結論
NITTOH は、名古屋を拠点に、ガス床暖房や防水などの住宅の改修、シロアリの予防と駆除、ビルの清掃・管理を手がける小さな会社だ。名証メイン市場に上場している。筆者の結論は「やや割安」である。自己資本比率は 64.6% と高く、純現金は時価総額の半分近くあり、PER は 7 倍台にとどまる。
稼ぐ力は派手ではない。営業利益率は 4% 前後で、成長は物価並みだ。強い堀があるわけでもない。それでも、この値段は利益の安定さに見合っていない。赤字の年がなく、財務に不安がなく、配当性向は 25% と低く、還元の余地が大きい。
10 年後の中立でも、今の時価総額を超える。評価を下げる材料は、ガス床暖房と新築の細りだ。ただし赤字に転じる悲観の筋書きでも、現金と売れる資産が床になる。
筆者がいちばん気にしているのは、事業の質より資本の使い方だ。現金が積み上がっても株主に回らなければ、安い株は安いままになる。それでも利益が出続ける限り、時間は株主の味方だと見ている。会社の中期目標にある ROE 8% は、現金を適切に戻すだけでも近づく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業の続く力を問う。住宅の改修、防除、ビルの管理は、景気に左右されにくく、10 年後も必要とされる。わからない事業ではない。
次に、稼ぐ力と値段のバランスだ。利益率は 4% 前後と低いが、赤字の年がなく、財務も堅い。PER は 7 倍台で、純現金を引けば実質の PER はさらに低い。
経営の資本の使い方には、物足りなさがある。配当性向は 25% で、現金は積み上がっている。会社の中期目標である ROE 8% に届かない理由の 1 つは、現金を持ちすぎていることだ。
最後に安全域だ。10 年後の中立でも、時価総額は今を超える。悲観でも、現金と売れる資産が床になる。優良企業というより、値段が安い堅実な会社だ。筆者は、利益が伸びなくても、還元が増えるだけで評価が上がる会社だと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つに分かれる。いちばん大きいのは建設工事で、売上の約 7 割を占める。東邦瓦斯と組んだ温水床暖房の工事、太陽光の設置、リフォーム、防水、不動産の販売・仲介が柱だ。東邦瓦斯は主要な取引先であり、主要な仕入先でもある。
次に、住宅等サービスだ。シロアリの予防と駆除、床下の防湿、害虫・害獣の駆除、植栽管理を行う。売上は 14 億円ほどで小さいが、営業利益率は 12% と、3 つの中でいちばん高い。シロアリは 5 年ごとの再予防が前提で、既存の戸建てが顧客になる。愛知県経済農業協同組合連合会を通じた取引が、このセグメントの約 2 割を占める。
3 つ目は、子会社ビルワークのビルメンテナンスで、東京を拠点にビルの窓・外壁の清掃やマンションの管理を請け負う。売上は 20 億円、利益率は 8% だ。
連結の従業員は 439 人で、このうちビルメンテナンスが 192 人を占める。工事は外注に頼る比率が 6 割あり、自社で職人を抱え込まない身軽な体制だ。
名古屋市中川区に本社を置き、春日井、名古屋東、瑞穂、三河、岐阜、東京西、大阪、奈良に拠点を持つ。直近は、京滋地区の営業所を新設するため、事務所の用地を取得した。設備の重い事業ではなく、減価償却の負担は小さい。
優良さと弱いところ
堀と呼べるのは、地域の取引関係と許認可の積み重ねである。1973 年にシロアリ工事を始め、公共施設の防除の資格を持つ。2003 年には国土交通大臣の特定建設業の許可を得た。東邦瓦斯との関係も、床暖房の工事で長く続いている。ただ、どれも他社が入れない壁ではない。値段を自分で決める力は強くない。
強いのは財務の堅実さだ。赤字の年はなく、借入は小さい。自己資本比率は 64.6% で、現金は 18 億円ある。景気の悪い年でも、財務が痛むことは考えにくい。
弱い点は、利益の水準だ。営業利益率は 2.7% から 5% の間を行き来し、会社が掲げる経常利益率 5%・ROE 8% には届いていない。前期の建設工事の利益は、1 年で 87% 増えたが、これは反動を伴いやすい。
経営は堅実だが、資本の使い方には改善の余地がある。配当性向は 25% で、自社株買いはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
新築の戸建ては、人口の減少で長く細っている。その分、既存の住宅を直す需要が増える。築 30 年を超える戸建てが増え、防水・外壁・床下・シロアリの手当てが必要になる。会社が新築より、既存住宅の改修と維持管理に力を入れているのは、この流れに合っている。
