結論
暁飯島工業は、茨城県を地盤に、ビルや工場の空調、給排水、電気の設備を据え付ける設備工事会社だ。筆者の結論は適正の範囲である。古い建物の改修の仕事が増え、2026 年 8 月期は過去最高の利益を出した。だが、その利益率は過去の山を超えており、10 年ならせば少し下がる。
強みは地元の厚い客の網だ。新しい建物の工事だけでなく、建てたあとの点検と修理、省エネの改修まで、同じ客と長く付き合う。改修の工事は 1 年で 4 割近く伸び、売上の半分を占めるまでになった。財務は堅く、純現金は時価総額の 6 割にあたる。
一方で、地方の設備工事は人手の取り合いだ。職人と技術者が足りず、取れる仕事の量に天井がある。会社も来期は減益を見込む。筆者は 10 年後の営業利益を 15 億円ほどと見る。資本コストをやや上回る稼ぎは続くが、事業そのものに高い値段は付けにくい。現金が厚いので、株主に戻す方針しだいで値打ちは上下する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、暁飯島工業は「地味で手堅い地場の職人集団」だ。建物の設備は必ず古くなり、誰かが替えなければならない。その仕事を地元の客から繰り返し受ける形は、派手さはないが崩れにくい。
筆者がいちばん気にしているのは、今の利益率が続くかだ。2026 年 8 月期の 13% 台は過去の山を超える。人手が足りず、売り手が値段を決められる市場が支えている。人が戻れば、あるいは建設の量が落ちれば、利益率は 10% 前後に戻るだろう。会社自身も来期は減益を見込んでいる。
もう一つは現金の使い方だ。純現金は時価総額の 6 割にあたり、事業に要らない分が 30 億円台ある。配当は増えているが、現金の積み上がりの方が速い。この現金が株主に戻るなら、今の値段に安全域が生まれる。戻らなければ、事業の値段と現金を合わせても、今の値段と大きくは変わらない。
何で稼ぐ会社か
事業のほぼすべては設備工事だ。ビル、工場、病院、学校などに、空調と換気、給排水と衛生、電気の設備を据え付ける。ゼネコンから下請けで受ける仕事と、建物の持ち主から直接受ける仕事がある。売上の約 98% がこの設備事業で、残りは太陽光の発電と不動産の賃貸だ。
仕事は大きく 2 つに分かれる。1 つは新しい建物の工事で、1 件が数千万円から億円単位になる。茨城と首都圏の北部の工場や公共の建物が多い。もう 1 つは改修とビルケアだ。古くなった空調を省エネの機械に替え、配管を直し、定期の点検を請け負う。2025 年 8 月期の改修の完成工事高は 47 億円で、前の期から 4 割近く増えた。
稼ぎの形は受注生産である。受注高は 2025 年 8 月期に 102 億円と 2 割伸び、2026 年 8 月期の売上 101 億円を支えた。工事は着手から完成まで数か月から 1 年以上かかり、その間の現金は前受けと工事の未払いで回す。
会社は長期のビジョン「VISION2030」を掲げ、高い利益率の定着、省エネと改修の提案の拡大、ビルケアの付加価値を柱にする。茨城の地場で、県や市の公共の建物にも強い。
優良さと弱いところ
強みは、地元の客との長い付き合いだ。建てた設備の点検と修理、次の改修まで、同じ客から仕事を受ける。設備は 15〜20 年ごとに替える必要があり、そのたびに仕事が戻ってくる。改修は新築より値段の競争が緩く、利益率も高い。営業利益率は 2015 年の 9.6% から、2026 年 8 月期には 13% 台に上がった。
弱さは 3 つある。第 1 に、地域が一つだ。茨城と周りの景気と建設の量に稼ぎが縛られる。第 2 に、人手だ。現場の監督と職人が足りず、受けられる仕事の量に天井がある。第 3 に、値段を決める力が限られることだ。ゼネコンの下請けでは入札で値段を競い、公共の工事も入札だ。
経営は財務を厚く保ち、無理な拡大をしない。純現金は 10 年で 9 億円から 50 億円に積み上がった。堀、つまり他社がまねしにくい強みは地元の客の網にあるが、広くはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
設備工事の業界は、新しい建物の工事から改修へと重心が移っている。高度成長期とバブル期に建てたビルや工場の設備が古くなり、替え時を迎えている。脱炭素で省エネの空調に替える動きも加わる。国内の空調工事の市場は、2030 年度まで年 2% ほど伸びる見込みだ。
大手の高砂熱学工業やダイダン、三機工業は、半導体の工場やデータセンターの大きな空調工事で稼ぐ。暁飯島工業はそうした大型の案件より、地元の中小の建物の工事と改修が中心だ。茨城では半導体や医薬の工場の建設もあり、その周りの設備の仕事が地場の会社にも回ってくる。
いちばんの制約は人だ。設備の職人と施工の管理者は高齢化し、若い人が入ってこない。2024 年からは建設業にも残業の上限がかかった。人が足りないので、各社は仕事を選び、値段を上げられるようになった。ここ数年の利益率の上昇は、この売り手の市場に支えられている。
