結論
大本組は、岡山を地盤に土木と建築を手がける中堅ゼネコンだ。売上は約870億円で、土木が半分近くを占める。筆者の結論は「割高」。事業は堅いが、稼ぐ力が株主の求める水準にまだ遠い。
強みは手持ち工事の厚さだ。繰越工事は1,480億円あり、売上の約1.7年分に当たる。土木は国土交通省の工事が中心で、国土強靱化の追い風を受ける。自己資本比率は66%と高く、財務は盤石だ。
弱みは利益の薄さだ。営業利益率は2.7%にとどまり、ROEは3%に届かない。厚い自己資本が稼ぎにつながっていない。会社は2027年3月期に営業利益率4%台への回復を計画するが、それでも資本コストには届かない。
中立の筋書きでは、10年後の営業利益は50億円ほどになる。それでも事業の価値は、今の時価総額を大きく下回る。大株主の持ち株会社と財団で株の過半を握り、売買も細い。外からの再編で価値が動く話は、あまり当てにできない。今の株価は、利益の回復を先取りしすぎていると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、大本組は「安全だが、安くない」会社だ。
事業は分かりやすい。国や企業から工事を請け負い、完成させて代金を受け取る。純有利子負債はほぼゼロで、潰れる心配は小さい。
問題は稼ぐ力だ。工場も店も要らない事業なので、利益の大半は株主に回せる。だが、その利益そのものが小さい。自己資本687億円に対し、純利益は18億円しかない。純有利子負債がほぼ無いので、自己資本は工事の代金債権や取引先の株式など、稼ぎを生みにくい資産に姿を変えているとみられる。資本が十分に働いていない。
経営に求めたいのは、資本を働かせる意思だ。配当性向70%は株主に優しい。それでも、利益率を上げる策や、眠る資産を減らす策が、もっと要る。
安全域は見えない。強気の筋書きでも今の値段に届かず、中立では大きく下回る。堅い会社でも、払う値段が本質価値を超えているなら、筆者は割高と考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。土木と建築で、売上はほぼ半々だ。
土木は、道路・橋・トンネル・ダム・河川などを造る。発注者は官公庁が中心で、国土交通省だけで売上の約18%を占める。繰越工事の6割が土木で、先の売上が見えやすい。
建築は、民間の発注が主体だ。官公庁向けの建築は、売上の数%にすぎない。土木より利益率が低く、景気や資材高の影響を受けやすい。
報告の区分は、建築と土木の二つだけだ。海外事業や不動産開発は、事業の柱になっていない。従業員は約820人で、建築と土木の現場要員はほぼ同数だ。
受注は民間と官公庁にほぼ半々で、手持ち工事の民間は727億円、官公庁は756億円ある。官公庁の繰越が民間をやや上回るのが特徴だ。
会社は、設立100年にあたる2036年へ向けた「長期ビジョン2036」を掲げる。受注と売上をともに1,000億円にし、ROEを8%以上にする目標だ。第一段階の中期経営計画(2024〜2026年度)は、累進配当と配当性向70%を柱に置く。最終年度の目標は、営業利益40億円、純利益27億円だった。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば「財務は優良、収益力は並以下」だ。
強みは三つある。一つ目は財務の厚さだ。自己資本比率は66%で、純有利子負債はほぼゼロ。景気の谷でも倒れにくい。二つ目は、国の土木工事を請け負う実績だ。国土交通省向けの売上は直近で161億円ある。三つ目は、大株主が固く、短期の業績に振り回されにくい点だ。
弱みも三つある。一つ目は利益率の低さだ。営業利益率は直近で2.7%と、同じ領域の会社の半分ほどにとどまる。二つ目は規模の小ささだ。売上は1,000億円に届かず、価格を決める力は弱い。三つ目は資本の効率だ。取引先の株式が約136億円あるが、稼ぎは配当程度しか生まない。
資本の使い方は、配当に偏っている。配当性向70%は株主に優しい。だが事業へ再投資して稼ぐ力を上げる道筋は、会社の資料からまだ見えない。2036年にROE8%という目標も、今の3%弱から見ると遠い。
筆者は、堀、つまり他社がまねできない強みは深くないと見る。建設は毎年、受注を取り直す仕事だからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、量が増えない成熟市場だ。人口が減り、地方の工事は先細る。それでも今は、請け負う側に有利な局面にある。2024年4月に残業の上限規制が始まり、技能者が足りなくなった。ゼネコンは仕事を選べるようになり、値上げも通りやすい。上場ゼネコン50社の2025年度の受注は16兆円台で、利益も過去最高の水準だ。
大本組は、その波に乗り切れていない側にいる。同じ領域の会社が営業利益率5〜7%に達するなか、大本組は2%台にとどまる。ただ、直近の受注は26%増え、繰越も厚い。採算の良い工事が売上に入れば、利益率には戻る余地がある。過去10年の最高でも6.5%で、同業の水準には届きにくい。
追い風は国土強靱化だ。2026年度から5年で20兆円強の計画があり、道路・橋・上下水道の更新が続く。土木が半分を占める大本組には、直接の追い風になる。
競合は、戸田建設・安藤・間・熊谷組・西松建設・奥村組などの準大手と、地場のゼネコンだ。市場は分散していて、入札で価格を競う場面が多い。10年先は、公共投資が一巡して、実質では横ばいから緩やかな縮小に向かうと筆者は見る。人手が足りない業界では、売上を伸ばす力より、採算を守る力が会社の差になる。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、配当を厚くすることだ。中期経営計画は、配当性向70%を目安にした累進配当を掲げる。2026年3月期の配当性向は約70%で、2027年3月期はさらに増配の予想だ。株主優待も2026年に拡充した。
