結論
ETSグループは、送電鉄塔の建設・架線工事を祖業とし、再生可能エネルギー向け受変電設備や建物管理にも事業を広げる電気工事会社である。筆者の判断は「やや割高」だ。送電設備の更新需要には長い寿命があるものの、受注が大口工事に偏り、利益の再現性と新事業の投資効率にはまだ十分な確信を持てない。
事業の土台は悪くない。東北電力ネットワーク向けの宮城丸森幹線では、50万ボルト級の鉄塔51基を含む大型工事を担っている。2026年10月には山形幹線の鉄塔工事も受注した。送電網の増強は再生可能エネルギーの接続や広域電力融通に必要であり、施工経験と安全管理の蓄積には価値がある。ただし、長く必要とされる工事と、同社が長く高収益を確保できることは別の問題だ。
2025年9月期は売上高112.6億円、営業利益7.2億円、純利益4.7億円だった。2026年9月期の会社予想は営業利益10.8億円まで改善しているが、会社自身が一過性要因の追い風を認めている。一方、2026年第3四半期累計の新規受注は前年同期から大幅に減り、過去の大型受注を消化する局面に入った。10年後の利益を考える際、現在の好採算をそのまま延長することはできない。
成長余地は、送電工事の継続受注に加え、蓄電池・データセンター関連設備と建物管理の拡大にある。反面、京都で計画するホテルには多額の建設資金と長期借入が必要だ。現時点では、ホテルの利益が投下資本に見合うか検証できない。五つの筋書きを資本コストで割り引くと、株主還元を含めた価値は現在の時価総額を下回る見立てになる。事業が不要になるとは考えないが、長く持つ株主に必要な安全域は厚くない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ETSグループの送電工事は理解しやすい商売である。社会が電気を使い続ける限り、送電線を造り、古くなれば更新しなければならない。施工の安全性と信頼を積み上げてきた企業には、帳簿だけでは表れない価値がある。顧客が簡単に別の業者へ切り替えられない専門技術も持っている。
しかし、株主が所有するのは工事の必要性ではなく、工事から生まれる将来の現金である。巨額の受注を取っても、工期が遅れ、材料費が上がり、売掛金が回収されるまで資金が拘束されれば、株主の取り分は小さくなる。2025年の営業キャッシュフローが大幅なマイナスだった事実は、利益とオーナー利益を区別する必要性を示している。長い工事を安定的に管理できる能力があっても、資本をあまり使わず高い利益率を維持できる事業とは限らない。
資本配分について最も確かめたいのは、既存の施工能力を増やすための再投資と、不動産・ホテルへの投資のどちらが高い収益を生むかだ。送電工事では長年の経験を利用できるが、ホテルの稼働率と宿泊単価は別の競争で決まる。親会社からの事業取得にも第三者評価はあったものの、買収額が適正だったことと、買収が少数株主の価値を増やすことは同義ではない。取得後の利益、運転資金、維持投資を確認する必要がある。
筆者は、10年後も送電工事が必要であることには高い確信を持つ。一方、その需要の増加が同社の資本利益率を高め続けるかには慎重だ。2025年の高いROEより、過去10年の中央値と今後の資金需要に重きを置く。ホテルの建設、親会社との取引、受注の偏りを抱える現段階では、本質価値に対して十分な安全域を要求するのが妥当である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は電気工事業である。電力事業では、鉄塔の新設・建て替え、送電線の架設、点検・補修を行う。東北電力ネットワークや東京電力パワーグリッドなどが顧客で、工事の進捗に応じて売上が計上される長期案件が多い。高電圧の設備を安全に施工できる人材、現場を管理する経験、電力会社からの施工実績が受注の前提になる。
設備事業では、再生可能エネルギー発電所の特別高圧変電所、蓄電池設備、工場・建物の受変電設備や屋内電気工事を請け負う。こちらは発電事業者や民間設備投資の判断に左右され、案件ごとの工期と採算の変動が大きい。電力会社の送電網工事に比べて競争相手が広く、受注時に十分な利益を確保できるかが重要になる。2026年には石川県の風力発電所向け特別高圧変電所工事も受注している。
不動産関連事業は、ETSOKやETSクリアによるマンション・ビル管理、清掃、設備点検、修繕、賃貸管理などである。継続契約の比率を高めれば、長期工事の進捗に依存する収益を補える。ただし、現場で行う清掃・修繕と、会計・集金・契約管理の事務処理は性質が異なる。後者はAIエージェントによる省人化と価格低下の影響を受けやすく、同じ成長率で扱うべきではない。
2026年6月には、親会社のアムス・インターナショナルから広島地区の不動産管理事業を4億円で取得した。対象事業の2025年5月期売上高は10.72億円、営業利益は0.95億円である。この買収は建物管理の規模を広げるが、取得後に同じ利益が残ることはまだ確かめる必要がある。
さらに、京都市東山区で25室のホテルを建設し、2027年10月の開業を予定する。建設費は約12億円、資金調達のための借入予定額は13億円である。ホテルでは客室稼働泊数と宿泊単価が売上を決めるが、土地・建物を保有するため、工事請負や建物管理とは資本の重さがまったく違う。売電事業もあるが、全社売上への寄与は小さい。
優良さと弱いところ
同社の強みは、100年以上にわたる送電工事の経験と、高電圧設備の現場を動かす能力である。50万ボルト級の鉄塔工事では、技能者をそろえるだけでなく、工程、安全、資材、施工方法を管理する必要がある。実績の乏しい新規参入者が大口の電力会社から直ちに同じ仕事を受注するのは難しい。これが同社の参入障壁であり、施工経験の蓄積には本物の価値がある。
ただし、その強みは独占的な堀ではない。関電工、ユアテック、トーエネック、きんでんなどの大手電気工事会社は、規模、採用力、資金調達力で同社を上回る。しかもETSグループは、特定の地域電力会社から系列企業として継続発注を受ける立場ではない。入札価格や工期の条件で競う場面があり、労務費の上昇をいつでも顧客へ転嫁できるわけではない。
顧客集中も見逃せない。2025年9月期には東北電力ネットワーク向けが連結売上の31.8%、東京電力パワーグリッド向けが13.1%を占めた。二社だけで約45%になる。施工実績が次の受注につながる利点はあるが、一件の工期変更や発注方針の変更が全社の利益を動かしやすい。2026年の受注高の急減は、その両面を示している。
2025年9月期のROEは14.5%と良好だが、過去10年の中央値は7.7%にとどまる。現在の高収益を通常の実力とみなすには期間が短い。また、同年度は純利益4.7億円を計上しながら営業キャッシュフローが10.6億円の流出となった。大型工事では売上債権、前払金、未成工事への資金が先に必要になる。帳簿上の利益をそのまま自由な現金と考えないことが重要である。
