結論
佐田建設は、群馬県前橋市に本社を置く創業 1920 年の総合建設会社だ。売上の 7 割弱が建築、3 割が土木である。筆者の結論は「適正」。値を支えるものは二つあり、純現金が時価総額の半分に迫ることと、利益のほぼ全部を株主に戻す方針だ。ただ、事業の利益は今が山に近く、それを織り込むと割安とまでは言えない。
直近の決算は売上 368 億円、営業利益 18 億円と大きく伸びた。ただ、営業利益率 4.8% は過去の山 6% に近く、会社も今期は経常利益 18% 減を見込む。筆者は、この利益が続くとは置かない。10 年の中立では営業利益率を 4% 台前半に落とした。
特徴的なのは資本政策である。中期経営計画は自己資本を 120 億円以下に抑え、配当は DOE 6%、自社株買いは毎期発行済株式の 8% を目標にする。前期は自己株取得に 42 億円を使った。
弱みは、規模が小さく手持ち工事が売上の 1 年分にとどまることだ。受注は景気の波を受けやすく、土木の受注は前期に 3 割近く減った。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは「事業」より「資本の使い方」だ。
事業は平凡である。堀はなく、利益は景気と受注の波に左右される。10 年後の営業利益は今と大差ない、というのが筆者の置き方だ。
それでも、価値が生まれる理由がある。第一に、手元の純現金が時価総額の半分近い。第二に、経営陣が利益のほぼ全部を配当と自社株買いで戻すと明言し、実行した。事業が成長しなくても、株主の取り分は株数の減少で増える。
安全域も見える。悲観の筋書きでも、純現金と設備の売れる価値で時価総額の半分に届く。上振れは小さいが、下振れも浅い。ただし、この見立ては、方針が守られ、現金が無駄な買収に使われないことが前提になる。
経営の約束を数字で確かめられる点が、安心材料である。
もう一つ、経営者の誠実さを見ておきたい。自己資本を 120 億円以下に抑え、余った分は配当と自社株買いで返すという約束は、数字で検証できる。約束が破られる兆しが出たら、評価はすぐに改める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは建設事業の一本で、土木と建築に分かれる。
土木は道路の造成、トンネル、橋梁など公共工事が中心で、前期の売上は 112 億円。粗利率は 13% 台と高く、利益の柱である。国や自治体が発注し、入札で決まるため値段は自分で決めにくいが、国土強靱化の予算が下支えする。
建築は工場、倉庫、教育施設、庁舎などで、売上は 251 億円と全体の 7 割弱。粗利率は 8% 台と低い。受注は前期に 3 割近く増え、繰越は 249 億円ある。次の数年は建築が売上を支え、土木の繰越(95 億円)は薄い。
ほかに、アスファルト合材の販売などの兼業があるが、売上は 4 億円ほどで全体を左右しない。
従業員は連結で 463 人、平均年収は 664 万円で前年から 1 割上がった。人手が売上の上限を決める事業であり、賃金の上昇がそのまま原価に響く。
受注のしくみも押さえておきたい。前期の受注は 413 億円で、土木が 93 億円、建築が 315 億円だった。土木は前の期から 28% 減り、建築は 26% 増えた。売上の 7 割弱を占める建築が、当面の売上を支える形である。公共工事の入札は価格で決まりやすく、民間の建築は相見積りで決まる。特定の顧客に売上が偏る事業ではないが、地域の官公庁と地元の企業が主な取引先になる。
優良さと弱いところ
優良さは「中の下」と見る。強みは財務で、自己資本比率は 45%、現預金は有利子負債を 64 億円上回る。無理な受注を避ける体質もあり、2010 年 3 月期を最後に赤字を出していない。
弱みは規模と値決めの力である。売上は 400 億円に届かず、大手のような海外や再開発の案件はない。公共工事は入札、民間は相見積りで、値段を決める力は弱い。営業利益率は過去 12 年で 0.8〜6.0% と振れ、堀と呼べるほどの安定した利益ではない。
経営の資本の使い方は評価できる。自己資本を 120 億円以下に管理し、ROE 10% を掲げ、前期は 42 億円の自社株買いを実行した。余った資本を抱え込まない姿勢は、地方の同業では珍しい。
一方で、買収の実績はなく、成長投資は DX とアスファルトプラント更新の計 28 億円と小さい。成長でなく還元で価値を出す会社である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、数量が横ばいから緩やかな縮小、価格が物価並みという成熟した姿だ。2024 年の残業規制と技能者の高齢化で、業界は受注を選び、値上げを通す方向に変わった。上場ゼネコンの利益率は、集計開始以来の高水準にある。
追い風は国土強靱化だ。2026 年度から 5 年で 20 兆円規模の計画があり、道路や橋の更新が続く。佐田建設の土木は直接に恩恵を受ける。
逆風は人手不足と地方の人口減である。群馬を中心とする北関東の民間投資は首都圏ほど強くない。人件費と外注費の上昇を価格に転嫁できなければ、利益率は削られる。
競合は同規模の地場ゼネコンのほか、準大手の戸田建設や熊谷組、奥村組などがある。地方の入札では価格が決め手になり、規模の小さい会社ほど不利になりやすい。再編は進みやすく、事業承継型の M&A が増える領域でもある。
