結論
大林組は売上高2.6兆円・国内ゼネコン2位のスーパーゼネコンで、2026年3月期は売上高2兆5,863億円・営業利益1,947億円・純利益1,738億円と過去最高益を更新し、ROEは13.8%、PBRは1.56倍まで上がった。しかし国内建築事業の採算改善(追加・変更工事の獲得、価格転嫁の進展)に加え、政策保有株式の売却進捗が連結の利益を押し上げた面が大きく、4つの中核セグメント(国内建築・国内土木・不動産・海外)の営業利益を単純に合計すると約1,400億円にとどまり、会社自身も2027年3月期の営業利益を1,810億円へいったん落とす計画を示している。つまり今期の高ROEは一時的な利益の山を含んでおり、巡航速度はこれより低いとみるのが妥当である。
ここでは国内建築・国内土木・不動産・海外の4区分で数量と利益率を積み上げ、その時点のROEと資本コストから妥当な倍率を決めた。10年後は半導体工場・データセンター建設ブームが一巡した後、国内の新築需要そのものが人口減・技能労働者不足で構造的に細るかどうかと、米GCON買収を起点にした海外・データセンター事業の拡大、自社の都市型データセンター事業(MiTASUN)がどこまで育つかで株価の分布が大きく広がる。物価3%の世界では工事単価が10年で約1.34倍に上がり売上と利益は名目で伸びるが、資本コスト7.5%(基本7.5%+建設の循環0.5%)を超えるROEは先で薄れる(超える分の半分が残る)として、中立は利益ベースの正当化PER(ROEがkをわずかに超えるだけなので下限の1÷k=12.5倍のすぐ上、約12倍)に置いた。確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を1割6分ほど下回り「やや割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、国内ゼネコン2位という規模の堀に加え、トンネル・大規模都市再開発で培った技術力と、米ウェブコー・米GCONという買収を通じて積み上げた北米のデータセンター・半導体工場建設の実績が、今後も強みとして残るとみられる。再投資に回す分を引いた株主のものになる利益は、不動産事業の資産拡大(賃貸等不動産の時価が帳簿を大きく上回る含み益を抱える)と海外事業の拡大によって増やせる余地があり、経営陣はそこに成長投資の軸を置いている。財務は自己資本比率40%・実質的な無借金で健全であり、谷の年にも持ちこたえられる安全域がある。
一方で、2026年3月期の過去最高益・ROE13.8%には政策保有株式の売却進捗による一時的な利益の押し上げが相当含まれており、4つの中核セグメントの営業利益を単純に合計すると約1,400億円にとどまる。会社自身が示す2027年3月期の減益計画は、今の高水準が巡航速度でないことを認めている。建築・土木という本業自体は顧客の入札・相見積りにより価格決定力が完全ではなく、2018年のリニア中央新幹線談合事件という資本配分とは別のガバナンスの傷も、再発防止の実効性を今後の実績で示す必要があり、確信度を下げて考えるべき会社だと見る。
何で稼ぐ会社か
事業はセグメントとして国内建築事業・海外建築事業・国内土木事業・海外土木事業・不動産事業・その他(PFI・再生可能エネルギー・金融等)に分かれる。国内建築事業は売上高1兆3,372億円・営業利益628億円とグループ最大で、オフィスビル・商業施設・工場・半導体クリーンルーム・都市型データセンターの請負施工が主力。単体の建築受注高は1兆1,649億円(前期比23.2%減、施工キャパシティに見合った計画的な受注による抑制)で、追加・変更工事の獲得と採算性の良い案件の積み上がりが2026年3月期の増益を押し上げた。国内土木事業は売上高4,023億円・営業利益406億円で、都市再開発に伴う地下工事やダム・トンネルなど国土強靱化・インフラ更新関連の公共工事が中心。
海外建築・海外土木を合わせた海外事業は売上高7,283億円・営業利益208億円で、2007年の米ウェブコー買収を起点に北米(特にカリフォルニア)で高層マンション・商業施設・病院の施工実績を積み上げ、2025年には米GCON(アリゾナ州等10州でデータセンター・半導体工場・ヘルスケア施設を手掛ける)を買収し、クリティカルエンバイロメント(高度環境管理施設)分野へ本格参入した。不動産事業は売上高727億円・営業利益161億円と全社売上の3%程度だが、利益率22%の稼ぎ頭で、賃貸等不動産の期末時価は7,608億円(帳簿価額5,214億円を大きく上回る)に達している。2024年には都市型データセンター事業に参入し、新会社MiTASUNを通じて今後10年で総額約1,000億円を投資する計画を掲げている。
優良さと弱いところ
