結論
藤田エンジニアリングは、群馬県高崎市に本社を置く設備工事会社だ。ビルや工場の空調・衛生設備を施工し、できあがった設備の保守でも稼ぐ。2026 年 6 月に創業 100 年を迎えた。筆者の結論は「適正」。今の値段は、時価総額の 4 割強にあたる純現金と、堅実な事業の両方をほぼ織り込んでいる。
利益は安定している。営業利益率は 2025 年 3 月期に 9.0%、2026 年 3 月期に 8.8% と過去の最高水準で、ROE は 9% 前後。無借金で、自己資本比率は 65% にのぼる。
弱点は、会社が現金を使わないことだ。純現金は 10 年で約 40 億円から 76 億円へ増えた。総還元性向の目標は 30% 以上で、7 割は社内に残る。社長の藤田実氏が大株主で、短期の圧力は小さい。現金が増えても、株主の取り分に回る速さは遅い。
中期経営計画(2025〜2027 年度)は、売上 350 億円・経常利益 30 億円・ROE 8% 以上を掲げる。2026 年 3 月期は売上 298 億円、経常利益 28 億円。計画の達成は届く範囲にある。
10 年後の中立は、売上 440 億円、営業利益 36 億円、純利益 26 億円。物価並みの値上げが入り、利益率は過去の山を超えない 8% 台に置いた。余った現金は半分だけ株主の取り分に数えている。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 4% ほど上回るだけで、安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社は「事業は良く、資本の使い方が課題」だ。メンテナンスの積み上げがある設備工事で、無借金、利益率は業界の上位に近い。土台は固い。
問題は、利益の約 3 割を超える現金が、事業の外で寝ていることだ。時価総額の 4 割強が純現金で、会社はこれを使わない。社長が大株主なので、物言う株主に動かされることも少ない。稼いだ利益のうち、毎年 7 割が会社に残り、それが現金の山になる。
それでも、筆者は現金を捨てて評価はしない。ただし満額でも数えない。10 年の間に買収で価値を壊す危険も、いつまでも使われない危険もあるので、半分の値打ちで足す。
事業の価値は、利益の約 12 倍で測る。資本コスト 7% に対して事業の ROE が 9〜10% なので、資本コストを少し上回る。この余りは、10 年先には競争で薄まる。
今の値段は、事業を利益の 7〜8 倍、現金を 4 割引いて見ている水準だ。安全域は、同じ領域の他社に比べれば厚いが、本質価値との差は小さい。差を広げるのは、会社が現金を使うか戻すかの判断だ。それを待つ覚悟が要る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 4 つの事業に分かれる。2026 年 3 月期の売上(グループ内の取引を除く)は、建設が約 46%、機器販売・情報システムが約 25%、メンテナンスが約 24%、電子部品製造が約 4%。
建設事業は、ビル設備・産業設備・環境設備の工事だ。ビルの空調や給排水、工場の空調・ユーティリティ、水処理などを請け負う。ゼネコンや施主から受け、工事ごとに売上が立つ。2026 年 3 月期は受注が 222 億円と前の期より 3 割強増えたが、工事の進み具合で売上は 2 割ほど減った。受注の積み上がりは次の年度の売上になる。
機器販売・情報システムは子会社の藤田ソリューションパートナーズが担う。産業用機器の販売、情報通信機器の施工と販売、ソフトの開発だ。売上は伸びているが、利益率は 5% 台と薄い。
メンテナンスは子会社の藤田テクノが、空調設備などの保守・修理・据付を請け負う。設備を納めたあとも続く収入で、利益率は 10% 台と全事業で最も高い。利益全体の 3 分の 1 をここで稼ぐ。景気で売上が振れにくく、会社の土台になっている。
電子部品製造は、子会社の藤田デバイスが半導体関連の検査・選別・組立を受託する。売上は小さく、半導体の受注に左右される。前の期には減損を出した。
買収は小さな地場企業が中心だ。2025 年 5 月、建築・外壁工事の群工(売上約 12 億円)を完全子会社にした。海外はシンガポールとマレーシアに小さな子会社があるが、売上への寄与はわずかだ。売上の 1 割を超える顧客は無く、顧客の偏りは小さい。
優良さと弱いところ
優良さは「普通より少し良い」と見る。強みは 3 つある。まず、メンテナンスの積み上げだ。納めた設備の保守が長く続き、全体の利益の 3 分の 1 を占める。次に、財務の厚さ。無借金で自己資本比率が 65%、営業利益は支払利息の 200 倍を超える。最後に、利益率の高さ。2025〜2026 年度は営業利益率が 9% に迫り、同じ領域の高砂熱学工業や三機工業の水準と並ぶ。