同規模の地場ゼネコンは、2024 年問題を機に受注を絞り、採算の悪い工事を断る動きを強めた。この流れが続く限り、業界全体の価格は物価並みに上がる。ただ、資材と外注費の上昇が価格転嫁を上回る年もあり、利益率は景気と受注の巡り合わせで 1% 台から 6% まで動く。10 年を通して見ると、数量は実質でゆるやかに減り、価格は物価並みに上がる、という成熟した姿を置くのが妥当だ。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社の最大の特徴だ。2025〜2027 年度の中期経営計画は、自己資本を 120 億円以下にコントロールし、配当は DOE 6%、自己株取得は発行済の 8% を毎期の目標にする。3 年で 24% を買い取る計算になる。
前期は自己株取得に 42 億円、配当に 9 億円を払い、純資産は 41 億円減った。それでも現預金は有利子負債を 64 億円上回る。
買収の実績はなく、大株主や親会社の状況は今回確かめられていない(本社は前橋市、設立は 1949 年)。株主優待は開示に見当たらない。株数が減り続けるため、利益が横ばいでも 1 株の利益は上がる。
注意すべきは、自社株買いで流通株が減ることだ。売買が細り、株価の動きが荒くなる可能性がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
純現金が時価総額の半分に迫るうえ、中計は自己資本を 120 億円以下に抑えると明言した。余った資本は配当と自社株買いで戻る。前期は 42 億円の自社株買いを実行しており、口先だけではない。
営業利益は 18 億円と過去最高圏で、中計の 28 年 3 月期目標(営業利益 16 億円、ROE 10%)は低めに置かれている。土木の粗利率 13% 台と、建築の繰越 249 億円が当面の利益を支える。
国土強靱化の予算は 5 年で 20 兆円規模あり、土木の更新需要は 10 年は続く。株数が毎年 8% 減れば、利益が横ばいでも 1 株の価値は 10 年で倍近くになる。ROE が 10% を超え、資本コストを上回る会社として評価されてよい。
加えて、経営陣が数字で約束している点は大きい。ROE 10% と PBR 1 倍以上を恒常的に達成する、と中計に書き、配当と自社株買いの目標も具体的に示した。小さな地場ゼネコンでここまで資本効率を言い切る会社は少ない。
慎重な見方
建設業の利益は波が大きい。営業利益率は 12 年で 0.8% から 6.0% まで振れ、直近はその山にいる。会社自身が今期の経常利益を 18% 減と見込む。
規模が小さく、繰越は売上の 1 年分だ。土木の受注は前期に 3 割近く減り、土木の繰越は 95 億円と薄い。利益の柱が細る可能性がある。
自社株買いは現金を減らす。42 億円を使った今、これ以上続けると、景気が悪化した時の資金繰りに余裕がなくなる。純現金は、未成工事受入金や工事未払金といった運転資金の裏返しでもあり、全部が余剰ではない。
人手不足による賃金の上昇は避けられず、価格転嫁が止まれば利益率は 2% 台に落ちる。
加えて、規模の小ささは構造的な弱点である。大手のような価格決定力も、海外や再開発といった別の稼ぎ口もない。景気が悪化すれば、受注の減少と採算の悪化が同時に来る。自社株買いで流通株が減れば、売買も細る。
過去の前例も重い。2024 年 3 月期は営業利益率が 0.8% まで落ち、純利益は 1 億円しか残らなかった。1 年の受注の失敗で、数字は簡単に崩れる会社である。
どちらに重みを置いたか
方針が実行されている点を重く見て、確率は中立から楽観側にやや寄せた。ただし、利益の波が大きく繰越が薄いことは否定できないので、やや悲観も 3 割近く残した。純現金の全額は余剰とせず、運転資金分を除いて 25 億円だけを余りとした。
つまり、資本政策を重く見て中立を厚く、悲観側は現金の減りと利益の波を見て 4 割置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,423 円172 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 847 円102 億円)。 今の値に割り戻すと 1,214 円146 億円、今との差 +12.6%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,813 円339 億円 | 1,243 円150 億円 | +276.3% | +14.2% | 243 円29 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,203 円266 億円 | 1,061 円128 億円 | +202.8% | +11.7% | 555 円67 億円 |
| 中立 | 37% | 1,762 円213 億円 | 978 円118 億円 | +154.2% | +9.8% | 1,014 円122 億円 |
| やや悲観 | 28% | 595 円72 億円 | 663 円80 億円 | +16.7% | +1.6% | 352 円43 億円 |
| 悲観 | 12% | 514 円62 億円 | 373 円45 億円 | −17.7% | −1.9% | 106 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,423 円172 億円 | 847 円102 億円 | +110.6% | +7.7% | 2,271 円274 億円 |
