結論
新日本建設は千葉県を地盤に、建物を請け負う建設事業と、マンションを自ら開発して売る開発事業で稼ぐ会社だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というもの。開発の高い利益率が10年続くとは見ず、厚い手元資金も、株主に戻る保証が弱いので半分しか数えないからだ。
利益の中身は偏っている。売上の4割に満たない開発事業が、営業利益の約7割を生む。分譲マンションは土地を仕入れて売る商売で、市況が良い間は大きく稼ぐが、崩れれば在庫が重荷になる。2026年3月期の営業利益率14.7%は、過去10年でも最高水準だ。筆者はここを山とみている。
建設事業は薄利だが、足元は追い風だ。鉄骨造の工場や冷凍冷蔵倉庫など非住宅の受注が、約2割から約4割に上がった。資材高を発注者が受け入れ、利益も確保できている。ただ、工場・倉庫の需要が一巡すれば、入札で値段を叩かれる側に戻る。
財務は堅い。借金より現金が約960億円多く、自己資本比率は7割を超す。この余力が、市況が悪化した年の備えになる。半面、利益に比べて現金が余り、自己資本利益率は10年先に下がる。
10年の数量は国内の人口減で横ばいから微減、単価は物価並みの伸びを置いた。中立の利益は今より少し増える程度だ。大株主の持ち分が厚く、買収されて値がつく筋もあるが、確率は低くみた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社は安心して持てるが、遠くまで見通せる会社ではない。強みは、借金に頼らずに稼いできた事実と、財務の余裕だ。弱みは、利益の7割が市況に左右される開発事業から出ている点と、堀と呼べる強みが薄い点だ。
オーナーが手にできる利益は、見た目の純利益より小さいとみている。開発は用地を買い続けなければ利益が続かず、買えば現金が在庫に変わる。建設も、機械や人手への再投資が必要だ。10年先まで、今の利益率が続くとは言えない。
経営の資本配分は、まだ判断を保留している。現金を積み上げたまま、還元が控えめな点は、オーナー目線では物足りない。親しい株主が厚いため、少数株主の利益が優先されるかどうかも見極めが要る。
安全域は、現金の厚みにある。楽観でも悲観でも、帳簿の現金と売れる資産が下値を支える。ただし、時価総額に比べて現金が大きいことは、そのまま割安の根拠にはならない。現金が株主のもとに戻るとは限らないからだ。筆者は、現金のうち半分だけを価値に数えた。
わからない部分も多い。開発の利益は、用地の仕入れ値次第で年ごとに大きく動く。確信度は高くない会社だと筆者は見ている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は2本ある。1つ目は建設事業で、千葉県と首都圏でマンションや工場・倉庫などの建築を請け負う。もう1つが開発事業で、自社でマンション用地を買い、建て、売る。用地の仕入れから建築、販売まで一貫して手がけるのが、この会社の持ち味だ。
建設事業は売上の6割強を占めるが、利益率は1桁にとどまる。請け負う仕事は、鉄筋コンクリート造のマンションと、鉄骨造の非住宅に分かれる。非住宅は工期が短く、工事の回転が速い。上期の受注では非住宅が約4割に上がり、社長は今後もこの水準を保つ考えを示している。
開発事業は売上の4割弱だが、営業利益の約7割を稼ぐ。分譲マンションの販売に加え、ホテルなど収益不動産を開発して売る。海浜幕張駅前のホテルは2026年3月の売却を予定していた。こうした売却は、年によって利益が大きく動く原因になる。
建設事業が建てる建物の一部は、開発事業の自社物件でもある。つまり二つの事業は市況に対して同じ向きに揺れる。マンションが売れる年は、用地も建築も忙しい。反対に、売れ行きが落ちれば両方が同時に細る。これが、この会社を見るときの最大の注意点だ。
本社は千葉市で、営業の中心は千葉県と東京の東側である。地域に根差した受注と土地情報が強みだが、同じ理由で、対象が千葉・首都圏に絞られた会社でもある。
優良さと弱いところ
強みは、土地を押さえて自社で建てて売る一貫体制と、地域の金融機関との太い関係だ。地元の銀行が株主に並び、用地の仕入れ資金に困らない。これは競合の都心のデベロッパーや大手ゼネコンがつかみにくい千葉の土地情報を取る上で、実際に効いている。
過去10年のROEは10〜20%台で、中央は約12%。純現金を抱えたままこの水準を保ったことは、事業の稼ぐ力が確かなことを示す。営業利益率も1桁後半から10%台と、建設会社としては高い。
一方で、堀と呼べるほどの強みは多くない。建設は入札と値段勝負で、ブランドで価格を決められる事業ではない。開発も、用地を高く買えば利益が消える競争の世界だ。利益率が高いのは、用地の仕入れ値が低かった年に当たったことが大きいと筆者は見ている。
経営は堅実だ。借金に頼らず、現金を積み上げてきた。だが、その現金を成長や還元にどう振り向けるかは、まだ試験の途中にある。利益に対する還元の割合は、まだ3割に届かない。
