結論
南海辰村建設は、南海電気鉄道(2026 年 4 月に鉄道事業を分社して NANKAI へ社名変更)が 6 割強を持つ中堅ゼネコンだ。筆者の結論は「やや割安」。稼ぐ力に比べて値段が低く、時価総額の半分近くが現金で支えられているからだ。
事業は建築が柱で、土木と電気工事が続く。直近の営業利益は 28 億円、利益率は 6.2% と過去 10 年でも高い。ただ会社は 2027 年 3 月期に営業利益 25 億円へ戻ると見ており、好調は一服する。繰越工事は 860 億円と売上の 2 年近くあり、数年先までの仕事は見えている。
不安は二つある。一つは親会社への依存だ。完成工事高の 3 割強が親会社向けで、売掛金も同社に偏る。もう一つは還元の薄さだ。配当性向は 1 割台にとどまり、積み上がる自己資本に対して株主に戻る額が小さい。
中立の筋書きでは、営業利益は 10 年後に 30 億円台前半へ伸びる。それでも利益率は 5% 台で、過去の山を超えない。資本コスト 8.25% で割り引いても、価値は今の時価総額を 3 割近く上回る。安全域は厚くないが、現金と手持ち工事が下値を支える点を筆者は評価する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「わかりやすいが、割り引くべき点がはっきりした」事業だ。工場も店も要らず、資本は軽い。稼いだ利益のほとんどが株主のものになる。ここは評価できる。
一方で、毎年新しい工事を取り直さなければならず、利益は景気と親会社の投資計画に左右される。直近の利益率 6.2% は過去 10 年の上位で、続くとは限らない。会社自身が 2027 年 3 月期に営業利益の減少を見込んでいる。
資本の置き場所に注文がある。自己資本比率は 56% に上がり、純現金は時価総額の半分にあたる。ただ、この現金は工事代金の入りと払いのずれで生じており、すべてが余剰ではない。過去 5 期の期末の純現金は、平均すると 25 億円ほどだった。筆者は、この平均を超える分は運転資金とみて数えない。
安全域は十分にある。中立の筋書きで今の値段を 3 割近く上回り、悲観の筋書きでも現金と売掛金が底を支える。ただし、親会社が支配する以上、少数株主に価値が届くかは親会社の姿勢次第だ。オーナーとして持ち続けたい会社ではなく、値段が安いから持てる会社だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は建築だ。連結の完成工事高 456 億円のうち、建築が 327 億円と 7 割強を占める。受注は競争入札や相見積りが 7 割を超え、残りが親会社などからの特命だ。
土木は 85 億円。官公庁の比率は完成工事高で 1 割未満だが、期末の繰越工事では 16% まで上がった。電気工事と連結子会社の工事は合わせて 44 億円ほどある。不動産は賃貸収入が 2 億円弱の小さな部門で、利益への寄与はほとんどない。
親会社との関係は深い。当社は南海電鉄グループで唯一の上場会社であり、鉄道関連施設や商業施設の建設を請け負う。親会社から 11 名が出向し、うち 7 名は技術部門だ。鉄道工事の技術者を借りられる点は、同規模の他社にない強みになる。その一方で、親会社向けは完成工事高の 33% に達し、前の期の 19% から急に上がった。
特徴は資産の軽さだ。有形固定資産は 7 億円にすぎず、工場も大きな機械も持たない。元請けとして工事を取り、下請けに任せて管理する。資金の動きの中心は工事代金の入りと払いで、売掛金と契約資産が 226 億円、工事未払金と電子記録債務が計 100 億円ある。年末の現金はこの時期のずれで毎年大きく振れ、前の期末は純負債だった。
会社の 3 カ年計画(2025〜27 年度)は、2028 年 3 月期に売上 565 億円、営業利益 26 億円、ROE 8% 以上を掲げる。売上を伸ばしても営業利益は横ばいという内容で、増収が増益に結びつきにくい構図は他のゼネコンと変わらない。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば「親会社に守られた普通の中堅」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。
強みは三つある。一つ目は、親会社の鉄道・商業施設の工事を特命で受けられること。仕事の量と技術者の出向の両方で支えられる。二つ目は、無借金に近い財務で、下請けへの支払いに困らないこと。三つ目は、手持ち工事の厚さで、期末の繰越は 860 億円、直近四半期の時点では 1,000 億円を超えた。
弱みも三つある。一つ目は、価格を決める力の弱さだ。建築の 7 割強は競争で取る。二つ目は、顧客の偏りだ。親会社向けが 3 割強を占め、売掛金も親会社に 80 億円ほど集まる。親会社の投資が一巡すれば、その分の仕事が抜ける。三つ目は、規模の小ささだ。従業員は連結で 500 人ほどで、大型工事の受注力も、人手不足で技能者を囲い込む力も大手に劣る。
資本効率は合格点だ。直近の ROE は 10.6% で、資本コストを上回った。ただし利益の波は荒く、過去 20 年に赤字の期が 2 回ある。2019 年 3 月期には 12 億円の赤字を出した。経営は慎重だが、株主に戻す姿勢は弱い。配当性向は 1 割台で、現金が積み上がるままになっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の建設市場は、量が増えない成熟市場だ。人口が減り、地方の工事は先細る。それでも今は「作れば儲かる」局面にある。2024 年 4 月に残業の上限規制が始まり、技能者が足りなくなった。受け手のゼネコンが仕事を選べるようになり、資材高の転嫁も通る。上場ゼネコンの利益率は過去最高の水準にある。