今の株価時価総額 1,078 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 選別受注が定着し、土木の厚い利益が続く 利益 18 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 2,813 円339 億円
国土強靱化の予算が続き、土木の量を保つ。建築は工場、倉庫、教育施設の案件を選んで受け、価格転嫁も通る。営業利益率は過去の山 6% に近い 5.5% で定着する。
中計の自己資本 120 億円以下の方針は守られ、利益の大半は配当と自社株買いで戻る。株数が減るため、利益が増えなくても 1 株の価値は上がる。
10 年後の営業利益は 27 億円ほどで、今の 1.5 倍。ただ、これは土木の高採算が続き、建築の採算も改善するという、条件が重なった姿である。
この筋書きでは、会社の計画が全部うまくいく。土木の高い粗利率が続き、建築の粗利率も 9% 近くまで改善する。人手不足で受注を選べる立場が定着し、価格転嫁も止まらない。
- 土木関連:数量 14.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 13 億円。土木 14.01 万人日、利益率 8.5%
- 建築関連:数量 31.4(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 337 億円・営業利益 14 億円。建築 31.41 万人日、利益率 4.2%
- 兼業・その他:数量 0.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。兼業・その他、利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 17.51 倍、時価総額 339 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:土木の更新需要が続き、建築も工場・倉庫で量を保ち、粗利率が山の水準で定着する筋書き。繰越が 1 年分にとどまり、連続して当たる必要があるので低く置いた。
やや楽観 17% 価格転嫁が通り、利益率が高めに残る 利益 15 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 2,203 円266 億円
価格転嫁が物価並みに通り、量は実質でほぼ横ばいを保つ。営業利益率は 4% 台後半で、中計の 28 年 3 月期の水準(4.4%)をやや上回って定着する。
配当は DOE 6%、自社株買いは続く。利益は 15 億円ほどで、自己資本は 110 億円前後に管理される。土木の粗利率が 13% 台を保てるかが分かれ目になる。
建築の粗利率は 8% 台後半に改善し、土木の高採算も保つ。ただし受注の量は増えず、利益の伸びは価格の分にとどまる。中計の目標が達成される姿に近い。 配当と自社株買いの目標が達成され、自己資本は 110 億円前後で保たれる。株数の減少が、1 株の価値を押し上げる。
- 土木関連:数量 13.7(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 11 億円。土木 13.73 万人日、利益率 7.5%
- 建築関連:数量 30.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 327 億円・営業利益 12 億円。建築 30.47 万人日、利益率 3.6%
- 兼業・その他:数量 0.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。兼業・その他、利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 16.21 倍、時価総額 266 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足で選別受注が効き、価格転嫁が物価並みに通る筋書き。中計の ROE 10% に近く、会社の計画の延長にあたるので 2 割弱に置いた。
中立 37% 量は細り、価格だけが上がる。還元で資本は薄いまま 利益 13 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 1,762 円213 億円
土木の量は実質で 5%、建築は直近の山から 8% ほど減る。価格は物価並みに上がり、売上は 460 億円ほどになる。営業利益率は 4% 台前半で、営業利益は 19 億円前後。
人件費と外注費も物価で上がるので、利益率は上がらない。会社が掲げる自己資本 120 億円以下の方針のもと、利益は配当と自社株買いでほぼ全額が戻る。
自己資本は 110 億円弱のまま動かず、ROE は 11% 台になる。成長はないが、株数が減り続ける 10 年である。
会社の中計の目標(営業利益 16 億円、ROE 10%)は、この筋書きでおおむね達成される。物価で利益が見かけ上ふくらむ分を、量の減りと賃金の上昇が打ち消す。
- 土木関連:数量 13.3(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 10 億円。土木 13.31 万人日、利益率 6.8%
- 建築関連:数量 28.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 310 億円・営業利益 9 億円。建築 28.90 万人日、利益率 3.0%
