結論は「適正」だ。割安とも割高とも言い切れない。事業の質は悪くないが、10年後の利益は今より伸びても、株主に戻る分が少なく、価値は今の株価の近くに収まる。
強みは、専門性の高い仕事で発注者と長く結びついていることだ。2026年3月期は営業利益が71億円と過去最高になり、借金はなく、現金が借金を84億円上回る。
弱みは顧客の偏りと、利益の山だ。今の営業利益率9.6%は、過去の中心である5〜8%を大きく超える。JR東日本の発注が変われば、会社は大きく揺れる。
筆者がいちばん気にしているのは資本の使い方だ。稼いだ利益の半分以上を内にためている。投資有価証券は約200億円にのぼると見られる。この資本が稼ぐ力に見合う形で株主に返らない限り、高い倍率はつけにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、リーテックは「堅いが、オーナーの手元にお金が届きにくい会社」だ。事業は10年後も残る。鉄道の安全設備は誰かが直し続けるからだ。
堀は広がらない。専門性は高いが、顧客が一人に偏り、価格を決める力は発注者にある。今より強くなるとみる材料は、送電線とデータセンターの工事に限られる。
利益のうち、オーナーの手元に戻るのは半分ほどだ。残りは現金と株式にたまり、その運用の稼ぎは低い。ためた資本が、事業の稼ぎと同じ速さで利益を生まない点が重い。
気になるのは、今の利益が過去最高の山にあることだ。単価転嫁と大型案件が重なった結果で、この水準が続く保証はない。
安全域は厚くない。現金と投資有価証券の合計は時価総額の半分近くあるが、戻り方に疑問がある以上、筆者は帳簿どおりには見ない。払ってよい値段は、今の水準をやや下回る辺りまでだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、JR東日本の線路まわりの電気設備を、つくり、直し、更新することにある。信号、電車線、通信、駅の電気設備が中身だ。当社を含む2社だけが請け負える専門分野とされ、新規参入がむずかしい。
仕事は4つの部門に分かれる。鉄道電気設備が売上の約半分、残る半分を送電線、道路設備、屋内外電気設備が分け合う。これに鉄道標識や電設資材をつくる兼業が、売上の約4%ほど加わる。
顧客の偏りは大きい。JR東日本が売上の約47%、電力会社が約17%を占める。送電線は電力会社、道路は首都高や高速道路会社が発注者になる。
受注の先行きを示す繰越工事高は、2026年3月期末で約600億円と、売上の8割強に当たる。うち鉄道が約半分、送電線が約3割だ。
工事は人手で決まる。技術系社員は900人弱で、1人当たりの完成工事高は8,000万円ほどになる。人を増やすのは簡単ではなく、会社は単価と生産性で伸ばす道を選んでいる。
売上の大半は、受注してから数か月から数年かけて仕上げる工事だ。工事の進み具合に応じて売上が立つので、繰越工事高が先行きを見る目安になる。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは「発注者との結びつきと専門性」にある。堀、つまり他社がまねできない強みの中身は、JR東日本の設備を長年扱ってきた技術と信頼だ。鉄道の電気工事は安全に直結し、実績のない会社には任せにくい。
ただし堀は一人の顧客に預けてある。JR東日本が発注の仕方を変えたり、工事を内に取り込んだりすれば、受注は一度に動く。しかも議決権の約2割を持つ筆頭株主でもあり、価格の主導権は向こうにある。
収益力は並だ。過去10年のROEは中央値で7%弱にとどまり、2026年3月期の8%も、資本コストを少し上回る程度だ。営業利益率は5%台まで落ちた年もある。
資本の使い方に、筆者はいちばん厳しい目を向ける。自己資本比率は68%と厚く、現金も借金を上回る。そのうえ、持ち合い株とみられる投資有価証券が簿価で約200億円ある。稼ぐ力に比べて、抱え込んだ資本が重すぎる。
筆者が好むのは、競争が緩く、稼いだ現金を株主に戻す会社だ。リーテックは前半だけを満たしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鉄道の電気工事は、安全と更新の投資に支えられる安定市場だ。JR東日本は「グループ安全計画2028」で、期間中に約1.3兆円の安全投資を見込む。ホームドア、地震対策、老朽設備の更新が中心で、景気に左右されにくい。
競争は準寡占だ。電車線工事ではJR東日本系の日本電設工業が同業にあたり、リーテックの株主にも名を連ねる。顧客が同じ系列の会社どうしなので、価格で激しく争うより、仕事を分け合う形になりやすい。
送電線は追い風が強い。再生可能エネルギーの接続、地域間の送電網の増強、鉄塔の建て替えが続く。2026年3月期は大型案件と、データセンター向けのエネルギー設備の工事を受注した。送電線の繰越工事高は約175億円と、前の年より大きく積み上がった。
屋内外の電気設備では、駅ビルの改修や再開発、データセンター関連が見込まれる。道路では首都高の大型工事と高速道路の老朽化対策が柱になる。
最大の制約は人手だ。2024年の残業規制のあと、技能者の確保はむずかしい。工事量は増やせないので、伸びは単価に頼ることになる。業界では価格転嫁が進んでおり、この数年の増益はその表れだ。
資本政策と M&A
