結論
ライト工業は、山の斜面を止める法面工事と、建物の下の地盤を固める地盤改良の専業大手だ。2026年3月期の売上は1,392億円、営業利益は172億円と、中計の2027年度目標を2年早く超えた。
筆者の見立てはこうだ。いまの利益は山の近くにある。営業利益率は12%台で、過去10年の中央値の10%を2ポイント以上上回る。会社自身も今期は小幅の減益を見込んでいる。防災と老朽化対策の需要は底堅いが、技能者が減る中で施工量は伸ばしにくい。10年でならすと、利益率は10%ほどへ戻ると置くのが素直だ。
強みは財務の堅さだ。純現金は約280億円、自己資本比率は7割を超える。借金で無理をしない会社で、中計は150億円以上の自社株買いとDOE6%を掲げる。株主への還元は厚い。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。顧客は国や自治体が中心で、入札が多い。補修・補強では専業のショーボンドホールディングスが先を走る。
10年後の利益を資本コストで割り引くと、本質価値は今の時価総額を1割弱上回る。割安と言うには浅く、適正の範囲だ。筆者がいちばん気にするのは、利益率が10%へ戻るかどうかである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ライトは堅実な会社だが、安く買える会社とは限らない。
まず、利益の質。工事は完成まで資金を立て替える。それでも純現金を保ち、自己資本比率は7割を超える。借金に頼らずに利益を出すので、傷みにくい。ただ、いまの営業利益率は12%台で、過去10年の中央値の10%を上回る。利益の一部は山の分とみる。
次に、堀と経営。堀は工法と経験にあるが、公共は入札が多く、値段は発注者に左右される。経営は赤字の年のあと、増配と自社株買いで株主に報いてきた。資本の使い道は配当と自社株買いと小さな成長投資に絞られ、見栄えのする買収で失敗する危うさは小さい。
最後に、安全域。10年後の利益が1割ほど増えるとみて、本質価値は今の値段を1割弱上回る。余白はあるが厚くはない。持ち主として長く持ちたい会社ではあるが、払ってよい値段は、利益率が10%へ戻ることを織り込んだ水準までだ。12%台が続くと信じれば見え方は変わるが、それは山を平地とみなす賭けである。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は工種ごとに五つある。基礎・地盤改良が売上の4割強、斜面・法面対策が3割弱、建築が1割強、補修・補強が1割弱だ。残りは一般土木と環境修復である。
地盤改良は、建物や橋の基礎になる地盤を、薬液や杭で固める工事だ。液状化の対策や、トンネルを掘る前の補強もある。2026年3月期の9か月で受注が2割増え、いま最も勢いがある。
法面は、切り取った斜面や崩れそうな自然斜面を、吹付けやアンカーで止める工事だ。地すべりの対策もここに入る。防災・減災の看板事業で、能登半島地震の復旧にも関わった。
補修・補強は、老朽化した橋やトンネルを直す仕事で、中計が伸ばすと決めた分野だ。ただ売上は100億円ほどで、まだ小さい。
海外は米国のRAITO, INC.とベトナムの合弁が中心だ。米国は2026年3月期の9か月で売上と利益を伸ばした。2025年11月にはベトナムでFecon Raito Undergroundを連結子会社にした(出資49%)。
顧客は国や自治体などの公共が多く、民間は建築と一部の地盤改良にとどまる。東北にはグループ会社が残る。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、工法と実績にある。
ライトは法面と地盤改良で、自社の工法を数多く持つ。現場ごとに土質も地形も違うので、どの工法をどこに使うかという経験が値打ちになる。防災・地盤改良の特殊土木では国内首位とされる。競合の日特建設は売上が834億円で、ライトの6割ほどだ。大手ゼネコンが手を出しにくい細かな現場で、専業の強さが出る。
ただ、堀は固くない。公共工事は入札が多く、発注者が値段を決める。特許が切れれば、同じ仕事を他社が取れる。補修・補強は専業のショーボンドが先を走り、ライトは追う側だ。建築は堀がほとんどなく、景気で利益が振れる。
資本の使い方は合格点だ。大きな買収で価値を壊した歴史は見当たらない。純現金を保ち、増配を続け、自社株買いも進めている。政策保有株も3年で2割減らす方針だ。
弱いのは、利益率が山にあることだ。経営の腕は確かでも、10%を超える水準が長続きするかは別の問題である。東北のグループ会社の立て直しも宿題として残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の中心は防災と老朽化対策だ。政府は2026年度から5年間で約20兆円強の国土強靱化を進め、老朽化した橋や上下水道に約10兆円を充てる。道路橋は建設後50年を超えるものが、2025年の42%から2035年に65%へ増える。法面・地盤改良・補修のどれにも追い風になる計画だ。