ただし競争は激しい。リフォームは住宅設備メーカー系の施工店、ホームセンター、地場の工務店が入り乱れ、値段で選ばれやすい。シロアリ防除は、大手の防除業者と地域の小さな業者が混在する。
ガスの床暖房は、電化と脱炭素の流れで逆風が吹く。東邦瓦斯を通じた工事が細れば、建設工事の収益が落ちる。その代わりに太陽光や蓄電池、断熱の工事を足せるかが分かれ目だ。
ビルメンテナンスは人手不足が最大の課題だ。2024 年からの残業規制と最低賃金の上昇で人件費が上がり、価格転嫁できるかで利益が決まる。
業界全体の数量は、実質で横ばいから微減と見る。価格は物価並みに上がる。
追い風もある。築古の戸建ての増加、断熱改修への補助金、電気代の上昇による省エネ需要が、リフォームの底を支える。シロアリは気候の温暖化で活動期間が延び、予防の必要性が高まっている。地域に根ざした業者が、信頼で選ばれやすい分野でもある。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026/03 期の配当は 配当性向は 24.8%。自社株買いはない。方針は「長期的に安定した利益還元」で、数字の約束はない。
現金は 18 億円あり、純現金は約 11 億円と、時価総額の半分近い。設備投資は小さく、事業に使う現金は多くない。余った現金の戻り方は、筆者は 0.75 と見る。還元の実績はあるが、方針が弱い。筆頭株主が 2 割台後半を持っており、今後の方針は読みにくい。
政策保有株は 5 銘柄で 1.4 億円と小さい。M&A の実績は、ビルメンテナンスの子会社くらいで、大型の買収はない。
TOB や再編の可能性は、否定できない。時価総額が小さく、現金が厚い。ただ、噂の段階であり、価値の計算には入れていない。
10 年の還元は、配当性向を 3 割に引き上げた形で、純利益の合計の約 3 割に置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
財務は無借金に近く、赤字の年がない。純現金は時価総額の半分近くあり、PER は 7 倍台にとどまる。売上は 15 年で約 1.6 倍に伸び、2027/03 期も増収の計画だ。新築が減る分、既存住宅の改修とシロアリの再予防が増える。会社の方針は、この需要に合っている。
前期の建設工事は、営業利益が 1 年で 87% 増えた。体質が変わったのか、単発なのかは見極めが要るが、方向は良い。配当性向は 25% と低く、3 割に上げるだけで還元は 2 割増える。現金が厚いので、自社株買いも選べる。筆頭株主が 2 割台後半を持つ株主構成なので、資本政策が変わる余地もある。小さな時価総額に対して、現金と利益の安定が評価されていない。ビルメンテナンスの子会社は、利益率が 8% 近く、自己資本比率も 8 割と高い。これを単体で値付けすれば、親会社の時価総額の相当部分を説明できる。景気の波が小さく、この安定も評価されていない。
慎重な見方
営業利益率は 4% 前後で、直近 12 年の最良の年でも 5% 台だ。会社が掲げる経常利益率 5%・ROE 8% は、目標のまま達成されていない。前期の建設工事の利益 87% 増は、前々期が低かった反動の面があり、続くとは限らない。
ガス床暖房は電化の流れで逆風だ。東邦瓦斯への依存は強く、工事は外注に 6 割頼る。新築は減り続け、リフォームは大手との値下げ競争になる。ビルメンテナンスは人手不足で、価格転嫁が進まなければ利益は削られる。
現金が厚くても、使い道を決めるのは経営と筆頭株主で、少数株主には届きにくい。配当性向 25% は長く続いており、還元が増える保証はない。安い株が安いままであり続ける、いわゆるバリュートラップの典型にもなり得る。小さな会社は情報が少なく、悪い知らせが出ても気づきにくい。市場が長年この値段で放置してきたのには、それなりの理由があるはずだ。成長せず、現金も戻らない会社に、市場は高い値段を付けない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。財務の堅さと現金の厚さは、悲観でも床を作る。弱気の指摘する利益率の低さは確かだが、中立でも今の値段を超える計算になる。ただし堀が弱く、還元も約束されていないため、強気の筋書きの確率は 1 割にとどめ、中立と悲観側に厚く置いた。結果として、割安だが、確信度は高くない。割安の根拠は利益の成長ではなく、現金と財務の堅さにある。成長を当てにしない分、計算は保守的に組んである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,262 円51 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 266 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 765 円31 億円、今との差 +32.4%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,899 円118 億円 | 493 円20 億円 | +486.9% | +19.4% | 339 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,845 円75 億円 | 370 円15 億円 | +283.3% | +14.4% | 443 円18 億円 |