建物管理の継続契約は収益の安定化に役立つが、全国的なブランドや顧客の乗り換えを困難にする独自データが確認できるわけではない。京都のホテルも、現段階では運営実績のない新規参入である。全社としては、施工能力という中程度の堀を持つ一方、高い値決め力や持続的な超過収益を保証するほどの堀はないと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の電気工事需要は、建物の新築だけでは決まらない。既存の送電線・変電所の更新、再生可能エネルギーの系統接続、地域間の送電能力増強、データセンターや半導体工場への受電設備が、今後の工事量を支える。電力広域的運営推進機関の広域系統長期方針も、送電網の増強を長期課題としている。電力インフラの物理的な施工はAIだけでは代替できず、10年後も必要な事業である。
市場規模を比べる際は統計の範囲に注意が要る。国土交通省の建設工事施工統計による2024年度の電気工事業の完成工事高は、元請・下請を合わせて約11兆9,623億円だった。ETSグループの2025年9月期の電気工事売上95.5億円は、その約0.08%に相当する。ただし、全国統計と同社の工事範囲は完全には一致しないため、これは規模をつかむための単純比であり、厳密な市場シェアではない。
関電工、きんでん、ユアテック、トーエネックなどは連結売上が数千億円規模であり、同社との施工体制の差は大きい。一方、超高圧送電線の新設や架線は施工会社が限られ、全国の電気工事市場全体より狭い専門市場である。その専門市場について、会社別の完成数量とシェアを比較できる公表統計は確認できない。したがって、全国シェアの小ささだけを理由に、超高圧分野での競争力まで低いとは判断しない。
今後10年の数量は、送電設備更新と広域連系の整備で緩やかに増えると見る。ただし、発注主体の予算、送電ルートの用地取得、地元調整、技能者不足で工期は動く。物価上昇と技能者賃金の上昇は請負単価を引き上げるが、固定価格契約の期間中は原価が先行することもある。受注残の増加が必ずしも利益率の改善を意味しない。
建物管理では、マンション管理業協会の2026年調査で会員会社の管理受託戸数は約665万戸となり、前年からの増加は0.2%だった。成熟市場であり、ETSグループの成長には新規受託か買収によるシェア拡大が必要になる。管理会社間の価格競争もあり、事務処理の自動化によって人手の価値が縮む部分と、清掃・修繕など現場の仕事が残る部分を分けて考える。
ホテルの市場も別物である。京都市観光協会による2025年の主要ホテルの平均客室稼働率は80.6%、平均客室単価は約2.1万円だった。京都市内には約6万室の客室があり、同社の25室は既存客室数の約0.04%にすぎない。立地と客室の質次第で平均を超える単価は狙えるが、価格を支配できる規模ではない。新ホテルを送電工事と同じ資本効率で評価することはできない。
資本政策と M&A
中期経営計画2024〜2026では、2026年9月期の売上高110億円、営業利益5億円、営業利益率4.5%、純利益3.37億円、ROE10.3%、受注高86億円を目標としていた。売上と利益の目標は2025年9月期に前倒しで達成された。2026年8月に示した最新の通期予想は、売上高122.5億円、営業利益10.78億円、純利益5.64億円、ROE15.4%である。ただし、受注の内訳を見ると、電力事業の回復に対して設備事業の新規受注は著しく少ない。
会社が数字で約束している株主還元は、配当と株主優待を合わせた総還元率30%以上である。2025年9月期の実績は24.5%、2026年9月期の予想は30.9%となっている。DOEについても2026年予想3.8%が示されるが、恒久的なDOE下限を約束したものではない。Amazonギフトカードを使う株主優待は対象株数と継続保有期間によって金額が変わる。長期の還元には配当だけでなく、その会社負担分も含める。
同計画の3年間の資本配分は、株主還元2.5億円、人的資本・DXなどへの投資4億円、買収等の戦略投資6.5億円、通常投資1.98億円を想定していた。その後、広島の不動産管理事業を親会社から4億円で取得した。外部算定機関によるDCF評価額は4.28億円で、取得価格は評価レンジ内にある。独立役員の意見取得など、利益相反を避ける手続きも開示されている。一方、買収後の利益と現金回収が投下額に見合うかは、これからの実績で確認する必要がある。
京都のホテルは建設費約12億円を要し、13億円の担保付き長期借入を予定する。建設費だけでも2025年9月期の自己資本の約3分の1に相当する。さらに2026年9月には、工事資金に関係するシンジケートローンとコミットメントラインの契約も開示した。これらをすべて実行済みの負債とみなすことはしないが、借換えや財務制限条項を無視することもできない。利益の拡大以上に、投じた資本がどれだけ現金を生むかを重視したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力の安定供給と脱炭素化を両立させるには、送電網の更新と広域連系の整備が欠かせない。再生可能エネルギーの立地は需要地と離れていることが多く、電力を運ぶための大規模送電線が必要になる。さらにデータセンターや半導体工場の電力需要が増せば、受変電設備の工事も増える。ETSグループは100年以上の施工経験を持ち、50万ボルト級の鉄塔工事を実際に担っている。大きな需要の波を受け止める資格と実績がある。
宮城丸森幹線の大型案件では、鉄塔工事だけで累計受注額が76億円を超え、架線工事も受注している。こうした工事の完工を次の実績につなげれば、同社は地域をまたいで受注できる施工会社として存在感を高められる。2026年10月の山形幹線工事の受注も、その継続性を示す材料になる。民間の再生可能エネルギー設備についても、風力発電所の特別高圧変電所などを受注しており、送電工事以外の成長の柱を作れる。
建物管理の拡大も利益の質を変え得る。2026年に取得した広島の管理事業は、過去の利益実績があり、一定の継続収入が期待できる。建物の清掃・点検・修繕という現場の仕事はAIエージェントにそのまま置き換わらない。契約物件を増やしながら本部業務を効率化できれば、施工の繁閑を補う収益源になる。
京都のホテルも、立地と客室の質が評価されれば利益の上振れがある。長期の借入で初期投資を賄い、一定の稼働率を確保すれば、株式の希薄化を伴わずに資産と利益を増やせる。電気工事の採算改善、管理事業の継続収入、ホテルの成功がそろえば、過去のROE中央値を大きく超える資本効率もあり得る。長期の需要そのものは強いため、経営が受注選別と資本配分を誤らなければ、現在の時価総額を上回る価値を生み出せる。