弱みは規模だ。売上 300 億円は、空調サブコンの上位に比べて小さい。大型のデータセンターや半導体工場の案件は、上位数社に集まりやすい。藤田エンジニアリングは地元群馬と関東の中堅案件が中心で、受注の質は安定しても大きくは伸びにくい。
もう 1 つの弱みが、資本の使い方だ。純現金が時価総額の 4 割を超えているのに、買収は小さく、還元は 30% 前後。ROE が 9% 前後にとどまるのは、現金を積み上げているからだ。事業だけで見た ROE は 10% 台に乗る。
利益率は過去 12 年の山が 9.0% で、中立はこれを超えない。2 年続けて高い水準を保っているのは、価格転嫁が定着した結果だ。筆者は、これが本物の底上げか、ゼネコンの発注が強い時期の一時的な好調か、あと 1〜2 年の実績で見極めたい。
経営は創業 100 年の安定感がある。社長が大株主で、社員と取引先の持株会も大きな株主に並ぶ。変化は遅いが、無理な拡大もしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空調・設備工事は、需要の追い風が続く領域だ。国内の空調工事の市場は 2024 年度で約 5,000 億円、2030 年度には約 5,700 億円へ伸びる見通し。伸びを引っ張るのは、データセンターと半導体工場の新設、そして古い既存ビルの空調の更新や省エネ化(ZEB 化)だ。
価格の面でも、追い風がある。鋼材や設備機器、労務費が物価を上回って上がり、上場のサブコンの多くが、価格の転嫁を定着させている。人手不足で、取れる仕事を選ぶ会社が増え、安値の受注が減った。
藤田エンジニアリングは、この波の端にいる。大型の案件は上位の高砂熱学工業、ダイダン、三機工業などに集まるが、群馬を中心にした地元の工場・病院・ビルの更新では、地場の強みを発揮できる。2026 年 3 月期に産業設備の受注が大きく伸びたのは、その表れだ。
競争では、ゼネコンの下請けに回る構造が弱点になる。ゼネコンの発注が絞られる局面では、価格の押し込みを受けやすい。ここは、メンテナンスという自前の顧客を持つ点で、純粋な工事会社より安定する。
リスクは 2 つ。1 つは、データセンターや半導体の投資が海外にシフトして、国内の大型案件が減ること。もう 1 つは、2024 年問題以降の人手不足で、受注があっても施工できず、売上が先送りされることだ。2026 年 3 月期の売上減は、後者の影響が出た例といえる。
資本政策と M&A
還元の方針は、総還元性向 30% 以上だ。配当は 2024 年 3 月期と 2025 年 3 月期が同じ水準で、目立った増減は無い。自己株式の買い入れは、直近の大きな実績が見つからない。一方で純現金は、10 年で約 40 億円から 76 億円に増えた。
M&A の姿勢は慎重だ。2025 年 5 月に取得した群工は、売上約 12 億円・従業員約 15 人の地場の建築会社で、後継者不在の企業を引き受ける形だった。取得額は数億円とみられ、純現金の 1 割にも届かない。中期経営計画は「外部リソースの活用による事業領域の拡大」を掲げるが、大型の買収を示してはいない。
電子部品製造の藤田デバイスでは、前の期に約 3.9 億円の減損を出した。多角化の一部が足を引っ張った例だ。
資本政策では、PBR や ROE を意識した追加の還元は、公表されていない。ROE の目標は 8% 以上で、実績 9% 前後はすでに超えている。目標が低めなので、現金を抱えたままでも達成できてしまう。
株主は、社長の藤田実氏、取引先持株会、日東興産、社員持株会が上位に並ぶ(古い開示ベース)。外部からの買収提案が通りにくい構造で、TOB の可能性は小さいと筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこうだ。藤田エンジニアリングの利益は、業界の追い風にまだ十分に乗っていない。産業設備の受注が前の期に 3 割強増え、積み上がった受注残が、売上に変わるのはこれからだ。2027 年 3 月期の会社予想は売上 310 億円、営業利益 27 億円、中期計画の 350 億円・経常利益 30 億円の達成も見えている。
メンテナンスは、納めた設備が増えれば増えるほど、保守の件数が積み上がる。既存ビルの空調更新や省エネ工事が増えれば、更新の受注が保守の顧客から出る。利益率の高い事業の比重が上がり、全体の営業利益率は 9% を超える。
現金の使い方も変わりうる。創業 100 年の節目で、資本効率への目が向いた。ROE の目標が 8% 以上と低いのは、むしろ上げる余地を残している。総還元性向を 50% まで引き上げれば、純現金の 76 億円は大きな原資になる。