株主還元は、筆者の目には控えめだ。配当は株主資本配当率(DOE)で決め、2027年3月期は3.2%から3.6%へ引き上げた。それでも配当は利益の4割前後にとどまる。中期計画の3年間の還元は約60億円で、自社株買いの確認はできなかった。
資本の積み上がりが課題だ。自己資本は10年前の約1.8倍になった。営業キャッシュフローは3年累計で約47億円と、目標の100億円に届いていない。工事の代金回収が遅れる分を運転資金で抱えていることが、一因とみられる。
政策保有株は上場で11銘柄あり、中期計画の期間内に10〜20億円を圧縮する方針だ。ただ、これまでの削減実績はないと会社自身が示している。
成長投資は3年で50億円超を見込み、M&Aや提携も使う。具体的な買収先は示されていない。
株主構成は安定している。JR東日本が約2割、日本電設工業、信号関連の会社が数%ずつを持つ。TOB(公開買い付け)の動きは確認できなかった。関係が深い株主が多く、資本政策を外から迫る力は弱い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
JR東日本の安全投資は10年先まで続く。ホームドア、地震対策、老朽設備の更新は、景気に関係なく出る仕事だ。しかも鉄道の電気工事は当社を含む2社だけが請け負える領域とされ、新規参入が入りにくい。
人手不足は追い風になる。工事ができる会社が限られるので、単価を上げやすい。会社の目標でも、技術系社員1人当たりの完成工事高は8,000万円台から8,500万円へ引き上げられた。
送電線と屋内外の電気設備が、新しい柱に育つ。再生可能エネルギーの接続、系統の増強、データセンター向けの設備で、繰越工事高は前の年より約120億円増えた。長期ビジョンの売上1,000億円、営業利益100億円は、手の届く目標だ。
資本政策にも余地がある。配当を引き上げた会社は、純現金と投資有価証券を持ち、還元を増やす力がある。10年で利益が5割近く増え、還元も厚くなれば、株価は大きく上に振れる。
鉄道の電気工事は専門性が高く、一度築いた信頼は簡単に崩れない。JR東日本の設備を長く扱ってきた実績は、新規の会社が数年で追いつけるものではない。
慎重な見方
今の利益は山にある。営業利益率9.6%は、この10年で最高だ。2023年3月期には5%に落ちており、価格転嫁と大型案件の重なりが剥がれれば、利益は簡単に減る。
顧客が一人に偏りすぎている。JR東日本は売上の約半分を占め、価格の主導権を握る。同社は筆頭株主でもあり、下請け構造の中で利益が決まる。発注方式が変われば、数量も単価も一度に動く。
人手の制約は成長を縛る。採用は3年で38名と、目標150名の4分の1だった。工事を増やしたくても人がいない。伸びは単価頼みで、人件費も同じ速さで上がる。
何より、稼いだ利益が株主に戻らない。自己資本比率は68%と厚いのに、還元は控えめで、政策保有株の削減実績もない。ためた資本の稼ぎは低く、ROEは8%を下回る。資本が増えるほど、ROEは薄まる。高い倍率をつける理由が見当たらない。
さらに、送電線の大型案件は毎年出るわけではない。繰越工事高が増えた年の次は、売上が谷に入る年が来る。山の利益に高い倍率を払うべきではない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが少し強い。事業の質は認めるが、今の利益は山にあり、ためた資本の稼ぎは低い。10年後のROEは、中立でも資本コストの7.75%を下回る。
確率は中立に厚く置いた。ただ悲観側をやや多めにし、強気は1割弱にとどめた。強気の筋書きでも、還元が増えなければ価値の伸びは限られる。
結論として、価値は今の株価のそばに収まり、大きな差は出ない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,736 円927 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,212 円301 億円)。 今の値に割り戻すと 2,657 円660 億円、今との差 +9.1%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,092 円1,512 億円 | 1,688 円419 億円 | +219.5% | +12.3% | 622 円154 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,752 円1,179 億円 | 1,430 円355 億円 | +153.9% | +9.8% | 1,360 円338 億円 |
| 中立 | 38% | 4,059 円1,007 億円 | 1,273 円316 億円 | +119.0% | +8.2% | 2,026 円503 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,206 円548 億円 | 1,011 円251 億円 | +32.1% | +2.8% | 708 円176 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,758 円436 億円 | 564 円140 億円 | −4.6% | −0.5% | 232 円58 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,736 円927 億円 | 1,212 円301 億円 | +103.2% | +7.3% | 4,949 円1,228 億円 |
