結論
コムシスホールディングスは、NTT系の通信工事で国内最大級の持株会社だ。光回線や携帯基地局の工事を主力に、データセンターや上下水道の設備、ITサービスまで手を広げている。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業の質は悪くない。しかし稼ぎが数量ではなく単価で伸びる会社に、今の PER 17 倍台は高い。
強みは顧客との結びつきの深さだ。NTT東西やドコモの工事を長年担い、現場の人手と施工ノウハウを抱える。2026年3月期は営業利益が過去最高の509億円に達し、自己資本比率は70%を超えた。借金より現金が多い。
弱みは需要の天井だ。人口が減る国で、光回線の工事量は伸びにくい。人手不足で仕事を増やすのも難しい。今の利益率はすでに歴代最高水準にある。
10年を通すと、売上は単価の上昇で名目で伸びる。ただ利益率が今より大きく上がる姿は描きにくい。中立の筋書きでは、時価総額は10年後でも今より1割弱高い(約6,900億円)にとどまる。悲観側の確率を厚くした重み付けでは、今より1割半ほど低い。
株主還元は厚い。総還元性向70%を掲げ、自社株買いも続ける。それでも、稼ぎの伸びが穏やかな会社に高い倍率はつけにくい。やや割高という判断の最大の理由はここにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、コムシスは「悪くない預金」のような会社だ。毎年きちんと現金を稼ぎ、その大半を株主に返す。事業が消える心配は小さい。ただ、預金より増える見込みが大きいわけではない。
10年後にもこの事業はある。通信設備は誰かが敷き、直し続ける。だが堀は広がらない。顧客は少数で、競合は同じ出自だ。今より強くなると見る材料は、データセンター関連と情報システムに限られる。
オーナーの手元に残る利益は、純利益の3割ほどだ。残りは自社株買いと配当で戻る。設備投資が軽いので、利益の大半が現金になる点は好ましい。
気になるのは、いまの利益が歴代最高の水準にあることだ。人手不足による単価転嫁と、ドコモ向けの品質改善工事が重なった。この山が続くかどうかは読みにくい。
安全域を考えると、今の値段は薄い。純現金が時価総額の約6%あっても、それが支えになるほどではない。筆者なら、10年平均のPERに近い水準まで下がるのを待つ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、通信設備の工事を受け持つことにある。NTT東日本・西日本、NTTドコモ、そして他の通信会社が顧客だ。光ファイバーの敷設、局舎内の機器工事、携帯基地局の建設や品質改善が中身になる。
グループは地域ごとの工事会社の集合体だ。連結売上の半分強を中核の日本コムシスが占め、NDS、ツウケン、トーシステム、シスケン、北陸電話工事などの地域・専門の工事会社が続く。ここでは仕事の性格が近い会社を束ね、通信キャリア系、社会システム・設備系、ITソリューションの3つに分けて見る。
通信キャリア系は売上の6割弱を占め、利益率は7%台後半だ。社会システム・設備系は道路や上下水道、データセンター内の電気・空調、再エネの工事などで、売上は4割弱。利益率は8%前後になる。
ITソリューションは売上こそ小さい。ただ2026年3月期は売上が約7割伸びた。公共や教育向けの情報システムが好調で、利益率も10%を超えた。グループで最も勢いのある部分だ。
連結従業員は約1.8万人。工事は人手がすべてだから、売上は「人数×1人当たりの売上」でほぼ決まる。人数は簡単に増えず、伸びは単価に頼る。この構造が、成長の限界であり、同時に利益の安定感でもある。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、堀というより「関係の深さ」にある。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。NTT系の通信工事は、長い取引と施工品質の信頼で成り立つ。新しい会社が割って入るのは難しい。
ただ、その堀は2つの意味で狭い。ひとつは顧客が少数であること。NTTグループの設備投資の方針が変わると、売上がまとめて動く。もうひとつは競争相手が同じ出自の会社であること。エクシオグループ、ミライト・ワンも似た顧客を持ち、価格で絶対的な力は持てない。
資本の使い方は堅実だ。設備投資が軽く、利益の7割を配当と自社株買いで返す。自己資本比率は7割で、事業に要らない現金が積み上がることもない。
弱いのは収益力だ。営業利益率は8%台で、過去には4%台に落ちた年もある。ROEは9%台で、資本コストを2%ほど上回る程度にとどまる。稼ぐ力が高いから高い倍率がつく会社ではない。
筆者が好むのは、競争が緩く、伸ばさなくても現金が出る会社だ。コムシスはこの条件を半分だけ満たしている。出る現金は安定している。だが伸びの余地は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
通信工事は、成熟した国内需要と、新しい投資の波が混ざる市場だ。光回線はほぼ行き渡り、新規の敷設は減っていく。その代わりに、老朽設備の更新、携帯の品質改善、データセンター間をつなぐ光網の工事が増えている。