弱みは、対象地域と事業が絞られていることだ。千葉・首都圏のマンション市況と、非住宅の工場・倉庫需要という、似た景気に連動する二本柱に頼っている。どちらかが崩れれば、もう一方も影響を受ける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設・マンション市場は、人口減と世帯数減の中で、数量が縮む産業だ。新設の住宅着工は2025年度に大きく落ち込み、2026年度は政策効果で戻る見通しだが、長い目では60万戸台への縮小が筆者の中立の見方になる。数量の穴を埋めるのは、値上げと、非住宅の建築需要だ。
首都圏の新築マンションは、用地と建築費の高騰で価格が大きく上がった。価格が上がったぶん、買える人が限られ、販売戸数は減っている。千葉県は都心より安く、一定の需要が見込めるが、金利が上がれば買い手の負担が増す。物価3%と金利上昇が続く世界では、ローンの重さが市況の最大の変数になる。
建設側では、人手不足と資材高が全社共通の悩みだ。ここ1〜2年は、発注者が値上げ分を受け入れる流れが定着し、利益率が持ち直した。だが、これは需要が強い間の話だ。受注が細れば、値段の主導権は発注者に戻る。
非住宅は工場・物流・冷凍冷蔵倉庫などの設備投資に支えられている。国内回帰や食品・医薬品の物流投資が続くあいだは追い風だが、需要の一巡は10年の間に必ず来る。
競合は、千葉の地場ゼネコンや大手ゼネコンの支店、都心のマンションデベロッパーなど。新日本建設は、規模では小さいが、土地を押さえる速さと地元の関係で戦っている。同じ領域の大手ハウスメーカーは国内の縮小を海外で補う道を選んだが、この会社は国内に絞る道を選んでいる。
資本政策と M&A
資本政策は、これまで現金を厚く持つ方針だった。純現金は960億円ほどで、時価総額の7割を超える。用地の仕入れ資金や工事の運転資金にも使うので全部が余剰ではないが、それを差し引いても、余る分はかなり大きい。
株主還元は増配の方向にある。2026年3月期は増配し、2027年3月期の計画もさらに増配だ。ただ、利益に対する配当の割合は3割に届かず、自社株買いの実績も目立たない。現金が利益より速く積み上がる状態が続いている。
株主構成は、筆頭株主が3割超、上位2社で4割を超す。地元の銀行も上位に並ぶ。持ち分が厚く、少数株主の声が資本政策に届きにくい面がある。反面、買収を仕掛ける側にとっては、筆頭株主の同意が前提になる。
M&Aは、これまで大きな買収の実績が目立たない。余った現金の使い道として、用地の仕入れ拡大や、非住宅への投資が考えられる。ただ、仕入れ価格が市況の山と重なれば、現金が逆に減る危険もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設と開発という二つの事業が、噛み合って伸びる。開発の分譲マンションは、用地を押さえた段階で自社の建設事業に仕事が回る。千葉県は都心より価格が安く、買える層が厚い。人口が減る中でも、都心から離れた地域は、若い世帯の流入で需要が保たれる。
建設事業では、非住宅の比率が約2割から約4割に上がり、工期が短く、利益の出やすい鉄骨造が増えた。食品・医薬品・冷凍冷蔵といった物流投資は、国内回帰の流れもあって続く。受注の質が上がれば、利益率は今より高い水準で定着する。
資材高の価格転嫁が定着したことも大きい。発注者が値上げを受け入れる状況は、人手不足が続く限り変わらない。物価3%の世界では、工事単価が毎年上がり、売上は名目で伸びる。
財務の力も強い。借金より現金が約960億円多く、自己資本比率は7割を超す。この余裕があれば、市況が良いときに用地を積極的に仕入れられる。ライバルが資金繰りで手を引く局面でも、買い進められる。
増配の方向が見えてきたことも、評価を押し上げる。現金が余っている会社が、還元を強める局面に入れば、株式の価値は現金の分だけ見直される。大株主が厚いことも、長期の経営判断をしやすくする。10年後には、利益が今より5割以上増え、倍率も上がる。
慎重な見方
いまの利益は山だ。2026年3月期の営業利益率14.7%は、過去10年で最高の水準にある。この水準が続く保証はない。開発事業の利益率は、用地の仕入れ値が低かった年の結果で、用地が高騰した今、同じ利益率で売るのは難しい。
千葉・首都圏のマンション市場は、価格が上がりすぎた。買える層が限られ、販売戸数は減っている。金利が上がれば、ローンの負担が増え、売れ行きがさらに落ちる。完成在庫が積み上がると、値引きと評価損が一気に出る。
建設事業も、追い風は長続きしない。非住宅の工場・倉庫は設備投資の一巡で受注が減る。受注が減れば、入札で値段を叩かれ、数年前のような薄利に戻る。人手不足と資材高のコストが、価格転嫁の限界を超える年も来る。
二つの事業は同じ景気に連動する。マンションが売れない年は、自社の建設も細り、損失が同時に出る。一方に頼る構造ではなく、両方が同時に崩れる構造だ。