国内ゼネコン売上高2位という規模と、トンネル・大規模都市再開発・海外土木に強みを持つ技術力が堀になっている。海外事業では国内ゼネコンの中でも最大級のシェアを持ち、米ウェブコー・米GCONという買収を通じて北米のデータセンター・半導体工場建設という高成長分野に地歩を築いており、本体の技術力・資金力を背景にした海外M&Aの実行力は同業と比べた差別化要因である。自己資本比率40%・純有利子負債はマイナス(実質無借金)で、谷の年にも持ちこたえられる財務の土台がある。賃貸等不動産の時価が帳簿を大きく上回る(含み益税引き後で約1,700億円)ことも、悲観シナリオの下値を支える資産の厚みになっている。
弱いところは、建築・土木事業そのものの価格決定力が顧客(デベロッパー・官公庁)側の入札・相見積りによって完全な寡占には至らない点と、2018年のリニア中央新幹線談合事件で法人として有罪が確定し課徴金約31億円を命じられたガバナンスの傷である(大成建設・鹿島は無罪を主張したが元幹部が有罪、大林組・清水建設は起訴内容を認め法人の有罪が確定)。また2026年3月期の過去最高益には政策保有株式の売却進捗による一時的な利益の押し上げが相当含まれており、会社自身が示す2027年3月期の減益計画(営業利益1,810億円)が、今の高ROE・高PBRがそのまま続くわけではないことを物語っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設需要は、都市再開発・半導体工場・データセンターという法人の設備投資が押し上げる「山」の局面にある。上場ゼネコン50社の受注高は2025年度に16兆5,388億円(5期連続増、集計開始以来初の16兆円台)、期末繰越高は過去最高の24兆1,764億円に達した。スーパーゼネコン4社の中で大林組は売上高・受注高ともに鹿島に次ぐ2位で、半導体工場・データセンターでは米GCON買収を軸に海外(特に米国)の受注拡大を進めている点が他社と異なる重心の置き方である。国土強靱化・インフラ更新(2026年度から5年で事業規模約20兆円強)も土木事業の下支えになっている。
一方で2024年問題(残業上限規制)を起点にした技能労働者の高齢化・人手不足は構造的で、業界全体が「取れる仕事を選ぶ・取った仕事の値段を上げる」方向へ転換し、大林組の単体受注高も前期比20.6%減という「選別受注」の結果になっている。この価格転嫁がどこまで定着するかが、半導体・データセンター投資が一巡した後の利益水準を左右する。競合は鹿島建設・大成建設・清水建設の3社で、4社による準寡占が続くが、顧客側の入札・相見積りにより完全な価格決定力にはならない。海外勢の参入は国内の建築基準・施工体制の壁で限定的である。
10年後を見通すと、都市再開発・半導体工場・データセンターという今の需要の柱が一巡した後、国内の建設投資そのものは人口減・世帯数減を背景に実質横ばい〜緩やかな縮小に向かうと考えられ、米GCON買収を起点にした海外データセンター・半導体施設建設の拡大と、自社の都市型データセンール事業(MiTASUN)、不動産事業の資産拡大が、国内の縮小をどこまで埋められるかが本質価値を左右する。
資本政策と M&A
株主還元はDOE(自己資本配当率)5%程度を目安とした普通配当に、必要自己資本(1兆円水準)を超える部分の自己株式取得・特別配当を機動的に組み合わせる方針で、2024年3月期には配当方針の変更(DOE3%程度→5%程度)に伴い期末配当を大幅に上方修正(年間配当は前期比で3割近く増配)した。政策保有株式は2027年3月末までに連結純資産の20%未満とする目標を掲げ、2026年3月末の保有比率は21.9%(前年から0.7ポイント減)まで縮減が進んでいる。
M&Aについては、2007年米ウェブコー、2011年カナダのケナイダン、2014年米クレマー、2025年米GCONと、北米の建設会社を段階的に買収し海外事業の技術・顧客基盤を積み上げる戦略を継続しており、買う側としての実績は同業の中でも豊富である。大林組自身が買収の対象(TOB)になる可能性は、時価総額約2兆円という規模と業界内の再編圧力の乏しさから低いとみられる。中期経営計画2022(2022〜2026年度)では5年間で投資総額6,000億円、2024年の追補でROE目標を「2027年3月期までに10%以上」に上方修正しており、2026年3月期のROE13.8%はこの目標を既に上回っているが、会社自身は株主資本コストを8〜9%程度と推計しており、今の高ROEが一時的な利益を含むことを踏まえた目標設定とみられる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大林組は国内ゼネコン売上高2位でありながら、海外事業では国内ゼネコンの中で最大級のシェアを持ち、米ウェブコー・米GCONという買収を段階的に積み重ねて北米のデータセンター・半導体工場建設という最も成長性の高い分野に地歩を築いている。GCON買収によりアリゾナ州など米国10州での施工実績を取り込み、クリティカルエンバイロメント分野への本格参入が実現すれば、国内の人口減・建設需要縮小を補う成長の柱になる。自社で手掛ける都市型データセンール事業MiTASUNも、今後10年で総額約1,000億円の投資計画が実現すれば、保有・運用型の高収益事業へと収益構造を変えていく。