自己資本比率は66%と高く、会社は70%台を目安にする。自己資本を薄くしてROEを上げる方針ではない。還元は配当が中心で、自社株買いは前面に出ていない。
取引先の株式は、上場分で33銘柄・約136億円ある。自己資本の2割弱で、同業の目安の範囲内だ。2025年10月の取締役会は、売却すべき銘柄は無いと結論づけた。現金化で資本を動かす力は、同業より弱い。
株主は、持ち株会社のOHMOTOホールディングスが約32%、公益財団法人の大本育英会が約24%を持つ。ここに大百興産を加えると6割を超える。大きな買収で価値を壊すタイプではない。ただ、TOBなど外からの再編が起きる余地も小さい。
還元の置き方:中計は配当性向70%を目安にした累進配当。10年の還元は、純利益の合計の70%に置いた(悲観は減配を避けられない前提で5割強)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設の構造が変わった。受け手が仕事を選べる時代になり、採算の悪い工事を断ってよい。大本組の直近の受注は1,147億円と26%増え、繰越は1,483億円と売上の約1.7年分ある。先の売上はほぼ見えている。
会社は2027年3月期に、営業利益率4.3%への回復を計画する。第1四半期の営業利益は13億円と、前年から大きく伸びた。計画は保守的で、上振れの余地がある。2015年以降でも、営業利益率が6%台の年は2回ある。
土木は国土強靱化の予算に乗る。国土交通省向けの売上は161億円で、今後5年は更新工事が続く。土木が半分を占める強みが、そのまま利益に効く。
資本の面でも安心がある。自己資本比率は66%で、借金なしに配当性向70%を出せる。ROEの目標は2036年に8%以上だ。大株主の結束が固く、短期の株価に振り回されず、工事の質を守れる。
配当だけで、今の株価に対し3%台半ばの利回りがある。待つ間も報われる。
慎重な見方
好調は一時の戻りで、構造は変わっていない。営業利益率は直近でも2.7%だ。2023年3月期には0.6%まで落ちた。同業が5〜7%を出す環境で2%台にとどまるのは、受注の質が低いことの表れだ。
計画の4.3%も、資材と人件費の上昇を転嫁できるかに懸かる。公共工事は入札で、価格を決める力が弱い。繰越1,483億円に採算の悪い工事が混じっていれば、売上が増えても利益は伸びない。
資本の効率にも問題がある。ROEは3%に届かず、資本コストの半分にも満たない。配当性向70%は、成長に回せる資金を絞る。利益が小さいまま配当を続けても、価値は増えない。取引先の株式が自己資本の2割弱に眠り、会社に売る気配も薄い。
大株主が過半を握る会社は、少数株主のために動く力が弱い。TOBへの期待も、外の資本が入る余地が小さく、当てにできない。10年先、公共投資が一巡して地方の需要が縮めば、低採算の工事に頼る姿へ戻るおそれがある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。事業の安定と繰越の厚さでは、強気の見方に分がある。だが値段は、資本コストを超える稼ぎで決まる。そこでは慎重な見方が勝つ。利益率は同業の半分ほどで、10年後も資本コスト8%に届かない。確率は中立に4割弱を置き、悲観側へやや厚くした。悲観を1割強にしたのは、2023年3月期に利益率が0.6%まで落ちた実績があるからだ。強気の見方が強調する繰越の厚さは、数年の利益を支えるが、10年先の利益率を守る力ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,696 円431 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 698 円178 億円)。 今の値に割り戻すと 1,260 円321 億円、今との差 −39.4%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,802 円713 億円 | 990 円252 億円 | +82.3% | +6.2% | 228 円58 億円 |
| やや楽観 | 16% | 2,424 円617 億円 | 884 円225 億円 | +59.1% | +4.8% | 529 円135 億円 |
| 中立 | 38% | 2,045 円520 億円 | 778 円198 億円 | +35.7% | +3.1% | 1,073 円273 億円 |
| やや悲観 | 28% | 957 円244 億円 | 601 円153 億円 | −25.1% | −2.8% | 436 円111 億円 |
| 悲観 | 12% | 786 円200 億円 | 275 円70 億円 | −49.0% | −6.5% | 127 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,696 円431 億円 | 698 円178 億円 | +15.1% | +1.4% | 2,393 円609 億円 |
今の株価時価総額 2,080 円529 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 採算改善が定着し、土木が伸びる 利益 54 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,802 円713 億円
