結論
森組は、大阪を地盤とする中堅ゼネコンだ。売上は 280 億円、営業利益は 13 億円。土木と建築を請け負い、集合住宅の旭化成ホームズが 3 割の大株主に座る。
筆者の結論は「事業は割高、手元の現金が株価を支えている」である。営業利益率は 5% 前後と薄く、物価が上がっても利益は金額で横ばいにとどまる。実質では目減りする。
一方、現預金は 64 億円で、時価総額 105 億円の約 6 割にあたる。借金はほぼない。事業に使わない現金は、そのまま株主の価値になる。配当は性向約 5 割で据え置きが続き、株主へ戻す姿勢はあるが、現金の積み上がりは止まっていない。
10 年の本質価値は、今の時価総額より 1 割ほど低い。割安に見えるのは現金の厚みのためで、事業そのものは安くない。筆者は、手元の現金がどう使われるかを一番の分かれ目と見る。
事業の見通しは、人手不足と入札競争の綱引きで決まる。受注は足元で増えたが、本社費用が重く、利益率の上がり余地は限られる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業は買わず、現金に値段をつける」対象だ。ゼネコンは受注産業で、10 年先の利益が読みにくい。堀が薄く、人手不足と入札競争が利益率を絶えず圧迫する。営業利益率が 5% 前後の事業に、高い倍率はつけられない。
一方、手元の現金 64 億円は確かな価値だ。借金はほぼなく、倒産の心配は小さい。ただし未成工事受入金や工事未払金があるため、全部が株主のものではない。筆者は約 30 億円を事業に使わない現金と見た。
筆者がいちばん気にしているのは、この現金の使われ方だ。配当を据え置き、買収や自社株買いもなければ、現金は眠り続ける。少数株主が口を出しにくい株主構成なので、戻る保証はない。
経営は堅実で、赤字を出す心配は小さい。ただ、資本効率を上げる意欲は見えにくい。安全域は現金の厚みから生まれ、事業の成長からは生まれない。
何で稼ぐ会社か
森組は大阪を地盤に土木と建築を営む。売上の 99% が建設事業で、官公庁と民間がほぼ半々。従業員は約 300 人と小さく、大型の再開発ではなく、中規模の公共工事や集合住宅を手がける。
民間の柱は集合住宅だ。2016 年に旭化成ホームズが長谷工などから株式の約 30% を買い、中高層建築とマンション改修で組んだ。長谷工も 8% 余りを持つ。顧客の一部が株主でもある点は、受注の安定には働くが、価格交渉では不利にもなる。
2025 年 10 月には、兵庫県西宮市の砕石事業を南海砂利に譲った。設備の更新費用と後継者の確保が重く、赤字続きだった。残る不動産事業は賃貸で、売上は 0.3 億円と小さい。
2026 年 3 月期の受注高は 295 億円で、前期より 15% 増えた。売上は 4.8% 減ったが、営業利益は 23% 増の 13 億円。工事の採算が良くなった。会社は次の期を減益と見ている。
工事の種類は土木が半分強、建築が半分弱。土木は道路や河川、下水道など公共の更新工事、建築は集合住宅や事務所、改修が中心になる。
優良さと弱いところ
優良さは並である。建設は受注産業で、同じ工事は二度とない。顧客が決める価格に、人件費と資材の高騰が直撃する。森組は規模が小さく、入札で大手と競るほどの値決め力もない。堀と呼べるものは薄い。
一方、財務は異例に堅い。自己資本比率は 6 割を超え、有利子負債はほぼゼロ。2008 年と 2009 年に赤字を出した苦い経験が、保守的な経営につながっているとみる。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は約 8% だが、直近は 6%。現金が厚いために、事業そのものの収益力が見えにくくなっている。本社費用は営業利益の 1 倍近くあり、規模が小さい会社の弱みが出ている。
株主構成は安定している。旭化成ホームズが 30%、長谷工が 8%、取引先持株会が 8% で、実質の浮動株は少ない。外部から経営に圧力がかかりにくい反面、少数株主が経営に口を出す余地は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ゼネコンの市場は、東日本大震災後の復旧、五輪、再開発と続いた長い上昇のあと、高止まりに入っている。上場ゼネコン 50 社の受注高は 2025 年度に 16 兆円を超え、受注残も過去最高だ。人手不足で工事を選べる立場が強まり、価格転嫁も進んでいる。
