結論
エクシオグループは、通信工事で国内最大の会社だ。光回線や携帯基地局の工事を土台に、データセンターの電気工事と、学校や自治体向けのシステム構築へ広げてきた。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業は強くなっている。ただ、今の値段は、その改善が計画どおりに進むことまで先に払っている。
2026年3月期は、売上が7,877億円、営業利益が520億円で、ともに過去最高だった。中身には差がある。通信キャリア向けの利益率は9%台、システム構築は4%台にとどまる。
今後の利益を押し上げる主役は、データセンター向けの電気工事と、システム部門の採算改善だ。会社は2030年度に営業利益770億円を掲げる。ただ前の計画は、利益率の目標に届かなかった。
筆者は、この目標の半分は届くが、全部は届かないと見る。システム部門の利益率が一気に倍近くへ上がる姿は、描きにくい。学校向け端末の更新特需が終われば、売上もいったん縮む。
株主還元は厚くなる。配当は自己資本の4.5%を目安にし、総還元性向は6割を目指す。それでも、成長が穏やかな会社に高い倍率はつけにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エクシオは「良い工事会社」だが、「安く買える会社」ではない。事業は10年後もある。通信設備は誰かが直し続け、データセンターの電気工事も増える。問題は、その価値に払う値段だ。
筆者がいちばん気にするのは、利益の質だ。稼ぎの7割近くを通信と電気の工事が生む。残りのシステム部門は、売上が大きい割に利益が薄い。会社が掲げるのは、この部門の利益率が4%台から8%台へ上がる姿だ。これが実現すれば会社の質は変わる。しかし、実績のない改善に今から高い値をつけるのは危うい。
オーナーの手に残る利益は、純利益から成長の投資を引いた分だ。設備投資は軽いが、買収には約1,000億円を使う方針がある。買収で価値を壊さない規律が試される。
経営の資本の使い方は、改善の途上にある。還元は厚くなったが、社内取締役の大半がNTTグループ出身で、外部の目が入りにくい。安全域を考えると、今の値段は薄い。10年平均に近いPER、つまり12〜13倍まで下がるのを待つ価値がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、通信と電気の工事を請け負うことだ。顧客はNTTグループ、携帯各社、データセンター事業者、ビルや工場の発注者、学校や自治体になる。会社は事業を3つに分けている。
通信キャリアは、売上が約2,560億円で、利益率は9%台。光回線の工事と、携帯の基地局や「つながりにくさ」の解消工事が中心だ。3事業で最も利益率が高く、グループの現金を生む柱になる。
都市インフラは、売上が約2,490億円で、利益率は6%台。データセンターやビル、工場の電気工事、公共の通信工事、EV充電や蓄電池の工事が入る。この部門が今、いちばん伸びている。
システムソリューションは、売上が約2,840億円で、利益率は4%台。文教や自治体向けのシステム構築と、機器の販売が中心だ。学校の端末更新「Next GIGA」の特需で売上が4割増えたが、機器の販売は利幅が薄い。
連結の従業員は約1.8万人だ。工事は人手で決まるので、売上は「人数×1人当たりの売上」で見るのがわかりやすい。人は増やしにくく、伸びは単価と、利益率の高い仕事への入れ替えに頼る。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客との長い取引と、全国をまかなう施工の体制にある。強みとは、他社がすぐにまねできない力のことだ。通信工事は、NTTグループの設備を長年守ってきた実績が信用になる。新しい会社が割って入るのは難しい。
弱みは、強みが同じ形で他社にもあることだ。コムシスホールディングスやミライト・ワンも出自が近く、顧客が重なる。大型案件では価格で競り合う。堀は広くない。
利益の質にはばらつきがある。通信キャリアの利益率は9%台だが、システム構築は4%台と低い。全体の利益率6%台半ばは、同業のコムシスより低い。ROEも9%台で、資本コストを少し上回る程度だ。
ここ数年で良くなった点は、収益の源が増えたことだ。データセンター向けの電気工事は、2年続けて約700億円の受注を取った。ただ、大規模な空調工事を担える技術者は足りず、会社も課題と認めている。
経営の姿勢には変化がある。2030年度にROE12%を掲げ、還元も強めた。一方で、社内取締役8人のうち7人がNTTグループの出身だという指摘が、株主からあった。資本の使い方を外から問う目が、まだ弱い会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
通信工事は、成熟した国内の需要に、新しい投資の波が重なった市場だ。光回線はほぼ行き渡り、新しく引く工事は減る。代わりに、老朽設備の更新、携帯の通信品質の改善、データセンターをつなぐ光網の工事が増えている。
追い風の中心はデータセンターだ。生成AIの普及で、国内でも大型の建設が続く。ただ、その恩恵が大きいのは、建物の電気と空調を一括で請けられる会社だ。エクシオは電気に強いが、大規模な空調の施工力が足りない。