今の株価時価総額 2,435 円604 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 鉄道の更新と送電線が重なり、1,000億円企業になる 利益 97 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 6,092 円1,512 億円
10年後、リーテックは売上1,000億円を超える会社になっている。JR東日本の安全投資と更新工事が途切れず、鉄道電気の仕事は今の水準を保つ。
伸びるのは送電線と屋内外の電気設備だ。再生可能エネルギーの接続や系統の増強、データセンターの電気設備が続き、数量は2割ほど増える。人手不足は変わらず、単価は物価並みに上がる。
営業利益は120億円前後になり、会社の長期ビジョンの100億円を超える。還元も増え、ROEは9%台に乗る。
M&Aで電気工事の会社を加え、人手の制約を補う手もある。ただ、そこまで揃う確率は高くない。
- 鉄道電気設備:数量 460(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 497 億円・営業利益 76 億円。鉄道電気設備
- 送電線・道路設備:数量 354(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 382 億円・営業利益 54 億円。送電線・道路設備
- 屋内外電気設備:数量 167(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 180 億円・営業利益 26 億円。屋内外電気設備
- 兼業・不動産賃貸:数量 132(担当人員(人、推定))× 価格 40(1人当たり売上(百万円))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。兼業・不動産賃貸
倍率:事業の純利益 94 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)139 億円。全体の PER 16.28 倍、時価総額 1,676 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 15.65 倍・時価総額 1,570 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:JR東日本の安全投資が続き、送電線とデータセンター工事が想定以上に積み上がる必要がある。顧客が1社に偏る会社なので、強気は1割弱にとどめた。
やや楽観 22% 送電線が育ち、利益率が今の高さを保つ 利益 81 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 4,752 円1,179 億円
送電線と屋内外の電気設備が育ち、利益率が今の高さに近いまま続く。鉄道電気の数量は横ばいで、単価は物価並みに上がる。
送電線・道路は、系統の増強と首都高の工事で数量が1割強増える。屋内外の電気設備もデータセンターと再開発で1割強増える。
営業利益は100億円前後で、利益率は9%台にとどまる。配当は株主資本配当率3.6%を守り、還元は純利益の半分を少し超える。
人手不足で単価の転嫁は続く。採用と育成の投資も実を結ぶ。ただ数量は人の数に縛られ、大きくは増えない。
鉄道電気を支える安全投資は続き、受注の見通しも立てやすい。会社の中期目標である営業利益77.5億円を上回る水準が、10年かけて定着する姿だ。
- 鉄道電気設備:数量 447(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 483 億円・営業利益 69 億円。鉄道電気設備
- 送電線・道路設備:数量 325(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 351 億円・営業利益 46 億円。送電線・道路設備
- 屋内外電気設備:数量 153(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 165 億円・営業利益 23 億円。屋内外電気設備
- 兼業・不動産賃貸:数量 126(担当人員(人、推定))× 価格 40(1人当たり売上(百万円))→ 売上 51 億円・営業利益 6 億円。兼業・不動産賃貸
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)139 億円。全体の PER 15.05 倍、時価総額 1,322 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.41 倍・時価総額 1,224 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:安全投資と送電線の受注は見通しやすい。利益率が今の高さを保つ筋書きで、起こりやすさは2割強と見る。
中立 38% 単価で伸びる、資本をためこむ会社 利益 71 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,059 円1,007 億円
単価で伸びる、成熟した会社になる。鉄道電気の数量は人手の制約でほぼ横ばいで、単価が物価並みに上がり、売上が名目で伸びる。