国内建築事業では技能労働者不足・資材高を背景にした選別受注と価格転嫁が定着し、追加・変更工事の獲得や採算性の良い案件の比率上昇という形で、単体受注高が減っても採算は改善するという好循環に入っている。賃貸等不動産の時価が帳簿を2,400億円近く上回る含み益を抱え、政策保有株式の売却も進むことで、株主還元を厚くする余力は大きい。財務は実質無借金で健全であり、海外M&Aを積極化する余力も十分にある。規模・技術・海外展開力のすべてで、10年後も同業に対する優位を広げられる会社だとみる。
慎重な見方
2026年3月期の過去最高益・ROE13.8%・PBR1.56倍は、国内建築事業の一時的な好条件(追加・変更工事の獲得、採算性の良い案件の集中)と政策保有株式の売却進捗という一時的な利益の押し上げに支えられており、4つの中核セグメントの営業利益を単純に合計すれば約1,400億円にとどまる。会社自身も2027年3月期の営業利益をいったん1,810億円へ落とす計画を示しており、2026年3月期の水準が巡航速度でないことを認めている。単体受注高は前期比20.6%減と、技能労働者不足を理由にした選別受注が受注そのものの縮小につながっている面もある。
米GCON買収を軸にした海外データセンール・半導体建設事業の拡大は、米国の住宅ローン金利・不動産市況というマクロ要因や、クラウド事業者の投資計画見直しに業績が左右されやすい構造を抱える。不動産事業・MiTASUNの拡大戦略も、不動産市況が崩れれば資産評価・投資回収の両方で裏目に出るリスクがある。2018年のリニア中央新幹線談合事件で法人として有罪が確定し課徴金約31億円を命じられたことは、業界の構造的な受注調整の文化が根深いことを示しており、同様の問題が将来再発するリスクを完全には排除できない。国内の人口減・世帯数減という構造的な縮小は10年という期間で確実に効いてくるため、今の規模の優位性だけでは10年後の優良さを保証できない。
どちらに重みを置いたか
海外事業・不動産事業の拡大戦略には実現性があるが、会社自身が示す2027年3月期の減益計画は、2026年3月期の高水準が国内建築の好条件と政策保有株売却益を含む一時的な山であることを認めている。10年後は国内需要の縮小と海外・データセンターの拡大の綱引きを軸に、会社計画の下振れも相応に織り込んだ。10年後は国内需要の構造的な縮小に相応の重みを置きながら、米GCON買収を起点にした海外・データセンール事業の拡大余地を踏まえて確率をわずかに強気側に寄せた。中立のROEが8〜9%台にとどまるため、今のPBR1.56倍は一時的な利益の山を前提にしており、計算の結論は「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,483 円3.08 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,275 円8,763 億円)。 今の値に割り戻すと 3,063 円2.11 兆円、今との差 +5.4%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 9,109 円6.26 兆円 | 1,841 円1.27 兆円 | +276.7% | +14.2% | 1,642 円1.13 兆円 |
| やや楽観 | 25% | 5,767 円3.96 兆円 | 1,462 円1.00 兆円 | +148.7% | +9.5% | 1,807 円1.24 兆円 |
| 中立 | 30% | 3,942 円2.71 兆円 | 1,254 円8,618 億円 | +78.7% | +6.0% | 1,559 円1.07 兆円 |
| やや悲観 | 20% | 1,985 円1.36 兆円 | 967 円6,651 億円 | +1.6% | +0.2% | 590 円4,059 億円 |
| 悲観 | 10% | 952 円6,544 億円 | 635 円4,367 億円 | −45.4% | −5.9% | 159 円1,091 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,483 円3.08 兆円 | 1,275 円8,763 億円 | +98.1% | +7.1% | 5,757 円3.96 兆円 |
