結論
高橋カーテンウォール工業は、高層ビルの外壁に使うコンクリートの板、プレキャストコンクリートカーテンウォール(PCCW)を工場で作り、現場で取り付ける会社だ。この分野で業界のシェアは首位にある。筆者の結論は「割安」寄りだ。ただし、それは利益の力よりも、持っている資産の厚さから来る。
2025年12月期の営業利益は1億円余りにとどまった。2010年代後半には営業利益率が15%前後あったが、2022年以降は資材と人件費の上昇を価格に移せず、2〜6%に落ちた。一方で受注は91億円と前の期より2割増え、受注残は89億円まで積み上がった。会社は2026年12月期に営業利益7〜8億円への回復を見込む。ゼネコンの安値受注が止み、人手不足で外壁を作れる会社が限られるからだ。
自己資本は108億円あり、自己資本比率は85%を超える。流動資産から負債をすべて引いた正味の額だけで約54億円あり、今の時価総額の約48億円を上回る。利益が戻らなくても、資産の厚さが値段の下を支える。逆に言えば、資本が厚すぎてROEは低く、利益が戻っても資本コストに届きにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「優れた事業を手ごろな値段で」ではなく、「平凡な事業を資産より安い値段で」に近い。PCCWで首位という地位は堅いが、客の大手ゼネコンに値段を決められ、良い年でも営業利益率は15%余りにとどまる。悪い年が数年続くこともある。
それでも、今の値段には安全域がある。流動資産から負債をすべて引いただけで約54億円あり、工場の土地や建物を数えなくても時価総額を上回る。受注残は89億円まで積み上がり、会社は2026年12月期に営業利益の大きな回復を見込む。人手不足で外壁を作れる会社が減る中、首位の会社の値決めの力は前より強くなる見込みがある。
気になるのは、厚い資本が眠り続けることだ。ROEが資本コストを下回る限り、資本の価値は帳簿より低く評価される。経営が余った現金と自己株式を株主のために使うと示せば、見方はもう一段良くなる。それまでは、資産の厚さを床に、利益の回復を上積みとして見る。
何で稼ぐ会社か
事業はPCCWとアクア(プール)の二つで、売上の85%をPCCWが占める。2025年12月期の売上73億円のうち、PCCWが62億円、アクアが10億円だった。
PCCWは、工場の型枠にコンクリートを流して外壁の板を作り、トラックで現場に運んでクレーンで取り付ける。タイルや石を打ち込んだ板、バルコニーの手すりと一体の板など、設計者の求める見た目に合わせて作る。茨城のつくば・下館・結城と滋賀に工場を持ち、首都圏と関西の高層ビル、ホテル、マンションに納める。工場で作るので、現場の作業員と工期を減らせるのが強みだ。
客は大手ゼネコンだ。2024年12月期は鹿島建設が売上の23%、大成建設が19%、竹中工務店が16%を占め、2025年12月期は竹中工務店が22%だった。ゼネコンの系列には入っておらず、案件ごとに受注する。1件の金額が大きく、工事の進み方で年の売上は大きく振れる。2019年12月期は168億円、2018年12月期は66億円だった。
アクアは、ステンレスのプールを作って納める事業だ。学校やスポーツ施設に加え、海外からの旅行者の増加でホテルのプールが増え、2025年12月期は売上が5割伸びた。ほかに子会社で不動産の賃貸を少し営む。社員は約200人と少ない。
優良さと弱いところ
優良さは中くらいと見る。PCCWで業界シェア首位という位置は本物だ。工場、型枠、職人、ゼネコンとの長い取引の積み重ねが要り、新しく入る会社はほとんどない。高層ビルの外壁は、一度選ばれると設計の段階から組み込まれる。
ただ、値決めの力は弱い。客は大手ゼネコン数社に集中し、1社で売上の2割を占める。2022年からの資材と人件費の上昇を、受注済みの工事の価格に移せず、営業利益率は15%前後から2〜6%に落ちた。2025年12月期の投下資本利益率は0.8%で、会社自身が加重平均資本コスト5.5%を下回ると開示している。
守りは極めて固い。借入はほぼ返し、自己資本比率は85%だ。この厚い資本は、悪い年を耐える力である一方、ROEを押し下げる重しでもある。過去10年のROEの中央値は9%だが、直近4年は1〜4%にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
PCCWの需要は、首都圏と関西の高層ビルやホテル、大型マンションの建設の量で決まる。2020年代は都心の再開発が続き、建設の量そのものは多かった。それでも高橋カーテンウォール工業の利益が細ったのは、ゼネコンが仕事を取るために安く請け、そのしわ寄せが外壁などの専門の工事に及んだからだ。
風向きは変わりつつある。会社の説明では、ゼネコンや設備のサブコンの施工能力が人手不足で足りなくなり、計画の延期や中止も出るほどで、売り手が優位の市場になった。PCCWの業界も職人の高齢化が進み、作れる会社と人が減っている。数の限られた供給側に、値上げの余地が生まれている。