10 年の流れでは、筆者は改修の件数が 15% ほど増え、新しい建物の件数は 1 割余り減ると見る。値段は物価並みに上がる。人手の不足で値段の交渉は有利だが、取れる量も人で決まる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。会社は安定した配当を基本に、利益が計画を超えれば増配する。2025 年 8 月期は予想から増配し、2026 年 8 月期も増配した。配当性向は 3 割前後だ。自社株買いは業績を見て機動的に行うとし、自己株は発行済みの 8% ほどを持つ。
財務はとても堅い。2025 年 8 月期末の現預金は 56 億円で、借入はほとんどない。投資有価証券も 10 億円ある。純現金は 10 年で 5 倍余りに増え、時価総額の 6 割に達した。工事の前受けと未払いの分を差し引いても、30 億円台の現金は事業に要らないとみる。
株主には光通信が 7% 弱、米国の運用会社も入る。現金の厚さに比べて還元は控えめで、株主から還元の上積みを求められる余地はある。M&A は大きな動きがないが、地場の設備会社を買う側にも、大手に買われる側にもなりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
改修の波は始まったばかりだ。高度成長期とバブル期に建てた建物の設備が一斉に替え時を迎え、脱炭素の省エネの改修も加わる。暁飯島工業の改修の完成工事高は 1 年で 4 割近く伸び、受注高も 2 割増えた。改修は新築より値段の競争が緩く、利益率が高い。
人手の不足も追い風だ。職人が足りないので、各社は仕事を選び、値段を上げられる。2026 年 8 月期の営業利益率は 13% 台と、上場の大手のサブコンの多くを上回る。茨城では半導体や医薬の工場の建設もあり、地場の設備会社に仕事が回ってくる。
財務の厚さも見逃せない。純現金は時価総額の 6 割で、投資有価証券も 10 億円ある。事業の利益に 10 倍の値段を付けるだけで、今の時価総額を超える。光通信などの株主が還元の上積みを求めれば、現金が株主に戻る道も開ける。
地元の客の網は、大手のサブコンには取りにくい資産だ。中小のビルや工場の改修は 1 件が小さく、大手が手間をかけて取りに来ない。点検と修理で客の設備を知り尽くした地場の会社が、次の改修でも選ばれる。
慎重な見方
今の利益率は山だ。2026 年 8 月期の 13% 台は、人手の不足で売り手が値段を決められる一時の市場が支えている。会社自身が来期は営業利益 12 億円と減益を見込む。建設の量が落ちる局面では、2023 年 8 月期のように利益率は 6% 台まで下がる。
地域が一つという弱さもある。茨城の人口は減り、公共の建物の工事も細る。大きな工場の建設は数年ごとの波で、毎年は続かない。人が足りないことは値段の追い風だが、取れる仕事の量の天井でもある。若い人が入らなければ、10 年後に会社を回す人がいない。
現金は厚いが、戻る保証はない。配当は増えているが、現金は利益とともに積み上がってきた。厚い現金を抱えたまま ROE が下がれば、株主の取り分の価値は伸びない。
大手のサブコンや設備のメーカーも、改修と保守の仕事に力を入れ始めた。省エネの改修は機械のメーカーが直接提案する形も増える。地場の会社の居場所は、思ったほど広くないかもしれない。
どちらに重みを置いたか
2 つの見方はほぼ拮抗している。改修の需要と地元の客の網は本物だが、今の利益率は人手の不足が作った山で、10 年ならせば下がる。中立は利益率を過去の山の手前に置き、楽観と悲観をほぼ同じ重みにした。現金は事業に要らない分だけを足し、還元の実績から 4 分の 3 の価値で数えている。来期の利益率が会社予想を上回るかどうかで、どちらの見方が正しいかが見えてくる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 9,655 円195 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,652 円33 億円)。 今の値に割り戻すと 5,714 円116 億円、今との差 +34.6%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 15,460 円313 億円 | 2,226 円45 億円 | +316.6% | +15.3% | 1,769 円36 億円 |
| やや楽観 | 22% | 13,077 円264 億円 | 1,978 円40 億円 | +254.7% | +13.5% | 3,312 円67 億円 |
| 中立 | 38% | 11,146 円225 億円 | 1,731 円35 億円 | +203.3% | +11.7% | 4,893 円99 億円 |
| やや悲観 | 20% | 4,127 円83 億円 | 1,237 円25 億円 | +26.4% | +2.4% | 1,073 円22 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,711 円35 億円 | 890 円18 億円 | −38.7% | −4.8% | 260 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,655 円195 億円 | 1,652 円33 億円 | +166.4% | +10.3% | 11,307 円229 億円 |