10年間、採算を選ぶ受注が続く。繰越の厚さを背景に、建築の利益率は4%へ、土木は6.5%へ上がる。国土強靱化の更新工事を取り込み、土木の施工量は実質で15%増える。値上げも物価を少し上回って通る。営業利益は70億円ほどで、2036年の長期ビジョンが描く姿に近づく。配当性向70%は守られ、自己資本は厚くなり過ぎない。ROEは7%近くまで上がる。それでも資本コストには届かない。国内の量が実質で伸びにくい点、利益率が同業の上位に届かない点は変わらない。大本組にとって最も良い10年だ。この筋書きでも、同業の上位が出す利益率には届かない。受注の質を上げる地道な努力が、10年かけて実を結んだ姿である。
- 建築:数量 66.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.66(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 645 億円・営業利益 26 億円。67万人日 × 1人日あたり 9.66万円、利益率 4.0%
- 土木:数量 66.7(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 681 億円・営業利益 44 億円。67万人日 × 1人日あたり 10.21万円、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)46 億円。全体の PER 12.35 倍、時価総額 713 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の質が上がり、国土強靱化の土木も取り込み続ける筋書き。10年続けて当たる必要があり、実績の利益率の低さから確率は低く置く。
やや楽観 16% 転嫁が進み、利益率が4%台へ戻る 利益 46 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 2,424 円617 億円
会社計画どおり、営業利益率が4%台に戻る。建築は3.7%、土木は5.9%で、値上げは物価をやや上回って通る。土木は国土強靱化で、施工量が実質で8%ほど増える。建築は横ばいだ。営業利益は60億円近くになる。配当性向70%を守り、自己資本はゆっくり増える。ROEは6%近くまで上がるが、資本コストには届かない。公共投資の一巡は2030年代の後半に来るが、更新工事が下支えする。同業の水準には届かないものの、過去10年の中央値を上回る利益率を保つ。受注の質が少しずつ上がり、低採算の工事が減っていく姿だ。繰越の厚さが採算の改善を支え、官公庁と民間のバランスも保たれる。大きな買収や新規事業には手を出さず、本業の磨き込みに徹する。
- 建築:数量 63.6(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.52(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 605 億円・営業利益 22 億円。64万人日 × 1人日あたり 9.52万円、利益率 3.7%
- 土木:数量 62.6(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 630 億円・営業利益 37 億円。63万人日 × 1人日あたり 10.06万円、利益率 5.9%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)46 億円。全体の PER 12.33 倍、時価総額 617 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画の営業利益率4%台が定着する筋書き。繰越が厚く実現しやすいが、10年続くかは分からない。
中立 38% 量は横ばい、価格だけ上がる成熟 利益 39 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 2,045 円520 億円
建築の施工量は実質で3%ほど減り、土木は国土強靱化で3%ほど増える。価格は物価並みに上がる。営業利益率は4%台前半で、営業利益は50億円ほどになる。会社の計画と同じ水準だ。人手不足の中で、採算を守る力が会社の差になる。配当性向70%は守られるが、利益そのものが小さいため、自己資本は少しずつ厚くなる。ROEは5%ほどで、資本コストの6割にとどまる。大きな失敗も、大きな成功もない平らな道だ。10年後の売上は名目で1,170億円ほどに増えるが、増えるのは主に物価の分で、実質の量はほぼ変わらない。国土交通省向けの工事が下支えになり、赤字に陥ることは避けられる。それでも、株主が求める稼ぎには届かない。
- 建築:数量 61.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.38(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 579 億円・営業利益 19 億円。62万人日 × 1人日あたり 9.38万円、利益率 3.3%