慎重な見方
送電網の更新需要は存在しても、工事会社の利益は自動的には増えない。元請と下請の競争、電力会社の予算、労務費と資材費、施工上の事故や天候によって、一件の採算は大きく変わる。とりわけETSグループは規模が小さく、二社の大口顧客への依存度が高い。現在の大型工事が終わった後に、同じ規模と採算の案件を継続して獲得できる保証はない。
2026年第3四半期累計の受注高は、前年同期の141.54億円から30.12億円へ減少した。大型工事の消化を優先したことや設備工事の見直しが主因であり、直ちに需要喪失を意味するものではない。それでも、受注残を売上に変えた後で新しい仕事が不足すれば、数年先の利益は細る。2026年通期予想で設備事業の受注がわずか0.2億円とされていることは、軽視できない。受注が戻っても価格競争が強まれば、売上の回復が利益の回復につながらない。
本業以外にも資本の使い道が広がっている。広島の不動産管理事業は親会社から取得したもので、独立した価値算定と利益相反防止手続きがあった。しかし、取得後の管理契約の継続、のれんの回収、親会社との取引条件は今後も監視が必要だ。建物管理の事務部分はAIエージェントが代替する余地があり、過去の人員配置や手数料が維持されるとは限らない。
京都のホテルは、工事会社が経験を持つ事業とは違う。25室という規模では本部費や修繕費の固定負担が重く、宿泊単価が少し下がるだけで利益が消えやすい。約12億円の建設費に見合う収益を得るには、稼働率だけでなく、減価償却、修繕、借入利息を引いた後の利益が十分でなければならない。2025年に大きな営業キャッシュ流出があった会社が、さらに長期の資産を保有することは資金繰りの不確実性を増やす。必要な工事を担う良い会社であっても、増えた資本から低い利益しか得られなければ、株主価値は伸びない。
どちらに重みを置いたか
長期の送電需要と施工実績では強い見方に分がある。しかし、会社固有の将来利益を予測する材料としては、受注の集中、工事ごとの採算変動、2026年の新規受注減少、ホテルの投資負担を重く見る。広島事業の取得価格には第三者評価による裏付けがあり、親会社取引だけを理由に極端な悲観へ傾けるべきではない。一方、送電工事の実績も将来の利益を保証しない。
確率は上側28%、中立32%、下側40%とし、慎重な側に12ポイント寄せた。下に寄せる理由は、設備事業の新規受注回復が未確認であることと、既存事業とは異なるホテル投資の収益性が未検証だからである。AIエージェント代替は建物管理の事務部分に限って反映し、送電工事まで縮む前提にはしていない。結論は、事業の寿命は長いが、現時点の値段には十分な安全域がないというものである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,558 円99 億円(+ 還元の換算額還元の合計 265 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 902 円57 億円、今との差 −11.3%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,573 円228 億円 | 471 円30 億円 | +297.7% | +16.2% | 364 円23 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,467 円157 億円 | 369 円24 億円 | +178.9% | +11.8% | 539 円34 億円 |
| 中立 | 32% | 1,649 円105 億円 | 298 円19 億円 | +91.5% | +7.4% | 623 円40 億円 |
| やや悲観 | 26% | 660 円42 億円 | 181 円12 億円 | −17.3% | −2.1% | 219 円14 億円 |
| 悲観 | 14% | 487 円31 億円 | 71 円5 億円 | −45.2% | −6.2% | 78 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,558 円99 億円 | 265 円17 億円 | +79.2% | +6.6% | 1,823 円116 億円 |
今の株価時価総額 1,017 円65 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 送電網増強が続き、管理事業とホテルも成功 利益 15 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,573 円228 億円
広域送電網の整備と老朽設備の更新が同時に進み、50万ボルト級の鉄塔や架線工事の施工実績が次の大型受注につながる。東北電力ネットワーク向けの実績を足場に受注地域を広げ、超高圧送電線の専門会社として評価される。技能者の確保と施工計画の標準化が進み、労務費の上昇を工事単価へ適切に転嫁できる。安全事故や大幅な工期遅延を抑え、利益率も改善する。
設備事業では、風力・蓄電池・データセンター向けの受変電設備が大型化する。2026年の受注の谷を越えて顧客が増え、電力会社以外の発注が利益の柱となる。工事の数量と単価が共に伸びても、施工体制を過度に膨らませず、規律を持って高採算案件を選ぶことができる。
広島の管理事業は契約を維持したまま周辺地域に拡大する。清掃・修繕などの現場業務は増え、管理事務はAIエージェントで効率化しつつ契約数量を維持する。京都のホテルは開業後に高い稼働率と宿泊単価を確保し、減価償却後でも十分な営業利益を残す。資金調達も円滑であり、利益の拡大に応じた配当と株主優待を継続する。複数事業の成長が資本コストを超える再投資収益につながる、最も良好な展開となる。
- 送電鉄塔・架線・電力設備工事:数量 70.0(超高圧鉄塔・架線工事の標準鉄塔基換算施工量(基換算・年、推計))× 価格 2.15(標準鉄塔基換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 13 億円。標準施工量は現在の約1.44倍。工事価格は約1.44倍。地域拡大と高採算受注で営業利益率8.5%。
- 再エネ・蓄電池・受変電設備工事:数量 25.0(標準特高変電所・受変電設備工事の案件換算数量(件相当・年、推計))× 価格 2.75(標準設備工事1件換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 6 億円。蓄電池・風力・データセンター向け案件の獲得が続き、標準工事数量が大幅に増加。