制約は需要より人手である。2024年の残業規制のあと、技能者の不足が業界共通の悩みになった。施工量には上限があり、需要が増えても売上は同じには伸びない。そこで業界は、取れる仕事を選び、値段を上げる方向に動いた。ライトの2026年4〜6月の総利益率が前年より3ポイント高い22.6%になったのは、この流れの表れだ。
競争の形は三つに分かれる。法面とアンカーは日特建設などの専業、地盤改良は専業と準大手の土木、補修・補強はショーボンドが先を走る。大手ゼネコンも一部の工種に入り込む。
循環のどこにいるかと言えば、山の近くだ。2026年4〜6月の受注は前年から4割増え、繰越工事高は1,324億円と厚い。一方で売上は3%減った。受注は積み上がる局面だが、利益率は頂点にある。
10年で見ると、補修と防災の需要は増える。ただ人口は減り、地方の現場も減る。数量は横ばいから微増、価格は物価の分だけ上がる。そう置くのが妥当だ。
資本政策と M&A
資本政策は、いま積極的だ。
中計は、営業キャッシュフロー360億円を、配当、150億円以上の自社株買い、70億円の成長投資、手元資金に振り分ける。負債は最大100億円まで使う。目標はROE12.5%以上、DOE6%以上、配当性向50%以上で、累進配当を続け、自社株は原則すべて消却する。2026年2月ごろには、70億円を上限とする自社株買いを決めた。2026年9月末には、1株を4株に分割した。
政策保有株は3年で2割、賃貸等不動産は3年で3割減らす。資本効率を上げる方向で、歓迎できる。
M&Aは小粒だ。2025年11月にベトナムで連結子会社を持ち、中計は補修・補強分野の買収も掲げる。大きな買収やTOBの動きは見えない。株主には信託銀行と生保が並び、割安株に投資する英国の投資信託、AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUSTも2%台で名を連ねる。経営が還元を厚くする背景の一つだろう。
還元の置き方:中計はDOE6%以上・配当性向50%以上の累進配当に、3年で150億円以上の自社株買い。10年の中立は純利益の合計の85%で、この水準に沿う。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防災と老朽化対策の需要は、10年では消えない。橋は古くなり、斜面は崩れる。国は5年で約20兆円強の強靱化を決め、補修の予算も緩やかに増える。ライトは法面と地盤改良の専業で、能登半島地震の復旧にも関わった。技術と実績のある会社に、仕事は集まる。
数字も強い。2026年4〜6月の受注は前年から4割増え、繰越工事高は1,324億円と厚い。総利益率は22.6%まで上がった。人手の足りない業界では、受注を選び、値段を上げられる会社が勝つ。
財務も堅い。純現金があり、自己資本比率は7割を超える。中計は150億円以上の自社株買いとDOE6%を掲げ、会社は還元を厚くすると言い切っている。ROEは13%台で、資本コストを大きく上回る。
成長の芽もある。補修・補強はM&Aで広げ、米国とベトナムの地盤改良は伸びている。当たれば、10年で売上は今の1.5倍を超える。経営陣は目標を2年早く超えた実績があり、次の計画も達成できる会社だと見てよい。
慎重な見方
いまの利益は山にある。営業利益率は12%台で、過去10年の中央値は10%だ。会社自身も今期は減益を見込んでいる。受注が増えても、売上は2026年4〜6月に3%減った。山の後には戻りが来る。
数量も伸びにくい。技能者が減る中で、施工量には上限がある。需要が増えても、売上は物価の分しか伸びない。法面の受注は2026年3月期の9か月で3%減り、補修・補強も1割強減った。
値段は自分で決められない。公共は入札が多く、予算が絞られれば補修は先送りされる。2006年と2009年には赤字を出した。民間の建築と地盤改良は景気で振れる。専業のショーボンドは補修で先を走り、日特建設も同じ土俵にいる。
東北のグループ会社は、中計が自ら認める通り、発注と人手の両方が細っている。米国とベトナムは小さく、赤字の現場が一つ出れば利益が削られる。
最後に、中計の目標は2年早く達成された。目標が低かったのではないか、という疑いも残る。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠があるが、利益率の話では慎重な見方が強い。需要と財務の強さは強気の見方が正しい。ただ10年の利益は、施工量と価格と利益率の積で決まる。施工量は人手で頭打ちになり、利益率は山にある。そこで確率は、中立に最も厚く置き、強気側を合わせて3割、慎重側を合わせて3割強にした。悲観の深さは、入札の値崩れと海外の失敗が重なる構造的な負けまで掘り下げた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,534 円2,518 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 667 円1,095 億円)。 今の値に割り戻すと 1,279 円2,100 億円、今との差 +33.8%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,593 円4,257 億円 | 846 円1,390 億円 | +259.7% | +13.7% | 275 円452 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,065 円3,391 億円 | 758 円1,245 億円 | +195.3% | +11.4% | 621 円1,020 億円 |