現金が厚いことも、必ずしも株主のものにはならない。筆頭株主の持ち分が3割を超え、還元の割合は低い。用地を高値でつかむ、あるいは使い道のない買収をすれば、現金は価値を落とす。10年後の利益は、今より低い水準に落ち着くとみる。
どちらに重みを置いたか
短期の崩れにくさは、強気の見方に分がある。現金が厚く、非住宅の受注も強いからだ。ただ、利益の7割が市況に左右される開発事業から出ていて、今の利益率は山に近い。この点は慎重な見方が強いとみて、中立は今より小さい利益に置いた。
確率は、中立を35%と最も厚く置き、やや悲観を23%、悲観を12%とした。楽観は10%に抑えた。悲観が小さいのは、現金と売れる資産が床になるからで、同業のハウスメーカーに比べて崩れ方が浅い。
結論は、ほぼ適正という水準になった。現金が下値を支えるので、割高にも割安にも大きく振れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,722 円3,347 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 909 円532 億円)。 今の値に割り戻すと 3,557 円2,080 億円、今との差 +62.3%、 期待の年率 +11.7%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,330 円5,457 億円 | 1,368 円800 億円 | +388.1% | +17.2% | 1,070 円626 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,071 円4,721 億円 | 1,146 円670 億円 | +320.5% | +15.4% | 1,843 円1,078 億円 |
| 中立 | 35% | 6,992 円4,089 億円 | 992 円580 億円 | +264.2% | +13.8% | 2,794 円1,634 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,459 円1,438 億円 | 718 円420 億円 | +45.0% | +3.8% | 731 円427 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,351 円790 億円 | 256 円150 億円 | −26.7% | −3.1% | 193 円113 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,722 円3,347 億円 | 909 円532 億円 | +202.5% | +11.7% | 6,631 円3,878 億円 |
今の株価時価総額 2,192 円1,282 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:非住宅が伸び、開発の高採算も保たれる 利益 251 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 9,330 円5,457 億円
非住宅の鉄骨造が10年にわたって伸び、受注の4割を安定して占める。食品・医薬品の物流投資が続き、工事単価は実質でも上がる。建設の利益率は9%まで上がり、今より1段高い水準で定着する。
開発では、千葉県の郊外型マンションの需要が若い世帯の流入に支えられ、販売戸数が今より1割以上増える。用地の仕入れが続き、利益率も25%の高い水準を保つ。厚い現金を背景に、市況の谷で用地を安く拾い、次の山で売る循環が回る。
配当は4割の性向まで引き上げられ、自己資本の積み上がりも抑えられる。大株主の厚い持ち分が、長期の判断を安定させる。国内の縮小という見方から脱し、地域に強い成長企業として評価が高まる10年になる。
- 建設事業(千葉・首都圏の建築請負):数量 40.0(年間の完成工事の延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 35(1 万㎡あたりの請負金額(億円。㎡あたり約 25 万円))→ 売上 1,400 億円・営業利益 126 億円。非住宅の鉄骨造が伸び、価格転嫁も実質で進む
- 開発事業等(分譲マンション・不動産開発):数量 1,100(年間の販売戸数(戸、マンション換算))× 価格 0.80(1 戸あたり平均価格(億円。約 5,500 万円))→ 売上 877 億円・営業利益 219 億円。用地仕入れが続き、高採算が保たれる
倍率:事業の純利益 241 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)531 億円。全体の PER 19.76 倍、時価総額 5,295 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:非住宅の需要が長く続き、開発の用地仕入れも好循環が続く組み合わせ。実現すれば大きいが、条件が重なる必要があるので1割にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:非住宅4割を保ち、開発は戸数減を単価でカバー 利益 212 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 8,071 円4,721 億円