需要の大きな追い風は、データセンターと次世代通信だ。NTTは2028年3月期までの5年間で、IOWNやデータセンターなどの成長分野に約8兆円を投じる計画を持つ。国内のデータセンター市場も、2028年に5兆円規模へ拡大するとの見方がある。
ただ、その恩恵を最も受けるのは、建物の電気・空調を含めて一括で請けられる会社だ。通信工事だけの会社は、波及を受ける側にとどまりやすい。
競争は寡占に近い。通信工事の元請は、コムシス、エクシオグループ、ミライト・ワンの大手3社が中心で、売上はエクシオが約7,900億円、コムシスが約6,300億円と、近い規模にある。同じ顧客を取り合うので、大幅な値上げはしにくい。
最大の制約は人手だ。2024年の残業規制以降、技能者の確保が難しくなった。工事量を増やすには人を増やすしかなく、増やせないなら単価で稼ぐことになる。業界全体で単価転嫁が進んでおり、この数年の増益はその表れだ。
資本政策と M&A
株主還元はこの会社の目玉だ。2030年ビジョンでは、総還元性向70%を目安に、毎年の増配と機動的な自社株買いを掲げる。6年間の還元総額は1,500億円の計画だ。2026年3月期は配当と自社株買いで約254億円を返し、2026年5月にも上限110億円の自社株買いを決めた。
成長投資は6年で2,000億円以上を見込み、人材・DX・脱炭素に加えてM&Aも使う。ただ具体的な買収先は示されていない。グループはもともと合併と買収で大きくなってきた。地域の工事会社を取り込む動きは、今後も続くとみる。
株主構成では、香港の運用会社オアシス・マネジメントが2026年5月時点で6.3%を持つ。株主提案をしたという確認はできていない。ただ、手元の現金と低いROEは、資本効率を求める投資家に狙われやすい条件だ。
政策保有株は毎年取締役会で点検し、意義が薄いものは減らす方針だ。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。純資産への上乗せは見込まず、安全域の側に回した。
2026 年 5 月決議の自社株買い(110 億円)のうち実行済みの約 80 億円(株数減から推定)は株数と自己資本の起点に反映したため、10 年の還元からは除いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぎの質が変わりつつある。通信工事だけの会社から、データセンターと情報システムを抱える会社へ移っているからだ。2026年3月期にITソリューションの売上は約7割伸び、利益率は10%を超えた。この部分が育てば、全社の利益率は過去最高をさらに更新できる。
人手不足は逆風ではなく追い風になる。工事ができる会社が限られるので、単価を上げやすい。大手3社の寡占は崩れにくく、2024年問題以降は、業界全体で価格転嫁が進んでいる。
NTTは次世代光網IOWNとデータセンターに大きな投資を予定している。局舎や光網の工事は、国内の通信工事会社でなければ担えない。計画が動けば、受注の山は数年続く。
資本政策にも余地がある。純現金があり、還元性向は70%を掲げる。株主から資本効率を問う声が強まれば、自社株買いはさらに増えるだろう。M&Aで地域の工事会社を取り込む手も残る。利益が10年で4割増え、ROEが12%に近づけば、倍率も16倍近くまで評価される。
慎重な見方
伸びる材料は、すでに今の利益と株価に入っている。営業利益率8%台は、歴代最高水準の山だ。人手不足による単価転嫁とドコモ向けの品質改善工事が重なった結果で、これが続く保証はない。
顧客が少数なのが最大の弱点だ。NTTグループの設備投資が一服すれば、受注は一気に減る。携帯の品質改善は一巡する日が来る。光回線は人口減で数量が伸びない。IOWNやデータセンターは見込みが先行し、実際の工事量は読みにくい。
競合も同じ出自の会社で、大型案件では価格が叩かれやすい。データセンターの建物側の工事は、ゼネコンや電気工事大手のほうが強い。コムシスが取れるのは、その一部にとどまる。
人を増やせない以上、売上は単価の上昇に頼る。しかし単価を上げても、人件費も同じ速さで上がる。利益率が今より大きく上がる姿は描きにくい。ROEも9%台と資本コストを2%ほど上回る程度で、PER17倍を支える稼ぐ力にはない。
高い倍率がつくのは、数量が伸びる会社だ。コムシスは単価の会社であり、その差が株価の評価に現れる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。成長の材料が確かにあるのは認める。だが、今の利益はすでに高い山にあり、10年先のROEも資本コスト(7.5%)を2%ほど上回る程度だ。確率は中立に厚く置き、悲観側の確率を少し多めにした。強気の筋書きでも、今の値段を大きく上回る姿にはならない。
データセンターとIT部門の成長は本物だが、全社の利益に占める割合はまだ小さい。通信工事の数量が人口とともに細る力のほうが、当面は大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,611 円7,554 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,645 円3,022 億円)。 今の値に割り戻すと 5,147 円5,881 億円、今との差 −8.2%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 9,628 円1.10 兆円 | 3,407 円3,893 億円 | +132.4% | +8.8% | 1,564 円1,787 億円 |