今の株価時価総額 4,245 円86 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 改修の波と工場の建設が重なり、高い利益率が続く 利益 15 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 15,460 円313 億円
改修の波と茨城の工場の建設が重なる筋書きだ。古いビルと工場の空調が一斉に替え時を迎え、脱炭素の補助金も省エネの改修を後押しする。改修の件数は 2 割余り増え、新築も半導体や医薬の工場の周りで件数を保つ。
人手の不足は続き、売り手が値段を決められる市場が 10 年続く。会社は若い技術者を育て、工事の量を少しずつ増やす。営業利益率は 13% 前後を保ち、営業利益は 20 億円を超える。配当は増え、自社株買いも加わる。ROE は事業の分で 11% 台と、資本コストを上回り続ける。地場の同業を買って人と客の網を広げ、茨城の外の北関東にも仕事が広がる。
- 改修・ビルケア・その他:数量 1,700(改修・ビルケアの工事の件数(件・推定))× 価格 550(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 94 億円・営業利益 14 億円。1,700 件(1.26 倍)× 550 万円(1.38 倍)、営業利益率 15%
- 新築の設備工事:数量 62.0(新築の工事の件数(件・推定))× 価格 10,700(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 7 億円。62 件(1.03 倍)× 1.07 億円(1.37 倍)、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 18.22 倍、時価総額 289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修の伸びと茨城の工場の建設が続き、人手を確保できる必要がある。利益率 13% 台は過去の山を超えるので 10% とした。
やや楽観 22% 改修が伸び、利益率は 11% 台を保つ 利益 13 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 13,077 円264 億円
改修の仕事が伸び、利益率を少し落として保つ筋書きだ。古い建物の設備の更新と省エネの改修が続き、改修の件数は 2 割近く増える。新築は工場の波に合わせて件数をほぼ保つ。
人手の不足は少し和らぐが、地元の客の網で値段の交渉は有利なままだ。営業利益率は 11% 台で、営業利益は 17 億円ほどになる。配当は性向 3 割前後で増え、厚い現金の一部は自社株買いに回る。事業の ROE は 10% 前後で資本コストを上回る。株主の価値は利益の伸びと、ゆっくり戻る現金の両方で増える。点検と修理の契約が増え、工事の波も少しならされる。
- 改修・ビルケア・その他:数量 1,600(改修・ビルケアの工事の件数(件・推定))× 価格 545(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 87 億円・営業利益 12 億円。1,600 件(1.19 倍)× 545 万円(1.36 倍)、営業利益率 14%
- 新築の設備工事:数量 56.0(新築の工事の件数(件・推定))× 価格 10,500(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 5 億円。56 件(0.93 倍)× 1.05 億円(1.35 倍)、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 17.66 倍、時価総額 240 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修の受注は 1 年で 4 割近く伸びた実績があり、人手の不足で値段も上がりやすい。利益率を少し落として保つ筋として 22% とした。
中立 38% 改修が新築の減りを埋め、利益率は過去の山の手前に戻る 利益 11 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 11,146 円225 億円
改修の伸びが新築の減りを埋め、利益率が山から少し下がる筋書きだ。改修の件数は 1 割余り増え、新築は茨城の人口の減りで 1 割余り減る。値段は物価並みに上がる。
人手の不足は続くが、各社が人を増やし、売り手の市場は少し和らぐ。営業利益率は 11% 前後と、2026 年 8 月期の山から下がるが、過去 12 年の山の手前で保つ。営業利益は 15 億円ほどになる。配当は性向 3 割前後で増え、現金はゆっくり積み上がる。事業の ROE は 9% 前後で、資本コストをわずかに上回る。厚い現金は抱えたままだが、増配で少しずつ株主に戻る。