準大手・中堅は、スーパーゼネコンより価格を決める力が弱い。顧客は中堅デベロッパーや鉄道会社、官公庁に広がり、入札で競う場面が多い。当社の競合は、地域で重なる中堅ゼネコンのほか、鉄道工事を得意とする鉄建建設や、地場の中小業者だ。
追い風は二つある。国土強靱化は 2026 年度から 5 年で 20 兆円強の計画があり、橋や上下水道の更新が続く。もう一つは親会社の設備投資で、鉄道関連施設や商業施設の工事がそのまま当社の受注になる。
10 年先は、そうした投資が一巡する。国内の建設は実質で横ばいか緩やかな縮小に向かうと筆者は見る。人手が足りない業界では、売上を伸ばす力より、採算の悪い工事を断る力が会社の差になる。再編も進みやすく、小粒の上場ゼネコンは、親会社や同業に取り込まれる選択肢も視野に入る。
資本政策と M&A
資本政策は「安定配当と機動的な自社株買い」と会社が説明している。数値の目標は ROE 8% 以上だけで、配当性向や総還元性向の目標はない。
実績は控えめだが、変化はある。配当は前の期から 3 割強増やした。それでも配当性向は 11% だ。2026 年 4 月には自己株式 80 万株を 3.7 億円で取得し、60 万株を消却した。これは自己資本の 2% に満たない規模で、積み上がる現金に比べると小さい。
買収は行っていない。借入は 8 億円ほどで、無借金に近い。資金は工事代金の入りと払いで循環しており、現金の使い道は事実上、還元か運転資金に限られる。
最大の論点は親会社の動きだ。親会社は議決権の 62% を持ち、当社を「グループ唯一の上場会社」と位置づける。持株比率はすでに高く、完全子会社化の可能性は常にある。ただ、今のところ公開買付けの発表も観測もない。筆者はこれを織り込まず、親会社の支配下に置かれたまま少数株主が現金を引き出しにくい点を、現金の戻り方で割り引く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設の需給は構造的に締まった。技能者が足りず、受け手の中堅ゼネコンが仕事を選べる。当社は繰越が 860 億円、直近の四半期では 1,000 億円を超え、売上の 2 年分に近い。利益率は 6.2% まで上がり、会社計画の 4% 台後半を大きく上回る。
親会社の存在は、この局面で最大の強みになる。鉄道関連施設や商業施設の工事が特命で入り、技術者の出向も受けられる。親会社の投資が続く間、仕事の質と量は他の中堅より安定する。親会社向けが完成工事高の 3 割強に上がったのも、需要が太い証拠だ。
財務も強い。実質無借金で、自己資本比率は 6 割に迫る。自社株買いと消却を始め、増配も続けた。ROE 8% の目標を守るには、積み上がる現金を戻すしかない。2026 年 4 月の取得は、その第一歩だ。
価値は今の値段をはるかに上回る。利益の 6 倍弱という値段は、利益が半分に落ちることを織り込んでいる。親会社が完全子会社化に動けば、上乗せの買い取り価格で報われる展開もありうる。
慎重な見方
今の利益は景気の山だ。利益率 6.2% は過去 10 年で 2 番目に高く、会社自身が 2027 年 3 月期に 25 億円への減益を見込む。資材高の転嫁も、需給が締まっている間しか通らない。2019 年 3 月期には 12 億円の赤字を出した。小さな会社は一つの工事の失敗で利益が吹き飛ぶ。
売上の 3 割強を親会社に頼るのも危うい。前の期は 19% だったものが 33% に跳ね、売掛金も親会社に 80 億円ほど偏る。親会社の投資が一巡すれば、その分の仕事が消える。特命が減れば、競争入札で取る比率が上がり、利益率は下がる。
現金は見かけほど自由ではない。前の期末は純現金 59 億円だが、その前の期末は 20 億円の純負債だった。工事代金の入りと払いのずれで、現金は毎年大きく振れる。しかも親会社が 6 割強を握る以上、現金の使い道は少数株主に決められない。配当性向が 1 割台にとどまるのも、その表れだ。
人手不足で売上は伸びにくく、国内の建設は人口減で縮む。増収でも増益にならない構図は、すでに会社計画に出ている。価格を決める力が弱い中堅は、需給が緩めば真っ先に採算が崩れる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は中の上、値段は安い、というのが筆者の見立てだ。強気の見方の通り、需給は当面追い風で、手持ち工事も厚い。しかし慎重な見方が指摘する顧客の偏りと現金の戻りにくさは、10 年という期間では無視できない。
確率は、中立に 4 割弱を置いた。悲観を 1 割強にしたのは、小粒の会社が過去に赤字を経験し、親会社の投資が細る可能性を消せないためだ。やや悲観にも 3 割近くを置き、利益率が 4% を割る谷を厚めに見た。それでも現金と利益の水準が高いので、全体としては今の値段を上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,060 円297 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 246 円69 億円)。 今の値に割り戻すと 646 円181 億円、今との差 +58.2%、 期待の年率 +12.3%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,000 円560 億円 | 371 円104 億円 | +481.0% | +19.2% | 166 円47 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,596 円447 億円 | 307 円86 億円 | +366.4% | +16.6% | 323 円91 億円 |