- 土木:数量 59.7(施工量(万人日、実質))× 価格 9.92(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 592 億円・営業利益 31 億円。60万人日 × 1人日あたり 9.92万円、利益率 5.3%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)46 億円。全体の PER 12.29 倍、時価総額 520 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は実質で横ばいかやや減り、価格は物価並み。利益率は会社計画に近い4%台前半へ戻るが、同業には届かない最も標準的な姿。
やや悲観 28% 値上げ疲れと地方の縮みで利益率が2%台へ 利益 26 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 957 円244 億円
地方の人口減と公共投資の一巡で、工事量が実質で1割ほど減る。値上げは止まり、人件費の上昇だけが重い。建築の利益率は2%台、土木は4%に下がる。営業利益は35億円近くにとどまる。会社は配当を守ろうとするが、利益が小さく、自己資本はほとんど増えない。ROEは3%台で、資本コストの半分以下だ。入札で競り合う場面が増え、採算を守る力は弱まる。選別受注を貫けず、低採算の工事を抱える。2020年代前半の低迷が、そのまま10年続く姿に近い。繰越が厚い間は表に出にくいが、新しい受注に切り替わるにつれて、採算の悪さが利益に出てくる。
- 建築:数量 56.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.10(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 510 億円・営業利益 12 億円。56万人日 × 1人日あたり 9.1万円、利益率 2.4%
- 土木:数量 55.1(施工量(万人日、実質))× 価格 9.62(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 530 億円・営業利益 21 億円。55万人日 × 1人日あたり 9.62万円、利益率 4.0%
倍率:ROE 3.3%(純利益 26 億円 ÷ 自己資本 804 億円)。事業の ROE が資本コスト k 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍が上限。利益率が2%台に戻り稼ぐ力が弱い局面で、上限の 7 割の 8.2 倍に置いた。
確率:地方の公共工事の縮小と人手不足が、規模の小さい会社に重くのしかかる。利益率が過去の低迷期に戻る展開で、確率は中立に近い厚みで置く。
悲観 12% 構造的に負け、低採算工事に頼る 利益 9 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 786 円200 億円
構造的に負ける。公共投資が縮み、入札での価格競争が激しくなる。選別受注ができず、低採算の工事ばかりを受ける。建築の利益率は1%、土木は2%まで落ち、営業利益は10億円ほどになる。工事の不具合や取引先の信用悪化で、減損も出る。配当は大きく減らさざるをえない。自己資本は、減損でやや目減りする。それでも財務の体力は残り、倒れはしない。ただ稼ぐ力の回復は見えず、大株主の持ち分が動くとしても、買い手は安い値段しか付けない。10年かけてじわじわ効き、どこかの年に表へ出る。売上は名目では横ばいに近いが、実質では3割近く縮む。固定費を負担する人員の調整も追いつかず、利益は薄くなる。
- 建築:数量 47.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 8.40(1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 401 億円・営業利益 4 億円。48万人日 × 1人日あたり 8.4万円、利益率 1.0%
- 土木:数量 46.4(施工量(万人日、実質))× 価格 8.88(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 412 億円・営業利益 8 億円。46万人日 × 1人日あたり 8.88万円、利益率 2.0%
倍率:構造的に優良でなくなり、減損も出た姿。純利益は10億円に満たず、稼ぐ力は事業の純利益÷k で約100億円にしかならない。床は売れる資産で測る。総資産約1,040億円(自己資本687億円÷自己資本比率66%)を強制売却で55%しか回収できず、負債約350億円は全額払うとして残る約220億円が上限。その9割(売却の費用と税を引く)を、今の自己資本687億円に対する PBR 0.29 倍(時価総額200億円)に置いた。
確率:地方の縮小と入札競争の激化で、構造的に優良でなくなる筋書き。2023年3月期に営業利益率が0.6%まで落ちた実績があり、1割強に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築
民間の建物を請け負って建てる。官公庁向けは少ない。土木より利益率が低い。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 63.6 | 7.00 | 445 | 9 |
| 10 年後 中立 | 61.7 | 9.38 | 579 | 19 |
取り方:建築の売上445億円(有価証券報告書)を、現場の労務量で割った。労務量は開示が無いため、戸田建設など同じ領域の会社と同じ要領で、1人日あたり売上を約7万円と置き、約64万人日と推定した。営業利益は開示を確認できず、全社24億円のうち建築を約9億円(利益率2%)と推定した。
土木
