結論
レイズネクストは、石油・化学・ガスの工場やタンクの定期修理、補修、新設を請け負う会社だ。旧・日立プラントサービスと JX エンジニアリングが 2019 年に合併してできた。結論から言えば、筆者は今の値段をやや割高と見る。一番の理由は、10 年で利益がほとんど伸びないと考えるからだ。
事業の質は悪くない。2026 年 3 月期は営業利益 147 億円で過去最高に近い。赤字の年は 20 年ほど見当たらず、財務も堅い。保全の仕事は設備が動く限り毎年出る。
ただし、仕事の 4 割は筆頭株主の ENEOS グループから来る。国内の製油所は再編と縮小が続く。筆者が一番気にしているのは、この偏りだ。
成長は、物価の上昇分を除くとほとんど見込めない。中立の筋書きで 10 年後の時価総額は、配当を足しても今より 2 割ほど少ない価値になる。最も強い筋書きでも今の 1.5 倍強にとどまる。
悪い会社ではない。配当を厚く払い、財務は堅い。ただ、その良さはすでに値段に入っていると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業とまでは呼べないが、悪くない会社だ。止まれない保全の仕事は、10 年後もある。稼いだ利益の 6 割を配当にする姿勢も、株主に優しい。
足りないのは成長と、値段を自分で決められない点だ。実質の工事量は増えにくく、売上の伸びは物価の分にほぼ尽きる。稼ぐお金のうち、再投資が要る分は少ない。そこは評価できる。
安全域がもう 1 つの問題だ。今の PER は 15 倍台で、10 年後の事業の価値より高い。純現金は少なく、現金の厚さで安全域は取れない。
ENEOS グループ向けが 4 割という偏りは、安全域を削る。見合う値段は、PER で 12 倍台、時価総額で 1,250 億円前後と見る。
つまり、良い会社を普通の値段で買うには、今は少し高い。待てるなら、慌てて持つ理由はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、プラントの保全だ。製油所や化学工場は数年に一度、設備を止めて点検・補修する定期修理をする。この仕事を長年の顧客から繰り返し受ける。売上のおよそ 7 割は石油・石油化学向けだ。
もう 1 つは、新しい設備の建設とタンクだ。LNG や液化水素のタンクは、2025 年に川崎重工と協業の覚書を結んだ。半導体や高機能化学材の工場の仕事も取る。
顧客は、ENEOS グループが完成工事高の約 4 割を占める。ENEOS ホールディングスは議決権の 28.77% を持つ筆頭株主でもある。ほかに光通信が 7.49% を持つ。
開示資料にはセグメントごとの売上と利益が見当たらず、保全と新設の割合は筆者の推定だ。保全が 6 割弱、新設・タンクが 4 割強で、利益の大半は保全が稼ぐと見る。
工事は人が現場に入って進める仕事だ。売上は、人手の確保と 1 人あたりの単価で決まる。大きな機械を売る会社と違い、在庫や設備の投資は軽い。そのため、稼いだお金は配当に回しやすい。拠点は川崎や岩国などの事業所で、現場の人員と技術を抱える。
優良さと弱いところ
優良さの核は、顧客との長い付き合いだ。製油所の設備の癖を知る施工会社は、簡単には替えられない。保全は止まれない仕事で、景気の波を受けにくい。2026 年 3 月期まで赤字は 20 年ほどない。
だが堀、つまり他社がまねできない強みは普通の水準だ。値段は入札や親会社グループとの取引で決まり、自分では決められない。営業利益率は 7〜8% 台で、20 年で 10% を超えたのは 2008〜2010 年の 3 年だけだ。
競合は太平電業、千代田化工建設、日揮、各元売の系列の工事会社だ。保全は準寡占的だが、新設とタンクは競争が厳しい。
財務は堅い。自己資本比率は 75% で、純現金が 58 億円ある。ただ、この現金は工事の資金繰りに要る。余った現金とは見なさない。配当性向を 60% で保つ方針だ。経営は株主に還元する姿勢が強い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保全の需要は、国内の設備の古さと人手不足で支えられる。日本の石油・化学の設備は築 40 年を超えるものが多い。壊れる前に手入れし、省人化する仕事が増える。2024 年問題で人が足りず、値段は上げやすい。
逆風は、国内の石油の需要が人口減とガソリン車の減少で縮むことだ。元売は製油所を統合し、能力を落としている。保全の工事量は、長い目で見れば減る側だ。
新しい仕事の芽はタンクにある。LNG や液化水素の備蓄、バックアップの電源、半導体や高機能化学材の工場だ。経済安全保障と災害への備えが需要を作る。
競争の形は、保全が準寡占、新設が入札だ。太平電業は電力寄りに強く、日揮・千代田化工は海外 EPC が中心で、領域が少し違う。
人手の問題は業界全体で重い。若い職人が少なく、現場の高齢化が進む。施工の機械化や自動溶接、設計のデジタル化に先に取り組んだ会社が、同じ人数でより多く工事を回せる。レイズネクストも中計でこの 3 つを掲げる。ただ、効果が利益率に表れるのはまだ先だ。筆者は、人の確保そのものが成長の上限を決めると見る。
資本政策と M&A
