結論
サンテックは、ビルや工場の電気設備、送配電の電力工事、空調・給排水を手がける独立系の設備工事会社だ。旧社名は山陽電気工事。筆者の結論は「やや割高」。財務は強いが、請け負う仕事の利益率が薄く、稼ぐ力が資本コストに届かないからだ。
2026年3月期の売上高は611億円で、前期より10%減ったが、営業利益は30億円と4割増えた。工事の採算が改善し、売上原価率は3.4ポイント下がった。現金は131億円、有利子負債は37億円しかなく、純現金は94億円。自己資本比率は55%と厚い。
海外が売上の43%を占める。最大の取引先はマレーシアの建設会社で、売上の16%を握る。足元の受注は、電力工事が2.3倍、空調・給排水が1.9倍と伸びた。ただし営業利益率は5%にも届かず、新しい中計も営業利益30億円を横ばいで見る。
筆者は、10年で売上が4割増えても、利益率が元に戻って純利益は33億円前後と見る。ROEは6%台で、資本コスト8%に届かない。純現金は支えだが、工事会社の現金は支払いの時差を埋める運転資金の性格が強い。一方、株主の双栄興業が11%まで買い増し、変化の火種も残る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「財務は優等生、事業は並」という姿だ。純現金と自己資本比率の高さは、安心して持てる土台になる。しかし、稼ぐ力が資本コストに届かないため、持ち続けても価値は大きく増えにくい。
オーナー利益、つまり株主のものになるお金は、純利益の大部分に近い。投資が少ないので、再投資の負担が軽いからだ。ただし利益そのものが、工事の採算と受注の波で大きく振れる。過去10年で4年が赤字に近い水準だったことは、無視できない。
資本配分は穏当だが、積極的ではない。余った現金が積み上がる構造のまま、ROEは低いまま推移する。双栄興業のような株主が、資本効率の改善を迫る可能性は、価値を押し上げる側の材料だ。
安全域は、財務の厚さに助けられている。悲観の筋書きでも、現金と不動産が株主の取り分を支える。筆者は、価値を計算より少し高く見る余地を認めつつ、利益率の持続性には慎重に構える。
何で稼ぐ会社か
売上は大きく4つに分かれる。2026年3月期は、内線工事(ビル・工場の電気設備)438億円、電力工事118億円、空調給排水工事50億円、機器製作6億円だった。
内線工事が中心だ。ビルや工場の受変電、照明、情報設備を設計・施工する。顧客はゼネコンや製造業で、日系メーカーの海外工場向けが厚い。海外売上は261億円、売上の43%にあたり、連結従業員1,483人のうち698人が海外の社員だ。
電力工事は、送配電の工事だ。個別では東北電力ネットワークが最大の顧客で、売上の12%にあたる。電力会社の設備更新は、景気に左右されにくい。前期の受注は118億円と2.3倍に増えた。
空調給排水工事は、受注が90億円と2倍近くに伸びた。データセンターや半導体工場の空調需要の追い風を、小さな規模で受ける。機器製作は売上の1%にとどまる。
不動産も持つ。千代田区の貸事務所4か所など、賃貸の地代家賃収入が年5億円ある。費用を引いて3億円強が本業の外の利益に積み上がり、営業外収益を支えている。機器製作と不動産は小さいが、工事の波をならす役目を持つ。
従業員の約半数が海外の社員という点も、この会社の特徴だ。海外の現地法人が施工を担い、日本人の技術者が品質を管理する形が基本になる。
優良さと弱いところ
強みは財務の厚さと、顧客との長い取引だ。純現金94億円、自己資本比率55%で、受注に伴う資金の波を自分で吸収できる。電力会社向けは仕事の波が小さく、利益の下支えになる。
一方、堀は強くない。電気設備の工事は、ゼネコンの下請けが多く、価格は入札と競り合いで決まる。有価証券報告書も、競合による受注価格の低下と、資材費・労務費の上昇を最初のリスクに挙げる。
利益率の低さが最大の弱点だ。営業利益率は過去10年で、赤字(2021年3月期から2024年3月期まで連続)から4.9%の間を行き来した。前期の4.9%は過去の最高水準に近く、続くとは限らない。ROEの過去10年の中央値は2.7%で、資本コストをはるかに下回ってきた。
経営は創業の流れをくむ財団が15%、投資会社の双栄興業が11%を持つ構造だ。会社自身も、2023年12月の開示で、ROEが株主資本コストを下回ってきたことを認めている。配当は性向30%を目途にDOE(自己資本に対する配当の率)2%以上を守る方針で、還元は穏当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
設備工事の世界は、需要は強いが人手が足りない。データセンター、半導体工場、電力網の更新、ビルの省エネ改修が重なり、仕事は増えている。ただし技能者の不足が重く、2024年の残業規制もあり、取れる仕事を選ぶ時代に入った。業界全体で、工事の値段を上げる動きが定着しつつある。
同じ空調・設備工事を行う上場サブコン群(高砂熱学工業、ダイダン、三機工業など)は、完成工事高が名目で年4〜7%伸びる前提で置かれている。サンテックは電気設備が主体で、空調は小さい。データセンターの追い風は、電気設備の海外案件を通じて受ける。
競争相手は、きんでんや関電工などの大手電気工事会社と、地場の電気工事会社だ。サンテックは中堅で、価格の決定力は弱い。規模で勝る相手が、大型案件を取りやすい。