| 中立 | 37% | 1,238 円347 億円 | 268 円75 億円 | +268.9% | +13.9% | 557 円156 億円 |
| やや悲観 | 27% | 583 円163 億円 | 221 円62 億円 | +97.0% | +7.0% | 217 円61 億円 |
| 悲観 | 12% | 281 円79 億円 | 78 円22 億円 | −11.9% | −1.3% | 43 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,060 円297 億円 | 246 円69 億円 | +220.2% | +12.3% | 1,307 円366 億円 |
今の株価時価総額 408 円114 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 採算を選び続け、親会社の投資も続く 利益 36 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 2,000 円560 億円
採算を選ぶ受注と、親会社の鉄道・商業施設の投資が 10 年続く姿だ。人手不足で価格転嫁が定着し、建築の利益率は 6.8% と過去の山(2017 年 3 月期の 6.6%)をわずかに超える。土木は国土強靱化の執行が進み、官公庁の繰越が積み上がる。
売上は 750 億円近くまで伸び、営業利益は 50 億円規模になる。財務は引き続き強く、自社株買いを継続的に実行して ROE は 10% に届く。ただし、山を超える利益率が 10 年続くのは、これまで一度もなかったことだ。会社が掲げる ROE 8% の目標も、この筋書きなら無理なく超える。その分だけ、確率は低く置く。
- 建築:数量 55.0(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 10.00(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 549 億円・営業利益 37 億円。建築:数量 54.96 × 単価 10.00、利益率 6.8%
- 土木:数量 12.4(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 9 億円。土木:数量 12.45 × 単価 10.35、利益率 7.0%
- 電気工事・子会社:数量 6.5(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。電気・子会社:数量 6.49 × 単価 10.20、利益率 5.0%
- 不動産賃貸:数量 0.6(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.85(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。不動産:数量 0.58 × 単価 5.85、利益率 20.0%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 14.52 倍、時価総額 534 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工事の採算を選び続け、親会社の投資も途切れず、さらに人手不足で価格が通り続ける。連続して当たる必要があり、確率は低い。
やや楽観 17% 需給が締まったまま、利益率が高めに定着 利益 29 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,596 円447 億円
人手不足と国土強靱化の追い風が続き、価格転嫁も定着する。建築の利益率は 6%、土木は 6% 強で、営業利益は 40 億円ほどになる。繰越の厚さが売上を支え、親会社の投資も途切れない。土木では官公庁の工事が増え、顧客の偏りが少しずつ和らぐ。
還元は少しずつ厚くなる。配当性向は 3〜4 割に上がり、自社株買いも続く。ROE は 8〜9% で資本コストにわずかに届かない。現金が増えても、事業の稼ぎが資本の膨らみに追いつかないためだ。会社の姿は今より少し強い程度で、評価が劇的に変わる筋書きではない。親会社との関係も今のまま続き、完全子会社化の話は出ない。
- 建築:数量 51.3(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.78(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 502 億円・営業利益 30 億円。建築:数量 51.30 × 単価 9.78、利益率 6.0%
- 土木:数量 11.8(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 7 億円。土木:数量 11.77 × 単価 10.12、利益率 6.2%