ただし中堅は事情が違う。都市の再開発やデータセンターは、スーパーゼネコンが取る。中堅は、地方や関西の公共工事と中規模の民間工事が主戦場で、入札で価格を競う。国土強靱化の予算は追い風だが、人口減で地方の建設需要は細る。
最大の制約は人手だ。技能者の高齢化が進み、2024 年の残業規制で工期は延びた。人件費は物価並みかそれ以上に上がり、施工量を増やすのが難しい。受注を絞って採算を守るのが正攻法になった。
再編の動きもある。後継者のいない地場ゼネコンが増え、中堅どうしの統合や、大手傘下入りが起きやすい。森組の厚い現金は、買う側にも買われる側にも働く。
関西は万博後の需要の反動も気になる。大型工事の受注が一巡したあと、中堅が取れる中規模の工事がどれだけ残るかが焦点だ。
資本政策と M&A
還元は、配当を性向約 5 割で据え置く形だ。年間の配当は 4.6 億円ほどで、10 年で約 50 億円。自社株買いはない。配当は 2022 年から変わらず、業績が良くなっても増えなかった点は、物足りない。
手元の現金は 64 億円で、2015 年の 18 億円から積み上がった。ゼネコンは未成工事受入金や工事未払金が現金を支えるので、全部が自由な現金ではない。筆者は、運転資金と保証の余裕として約 35 億円を残し、約 30 億円を事業に使わない現金と見た。
戻り方は 0.75 とした。配当は続くが、買収や自社株買いなどで積極的に使う方針は見えない。30% を持つ旭化成ホームズは、提携が目的の株主で、現金の取り崩しを強く迫る立場にない。
政策保有株は簿価 0.2 億円と小さく、売却益に頼る心配はない。有形固定資産は 10 億円しかなく、更新投資の負担は軽い。減価償却は取得時の値のままで、物価で増やさない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 105 億円に対し、現預金は 64 億円、有利子負債はほぼゼロ。事業を除いた現金だけで、時価総額の 3 割が埋まる。営業利益 13 億円、純利益 9 億円は、現金を除けば PER 5〜6 倍の水準だ。
2026 年 3 月期の受注高は前年比 15.5% 増の 295 億円。建設事業の利益率は 9.6% と、準大手に並ぶ水準まで上がった。人手不足で工事を選べる環境が続けば、価格転嫁は定着する。
旭化成ホームズが 30%、長谷工が 8% を持つ。集合住宅の改修やマンション建設で、安定した受注が見込める。砕石の赤字事業を切り離し、本業に集中する体制も整った。
小さな会社で、再編の対象にもなりうる。現金の厚い会社を、大手や提携先が取り込む動きが出れば、プレミアムが生まれる。配当性向 5 割の据え置きも、株主を大切にする姿勢の表れだ。
人手不足は、受注を絞れる側にとっては追い風になる。
慎重な見方
営業利益 13 億円のうち、建設事業の利益は 26 億円で、本社費用が約 12 億円を食っている。小さな会社の固定費が重く、売上が数%減るだけで利益は大きく動く。2023 年 3 月期は営業利益が 8 億円まで落ちた。
来期は経常利益が 12% 減の予想。受注残が減れば、売上と利益はさらに縮む。人件費は物価並みに上がるのに、公共工事の入札単価は簡単には上がらない。
現金の厚さは、裏返せば資本を使いこなせていないということだ。ROE は 6% で、資本コストを下回る。配当は 4 年以上据え置かれ、30% の旭化成ホームズと取引先持株会が安定株主なので、少数株主が資本の使い方を変えさせる力は弱い。
未成工事受入金や工事未払金を除けば、自由な現金は 64 億円の半分程度にとどまる。時価総額の 6 割という数字は、見かけの割安さを大きく見せている。
人手不足で受注が積み上がっても、施工が追いつかなければ売上にならない。
どちらに重みを置いたか