- 兼業・その他:数量 0.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 11(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。兼業・その他、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 15.43 倍、時価総額 212 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は実質で 1 割弱減り、価格は物価並み。営業利益率は会社の 28 年 3 月期予想(4.4%)に近い 4% 台前半に落ち着く最も標準的な姿。
やや悲観 28% 地方の需要減と人手不足で採算が細る 利益 7 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 595 円72 億円
量は土木で 15%、建築で 2 割減る。価格転嫁は物価に届かず、人件費だけが重くなる。営業利益率は 2% 台に落ち、営業利益は 10 億円ほど。
配当は DOE 6% の枠を守れず、減る。自社株買いも止まる。自己資本は 110 億円台にとどまり、ROE は 5% 台で k に届かない。
売上は 390 億円ほどと今よりやや増えるが、物価の分だけだ。実質では量が減り、利益は今の半分近くまで落ちる。大型案件が取れず、固定費の負担が重い。 会社が掲げる還元の方針は、利益が追いつかず後退する。余った現金は谷の年の資金繰りに食われ、戻る額も細る。地方の競合との入札で負けが込み、受注残も薄くなる。
- 土木関連:数量 11.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 6 億円。土木 11.91 万人日、利益率 4.5%
- 建築関連:数量 25.1(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 261 億円・営業利益 5 億円。建築 25.13 万人日、利益率 1.8%
- 兼業・その他:数量 0.5(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 10(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。兼業・その他、利益率 3.0%
倍率:ROE 5.7%。ROE が k 8.25% を下回るので上限は 1÷k = 11.8 倍。RONIC = 8.5% + 1/2 ×(5.7% − 8.5%)= 7.1%、g 4% の正当化 PER は 10.0 倍。利益の質が落ちる筋書きなので約 85% に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.5 倍・時価総額 72 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:公共工事の予算が伸びず、建築の民間投資も一巡して量が減る。価格転嫁も止まる。小さい会社で繰越が 1 年分と薄いので、中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 構造的に負け、低採算の工事に頼る 利益 2 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 514 円62 億円
構造的に負ける。地方の公共工事が減り、選別受注ができず低採算の工事を取る。土木で 3 割、建築で 4 割量が減り、営業利益率は 1% 台まで落ちる。
配当は大きく縮み、自社株買いは止まる。手元の現金は工事の資金繰りに食われる。利益は 2 億円ほどで、事業で値が付く水準ではなく、純現金と売れる資産が値の支えになる。
売上は 280 億円ほどまで縮み、固定費の重さが利益を消す。2010 年 3 月期のような赤字の年も出る。配当を維持できず、株主還元の約束は縮む。この姿でも、純現金と設備が値の支えになる。
- 土木関連:数量 9.8(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 9.60(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 2 億円。土木 9.81 万人日、利益率 2.5%
- 建築関連:数量 18.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 9.60(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 181 億円・営業利益 1 億円。建築 18.85 万人日、利益率 0.5%
- 兼業・その他:数量 0.4(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定))× 価格 9.60(1人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。兼業・その他、利益率 0.0%
倍率:構造的に優良でなくなった姿。稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 24 億円ほどにしかならず、純現金と売れる資産の税後 64 億円が床になる。減損で自己資本を 100 億円に落とし、PBR 0.62 倍で床に合わせた。