競争は大手3社の寡占に近い。売上は、エクシオが約7,900億円、コムシスが約6,300億円、ミライト・ワンが約6,000億円だ。同じ顧客を取り合うので、大幅な値上げはしにくい。
最大の制約は人手だ。2024年の残業規制のあと、技能者の確保が難しくなった。工事を増やすには人を増やすしかなく、増やせないなら単価で稼ぐことになる。ここ数年の増益は、その単価の転嫁が効いた面が大きい。
システム分野は別の市場だ。学校向けの端末更新は2025年度から2026年度が山で、その後は反動が来る。自治体のシステム刷新や企業のERPは堅いが、AIによる開発の効率化で、人月単価の競争が強まる恐れもある。
資本政策と M&A
還元は強まる方向だ。配当の目安を、自己資本の4%から4.5%に引き上げた。年間配当は、2027年3月期に前期より約2割増やす予定だ。総還元性向は6割を目安にし、自社株買いも続ける。2026年度は40億円を上限に買う。
成長投資は5年で約3,000億円を見込む。内訳は、買収や出資に約1,000億円、システムとデジタルに約700億円、拠点整備に約600億円、人財に約500億円だ。買収は、高いスキルの人材の確保と、データセンターや生成AIの領域が狙いだ。具体的な買収先は示されていない。
ガバナンスは、外からの圧力で動き始めた。2026年6月の株主総会で、オアシスの関連ファンドが社外取締役1名を提案し、賛成は4.8%にとどまり否決された。ただ総会のあと、独立した社外取締役の比率は38%から50%に引き上げられている。
政策保有株は、上場銘柄で18銘柄ある。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。純資産への上乗せは見込まず、安全域の側に回した。純有利子負債は約960億円で、自己資本比率は約5割。買収に使える余力はあるが、現金が余る会社ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぎの質が変わり始めている。通信工事だけの会社から、データセンターと情報システムを抱える会社へ移っているからだ。都市インフラは2026年3月期に利益が3割近く伸び、データセンターの受注は2年続けて約700億円に達した。
人手不足は追い風になる。工事のできる会社が限られるので、単価を上げやすい。大手3社の寡占は崩れにくく、価格の転嫁も定着した。通信キャリアの利益率は9%台まで上がり、会社の計画する10%台の姿も遠くない。
システム部門が最大の伸びしろだ。利益率4%台は、機器販売の比重が高いせいだ。会社は上流のコンサルとERPに軸足を移し、AIで開発を効率化する。端末更新の特需が一巡しても、利益率が上がれば利益は2倍になりうる。
資本政策にも余地がある。還元は総還元性向6割で、配当は自己資本の4.5%を下限にする。外部株主の圧力で、取締役会の独立性も高まった。買収で空調などの足りない力を補えば、都市インフラは大きく育つ。2030年度の営業利益770億円に近づけば、ROEは12%に届き、倍率も14倍台が妥当になる。
慎重な見方
改善の材料は、すでに今の利益と株価に入っている。2026年3月期の増益の相当部分は、学校向け端末の更新特需と、携帯各社の通信品質改善工事という、一時の追い風だ。特需は2027年3月期に反動で減る。
システム部門の利益率を4%台から8%台へ倍にする計画は重い。前の計画も、利益率7.5%の目標に対して実績は6.6%で、届かなかった。機器の販売を減らし、コンサルを増やすには時間も人材もかかる。
データセンターの工事は伸びているが、大規模な空調を担える技術者が足りない。取りこぼしが出る。電気だけでは、ゼネコンや空調大手が元請けを握る案件で、取り分が限られる。
顧客はNTTグループに偏る。携帯の工事が一巡し、NTTが内製化や発注の絞り込みに動けば、最も利益率の高い通信キャリアが崩れる。人手不足の中で、人件費も同じ速さで上がる。
ROEは9%台で資本コストをわずかに上回る程度だ。このROEに今のPER17倍は高い。買収に約1,000億円を使う計画も、高値づかみになればROEを下げる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。データセンターとシステム部門の改善が本物であることは認める。ただ、今の利益には一時の特需が混じり、計画の利益率は実績が届いたことのない水準にある。
確率は中立に厚く置き、悲観側をやや多めにした。強気の筋書きでも、今の値段を大きく上回る姿は描けない。最後は、改善の成果に先に払うかどうかの違いで、割高に傾く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,417 円6,946 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,180 円2,398 億円)。 今の値に割り戻すと 2,386 円4,849 億円、今との差 −8.0%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,271 円1.07 兆円 | 1,470 円2,988 億円 | +159.9% | +10.0% | 741 円1,507 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,436 円9,017 億円 | 1,322 円2,688 億円 | +122.0% | +8.3% | 1,324 円2,692 億円 |
