結論
土屋ホールディングスは、札幌を地盤に注文住宅、リフォーム、中古住宅の再販、マンション分譲を営む会社だ。売上は約 315 億円で、北海道の住宅会社としては大きい。
筆者の結論は「割高」の側だ。理由は稼ぐ力の弱さにある。1998 年以降、営業利益率が 3% を超えた年は無い。直近の 2025 年 10 月期は営業赤字だった。
帳簿の資産は厚い。自己資本は 130 億円で、時価総額の 2 倍ある。だがそれを生かせず、自己資本利益率は長く 1〜2% にとどまる。資本コストに届かない会社の帳簿は、価値の床にならない。
会社は 2028 年 10 月期に営業利益 16 億円を掲げる。届けば景色は変わるが、過去の計画は何度も届かなかった。北海道の人口は減り続け、注文住宅の数は細る。配当は赤字でも払い続けており、株主に戻す姿勢はある。筆者は、払い出しの続く資産株として見ても、今の値段に安全域は薄いと見る。
帳簿が時価総額の 2 倍あっても、それを株主に戻す道筋が見えないうちは、帳簿の安さは割安の根拠にならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「厚い帳簿を持ちながら、それを稼ぎに変えられない事業」だ。10 年後も土屋ホームは北海道で家を建てているだろう。だが事業が今より強くなっている姿は描きにくい。
株主のものになる利益で見ると、営業利益は 30 年近く売上の 3% を超えない。設備はほとんど要らない商売なのに、利益は配当を払うとほぼ残らない。資本の効率は資本コストの半分にも届かない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、北海道での名前と寒冷地の技術だ。ただ値段を決める力にはなっていない。大手と地場の間で挟まれ、資材と人件費の上昇を客に回しきれない。
帳簿の 130 億円は、売れば値が付く賃貸の不動産と有価証券を含む。それでも創業家が経営を握る限り、資産を売って株主に戻す動きは起きにくい。筆者は、帳簿が時価総額の 2 倍あることを、安全域とは見ない。稼ぐ力が資本コストに届くまで、帳簿は少しずつ配当で目減りしていくだけだ。
何で稼ぐ会社か
売上の 6 割が住宅、3 割が不動産、1 割強がリフォームだ。賃貸は 5 億円と小さい。
住宅事業は「土屋ホーム」の名で注文住宅を建てる。北海道の寒さに合わせた高断熱・高気密の家が強みで、東北と関東にも拠点を持つ。売上は 185 億円で、年に 600 棟前後を建てているとみられる。2025 年 10 月期は資材高と工期の延びで 3 億円の営業赤字だった。
不動産事業は、中古住宅の買い取りと再販、土地の販売、仲介、マンションの分譲だ。売上 90 億円で 4 億円の営業利益を出し、いまは全社の利益の柱になっている。
リフォーム事業は、自社で建てた家の住まい手を中心に、断熱や水回りの改修を請け負う。売上は 40 億円で、ほぼ収支とんとんだ。
賃貸事業は、札幌の自社ビルや賃貸マンションを貸す。売上は小さいが、利益率は 18% と安定している。
注文住宅は受注から引き渡しまで半年から 1 年かかる。客から先に受け取るお金(未成工事受入金)は 26 億円あり、手元の現金の多くはこの預かりにあたる。家の代金の一部を先に受け取る商売なので、現金は厚く見えても自由に使える分は少ない。
優良さと弱いところ
強みは北海道での名前と、寒冷地の家づくりの技術だ。1969 年の創業から、断熱の性能で客を集めてきた。自社で建てた家の住まい手は、リフォームの客にもなる。
弱みは稼ぐ力だ。1997 年 10 月期を最後に、営業利益率が 3% を超えた年は無い。2018 年、2020 年、2025 年は営業赤字だった。値段を自分で決める力は弱く、資材や人件費が上がるたびに利益が削られる。
もう一つの弱みは、地盤の縮みだ。北海道の人口は減り続け、地方の注文住宅は真っ先に細る。大手のハウスメーカーは全国の購買力で資材を安く買い、地場のローコスト住宅は値段で攻める。土屋ホームはその間に挟まれる。
自己資本比率は 48% で財務は安全だ。だが自己資本利益率は過去 10 年の中央値で 1% にとどまる。資本を使う力は弱い。賃貸の不動産と有価証券に 50 億円以上を寝かせたまま、本業の利益率を上げる手は打てていない。経営は創業家の 2 代目が担い、急な方針の転換は起きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の住宅着工は構造的に縮む。2025 年度の新設住宅着工は 71 万戸と、前年度から 13% 減り、リーマン後を下回った。2026 年度は住宅ローン減税の延長で 78 万戸に戻る見込みだが、10 年後は世帯の減少で 60 万戸台に縮むとみる。
北海道の縮みはさらに速い。人口は全国より速く減り、若い世帯の数が細る。注文住宅は 1 棟が 3,000 万円前後の大きな買い物で、金利が上がるほど客の財布は締まる。
業界全体では、人手不足と資材高を受けて「取れる仕事を選び、取った仕事の値段を上げる」流れが広がる。ゼネコンや設備工事では利益率が改善した。ただ個人の客を相手にする注文住宅は、値上げが客の予算にすぐ当たる。転嫁の余地はゼネコンより小さい。
伸びる市場もある。古い家の断熱改修と、中古住宅の買い取り再販だ。国は省エネ改修に補助を出し、新築より中古を選ぶ流れも少しずつ強まる。土屋の不動産事業とリフォーム事業は、この流れに乗る位置にいる。