- 建物管理・清掃・点検・修繕:数量 2,500(建物管理・清掃・修繕の標準物件年換算数(棟年相当、推計))× 価格 0.02(標準物件年換算当たり受託売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 5 億円。広島事業の通年寄与と追加受託、清掃・修繕の単価上昇により現場型契約が拡大。
- 賃貸管理・集金・会計・契約事務:数量 600(年間管理事務の標準受託契約換算数量(件相当・年、推計))× 価格 0.01(標準管理事務契約1件換算当たり年間売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替が進むが、既存の事務契約数量を維持する上限側。数量は現状の1.0倍を超えない。
- 京都東山の新規ホテル運営:数量 7,600(実際に販売した客室稼働泊数(室泊・年))× 価格 0.00(販売客室1室1泊当たりの売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。25室で稼働率約83%、客室単価約7万円。高付加価値型の運営成功を織り込む。
- 売電・その他小規模事業:数量 1,200(売電電力量(MWh・年換算、推計))× 価格 0.00(売電電力量1MWh当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。小規模な売電収入が継続。
倍率:資本コストk=8.0%、長期名目成長率g=2.7%、通常の堀による超過収益残存割合1/2を適用する。2036年のROEは15.3÷104.24=14.68%、RONIC=8.0%+0.5×(14.68%−8.0%)=11.34%。正当化PER=(1−2.7%÷11.34%)÷(8.0%−2.7%)=約14.38倍。倍率を市場の過去評価から求めず、楽観の利益に対して式の上限を適用する。
確率:送電網整備・蓄電池・データセンターの工事を継続獲得し、ホテル投資まで高収益になるには複数の独立した成功が必要である。2026年の新規受注減少や過去の利益率の変動を踏まえると、到達可能だが高い確率は与えられない。
やや楽観 19% 電力工事の施工量が増え、建物管理も順調に拡大 利益 11 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,467 円157 億円
送電設備の更新と地域間連系の整備が進み、ETSグループは既存顧客からの受注を維持しながら施工量を増やす。大型鉄塔工事を完工して得た実績により、次の送電線工事への参加機会も増える。工事価格には人件費・資材費の上昇が反映されるが、大手施工会社との競争があるため、利益率の改善は穏やかにとどまる。
設備事業では、2026年に見られた新規受注の極端な落ち込みが一時的な谷だったことが明らかになる。風力発電所の特高変電所、蓄電池接続、データセンターの受電設備で標準工事量が回復し、電力会社からの受注だけに依存しない収益源になる。工期のばらつきは残るものの、不採算案件の選別が改善する。
2026年に取得した広島の不動産管理事業は大きな契約喪失を起こさず、現場の清掃・修繕と管理物件が増加する。事務契約はAIエージェントへの代替により現在より減るが、価格の上昇で売上減少を補う。京都のホテルは適度な宿泊単価と稼働率で営業黒字を確保する。ただし、多額の建設資金に対する収益率は高くなく、全社の資本効率を劇的に改善するほどではない。株主還元は中期計画の方向に沿って利益とともに増える。
- 送電鉄塔・架線・電力設備工事:数量 63.0(超高圧鉄塔・架線工事の標準鉄塔基換算施工量(基換算・年、推計))× 価格 2.08(標準鉄塔基換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 10 億円。標準施工量の増加と物価をやや上回る契約単価。営業利益率7.5%。
- 再エネ・蓄電池・受変電設備工事:数量 20.0(標準特高変電所・受変電設備工事の案件換算数量(件相当・年、推計))× 価格 2.60(標準設備工事1件換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 4 億円。2026年の受注の谷を経て蓄電池・再エネ関連工事が回復。
- 建物管理・清掃・点検・修繕:数量 2,250(建物管理・清掃・修繕の標準物件年換算数(棟年相当、推計))× 価格 0.02(標準物件年換算当たり受託売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。買収事業の維持と緩やかな新規受託。清掃・修繕の価格転嫁はおおむね実現。
- 賃貸管理・集金・会計・契約事務:数量 510(年間管理事務の標準受託契約換算数量(件相当・年、推計))× 価格 0.01(標準管理事務契約1件換算当たり年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により数量は現在の0.85倍。楽観側でも現在の数量を超えない。
- 京都東山の新規ホテル運営:数量 7,000(実際に販売した客室稼働泊数(室泊・年))× 価格 0.00(販売客室1室1泊当たりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。稼働率約77%、客室単価約5.5万円。黒字だが建設投資の負担は残る。
- 売電・その他小規模事業:数量 1,100(売電電力量(MWh・年換算、推計))× 価格 0.00(売電電力量1MWh当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既存の小規模売電を継続。
倍率:2036年ROE=10.8÷88.24=12.24%、k=8.0%、堀は通常で超過収益の残存割合1/2。RONIC=10.12%。10年後からの名目成長率g=2.7%なので正当化PER=(1−2.7%÷10.12%)÷(8.0%−2.7%)=13.83倍。施工会社の利益の質を過大評価せず、かつ市場倍率による恣意的な割引も加えない。
確率:送電網更新と再エネ設備投資の方向性には公的計画による裏付けがある。2026年の受注減少後に新規契約を積み直し、広島管理事業を順調に統合できる可能性はあるが、工事利益率の改善とホテルの黒字定着を同時に前提とするため中立より低くした。
中立 32% 送電工事は着実に残るが、新事業の収益率は平凡 利益 7 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,649 円105 億円