海外は、日系製造業の東南アジア進出と、データセンターの建設が牽引する。ただし現地の景気と為替、顧客の投資計画に左右される。国内の電力工事は、送配電網の更新が長く続くため、安定した下支えになる。
建設業全体の分かれ目は、技能者の確保と、資材高の価格転嫁だ。物価3%の世界では、労務費が上がるため、値上げを通せるかどうかが利益率を決める。
資本政策と M&A
還元は、配当性向30%を目途に、DOE2%以上を確保する方針だ。前期の配当は総額約10億円で、性向は36%だった。今期は配当を減らす予想だ。自己株式の取得は2023年に行い、株主還元と資本効率の向上を理由に挙げている。
現金131億円に対し、有利子負債は37億円しかなく、財務は大きく余裕がある。それでも、工事会社の現金は、協力会社への支払いと客先からの前受金の時差を埋めるために要る。ROEが資本コストを下回る以上、余った現金は自社株買いか増配で戻すのが筋だ。
株主の変化は注目点だ。双栄興業は、2024年7月の大量保有報告書で、保有目的を企業価値向上のための建設的な対話と書いた。持株比率は7%台から11%に増えている。公益財団法人の八幡記念育英奨学会が15%を持つ。この二つで経営への影響力が決まる。TOBや再編の可能性も残る。
政策保有株は上場13銘柄で約19億円と小さい。不動産賃貸は事業の一部で、収益は利益に入っている。売却して株主に戻す計画は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注が勢いを増している。前期の連結受注は717億円と8%増え、電力工事が2.3倍、空調給排水が1.9倍になった。個別の手持工事は442億円と厚く、売上の約1.4年分ある。データセンターや半導体工場の建設ラッシュの中で、電気設備の仕事は当分切れない。
売上原価率は3.4ポイント下がり、営業利益は4割増えた。価格転嫁が定着し、利益率の改善が続けば、4.9%を超える水準も見えてくる。中計は営業利益30億円と慎重だが、前期の実績が示すのは、会社が控えめに計画を出す傾向だ。
海外は日系企業の工場移転とデータセンターで増え続ける。マレーシアの大手顧客との結びつきも深い。
財務は、純現金94億円と自己資本比率55%で、投資余力は大きい。双栄興業が11%まで買い増し、資本効率の改善を促している。配当を増やしたり、自社株買いに踏み切ったりすれば、ROEは9%を超え、評価は大きく変わる。
国内でも電力網の更新が10年単位で続くため、電力工事は景気に左右されにくい柱になる。空調・給排水の受注も2倍近くに伸びており、売上の構成が厚みを増している。
慎重な見方
営業利益率は、過去10年のほとんどで3%未満、4年は赤字だった。前期の4.9%は例外に近く、続く保証はない。今期の予想は経常利益で15%の減益と、すでに勢いが落ちている。受注の内線工事も、前期は10%減った。
海外は売上の43%を占めるのに、最大顧客のマレーシアの会社に16%を依存する。顧客の投資計画が一つ変われば、売上が大きく動く。現地の景気、為替、政治の不確実性もある。
電気設備の工事は、入札と競り合いで値段が決まる。資材費と労務費が上がっても、受注価格に転嫁できなければ、利益は削られる。技能者の確保も難しい。中計の営業利益30億円は、5年前の2倍だが、売上700億円に対して4%台でしかない。
現金131億円は、工事未払いと前受けの見合いで、余りではない。ROEが資本コストに届かないまま、現金が積み上がれば、価値は目減りする。株主の入れ替わりで会社が動いても、方向が良いとは限らない。
加えて、受注の波に合わせて人員を増減させにくい。固定費としての人件費が重く、売上が落ちると利益は急速に細る。過去の赤字局面でも、この固定費の重さが傷を深くした。
どちらに重みを置いたか
受注の厚さと財務の強さは、強気の見方に分がある。一方、利益率の薄さと過去の赤字、海外の顧客集中は、慎重な見方が正しい。強気の見方が描く利益率の定着は、価格転嫁が続くことが前提なので、楽観は7%にとどめた。悪い側はやや悲観26%、悲観12%と置き、赤字に沈んだ過去を確率で表した。純現金と不動産が株主の取り分を支えるため、悲観でも深く沈まない。結果、10年の価値は今の時価総額をやや下回り、結論はやや割高とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,391 円367 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 743 円114 億円)。 今の値に割り戻すと 1,613 円248 億円、今との差 +0.2%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,932 円604 億円 | 1,075 円165 億円 | +211.0% | +12.0% | 350 円54 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,159 円485 億円 | 944 円145 億円 | +154.8% | +9.8% | 821 円126 億円 |
| 中立 | 35% | 2,791 円429 億円 | 879 円135 億円 | +128.0% | +8.6% | 1,285 円197 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,575 円242 億円 | 554 円85 億円 | +32.2% | +2.8% | 553 円85 億円 |