地場の後継者不在の企業を買う機会も増える。群工のような買収を繰り返せば、売上の底上げと人材の確保の両方が進む。物価の上昇で、受注単価と保守料金はともに上がり、利益は名目で積み上がる。
慎重な見方
慎重な見方はこうだ。まず、今の利益率は山にいる。営業利益率 8.8% は、過去 12 年の最高水準に近い。ゼネコンの発注が落ち、サブコンへの価格圧力が戻れば、7% 台に戻りうる。過去の谷では 2% 台まで落ちた。
会社の売上は 2026 年 3 月期に 9% 減った。受注が増えたといっても、人手不足で工事が進まず、売上にならない。2024 年問題以降、この構造は続く。計画の売上 350 億円・経常利益 30 億円は、2027 年度の目標だが、会社予想はそこまでの途中でとどまる。
大型案件は、上位サブコンが取る。データセンターや半導体の大型案件は、技術と実績の壁があって、藤田エンジニアリングは入りにくい。中堅の案件で価格競争が起きれば、利益は薄くなる。
現金は多いが、使い道が示されていない。資本政策が変わらなければ、ROE は 9% を割り込む。買収は慎重な反面、電子部品製造の減損のように、多角化は成功していない。
さらに、データセンターの建設が海外に移れば、国内の大型案件が減る。そのとき、中堅の設備工事会社は一緒に落ちる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、受注残と現金の多さに裏づけがある。ただ、利益率が山にあること、売上が人手不足で伸びにくいこと、現金が使われてこなかった実績を考えると、確率は中立に厚く置くのが妥当と判断した。
確率は、楽観を 7%、やや楽観を 20%、中立を 37%、やや悲観を 25%、悲観を 11% とした。同じ領域の 1777 川崎設備工業などと同じ水準で、純現金が悲観の床を支える点だけを考えて、悲観は 1 割に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,253 円391 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 781 円72 億円)。 今の値に割り戻すと 2,719 円250 億円、今との差 +43.1%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,525 円692 億円 | 1,196 円110 億円 | +359.0% | +16.5% | 610 円56 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,183 円569 億円 | 979 円90 億円 | +276.9% | +14.2% | 1,432 円132 億円 |
| 中立 | 37% | 5,227 円481 億円 | 816 円75 億円 | +218.0% | +12.3% | 2,236 円206 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,873 円172 億円 | 631 円58 億円 | +31.8% | +2.8% | 626 円58 億円 |
| 悲観 | 11% | 799 円74 億円 | 381 円35 億円 | −37.9% | −4.7% | 130 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,253 円391 億円 | 781 円72 億円 | +165.0% | +10.2% | 5,034 円463 億円 |
今の株価時価総額 1,900 円175 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 受注残が売上に変わり、現金も使われ始める 利益 36 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 7,525 円692 億円
産業設備とビル設備の受注残が売上に変わり、メンテナンスは更新工事と一体で伸びる。建設の施工量は 2 割増え、価格も物価を少し上回る。営業利益率は 9% 台前半に乗る。
機器販売・情報システムでは、製造業の自動化投資を取り込んで 2 割増え、利益率も 6% 台に上がる。メンテナンスは件数が 4 割増、利益率は 12% 台。
会社は純現金を使い始め、総還元性向を 40% 台に引き上げる。ROE は事業だけで 11% に近づく。余った現金は積み上がらず、10 年で約 90 億円にとどまる。
この筋書きが成り立つには、データセンターや半導体工場の国内投資が続き、人手不足でも施工員を確保できることが条件になる。群工のような地場の買収も、人材の確保に効く。物価の上昇は受注単価と保守料金の両方を押し上げ、利益は名目で積み上がる。