送電網の老朽化と再生可能エネルギーの系統接続による工事需要は、10年後も続いている。ETSグループは高電圧工事の施工実績を維持し、東北・関東を中心に継続受注する。ただし、電力会社の予算や大手施工会社との競争で受注の波は消えない。施工数量は緩やかに増加し、工事単価には物価と労務費上昇が反映される。利益率は2026年の好調期ほど高くならず、通常の工事採算に落ち着く。
設備事業は、2026年の新規受注が極端に少なかった状態から回復する。風力・蓄電池・工場・データセンター向けに一定の仕事を獲得するが、設備投資の判断が遅れれば受注が翌期へずれる。受注する工事量は増えても、資材費と労務費の転嫁には時間差があり、営業利益率は高水準に固定されない。
不動産関連事業では、2026年に譲り受けた広島の管理契約が通年で寄与し、清掃・修繕など現場業務の数量が増える。全国のマンション管理市場自体は大きく伸びないため、その後の拡大は緩やかになる。事務系の標準契約数量はAIエージェント代替により現在の65%まで縮む。京都のホテルは開業して一定の稼働率を確保するが、建設費の償却と借入金利を考えると投下資本利益率は高くない。全社利益は名目では増えるものの、自己資本も積み上がり、ROEは直近の高水準から低下する。
- 送電鉄塔・架線・電力設備工事:数量 56.0(超高圧鉄塔・架線工事の標準鉄塔基換算施工量(基換算・年、推計))× 価格 2.00(標準鉄塔基換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 7 億円。数量は現在の1.15倍、価格は約1.34倍。送電更新で緩やかにシェアを維持・拡大する。
- 再エネ・蓄電池・受変電設備工事:数量 16.0(標準特高変電所・受変電設備工事の案件換算数量(件相当・年、推計))× 価格 2.54(標準設備工事1件換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 2 億円。標準工事数量は現在の1.33倍、価格は約1.34倍。再エネ・蓄電池・受電設備が需要を補う。
- 建物管理・清掃・点検・修繕:数量 2,050(建物管理・清掃・修繕の標準物件年換算数(棟年相当、推計))× 価格 0.02(標準物件年換算当たり受託売上(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。広島買収による契約増加と、その後の小幅な純増。単価は物価とおおむね同じ上昇率。
- 賃貸管理・集金・会計・契約事務:数量 390(年間管理事務の標準受託契約換算数量(件相当・年、推計))× 価格 0.01(標準管理事務契約1件換算当たり年間売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月・事務BPO型。数量0.65倍、価格1.30倍、10年後の売上は現在の約85%。
- 京都東山の新規ホテル運営:数量 6,500(実際に販売した客室稼働泊数(室泊・年))× 価格 0.00(販売客室1室1泊当たりの売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。25室の稼働率約71%、客室単価約4.5万円。運営黒字でも建設資金に対する収益は限定的。
- 売電・その他小規模事業:数量 950(売電電力量(MWh・年換算、推計))× 価格 0.00(売電電力量1MWh当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既存発電設備の劣化と売電契約条件を踏まえ、単価は物価に追随しない。
倍率:2036年ROE=7.4÷75.74=9.77%。k=8.0%、通常の堀で残存割合1/2のためRONIC=8.89%。長期名目成長率g=2.7%を用い、正当化PER=(1−2.7%÷8.89%)÷(8.0%−2.7%)=13.13倍。ROEは資本配分後の結果であり、売上成長をROEから逆算していない。現在・過去・同業のPERは倍率決定には用いない。
確率:送電網整備と老朽設備更新は構造的に必要であり、2026年の受注減少を永久的な需要喪失とはみない。一方、過去10年のROE中央値は7.7%で、直近の高利益率には一過性要因もある。広島事業の通年寄与を認めつつ、利益率とホテルの収益性には慎重な中間値を採用した。
やや悲観 26% 受注回復が鈍く、工事採算とホテル収益が悪化 利益 3 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 660 円42 億円
送電網の更新工事は続くものの、電力会社が資本支出を抑制し、大型案件の発注間隔が長くなる。宮城丸森幹線などの実績は残るが、それに続く工事を同じ採算で受注できない。技能者を維持する費用は上がり、工事単価への転嫁は遅れる。施工量は現在より減り、営業利益率は過去の好調期から大幅に低下する。
設備事業では、再生可能エネルギーの事業採算悪化や系統接続の遅延で投資決定が先送りされる。蓄電池・データセンター関連の仕事は残るが、大手工事会社と競合する案件が増え、薄い利益で受注するようになる。建物管理の現場業務は広島の契約を加えた規模をある程度維持するものの、契約単価は労務費の上昇に追いつかない。
管理会計・集金・契約事務はAIエージェント代替と顧客の内製化により数量が縮み、値決め力も弱くなる。京都のホテルは開業しているが、期待した宿泊単価が得られず、償却後の営業損失が続く。借入利息と維持費が株主に帰属する利益を減らす。配当と優待は完全にはなくならないが、低い利益と運転資金の必要額に応じて還元規模を抑える。会社は存続し、社会に必要な仕事を続けるものの、増えた自己資本に見合う利益を生み出せない。
- 送電鉄塔・架線・電力設備工事:数量 45.0(超高圧鉄塔・架線工事の標準鉄塔基換算施工量(基換算・年、推計))× 価格 1.87(標準鉄塔基換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 4 億円。標準施工量は現状以下。価格の伸びも物価を下回り、施工費上昇で利益率が低下。
- 再エネ・蓄電池・受変電設備工事:数量 10.0(標準特高変電所・受変電設備工事の案件換算数量(件相当・年、推計))× 価格 2.32(標準設備工事1件換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。再エネ設備投資の遅延と競争入札で数量が減少。
- 建物管理・清掃・点検・修繕:数量 1,750(建物管理・清掃・修繕の標準物件年換算数(棟年相当、推計))× 価格 0.02(標準物件年換算当たり受託売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。広島の買収効果は一部残るが、契約の純増が止まり現場人件費が重い。