確率:地方の建設需要が縮み、価格競争が戻る筋書き。創業 1920 年の老舗だが、2010 年 3 月期の赤字、2024 年 3 月期の利益率 0.8% の前例がある。1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木関連
道路・造成・トンネル・橋梁などの公共土木。粗利率が高く、利益の柱。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 8.00 | 112 | 10 |
| 10 年後 中立 | 13.3 | 11 | 143 | 10 |
取り方:土木関連の売上 112.1 億円(有報)。営業利益は開示がなく、中計の粗利率 13.8% から販管費率 5.3%(全社の販管費を売上比で配分した推定)を引いて 9.5 億円と推定した。数量は同業の置き方に合わせ、1 人日 8.0 万円で割った推定。
建築関連
工場・倉庫・教育施設・庁舎などの建築。売上の 7 割弱を占めるが粗利率は低い。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.4 | 8.00 | 251 | 8 |
| 10 年後 中立 | 28.9 | 11 | 310 | 9 |
取り方:建築関連の売上 251.3 億円(有報)。営業利益は中計の粗利率 8.4% から販管費率 5.3% を引いた推定で 7.8 億円。数量は 1 人日 8.0 万円で割った推定。
兼業・その他
アスファルト合材の販売など。規模は小さい。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質。売上÷8万円の推定) | 価格1人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 8.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 11 | 6 | 0 |
取り方:兼業事業の売上 4.3 億円(有報)。全社の営業利益 17.7 億円との差を置いた。数量は推定。
リスクと懸念
受注の波と繰越の薄さ
繰越工事は 344 億円で、売上の 1 年分にとどまる。土木の受注は前期に 3 割近く減り、繰越は 95 億円しかない。大手のように数年先まで見えず、受注が止まれば利益はすぐに削られる。
山にいる利益率
前期の営業利益率 4.8% は過去 12 年の山 6.0% に近い。会社は今期の経常利益を 18% 減と見込む。価格転嫁が止まれば、2% 台まで戻る恐れがある。
人手不足と賃金の上昇
連結 463 人、平均年収は前年から 1 割上がった。技能者の確保は全国で難しく、外注費も上がる。上がった分を価格に乗せられなければ、利益率は直接削られる。
自社株買いと現金の減り
前期は 42 億円の自社株買いで純資産が 27% 減った。今後も 8% ずつ買うと現金は減り、景気の悪化時に資金繰りの余裕が薄くなる。純現金には運転資金の裏返しの分も含まれる。
小さい会社の流動性と再編
株数が減ると売買が細り、株価が荒れやすい。一方で、地場ゼネコンの再編が進めば、買収で価格が付く可能性もあるが、期待して持つ性質のものではない。
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建設は現場の体が中心で、置き換えの影響は限られる。設計や積算、事務の部分では効率化が進むが、現場の人手不足が上限を決めるため、k と数量には大きく効かせていない。
今後の分かれ目
- 次の期の営業利益が会社予想の水準(15 億円前後)を下回ったら
- 価格転嫁の限界とみて、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- 土木の受注が 2 期続けて 100 億円を割ったら
- 利益の柱が細っているとみて、土木の量と利益率を下げて見直す。
- 自己株取得が方針どおり毎期続き、自己資本が 120 億円前後で維持されたら
- 還元の約束が守られたと見て、楽観寄りの確率を上げる。
- 大型の買収や不採算の事業への投資が決まったら
- 余った現金を戻す前提が崩れるとみて、現金の戻り方を 0.75 以下に下げる。
- 同業との経営統合や TOB の発表があったら
- 買付価格と条件を、本質価値と比べて見直す。
見ておくもの
- 連結受注高・繰越工事高(土木・建築別)
- 土木・建築の完成工事総利益率
- 自己株式の取得状況と自己資本の水準(120 億円)
- 営業キャッシュフローと現預金
- 配当(DOE 6%)の維持
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストを上回る中立で 1÷k = 11.8 倍を下限に置き、式の正当化 PER(13.5 倍)の約 9 割で 12.0 倍とした。悲観側は ROE が k に届かない筋書きで式から置き、床は純現金と売れる資産で測った。今の株価や同業の PER は倍率の根拠にしていない。新リース会計基準で営業利益や純負債の形が 2028 年 3 月期から変わるが、10 年後も家賃を費用に入れた今の形にそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→17.51 倍・やや楽観 PER 12.7→16.21 倍・中立 PER 12→15.43 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。