資本政策は株主に優しい。配当は連結配当性向 60% を目標とし、2026 年の中計の見直しで、純資産に対する配当率 7% を下限に加えた。業績が振れても配当が減りにくい。近 5 年の総還元は純利益の 6 割強だ。
自社株買いは 2024 年 3 月期に 18 億円だけだ。政策保有株は純資産の 5.5% まで減っている。2025 年 9 月末から株主優待も始めた。
M&A は中計に書かれていない。大きな買収で価値を壊す心配は小さい。
ENEOS ホールディングスが 28.77% を持つ。TOB の話は聞かれないが、親会社が追加で買い取る可能性は否定できない。ただし、独立性は保たれていると会社は説明する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保全は止まれない仕事で、顧客は簡単に替えられない。設備は古く、人手は足りない。手入れの量と単価は、当面伸び続ける。2026 年 3 月期の営業利益は 147 億円まで来て、会社は中計の目標を 163 億円へ引き上げた。
タンクは新しい成長の柱だ。川崎重工と LNG・液化水素タンクで組み、経済安全保障の備蓄で仕事が出る。受注は 16% 伸び、2027 年 3 月期の第 1 四半期の受注残は前年から 25% 近く増えた。
配当は性向 60%、純資産配当率 7% を下限に置く。財務は堅く、自己資本比率は 75% ある。ROE は 10% 以上を掲げ、達成すれば PER 15 倍は不自然ではない。
ENEOS の傘下という安定した顧客基盤は、受注の見通しの良さにもなる。景気の波を受けにくい分、景気後退でも利益が崩れない。
過去を見ても、赤字の年は 20 年ほどない。人手不足の時代に、現場を回せる会社の価値は上がる一方だ。工事の単価を上げ、利益率を 8% 台に保つ力はすでに証明されている。
慎重な見方
仕事の 4 割は ENEOS グループから来る。国内の製油所は統合と閉鎖が続き、定期修理の量は長い目で減る。親会社の都合で発注が削られれば、他の顧客でその穴は埋まらない。
2027 年 3 月期の予想は営業利益 130 億円で、今期から 1 割以上の減益だ。2026 年 3 月期は特需の面があり、これが利益の天井に近い。20 年で営業利益率が 10% を超えたのは 3 年だけだ。
値段を決める力は弱い。入札で競合と競り、新設は利益率が 5% 台止まりだ。人手不足は値上げの追い風だが、同時に自社の人件費と外注費も上がる。
実質の工事量が増える根拠は薄い。売上の伸びは物価の分だけで、時価総額は大きくなりにくい。今の PER 15 倍台は、この低成長を織り込んでいない。
中計は ROE10% 以上を掲げるが、過去 10 年の ROE の中央値もほぼ 10% だ。目標は新しい挑戦ではなく、今までの延長線にすぎない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠があるが、慎重な見方のほうが強い。工事量が増えないことと、ENEOS グループ向け 4 割という偏りは、数字に出ている事実だ。強気の見方の中心は、受注の伸びとタンクという、これから確かめる話だ。
一方で、赤字のない実績と配当の厚さは、悲観の谷を浅くする。そのため確率は、やや悲観と悲観の合計を 33% とし、慎重な側へ少しだけ寄せた。中立を最も厚く置き、楽観とやや楽観の合計は 27% にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,151 円1,864 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 472 円764 億円)。 今の値に割り戻すと 887 円1,437 億円、今との差 −11.8%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,969 円3,187 億円 | 593 円960 億円 | +154.6% | +9.8% | 179 円290 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,620 円2,622 億円 | 544 円880 億円 | +115.0% | +8.0% | 433 円700 億円 |
| 中立 | 40% | 1,291 円2,089 億円 | 494 円800 億円 | +77.4% | +5.9% | 714 円1,156 億円 |
| やや悲観 | 21% | 647 円1,048 億円 | 432 円700 億円 | +7.3% | +0.7% | 227 円367 億円 |
| 悲観 | 12% | 311 円503 億円 | 278 円450 億円 | −41.5% | −5.2% | 71 円114 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,151 円1,864 億円 | 472 円764 億円 | +61.4% | +4.9% | 1,623 円2,628 億円 |