一方で、長い目で見た需要の量は大きくは増えない。人口が減る中で、都心の再開発は続いても全国の建設の量は横ばいか少し減る。加えて、ガラスやアルミのカーテンウォールは軽く、デザインの自由度が高い。高層のオフィスでは、こちらが主流になりつつある。PCCWが選ばれるのは、重厚な見た目や遮音を求めるホテル、マンション、一部のオフィスだ。10年の数量は今の水準を少し上回る程度、価格は物価並みに上がるのが中心の見方だ。
資本政策と M&A
配当は1株あたりの額を据え置く安定配当で、総額は年1.6億円前後だ。純利益が2億円前後の年でも維持し、配当性向は8割を超えた。自己株式は発行済みの17%にあたる163万株を持ち、2026年9月から12月にかけて最大10万株、0.65億円の自社株買いを行う。株主優待はない。
現金は工事の進み方で大きく振れる。2025年12月期末は現金21.5億円、借入5.3億円で純現金16億円だったが、2026年6月の中間期末は現金10.9億円、借入2.0億円まで減った。工事の代金が入る前に材料や外注の支払いが先に出るからだ。政策保有の上場株は2.9億円あり、住友不動産、昭和化学工業、歌舞伎座の株を持つ。
資本の厚さに比べて還元はまだ控えめだ。会社は資本コストを上回る利益率への回復を課題に挙げるが、余った資本を減らす具体的な数字の目標はまだない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高橋カーテンウォール工業は、利益の谷を抜けようとしている。2025年12月期の受注は91億円と前の期より2割増え、受注残は89億円まで積み上がった。この受注は、ゼネコンの安値受注が止み、人手不足で外壁を作れる会社が限られた後の価格で取った仕事だ。会社が見込む2026年12月期の営業利益7〜8億円は、前の期の7倍近い。
首位の地位も効いてくる。PCCWの工場と職人は、短い時間では増やせない。高層のホテルやマンションの外壁を工場で作れば現場の人手を減らせるので、人手不足の時代にはむしろ選ばれやすい。2010年代後半の営業利益率は15%前後あり、売り手が優位の市場では、その水準に近づいてもおかしくない。
そして値段の下には厚い資産がある。正味の流動資産だけで時価総額を上回り、工場の土地は簿価だけで15億円ある。利益が戻らなくても損は限られ、戻れば大きい。2026年9月からは自社株買いも始まり、会社は資本の使い方にも目を向け始めた。アクアのプールもホテルの増加で伸びている。利益の谷で厚い資産ごと安く買える機会は多くない。
慎重な見方
資産が厚いことは、株主の取り分が増えることを意味しない。自己資本108億円のうち、事業に要るのは半分ほどだが、会社は余った現金を長く手元に置いてきた。ROEは直近4年で1〜4%にとどまり、利益が会社の予想どおり戻っても5%前後だ。資本コストを下回る会社の資本は、帳簿の価値では評価されない。
利益の回復も確かではない。客は大手ゼネコン数社で、1社で売上の2割を占める。資材と人件費は上がり続け、受注から完成まで2〜3年かかる工事では、受注した後の値上がりを自社でかぶる。2022年からの利益の落ち込みは、まさにこの形だった。
さらに長い目では、ガラスやアルミのカーテンウォールに置き換わる流れがある。高層のオフィスでは軽いガラスが主流で、PCCWの出番はホテルやマンションに偏る。人口が減る中で、建設の量そのものも大きくは増えない。首位の会社でも、縮む市場の首位にすぎない。受注残の多さも、採算が見込みどおりに仕上がるまでは利益の保証にならない。2021年12月期の営業利益率16%が翌年に2%へ落ちたように、この会社の利益は一つの年で大きく変わる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方を少しだけ重く見る。利益の質は平凡で、資本の重さはROEを押し下げ続けるが、正味の流動資産が時価総額を上回るという資産の床は、慎重な見方のどの筋書きでも大きくは崩れない。確率は中立を中心に置き、悲観側も3割余り残した。割安さの源は利益の成長ではなく資産の厚さなので、その資産が株主に戻るかどうかを見続ける。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,033 円82 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 397 円31 億円)。 今の値に割り戻すと 721 円57 億円、今との差 +18.8%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,067 円164 億円 | 694 円55 億円 | +354.9% | +16.4% | 221 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,496 円119 億円 | 568 円45 億円 | +239.9% | +13.0% | 413 円33 億円 |
| 中立 | 40% | 1,035 円82 億円 | 379 円30 億円 | +132.9% | +8.8% | 565 円45 億円 |
| やや悲観 | 22% | 517 円41 億円 | 278 円22 億円 | +31.0% | +2.7% | 175 円14 億円 |