- 電気工事・子会社:数量 6.1(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 3 億円。電気・子会社:数量 6.14 × 単価 10.05、利益率 4.8%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.60(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。不動産:数量 0.49 × 単価 5.60、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 13.8 倍、時価総額 416 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:追い風が続くが、山の利益率が丸ごと残るほどではない。構造的な追い風と景気の波を半々に見た。
中立 37% 計画並みの利益で、物価の分だけ伸びる 利益 23 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,238 円347 億円
足元の好調は一服し、利益率は 5% 強に落ち着く。会社の 3 カ年計画(営業利益 26 億円、売上 565 億円)の水準から、物価の分だけ名目で伸びる。建築の施工量は 5% ほど増え、土木と電気は横ばいだ。価格は物価並みの 1.34 倍になる。
10 年後の売上は 630 億円、営業利益は 33 億円。親会社の投資が一巡する分は、他の民間・官公庁の仕事が埋める。還元は配当性向 4 割弱まで上がるが、利益の増え方に比べて自己資本は厚くなり、ROE は 7% 台にとどまる。堅実だが、株主にとっては物足りない 10 年になる。
- 建築:数量 48.1(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.57(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 460 億円・営業利益 24 億円。建築:数量 48.09 × 単価 9.57、利益率 5.2%
- 土木:数量 11.1(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 6 億円。土木:数量 11.09 × 単価 10.05、利益率 5.2%
- 電気工事・子会社:数量 5.9(施工量(万人日、実質))× 価格 10(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。電気・子会社:数量 5.90 × 単価 10.05、利益率 4.2%
- 不動産賃貸:数量 0.5(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.60(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。不動産:数量 0.45 × 単価 5.60、利益率 17.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 12.91 倍、時価総額 314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:現在の利益水準が一服し、物価の分だけ名目で伸びる姿。強気の見方と慎重な見方のちょうど間で、最も確率が高い。
やや悲観 27% 親会社の投資が細り、利益率が 4% を割る 利益 15 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 583 円163 億円
親会社の投資が一巡し、当社の特命が減る。穴は競争入札で埋めるが、利益率は 4% を割る。建築の施工量は 1 割ほど減り、物価転嫁も 1.30 倍にとどまる。営業利益は 20 億円前後まで下がり、売上は 540 億円ほどで伸び悩む。
会社は配当を守り、自社株買いは止める。売掛金の回収は順調で現金は厚いが、事業の稼ぎは小さい。ROE は 5% 前後で、資本コストに届かない。再編の対象にはなりやすく、親会社が完全子会社化に動くかどうかが評価の分かれ目になる。土木の官公庁工事で穴を埋める余地は残るが、採算は民間より薄い。
- 建築:数量 42.1(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 9.28(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 391 億円・営業利益 15 億円。建築:数量 42.14 × 単価 9.28、利益率 3.8%
- 土木:数量 10.0(施工量(万人日、実質))× 価格 9.75(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 4 億円。土木:数量 9.96 × 単価 9.75、利益率 3.8%
- 電気工事・子会社:数量 5.3(施工量(万人日、実質))× 価格 9.75(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。電気・子会社:数量 5.31 × 単価 9.75、利益率 3.2%
- 不動産賃貸:数量 0.4(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.23(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。不動産:数量 0.43 × 単価 5.22、利益率 15.0%