今の株価時価総額 2,907 円2.00 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 15% 楽観:海外データセンター・不動産事業が稼ぎの柱に育つ 利益 3,313 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 9,109 円6.26 兆円
10年の間に半導体・データセンター投資は国内外で複数回の新しい波を迎え、国内建築事業の受注の柱として定着する。GCON買収を起点にした海外事業は米国各地でデータセンター・半導体工場建設の実績を積み上げ、海外売上が全社の3割前後まで拡大する。土木事業は国土強靱化・インフラ更新の継続執行で底堅く推移する。不動産事業はMiTASUNへの投資が実を結び、賃貸等不動産の資産規模が拡大して会社全体の収益構造を「請負」から「保有・運用」へ近づける。技能労働者不足は自動化施工の普及で部分的に克服し、鹿島建設・大成建設・清水建設との競争でも価格決定力が一段強まる10年になる。
- 国内建築事業:数量 300(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 70(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円))→ 売上 21,000 億円・営業利益 1,575 億円。半導体・データセンター需要が構造的に定着
- 国内土木事業:数量 25.0(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質、鹿島建設と同じ市場規模を使用))× 価格 2.3%(大林組の土木のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 5,800 億円・営業利益 1,160 億円。国土強靱化の継続執行
- 不動産事業:数量 1.1(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 16.5%(資産に対する不動産事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 1,815 億円・営業利益 508 億円。MiTASUN投資が結実し資産規模が拡大
- 海外事業:数量 380(海外(建築+土木)の年間の完成・開発床面積(万㎡、推定))× 価格 42(1万㎡当たりの売上(億円。㎡当たり約30万円))→ 売上 15,960 億円・営業利益 1,436 億円。GCON統合で米データセンター事業が柱に育つ
倍率:事業の純利益 3,313 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.15 倍、時価総額 60,127 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体・データセンター需要の持続とGCON統合・MiTASUN投資の成功が重なる組み合わせで、実現すれば優良さが大きく高まるが条件は多い。
やや楽観 25% やや楽観:国内の構造的縮小を海外・不動産が補う 利益 2,302 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 5,767 円3.96 兆円
国内建築・土木は国内の構造的な需要の細りを受けつつも、半導体・データセンター・インフラ更新という下支えで大崩れせず推移する。都市再開発の需要も一定の水準で残り、受注の柱がいくつも並ぶ分散が効く。海外事業はGCON統合を軸に米国でのデータセンター・半導体工場建設の受注が着実に増え、不動産事業も資産残高の拡大とともに純利益が着実に増える。技能労働者不足は続くが、選別受注と自動化施工への投資で利益率は過去平均より高い水準を保つ。政策保有株式の縮減が一巡した後も、本業・不動産・海外の3本で株主還元を続けられる体質に変わっている、起伏の少ない10年になる。
- 国内建築事業:数量 280(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円))→ 売上 18,760 億円・営業利益 1,182 億円。下支えで大崩れしない
- 国内土木事業:数量 25.0(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質、鹿島建設と同じ市場規模を使用))× 価格 2.0%(大林組の土木のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 5,100 億円・営業利益 867 億円。インフラ更新需要が続く