| 中立 | 35% | 1,373 円56 億円 | 271 円11 億円 | +184.6% | +11.0% | 576 円23 億円 |
| やや悲観 | 22% | 423 円17 億円 | 173 円7 億円 | +3.1% | +0.3% | 131 円5 億円 |
| 悲観 | 13% | 222 円9 億円 | 74 円3 億円 | −48.8% | −6.5% | 38 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,262 円51 億円 | 266 円11 億円 | +164.3% | +10.2% | 1,528 円62 億円 |
今の株価時価総額 578 円23 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 既存住宅の改修が伸び、利益率が 5% 台に乗る 利益 8 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,899 円118 億円
新築が減る中で、既存住宅の床暖房・防水・外壁などの改修とシロアリの再予防が重なり、建設工事の件数が 25% 伸びる。1 件あたりの単価も、ガス床暖房から断熱・太陽光・蓄電池を組み合わせた高単価の工事へ移り、物価を上回って上がる。ビルメンテナンスは人手不足で取引先が外注を増やし、価格転嫁も進んで利益率が 9% まで上がる。全社の営業利益率は 5% 台に乗り、会社が掲げてきた経常利益率 5% をようやく超える。配当性向は 3 割台へ上がり、自己資本も積み上がる。名古屋を中心に岐阜・三重・滋賀へ営業網が広がり、小さくても地域で選ばれる会社になる。利益の質が上がり、市場の評価も変わる。無借金の財務を生かして、小さな同業の買収に動く余地も生まれる。
- 建設工事(床暖房・太陽光・リフォーム・防水・不動産):数量 3,625(完工件数(件・年、推定))× 価格 379(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 9 億円。3,625 件 × 1 件 379 万円(今の 1.42 倍)、営業利益率 6.5%
- 住宅等サービス(シロアリ・防湿・害虫獣駆除):数量 8,400(施工件数(件・年、推定))× 価格 24(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。8,400 件 × 1 件 23.8 万円、営業利益率 14%
- ビルメンテナンス(子会社ビルワーク):数量 210(稼働人員(人、正社員ベース))× 価格 1,580(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。210 人 × 1 人 1,580 万円、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 14.42 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が中期目標に掲げる経常利益率 5% と ROE 8% を 10 年続けて満たす筋書き。直近の改善は前期の 1 回だけで、連続は難しいので 1 割にとどめた。
やや楽観 20% 利益率は戻り、増収が利益に変わる 利益 6 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,845 円75 億円
リフォームとメンテナンスの需要が底堅く、建設工事の件数は 1 割ほど増える。シロアリ予防は戸建ての老朽化で再予防が続き、単価は物価並みに上がる。ビルメンテナンスは価格転嫁が進み、利益率が 8.5% に上がる。全社の営業利益率は 4.5% 前後で、前期並みか少し上の水準だ。これは直近の最良の年より下であり、無理のない置き方である。配当性向は 3 割へ上がり、1 株あたりの配当は着実に増える。ビルワークの人員確保が進み、関東の取引先も増えて、グループ全体の安定性が高まる。防水や外壁の改修で、築年数の古い戸建ての需要を着実に取り込む。