非住宅は4割の水準を保つが、数量は大きく伸びない。建設は、資材高の価格転嫁が定着し、利益率は8%台を維持する。工場・倉庫の需要が一巡する年もあるが、マンション建築で穴を埋める。
開発は、販売戸数が少し減るものの、単価が物価以上に上がり、売上は名目で伸びる。用地の仕入れ値は上がるが、高採算の水準は24%と、今よりやや低いところに落ち着く。
配当は性向を3割台後半まで上げ、現金の積み上がりにも歯止めがかかる。千葉県の地盤と財務の余裕を生かし、市況の波を大きな傷なしに乗り切る、起伏の少ない10年になる。
- 建設事業(千葉・首都圏の建築請負):数量 37.0(年間の完成工事の延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 34(1 万㎡あたりの請負金額(億円。㎡あたり約 25 万円))→ 売上 1,267 億円・営業利益 106 億円。非住宅4割を保ち数量はほぼ横ばい
- 開発事業等(分譲マンション・不動産開発):数量 1,020(年間の販売戸数(戸、マンション換算))× 価格 0.77(1 戸あたり平均価格(億円。約 5,500 万円))→ 売上 785 億円・営業利益 189 億円。マンション供給は戸数減を単価でカバー
倍率:事業の純利益 202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)531 億円。全体の PER 19.55 倍、時価総額 4,482 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:非住宅の受注が高水準を保ち、マンションの単価上昇が戸数減を補う、無理のない好調の筋書き。
中立 35% 中立:国内の縮小を単価で補い、開発の利益率は山から下がる 利益 178 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 6,992 円4,089 億円
建設は、非住宅の4割を保ち、数量は10年を通じて横ばいに近い。単価は物価並みに上がるが、利益率は薄いまま、8%弱で落ち着く。人手と資材のコストが増えても、価格転嫁で吸収できる範囲に収まる。
開発は、千葉県と首都圏でマンション用地を仕入れ続けるが、用地の高騰で戸数は少し減る。利益率は、今の山の水準から23%まで下がる。ホテルなど収益不動産の売却は、年ごとに利益を押し上げたり、押し下げたりする。
利益は、名目で今よりやや増える程度にとどまる。配当は性向を3割台半ばまで引き上げるが、現金は積み上がり、自己資本は今の1.8倍になる。この結果、ROEは今の水準を大きく下回る。国内の縮小を物価で補うだけの、静かな10年だ。
- 建設事業(千葉・首都圏の建築請負):数量 34.0(年間の完成工事の延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 34(1 万㎡あたりの請負金額(億円。㎡あたり約 25 万円))→ 売上 1,139 億円・営業利益 89 億円。数量は横ばい、単価は物価並み
- 開発事業等(分譲マンション・不動産開発):数量 950(年間の販売戸数(戸、マンション換算))× 価格 0.74(1 戸あたり平均価格(億円。約 5,500 万円))→ 売上 700 億円・営業利益 161 億円。戸数は用地難でやや減り、利益率は山から下がる
倍率:事業の純利益 168 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)531 億円。全体の PER 19.38 倍、時価総額 3,788 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばいで単価が物価並みに上がる、最も無理のない筋書き。開発の利益率は山から下がるとみて、最も重く置いた。
やや悲観 23% やや悲観:マンション市況の悪化と非住宅の一巡が重なる 利益 87 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,459 円1,438 億円
金利が上がり、マンションの買い手の負担が増える。千葉県の販売戸数は大きく減り、完成在庫に値引きが入る。開発の利益率は、山の水準から15%まで落ちる。
建設も苦しくなる。非住宅の工場・倉庫の需要が一巡し、受注が減る。入札で値段を叩かれ、利益率は6%まで下がる。人手と資材のコスト増を、価格転嫁しきれない年も出てくる。