| 中立 | 38% | 1,686 円2,769 億円 | 694 円1,139 億円 | +149.0% | +9.6% | 904 円1,485 億円 |
| やや悲観 | 24% | 844 円1,385 億円 | 575 円944 億円 | +48.4% | +4.0% | 340 円559 億円 |
| 悲観 | 8% | 356 円585 億円 | 381 円626 億円 | −22.9% | −2.6% | 59 円97 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,534 円2,518 億円 | 667 円1,095 億円 | +130.1% | +8.7% | 2,200 円3,613 億円 |
今の株価時価総額 956 円1,570 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 補修・補強が育ち、米国の地盤改良も伸びる 利益 202 億円 · PER 21.0 倍 · 株価時価総額 2,593 円4,257 億円
補修・補強を成長の柱に育てる筋書きだ。老朽化した橋やトンネルの補修を、専業大手に負けない技術提案で取り続ける。中計が掲げる補修分野のM&Aも当たり、売上は今の1.7倍近くへ伸びる。米国とベトナムの地盤改良は現地仕様の工法が根づき、海外の利益が本体の下支えになる。国土強靱化の予算は前倒しで執行され、法面の施工量も落ちない。人手の確保に成功し、施工量は今より2割ほど増える。価格転嫁は定着し、土木の利益率は13%前後を保つ。総還元性向は85%の水準を守り、自己資本は膨らまずROEは高い。ただし、強気でも売上は2,400億円ほどで、技能者の数がそれ以上の拡大を許さない。
- 基礎・地盤改良:数量 481(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.01(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 966 億円・営業利益 130 億円。施工量1.2倍、価格1.34倍、営業利益率13.5%
- 斜面・法面対策:数量 522(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 1.07(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 560 億円・営業利益 70 億円。施工量1.05倍、価格1.34倍、営業利益率12.5%
- 補修・補強:数量 94.3(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.68(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 253 億円・営業利益 38 億円。施工量1.7倍、価格1.34倍、営業利益率15.0%
- 建築:数量 31.5(施工件数(件))× 価格 8.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 253 億円・営業利益 18 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率7.0%
- 一般土木・環境修復ほか:数量 205(標準工事の件数(件))× 価格 0.67(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 11 億円。施工量1.1倍、価格1.34倍、営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.0 倍。全体の PER 20.96 倍、時価総額 4,234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:補修のM&A、米国の拡大、価格転嫁の定着が三つとも当たる必要があり、確率は低い。利益率が過去最高の山にあり、さらに上を狙う筋書きなので1割弱にとどめる。
やや楽観 22% 防災の需要を取り込み、利益率は高めを保つ 利益 168 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 2,065 円3,391 億円
防災と老朽化対策の需要を着実に取り込み、利益率が高めに残る筋書きだ。地盤改良は米国とベトナムの上積みで1割強増える。法面はほぼ横ばいで、人手の不足を単価の上昇で補う。補修・補強は45%増え、売上の1割近くに育つ。建築は受注が細るが、リニューアルに絞って赤字は避ける。価格転嫁が業界全体で続き、土木の利益率は12%前後で止まる。東北のグループ会社は再編で採算が持ち直す。自己資本は還元を厚くしても少しずつ積み上がり、ROEは12%台に乗る。会社が中計で掲げる12.5%に近い水準が、10年の平均で保たれるイメージだ。