- 建設工事(床暖房・太陽光・リフォーム・防水・不動産):数量 3,250(完工件数(件・年、推定))× 価格 368(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 7 億円。3,250 件 × 1 件 368 万円(今の 1.38 倍)、営業利益率 5.5%
- 住宅等サービス(シロアリ・防湿・害虫獣駆除):数量 8,000(施工件数(件・年、推定))× 価格 23(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。8,000 件 × 1 件 23.3 万円、営業利益率 13%
- ビルメンテナンス(子会社ビルワーク):数量 195(稼働人員(人、正社員ベース))× 価格 1,482(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。195 人 × 1 人 1,482 万円、営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 13.1 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期の営業利益率 3.9% と会社予想 3.6% の間で、件数が少し増えて利益率が 4.5% 前後に乗る筋書き。直近 12 年の最良 5.1% より下に置いた。
中立 35% 堅実に物価並みに伸び、利益率は会社予想どおり 3.6% 前後 利益 4 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,373 円56 億円
建設工事の件数は横ばいで、床暖房のガス需要が細る分を、防水・太陽光・外構などの改修が埋める。シロアリの予防・駆除は戸建てのストックが減るため件数が 5% ほど落ち、単価は物価並みに上がる。ビルメンテナンスは人手の確保が難しく、受けられる件数が増えない一方、価格転嫁は進む。全社の営業利益率は 3.6% で、会社の予想と変わらない。外注に頼る比率が 6 割と高いため、人件費の上昇は価格に転嫁できるが、利益率を押し上げるほどの力はない。配当性向は 3 割に引き上げ、残りの利益は自己資本として積み上がる。
- 建設工事(床暖房・太陽光・リフォーム・防水・不動産):数量 2,900(完工件数(件・年、推定))× 価格 358(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 5 億円。2,900 件 × 1 件 358 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 4.8%
- 住宅等サービス(シロアリ・防湿・害虫獣駆除):数量 7,600(施工件数(件・年、推定))× 価格 23(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。7,600 件 × 1 件 22.8 万円、営業利益率 12.5%
- ビルメンテナンス(子会社ビルワーク):数量 190(稼働人員(人、正社員ベース))× 価格 1,394(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。190 人 × 1 人 1,394 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 7.8%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 13.36 倍、時価総額 53 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 3.6% は会社が 2027/03 期に出した予想とほぼ同じで、直近 12 年の平均 4% 台より下。最も確度が高い置き方として厚くした。
やや悲観 22% 新築と床暖房が細り、件数と利益率が下がる 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 423 円17 億円
新築戸建ての着工が減り、ガスを使った温水床暖房の工事が細る。建設工事の件数は 15% 減り、リフォームの競合(住宅設備メーカー系の施工店や地場の工務店)との価格競争で、単価の伸びも物価に届かない。シロアリ駆除も、人口減と防除薬剤を扱う大手との競争で件数が減る。営業利益率は 2% 弱に下がるが、固定費の重い会社ではなく赤字までは行かない。配当は維持するが、増配の余地は小さい。ビルメンテナンスも賃上げが先行し、利益率が下がる。財務の堅さは保たれ、会社が傾く心配はないが、利益は伸びず、現金だけが積み上がる 10 年になる。