- 改修・ビルケア・その他:数量 1,500(改修・ビルケアの工事の件数(件・推定))× 価格 536(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 80 億円・営業利益 10 億円。1,500 件(1.11 倍)× 536 万円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 13%
- 新築の設備工事:数量 52.0(新築の工事の件数(件・推定))× 価格 10,450(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 4 億円。52 件(0.87 倍)× 1.045 億円(1.34 倍)、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 17.03 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修の需要は構造的に続くが、今の利益率は人手の不足が作った山で、会社も来期の減益を見込む。その落としどころとして 38% とした。
やや悲観 20% 建設の量が落ち、利益率は谷の水準に戻る 利益 5 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 4,127 円83 億円
建設の量が落ち、利益率が谷の水準に戻る筋書きだ。茨城の人口の減りで公共の建物の工事が細り、工場の建設も海外に移る。新築の件数は 4 分の 1 減る。改修も補助金が細って伸びが止まる。
人手の不足が和らぐと、売り手の市場は終わり、入札の値段の競争が戻る。営業利益率は 6〜7% と 2023 年 8 月期の谷の水準に下がる。営業利益は 7 億円ほどになる。配当は細り、厚い現金は抱えたまま眠る。事業の ROE は 5% 前後で、資本コストを下回る。技術者の採用も進まず、受けられる仕事の量も細っていく。
- 改修・ビルケア・その他:数量 1,250(改修・ビルケアの工事の件数(件・推定))× 価格 500(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 63 億円・営業利益 6 億円。1,250 件(0.93 倍)× 500 万円(1.25 倍、値段が物価に届かない)、営業利益率 9%
- 新築の設備工事:数量 45.0(新築の工事の件数(件・推定))× 価格 9,500(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。45 件(0.75 倍)× 9,500 万円(1.22 倍)、営業利益率 3%
倍率:事業の ROE 5% 前後は k 7.75% を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍。稼ぐ力で見てその 7 割の 8.2 倍。余った現金は 0.75 倍の額(26 億円)に戻り方 0.75 を掛けて足した。
確率:2023/08 期には利益率が 6% 台まで落ちた実績がある。人手の不足が和らぎ、地域の建設の量が細る筋として 20% とした。
悲観 10% 地場の仕事が細り、人も集まらず稼ぎが消える 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,711 円35 億円
地場の仕事が細り、人も集まらない筋書きだ。茨城の建設の量は大きく落ち、新築の件数は 4 割減る。改修は大手のサブコンと設備のメーカーの保守の部門に取られる。若い技術者が入らず、ベテランが辞め、取れる仕事も減る。
営業利益率は 1% 前後に沈み、利益はほぼ消える。配当は大きく減り、自社株買いも止まる。株主の価値は、厚い現金と投資有価証券に支えられるが、清算されない限り、その現金を株主が自由にできるわけではない。地場の同業や大手に安く買われる道も現実味を帯びる。点検の契約と客の名簿だけが、最後まで値段を保つ。
- 改修・ビルケア・その他:数量 1,100(改修・ビルケアの工事の件数(件・推定))× 価格 480(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。1,100 件(0.81 倍)× 480 万円(1.20 倍)、営業利益率 4%
- 新築の設備工事:数量 35.0(新築の工事の件数(件・推定))× 価格 9,000(1 件あたりの完成工事高(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 −1 億円。35 件(0.58 倍)× 9,000 万円(1.15 倍)、営業利益率 −3%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR で置く。床は純現金から前受けを除いた額に戻り方を掛け、投資有価証券の税後を足した約 35 億円で、facts の今の自己資本 76 億円(2025/08 期)の 0.455 倍。
確率:2006〜07 年には営業赤字もあった。地域の縮みと人手の流出が重なれば構造的に負けるが、純現金が厚く倒れる心配は小さいので 10% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