| 悲観 | 10% | 409 円32 億円 | 151 円12 億円 | −7.7% | −0.8% | 56 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,033 円82 億円 | 397 円31 億円 | +135.6% | +8.9% | 1,430 円113 億円 |
今の株価時価総額 607 円48 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 人手不足で値決めの力が戻る 利益 13 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,067 円164 億円
人手不足で外壁を作れる会社が減り、首位の高橋カーテンウォール工業に仕事が集まる。工場で作って現場の人手を減らせるPCCWは、ホテルやマンションの外壁でむしろ選ばれる。年に作る面積は今より3割増え、受注の単価は物価を上回って上がる。
受注後の値上がりを契約に織り込めるようになり、営業利益率は2010年代後半の15%前後に近い14%まで戻る。ホテルのプールも伸び、アクアの利益も倍になる。純利益は13億円台になる。会社は配当を上げ、自社株買いを毎年続ける。それでも資本は厚く、ROEは8%台で資本コストにわずかに届かない。
- PCカーテンウォール:数量 65.0(年に作って取り付ける外壁の面積(千㎡、推定))× 価格 1.81(1千㎡あたりの売上(億円))→ 売上 118 億円・営業利益 16 億円。6.5万㎡×1.81億円(物価を上回る1.45倍)、利益率14%
- アクア(プール):数量 55.0(納めるプールの件数(件・年、推定))× 価格 0.36(1件あたりの売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。55件×1件0.36億円(1.4倍)、利益率10%
- その他:数量 1.0(事業の規模(今を1とする))× 価格 0.83(規模1あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模1×1.34倍
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 12.41 倍、時価総額 164 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首位の会社が売り手の市場で2010年代後半の利益率に戻る姿。客の集中と物価の上昇があるので1割未満。
やや楽観 20% 会社の目標の利益率に近づく 利益 10 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,496 円119 億円
受注残の工事が会社の見込みどおりの採算で仕上がり、2026年12月期に営業利益は7億円台に戻る。その後もゼネコンの安値受注は戻らず、外壁の単価は物価よりやや速く上がる。年に作る面積は今より2割増える。
営業利益率は11%前後で落ち着き、経常利益率は会社の目標の10%を超える。アクアもホテルのプールで伸びる。純利益は9億円台になる。会社は配当を少しずつ上げ、自社株買いを続ける。それでも自己資本は厚く、ROEは6%台で資本コストを下回る。利益は戻るが、資本の効率は高くならない。客の大手ゼネコンへの集中は変わらず、1社の発注の波で年の利益は上下する。
- PCカーテンウォール:数量 60.0(年に作って取り付ける外壁の面積(千㎡、推定))× 価格 1.74(1千㎡あたりの売上(億円))→ 売上 104 億円・営業利益 11 億円。6万㎡×1.74億円(1.39倍)、利益率11%
- アクア(プール):数量 50.0(納めるプールの件数(件・年、推定))× 価格 0.35(1件あたりの売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。50件×1件0.35億円(1.36倍)、利益率9%
- その他:数量 1.0(事業の規模(今を1とする))× 価格 0.83(規模1あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模1×1.34倍
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 12.47 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の見込みどおり利益が戻り、目標の経常利益率10%に近づく姿。受注残の厚さを見て2割を置いた。
中立 40% 利益は戻るが、資本は重いまま 利益 6 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,035 円82 億円
受注残の工事で利益は戻り、営業利益は7〜8億円台で安定する。人手不足で外壁の単価は上がるが、資材と人件費も上がり、受注後の値上がりを一部かぶる年もある。営業利益率は8%前後にとどまる。
年に作る面積は今より1割増えるが、高層のオフィスではガラスの外壁が主流になり、PCCWの出番はホテルとマンションに偏る。アクアは学校とホテルのプールで少しずつ伸びる。純利益は6億円台だ。