建築確認の審査の長期化も逆風だ。2025 年 4 月の建築基準法の改正で、確認の手続きが重くなった。会社はこれを理由に中計を 1 年延ばした。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。赤字の年も配当を減らさず、総額は年 2.6 億円になる。利益のほとんどを払い出す形で、自己資本は増えていない。自社株買いの実績は乏しい。株主優待の開示は見当たらない。
株主は創業家の資産管理会社である土屋総合研究所が 13%、土屋経営が 11% を持つ。従業員持株会が 7%、積水ハウスが 6%、北洋銀行が 5% と続く。創業家と安定株主で 4 割を超え、外から買われる形にはなりにくい。
手元の現金は 53 億円あるが、借入を返すと約 18 億円で、未成工事受入金の 26 億円を下回る。余った現金とは言えない。投資有価証券は北洋銀行など 13 億円ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の資産が時価総額の 2 倍ある。自己資本 130 億円のうち、札幌の賃貸ビルとマンション、北洋銀行などの株だけで 50 億円を超える。会社が少し稼げば、値段は大きく見直される。
利益の柱も育った。中古住宅の買い取り再販とマンションの分譲は、住宅事業の赤字を埋めて余る利益を出している。古い家の断熱改修は国の補助で伸び、自社の家の住まい手は改修の客になる。
北海道では中小の工務店が人手不足で廃業している。土屋ホームはその受け皿になれる。会社は 2028 年 10 月期に営業利益 16 億円を掲げ、採算の悪い案件を断る選別受注を進める。
配当は赤字の年も減らさなかった。株主に戻す姿勢ははっきりしている。積水ハウスが株主に入っており、提携や再編の話が出る余地もある。
金利が上がっても、実質無借金の会社は利払いに苦しまない。むしろ手元の現金の利息が増える。資材高が落ち着けば、住宅事業の採算は元に戻る。今の利益は谷の利益で、10 年の平均ではない。
慎重な見方
30 年近く、営業利益率は 3% を超えていない。2018 年、2020 年、2025 年は営業赤字だった。中計の 16 億円は、過去の最高の倍以上だ。届く根拠は薄い。
北海道の人口は減り続け、注文住宅の数は細る。住宅ローンの金利が上がれば、3,000 万円の家を建てる客はさらに減る。大手のハウスメーカーは資材を安く買い、地場のローコスト住宅は値段で攻める。挟まれた土屋に値上げの力は無い。
帳簿の資産も、少数株主には届かない。創業家の会社が 2 割強を持ち、安定株主と合わせて 4 割を超える。資産を売って株主に戻す動きは起きにくい。手元の現金も、客から預かった未成工事受入金でほとんど消える。
自己資本利益率は 10 年の中央値で 1% だ。ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。帳簿の安さは、稼ぐ力の弱さの裏返しにすぎない。
人手不足も重い。職人が高齢になり、地方では大工の数が年々減る。棟数を保ちたくても、建てる手が足りなくなる。
どちらに重みを置いたか
帳簿の厚さは慎重な見方も認めるが、30 年近く続く利益率の低さと、創業家が握る資本の使い方を考えると、慎重な見方が勝る。確率は中立に厚く置き、悲観側を楽観側より厚くした。賃貸不動産と有価証券は悲観の床に入れ、戻り方を割り引いた。営業利益率が 2% を超えて定着するまでは、中計の目標を重く見ない。配当の総額は利益の多くを占め、赤字が続けば手元の現金を削る点も見ておく。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 218 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 83 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 146 円38 億円、今との差 −41.8%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 528 円136 億円 | 116 円30 億円 | +156.7% | +9.9% | 52 円13 億円 |
| やや楽観 | 18% | 360 円93 億円 | 109 円28 億円 | +86.9% | +6.5% | 84 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 187 円48 億円 | 101 円26 億円 | +14.5% | +1.4% | 109 円28 億円 |
| やや悲観 | 22% | 126 円33 億円 | 58 円15 億円 | −26.4% | −3.0% | 41 円10 億円 |
| 悲観 | 14% | 86 円22 億円 | 23 円6 億円 | −56.4% | −8.0% | 15 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 218 円56 億円 | 83 円21 億円 | +20.0% | +1.8% | 301 円78 億円 |
今の株価時価総額 251 円65 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 中計の営業利益 16 億円に届き、北海道の住宅で勝ち残る 利益 12 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 528 円136 億円
北海道の中小の工務店が人手不足と資材高で廃業し、土屋ホームが受け皿として戸数を保つ。高断熱の家づくりの評価が単価に乗り、注文住宅の値段は物価を上回って上がる。
リフォームは古い家の断熱改修の需要を取り込み、件数が 1 割以上増える。中古住宅の買い取りと再販も伸びる。