| やや楽観 | 25% | 8,110 円9,267 億円 | 2,986 円3,412 億円 | +97.8% | +7.1% | 2,774 円3,170 億円 |
| 中立 | 35% | 6,956 円7,949 億円 | 2,679 円3,061 億円 | +71.8% | +5.6% | 3,372 円3,853 億円 |
| やや悲観 | 20% | 3,989 円4,558 億円 | 2,200 円2,514 億円 | +10.3% | +1.0% | 1,238 円1,414 億円 |
| 悲観 | 8% | 2,442 円2,790 億円 | 1,395 円1,594 億円 | −31.6% | −3.7% | 307 円351 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,611 円7,554 億円 | 2,645 円3,022 億円 | +65.0% | +5.1% | 9,255 円1.06 兆円 |
今の株価時価総額 5,609 円6,409 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% データセンターと情報システムで稼ぐ会社に変わる 利益 633 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 9,628 円1.10 兆円
10年後、コムシスは通信工事だけの会社ではなくなっている。ITソリューションの売上は今の2倍を超え、データセンター関連と情報システムの利益が全社を押し上げる。
人手不足は続く。だから単価を物価以上に上げられる。営業利益率は9%に届き、ROEは12%近くになる。自社株買いで、株主は還元の厚みを実感する。
M&Aで地域の工事会社を加え、グループは売上1兆円に近づく。国内の人口が減る中でも、この会社だけは数量を保つ。ただ、そこまで揃う確率は高くない。
鉄道や上下水道の更新需要も追い風になる。人材への投資が実り、1人当たりの売上が物価を上回って伸びる。
- 通信キャリア系:数量 10,609(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 50(1人当たり売上(百万円))→ 売上 5,294 億円・営業利益 455 億円。通信キャリア系
- 社会システム・設備系:数量 7,758(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 49(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,834 億円・営業利益 345 億円。社会システム・設備系
- ITソリューション:数量 1,600(担当人数(人、推定))× 価格 44(1人当たり売上(百万円))→ 売上 701 億円・営業利益 81 億円。ITソリューション
倍率:事業の純利益 633 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.38 倍、時価総額 11,002 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:IT部門の成長と人手不足による単価転嫁が続く必要があり、強気の筋書きとして1割強に置いた。
やや楽観 25% IT部門が育ち利益率が少し上がる 利益 562 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 8,110 円9,267 億円
IT部門が育ち、利益率が少し上がる。通信キャリア向けは、数量が横ばいで、単価が物価並みに上がる。
社会システム・設備系では、データセンターと上下水道・防災の設備工事が10年で12%ほど増える。ITソリューションの売上は4割増える。
営業利益率は8%台半ばに上がり、営業利益は800億円近くになる。還元は純利益の7割強。国内の需要が緩やかに伸びる、穏やかな強気の筋書きだ。大きな新規事業は要らない。
人手不足は続く。単価の転嫁と、育成への投資が実を結ぶ。ただ数量は人口に縛られ、大きくは増えない。
IT部門の売上が全社に占める割合は1割に近づく。通信工事の安定した現金が、その成長を支える。10年後のROEは10%台半ばに届く。
- 通信キャリア系:数量 10,300(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 49(1人当たり売上(百万円))→ 売上 5,066 億円・営業利益 415 億円。通信キャリア系
- 社会システム・設備系:数量 7,241(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 49(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,527 億円・営業利益 300 億円。社会システム・設備系