道路・橋・トンネル・河川など官公庁発注が中心の工事。国土交通省向けが売上の約18%。
| 数量施工量(万人日、実質) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 58.0 | 7.40 | 429 | 15 |
| 10 年後 中立 | 59.7 | 9.92 | 592 | 31 |
取り方:土木の売上429億円(有価証券報告書)を、建築と同じ要領で約58万人日と推定した。土木は機械・材料の割合がやや高く、1人日あたり売上は建築よりやや高い。営業利益は全社24億円のうち約15億円(利益率3.5%)と推定した。開示は確認できていない。
リスクと懸念
利益率が低いまま戻らない
営業利益率は直近で2.7%と、同じ領域の会社の半分ほどだ。2023年3月期は0.6%まで落ちた。会社は2027年3月期に4%台へ戻す計画だが、繰越に採算の悪い工事が混じっていれば、売上が増えても利益は伸びない。資材と人件費の転嫁が止まれば、計画は崩れる。
公共投資が一巡して土木が縮む
土木は売上の約半分で、国土交通省向けだけで約18%を占める。国土強靱化の予算は2030年ごろまで厚いが、その後は更新工事が一巡し、人口減で地方の需要が縮む。発注が一部の官庁に偏るため、予算の執行が遅れた時の影響も大きい。
人手不足で施工量が頭打ちになる
2024年問題以降、技能者の確保が最大の制約になった。人が足りなければ、受注があっても売上に変えられない。規模の小さい会社は、大手より人材の確保で不利になりやすい。労務費の上昇は、利益率を直接削る。
資本が稼ぎにつながらない
自己資本は687億円あるが、純利益は18億円しかなく、ROEは3%に届かない。取引先の株式が自己資本の2割弱を占め、2025年10月の取締役会は売却すべき銘柄は無いと結論づけた。配当性向70%を守っても、資本の稼ぎが低いままでは価値は増えない。
大株主の支配で少数株主の力が弱い
持ち株会社のOHMOTOホールディングスと公益財団法人の大本育英会で、株の過半を握る。大百興産などを加えると6割を超える。大株主の方針が変わらない限り、資本政策の大転換や外からの再編は期待しにくく、売買も細いため、売りたい時に売りにくい。
大型工事の失敗と取引先の信用
建設は、大型の請負で代金の回収が遅れる。取引先が傾けば、利益が一度に飛ぶ。工事の不具合による契約不適合責任も、小さい会社には重い。有価証券報告書も、建設市場の縮小と取引先の信用リスクを、特に重要なリスクに挙げている。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2027年3月期に4%を超え、2028年3月期も保たれたら
- 利益率の回復が本物と見て、中立の利益を上方に直し、やや楽観の確率を少し上げる。
- 第1四半期の好調が通期で続き、会社が営業利益の予想を50億円近くまで上げたら
- 計画の保守性が確かめられ、中立の利益を上方に直す。
- 繰越工事の採算が悪く、受注が増えても粗利率が改善しなかったら
- 選別受注ができていないと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 取引先の株式を売り、代金で自社株買いや稼ぎのある投資を始めたら
- 資本の使い方の評価を上げ、ROEの改善を織り込んで楽観側の確率を少し増やす。
- 国土強靱化の予算執行が遅れ、土木の受注が2期続けて減ったら
- 土木の利益率を5%から下げ、中立の利益を数億円から十数億円削る。
- 大株主の持ち分の売却や、準大手同士の統合の話が出たら
- 統合後の資本効率しだい。規模が増え採算が上がるなら価値を押し上げ、割高な買収なら下げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と繰越工事の推移
- 建築・土木の完成工事総利益率
- 営業利益率が4%台に乗るか
- 取引先の株式の売却の有無とその代金の使い道
- 国土交通省向けの受注と国土強靱化予算の執行
- 大株主の持ち分の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コスト k 8%(基本 7.5% + quality 1.0%)に届かない前提で、正当化 PER の上限(1÷k = 約 11.8 倍)の7〜9割に置いた。今の株価や今の PER、同業の倍率を見てから決めたわけではない。悲観は谷の利益ではなく、総資産の55%回収・負債全額払いで残る売れる資産(約220億円)で測り、谷の PBR は使っていない。純有利子負債はほぼゼロで純現金は時価総額の1%にも満たないので、余った現金は分けていない。直近の純利益18億円は、営業利益24億円から年の営業外収益と税を経た値で、一過性の大きな要因は確認できなかった。賃借の負担は重くなく、新リース会計基準による形の変化は小さいとみて、今と同じ形でそろえた。 持ち合い株の含み益は、有報の評価差額金(税引き後)46億円に戻り方0.5を掛けて余り資産に足した。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.35 倍・やや楽観 PER 10→12.33 倍・中立 PER 9.4→12.29 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1% = 8.5%。理由は quality_why。個別のリスク(大株主の支配・M&A の不在など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。