配当は少し上がり、自社株買いも時々行うが、利益の多くは手元に残る。自己資本は140億円近くに膨らみ、ROEは5%前後で資本コストを下回り続ける。事業は安定するが、資本の厚さが価値の伸びを抑える。
- PCカーテンウォール:数量 55.0(年に作って取り付ける外壁の面積(千㎡、推定))× 価格 1.68(1千㎡あたりの売上(億円))→ 売上 92 億円・営業利益 7 億円。5.5万㎡×1.675億円(1.34倍)、利益率8%
- アクア(プール):数量 45.0(納めるプールの件数(件・年、推定))× 価格 0.34(1件あたりの売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。45件×1件0.344億円(1.34倍)、利益率8%
- その他:数量 1.0(事業の規模(今を1とする))× 価格 0.83(規模1あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模1×1.34倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 12.81 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の価格の改善で利益は戻るが、15%前後の昔の利益率までは届かない姿を中心に置いた。
やや悲観 22% 受注後の値上がりで利益が細る 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 517 円41 億円
受注残の工事は採算が見込みより悪く、資材と人件費の上昇を自社でかぶる。ゼネコンは再び値下げを求め、受注の単価は物価に追いつかない。高層のオフィスの外壁はガラスに置き換わり、年に作る面積は今より1割減る。
営業利益率は3%前後にとどまり、純利益は2億円前後だ。それでも配当は年1.6億円を守り、自己資本はほとんど増えない。ROEは2%で、資本の価値は帳簿の4割ほどにしか評価されない。ただ、借入はなく、正味の流動資産は厚いまま残る。工場の土地も残り、会社が傾くことはない。値段は資産の厚さに支えられ、利益の力ではなく持っているものの価値で決まる。
- PCカーテンウォール:数量 45.0(年に作って取り付ける外壁の面積(千㎡、推定))× 価格 1.47(1千㎡あたりの売上(億円))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。4.5万㎡×1.47億円(1.18倍、値決めの力が弱い)、利益率3%
- アクア(プール):数量 40.0(納めるプールの件数(件・年、推定))× 価格 0.29(1件あたりの売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。40件×1件0.29億円(1.13倍)、利益率5%
- その他:数量 1.0(事業の規模(今を1とする))× 価格 0.80(規模1あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模1×約1.3倍
倍率:ROE2%で資本コストに遠く届かない。稼ぐ力(純利益÷k≒23億円)より正味の流動資産の床の方が大きいので、今の自己資本108億円に0.38倍を掛けた。中立のPBR(約0.44倍)より低い。
確率:2022年からの4年間の利益の落ち込みが繰り返される姿。物価の上昇が続く前提なので2割余りを置いた。
悲観 10% 外壁の市場が細り、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 409 円32 億円
人口の減少で都心の再開発が細り、高層の建物はガラスやアルミの外壁が主流になる。PCCWの出番はさらに減り、年に作る面積は今より3割近く減る。少ない仕事を取り合い、受注の単価は物価に追いつかない。職人の高齢化で工期の遅れも重なる。
営業利益は赤字と小さな黒字を行き来し、10年後の純利益は赤字だ。配当は減り、工場の一つを閉じる。自己資本は少しずつ減るが、借入はなく、正味の流動資産と工場の土地は残る。値段は資産の床まで下がり、首位の会社でも縮む市場の中で稼げない姿になる。大手ゼネコンも外壁の専門の会社を絞り込み、残った仕事は値下げの競争で取り合う。アクアのプールだけが小さく利益を出す。
- PCカーテンウォール:数量 36.0(年に作って取り付ける外壁の面積(千㎡、推定))× 価格 1.50(1千㎡あたりの売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 −2 億円。3.6万㎡×1.5億円(1.2倍)、赤字
- アクア(プール):数量 35.0(納めるプールの件数(件・年、推定))× 価格 0.28(1件あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。35件×1件0.28億円(1.1倍)、利益率3%