- 不動産事業:数量 1.0(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 15.5%(資産に対する不動産事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 1,473 億円・営業利益 324 億円。資産残高拡大で純利益が着実に増加
- 海外事業:数量 307(海外(建築+土木)の年間の完成・開発床面積(万㎡、推定))× 価格 41(1万㎡当たりの売上(億円。㎡当たり約30万円))→ 売上 12,600 億円・営業利益 882 億円。GCON統合で米事業が着実に拡大
倍率:事業の純利益 2,302 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.02 倍、時価総額 36,870 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:GCON統合・MiTASUN投資という海外・不動産の拡大戦略が構造的に続くという前提は実現性が高く、本業の価格転嫁も定着が進む組み合わせ。
中立 30% 中立:国内縮小と海外・不動産の拡大が相殺し合う 利益 1,704 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 3,942 円2.71 兆円
半導体工場・データセンターという今の需要の柱が一巡し、国内の建設投資全体は人口減・世帯数減を背景に実質横ばい〜緩やかな縮小に向かう。国内建築事業は数量の伸びが止まるが価格転嫁の定着分だけ過去平均より高い利益率を保ち、国内土木事業は国土強靱化の継続執行で底堅く推移する。不動産事業はMiTASUNの投資が一段落しつつも利益水準は現在より高く定着し、海外事業もGCON統合の効果で会社計画の範囲内で緩やかに拡大する。鹿島建設・大成建設・清水建設との4社による準寡占は続くが、顧客側の入札・相見積りで価格決定力は完全ではない。技能労働者不足はより深刻化し、選別受注の徹底が数量の重荷になる一方、価格決定力は守られる10年になる。
- 国内建築事業:数量 255(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 67(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円))→ 売上 17,085 億円・営業利益 974 億円。数量の伸びが止まる
- 国内土木事業:数量 25.0(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質、鹿島建設と同じ市場規模を使用))× 価格 1.8%(大林組の土木のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 4,500 億円・営業利益 630 億円。インフラ更新で底堅い
- 不動産事業:数量 0.8(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 14.5%(資産に対する不動産事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 1,189 億円・営業利益 238 億円。利益水準が高く定着
- 海外事業:数量 262(海外(建築+土木)の年間の完成・開発床面積(万㎡、推定))× 価格 40(1万㎡当たりの売上(億円。㎡当たり約30万円))→ 売上 10,540 億円・営業利益 580 億円。GCON統合の効果で会社計画の範囲内の拡大。単価は物価並み(今の1.34倍)に置き、売上の伸びのうち実質の数量は約8%にとどめた
倍率:事業の純利益 1,704 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.11 倍、時価総額 24,043 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内建設投資の構造的な縮小と、海外事業・不動産事業の拡大がちょうど相殺し合う、業種ノートの中立前提に沿う最も重みを置く筋書き。
やや悲観 20% やや悲観:国内縮小が海外・不動産の拡大を上回る 利益 886 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,985 円1.36 兆円
国内の人口減・世帯数減が想定より速く進み、半導体工場・データセンター投資も国内から海外立地へ一部シフトすることで、国内建築事業の数量が大きく細る。都市再開発の需要も一巡後は細り、新しい受注の柱を作れない。技能労働者不足がさらに深刻化し、選別受注を徹底せざるを得ず国内土木事業の受注高も伸び悩む。GCON統合も当初期待したほどの統合効果が出ず、不動産事業は不動産市況の足踏みで純利益の拡大ペースが鈍る。政策保有株式の縮減資金も成長投資に回しきれず、株主還元を厚くする守りの資本政策に傾く、優良さの評価がじわじわ下がる10年になる。