事業の収益力が薄いことと、現金の使い道が見えないことは、割安に見える数字を相殺する。確率は中立に 38% を置き、やや悲観と悲観で 32%、やや楽観と楽観で 30% と、ほぼ均等に置いた。現金の厚みで悲観の下値は堅いが、上値も重い。10 年の本質価値は、今の時価総額より 1 割ほど低いとみる。現金の使い道が示されれば、見方は変わる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 504 円165 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 145 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 346 円113 億円、今との差 +6.6%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 974 円319 億円 | 208 円68 億円 | +264.7% | +13.8% | 95 円31 億円 |
| やや楽観 | 22% | 703 円230 億円 | 177 円58 億円 | +171.8% | +10.5% | 194 円63 億円 |
| 中立 | 38% | 514 円168 億円 | 153 円50 億円 | +105.6% | +7.5% | 253 円83 億円 |
| やや悲観 | 22% | 270 円88 億円 | 122 円40 億円 | +20.9% | +1.9% | 86 円28 億円 |
| 悲観 | 10% | 168 円55 億円 | 46 円15 億円 | −34.0% | −4.1% | 21 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 504 円165 億円 | 145 円48 億円 | +100.3% | +7.2% | 649 円213 億円 |
今の株価時価総額 324 円106 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 価格転嫁が定着し、準大手の収益力に近づく 利益 19 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 974 円319 億円
建設費が上がっても顧客が受け入れ、値上げが定着する。人手不足で工事を選べる立場になり、採算の悪い仕事を断れる。旭化成ホームズ経由の集合住宅と、公共の更新工事が受注を支える。施工量は今と同じ水準を保ち、単価は 1.4 倍に上がる。工事の利益率は 11% まで高まるが、本社費用は物価で膨らむ。営業利益は 26 億円で、今の約 2 倍。厚い手元資金は、買収や株主還元に回る余地を残す。ただし中堅ゼネコンの利益率が長く 10% を超えた例は少ない。
この筋書きでは、旭化成ホームズ向けの集合住宅が伸び続けることが前提になる。顧客との関係が安定しているほど、価格の交渉もしやすい。
- 建設事業:数量 46.2(施工量(万人日。技能者・技術者の稼働量の推定))× 価格 8.40(1 人日あたり完成工事高(万円。資材・外注費込み))→ 売上 388 億円・営業利益 43 億円。数量 1.00 倍・単価 1.40 倍・セグメント利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 15.61 倍、時価総額 309 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足で受注を絞れる局面が続き、旭化成ホームズ向けの集合住宅も伸びる必要がある。重なりにくい。
やや楽観 22% 受注が堅調で、利益率が少し上がる 利益 15 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 703 円230 億円
公共工事の更新需要と、集合住宅の改修が受注を支える。施工量は人手の制約で 4% 減るが、単価が 1.37 倍に上がり、売上は 364 億円になる。工事の利益率は 10% で保たれる。本社費用は物価と同じ 1.34 倍に増える。官公庁と民間の比率は今と変わらず、旭化成ホームズ向けの集合住宅も堅い。営業利益は 20 億円で、今より 5 割多い。配当は据え置きの方針から少し増える。手元資金は積み上がり続ける。
足元の受注の勢いが続くかどうかが、この筋書きの分かれ目になる。受注残が積み上がれば、翌年以降の売上も読みやすい。