営業利益は中計の 16 億円に届き、利益率は 3% 台半ばになる。配当は増え、自己資本利益率は 7% 台に上がる。積水ハウスとの関係を生かした提携や、同業の買収で東北や関東の地盤を広げる道も開ける。
賃貸の不動産と有価証券は手元に残り、資産の厚さは保たれ、配当は増える。
- 住宅:数量 585(引き渡した棟数(棟、推定))× 価格 0.43(1 棟あたりの単価(億円・名目))→ 売上 249 億円・営業利益 9 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.42 倍、利益率 3.5%
- リフォーム:数量 1,829(工事の件数(件、推定))× 価格 0.03(1 件あたりの単価(億円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。数量 今の 1.15 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 4.0%
- 不動産:数量 330(販売した戸数・区画(戸、推定))× 価格 0.41(1 戸あたりの単価(億円・名目))→ 売上 135 億円・営業利益 8 億円。数量 今の 1.10 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 6.0%
- 賃貸:数量 600(貸している住戸・区画(戸、推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 136 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 3.6% は 1997 年以降に一度も無い水準で、中計の目標は過去に何度も届かなかった。起きれば大きいが確率は低い。
やや楽観 18% 選別受注と値上げが効き、利益率 2% 台を保つ 利益 8 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 360 円93 億円
注文住宅の棟数は北海道の人口減で 1 割減るが、値上げが通り単価は物価を少し上回る。採算の悪い案件を断る選別受注が定着し、住宅事業の赤字は消える。
リフォームは件数を保ち、利益率は 3% に戻る。中古住宅の買い取り再販とマンションの分譲が、利益の柱であり続ける。
営業利益は 11 億円台と、過去 30 年で最も良い水準になる。配当は年 2.6 億円の水準を保ち、自己資本はゆっくり増える。それでも利益率は 2% 台で、資本コストには届かない。
帳簿の資産を株主に戻す動きは小さく、評価は稼ぐ力の範囲にとどまる。創業家の経営は続き、提携の話は出ても再編までは進まない。
- 住宅:数量 554(引き渡した棟数(棟、推定))× 価格 0.41(1 棟あたりの単価(億円・名目))→ 売上 230 億円・営業利益 6 億円。数量 今の 0.90 倍 × 単価 今の 1.38 倍、利益率 2.5%
- リフォーム:数量 1,670(工事の件数(件、推定))× 価格 0.03(1 件あたりの単価(億円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。数量 今の 1.05 倍 × 単価 今の 1.35 倍、利益率 3.0%
- 不動産:数量 300(販売した戸数・区画(戸、推定))× 価格 0.41(1 戸あたりの単価(億円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 7 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.35 倍、利益率 5.5%
- 賃貸:数量 600(貸している住戸・区画(戸、推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界全体で値上げと選別受注が定着しつつあり、2021 年や 2024 年には黒字が出た。利益率 2% 台の定着は現実にありうる。
中立 38% 戸数は細り、利益率 1% 台で配当を払い続ける 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 187 円48 億円
北海道の住宅着工は人口減で細り、注文住宅の棟数は 10 年で 15% 減る。単価は物価並みに上がるが、大手のハウスメーカーとの競争で上乗せは難しい。
住宅事業はようやく小さな黒字に戻り、マンションと中古住宅の再販が利益を支える。リフォームは件数を保つ。営業利益は 6 億円前後で、利益率は 1% 台半ばだ。
配当は年 2.6 億円の水準を続け、利益のほとんどを払い出す。自己資本はほぼ横ばいで、稼ぐ力は資本コストに遠く届かない。帳簿の資産は厚いが、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。
創業家の経営は変わらず、賃貸の不動産と有価証券も持ち続ける。資産の厚さは残るが、株主の取り分は稼ぐ力で決まる。
- 住宅:数量 524(引き渡した棟数(棟、推定))× 価格 0.40(1 棟あたりの単価(億円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 3 億円。数量 今の 0.85 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 1.2%
- リフォーム:数量 1,590(工事の件数(件、推定))× 価格 0.03(1 件あたりの単価(億円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 2.0%