今の株価時価総額 1,006 円1,629 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 国内の設備更新とタンク新設が重なる 利益 184 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 1,969 円3,187 億円
国内の石油・化学・ガスの設備は古く、安全と省人化のために手入れの量が増える。人手不足で値上げが通りやすくなり、保全の単価は物価を上回って上がる。
タンク事業は、LNG と液化水素の受け入れ設備で川崎重工との協業が実を結ぶ。経済安全保障の備蓄需要も追い風になる。新設の利益率も 7% まで上がる。
会社の中計の目標(営業利益 163 億円)を早めに超え、10 年後は営業利益 250 億円を超える。配当は引き上げが続き、自己資本の増え方は穏やかなまま、ROE は 12% 台に乗る。
この姿では、国内の石油の縮小が思ったより緩やかで、ENEOS グループ向けも落ちない。さらに新しい顧客が増え、依存度は 3 割台まで下がる。
- 保全(定期修理・補修):数量 129(工事量(万人日換算・推定))× 価格 11(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,463 億円・営業利益 154 億円。保全の工事量は微増、値段は物価を上回る1.42倍、利益率10.5%
- 新設・タンク(エンジニアリング):数量 112(工事量(万人日換算・推定)=対象市場 × シェア)× 価格 13(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,431 億円・営業利益 100 億円。タンクと新設の工事量1.35倍、値段1.42倍、利益率7%
倍率:事業の純利益 184 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.32 倍、時価総額 3,187 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:石油・化学の国内設備が老朽化で手入れ増に動き、LNG・液化水素のタンクも取る姿。条件が重なる必要があり 1 割に届かない。
やや楽観 20% 手入れの量は保ち、タンクが育つ 利益 157 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 1,620 円2,622 億円
国内の石油・化学の設備は動き続け、定期修理の量は今の水準を保つ。値段は人手不足で物価をやや上回って上がる。
タンクと新設は、備蓄や半導体・高機能化学材の工場で仕事が増える。利益率は 6% 強まで戻る。
会社の目標どおりに利益が伸び、10 年後の営業利益は 220 億円ほど。配当性向は 60% を守り、ROE は 12% 近くになる。
この姿では、国内の石油向けは少しずつ縮むが、化学・電子材料・備蓄向けの仕事がそれを補う。ENEOS グループ向けは 3 割台後半まで下がり、偏りは和らぐ。大きな失敗はなく、保全の単価が着実に上がる。
- 保全(定期修理・補修):数量 125(工事量(万人日換算・推定))× 価格 11(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,380 億円・営業利益 138 億円。保全の工事量は横ばい、値段1.38倍、利益率10%
- 新設・タンク(エンジニアリング):数量 104(工事量(万人日換算・推定)=対象市場 × シェア)× 価格 12(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,289 億円・営業利益 80 億円。タンクと新設の工事量1.25倍、値段1.38倍、利益率6.2%
倍率:事業の純利益 157 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.7 倍、時価総額 2,622 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保全は底堅く、タンクも着実に伸びる姿。事業が安定している実績から、楽観より厚く置く。
中立 40% 物価なりに伸び、利益率は 7% 台半ば 利益 133 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 1,291 円2,089 億円
保全の工事量は少し減る。製油所の再編で国内の石油向けは縮むが、設備の老朽化と人手不足が手入れの単価を支える。
タンクと新設は、LNG・水素・備蓄向けで工事量が 1 割ほど増える。ただし入札の世界で、利益率は 5% 台半ばにとどまる。
営業利益は 190 億円弱、利益率は 7% 台半ばで、過去の水準に落ち着く。配当性向は 60% 台で、自己資本は緩やかに増える。大きな失敗も成功もない 10 年だ。
ENEOS グループ向けは 4 割近くで変わらず、顧客の偏りも残る。会社の中計の目標は、物価の分を含めれば無理なく達成するが、それ以上は積めない。
- 保全(定期修理・補修):数量 121(工事量(万人日換算・推定))× 価格 11(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,300 億円・営業利益 124 億円。保全の工事量0.97倍、値段1.34倍、利益率9.5%