送電線と屋内外の電気設備は、数量が5%ほど増える。売上は1,000億円に届き、会社の長期ビジョンに近づく。ただ営業利益率は8%台に下がり、営業利益は90億円弱にとどまる。
配当は株主資本配当率3.6%の水準を守る。しかし利益の半分は内にたまり、自己資本は1,000億円を超える。ROEは7%前後と、資本コストを下回る。
JR東日本の発注構造は変わらない。今の姿の延長にある、驚きの少ない10年だ。
- 鉄道電気設備:数量 440(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 475 億円・営業利益 64 億円。鉄道電気設備
- 送電線・道路設備:数量 305(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 329 億円・営業利益 41 億円。送電線・道路設備
- 屋内外電気設備:数量 143(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 108(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 154 億円・営業利益 20 億円。屋内外電気設備
- 兼業・不動産賃貸:数量 114(担当人員(人、推定))× 価格 40(1人当たり売上(百万円))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。兼業・不動産賃貸
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)139 億円。全体の PER 14.1 倍、時価総額 1,102 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13.46 倍・時価総額 1,009 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:数量は横ばい、利益率は今より下がって落ち着くという筋書きが、もっとも起こりやすい。確率は4割弱とした。
やや悲観 22% JR東日本の発注が絞られ、利益率が元に戻る 利益 45 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 2,206 円548 億円
発注者の価格圧力が強まり、利益率が元に戻る。JR東日本が工事の発注を絞り、鉄道電気の数量は7%ほど減る。単価の上昇も物価を下回る。
送電線の大型案件が一巡し、受注の波が谷に入る年が続く。屋内外の電気設備でも、元請けの大手に値段を叩かれる。営業利益率は6%前後まで下がる。
人件費だけは上がり続ける。還元は続くが、増配の余地は小さい。投資有価証券の売却も進まず、資本は積み上がる。
工事量を埋め合わせる別の柱が育たない。ROEは5%を割り、稼ぐ力が資本コストを大きく下回る。
鉄道という安定した仕事が細るわけではない。ただ単価の主導権を握る発注者に押され、稼げる幅が縮む10年になる。
- 鉄道電気設備:数量 415(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 105(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 435 億円・営業利益 50 億円。鉄道電気設備
- 送電線・道路設備:数量 276(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 105(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 289 億円・営業利益 30 億円。送電線・道路設備
- 屋内外電気設備:数量 132(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 105(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 138 億円・営業利益 15 億円。屋内外電気設備
- 兼業・不動産賃貸:数量 108(担当人員(人、推定))× 価格 39(1人当たり売上(百万円))→ 売上 42 億円・営業利益 4 億円。兼業・不動産賃貸
倍率:事業の ROE 5.3%(k 7.5% を大きく下回る)。PER の上限は 1÷k の 12.9 倍。伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 8 割の 10.3 倍に置いた。余った現金・有価証券は 0.75 倍の約 139 億円に減るとして足した。
確率:今の山の利益率が平均へ戻る動きと、JR東日本の価格圧力が重なる筋書き。2割強に置いた。
悲観 10% JR東日本の発注が構造的に変わり、専門会社でなくなる 利益 24 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,758 円436 億円
JR東日本が発注の仕方を変え、リーテックは優良な専門会社ではなくなる。工事を大手ゼネコンや系列の会社にまとめて出す方式が広がり、リーテックは下請けに近づく。
鉄道電気の数量は2割以上減り、単価も物価に追いつかない。送電線は電力会社が発注先を絞り、道路も競争入札で値が下がる。営業利益率は4%を割り込む。