- 基礎・地盤改良:数量 449(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.01(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 902 億円・営業利益 108 億円。施工量1.12倍、価格1.34倍、営業利益率12.0%
- 斜面・法面対策:数量 498(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 1.07(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 533 億円・営業利益 61 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率11.5%
- 補修・補強:数量 80.5(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.68(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 216 億円・営業利益 30 億円。施工量1.45倍、価格1.34倍、営業利益率14.0%
- 建築:数量 29.9(施工件数(件))× 価格 8.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 240 億円・営業利益 16 億円。施工量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率6.5%
- 一般土木・環境修復ほか:数量 195(標準工事の件数(件))× 価格 0.67(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 9 億円。施工量1.05倍、価格1.34倍、営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 168 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍。全体の PER 20.03 倍、時価総額 3,365 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防災の需要は底堅く、人手の制約を価格で補える可能性は十分ある。ただ利益率は山の近くにあり、これを保つには追い風が続く必要がある。2割強に置く。
中立 38% 施工量は横ばい、利益率は山から戻る 利益 143 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 1,686 円2,769 億円
施工量は人手に縛られて横ばいに近く、利益率は直近の山から戻る筋書きだ。基礎・地盤改良は海外の伸びで5%増え、法面は技能者の減少で5%減る。補修・補強は老朽化の追い風で25%増える。建築は選別受注で1割減る。価格は物価の分だけ上がる。土木の利益率は12%台から10〜11%へ下がり、売上は1,900億円ほどになる。防災の需要は底堅いが、受注の山は引く。東北のグループ会社の採算は低いままだ。還元は中計の水準を守り、自己資本は緩やかに積み上がる。ROEは13%弱と、過去10年の中央値を上回るが、今の13.9%よりは下がる。
- 基礎・地盤改良:数量 421(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.01(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 846 億円・営業利益 93 億円。施工量1.05倍、価格1.34倍、営業利益率11.0%
- 斜面・法面対策:数量 473(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 1.07(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 507 億円・営業利益 53 億円。施工量0.95倍、価格1.34倍、営業利益率10.5%
- 補修・補強:数量 69.4(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.68(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 186 億円・営業利益 24 億円。施工量1.25倍、価格1.34倍、営業利益率13.0%
- 建築:数量 28.4(施工件数(件))× 価格 8.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 13 億円。施工量0.9倍、価格1.34倍、営業利益率5.5%