- ITソリューション:数量 1,400(担当人数(人、推定))× 価格 43(1人当たり売上(百万円))→ 売上 600 億円・営業利益 66 億円。ITソリューション
倍率:事業の純利益 562 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.49 倍、時価総額 9,267 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンターの工事と情報システムが育ち、利益率が少し上がる筋書き。起こりやすさは2割台半ばと見る。
中立 35% 単価で伸びる、成熟した会社 利益 505 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 6,956 円7,949 億円
単価で伸びる、成熟した会社になる。人口が減り、通信工事の数量は3%ほど減る。一方で人手が足りない分だけ単価が上がり、売上は物価並みに伸びる。
社会システム・設備系は、データセンターや上下水道で数量が5%増える。ITソリューションの売上は約5割増える。営業利益率は8%台前半にとどまり、営業利益は700億円台に乗る。
還元は純利益の7割を続ける。自己資本はあまり増えず、ROEは9%台にとどまる。今の姿の延長線にある、驚きの少ない10年だ。
NTTグループの発注構造や競合との力関係は、大きく変わらない。人手の制約で、数量の大きな成長は望めない。
- 通信キャリア系:数量 9,991(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 48(1人当たり売上(百万円))→ 売上 4,841 億円・営業利益 382 億円。通信キャリア系
- 社会システム・設備系:数量 6,788(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 48(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,259 億円・営業利益 264 億円。社会システム・設備系
- ITソリューション:数量 1,250(担当人数(人、推定))× 価格 42(1人当たり売上(百万円))→ 売上 528 億円・営業利益 54 億円。ITソリューション
倍率:事業の純利益 505 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.74 倍、時価総額 7,949 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は横ばい、利益率は今の水準というのがもっとも起こりやすい。確率は3割台半ばとした。
やや悲観 20% 価格競争で利益率が崩れる 利益 397 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 3,989 円4,558 億円
価格競争で利益率が崩れる。NTTグループが工事の発注価格を抑え、通信キャリア向けの数量は1割減る。単価の上昇も鈍る。
大型のデータセンター案件では、ゼネコンや電気工事大手が元請けを握る。コムシスの取り分は下請けに近づく。営業利益率は7%台に戻り、営業利益は550億円前後になる。
人件費だけは上がり続ける。還元は続くが、増配の余地は小さい。成熟した下請け色の強い会社に戻る姿だ。
人手不足で単価は上がるものの、競合との値引き合戦が利益率を削る。10年先の稼ぐ力は、今より弱くなっている。
通信キャリア向けの数量減を、他の領域で埋めきれない。自社株買いを続けても、1株当たりの利益の伸びは限られる。
- 通信キャリア系:数量 9,270(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 47(1人当たり売上(百万円))→ 売上 4,358 億円・営業利益 305 億円。通信キャリア系
- 社会システム・設備系:数量 6,142(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 47(1人当たり売上(百万円))→ 売上 2,862 億円・営業利益 206 億円。社会システム・設備系
- ITソリューション:数量 1,050(担当人数(人、推定))× 価格 39(1人当たり売上(百万円))→ 売上 412 億円・営業利益 35 億円。ITソリューション
倍率:ROE 7.77%(純利益 397 億円 ÷ 自己資本 5,111 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(ROE 7.77% − k)= 7.63%、長期の成長率 g 4% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 13.6 倍。やや悲観は伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 8 割 の 10.9 倍に置いた。
確率:NTT側が工事費を抑える動きと、今の山の利益率の平均回帰が重なる筋書きで、2割に置いた。