| 中立 | 35% | 3,720 円7,561 億円 | 1,190 円2,418 億円 | +89.3% | +6.6% | 1,718 円3,493 億円 |
| やや悲観 | 21% | 2,053 円4,173 億円 | 1,014 円2,062 億円 | +18.3% | +1.7% | 644 円1,309 億円 |
| 悲観 | 10% | 841 円1,710 億円 | 844 円1,715 億円 | −35.0% | −4.2% | 168 円343 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,417 円6,946 億円 | 1,180 円2,398 億円 | +77.2% | +5.9% | 4,597 円9,344 億円 |
今の株価時価総額 2,594 円5,272 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 11% データセンターと情報システムで稼ぐ会社に変わる 利益 686 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 5,271 円1.07 兆円
10年後、エクシオは通信工事の会社ではなくなっている。データセンターと蓄電池、半導体工場の電気・空調を一括で請ける「総合サブコン」になり、都市インフラの売上は今の1.7倍になる。
システム部門は、機器販売への依存を下げ、ERPと上流のコンサルで稼ぐ。利益率は9%に届き、利益は今の3倍に近づく。AIによる開発の効率化が、人手不足の制約を和らげる。
買収で空調の施工力を補い、人材も確保する。ROEは12%台に乗り、還元は純利益の6割を続ける。人手不足は続くので、単価は物価以上に上がる。ここまで揃う確率は高くない。
- 通信キャリア:数量 6,800(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 49(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,329 億円・営業利益 340 億円。通信キャリア
- 都市インフラ:数量 8,200(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 53(1人当たり売上(百万円))→ 売上 4,346 億円・営業利益 361 億円。都市インフラ
- システムソリューション:数量 5,100(担当人数(人、推定))× 価格 85(1人当たり売上(百万円))→ 売上 4,335 億円・営業利益 390 億円。システムソリューション(機器販売の反動で1人当たり売上は物価並みに上がらない)
倍率:事業の純利益 686 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.46 倍、時価総額 10,606 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンター、システム部門、買収のすべてがうまく働く必要があり、強気の筋書きとして1割強に置いた。
やや楽観 23% システムの採算が半分改善する 利益 586 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 4,436 円9,017 億円
会社の計画が、一部達成される。通信キャリアは数量が3%ほど減るが、単価が物価並みに上がり、利益率は9%台半ばを保つ。
都市インフラは、データセンターと上下水道・蓄電池の工事で数量が1割以上増える。システム部門は、機器販売の比率が下がり、利益率が8%まで上がる。
営業利益は900億円台になる。還元は純利益の6割で、ROEは11%台。国内の需要が緩やかに伸びる、穏やかな強気の筋書きだ。大きな新規事業は要らない。
人手不足は続くが、単価の転嫁と採用への投資が実を結ぶ。ただ数量は人口に縛られ、通信キャリアでは減る。データセンター関連の売上が全社に占める割合は、今の1割台から2割に近づく。
- 通信キャリア:数量 6,550(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 49(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,206 億円・営業利益 308 億円。通信キャリア
- 都市インフラ:数量 7,800(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 52(1人当たり売上(百万円))→ 売上 4,056 億円・営業利益 316 億円。都市インフラ