- 建設事業(ビル・産業・環境設備、群工):数量 24.0(施工人工換算(万人日、推定))× 価格 9.54(万円/人日(資材込みの請負単価))→ 売上 229 億円・営業利益 20 億円。数量 1.20 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 8.8%
- 機器販売・情報システム:数量 3,600(案件数(件、推定))× 価格 341(万円/件(機器・施工・ソフトの混合単価))→ 売上 123 億円・営業利益 8 億円。数量 1.20 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 6.5%
- 機器のメンテナンス:数量 25,200(保守・修理の件数(件、推定))× 価格 55(万円/件(保守・修理・小口の更新を合わせた単価))→ 売上 138 億円・営業利益 17 億円。数量 1.40 倍・価格 1.37 倍(名目)・営業利益率 12.5%
- 電子部品製造:数量 130(処理個数(百万個、推定))× 価格 16(円/個(受託加工の単価))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。数量 1.30 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 17.77 倍、時価総額 692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残の消化、メンテナンスの拡大、還元の強化が同時に当たる必要がある。利益率が山にいる今、さらに上がる確率は低く、7% とした。
やや楽観 20% 中計目標を達成し、利益率は山を超える 利益 31 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 6,183 円569 億円
中期計画の売上 350 億円を 2028 年ごろに達成し、その後も物価並みに伸びる。建設の施工量は 14% 増、メンテナンスは 3 割増。営業利益率は 8% 台後半で、過去の山を超える。
この水準が続くには、価格転嫁の定着と、人手不足下の施工体制の確保が条件になる。会社は総還元性向を 35% 台に引き上げ、現金は約 90 億円で落ち着く。
電子部品製造は半導体の受託が戻り、小さな黒字を保つ。機器販売・情報システムは薄利のまま伸びるが、全体の利益率を押し下げるほどではない。メンテナンスの積み上げが、利益率の高止まりを支える。
- 建設事業(ビル・産業・環境設備、群工):数量 22.8(施工人工換算(万人日、推定))× 価格 9.40(万円/人日(資材込みの請負単価))→ 売上 214 億円・営業利益 18 億円。数量 1.14 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 8.2%
- 機器販売・情報システム:数量 3,450(案件数(件、推定))× 価格 339(万円/件(機器・施工・ソフトの混合単価))→ 売上 117 億円・営業利益 7 億円。数量 1.15 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 6.2%
- 機器のメンテナンス:数量 23,400(保守・修理の件数(件、推定))× 価格 54(万円/件(保守・修理・小口の更新を合わせた単価))→ 売上 126 億円・営業利益 15 億円。数量 1.30 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 11.8%
- 電子部品製造:数量 115(処理個数(百万個、推定))× 価格 15(円/個(受託加工の単価))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量 1.15 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)68 億円。全体の PER 16.96 倍、時価総額 568 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標どおりに進み、利益率が山を少し超える筋書き。受注は増えているが、人手不足で売上が遅れており、20% に置いた。
中立 37% 物価並みに伸び、利益率は山を超えない 利益 26 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 5,227 円481 億円
物価並みの値上げが進み、施工量は 1 割弱、メンテナンスは 2 割増える。売上は 440 億円、営業利益は 36 億円、営業利益率は 8% 台前半。過去の山(9.0%)を超えない。