固定費の重い本社と人員は、すぐには減らせない。利益は今の3分の1以下になる。
投資有価証券の価値は残るが、売っても事業の稼ぎは戻らない。会社は資産を食いながら小さくなる。
鉄道の電気工事で「2社だけが請け負える」という強みも、発注方式が変われば意味を失う。株主は、資産の価値に頼るほかなくなる。
- 鉄道電気設備:数量 348(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 97(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 337 億円・営業利益 35 億円。鉄道電気設備
- 送電線・道路設備:数量 247(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 98(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 243 億円・営業利益 24 億円。送電線・道路設備
- 屋内外電気設備:数量 116(技術系社員の人数(人、推定))× 価格 98(1人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 114 億円・営業利益 11 億円。屋内外電気設備
- 兼業・不動産賃貸:数量 96.0(担当人員(人、推定))× 価格 36(1人当たり売上(百万円))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。兼業・不動産賃貸
倍率:鉄道の発注が変わり利益率が 4% を割り込む構造的な負け筋。純利益は約 24 億円で ROE が k 以下のため、稼ぐ力は PER 上限 1÷k で 約 340 億円(余った現金を足して)。総資産 約 1,013 億円を強制売却で 75% しか回収できず、負債 約 321 億円は全額払うとして残る約 439 億円が大きい方。これを今の自己資本 693 億円に対する PBR 0.63 倍に置いた。
確率:顧客が1社で、発注方式の変更や工事の内製化が起きれば構造的に負ける。1割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鉄道電気設備
JR東日本の信号・電車線・通信・駅の電気設備の工事。当社を含む2社だけが請け負える専門分野とされる。
| 数量技術系社員の人数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 447 | 81 | 360 | 54 |
| 10 年後 中立 | 440 | 108 | 475 | 64 |
取り方:部門別の売上は開示がなく、繰越工事高(鉄道 290 億円、全体の約49%)と、鉄道電気が売上の約5割とされる記述から 360 億円と推定。電気設備工事業全体のセグメント利益 101 億円を売上比で割り振り 54 億円。人数は 技術系社員 1 人当たり完成工事高 80.6 百万円(会社の KPI)で割り戻した(約 870 人のうちの配分は推定)。数量は実質、価格は名目で物価並みに上がる想定。
送電線・道路設備
電力会社向けの送電線・鉄塔の工事と、首都高・高速道路向けの道路設備(ITS、強靱化)の工事。
| 数量技術系社員の人数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 290 | 81 | 234 | 31 |
| 10 年後 中立 | 305 | 108 | 329 | 41 |
取り方:送電線(繰越 175 億円)と道路設備(繰越 52 億円)の売上を、繰越工事高と電力会社 16.5% の顧客比率から推定して合算(送電線約 150 億円・道路約 84 億円)。利益は電気設備工事業の利益 101 億円を売上比で割り振った。人数は 1 人当たり 80.6 百万円で割り戻した推定。
屋内外電気設備
ビル・駅ビルの電気設備、再開発、データセンター向けの屋内外の電気工事。
| 数量技術系社員の人数(人、推定) | 価格1人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 137 | 81 | 110 | 16 |
| 10 年後 中立 | 143 | 108 | 154 | 20 |
取り方:繰越工事高(77 億円)の比率から売上を約 110 億円と推定。利益は電気設備工事業の利益 101 億円を売上比で割り振った。人数は 1 人当たり 80.6 百万円で割り戻した推定。
兼業・不動産賃貸
鉄道標識・電力・信号関連の電設資材の製造販売(兼業)と、不動産の賃貸。
| 数量担当人員(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 30 | 36 | 5 |
| 10 年後 中立 | 114 | 40 | 46 | 5 |
取り方:電気設備工事業が売上の 95.2%、兼業が 4.3%、不動産賃貸が 0.5% という構成比から、兼業と賃貸で約 36 億円と置いた。利益 5 億円と人員 120 人は推定。
リスクと懸念
JR東日本への依存
売上の約47%がJR東日本向けで、電力会社を加えると約3分の2が2つの顧客に集まる。JR東日本は議決権の約2割を持つ筆頭株主でもあり、価格の主導権は向こうにある。発注方式や工事の内製化を見直せば、受注が一度に動く。分散の効かない構造的なリスクだ。