- 一般土木・環境修復ほか:数量 186(標準工事の件数(件))× 価格 0.67(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 8 億円。施工量1.0倍、価格1.34倍、営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍。全体の PER 19.16 倍、時価総額 2,740 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2人の議論の落としどころで、いちばん厚く置く。需要は底堅いが人手で数量は頭打ち、利益率は山から戻る。4割弱に置く。
やや悲観 24% 公共の補修が先送りされ、民間の建築も細る 利益 111 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 844 円1,385 億円
公共の補修が予算の都合で先送りされ、民間の建築も細る筋書きだ。政府は点検に予算を回しても、補修の発注は他の政策に押される。2006年と2009年に赤字を出した時の、公共の絞りと民間の冷え込みが、もう一度重なるイメージである。地盤改良と法面の施工量は、今より1〜2割減る。補修・補強は1割増にとどまる。建築はリニューアルを取り込めず、利益が薄くなる。入札の競争が戻り、土木の利益率は9%台へ下がる。売上は伸びが物価の分に届かず、1,700億円台にとどまる。人手不足は続くが、単価で補えなくなる。東北のグループ会社は再編が進まず、足を引っ張る。還元は8割に絞られる。ROEは10%前後と、資本コストをわずかに上回る水準に落ち着く。
- 基礎・地盤改良:数量 393(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.01(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 789 億円・営業利益 75 億円。施工量0.98倍、価格1.34倍、営業利益率9.5%
- 斜面・法面対策:数量 438(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 1.07(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 469 億円・営業利益 42 億円。施工量0.88倍、価格1.34倍、営業利益率9.0%
- 補修・補強:数量 61.1(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.68(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 164 億円・営業利益 18 億円。施工量1.1倍、価格1.34倍、営業利益率11.0%
- 建築:数量 25.2(施工件数(件))× 価格 8.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 203 億円・営業利益 8 億円。施工量0.8倍、価格1.34倍、営業利益率4.0%
- 一般土木・環境修復ほか:数量 167(標準工事の件数(件))× 価格 0.67(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 5 億円。施工量0.9倍、価格1.34倍、営業利益率4.5%
倍率:ROE 9.8%(純利益 111 億円 ÷ 自己資本 1,136 億円)。k 6.75%。RONIC = 8.6% で正当化 PER は 15.3 倍。ただしこの筋書きは、入札競争の復活で超過利益が先で薄れ、公共予算の先送りで利益の質も落ちるので、構造的な負けの側として PER 12 倍に置いた(中立の PBR より低い)。
確率:公共予算の先送りと民間の建築の落ち込みは、過去の2006年と2009年にも起きた形だ。利益率が山にある分、戻りの力も強い。慎重な見方が強いので、強気側より厚く2割台半ばに置く。
悲観 8% 入札の値下げと海外の失敗が重なり、専業の強みが薄れる 利益 54 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 356 円585 億円
入札の競争が激しくなり、海外の事業も失敗して、専業の強みが薄れる筋書きだ。公共の発注者は予算を絞り、点検はしても補修は後回しにする。大手ゼネコンが地盤改良に押し寄せ、単価は物価に追いつかない。米国では大型の現場で赤字を出し、ベトナムでは発注が遅れる。法面の施工量は4分の3、地盤改良は85%に縮む。建築は赤字すれすれで、東北のグループ会社は撤退を迫られる。土木の利益率は5〜6%まで下がり、純利益は50億円ほどだ。もはや防災の専業としての優位を失い、還元も7割に絞られる。自己資本は減損で膨らまない。
- 基礎・地盤改良:数量 341(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 1.83(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 623 億円・営業利益 40 億円。施工量0.85倍、価格1.22倍、営業利益率6.5%