- 国内建築事業:数量 215(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 62(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円))→ 売上 13,330 億円・営業利益 533 億円。数量が大きく細る
- 国内土木事業:数量 25.0(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質、鹿島建設と同じ市場規模を使用))× 価格 1.5%(大林組の土木のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 3,800 億円・営業利益 380 億円。受注高が伸び悩む
- 不動産事業:数量 0.7(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 13.0%(資産に対する不動産事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 910 億円・営業利益 127 億円。拡大ペースが鈍る
- 海外事業:数量 215(海外(建築+土木)の年間の完成・開発床面積(万㎡、推定))× 価格 36(1万㎡当たりの売上(億円。㎡当たり約30万円))→ 売上 7,750 億円・営業利益 233 億円。GCON統合効果が想定より小さい
倍率:ROE 4.61%(純利益 886 億円 ÷ 自己資本 19,234 億円)。事業の ROE が資本コスト k 7.5% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍。国内の建設投資が細り、採算も戻らない局面で、上限の 7 割 5 分 の 9.4 倍に置いた。余り資産は立てていない(持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので足さない)。
確率:国内の人口減・技能労働者不足のペースが想定より速く、海外事業・不動産事業の拡大がそれを補いきれない組み合わせ。
悲観 10% 悲観:国内は構造的に負け、海外・不動産も裏目に出る 利益 −13 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 952 円6,544 億円
国内では人口減・技能労働者不足が加速し、建築・土木ともに数量が大きく縮小、価格転嫁もすでに限界に達していて値下げを迫られる。半導体工場・データセンター投資は国内立地の優位性を失い海外へシフトし、次の成長の柱を作れない。都市再開発・国土強靱化の需要も予算の制約で先送りが続く。GCON統合は米国の不動産市況悪化・金利高止まりで裏目に出て損失を出し、不動産事業も資産の売却が停滞する。鹿島建設・大成建設・清水建設にシェアを奪われ、談合事件の記憶も含めガバナンスの評価が戻らないまま、会社全体として構造的に優良さを失った10年になる。
- 国内建築事業:数量 160(建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定))× 価格 55(1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円))→ 売上 8,800 億円・営業利益 44 億円。構造的な需要蒸発
- 国内土木事業:数量 25.0(国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質、鹿島建設と同じ市場規模を使用))× 価格 1.1%(大林組の土木のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1))→ 売上 2,800 億円・営業利益 112 億円。公共工事予算の制約も強まる
- 不動産事業:数量 0.6(開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定))× 価格 11.0%(資産に対する不動産事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1))→ 売上 660 億円・営業利益 33 億円。資産売却も停滞
- 海外事業:数量 159(海外(建築+土木)の年間の完成・開発床面積(万㎡、推定))× 価格 30(1万㎡当たりの売上(億円。㎡当たり約30万円))→ 売上 4,760 億円・営業利益 −190 億円。GCON統合が裏目に出て損失