| 悲観 | 12% | 812 円125 億円 | 228 円35 億円 | −35.4% | −4.3% | 125 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,391 円367 億円 | 743 円114 億円 | +94.7% | +6.9% | 3,134 円481 億円 |
今の株価時価総額 1,610 円247 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 海外のデータセンター・工場需要を取り込み、利益率が5%に乗る 利益 47 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,932 円604 億円
日系企業の東南アジア進出とデータセンターの建設ラッシュが続き、海外の完成工事高は1.7倍に伸びる。国内も電力網の更新と省エネ改修で堅調に増える。価格転嫁が定着し、営業利益率は5%に乗る。マレーシアの大手顧客に加え、取引先が広がり、1社依存が薄まる。双栄興業の働きかけもあり、会社は配当を増やし、自社株買いにも踏み切る。ROEは9%近くまで改善する。純現金は厚いまま、受注に伴う運転資金も自力でまかなう。中計の営業利益30億円は、前倒しで超えられる。従業員の採用と教育に投資する余力もあり、技能者の確保でも他社に差をつける。海外の現地法人は人材が育ち、現地の仕事を日本人技術者の手を離れて回せるようになる。
- 国内の設備工事(電気・電力・空調給排水・機器):数量 864(従業員数(人、国内))× 価格 0.61(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 523 億円・営業利益 26 億円。従業員+10%・1人当たり売上+36%
- 海外の設備工事(東南アジアなど):数量 1,187(従業員数(人、海外))× 価格 0.50(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 595 億円・営業利益 30 億円。従業員+70%・1人当たり売上+34%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 604 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の伸びが続き、価格転嫁が定着して利益率が5%に乗る必要があり、条件が重いので低く置く。
やや楽観 20% 受注の厚みが売上に変わり、利益率が改善を保つ 利益 39 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,159 円485 億円
前期の受注の厚みが売上に変わり、海外は1.4倍、国内は3%増える。営業利益率は4%台半ばを保つ。価格転嫁が定着し、労務費の上昇を受注価格に乗せられる。電力工事は電力網の更新を背景に着実に積み上がる。1社依存は残るが、取引先が少しずつ増える。純現金はほぼ維持され、配当は性向30%程度を保つ。ROEは7%台まで改善するが、資本コストにはまだ届かない。株主の動きで、資本政策に前向きな変化が出る。電力工事の受注残が積み上がり、売上の下支えになる。技能者の確保は引き続き課題だが、外注の活用で何とか工期を守る。
- 国内の設備工事(電気・電力・空調給排水・機器):数量 809(従業員数(人、国内))× 価格 0.60(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 486 億円・営業利益 22 億円。従業員+3%・1人当たり売上+35%
- 海外の設備工事(東南アジアなど):数量 1,012(従業員数(人、海外))× 価格 0.49(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 500 億円・営業利益 23 億円。従業員+45%・1人当たり売上+32%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 485 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の受注の厚みが売上に変わる姿。現実味があるので相応に置く。
中立 35% 売上は伸びるが、利益率は元の水準に戻る 利益 33 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,791 円429 億円
売上は10年で4割増えるが、利益率は元の水準に戻る。国内は技能者不足で人数が増えず、単価の上昇が増収を支える。海外は日系企業の進出に伴い、完成工事高が1.25倍に増える。営業利益率は4%台前半で、前期の4.9%は例外だったと落ち着く。営業外では、賃貸の地代家賃と、現金の受取利息が積み上がる。純利益は33億円前後で、前期の28億円からわずかに増える。ROEは6%台にとどまる。配当は性向30%を保ち、現金は積み上がる。電力工事は電力網の更新を背景に安定し、売上の底を支える。海外は最大顧客への依存が続き、1社の動向に利益が左右される構造は変わらない。