人件費と資材の上昇は価格に転嫁できる。設備工事は資産が軽く、減価償却は年 3 億円前後(推定)。既存の設備の償却は取得時の値段のまま増えず、建て替えの投資は建築費の上昇で膨らむが、全体への影響は小さい。
純利益は 26 億円。還元は総還元性向 35% 前後の約 75 億円で、純現金は約 100 億円の余りまで積み上がる。ROE は事業だけで 9〜10%。
- 建設事業(ビル・産業・環境設備、群工):数量 21.6(施工人工換算(万人日、推定))× 価格 9.26(万円/人日(資材込みの請負単価))→ 売上 200 億円・営業利益 15 億円。数量 1.08 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 7.6%
- 機器販売・情報システム:数量 3,300(案件数(件、推定))× 価格 336(万円/件(機器・施工・ソフトの混合単価))→ 売上 111 億円・営業利益 6 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.8%
- 機器のメンテナンス:数量 21,600(保守・修理の件数(件、推定))× 価格 54(万円/件(保守・修理・小口の更新を合わせた単価))→ 売上 116 億円・営業利益 13 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 11.0%
- 電子部品製造:数量 100(処理個数(百万個、推定))× 価格 15(円/個(受託加工の単価))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 16.42 倍、時価総額 481 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格転嫁と人件費が釣り合い、利益率が過去の山を超えない筋書き。最も重く 37% とした。
やや悲観 25% ゼネコンの価格圧力が戻り、利益率が下がる 利益 17 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,873 円172 億円
ゼネコンの発注が弱まり、サブコンへの価格圧力が戻る。施工量は 2% 減り、価格の転嫁は物価に届かない。営業利益率は 6% 台に下がる。
機器販売・情報システムは薄利のまま、電子部品製造は半導体の受託が減り、利益が薄くなる。メンテナンスは堅調だが、全体を支えきれない。
純利益は 17 億円で横ばい。還元は約 58 億円。現金は使い道がなく、余りは約 40 億円にとどまる。
この筋書きでは、発注者の力が強まる局面が数年続く。人件費は上がるのに、受注の値段は上げにくい。メンテナンスの比重が高い分、悲観ほどは崩れないが、10 年かけて利益が細る形になる。
- 建設事業(ビル・産業・環境設備、群工):数量 19.6(施工人工換算(万人日、推定))× 価格 8.98(万円/人日(資材込みの請負単価))→ 売上 176 億円・営業利益 10 億円。数量 0.98 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 5.8%
- 機器販売・情報システム:数量 3,000(案件数(件、推定))× 価格 326(万円/件(機器・施工・ソフトの混合単価))→ 売上 98 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 4.5%
- 機器のメンテナンス:数量 19,440(保守・修理の件数(件、推定))× 価格 52(万円/件(保守・修理・小口の更新を合わせた単価))→ 売上 101 億円・営業利益 9 億円。数量 1.08 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 9.0%
- 電子部品製造:数量 85.0(処理個数(百万個、推定))× 価格 13(円/個(受託加工の単価))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.10 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:事業の ROE は 6% 前後で資本コスト 7% を下回る。PER の上限は 1÷k=12.1 倍。利益が薄れる局面なので、上限の約 7 割の 8.5 倍に置いた。
確率:ゼネコンの価格圧力が戻り、利益率が谷に向かって下がる筋書き。過去に何度も谷を経験した業界なので 25% に置いた。
悲観 11% 大型投資が海外に移り、国内の工事が細る 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 799 円74 億円