- 斜面・法面対策:数量 373(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 0.98(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 364 億円・営業利益 20 億円。施工量0.75倍、価格1.22倍、営業利益率5.5%
- 補修・補強:数量 50.0(施工現場数(件・実質の現場の数))× 価格 2.44(1 現場あたり売上(億円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 10 億円。施工量0.9倍、価格1.22倍、営業利益率8.0%
- 建築:数量 20.5(施工件数(件))× 価格 7.32(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 2 億円。施工量0.65倍、価格1.22倍、営業利益率1.0%
- 一般土木・環境修復ほか:数量 130(標準工事の件数(件))× 価格 0.61(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 2 億円。施工量0.7倍、価格1.22倍、営業利益率2.0%
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益 54 億円で、k 6.75% で割ると約 720 億円にとどまる。床は稼ぐ力と、純現金+売れる資産の税後のどちらか大きい方で測る。純現金は約 280 億円で、政策保有株の売却益の税後を足しても事業の価値を大きくは超えない。ただし悲観は、やや悲観(PER 12.0 倍)より倍率を高くしない。その 9 割の 10.8 倍 × 純利益 54 億円 = 約 585 億円を、今の自己資本 900 億円に対する PBR 0.65 倍で表した。ROE は 4.6% で k に届かず、積み上がった利益は床にしない。営業利益が小さいので EV ÷ 営業利益の見方は意味がない。
確率:入札の値崩れと海外の失敗が重なる構造的な負けだ。純現金と専業の技術が支えになり、重なる確率は低い。quality の理由とは重ねず、1割弱にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
基礎・地盤改良
建物や構造物の下の地盤を固める工事(薬液注入・杭・液状化対策)。米国とベトナムでも手がける。売上の4割強で、会社の最大の柱。
| 数量施工現場数(件・実質の現場の数) | 価格1 現場あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 401 | 1.50 | 601 | 84 |
| 10 年後 中立 | 421 | 2.01 | 846 | 93 |
取り方:2026/03 期の売上構成から、連結売上 1,392 億円の約 43% を基礎・地盤改良と置き 601 億円。営業利益は全社 172 億円を工種別に配分し約 84 億円(利益率 14%)。国内の特殊地盤改良・薬液注入・液状化対策の市場を約 5,000 億円(実質)と推定し、ライトのシェアは国内で約 10%、残りが米国とベトナム。1 現場平均 1.5 億円として約 401 現場分と置いた(幅の大きい推定)。
斜面・法面対策
山の斜面の崩壊を防ぐ法面工事、アンカー、地すべり対策。防災・減災の看板事業で、売上の3割弱。
| 数量施工現場数(件・実質の現場の数) | 価格1 現場あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 498 | 0.80 | 398 | 52 |
| 10 年後 中立 | 473 | 1.07 | 507 | 53 |
取り方:売上構成の約 29% で 398 億円。営業利益は約 52 億円(13%)。法面保護・アンカー・地すべり対策の国内市場を約 3,500 億円(実質)と推定し、ライトのシェアは約 11%。日特建設(売上 834 億円)などと分け合う。1 現場平均 0.8 億円として約 498 現場分。
補修・補強
橋・トンネル・ダムなど老朽化した構造物の補修と補強。中計で伸ばす分野だが、売上は1割に満たない。
| 数量施工現場数(件・実質の現場の数) | 価格1 現場あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.5 | 2.00 | 111 | 16 |
| 10 年後 中立 | 69.4 | 2.68 | 186 | 24 |
取り方:売上構成の約 8% で 111 億円。営業利益は約 16 億円(14%)。橋・トンネル・ダムなどの補修補強は市場が約 1 兆円(実質)で、ライトは専業のショーボンドより小さく、シェア約 1%。1 現場平均 2 億円として約 56 現場分。
建築
中規模の建築工事。設計部門を新設して営業と施工の効率を上げる計画で、利益率は低い。