- システムソリューション:数量 4,800(担当人数(人、推定))× 価格 81(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,888 億円・営業利益 311 億円。システムソリューション(機器販売の反動で1人当たり売上は物価並みに上がらない)
倍率:事業の純利益 586 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.95 倍、時価総額 8,761 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンターの伸びが続き、システム部門の利益率が会社の目標の半分ほど改善する姿。起こりやすさは2割強と見る。
中立 35% 単価で伸びる、成熟した会社 利益 496 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,720 円7,561 億円
単価で伸びる、成熟した会社になる。通信キャリアは、人口減と生産性の向上で人員が1割減る。一方で単価が物価並みに上がり、売上は2割増える。
都市インフラは、データセンターで数量が1割ほど増え、利益率は7%台にとどまる。システム部門は、利益率が7%まで改善する。会社の目標の8%台には届かない。
営業利益は800億円近くになり、会社の2030年度の目標を、物価で水増しされた形で達成する。還元は純利益の6割。ROEは10%前後で、資本コストを少し上回る。驚きの少ない10年だ。
システム部門の1人当たり売上は、機器販売の比率が下がるぶん、物価ほどには上がらない。通信キャリアの発注構造や、競合3社の力関係は大きく変わらない。人手の制約が強く、数量の大きな成長は望めない。データセンターの伸びは、通信工事の減少をちょうど埋める程度にとどまる。
- 通信キャリア:数量 6,300(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 49(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,084 億円・営業利益 278 億円。通信キャリア
- 都市インフラ:数量 7,300(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 51(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,740 億円・営業利益 273 億円。都市インフラ
- システムソリューション:数量 4,500(担当人数(人、推定))× 価格 77(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,465 億円・営業利益 243 億円。システムソリューション(機器販売の反動で1人当たり売上は物価並みに上がらない)
倍率:事業の純利益 496 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.39 倍、時価総額 7,137 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は通信が減り、データセンターが増え、利益率は少し上がる。もっとも起こりやすい姿として3割台半ばを置いた。
やや悲観 21% 価格競争でシステムの採算が戻らない 利益 355 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,053 円4,173 億円
通信キャリアの数量は、NTTグループの発注削減と内製化で1割以上減る。単価の上昇も鈍り、利益率は7%台に下がる。
システム部門は、AIによる開発の効率化で人月単価が下がり、機器販売の薄い利益から抜け出せない。利益率は4%台のままだ。都市インフラでは、大型案件の元請けをゼネコンと空調大手が握り、取り分が下請けに近づく。
営業利益は600億円を下回る。買収した会社ののれんの償却も、利益を削る。還元は続くが、増配の余地は小さい。成熟した下請け色の強い会社に戻る姿だ。
人手不足で単価は上がるものの、競合との値引き合戦が利益率を削る。10年先の稼ぐ力は、今より弱くなる。通信の減少を、他の領域で埋めきれない。
- 通信キャリア:数量 5,900(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 48(1人当たり売上(百万円))→ 売上 2,802 億円・営業利益 219 億円。通信キャリア
- 都市インフラ:数量 6,700(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 50(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,316 億円・営業利益 209 億円。都市インフラ
- システムソリューション:数量 4,200(担当人数(人、推定))× 価格 72(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,024 億円・営業利益 145 億円。システムソリューション(機器販売の反動で1人当たり売上は物価並みに上がらない)