改修・ビルケア・その他
既存の建物の空調・衛生・電気の設備の更新と省エネの改修、定期の点検と修理。太陽光の発電と不動産の賃貸を含む。
| 数量改修・ビルケアの工事の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの完成工事高(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1,350 | 400 | 54 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 536 | 80 | 10 |
取り方:件数の開示がないため推定。2026/08 期の売上 101 億円のうち、改修(2025/08 期 46.8 億円から伸びた分)とビルケア・その他を約 54 億円とし、1 件あたり約 400 万円で割った約 1,350 件。営業利益は全社の 14 億円を、改修の利益率が高いとみて約 8.2 億円と推定。
新築の設備工事
工場・公共施設・病院・オフィスなどの新しい建物の空調・衛生・電気の設備工事。
| 数量新築の工事の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの完成工事高(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 60.0 | 7,800 | 47 | 6 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 10,450 | 54 | 4 |
取り方:件数の開示がないため推定。2026/08 期の売上 101 億円から改修とその他を引いた約 47 億円を、1 件あたり約 7,800 万円で割った約 60 件。営業利益は約 5.8 億円と推定。数字は 2026/08 期の決算短信の値(facts は 1 期古い)。
リスクと懸念
利益率の山
2026 年 8 月期の営業利益率 13% 台は、過去 12 年の山を超える。人手の不足で売り手が値段を決められる市場が支えている。会社も来期は営業利益 12 億円と減益を見込む。市場が和らげば、利益率は 10% 前後に戻る。
人手の不足
設備の職人と施工の管理者は高齢化し、若い人が入らない。残業の上限もかかった。人が足りないことは値段の追い風だが、取れる仕事の量の天井でもある。技術者が辞めれば、受注も減る。
地域が一つ
稼ぎのほとんどは茨城と周りにある。人口の減りで公共の建物の工事は細り、工場の建設は数年ごとの波だ。大きな工場の計画が海外に移れば、地場の設備の仕事も減る。
入札の値段の競争
ゼネコンの下請けと公共の工事は入札で値段を競う。建設の量が落ちる局面では、値段の競争が戻り、2023 年 8 月期のように利益率は 6% 台まで下がる。
現金の使い道
純現金は時価総額の 6 割にあたる。配当は増えているが、現金の積み上がりの方が速い。使い道のない現金を抱えたままでは、ROE は下がり、株主の取り分の価値は伸びない。
今後の分かれ目
- 2027 年 8 月期の利益率が会社予想を上回り、12% 台を保ったら
- 人手の不足が作った値段の力が定着した証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 配当性向を 5 割以上に上げるか、まとまった自社株買いを行ったら
- 現金が株主に戻る証拠として、戻り方を 1.0 に上げる。
- 受注高が 2 期続けて 1 割以上減ったら
- 建設の量の落ち込みとして、やや悲観に重みを移す。
- 地場の設備会社を買収したら
- 人と客の網を広げる動きとして、数量の見通しを上に直す。値段が高ければ現金の価値を下げる。
- 大手のサブコンや同業から買収の提案があったら
- 地元の客の網と厚い現金に値段が付く。帳簿を上回る値段での再編がありうる。
見ておくもの
- 受注高と改修工事の完成工事高
- 営業利益率(過去の山 12.9% を保てるか)
- 技術者の採用と人数
- 配当性向と自社株買い
- 茨城の工場・公共施設の建設計画
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見ずに、事業の ROE と k 7.75% から決めた。中立の事業の ROE は 9% 前後で k をわずかに上回るので、PER は下限の 1÷k の 11.8 倍になった。利益率は過去 12 年の山(12.9%)の手前の 11% に置き、2026/08 期の 13.9% の山は使っていない。純現金は運転資金を残した 35 億円だけを分け、還元の実績から 0.75 倍で足した。facts が 1 期古いので、2026/08 期の短信を起点にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→18.22 倍・やや楽観 PER 11.76→17.66 倍・中立 PER 11.76→17.03 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。