- 建設事業:数量 44.4(施工量(万人日。技能者・技術者の稼働量の推定))× 価格 8.22(1 人日あたり完成工事高(万円。資材・外注費込み))→ 売上 365 億円・営業利益 37 億円。数量 0.96 倍・単価 1.37 倍・セグメント利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 14.05 倍、時価総額 220 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の受注高は前年比 15.5% 増で、価格転嫁も進んでいる。足元の勢いは、この筋書きに近い。
中立 38% 売上は物価に追いつくが、利益は薄いまま 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 514 円168 億円
施工量は人手不足で 8% 減るが、単価は物価並みに 1.34 倍へ上がる。売上は 342 億円、工事の利益率は 9% と、今の 9.6% からわずかに下がる。本社費用は物価で 1.34 倍に増え、営業利益は 14 億円。金額は今とほぼ同じで、実質では 3 割ほど目減りする。手元資金の利息は短期金利の上昇で増え、純利益は 10 億円台になる。配当は性向約 5 割で続く。減価償却は有形固定資産が 10 億円と小さいので、物価の影響は目立たない。
本社費用が営業利益の 1 倍近くあるため、売上の増減に対して利益は大きく動く。この筋書きは、固定費が物価並みに増え、売上も物価並みに増えるという均衡を置いている。
- 建設事業:数量 42.5(施工量(万人日。技能者・技術者の稼働量の推定))× 価格 8.04(1 人日あたり完成工事高(万円。資材・外注費込み))→ 売上 342 億円・営業利益 31 億円。数量 0.92 倍・単価 1.34 倍・セグメント利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率は歴代の水準に収まるのが自然。ただ旭化成ホームズとの関係で受注は安定しやすい。
やや悲観 22% 公共工事の競争が厳しくなり、利益率が落ちる 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 270 円88 億円
地方の公共工事予算が絞られ、入札競争が再び強まる。施工量は 15% 減り、単価の上がりも 1.25 倍にとどまる。工事の利益率は 8% に下がる。本社費用は人員を絞って 15% ほど減らすが、それでも営業利益は 10 億円弱にとどまる。手元資金は変わらず厚いが、利益が細るぶん配当の余裕は小さくなる。のれんや持ち合い株の大きな損失はなく、損失は事業の縮小にとどまる。会社は受注を選び、採算の悪い工事を断る姿勢を強めるが、それでも固定費は残る。
配当は据え置きの方針を続けるが、利益の余裕は小さくなる。会社が現金を厚く持つ意味は、こうした局面で大きくなる。
- 建設事業:数量 39.3(施工量(万人日。技能者・技術者の稼働量の推定))× 価格 7.50(1 人日あたり完成工事高(万円。資材・外注費込み))→ 売上 295 億円・営業利益 24 億円。数量 0.85 倍・単価 1.25 倍・セグメント利益率 8.0%
倍率:ROE 約 4% で k を大きく下回る。上限の 1÷k=約 11.8 倍に対し、利益の変動を見て約 64% に置く。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.5 倍・時価総額 72 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:ゼネコンの利益率は景気と入札環境で大きく動く。過去 10 年でも営業利益率が 3% 台の年が 3 回あった。
悲観 10% 人手不足で施工量が縮み、固定費が重くなる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 168 円55 億円
技能者を確保できず、受注しても施工が追いつかない。施工量は 25% 減り、単価の上がりも 1.15 倍に抑えられる。工事の利益率は 5% まで落ち、本社費用の削減も 2 割にとどまる。営業利益は赤字に沈む。それでも手元資金は厚く、倒産の心配は小さい。株主にとっては、事業の価値より手元の現金が株価を支える局面になる。配当は大幅に減らし、現金は事業の立て直しに使われる。
工事の安全や品質の問題が重なれば、さらに悪い方向へ動く。この筋書きは、そうした個別の事故は含めず、構造的な需要と人手の縮みだけを置いた。