データセンターと半導体の投資が海外に移り、国内の大型案件が減る。人手不足で施工も進まず、施工量は 15% 減る。価格競争が戻り、営業利益率は 3% 台に落ちる。
電子部品製造は赤字になり、機器販売・情報システムも伸びない。メンテナンスだけが利益を支える。
純利益は 7 億円。会社は存続するが、還元は約 35 億円に絞る。現金は戻りが遅く、一部は使われずに残る。
ただし、純現金と無借金の財務は残る。事業の稼ぐ力が細っても会社が行き詰まる形は考えにくく、保守の顧客を持つ分、売上は完全には消えない。値打ちは、細った稼ぐ力に現金の半分を足した水準になる。
- 建設事業(ビル・産業・環境設備、群工):数量 17.0(施工人工換算(万人日、推定))× 価格 8.64(万円/人日(資材込みの請負単価))→ 売上 147 億円・営業利益 4 億円。数量 0.85 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 2.5%
- 機器販売・情報システム:数量 2,700(案件数(件、推定))× 価格 314(万円/件(機器・施工・ソフトの混合単価))→ 売上 85 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 2.5%
- 機器のメンテナンス:数量 17,100(保守・修理の件数(件、推定))× 価格 50(万円/件(保守・修理・小口の更新を合わせた単価))→ 売上 86 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 6.0%
- 電子部品製造:数量 60.0(処理個数(百万個、推定))× 価格 12(円/個(受託加工の単価))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍・価格 1.00 倍(名目)・営業利益率 -5.0%
倍率:事業の ROE は 3% 前後で資本コストを大きく下回る。PER の上限は 12.1 倍。利益が構造的に細るため、上限の約 6.6 割の 8.0 倍に置いた。余った現金は戻りが遅いので 0.5 の係数で足している。
確率:大型投資の海外移転と価格競争が重なる複合の筋書き。無借金で純現金が厚く、自己資本比率 65% が床になるので、1 割強の 11% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設事業(ビル・産業・環境設備、群工)
ビルの空調・給排水、工場の設備、環境設備の工事。2025 年 5 月に買収した群工の建築・外壁工事を含む。
| 数量施工人工換算(万人日、推定) | 価格万円/人日(資材込みの請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 6.91 | 138 | 11 |
| 10 年後 中立 | 21.6 | 9.26 | 200 | 15 |
取り方:建設事業の売上(グループ内を除く推定 138 億円)を、施工人工換算 20 万人日(推定。開示は無い)で割った資材込みの単価。利益は決算の建設事業の利益 10.7 億円。数量は受注残の消化と群工で増え、単価は人件費と資材に連れて物価並みに上がる。
機器販売・情報システム
産業用機器の販売、情報通信機器の施工と販売、ソフトの開発。子会社の藤田ソリューションパートナーズが担う。
| 数量案件数(件、推定) | 価格万円/件(機器・施工・ソフトの混合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 251 | 75 | 5 |
| 10 年後 中立 | 3,300 | 336 | 111 | 6 |
取り方:売上(グループ内を除く推定 75 億円)を、案件数 3,000 件(推定)で割った単価。利益は決算の 4.7 億円。数量は製造業の設備投資に連れて増え、単価は物価並みに上がる。
機器のメンテナンス
空調設備などの保守・修理・据付。子会社の藤田テクノとマレーシア子会社が担う。
| 数量保守・修理の件数(件、推定) | 価格万円/件(保守・修理・小口の更新を合わせた単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18,000 | 40 | 72 | 8 |
| 10 年後 中立 | 21,600 | 54 | 116 | 13 |
取り方:売上(グループ内を除く推定 72 億円)を、保守・修理 18,000 件(推定)で割った単価。利益は決算の 8.3 億円(利益率 10.8%)。納めた設備が増えるほど件数が積み上がり、単価は人件費に連れて物価並みに上がる。