倍率:ROE 5.1%(純利益 15 億円 ÷ 自己資本 286 億円)。k 8.25% 以下なので PER の上限は 11.1 倍。利益が小さく ROE が k の 6 割に届かない局面で、上限の 7 割半ばの 8.3 倍に置いた。余った現金は谷で食われる想定で 0.75 倍の 18.75 億円とし、そこに戻り方 0.75 を掛けた。
確率:親会社向けの仕事が減り、競争入札の比率が上がる。人手不足でも価格が通らなくなる。確率はやや厚めに置いた。
悲観 12% 構造的に負け、親会社の仕事も抜ける 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 281 円79 億円
構造的に負ける。親会社向けの特命が大きく減り、人手不足でも価格が通らず、競争入札で薄い利益の工事を取り続ける。建築の利益率は 2% を割り、営業利益は 7 億円ほどになる。大型工事の不採算で減損や引当も出て、自己資本は目減りする。
売上は 400 億円ほどに縮み、技能者の確保でも後れを取る。配当は維持しても、優良な会社とは見られなくなる。事業の稼ぐ力は小さいので、価値は売れる資産で測る。現金と売掛金は残るが、清算を決めるのは親会社であり、少数株主が全額を取り戻せる保証はない。配当も減らされ、現金は工事代金の払いに食われていく。
- 建築:数量 33.9(施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質))× 価格 8.57(1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価))→ 売上 290 億円・営業利益 5 億円。建築:数量 33.89 × 単価 8.57、利益率 1.8%
- 土木:数量 7.9(施工量(万人日、実質))× 価格 9.00(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。土木:数量 7.92 × 単価 9.00、利益率 1.8%
- 電気工事・子会社:数量 4.1(施工量(万人日、実質))× 価格 9.00(1 人日あたり売上(万円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。電気・子会社:数量 4.13 × 単価 9.00、利益率 1.5%
- 不動産賃貸:数量 0.4(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 4.81(1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。不動産:数量 0.36 × 単価 4.81、利益率 10.0%
倍率:構造的に優良でなくなり、純利益は 5 億円ほどで稼ぐ力は 60 億円に届かない。床は売れる資産で測る。資産を売って負債を払うと約 100 億円が残るが、親会社が支配しているため少数株主に届くのはその 8 割として 80 億円に置いた。今の自己資本 197 億円に対する PBR は 0.40 倍にあたる。
確率:親会社の投資が細り、地場の中小との競争で採算が崩れる。過去に 2 回の赤字があり、小さな会社が一つの工事で躓く可能性も含め、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建築
商業施設・事務所・集合住宅などを請け負って建てる。完成工事高の約 7 割を占める主力。
| 数量施工量(万人日。技能者の延べ作業日数、実質) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目。材料・外注を含む請負単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.8 | 7.14 | 327 | 21 |
| 10 年後 中立 | 48.1 | 9.57 | 460 | 24 |
取り方:個別の完成工事高のうち建築 327 億円(2026/03 期有価証券報告書)。セグメントごとの利益は開示が無いため、連結営業利益 28.4 億円を完成工事高で配分し、建築を 6.3%(20.6 億円)と推定した。施工量は開示が無い。同じ領域で済んだ戸田建設の置き方に合わせ、1 人日あたり売上 7.14 万円で割って約 46 万人日と推定した。
土木
道路・河川・鉄道関連などの土木工事。官公庁の比率は繰越工事で上がっている。
| 数量施工量(万人日、実質) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.3 | 7.50 | 85 | 6 |
| 10 年後 中立 | 11.1 | 10 | 111 | 6 |
取り方:個別の完成工事高のうち土木 85 億円。利益は公共工事の比率が高い分だけ建築よりやや高い 6.5%(5.5 億円)と推定した。施工量は 1 人日あたり売上 7.5 万円で割って約 11 万人日と推定した。推定であり誤差が大きい。
電気工事・子会社
電気設備工事と連結子会社の工事。連結の建設事業から建築・土木を引いた残り。
| 数量施工量(万人日、実質) | 価格1 人日あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.9 | 7.50 | 44 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.9 | 10 | 59 | 2 |
取り方:連結の建設事業 456 億円から建築と土木を引いた残り 44 億円。個別の電気工事 27 億円と連結子会社の工事を含む。利益率は販管費の配分を重くみて 4.5%(2.0 億円)と推定した。施工量は 1 人日あたり売上 7.5 万円で割って約 5.9 万人日と推定した。