悲観 8% 通信投資の縮小で優良会社でなくなる 利益 203 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 2,442 円2,790 億円
通信投資の縮小で、優良会社ではなくなる。人口減で光回線の工事が縮み、NTTが工事の内製化や省力化を進める。通信キャリア向けの数量は3割減り、単価も物価並みに上がらない。
データセンターは、海外のクラウド事業者が建物ごと一括で発注する。コムシスの出番は減る。営業利益率は4%台まで下がり、利益は半分以下になる。
自己資本は厚い。だが稼ぐ力は資本コストを大きく下回る。株価は純資産の半分まで売られる。
人口の減少、顧客による内製化、海外勢の台頭が同時に重なる。地域の工事会社を束ねる強みも、薄れていく。
通信という安定した顧客に頼った事業が、10年かけて静かに縮む。工事会社としての価値は、今より大きく落ちる。
- 通信キャリア系:数量 7,210(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 43(1人当たり売上(百万円))→ 売上 3,128 億円・営業利益 141 億円。通信キャリア系
- 社会システム・設備系:数量 5,172(施工に当たる人数(人、推定))× 価格 43(1人当たり売上(百万円))→ 売上 2,228 億円・営業利益 111 億円。社会システム・設備系
- ITソリューション:数量 900(担当人数(人、推定))× 価格 35(1人当たり売上(百万円))→ 売上 313 億円・営業利益 19 億円。ITソリューション
倍率:通信投資が縮み NTT の内製化で光回線の工事が細り、営業利益率が 4% 台に落ちた構造的な負け筋。純利益は 203 億円で、ROE が k 以下なので稼ぐ力は PER 上限 1÷k で約 2,700 億円。売れる資産は総資産 5,660 億円を強制売却で 8 割しか回収できず、負債 1,660 億円は全額払うとして残る約 2,860 億円と同程度で、大きい方の約 2,860 億円を、今の自己資本 3999 億円に対する PBR 0.72 倍(時価総額 2879 億円)に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.6977 倍・時価総額 2,790 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:顧客が少数の会社で、NTTの内製化や投資縮小が起きれば、構造的に負ける。1割弱を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
通信キャリア系
NTT東西・ドコモ・他の通信会社向けの通信設備工事。日本コムシス、サンワコムシス、北陸電話工事など。光回線、基地局、局舎内機器の工事と品質改善。
| 数量施工に当たる人数(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,300 | 36 | 3,724 | 286 |
| 10 年後 中立 | 9,991 | 48 | 4,841 | 382 |
取り方:グループ別の2026年3月期の売上・営業利益(日本コムシス3,205億円・261億円、サンワコムシス328億円・9億円、北陸電話工事191億円・17億円)を合計して置いた。連結従業員17,765人を売上に比例して割り振り、人数と1人当たり売上に分けた(配分は推定)。人数は実質、1人当たり売上は名目で物価並みに上がる想定。
社会システム・設備系
道路・上下水道・防災、データセンター内の電気・空調、再エネなど、通信以外の設備工事と専門会社。トーシステム、ツウケン、NDS、シスケンなど。
| 数量施工に当たる人数(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,465 | 35 | 2,282 | 187 |
| 10 年後 中立 | 6,788 | 48 | 3,259 | 264 |
取り方:トーシステム385億円・31億円、ツウケン600億円・62億円、NDS946億円・73億円、シスケン333億円・21億円に持株会社分を合わせ、売上2,282億円・営業利益187億円と置いた。人数は売上に比例して割り振った推定。数量は実質、1人当たり売上は物価並み。
ITソリューション
コムシス情報システムが担う公共・教育・民間向けの情報システム開発と運用、クラウド・AI関連。
| 数量担当人数(人、推定) | 価格1人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 30 | 302 | 32 |
| 10 年後 中立 | 1,250 | 42 | 528 | 54 |
取り方:コムシス情報システムの2026年3月期の売上302億円・営業利益32億円。人数は売上より人手が多い業態として1,000人と置いた推定。数量は実質、1人当たり売上は名目。
リスクと懸念
NTTへの依存
売上の約4分の1がNTT東西向けとされ、ドコモなど他の通信会社を含めると、通信会社の設備投資に収益のほとんどが連動する。NTTが工事の内製化や発注の絞り込みに動けば、受注が一度に減る。分散の効かない構造的なリスクだ。安定した顧客だが、交渉力は相手が握る。