| 数量施工件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.5 | 6.00 | 189 | 14 |
| 10 年後 中立 | 28.4 | 8.04 | 228 | 13 |
取り方:売上構成の約 14% で 189 億円。営業利益は約 14 億円(7%)。主に大阪・東京の中規模の建築で、1 件平均 6 億円として約 32 件分。
一般土木・環境修復ほか
一般土木、環境修復、東北のグループ会社の工事など。発注の減少と現場の高齢化が課題。
| 数量標準工事の件数(件) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 186 | 0.50 | 93 | 6 |
| 10 年後 中立 | 186 | 0.67 | 125 | 8 |
取り方:一般土木・環境修復・東北のグループ会社などの残り約 93 億円。営業利益は約 6 億円(6%)。開示が粗いので 0.5 億円を 1 件とした推定(約 186 件分)。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率は12%台と、過去10年の最高だ。会社は今期を小幅の減益と見ている。需要が崩れなくても、価格転嫁の追い風が弱まれば、利益率は10%ほどへ戻る。利益が1割減れば、本質価値も同じように動く。
公共予算の先送り
顧客は国や自治体が中心だ。国土強靱化の予算は決まっているが、他の政策に押されれば、点検は進んでも補修の発注は後ろにずれる。2006年と2009年には赤字を出しており、予算の絞りは利益に直結する。
人手不足で施工量が伸びない
2024年の残業規制のあと、技能者の不足が続く。受注が増えても、施工できる量に上限がある。人件費の上昇を価格に転嫁できなければ、受注が増えても利益は伸びない。
米国とベトナムでの現場の損失
海外は米国とベトナムが中心で、売上に占める割合はまだ小さい。ただ、大型の現場で工事の追加費用が出れば、一件で利益が削られる。ベトナムは発注の遅れも中計が認めるリスクだ。
東北のグループ会社の低迷
中計は、東北のグループ会社で発注量が減り、現場も高齢化していると認めている。再編と本体からの幹部派遣で立て直す計画だが、成果はこれからだ。低採算の事業が長引けば、全体の利益率を押し下げる。
競合と大手ゼネコンの参入
法面では日特建設、補修ではショーボンドが専業として競う。大手ゼネコンが地盤改良や補修に力を入れれば、入札の競争が厳しくなる。専業の強みは、特許と実績が続く間だけ守れる。
今後の分かれ目
- 2027年度の受注が、前年を上回るペースで続き、総利益率が22%台を保つ
- 価格転嫁が定着したと読める。強気側の筋書きに確率を移してよい。土木の利益率が11%台で止まる根拠になる。
- 補修・補強の受注が伸び、売上の1割を超え、専業との差が縮む
- 中計の成長が現実になる。強気の筋書きの入口で、利益率の高い仕事が増える分、全体の利益率を支える。
- 国の補正予算や強靱化の予算が絞られ、補修と法面の発注が前年を割る
- 慎重側の筋書きに確率を移す。公共予算に頼る専業は、需要の減りがそのまま稼働の低下になり、利益率が9%台へ下がる。
- 米国やベトナムの現場で、追加費用による損失が複数回出る
- 海外の成長の物語が崩れる。海外は売上の1割に満たないが、損失が続けば筋書きの下振れ要因として重い。
- 自社株買いを増額し、政策保有株の売却が計画より早く進む
- 還元が厚くなり、自己資本が膨らまないのでROEは高く保たれる。ただ、利益そのものは変わらない点には注意する。
- 大手ゼネコンやファンドから、TOBを含む買収の動きが出る
- 割安なら買収の対象になりうる。純現金が厚く、買う側の資金負担が軽い。ただ、実現する前提では確率を置いていない。
見ておくもの
- 四半期の受注高と総利益率(22%台を保てるか)
- 補修・補強の売上比率と受注の伸び
- 国土強靱化の予算の執行と補正予算の規模
- 米国RAITO, INC.とベトナムの採算
- 自社株買いの追加と政策保有株の売却の進み方
倍率と資本コストの決め方
セグメントは工種ごとに現場数(実質)と1現場あたり売上(名目)で積み、物価3%を価格に入れ、数量は人手の制約から0.75〜1.25倍に置いた。k は基本 7.5% に quality 0% を足した(4項目の合計がゼロ)。g 4% と式から倍率を出し、今・過去・同業の市場の倍率は見ていない。中立の PER は ROE が k を上回るので下限の 1÷k を超える。悲観の PBR は今の自己資本に掛け、稼ぐ力でも確かめた。営業利益は家賃を費用に入れた今と同じ形(新リース会計基準の適用前の形)でそろえた。純現金は運転資金の波と相殺されるとして分けていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.5→20.96 倍・やや楽観 PER 15.7→20.03 倍・中立 PER 13.9→19.16 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。