倍率:利益が赤字(ROE −0.1%)で稼ぐ力は測れず、床は売れる資産の税後で測る。賃貸等不動産の時価 7,608 億円の税後(約 6,890 億円)、政策保有株の税後(約 1,760 億円)、純現金 720 億円を足した約 9,370 億円を、強制売却の 7 割の約 6,500 億円に置き、今の自己資本 12584 億円に対する PBR 0.52 倍(時価総額 6544 億円)とした。構造的に受注の採算が崩れ、GCON の統合も裏目に出た姿。
確率:国内の縮小が深刻化し、同時に半導体・データセンター需要が海外立地シフトで取り切れず、GCON統合・不動産事業も裏目に出る、リーマン級の構造的な劣化を想定。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内建築事業
オフィスビル・商業施設・工場・半導体クリーンルーム・都市型データセンターなどの建築請負。
| 数量建築の年間の完成床面積(万㎡、単体・推定) | 価格1万㎡当たりの完成工事高(億円。㎡当たり約50万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 267 | 50 | 13,372 | 628 |
| 10 年後 中立 | 255 | 67 | 17,085 | 974 |
取り方:国内建築事業の外部顧客売上高(約1兆3,372億円)を、オフィス・工場・データセンターなど大型建築の平均の㎡単価約50万円(公表値と大型案件からの推定)で割って完成床面積を逆算した。単価は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)、床面積は実質。
国内土木事業
都市再開発に伴う地下工事、ダム・トンネル・橋梁など国土強靱化・インフラ更新関連の土木工事。
| 数量国内の土木投資(兆円。今の値段で測った実質、鹿島建設と同じ市場規模を使用) | 価格大林組の土木のシェア(%)× 工事単価の物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 1.6% | 4,023 | 406 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 1.8% | 4,500 | 630 |
取り方:国内の土木投資(政府・民間合計で約25兆円、業種ノートと鹿島建設と同じ市場規模)に対する国内土木事業の外部顧客売上高(約4,023億円)の比率をシェアとした。投資の量は実質、工事単価は物価並みに上がる。
不動産事業
オフィス・商業施設・物流施設などを自社で保有・開発・運用する不動産事業。都市型データセンター事業(MiTASUN)を含む。
| 数量開発・賃貸に回している資産(兆円。今の値段で測った実質、推定) | 価格資産に対する不動産事業の売上の比率(%)× 物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 13.2% | 727 | 161 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 14.5% | 1,189 | 238 |
取り方:不動産事業の外部顧客売上高(約727億円)を、開発・賃貸に回している資産の推定約5,500億円で割った比率。賃貸等不動産の期末時価は7,608億円(帳簿価額5,214億円)で、含み益(税引き後推定約1,700億円)は帳簿に未反映のため別途、悲観の床の計算に使う。売却・賃料は物価並みに上がる。
海外事業
北米(米ウェブコー・米GCON等)を中心とする建築・土木・不動産開発事業。データセンター・半導体工場・ヘルスケア施設を含む。
| 数量海外(建築+土木)の年間の完成・開発床面積(万㎡、推定) | 価格1万㎡当たりの売上(億円。㎡当たり約30万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 243 | 30 | 7,283 | 208 |
| 10 年後 中立 | 262 | 40 | 10,540 | 580 |
取り方:海外建築事業・海外土木事業の外部顧客売上高の合計(約7,283億円)を、米国の物流施設・データセンターなど平均の㎡単価約30万円で割って床面積を逆算した。単価は物価並み(150 円固定)。
リスクと懸念
国内建築事業の一時的な好条件の一巡
2026年3月期の増益は、追加・変更工事の獲得や採算性の良い案件の集中という一時的な好条件に支えられており、会社自身も2027年3月期にいったん営業利益を1,810億円へ落とす計画を示している。この好条件が想定より早く一巡すれば、減益がより大きく・長く続く可能性がある。
政策保有株売却益の剥落
2026年3月期の過去最高益には政策保有株式の売却進捗による一時的な利益の押し上げが含まれているとみられる。2027年3月末までに連結純資産の20%未満とする目標に向けて縮減は進むが、売却できる残り玉が減れば、本業増益でこの剥落をどこまで吸収できるかが焦点になる。