今の利益が山にある可能性
2026年3月期の営業利益率8.1%は、過去20年でも最高水準にある。人手不足による単価転嫁と、ドコモ向け品質改善工事が重なった結果だ。品質改善が一巡し、競争が戻れば、利益率は7%台前半へ戻りうる。平均の利益率は7%台で、今は平均より1ポイント高い。
人手不足で数量を増やせない
工事は人手がすべてで、連結従業員は約1.8万人にとどまる。残業規制が強まった2024年以降、技能者の確保は難しい。受注があっても施工できないので、売上の伸びは単価だけに頼ることになる。採用と育成の費用も重い。採用の競争は他の建設会社とも重なり、賃金の上昇圧力が続く。
同じ出自の競合との競争
エクシオグループやミライト・ワンは、同じNTT系の源流を持ち、顧客も重なる。大型案件では価格で競り合う。データセンターの建物側の工事は、ゼネコンや電気工事大手が元請けを握りやすく、コムシスの取り分は限られる。値下げ競争になれば、利益率は一気に削られる。
データセンターの需要の振れ
国内のデータセンター投資は急拡大している。ただ海外の事業者が建物ごと一括で発注する例や、立地が海外へ移る可能性もある。計画の遅れや凍結で、期待された工事量が出ない年は必ず来る。景気の影響も受けやすい。筆者は、ここが最も見通しにくい部分だと考える。
M&Aと資本効率
成長投資2,000億円以上の枠でM&Aを使う方針だが、買収先は示されていない。高い価格で地域の工事会社を買えば、ROEが下がる。一方、買収をしなければ現金が積み上がり、資本効率を問う株主の圧力が強まる。規律ある買収を続けるかどうかが、今後の資本効率を決める。
新リース会計基準
2028年3月期から、賃借の資産と負債が貸借対照表に載る。自己資本比率や純現金の見え方が変わる。営業の稼ぎは変わらないが、見かけの財務の強さは下がる点に注意が要る。数字の形が変わっても、本質価値は変わらない。この点は同業の比較でも同じ形にそろえて見る必要がある。
今後の分かれ目
- NTTグループが通信工事の内製化や発注の削減を打ち出した時
- 通信キャリア系の数量が大きく減り、利益は半分近くまで落ちる。株価は純資産を目安に売られ、10年の悲観の筋書きに近づく。
- データセンター向け工事の受注が、会社の見込みを大きく上回って積み上がった時
- 社会システム系とITの利益が全社を押し上げ、強気の筋書きに近づく。利益率が8%台後半に乗れば、倍率の評価も上がる。
- ドコモ向けの品質改善工事が一巡し、営業利益率が7%台に戻った時
- 今の利益が山だったことが確認される。中立の筋書きより悲観寄りに進み、倍率も12倍を割る方向へ動く。
- 大型M&Aを高い価格で決めた時
- ROEが下がり、資本効率の面で評価が落ちる。のれんの償却も利益を削るので、中立の利益水準を下回る恐れがある。
- オアシスなど大株主が資本効率の改善を強く求め、自社株買いを大幅に増やした時
- 還元性向が7割を超え、1株当たりの価値は上がる。ただ事業の稼ぎは変わらず、倍率は大きくは上がらない。
- TOB(公開買い付け)で買収された時
- 買い付け価格は今の時価総額に上乗せされるのが普通で、筋書きの上振れ要因になる。ただ可能性は低いと見て、確率には織り込んでいない。
見ておくもの
- NTT東西・ドコモの設備投資計画と、決算説明資料での通信キャリア向けの受注動向
- 営業利益率の推移(8%台前半を保つか、7%台に戻るか)
- データセンター関連工事の受注額と、ITソリューションの売上の伸び
- 連結従業員数と1人当たり売上(人手の確保と単価の転嫁)
- 自社株買いの規模と総還元性向(70%を超えるか)
- 大口株主の動き(オアシス・マネジメントの持株比率と株主提案の有無)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE約9〜12%と成長率3.5〜4%から正当化PERを出し、上限の約9〜9.5割(強気・中立)・8割台(やや悲観)に置いた。今のPER17倍台を基準にはしていない。中立のPERは上限の9割に置き、資本コストの逆数(約13.3倍)の床は上回った。資本コストは基本7.5%にquality0%(循環−0.25%と寿命+0.25%の足し引き)を足した7.5%で、結果、中立は10年後に今より1割弱高い時価総額になる。悲観は総資産の8割回収・負債全額払いで残る売れる資産(約2,860億円)で測り、谷のPBRは使っていない。これは歴代最高水準の利益率を平均へ戻して置いたことの帰結で、株価に寄せて動かした数字はない。純現金389億円は時価総額の約6%で1割に満たないため、余った現金は分けていない。新リース会計基準は2028年3月期から適用され、営業利益が少し増え純有利子負債が増えるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。持ち合い株の評価差額金は配当が純利益に入っているので余り資産に足していない(二重を消した)。今の株価から逆算した値ではない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。