- 賃貸管理・集金・会計・契約事務:数量 360(年間管理事務の標準受託契約換算数量(件相当・年、推計))× 価格 0.01(標準管理事務契約1件換算当たり年間売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により契約数量は現在の0.60倍。単価も物価上昇に届かない。
- 京都東山の新規ホテル運営:数量 5,200(実際に販売した客室稼働泊数(室泊・年))× 価格 0.00(販売客室1室1泊当たりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。稼働率約57%、客室単価約3.5万円。償却・固定費を吸収できない。
- 売電・その他小規模事業:数量 800(売電電力量(MWh・年換算、推計))× 価格 0.00(売電電力量1MWh当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。既存売電設備の採算低下。
倍率:ROE=3.1÷61.74=5.02%とk=8.0%を下回る。超過成長から価値は生まれないため、稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍を使用し、それを下回る11.0倍を採用する。工事利益率低下とホテルの低収益を純利益に含め、資産に帳簿以上の高倍率を掛けない。
確率:電力会社二社への顧客集中、設備事業の2026年受注計画の落ち込み、ホテルと借入の固定費を踏まえると、利益率が通常より低下する可能性は無視できない。建物管理の現場業務は残るため、全面的な事業喪失ではなく持続的な低採算を想定する。
悲観 14% 大型送電工事を失い、ホテルと買収資産が重荷になる 利益 0 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 487 円31 億円
大口電力会社の発注方針が変わり、ETSグループは大型鉄塔工事の競争で継続的に受注を失う。地域の送電網更新自体は続くが、資本力と人員数に勝る大手施工会社へ仕事が流れる。技術者の退職と採用難が重なり、受注可能な工区が減る。完成工事単価には労務費の上昇を十分に反映できず、専門工事会社としての利益率を維持できなくなる。
設備事業も競争入札で低採算案件が増え、受注を続けても赤字が発生する。再生可能エネルギーの投資計画は、開発事業者の資金調達条件や電力価格次第で延期される。工事収入が減る一方、現場管理者、保証対応、借入金利などの費用はすぐには減らせない。過去の大型受注が終わった後の仕事を埋められず、本業の資本効率が大きく低下する。
広島で取得した管理事業では一部契約が失われ、会計・集金事務はAIエージェントと顧客の内製化で縮小する。現場の清掃・点検は残るが、労務費の上昇に価格改定が追いつかない。京都のホテルも稼働率と宿泊単価が低迷し、営業損失と固定資産の減損が発生する。収益の回復より借入返済と運転資金の確保を優先するため、株主還元は小さくなる。会社そのものの存続を否定する筋書きではないが、従来の施工実績という堀が弱まり、帳簿上の利益をほとんど生まない事業に変わる。
- 送電鉄塔・架線・電力設備工事:数量 32.0(超高圧鉄塔・架線工事の標準鉄塔基換算施工量(基換算・年、推計))× 価格 1.75(標準鉄塔基換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。大口送電工事の継続受注に失敗。標準施工量は現在の約3分の2。
- 再エネ・蓄電池・受変電設備工事:数量 6.0(標準特高変電所・受変電設備工事の案件換算数量(件相当・年、推計))× 価格 2.00(標準設備工事1件換算当たり年間完成工事高(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。発電・蓄電設備の案件が減少し、施工間接費を吸収できず赤字。
- 建物管理・清掃・点検・修繕:数量 1,450(建物管理・清掃・修繕の標準物件年換算数(棟年相当、推計))× 価格 0.02(標準物件年換算当たり受託売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。現場業務は残るが契約を失い、価格転嫁も遅れる。
- 賃貸管理・集金・会計・契約事務:数量 240(年間管理事務の標準受託契約換算数量(件相当・年、推計))× 価格 0.01(標準管理事務契約1件換算当たり年間売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替と顧客内製化で数量0.40倍。事務BPOの価格も維持できない。
- 京都東山の新規ホテル運営:数量 3,800(実際に販売した客室稼働泊数(室泊・年))× 価格 0.00(販売客室1室1泊当たりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。稼働率約42%、客室単価約2.6万円。借入利息を引く前から損失。
- 売電・その他小規模事業:数量 600(売電電力量(MWh・年換算、推計))× 価格 0.00(売電電力量1MWh当たりの売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。売電採算が一段と悪化。
倍率:2036年の純利益は0.35億円、ROEは約0.76%で資本コスト8%を大きく下回る。利益の永続倍率ではなく、2025年9月期の出発点である自己資本34.44億円を基準とする。2026年の広島事業取得に伴うのれん約2.58億円の回収不能と、工事債権等の追加回収損約0.86億円を悲観的な資産価値減額として見込み、床を約31億円と推計した。したがって34.44億円×0.90=約31.0億円。2036年の自己資本45.99億円に0.90倍を掛けてはいない。2036年自己資本は10年間の累積利益、還元およびホテル等の減損を経た会計上の値であり、追加留保分の額面を悲観の床へ足さない。
確率:主要電力会社からの大型工事の喪失、設備事業の構造的な縮小、ホテルの失敗、買収のれんの回収不能が重なる複合的な負け筋である。需要が完全には消えない業種のため過半の確率は与えないが、過去には営業赤字の期もあり、深い下振れを14%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
送電鉄塔・架線・電力設備工事
電力会社向けの超高圧送電線、鉄塔新設、架線、更新、点検および補修。施工実績と現場管理が競争力の中心。