倍率:ROE 7.58%(純利益 355 億円 ÷ 自己資本 4,684 億円)。事業の ROE が資本コスト k 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍。ROE が資本コストを割り、成長の価値が薄れるので、上限の 8 割 4 分 の 10.5 倍に置いた。
確率:NTT側が発注価格を抑える動きと、システムの採算改善の失敗が重なる筋書き。実績が少なく、2割に置いた。
悲観 10% 通信投資の縮小で優良会社でなくなる 利益 180 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 841 円1,710 億円
通信投資の縮小で、優良会社ではなくなる。人口減で光回線の工事が縮み、NTTが工事の内製化と省力化を進める。通信キャリアの数量は2割減り、単価も物価並みに上がらない。
データセンターは、海外のクラウド事業者が建物ごと一括で発注する。エクシオの出番は減る。システム部門は、AIが開発の仕事を置き換え、利益率が3%台まで下がる。
営業利益は半分以下になる。自己資本は厚いが、稼ぐ力は資本コストを大きく下回る。株価は純資産の半分まで売られる。買収の失敗が重なれば、さらに悪い。
通信という安定した顧客に頼った事業が、10年かけて静かに縮む。グループの力である、全国の施工網の価値も、今より大きく落ちる。工事会社としての評価は、大きく下がる。
- 通信キャリア:数量 5,000(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 44(1人当たり売上(百万円))→ 売上 2,200 億円・営業利益 121 億円。通信キャリア
- 都市インフラ:数量 5,800(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 45(1人当たり売上(百万円))→ 売上 2,610 億円・営業利益 104 億円。都市インフラ
- システムソリューション:数量 3,800(担当人数(人、推定))× 価格 66(1人当たり売上(百万円))→ 売上 2,508 億円・営業利益 75 億円。システムソリューション(機器販売の反動で1人当たり売上は物価並みに上がらない)
倍率:通信投資が縮み NTT の内製化とシステム部門の AI 化で営業利益が半分以下に落ちた構造的な負け筋で、純利益は 180 億円まで細る。ROE が k 8.00% 以下なので上限は 1÷k = 12.5 倍。悲観は、やや悲観よりさらに構造的に負けた姿なので、倍率をやや悲観(10.5 倍)より高くせず、その 9 割の 9.5 倍に置いた。余った現金は悲観では今の5割に減るとみて、戻り方 0.5 を掛けた 25 億円を含む。時価総額 1735 億円(全体の PER に直して 9.6 倍)。
確率:顧客がNTTグループに偏る会社で、内製化・投資縮小・海外勢の台頭が起きれば構造的に負ける。1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
通信キャリア
NTT東西・NTTドコモ・他の携帯会社向けの通信工事。光回線の工事、基地局の建設、つながりにくさの解消工事。2026年3月期から会社は「通信インフラ」へ名称を改めた。
| 数量施工に当たる人数(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,000 | 37 | 2,557 | 233 |
| 10 年後 中立 | 6,300 | 49 | 3,084 | 278 |
取り方:2026年3月期の決算短信の値(売上2,557億円・営業利益233億円)。連結従業員17,751人を売上と事業の性格で配分し、通信キャリア7,000人とした(配分は推定)。人数は実質、1人当たり売上は名目で物価並みに上がる想定。
都市インフラ
データセンター・ビル・工場の電気工事、公共の通信工事、EV充電・蓄電池・電力の自営線。2026年3月期から会社は「社会インフラ」へ名称を改めた。
| 数量施工に当たる人数(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,500 | 38 | 2,485 | 165 |
| 10 年後 中立 | 7,300 | 51 | 3,740 | 273 |
取り方:2026年3月期の決算短信の値(売上2,485億円・営業利益165億円)。人数は6,500人と配分した推定。数量は実質(人)、1人当たり売上は名目で物価並みに上がる想定。データセンター向けが伸びる部門。
システムソリューション
文教・自治体向けのシステム構築、機器販売、ERP、生成AI関連、海外のリファービッシュなど。
| 数量担当人数(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,251 | 67 | 2,836 | 122 |
| 10 年後 中立 | 4,500 | 77 | 3,465 | 243 |