- 新設・タンク(エンジニアリング):数量 95.5(工事量(万人日換算・推定)=対象市場 × シェア)× 価格 12(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,152 億円・営業利益 63 億円。タンクと新設の工事量1.15倍、値段1.34倍、利益率5.5%
倍率:事業の純利益 133 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.71 倍、時価総額 2,089 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工事量は横ばいに近く、値段だけ物価で上がる姿に収まりやすい。過去 10 年の営業利益率も 7〜8% で安定していた。
やや悲観 21% 国内の石油向けが縮み、価格も競争になる 利益 98 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 647 円1,048 億円
石油元売の国内の製油所は統合と閉鎖が進み、定期修理の工事量が 1 割ほど減る。値段も他の元請けとの競争で、物価に届かない。
タンクと新設は工事量が伸びず、取るために値引きする。利益率は 4% 台に下がる。
営業利益は 140 億円ほどで、今の水準をやや下回る。ROE は資本コストとほぼ同じになり、成長の価値は薄れる。
人手不足で単価は上がるが、元請けどうしの値引き合戦がそれを打ち消す。会社は配当性向 60% を守るので、自己資本はほとんど増えない。大きな失敗はない代わりに、成長もない 10 年になる。
- 保全(定期修理・補修):数量 110(工事量(万人日換算・推定))× 価格 10(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 1,144 億円・営業利益 97 億円。保全の工事量0.88倍、値段1.30倍、利益率8.5%
- 新設・タンク(エンジニアリング):数量 78.9(工事量(万人日換算・推定)=対象市場 × シェア)× 価格 12(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 923 億円・営業利益 42 億円。タンクと新設の工事量0.95倍、値段1.30倍、利益率4.5%
倍率:事業の ROE が 8% 前後で k 7.5% と同じ。成長しても新しく投じるお金の稼ぎは k どまりで、PER は 1÷k の 12.5 倍を下回る水準に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.5 倍・時価総額 1,029 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:製油所の再編が進み、親会社グループ向けの仕事が減る姿。人手不足で売れる値段が伸び悩む。
悲観 12% 構造的に負ける:石油向けの縮小と価格競争 利益 41 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 311 円503 億円
石油元売の国内の精製能力が大きく縮み、定期修理の仕事は 3 割ほど減る。大口の親会社グループ向けが落ちる穴を、他の顧客では埋めきれない。
タンクは参入が続き、価格競争で利益が出ない。一括請負の損失も出る。
営業利益は 60 億円ほどまで落ち、配当は減らす。優良な保全会社の地位を失い、市場は帳簿の 5 割強でしか見ない。
人手不足で値段が上がっても、それを上回る工事量の減少が続く。保全の人員は余り、人件費の重さだけが残る。ROE は 5% を割り、成長の価値は消える。
親会社の発注方針の変更や、地域の拠点の統合も重なり、中計の目標は取り下げられる。
- 保全(定期修理・補修):数量 87.5(工事量(万人日換算・推定))× 価格 9.76(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 854 億円・営業利益 51 億円。保全の工事量0.70倍、値段1.22倍、利益率6%
- 新設・タンク(エンジニアリング):数量 66.4(工事量(万人日換算・推定)=対象市場 × シェア)× 価格 11(1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み))→ 売上 717 億円・営業利益 18 億円。タンクと新設の工事量0.80倍、値段1.20倍、利益率2.5%
倍率:構造的な負けで稼ぐ力は純利益 41 億円(÷k で約 510 億円)しかなく、床は今の自己資本 915 億円に 0.55 倍を掛けた約 500 億円に置いた。純現金と投資有価証券の売れる分は薄く、これが床になる。
確率:国内の石油精製が大きく縮み、親会社グループの発注も落ちて競合に負け続ける姿。10 年で 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