| 数量超高圧鉄塔・架線工事の標準鉄塔基換算施工量(基換算・年、推計) | 価格標準鉄塔基換算当たり年間完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 48.7 | 1.49 | 73 | 4 |
| 10 年後 中立 | 56.0 | 2.00 | 112 | 7 |
取り方:会社の2026年第3四半期説明資料が開示する2025年9月期の電力事業売上高72.76億円を起点にした。宮城丸森幹線第4工区の新設鉄塔51基、累計受注額76.19億円という実際の工事から、鉄塔1基当たり約1.494億円を数量の換算単価の手掛かりとした。72.76÷1.494=48.7基換算であり、2025年度に実際に48.7基を建設したという主張ではない。架線、保守、複数年度工事の進捗を一つの標準施工量に換算する推計である。送電鉄塔の年間施工基数と事業別営業利益は開示されていないため、営業利益は電気工事業合計5.15億円を電力・設備の工事内容から配賦した推計値。資料:https://www2.jpx.co.jp/disc/253A0/140120260803506500.pdf
再エネ・蓄電池・受変電設備工事
風力・太陽光発電所の特別高圧変電所、蓄電池、データセンターや工場向け受変電設備、屋内電気工事。
| 数量標準特高変電所・受変電設備工事の案件換算数量(件相当・年、推計) | 価格標準設備工事1件換算当たり年間完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 12.0 | 1.89 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 2.54 | 41 | 2 |
取り方:会社開示の2025年9月期設備事業売上22.72億円を使用。工事の実件数、出力容量、設備別平均受注単価は非開示のため、大型受変電設備・風力発電所向け変電所などを12件の標準案件換算と仮定した。この数量は実際の契約件数ではなく、売上22.72億円を平均1.893億円の案件に換算した工事量である。2026年10月の石川県風力発電所向け特別高圧変電所受注は、数量を定義する工事種類の具体例にすぎず、契約価格は推測で補っていない。営業利益は電気工事業全体の開示利益からの推計配賦。
建物管理・清掃・点検・修繕
マンションやビルの現場管理、清掃、設備点検、修繕、内外装工事。現場作業を要するためAIだけでは施工できない。
| 数量建物管理・清掃・修繕の標準物件年換算数(棟年相当、推計) | 価格標準物件年換算当たり受託売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,000 | 0.01 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,050 | 0.02 | 38 | 3 |
取り方:監査済み2025年9月期の不動産関連売上高約16.86億円のうち、現場管理・清掃・修繕に13.86億円を仮配分した。会社は管理棟数、契約戸数、清掃契約件数を公表していないため、1標準物件当たり年間約138.6万円の業務を1,000棟年換算した推計であり、実際の管理棟数ではない。管理業務の中でAI代替可能な事務部分と、物理的な現場作業を分けるための分析上の区分である。2026年の広島事業取得による数量増加は将来のシナリオに含め、2025年の基準売上には遡及して加えていない。
賃貸管理・集金・会計・契約事務
建物管理に付随する集金、管理組合会計、契約管理、事務連絡など。人の事務工数に依存する部分を独立して評価する。
| 数量年間管理事務の標準受託契約換算数量(件相当・年、推計) | 価格標準管理事務契約1件換算当たり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 600 | 0.01 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 390 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:不動産関連売上約16.86億円のうち3.0億円、約18%を管理組合会計・集金・契約事務等の人月・工数型に仮配分した。会社が工数別売上を開示しているわけではなく、600件×年間50万円は契約換算の推計である。AIエージェント代替の型は『人月・工数で売る事務系BPO』を適用する。中立の10年後数量390件相当は現在の0.65倍、単価は1.30倍とし、指定された数量0.55〜0.75倍、価格1.34倍以下の範囲を守る。集金・会計システムが独自データの正本として強い堀を持つことを示す、低解約率や移行年数などの証拠は2件以上確認できないため、『記録の正本』型には分類しない。
京都東山の新規ホテル運営
京都市東山区で建設する25室のホテル。2027年10月の開業を予定するが、現基準期には営業実績がない。
| 数量実際に販売した客室稼働泊数(室泊・年) | 価格販売客室1室1泊当たりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,500 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:2025年9月期にはホテル営業が始まっていないため数量・売上・営業利益はゼロ。価格0.00031億円は開業後を試算するための参考仮定であり、実績単価ではない。会社開示の客室数25室、建設費約12億円、2027年10月開業予定を使用。京都市観光協会による2025年の主要ホテル平均客室単価21,286円と稼働率80.6%を外部比較の起点とし、高付加価値型であることを踏まえて各筋書きの客室単価を別途設定した。開業後の最大販売可能泊数は25室×365日=9,125室泊。資料:https://www2.jpx.co.jp/disc/253A0/140120260212557294.pdf、https://www.kyokanko.or.jp/report/hotel2025
売電・その他小規模事業
既存の売電収入など。全社価値への寄与は小さく、本業の施工数量とは分ける。
| 数量売電電力量(MWh・年換算、推計) | 価格売電電力量1MWh当たりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,000 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 950 | 0.00 | 0 | 0 |