取り方:2026年3月期の決算短信の値(売上2,836億円・営業利益122億円)。人数は4,251人と配分した推定。機器販売が売上に入るため1人当たり売上は高く、Next GIGAの反動で薄まる(価格が物価並みに上がらない理由)。
リスクと懸念
NTTグループへの依存
通信キャリアの利益は、NTTグループと携帯各社の設備投資に連動する。社内取締役8人のうち7人がNTTグループ出身との指摘もあり、関係は深い。NTTが内製化や発注の絞り込みに動けば、最も利益率の高い部門が一度に崩れる。分散の効かない構造的なリスクだ。
特需に支えられた今の利益
2026年3月期の増益には、学校向け端末の更新特需と携帯の通信品質改善工事が入っている。特需は2027年3月期に反動で減り、会社も売上を7,500億円と見込む。今の利益を「いつもの水準」と読むと、見立てを誤る。
システム部門の利益率の改善が届かない
2030年度に利益率を4%台から8.6%へ上げる計画は、実績のない水準だ。機器販売が減れば売上も縮む。AIによる開発の効率化で人月単価が下がる恐れもあり、改善の道のりは平らではない。会社の前の計画も、利益率の目標に届かなかった。
人手不足で数量を増やせない
連結従業員は約1.8万人で、工事の量は人数で決まる。残業規制が強まった2024年以降、技能者の確保は難しい。電気分野は年40人の採用を掲げるが、他の建設会社との奪い合いになる。受注があっても施工できず、人件費の上昇が利益率を削る。
データセンターの需要の振れと施工力の不足
国内のデータセンター投資は急拡大しているが、海外の事業者が建物ごと発注する例や、投資の延期もありうる。エクシオは大規模な空調の施工力が不足しており、元請けを取れない案件も出る。需要の波と、足りない力の両方を抱える。
買収の実行と資本効率
5年で約1,000億円を買収と出資に使う方針だが、買収先は示されていない。高い価格で買えばROEが下がり、のれんの償却が利益を削る。買わなければ資本効率の改善は遅れる。規律ある買収を続けられるかが、ROE12%の目標を分ける。
ガバナンスの独立性
2026年6月、オアシスの関連ファンドが社外取締役の提案をした。賛成は4.8%で否決されたが、総会後に独立社外取締役の比率は50%に上がった。変化の途上で、資本配分の規律が弱まるリスクは完全には消えていない。
今後の分かれ目
- NTTグループが通信工事の内製化や発注の削減を打ち出した時
- 通信キャリアの数量が大きく減り、グループの現金を生む柱が崩れる。株価は純資産を目安に売られ、10年の悲観の筋書きに近づく。
- システム部門の営業利益率が2027年度以降も5%に届かない時
- 会社の2030年度の目標は遠のく。中立より悲観寄りに進み、倍率は12倍を割る方向へ動く。
- データセンター向けの受注が、約700億円を大きく上回って積み上がった時
- 都市インフラの利益が全社を押し上げ、強気の筋書きに近づく。利益率が8%台に乗れば、倍率の評価も上がる。
- 空調を持つ会社を買収し、総合サブコンへ近づいた時
- 取りこぼしていたデータセンターの案件を取れるようになり、都市インフラの数量が増える。ただ買収価格が高ければ、ROEが下がり、評価は上がらない。
- 大型の買収を高い価格で決めた時
- ROEが下がり、のれんの償却が利益を削る。中立の利益水準を下回る恐れがある。
- TOB(公開買い付け)で買収された時
- 買い付け価格は今の時価総額に上乗せされるのが普通で、筋書きの上振れ要因になる。可能性は低いと見て、確率には織り込んでいない。
見ておくもの
- 通信キャリア・都市インフラ・システムの3部門ごとの営業利益率(特にシステムが5%を超えるか)
- データセンター関連の受注額と、大規模空調の施工体制(買収・採用)
- NTTグループ・携帯各社の設備投資の動きと、通信キャリアの受注
- Next GIGA反動後の売上(2027年3月期計画の7,500億円)と受注の質
- 総還元性向6割・配当の目安4.5%の実行と、自社株買いの規模
- オアシスなど株主の動きと、取締役会の独立性(独立社外取締役の比率)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE約8〜12%と長期の成長率4%から正当化PERを出し、上限の約84〜97%に置いた(中立は95%)。今のPER17倍は基準にしていない。中立のPERは資本コストの逆数(12.5倍)を下回らせず、結果として中立の時価総額は今より2割ほど高いが、確率で重みを付けた価値は悲観側の厚みで今を1割ほど下回る。k は基本7.5%+quality0.5%=8.0%、悲観は谷の利益の稼ぐ力(PER上限1÷k)を上限に、やや悲観より高くしない9.5倍で測り、谷のPBRは使っていない。利益の山と特需を平均へ戻した帰結で、株価に寄せた数字はない。純有利子負債が時価総額の約18%あるので、余った現金は立てていない。新リース会計基準は2028年3月期から適用され、営業利益が少し増え純有利子負債が増えるが、10年後は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。