利益は今の半分以下に落ち込む。それでも配当は性向を3割台で保ち、現金は大きく減らない。ただ、現金の一部を使って買った用地が値下がりし、余った現金の価値も目減りする。優良な地域企業という評価が、少しずつはがれていく10年になる。
- 建設事業(千葉・首都圏の建築請負):数量 30.0(年間の完成工事の延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 33(1 万㎡あたりの請負金額(億円。㎡あたり約 25 万円))→ 売上 975 億円・営業利益 59 億円。非住宅の一巡と受注競争で薄利に
- 開発事業等(分譲マンション・不動産開発):数量 720(年間の販売戸数(戸、マンション換算))× 価格 0.69(1 戸あたり平均価格(億円。約 5,500 万円))→ 売上 495 億円・営業利益 74 億円。市況悪化で戸数減・値引き
倍率:ROE 5.0%(事業分、純利益 87 億円 ÷ 自己資本 2,126 億円)。事業の ROE が k 7% を大きく下回り、ためた利益は額面より小さい価値。伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が天井で、ROE が低いのでそれより大きく下げ、9.0 倍に置いた。今の自己資本の 1,346 億円に対する PBR は約 0.64 倍で、中立の約 0.99 倍より低い。余った現金は谷で食うとみて、今の額の 0.75 倍に置いた。
確率:金利上昇でマンション需要が細り、非住宅の追い風も止まる組み合わせ。現金が厚いため、深くは崩れないとみた。
悲観 12% 悲観:市況の崩壊で開発が止まり、建設も赤字すれすれ 利益 17 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 1,351 円790 億円
千葉・首都圏のマンションは、用地高と金利上昇が重なって売れなくなる。完成在庫が積み上がり、値引きして処分するうちに、開発の利益はほぼ消える。仕入れ済みの用地には評価損が出る。
建設も、同じ景気で細る。マンション建築の発注が止まり、非住宅の工場・倉庫も設備投資の一巡で受注が減る。地場ゼネコンや大手との入札で、赤字すれすれの値段で受注せざるをえなくなる。
営業利益はほぼゼロまで落ちる。配当は減り、積み上げた現金も在庫と評価損で削られる。それでも、借金が少なく、売れる資産が残るため、会社の存続が揺らぐことはない。ただ、もはや優良な地域企業ではなく、資産を食いながら小さくなる会社になっている。
- 建設事業(千葉・首都圏の建築請負):数量 24.0(年間の完成工事の延べ床面積(万㎡、推定))× 価格 30(1 万㎡あたりの請負金額(億円。㎡あたり約 25 万円))→ 売上 720 億円・営業利益 25 億円。工場・倉庫の需要が細り、赤字すれすれの入札が増える
- 開発事業等(分譲マンション・不動産開発):数量 450(年間の販売戸数(戸、マンション換算))× 価格 0.61(1 戸あたり平均価格(億円。約 5,500 万円))→ 売上 272 億円・営業利益 8 億円。市況崩壊で在庫を値引きし利益がほぼ消える
倍率:赤字すれすれで稼ぐ力は測れず、床は売れる資産の税後で測る。総資産約 1,850 億円(自己資本 1,346 億円 ÷ 自己資本比率 72.6%)を、在庫の値引きを含めて 7 割しか回収できず、負債約 510 億円は全額払って残る約 790 億円を床とした。今の自己資本 1,346 億円に対する PBR 0.587 倍(時価総額 790 億円)に置いた。減損を入れて自己資本は 1,446 億円に減るが、PBR は今の自己資本に掛けた。
確率:金利と用地高が重なってマンション市況が崩れ、工場・倉庫の需要も細る、構造的な負けの筋書き。現金が床になるため確率は低く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設事業(千葉・首都圏の建築請負)
分譲マンション(RC 造)と非住宅(鉄骨造の工場・倉庫など)の建築請負。
| 数量年間の完成工事の延べ床面積(万㎡、推定) | 価格1 万㎡あたりの請負金額(億円。㎡あたり約 25 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.0 | 25 | 850 | 66 |
| 10 年後 中立 | 34.0 | 34 | 1,139 | 89 |
取り方:2026年3月期の連結売上1,384億円のうち、2025年3月期の建設56%・開発等44%と、2026年4〜9月期の建設413億円・開発146億円から、通期の建設を約850億円と推定した。2026年3月期のセグメント内訳は確認できていない。平均の請負単価を、マンションと非住宅の混合で㎡あたり約25万円とおき、完成延べ床面積を約34万㎡と逆算した。営業利益は、2025年3月期の建設5,105百万円と上期の動きから約66億円と推定。単価は中立で物価並み(10年1.34倍)、床面積は実質。
開発事業等(分譲マンション・不動産開発)