- 不動産:数量 285(販売した戸数・区画(戸、推定))× 価格 0.40(1 戸あたりの単価(億円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 5 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 4.5%
- 賃貸:数量 600(貸している住戸・区画(戸、推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は −2〜3% の間を行き来し、平均は 1% に届かない。値上げの定着で少し良くなる形を中心に置いた。
やや悲観 22% 着工が落ち込み、住宅事業の赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 126 円33 億円
住宅ローンの金利が上がり、北海道の注文住宅の着工はさらに 3 割落ちる。建築確認の長期化と人手不足で工期が延び、費用がかさむ。
住宅事業は赤字が続き、マンションと中古住宅の利益で埋めきれない。リフォームも価格競争で利益が出ない。営業赤字が 10 年の多くの年で続く。
配当は半分近くに減らすが、赤字の年も払う分は手元の現金と有価証券の取り崩しで賄う。稼ぐ力は無く、価値は札幌の賃貸不動産と有価証券、少しの現金にとどまる。創業家の会社が 2 割強を持ち、資産を売って株主に戻す動きは起きにくい。
配当は利益を上回る年が続き、手元の現金と有価証券の一部を取り崩して払う。その分だけ自己資本は細る。
- 住宅:数量 431(引き渡した棟数(棟、推定))× 価格 0.38(1 棟あたりの単価(億円・名目))→ 売上 162 億円・営業利益 −2 億円。数量 今の 0.70 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 -1.0%
- リフォーム:数量 1,431(工事の件数(件、推定))× 価格 0.03(1 件あたりの単価(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 0.90 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 0.0%
- 不動産:数量 240(販売した戸数・区画(戸、推定))× 価格 0.38(1 戸あたりの単価(億円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 3 億円。数量 今の 0.80 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 3.0%
- 賃貸:数量 570(貸している住戸・区画(戸、推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 16.0%
倍率:赤字で稼ぐ力が無いので PER は当てない。売れる資産の床(約 36 億円)より少し下の 33 億円を、今の自己資本 130 億円に対する PBR 0.25 倍として置いた。中立の PBR(0.29 倍)より低い。
確率:2025 年度の全国の着工は前年度比 13% 減と、リーマン後を下回った。地方の注文住宅はその影響を最も受ける。
悲観 14% 地方の住宅で構造的に負け、資産を食いつぶす 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 86 円22 億円
北海道の人口減が想定より速く進み、注文住宅の着工は半分近くまで落ちる。大手のハウスメーカーと地場のローコスト住宅の間で、土屋ホームは居場所を失う。
住宅事業は大きな赤字を出し続け、中古住宅とマンションの利益も細る。リフォームは人手が集まらず縮む。毎年の赤字で手元の現金が減り、賃貸の物件を切り売りして埋める。
配当は止まる。創業家は経営を手放さず、会社は縮みながら存続する。価値は売れる資産の床を下回り、少数株主に戻る分はさらに小さい。
配当は止まるまでの数年、手元の現金を削って払われる。賃貸の物件の売却益は赤字の穴埋めに消え、自己資本は 10 年で 3 割細る。
- 住宅:数量 339(引き渡した棟数(棟、推定))× 価格 0.35(1 棟あたりの単価(億円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 −5 億円。数量 今の 0.55 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -4.0%
- リフォーム:数量 1,272(工事の件数(件、推定))× 価格 0.03(1 件あたりの単価(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.80 倍 × 単価 今の 1.20 倍、利益率 -2.0%
- 不動産:数量 195(販売した戸数・区画(戸、推定))× 価格 0.36(1 戸あたりの単価(億円・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.65 倍 × 単価 今の 1.20 倍、利益率 1.0%
- 賃貸:数量 540(貸している住戸・区画(戸、推定))× 価格 0.01(1 戸あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.90 倍 × 単価 今の 1.20 倍、利益率 14.0%