電子部品製造
半導体関連の検査・選別・組立の受託と、装置の開発。子会社の藤田デバイスが担う。
| 数量処理個数(百万個、推定) | 価格円/個(受託加工の単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 12 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 15 | 15 | 1 |
取り方:売上(グループ内を除く推定 12 億円)を、処理個数 100 百万個(推定)で割った単価。利益は決算の 1.0 億円。受託加工は価格競争があり、単価は 10 年で 1.2 倍とした。半導体の受託加工は発注元に価格を決められ、物価の 1.34 倍に届かないと見たため。
リスクと懸念
利益率が山を越えて戻る
営業利益率は 2 年続けて 9% 近い。過去の谷では 2% 台まで落ちた。ゼネコンの発注が弱まり、価格圧力が戻れば、この水準は守れない。
人手不足で工事が進まず、売上が先送りされる
2026 年 3 月期は受注が増えたのに売上が 9% 減った。施工員の不足が続けば、受注を売上に変える速さが落ち、人件費も上がる。
大型案件が上位社に集まる
データセンターや半導体工場の大型の空調工事は、高砂熱学工業などの上位社に集中する。地場の中堅は、受注の量で追いつけない。
現金が使われない
純現金が時価総額の 4 割を超えるのに、還元は総還元性向 30% 前後。買収や投資で使われず、資本効率が上がらないまま積み上がる可能性がある。
多角化の失敗
電子部品製造の藤田デバイスは前の期に約 3.9 億円の減損を出した。半導体の受託加工は受注が振れ、売上が 26% 減った。
買収が重荷になる
後継者不在の地場企業を引き受けるのが中心。小さな案件だが、のれんや人材の統合に失敗すれば、利益を押し下げる。
物価と償却のずれ
設備工事は資産が軽く、減価償却は小さい。ただ、本社や営業所の建て替えなどは建築費の上昇で膨らむ。更新の費用は現金に出る。
今後の分かれ目
- 2027 年度に売上 350 億円・経常利益 30 億円の中計目標を達成する
- 価格転嫁と受注残の積み上げが本物と確認できる。確率を楽観側に寄せる。
- 総還元性向を 50% 以上に引き上げ、純現金を使い始める
- 余った現金の戻り方を 0.5 から引き上げる。本質価値は現金の分だけ上がる。
- 営業利益率が 7% 台に戻る
- 価格圧力の復活のサイン。中立の利益率を 8% から 7% 台に下げて見直す。
- メンテナンスの売上が毎年 5% 以上伸び続ける
- ストックの積み上げが効いている証拠。全体の利益率が構造的に上がり、倍率の見方が上向く。
- 大型の M&A を発表する
- 買収額が純現金の半分を超えるなら、のれんと統合の失敗リスクを織り込む。現金の戻りを 0.5 より下げる。
- データセンター・半導体の国内投資が減速する
- 産業設備の受注が落ちる。悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 受注高と受注残(建設事業)
- 営業利益率(セグメント別、特にメンテナンス)
- 総還元性向と純現金の増減
- 2027 年度の中期経営計画の達成度(売上 350 億円、経常利益 30 億円)
- 群工など買収先の業績
- 電子部品製造の稼働と減損の有無
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、4 つの事業の数量と名目の単価から利益を積み、倍率は利益ベースで置いた。事業の ROE が資本コスト 7% を少し上回る中立は、式の PER の約 9.6 割(12.5 倍)。純現金 76 億円のうち、未成工事受入金や預り金などの顧客のお金(推定で約 20 億円)を除いた約 55 億円を余った現金として分けた。戻り方は 0.5。10 年の筋書きでは、還元が総還元性向 35% 前後で、現金が積み上がる分を base で 100 億円の余りとした。設備工事は資産が軽く、減価償却は年 3 億円前後(推定)。今ある設備の償却は取得時の値段のまま増やさず、建て替えは建築費の上昇で膨らむと考えたが、全体への影響は小さい。同じ領域の川崎設備工業と同じ資本コスト 7% に揃えた。リース負債は小さく、新リース会計の影響は軽い。結論は適正。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→17.77 倍・やや楽観 PER 12.8→16.96 倍・中立 PER 12.5→16.42 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。