不動産賃貸
保有する賃貸物件の収入。規模は小さい。
| 数量賃貸面積(万㎡、推定) | 価格1 ㎡あたり年間賃料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 4.18 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 5.60 | 3 | 0 |
取り方:不動産事業の売上 1.88 億円、セグメント利益 0.31 億円(2026/03 期)。賃貸面積は開示が無く、1 ㎡あたり年賃料を 4.2 万円と置いて約 0.45 万㎡と推定した。規模が小さく、全体への影響は小さい。
リスクと懸念
親会社への依存が高まっている
完成工事高の 33% が親会社向けで、前の期の 19% から急に上がった。売掛金と契約資産も親会社に 100 億円ほど集まる。親会社の投資が一巡すれば、その分の仕事が抜け、特命が競争入札に置き換わる。親会社の信用は高いが、集中度の高さそのものがリスクだ。
景気の谷で受注と採算が崩れる
建設の利益は景気の山と谷で大きく振れる。当社は過去 20 年に赤字が 2 回あり、2019 年 3 月期は 12 億円の赤字を出した。今の利益率 6.2% は過去 10 年で 2 番目に高く、会社自身も 2027 年 3 月期に営業利益の減少を見込む。
人手不足で売上が伸びない
施工量を決めるのは技能者の数だ。人が足りなければ受注があっても売上に変えられない。従業員が 500 人ほどの小さな会社は、大手のように技能者を囲い込めず、労務費の上昇も直撃する。会社計画も増収・営業利益ほぼ横ばいの形になっている。
現金の変動と戻りにくさ
期末の現金は工事代金の入りと払いで毎年大きく動く。前の期末は純現金 59 億円だが、その前は 20 億円の純負債だった。親会社が議決権の 6 割強を持つため、余った現金の使い道は少数株主に決められず、還元が薄いままになるおそれがある。
工事の不採算・契約不適合責任
小さな会社は一つの大型工事の失敗が利益を吹き飛ばす。資材や労務費が着工後に上がっても請負金額に反映しにくい。完成後の契約不適合責任や重大事故が出れば、損失は数年分の利益に及びうる。
完全子会社化の価格と時期
親会社は当社を「グループ唯一の上場会社」と位置づける。持株比率はすでに高く、完全子会社化はいつでもありうる。買い取りの価格が本質価値を下回って提示されれば、少数株主は割安な価格で手放すことになる。今のところ公開買付けの発表も観測もない。
今後の分かれ目
- 親会社の鉄道・商業施設の特命が 2 期続けて減ったら
- 顧客の偏りが解けるどころか、仕事の量そのものが減る合図とみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 建築の完成工事利益率が 2 期続けて 10% を割ったら
- 価格転嫁の局面が終わったと見て、中立の利益率を 5% から 4% 台へ引き下げる。
- 総還元性向の目標を示し、配当と自社株買いを利益の 4 割以上に引き上げたら
- 現金の戻り方を 0.75 から 1.0 へ上げ、余った現金の評価を増やす。
- 親会社が公開買付けで完全子会社化を発表したら
- 価格が本質価値を上回るか下回るかで評価が変わる。本質価値を下回る価格なら、少数株主に不利な取引になる。
- 期末の純現金が 2 期続けて 20 億円を下回ったら
- 余った現金の見積もり 25 億円を引き下げる。工事代金の入りが遅れている可能性を確かめる。
- 官公庁の繰越工事が 150 億円を超えて積み上がったら
- 親会社以外の安定した収益源が育っているとみて、中立の利益の底を上げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と繰越工事、特に親会社向けの比率
- 建築・土木の完成工事総利益率
- 期末の現金と工事未払金の水準(純現金の振れ)
- 自社株買いと配当の規模、総還元性向の目標の有無
- 親会社(NANKAI)の投資計画と持株比率の変化
- 官公庁の繰越工事と国土強靱化の執行
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 8.25%(基本 7.5% + quality 1.5%)を超える楽観だけ式の正当化 PER(11.7 倍)から置き、中立以下は上限の 1÷k(11.1 倍)に、ROE÷k と利益の質を見て 7〜9 割を掛けた。今の株価や今の PER を見てから決めたわけではない。純現金は期末ごとに大きく振れるため、過去 5 期末の平均 25 億円だけを余った現金とし、戻り方は親会社が 6 割強を握る点を見て 0.75 にした。悲観の床は売れる資産の 8 割(約 80 億円)で、過去の PBR の底は使っていない。自社株買いは 2026 年 4 月に実行済みなので、株数(2,803 万株)と自己資本の起点(193.3 億円)の両方に反映した。数量は施工量を推定したもので、数量と価格の分け方には誤差がある。2028 年 3 月期からの新リース会計基準は、賃借が事務所の借り入れ程度と小さく影響は小さいが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。個別のリスク(親会社への依存・小規模)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。