取り方:2025年9月期決算短信の売電事業収入は約0.266億円。実際の発電量と契約単価の内訳は非開示のため、年間約1,000MWh、1MWh当たり約2.7万円の換算とした。年間1,000MWhは実発電量ではない。売電事業は売上原価段階で赤字だったが、分析上のセグメント営業利益はゼロとして、本社・連結調整と合わせて連結営業利益を整合させている。
リスクと懸念
大型工事の受注残消化と顧客集中
2025年9月期の連結売上の約45%を東北電力ネットワークと東京電力パワーグリッドが占める。2026年第3四半期の受注残は109.34億円あるが、累計新規受注は前年同期から78.7%減少した。会社は大型案件の消化を優先したことを説明しており、直ちに需要減少とは言えない。ただし、完工後の新しい工事を同じ規模・利益率で獲得できなければ、翌期以降の利益が急減する。
労務費・資材費・工期遅延
送電鉄塔や受変電設備の工事には、資格を持つ技能者、鋼材、電線、重機、協力会社が必要である。人手不足と物価上昇は請負単価を引き上げる一方、契約後に発生する追加費用は必ずしも全額転嫁できない。大型工事では天候、用地交渉、安全事故、工法変更による遅延が一つの案件の採算を変える。過去には営業赤字の期もあるため、現在の高い利益率を固定的な実力とみなさない。
ホテル新規参入と長期借入
京都のホテルは25室と小規模であり、約12億円の建設費に加えて土地、開業準備、維持修繕が必要になる。借入予定額は13億円、期間は32年で、担保とグループ内保証も伴う。客室稼働率が高くても宿泊単価や人件費次第で償却後の利益は小さくなり得る。運営実績のない時点で、本業の送電工事と同じ収益率を長期に見込むことは危険である。
親会社との取引と買収後の収益性
2026年の広島不動産管理事業の取得は、親会社を売り手とする関連当事者取引である。4億円の取得価格については独立した第三者のDCF評価と独立役員の意見があり、価格を直ちに不公正とは判断しない。一方、買収した管理契約が維持されるか、取得に伴うのれんが利益で回収できるか、追加買収も同じ規律で行われるかは別問題である。支配株主と少数株主の利害が一致し続けるかを監視したい。
AIエージェント代替
送電鉄塔の建設、架線、現場の清掃や設備点検は、AIエージェントだけで物理的に代替できない。一方、賃貸管理の集金、契約更新、問い合わせ、管理組合会計、報告書作成などは自動化・内製化が進む余地が大きい。分析上は不動産関連売上の約18%を事務系BPO型と推定し、中立で10年間の契約換算数量が35%減るとした。どの業務がどれだけの売上を占めるかは未開示であり、今後の確認が必要である。
営業キャッシュフローと借換え条件
2025年9月期は純利益が黒字でも営業キャッシュフローが約10.6億円の流出となった。大型工事の売上債権、前払金、未成工事の資金負担が大きいためである。2026年にはホテル向け融資、親会社からの事業取得資金、財務制限条項付きの資金調達も加わる。将来の金利が上昇する前提では、借換え後の利払いと財務制限条項の余裕を確認しないまま、会計上の利益を株主の自由な現金とみなすことはできない。
今後の分かれ目
- 宮城丸森幹線などの大型工事が完工した後も、電力事業の年間新規受注が100億円規模へ回復し、受注残が維持されたら
- 送電工事の施工量と顧客内シェアの見通しを上方修正する。受注残だけでなく工事ごとの利益率と営業キャッシュフローを確認し、やや楽観の確率を引き上げる。
- 設備事業の新規受注が2026年の極端な低水準から回復せず、翌期以降の完成工事高も減少したら
- 再エネ・蓄電池・データセンター向けの数量回復という中立前提を下げる。設備事業の固定費と人員維持費も踏まえ、やや悲観・悲観への確率配分を増やす。
- 京都ホテルの開業後2〜3期で、償却と維持費を引いた営業利益が継続して黒字となり、借入利息を控除しても投下資本利益率が8%を超えたら
- ホテル事業が株主価値を増やす根拠になる。客室稼働泊数と平均単価の実績でホテルの数量・価格前提を更新し、楽観側の確率を引き上げる。
- 広島の管理事業が売上高10億円規模と営業利益率約9%を維持し、買収に伴うのれんの減損も発生しなかったら
- 2026年の買収が資本コストを超える収益を生んでいる可能性を評価する。ただし取得価格4億円に対する税後利益と維持投資を確認してから、追加買収の価値を認める。
- 営業キャッシュフローが2期以上連続して純利益に見合う水準で黒字化し、純有利子負債が減少したら
- 現金回収の不確実性を小さく評価し、配当・自社株買いに使える余力を見直す。反対に黒字でも現金流出が続くなら、長期の還元と利益の価値を引き下げる。
- 建物管理の集金・会計・契約事務がAIエージェントによる自動化で値下げされ、管理契約数の維持にもかかわらず事務収入が減少したら
- 事務系BPO部分の数量と単価を悲観側に修正する。現場での清掃・修繕まで同じ割合で縮むとは扱わず、業務区分ごとの売上と利益を確認する。
見ておくもの
- 電力事業・設備事業それぞれの年間受注高、完工高、受注残の推移
- 宮城丸森幹線と山形幹線など大型案件の工事進捗率、追加工事、予定原価の変更
- 東北電力ネットワークと東京電力パワーグリッドへの売上依存度
- 電気工事業の営業利益率と、労務費・鋼材費・協力会社費用の価格転嫁実績
- 営業キャッシュフロー、工事売上債権、前払金、純有利子負債、短期借入と借換え条件
- 広島不動産管理事業の買収後売上・利益・契約維持率・のれん残高
- 京都ホテルの開業時期、建設費超過、年間客室稼働泊数、平均客室単価、償却後営業利益
- 配当と株主優待を合わせた総還元率30%以上の達成状況
- 親会社との追加取引、第三者価値算定、独立役員による利益相反防止手続き
- 建物管理における現場業務とAIエージェント代替可能な事務業務の売上比率
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額は約64.3億円だが、この数字を事業数量、利益率、倍率の設定には使っていない。送電工事は超高圧鉄塔の実際の受注契約を参考に標準施工量を推計し、設備工事は標準案件換算、建物管理は物件・事務契約換算、ホテルは25室の稼働泊数と客室単価で積み上げた。数量は実質、価格は名目とし、物価3%を二重に数えていない。利益率には過去の好調と不振の両方を反映し、2026年の一過性の好採算を恒久化していない。中立のPERはk8%、長期成長率2.7%、超過収益の残存割合から計算した。悲観のPBRは2036年の積み上がった自己資本でなく2025年の出発点に掛けた。新リース会計による表示変更は実際の家賃・事業価値の増減と区別し、10年後も比較可能な利益概念で評価する。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、値決め力の弱さ0.5%を加えた。β・時価総額規模による補正はしない。