- 国内の設備工事(電気・電力・空調給排水・機器):数量 761(従業員数(人、国内))× 価格 0.60(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 454 億円・営業利益 20 億円。従業員-3%・1人当たり売上+34%
- 海外の設備工事(東南アジアなど):数量 873(従業員数(人、海外))× 価格 0.49(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 425 億円・営業利益 18 億円。従業員+25%・1人当たり売上+30%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 411 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は伸びるが、利益率は過去平均へ戻る姿が最もありうるので中心に置く。
やや悲観 26% 海外が伸びず、利益率が薄いまま低迷する 利益 21 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 1,575 円242 億円
海外の最大顧客の投資が一巡し、海外の完成工事高は横ばいにとどまる。国内は技能者不足で人数が1割減り、受注の選別を迫られる。営業利益率は3%台前半に落ち、20億円前後の営業利益が続く。賃貸の収入は残るが、純利益は20億円ほどで伸びない。配当は最低限のDOE2%を保ち、増配はない。現金は積み上がり、ROEは4%台にとどまる。株主からの圧力が強まるが、会社の動きは遅い。賃貸の収入は安定しているが、事業の利益を補うほど大きくはない。海外は最大顧客の発注が減り、現地法人の稼働率が下がって固定費が重くなる。
- 国内の設備工事(電気・電力・空調給排水・機器):数量 707(従業員数(人、国内))× 価格 0.56(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 393 億円・営業利益 13 億円。従業員-10%・1人当たり売上+25%
- 海外の設備工事(東南アジアなど):数量 663(従業員数(人、海外))× 価格 0.46(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 303 億円・営業利益 9 億円。従業員-5%・1人当たり売上+22%
倍率:事業の ROE 4.2% は資本コスト 8% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で測り、PER は 1÷k=11.8 倍の 7 割、8.2 倍。
確率:過去の赤字、海外の顧客集中、今期の減益予想を踏まえ、やや厚めに置く。
悲観 12% 顧客の投資縮小と価格競争で、海外が赤字に沈む 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 812 円125 億円
顧客の投資計画の変更と価格競争で、海外が赤字に沈む。海外の完成工事高は4割減り、利益率はマイナスになる。国内も人手不足と資材高の転嫁の遅れで、利益率が1%を割る。営業利益は赤字になり、過去の2021〜2024年の再来になる。賃貸の収入だけが利益を支え、純利益は小幅の赤字になる。配当は大きく減る。現金は取り崩され、自己資本比率は下がる。会社は海外の縮小と国内への回帰を余儀なくされ、再建に入る。賃貸不動産の売却や、政策保有株の売却で現金を確保し、配当は最低限に絞る。株主が経営に介入する局面も出て、体制の見直しが進む。
- 国内の設備工事(電気・電力・空調給排水・機器):数量 589(従業員数(人、国内))× 価格 0.49(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 288 億円・営業利益 −1 億円。従業員-25%・1人当たり売上+10%
- 海外の設備工事(東南アジアなど):数量 419(従業員数(人、海外))× 価格 0.41(1人当たり完成工事高(億円))→ 売上 172 億円・営業利益 −6 億円。従業員-40%・1人当たり売上+10%(赤字)
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。株主に残るのは、賃貸不動産と自社の土地建物、純現金の半分から負債の後始末を引いたもの。今の自己資本 337 億円に掛ける PBR 0.37 倍で約 125 億円(床の内訳は floor_assets_why)。
確率:過去10年に4年あった赤字局面と、海外の顧客集中が重なる姿。財務の厚さを考え、12%にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の設備工事(電気・電力・空調給排水・機器)
ビル・工場の電気設備、送配電の電力工事、空調給排水、機器製作の国内分。
| 数量従業員数(人、国内) | 価格1人当たり完成工事高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 785 | 0.45 | 350 | 17 |
| 10 年後 中立 | 761 | 0.60 | 454 | 20 |