- 建設工事(床暖房・太陽光・リフォーム・防水・不動産):数量 2,465(完工件数(件・年、推定))× 価格 347(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 3 億円。2,465 件 × 1 件 347 万円(今の 1.30 倍)、営業利益率 3.5%
- 住宅等サービス(シロアリ・防湿・害虫獣駆除):数量 6,800(施工件数(件・年、推定))× 価格 22(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。6,800 件 × 1 件 22.1 万円、営業利益率 10%
- ビルメンテナンス(子会社ビルワーク):数量 185(稼働人員(人、正社員ベース))× 価格 1,404(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。185 人 × 1 人 1,404 万円、営業利益率 6.5%
倍率:ROE 2.7% が k 8.0% 以下で、稼ぐ力から出す。やや悲観は伸びと利益の質を低く見て、正当化の上限 12.5 倍の約 6.4 割の 8.0 倍に置いた。余った現金は戻り方 0.75 の額を足した。
確率:前期は建設工事の営業利益が 1 年で 87% 増えた。反動があり得るうえ、新築戸建ての減少とガス床暖房の縮小は数量の構造的な減少だと見て、やや厚めに置いた。
悲観 13% 需要の細りで赤字になり、売れる資産が床になる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 222 円9 億円
ガス会社を通じた床暖房工事がほぼ消え、新築向けの工事も減る。建設工事の件数は 3 割減り、固定の人件費と事務所の費用が残って営業赤字になる。シロアリ防除は大手との値下げ競争に巻き込まれ、利益率が 6% まで下がる。ビルメンテナンスも賃上げを価格に転嫁できず、利益が薄くなる。減損を出して自己資本は 45 億円ほどに減るが、無借金に近い財務は保たれ、会社は存続する。名古屋の本社の売却や拠点の統廃合で、規模を縮めて黒字を取り戻す道も残る。経営の選択肢は狭まり、事業の縮小や撤退も視野に入る。少数株主には現金の使い道を決める力がなく、純現金の半分が株主に戻る程度と見る。
- 建設工事(床暖房・太陽光・リフォーム・防水・不動産):数量 2,030(完工件数(件・年、推定))× 価格 334(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。2,030 件 × 1 件 334 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 1.5%
- 住宅等サービス(シロアリ・防湿・害虫獣駆除):数量 5,600(施工件数(件・年、推定))× 価格 21(1 件あたり売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。5,600 件 × 1 件 21.3 万円、営業利益率 6%
- ビルメンテナンス(子会社ビルワーク):数量 175(稼働人員(人、正社員ベース))× 価格 1,352(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。175 人 × 1 人 1,352 万円、営業利益率 4.5%
倍率:稼ぐ力は赤字で値が付かず、床は純現金と売れる資産の税後。今の自己資本 49.3 億円に 0.2 倍を掛けた。
確率:ガス床暖房の需要消失と新築の急減、大手との競争が同時に来る構造的な負けの筋書き。連続して起きる確度は低く、1 割台前半にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設工事(床暖房・太陽光・リフォーム・防水・不動産)
東邦瓦斯と組む温水床暖房のほか、太陽光、リフォーム、防水、不動産の販売・仲介。売上の約 7 割。
| 数量完工件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,900 | 267 | 77 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,900 | 358 | 104 | 5 |
取り方:有報の建設工事の売上 77.4 億円を、小口のリフォームから大きな工事まで平均 267 万円として、件数を約 2,900 件と推定した。件数は実質、物価と大型化は 1 件あたり売上に入れた。営業利益 4.0 億円は有報のセグメント値。
住宅等サービス(シロアリ・防湿・害虫獣駆除)
シロアリの予防・駆除、床下の防湿、害虫・害獣の駆除、植栽管理。売上の約 1 割。