技能労働者不足の深刻化
2024年問題を起点にした技能労働者の高齢化・人手不足は構造的で、価格転嫁が続く限りは利益率改善の追い風だが、人手不足が受注量そのものを制約する段階に進めば、値上げでは補えない数量減につながる。単体受注高が前期比20.6%減となったのも選別受注の結果である。
海外M&A(GCON統合)の実行リスク
2025年の米GCON買収は、データセンター・半導体工場建設という高成長分野への本格参入を狙うが、買収した現地組織の統合(技術・人材・顧客基盤の融合)が計画どおり進むかは実証を要する。米国の住宅ローン金利・不動産市況という金利サイクルリスクも抱える。
不動産事業・MiTASUNの市況リスク
不動産事業は賃貸等不動産の時価が帳簿を大きく上回る含み益を抱える稼ぎ頭だが、都市型データセンター事業MiTASUNへの10年で約1,000億円の投資計画は、データセンター需要の見通しや不動産市況の悪化で裏目に出るリスクがある。
ガバナンス・談合リスクの再発
2018年のリニア中央新幹線談合事件で法人として有罪が確定し、公正取引委員会から課徴金約31億円を命じられた。独占禁止法委員会の設置などコンプライアンス体制は刷新されたが、業界に根付いた構造的な受注調整の文化が将来また再発するリスクを完全には排除できない。
国内建設投資の構造的な縮小
人口減・世帯数減を背景に、都市再開発・半導体工場需要が一巡した後の国内建設投資は実質横ばい〜緩やかな縮小に向かうとみられ、今の受注残高の厚みが尽きた後に次の成長の柱を確保できなければ、優良さの評価がじわじわ下がる。
今後の分かれ目
- 会社の2027年3月期・2028年3月期の営業利益が計画(1,810億〜1,960億円)を下回ったら
- やや悲観側に重みを移す。国内建築の採算改善・価格転嫁の持続性への懸念が強まったことを示す。
- 米GCON統合による米国データセンター・半導体工場建設の新規受注が相次いで発表されたら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。海外事業の成長の柱がさらに厚みを増す証拠になる。
- 政策保有株式の連結純資産比が2027年3月末の目標(20%未満)を上回って残ったら
- やや悲観側に重みを移す。縮減ペースの遅れと本業増益だけでは利益を支えきれないことを示す。
- 都市型データセンール事業MiTASUNの投資計画(10年で約1,000億円)の進捗が数値で確認できたら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げてよい。不動産事業の収益構造転換が実証された証拠になる。
- 談合・コンプライアンス関連の新たな問題が発覚したら
- やや悲観側に重みを移す。ガバナンスの評価を見直し、優良さの評価を下げる。
- 技能労働者不足を理由に受注を絞る動き(単体受注高の一段の減少)が続いたら
- やや悲観側に重みを移す。価格転嫁では補えない数量減の先行指標になる。
見ておくもの
- 国内建築事業・国内土木事業の単体受注高と完成工事の採算の推移
- 不動産事業の売上・営業利益と賃貸等不動産の時価・帳簿の差(含み益)
- 海外事業(特に米GCON統合後)の売上・営業利益と米国データセンター・半導体工場の新規受注
- 政策保有株式の残高・連結純資産比と売却の進捗
- 都市型データセンール事業MiTASUNの投資進捗と開設計画
倍率と資本コストの決め方
数量(国内建築の完成床面積・国内の土木投資・不動産の開発資産・海外の床面積=実質)と単価・シェア(物価3%を入れた名目)を積み上げた。会社の2027・2028年3月期の計画(いったん1,810億円へ減益後1,960億円に回復)を踏まえ、2026年3月期の過去最高益・ROE13.8%がそのまま続くとは置いていない(4中核セグメントの営業利益の単純合計は約1,400億円で、連結営業利益1,947億円との差は政策保有株売却益などの一時的な要因とみた)。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で、資本コスト7.5%(基本7.5%+quality0.5%)を超えるROEは先で薄れるとして超える分の半分だけ残し、g4%以内から出した上限の8割〜9割余り(中立はROEがkをわずかに超えるので1÷kを割らせない)に置いた。悲観は赤字で稼ぐ力が測れないため、賃貸等不動産・政策保有株の税後と純現金(推定)の強制売却値で測った。今の株価は最後に比べただけで、結論の「やや割高」は、中立のROEが8%台とkすれすれで中立の価値が今の時価総額を下回るため。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。