- その他:数量 1.0(事業の規模(今を1とする))× 価格 0.80(規模1あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模1×約1.3倍
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力はないので、床は正味の流動資産から出した額で、今の自己資本108億円に0.3倍を掛けた。
確率:ガラスの外壁への置き換えと建設の量の減少が重なる構造的な負け。会社に借金がなく資産が厚いので1割にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
PCカーテンウォール
高層ビルの外壁のコンクリート板を工場で作り、現場で取り付ける。
| 数量年に作って取り付ける外壁の面積(千㎡、推定) | 価格1千㎡あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 50.0 | 1.25 | 63 | 0 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 1.68 | 92 | 7 |
取り方:面積の開示は無い。PCCWの売上62.5億円を、タイルや石の打ち込みを含む外壁の板の取り付けまでの単価を1㎡12.5万円前後と置いて割り、約5万㎡と推定。利益はセグメントの利益0.20億円。
アクア(プール)
ステンレスのプールを作って学校・スポーツ施設・ホテルに納める。
| 数量納めるプールの件数(件・年、推定) | 価格1件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 0.26 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 0.34 | 16 | 1 |
取り方:件数の開示は無い。アクアの売上10.26億円を、改修と新設を混ぜた1件2,500万円前後で割って約40件と推定。利益はセグメントの利益0.95億円。
その他
子会社の不動産の賃貸など。
| 数量事業の規模(今を1とする) | 価格規模1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 0.62 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.83 | 1 | 0 |
取り方:その他のセグメントの売上0.62億円・損失0.02億円。小さいので規模を1と置いた。
リスクと懸念
受注後の資材と人件費の上昇
受注から完成まで2〜3年かかり、その間の資材と人件費の上昇は自社でかぶることが多い。2022年からの利益の落ち込みはこの形だった。物価の上昇が続けば、受注残の利益は見込みより細る。
大手ゼネコンへの集中
鹿島建設、大成建設、竹中工務店などの大手ゼネコンが売上の大半を占め、1社で2割を超える年もある。客の発注の方針や値下げの要求で、利益は大きく変わる。
ガラスやアルミの外壁への置き換え
高層のオフィスでは軽くデザインの自由度が高いガラスやアルミのカーテンウォールが主流になりつつある。PCCWの市場がホテルやマンションに偏れば、数量は細る。
職人の高齢化と人手不足
工場と現場の取り付けの職人が高齢化している。人が集まらなければ、受注があっても作れず、工期の遅れで費用がかさむ。
資本の眠り
自己資本比率85%で、資本は事業の必要を大きく上回る。余った資本を株主に戻さない限り、ROEは資本コストを下回り続ける。
今後の分かれ目
- 2026年12月期に会社の見込みどおり営業利益7〜8億円に戻る
- 受注の価格が上がった証拠になり、中立からやや楽観に寄せる。
- 受注残が減り始め、受注の単価の改善が止まる
- 利益の回復は一時的とみて、やや悲観に寄せる。
- 自己株式の消却や総還元性向の目標など、余った資本を減らす具体策を出す
- 資本の重さが和らぎ、ROEが資本コストに近づく。倍率を少し上げて見てよくなる。
- 大型の工事で大きな赤字や工期の遅れが出る
- 受注の値決めに疑いが出て、悲観側に寄せる。
- 大手ゼネコンや同業がPCCWの事業ごと買いに来る
- 資産の厚さに見合う値段がつく道が開く。
見ておくもの
- 受注高と受注残の推移
- PCCWのセグメントの利益率
- 大手ゼネコンへの売上の集中度
- 現金と借入の期末・中間の差
- 自社株買いと自己株式の消却
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPERから置いていない。中立の10年ROEは5%前後で資本コスト8.5%を下回るので、PERの上限は1÷kの約11.1倍で、利益の振れを見て約85%の9.5倍に置いた。余った現金は事業の利益と分けて足した。悲観側は今の自己資本108億円に掛けたPBRで置き、正味の流動資産から出した床を超えないようにした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.41 倍・やや楽観 PER 10→12.47 倍・中立 PER 9.5→12.81 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。