用地を仕入れ、建て、売る分譲マンションと、ホテルなど収益不動産の開発・売却。
| 数量年間の販売戸数(戸、マンション換算) | 価格1 戸あたり平均価格(億円。約 5,500 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 971 | 0.55 | 534 | 149 |
| 10 年後 中立 | 950 | 0.74 | 700 | 161 |
取り方:連結売上から建設を引いた約534億円を開発事業等の売上とし、2025年3月期の開発等584億円・利益142億円(利益率24%)と、上期の146億円(前年比28%減)、ホテル売却予定による通期増収から推定した。マンション1戸あたり約5,500万円(千葉・首都圏の郊外型の水準、推定)で割り、販売戸数に相当する約971戸と逆算した。ホテルなど収益不動産の売却もマンション換算の戸数に含めてある。営業利益は約149億円(推定)。単価は中立で物価並み(10年1.34倍)、戸数は実質。
リスクと懸念
千葉・首都圏のマンション市況
開発事業は営業利益の約7割を稼ぐ。用地と建築費の高騰で価格が上がり、買える層が限られてきた。金利が上がれば販売戸数がさらに落ち、完成在庫への値引きと評価損が一気に出る。会社の利益が、一つの市況に大きく乗っている。
開発の利益の振れ
ホテルなど収益不動産の売却は、年によって利益を大きく動かす。上期は開発の売上が3割近く減り、通期でホテル売却が補う形だった。一時的な利益を、巡航の利益と取り違えると、10年先の見方を誤る。
非住宅需要の一巡
建設の追い風は、工場・冷凍冷蔵倉庫など非住宅が受注の約4割に上がったことだ。設備投資が一巡すれば、受注が減り、入札で値段を叩かれて薄利に戻る。マンション建築が弱い年と重なると、建設全体が細る。
資材高・人手不足の価格転嫁
ここ1〜2年は発注者が値上げを受け入れ、利益が持ち直した。だが、これは需要が強い間の話だ。受注が弱まれば主導権は発注者に戻り、人件費と資材高の負担が利益を直撃する。
筆頭株主の持ち分と少数株主
筆頭株主が3割超、上位2社で4割を超す。地元の銀行も上位に並ぶ。持ち分が厚いぶん、還元や資本政策の判断が少数株主に有利になるとは限らない。一方で、買収が起きるなら筆頭株主の同意が前提になる。
余った現金の使い道
借金より現金が約960億円多い。この現金を、用地の仕入れや買収に回して価値を落とす危険がある。市況の山で用地を高値でつかめば、現金が在庫と評価損に変わる。還元が控えめなことも、現金が株主に戻らない原因になる。
今後の分かれ目
- 千葉・首都圏のマンションの販売戸数が大きく落ち、完成在庫が積み上がったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。開発の利益率が山から下がる速さを確認する。
- 金利の上昇が続き、住宅ローンの負担が増したら
- マンション需要の悪化を織り込み、やや悲観側に重みを移す。
- 非住宅の受注比率が4割を保ち、受注残が積み上がったら
- 建設の利益率が高止まりするとみて、やや楽観側に寄せる。
- 配当性向が4割を超え、自社株買いが始まったら
- 余った現金が株主に戻る確度が上がり、現金の戻り方を見直す。
- 筆頭株主や大株主が持ち分を動かす、または買収の提案が出たら
- 買収の可能性が上がり、楽観側の確率と余った現金の戻り方を見直す。
- 用地の大型の仕入れや買収が発表されたら
- 価格と資金の出所を確認する。市況の山で高値でつかんでいれば、現金の価値を割り引く。
見ておくもの
- 開発事業の販売戸数・完成在庫と、利益率の推移
- 建設事業の受注高・受注残と、非住宅の比率
- 千葉・首都圏の新築マンションの契約率と価格
- 配当性向・自社株買いと、手元現金の推移
- 大株主の持ち分の変化と、買収の動き
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに、建設は延べ床面積×単価、開発は販売戸数×単価で積み、物価3%は単価に入れた。純利益には、現金の利息の増加を足した。倍率は利益で決め、ROEが資本コスト以下なので正当化PERの天井は1÷k。中立は下限の1÷kに置いた。純現金は事業に要る分を引いた約708億円だけ、戻り方0.5で足した。悲観は稼ぐ力でなく、総資産の7割回収・負債全額払いの売れる資産で測った。今の株価と市場の倍率は使っていない。新リース会計基準で営業利益・負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→19.76 倍・やや楽観 PER 10.2→19.55 倍・中立 PER 12.1→19.38 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。支配的な株主・開発の市況などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。