倍率:赤字で PER は当てない。売れる資産の床(約 36 億円)を下回る 22 億円を、今の自己資本 130 億円に対する PBR 0.17 倍として置いた。赤字で資産を食い、清算は少数株主には決められないため床を下回ってよい。
確率:1990 年代末から 30 年近く利益率は 3% を超えず、赤字の期は 20 年で 6 回ある。構造的に負ける余地は大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅
土屋ホームの注文住宅(北海道・東北・関東)。
| 数量引き渡した棟数(棟、推定) | 価格1 棟あたりの単価(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 616 | 0.30 | 185 | −3 |
| 10 年後 中立 | 524 | 0.40 | 211 | 3 |
取り方:棟数は非開示のため、住宅の売上 184.9 億円を 1 棟約 3,000 万円で割り約 616 棟と推定。営業損失 2.96 億円は開示。
リフォーム
自社の家の住まい手などからの断熱・水回りの改修。
| 数量工事の件数(件、推定) | 価格1 件あたりの単価(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1,590 | 0.03 | 40 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,590 | 0.03 | 53 | 1 |
取り方:売上 39.7 億円を 1 件約 250 万円で割り約 1,590 件と推定。営業損失 0.25 億円は開示。
不動産
中古住宅の買い取り再販、土地の販売、仲介、マンションの分譲。
| 数量販売した戸数・区画(戸、推定) | 価格1 戸あたりの単価(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 300 | 0.30 | 90 | 4 |
| 10 年後 中立 | 285 | 0.40 | 115 | 5 |
取り方:売上 90.4 億円を 1 戸約 3,000 万円で割り約 300 戸と推定。営業利益 4.2 億円は開示。
賃貸
札幌の自社ビル・賃貸マンションの賃料。
| 数量貸している住戸・区画(戸、推定) | 価格1 戸あたりの年の賃料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 600 | 0.01 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.01 | 7 | 1 |
取り方:売上 5.0 億円を 1 戸あたり年約 83 万円で割り約 600 戸と推定。営業利益 0.92 億円は開示。本社費など約 3.1 億円は調整に入れた。
リスクと懸念
北海道の人口減
地盤の北海道は全国より速く人口が減る。若い世帯が細れば、注文住宅の数はそのまま減る。東北と関東の拠点は小さく、地盤の縮みを埋めるほどではない。
金利の上昇
住宅ローンの金利が上がれば、3,000 万円前後の家を建てる客の予算が締まる。注文住宅は受注から引き渡しまで時間がかかり、景気の谷が来ると利益の落ち方が大きい。
資材と人手の高騰
資材と職人の賃金は物価以上に上がりやすい。大手と地場の間で値上げの力が弱く、上昇を客に回しきれないと住宅事業の赤字が続く。
建築確認の長期化
2025 年 4 月の建築基準法の改正で、確認の審査が重くなった。工期が延びれば固定費がかさみ、引き渡しが期をまたいで利益が揺れる。会社は中計を 1 年延ばした。
資本の使い方
創業家と安定株主で 4 割を超え、資産を売って株主に戻す動きは起きにくい。帳簿の資産が稼ぎに変わらないまま、時間だけが過ぎる恐れがある。
今後の分かれ目
- 住宅事業が 2 期続けて営業黒字に戻ったら
- 選別受注と値上げの効きを認め、やや楽観の確率を上げる。
- 全社の営業利益率が 3% を超えたら
- 30 年近い壁を破った証拠として、中立の利益率を見直す。
- 賃貸不動産や政策保有株を売り、自社株買いや増配に回したら
- 資産の戻り方を見直し、悲観の床を上げる。
- 北海道の着工がさらに 2 割落ちたら
- やや悲観の確率を上げる。
- 積水ハウスなどとの資本提携や再編の話が出たら
- 買収の上振れを楽観に足すか検討する。
見ておくもの
- 住宅事業の受注高と受注残
- 全社の営業利益率
- 北海道の新設住宅着工
- 未成工事受入金と手元の現金
- 賃貸不動産・政策保有株の売却
倍率と資本コストの決め方
住宅は棟数(推定)× 1 棟の単価、リフォームは件数(推定)× 単価、不動産は戸数(推定)× 単価、賃貸は戸数(推定)× 年の賃料で積み、数量は実質、単価は名目(中立 1.34 倍)。k は 7.5% + quality 1.5% の 9.0%。ROE は 3% 台で k に届かず、PER は上限 1÷k の 8〜9 割。悲観側は賃貸不動産と有価証券の売却額に戻り方 0.75 を掛けた床で置いた。今の株価・PBR は倍率に使っていない。PBR 0.5 倍は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.4→11.11 倍・中立 PER 8.9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% で 9.0%。同じ地方の住宅会社のサンヨーホームズ(9.0%)と同じ。全国と米国に分散する大手(8.0〜8.2%)より、地盤の縮みと値決めの弱さの分だけ高い。