今の利益が山にある可能性
2026年3月期の営業利益率9.6%は、この10年で最高だ。2023年3月期は5%まで落ちている。価格転嫁と送電線の大型案件が重なった結果で、案件が一巡すれば利益は減る。会社は営業利益の目標を上げたが、山の利益を前提にしている点に注意が要る。
人手の制約
採用は3年累計で38名と、目標150名の4分の1だった。1級施工管理技士の合格者も目標を大きく下回る。受注があっても施工できず、売上の伸びは単価に頼る。人件費の上昇も続き、採用競争は他の建設会社とも重なる。
積み上がる資本と低いROE
自己資本比率は68%で、配当は利益の4割前後にとどまる。営業キャッシュフローは3年累計で目標の半分以下で、政策保有株の削減実績もない。資本が積み上がるほどROEは薄まり、10年後は7%前後と資本コストを下回る。還元が増えなければ、倍率は上がらない。
送電線の受注の波
送電線は大型案件の有無で売上が振れる。2026年3月期は繰越工事高が大きく積み上がったが、案件が一巡する年は必ず来る。電力会社の設備投資の方針や、系統増強の計画の遅れも影響する。単年の受注で全体を判断しないほうがよい。
安全と品質
鉄道の電気工事は、事故が信用に直結する。2026年3月期は重大事故が1件あった。死亡事故やコンプライアンス違反はなかったが、発注者との関係に響く事故が起きれば、受注の停止や制限につながりうる。
政策保有株と株価の評価
投資有価証券は簿価で約200億円とみられ、上場銘柄は11ある。株価の下落は自己資本を直接削る。削減は10〜20億円と小さく、実績もない。保有の合理性を示せなければ、資本効率を問う株主の目は厳しくなる。
今後の分かれ目
- JR東日本が工事の発注方式を変え、一括発注や内製化を進めた時
- 鉄道電気の数量と単価が一度に落ち、利益は半分以下になる。10年の悲観の筋書きに近づく。
- JR東日本が提携を深め、TOB(公開買い付け)で子会社化した時
- 買い付け価格は今の時価総額に上乗せされるのが普通で、筋書きの上振れ要因になる。ただ可能性は低いと見て、確率には織り込んでいない。
- 送電線とデータセンター関連の受注が、見込みを大きく上回って積み上がった時
- 売上1,000億円、営業利益100億円の長期ビジョンが前倒しになり、強気の筋書きに近づく。
- 営業利益率が7%台に戻った時
- 今の利益が山だったことが確認される。中立の筋書きより慎重に進み、評価も下がる。
- 政策保有株の売却を進め、自社株買いに回した時
- 資本の積み上がりが解消し、ROEが上がる。還元の戻り方の評価が1.0に近づき、価値が上がる。
- 高い価格でM&Aを実行した時
- のれんの償却が利益を削り、ROEが下がる。人手を買う目的でも、価格が高ければ株主の取り分は減る。
見ておくもの
- JR東日本の設備投資計画と、鉄道電気設備の受注・繰越工事高
- 営業利益率の推移(8%台後半を保つか、7%台に戻るか)
- 送電線・屋内外電気設備の受注額と繰越工事高
- 技術系社員の人数と1人当たり完成工事高(人手の確保と単価の転嫁)
- 配当方針(DOE)、自社株買いの有無、政策保有株の削減の実績
- JR東日本の持株比率の変化と、大口株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEと成長率4%から正当化PERを出して置いた。ROEが資本コスト(7.75%)を下回る中立・やや悲観は、上限の1÷k(約12.9倍)の8〜8.5割に置いた。ROEが上回る強気側は下限の13倍にした。今のPER11倍台を基準にしてはいない。余った現金と有価証券(約185億円)は、戻り方0.5で別に足し、悲観側は0.75倍・0.5倍に減らした。悲観は総資産の75%回収・負債全額払いで残る約439億円で測り、過去のPBRの底は使っていない。自己資本は今の693億円に純利益の合計を足し、還元を引いて流した。リース負債は小さく、新リース会計基準の影響は小さいと見るが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。投資有価証券の約200億円は簿価の1株当たりの値からの推定で、上場銘柄の合計かどうかは確認できていない。 持ち合い株の評価差額金(税引き後23億円)は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。 2026-10-22:余り資産を R4 の holdings・rental に移したので、時価総額を式で出し直した(楽観〜中立の PER は新しい上限に置き直し、ほかは倍率そのまま:楽観 1569.8 → 1456.9(PER 15.02 倍)・やや楽観 1223.5 → 1118.9(PER 13.78 倍)・中立 1009.1 → 945.1(PER 13.33 倍)・やや悲観 506.8 → 462.5(PER 10.3 倍))。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.25% = 7.75%。理由は quality_why。JR 東日本への依存や資本の積み上がりは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.50%。