| 数量施工件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 17 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 7,600 | 23 | 17 | 2 |
取り方:有報の住宅等サービスの売上 13.6 億円を 1 件約 17 万円(予防は 5 年ごと)として、約 8,000 件と推定した。区分別の開示はなく推定。営業利益 1.71 億円は有報のセグメント値。
ビルメンテナンス(子会社ビルワーク)
ビルの窓・外壁の清掃、マンションや公共施設の清掃管理。売上の約 2 割。
| 数量稼働人員(人、正社員ベース) | 価格1 人あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 192 | 1,040 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 190 | 1,394 | 27 | 2 |
取り方:有報のビルメンテナンスの売上 20.0 億円を、従業員 192 人で割った 1 人 1,040 万円とした(臨時の人員は売上に含まれる)。人員は実質の数量、賃金と物価は 1 人あたり売上に入れた。営業利益 1.58 億円は有報のセグメント値。
リスクと懸念
ガス床暖房の縮小
建設工事の主力は東邦瓦斯と組んだ温水床暖房だが、電化と脱炭素の流れでガスの需要は細る。この分を太陽光・蓄電池・断熱などで埋められなければ、建設工事の件数と利益が落ちる。東邦瓦斯への依存も強い。
新築戸建ての減少
人口が減り、新築の戸建てが細っている。会社は既存住宅の改修へ軸足を移しているが、リフォームは住宅設備メーカー系や地場の工務店との価格競争で、利益率が上がりにくい。
前期の利益の反動
建設工事の営業利益は、前期に 1 年で 87% 増えた。前々期が低かった反動の面があり、今期の 1Q は経常利益が 35% 減っている。体質が変わったかの見極めが要る。
人手不足と人件費
連結従業員 439 人のうち、ビルメンテナンスが 192 人。残業規制と最低賃金の上昇で、人件費が価格より速く上がれば利益が削られる。外注に 6 割頼る工事も、職人の確保と単価の上昇が課題になる。
少数株主に現金が届かない
純現金は時価総額の半分近いが、使い道は経営と筆頭株主が決める。配当性向 25%・自社株買いなしの状態が続けば、安い株が安いままになる。
取引先の偏り
愛知県経済農業協同組合連合会を通じた取引が住宅等サービスの約 24% を占める。東邦瓦斯も主要な取引先で、どちらかの方針変更が業績に響く。
今後の分かれ目
- 配当性向を 3 割以上へ引き上げる、または自社株買いを始めたら
- 余った現金の戻り方を 1.0 へ見直し、価値を引き上げる。
- 建設工事の営業利益率が 5% を 2 期続けて超えたら
- 体質が変わったと見て、強気側の筋書きの確率を上げる。
- 東邦瓦斯からの床暖房の受注が前年比で 2 割以上減ったら
- 建設工事の件数の前提を下げ、やや悲観側に寄せる。
- 筆頭株主が持株を増やす、または TOB の話が出たら
- 価値の計算とは別に、価格の見直し局面として注視する。
- ビルメンテナンスの利益率が 6% を割ったら
- 価格転嫁が進んでいないと見て、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 建設工事の営業利益率(四半期)
- 配当性向と自社株買いの有無
- 床暖房・太陽光・蓄電池の受注の内訳
- 純現金の増減と、筆頭株主の持株の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価(PER 7 倍台)に寄せず、件数 × 1 件あたり売上、人員 × 1 人あたり売上で 10 年を積んだ。k は基本 7.5% に quality +0.5%(値決め力)で 8.0%。中立は ROE 5.4% が k 以下なので PER の上限は 1÷k=12.5 倍で、その 8 割に置いた。全社費も物価で増やし、減価償却は小さい事業なので別立てにしていない。店舗・事務所の賃借は小さく、新リース会計(2028/03 期から)の影響は今の形にそろえて置いた。余った現金は純現金 11 億円から運転資金を引いた 6 億円で、戻り方 0.75 を掛けた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.42 倍・やや楽観 PER 10.6→13.1 倍・中立 PER 10→13.36 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。