- 建設事業:数量 34.7(施工量(万人日。技能者・技術者の稼働量の推定))× 価格 6.90(1 人日あたり完成工事高(万円。資材・外注費込み))→ 売上 239 億円・営業利益 12 億円。数量 0.75 倍・単価 1.15 倍・セグメント利益率 5.0%
倍率:稼ぐ力はほぼ無く、純現金と売れる資産に近い。今の自己資本 155 億円に 0.35 倍を掛けた床の考え方(稼ぐ力ではなく資産で置く)。
確率:人手不足と入札競争が同時に強まり、受注を選ぶ余裕もなくなる必要がある。起きにくいが、中堅ゼネコンの宿命でもある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設事業
大阪を地盤に、土木と建築を請け負う中堅ゼネコン。官公庁と民間がほぼ半々。売上の 99% を占める。
| 数量施工量(万人日。技能者・技術者の稼働量の推定) | 価格1 人日あたり完成工事高(万円。資材・外注費込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 46.2 | 6.00 | 277 | 27 |
| 10 年後 中立 | 42.5 | 8.04 | 342 | 31 |
取り方:完成工事高 277 億円を 1 人日あたり約 6 万円(資材・外注費込みの請負単価の目安)で割り、約 46 万人日と推定。実数は未開示。セグメント利益は本社費用を配賦する前の額。
リスクと懸念
本社費用の固定費
セグメント利益 26 億円から本社費用を引くと、営業利益は 13 億円。売上が数%動くだけで利益が大きく振れる。物価で本社費用が 1.34 倍に増えると、営業利益の増えが相殺される。
人手不足で施工量が縮む
技能者の高齢化と残業規制で、受注しても施工が追いつかない。人件費は物価以上に上がりやすく、中堅は採用で大手に劣る。施工量が減れば固定費が重くなる。
入札競争の再燃
公共工事は半分を占め、地方の予算は人口減で細る。価格転嫁が止まれば、工事の利益率は 9% から 6% 台に落ちうる。2023 年 3 月期は営業利益が 8 億円まで下がった。
現金が眠る
厚い現金が株主へ戻らず、事業にも回らなければ、見かけの割安さは実現しない。大株主が安定株主のため、圧力もかかりにくい。
受注の偏り
旭化成ホームズ向けの集合住宅など、特定の顧客に偏る。顧客の戦略が変わると、受注が急に細ることがある。
瑕疵・安全事故
施工の不具合や重大事故が起きれば、補償と評判で数年分の利益が飛ぶ。中堅は引当の余裕が小さい。
今後の分かれ目
- 配当を増やす・自社株買いを始めるなど、現金の使い道が示される
- 戻り方を 1.0 に近づけ、現金の価値をそのまま評価に入れる。確率を楽観側に寄せる。
- 建設事業のセグメント利益率が 9% を割る
- 価格転嫁が止まった合図。やや悲観の確率を上げる。
- 受注残高が 2 期続けて減る
- 売上が減少に転じる前兆。施工量の見通しを下げる。
- 大手や提携先が出資比率を高める発表をする
- 買収プレミアムが生じうるが、確率は不確かなので評価には入れない。
- 大型の買収を打ち出す
- 現金の使い道が決まる。値段と相手を見て、戻り方を見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残、建設事業のセグメント利益率
- 本社費用の水準
- 現預金と配当方針
- 旭化成ホームズ・長谷工の持ち株比率
- 人件費と外注費の上昇
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(ROE が k を下回るので上限は 1÷k)から置き、今の PER や同業の倍率は使っていない。中立は上限の約 81%。余った現金 30 億円は、現預金 64 億円から運転資金と保証の余裕 35 億円ほどを除いた額で、旭化成ホームズが 3 割を持つ安定株主構成から戻り方を 0.75 とした。brief の純借金は −64 億円(現預金のみ。定期預金や有価証券は別に確認できなかった)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→15.61 倍・やや楽観 PER 10.5→14.05 倍・中立 PER 9.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。