保全(定期修理・補修)
製油所・化学工場などの定期修理と補修を請け負う主力。顧客との長い付き合いで繰り返し受ける。
| 数量工事量(万人日換算・推定) | 価格1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 125 | 8.00 | 1,000 | 100 |
| 10 年後 中立 | 121 | 11 | 1,300 | 124 |
取り方:開示にセグメントの売上・利益が見当たらず、全社 1,745 億円のうち保全を約 1,000 億円と推定した。1 人日あたり 8 万円(資材・外注込み)で割ると約 125 万人日。営業利益率は約 10% と置き、全社の 147 億円と合うよう新設側の利益と合わせた。市場の規模は推定。
新設・タンク(エンジニアリング)
化学・ガス設備の新設、タンク、LNG・液化水素の受け入れ設備などを請け負う。
| 数量工事量(万人日換算・推定)=対象市場 × シェア | 価格1 人日あたりの売上(万円・名目。資材と外注込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.8 | 9.00 | 745 | 47 |
| 10 年後 中立 | 95.5 | 12 | 1,152 | 63 |
取り方:全社 1,745 億円から保全の推定 1,000 億円を引いた約 745 億円。国内の対象市場(化学・ガス設備の新設とタンク)を実質で年 6,000 億円前後と推定し、シェアを 12% 強と見た。1 人日あたり 9 万円で約 83 万人日。営業利益率は約 6% と置いた。
リスクと懸念
ENEOS グループ向けへの偏り
完成工事高の約 4 割が ENEOS グループだ。国内の製油所の統合や閉鎖、親会社の投資の絞り込みは、そのまま受注の減少になる。他の顧客で穴を埋めるには時間がかかる。
国内の石油需要の縮小
人口の減少とガソリン車の減少で、国内の石油の需要は長期に縮む。製油所が減れば定期修理の量も減る。売上の約 7 割が石油・石油化学向けで、影響は大きい。
人手不足と人件費の上昇
2024 年問題で職人が足りない。値上げは通りやすいが、自社の人件費と外注費も上がる。工事を取れても人が足りず、受けられない恐れがある。
一括請負の損失
新設とタンクは、固定の金額で請け負う契約が多い。資材高と工期の遅れを自社が背負うと、一気に赤字になる。大型案件が増えるほど、この危険は大きくなる。
利益の山を高く見るリスク
2026 年 3 月期は営業利益率が 8.4% と、過去 20 年でも高い。2027 年 3 月期の会社予想は 7.4% に下がる。山の利益を基準にすると、倍率を高く見すぎる。
親会社の保有と再編
ENEOS ホールディングスは 28.77% を持つ。追加買い取りや再編で上場が変わる可能性がある。上がれば株主に益だが、少数株主の立場は弱い。
今後の分かれ目
- ENEOS グループが国内の製油所をさらに統合・閉鎖したら
- やや悲観・悲観の確率を上げてよい。定期修理の量が減り、利益は伸びなくなる。
- タンク(LNG・液化水素)の大型案件が複数決まったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。新設の利益率が 6% を超えて続くかを見る。
- 2027 年 3 月期の受注残が計画を上回って積み上がったら
- 中立の利益水準を上方に見直せる。ただし工事量の増加か、値段の上昇かを分けて確かめる。
- 一括請負の案件で追加費用の計上が出たら
- 新設の利益率の前提を下げる。悲観の確率を少し上げる。
- 親会社が追加で株を買い取る、または TOB の話が出たら
- 価値の前提は変えないが、少数株主に有利な価格が付く可能性がある。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高・受注残と ENEOS グループ向けの比率
- 保全とタンクの利益率(決算説明資料)
- 中計の目標(営業利益 163 億円)の達成状況と ROE
- 国内の製油所の統合・閉鎖の発表
- 配当性向と純資産配当率の運用、政策保有株の売却
倍率と資本コストの決め方
数量は工事の人日換算、価格は 1 人日あたり売上(物価 3% で 10 年 1.34 倍が基本)で積んだ。セグメントの内訳は開示がなく推定。倍率は利益ベースで、事業の ROE が k 7.5%(基本 7.5% + quality 0.5%)を少し上回る程度のため正当化 PER は 14 倍前後、下限は 1÷k の 12.5 倍で、中立は 12.8 倍に置いた。今の PER 15 倍台に寄せたわけではない。純現金は 58 億円で時価総額の 3.5% なので、余った現金は分けない。賃借は少なく、新リース会計の影響は小さい(10 年後の数字は今と同じ形で置いた)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.32 倍・やや楽観 PER 13.4→16.7 倍・中立 PER 12.8→15.71 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。