取り方:国内の売上は、連結611億円から海外261億円を引いた349.5億円。従業員は連結1,483人から海外698人を引いた785人(提出会社790人と整合)。1人当たり0.445億円(約4,450万円。協力会社への外注を含む)。営業利益は国内・海外とも率4.9%の等率で配分した推定(開示なし)。単価は賃金・資材・外注費の上昇を乗せて、中立で物価並みの10年1.34倍。
海外の設備工事(東南アジアなど)
日系企業の海外工場、データセンターなどの電気・空調設備。マレーシアなどの現地法人が担う。
| 数量従業員数(人、海外) | 価格1人当たり完成工事高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 698 | 0.37 | 261 | 13 |
| 10 年後 中立 | 873 | 0.49 | 425 | 18 |
取り方:海外売上高261.26億円(開示、売上の42.8%)を、海外の従業員698人(開示)で割った1人当たり0.374億円(約3,740万円)。営業利益は国内と同率の推定配分。海外は現地の賃金上昇が物価よりやや緩いとみて、中立は10年1.30倍(円ドルは150円で一定)。
リスクと懸念
利益率の薄さと過去の赤字
営業利益率は2021年3月期から2024年3月期まで赤字で、前期の4.9%が過去10年の最高に近い。今期の経常利益予想は15%の減益。工事の採算は案件ごとの波が大きく、赤字案件が一つ出ると年間の利益が消える。
海外の顧客集中
海外売上は43%で、最大顧客のマレーシアの建設会社が連結売上の16%を占める。顧客の投資計画の変更、現地の景気、為替、政治の変化が、売上と利益を大きく動かす。
技能者不足と労務費の上昇
国内は技能者の確保が難しく、残業規制で稼働が制限される。労務費の上昇を受注価格に転嫁できなければ、利益率が落ちる。協力会社の経営難や人手不足が、工期の遅れにつながる。
競争による受注価格の低下
電気設備の工事は入札が多く、大手電気工事会社との競争で値段が下がりやすい。有価証券報告書も、競合による受注価格の低下をリスクの筆頭に挙げる。
資本効率の低さと現金の積み上がり
ROEは過去10年の中央値で2.7%、前期でも8.3%で、資本コストを下回る。純現金94億円を使わず積み上げれば、価値は目減りする。2023年12月の開示で、会社自身もROEが株主資本コストを下回ることを認めている。
株主の動きとガバナンス
財団が15%、投資会社の双栄興業が11%を持つ。双栄興業は建設的な対話を目的に買い増している。経営方針をめぐる対立や、TOB・再編の動きが起きる可能性があり、方向は読みにくい。
賃貸不動産と政策保有株の時価変動
千代田区の貸事務所4か所など、賃貸不動産と上場13銘柄の政策保有株を持つ。市況が悪化すれば、評価損と賃料収入の減少が営業外収益を細らせる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の30億円を超える
- 前期の利益率改善が続いていることを示し、本質価値は中立から楽観寄りに近づく。
- 双栄興業が持株を15%超に増やし、株主提案や取締役の派遣に動く
- 資本政策の見直しが進み、自社株買いや増配で、評価が上がる。
- マレーシアの最大顧客の発注が大きく減る
- 海外売上が3分の1以上減り、慎重な筋書きに近づく。
- 電力工事の受注が高水準を保つ
- 電力網の更新で安定した下支えが続き、利益の波が小さくなる。
- 売上総利益率が14.5%の目標を下回る
- 価格転嫁が止まったことを示し、利益率の薄い姿が続く。
- 自社株買いや増配を含む資本政策の見直しが発表される
- 資本効率の改善が進み、倍率の上限に近い評価へ近づく。
見ておくもの
- 受注高・手持工事高と、電力工事・空調給排水の受注
- 売上総利益率と営業利益率(会社の目標は14.5%・約4%)
- マレーシアなど海外の売上と最大顧客の依存度
- 双栄興業の持株比率と保有目的の変更(大量保有報告書)
- 配当・自社株買いなど資本政策の発表
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、国内と海外を従業員数(実質)× 1人当たり完成工事高(物価3%込みの名目)で積んだ。営業利益率は過去12年の山(4.9%)以下の4%台前半に置き、前期の水準が続くとは見ていない。営業外では賃貸の地代家賃と受取利息を入れた。倍率は資本コスト 8%(基本 7.5% + 循環0.5・値決め0.25・寿命0.25)と弱い堀から出し、ROE が k を下回るため PER は 1÷k まで、中立は上限の 8.5 割に置いた。悲観は賃貸不動産と純現金の半分から出し、過去の PBR の底は使っていない。今の時価総額は最後に比べただけだ。新リース会計基準の影響は、賃借が少ないため小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.82 倍・やや楽観 PER 10.5→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.0%(循環+0.5・値決め+0.25・寿命+0.25)を足した 8.5%。株主構成の変化や海外の顧客集中は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。