結論
北海電工は、北海道電力グループの電気工事会社だ。売上の 7 割強は北海道電力と北海道電力ネットワークから受ける。上場は札幌証券取引所だけで、時価総額は 300 億円に満たない。筆者の結論は、10 年後の価値は今の値段を 2 割弱下回る、というものだ。
足元の稼ぎは過去最高である。2026 年 3 月期の営業利益率は 6.9% で、10 年前は 2% 前後だった。送配電の料金制度が変わって老朽設備の更新が増え、半導体工場向けの工事も加わった。それでも会社の目標は、2030 年度の営業利益 45 億円だ。今期の実績より低い。山の高さは、会社も承知している。
強みは、親会社の工事を安定して受けられることだ。弱みも同じ所にある。値段を決めるのは発注者で、利益は北電の投資計画に左右される。人手が足りない業界なので、単価は上がりやすい。ただ、施工班を増やせなければ、売上も増えない。
財務は堅い。有利子負債はなく、純現金は時価総額の 4 割強に当たる。ただ、現金は親会社の資金管理に預けてあり、株主に戻る道は細い。配当性向は 11% にとどまる。
利益の山と、戻りにくい現金。この二つが、今の値段の低さを割り引いて見る理由である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の質は悪くない。北電グループの工事を長年請け負い、施工の腕と顧客基盤が堀になっている。景気に左右されにくく、再投資も小さい。稼いだ利益が現金になりやすい事業である。
問題は、その現金が誰のものかだ。純現金は時価総額の 4 割強あるが、親会社の資金管理に預けてあり、株主に戻す方針は見えない。配当性向は 11% だ。経営者が資本を株主のために使う会社かを問えば、答えは慎重にならざるを得ない。
利益にも注意が要る。営業利益率 6.9% は、過去 12 年で最高だ。更新工事が重なった山であり、会社自身も、2030 年度の営業利益を今期より低く置いている。
払う値段の安全域を問う。現金の半分を認めても、山の利益が戻れば、価値は今の値段をやや下回る。割安とは言い切れない会社である。親会社が少数株主に報いる姿勢を示すまでは、確信度を上げにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、電気設備の工事だ。会社は設備工事業の単一セグメントで開示するが、中身は二つに分かれる。
一つは電力サポート事業だ。北海道電力と北海道電力ネットワークから、配電線・送変電設備・地中線の建設、保守、老朽設備の更新を請け負う。単体の完成工事高 718 億円のうち、北電関係は 550 億円を占める。広域の送電網の強化や、半導体工場向けの系統連系工事も、ここに入る。2019 年度には、ほくでんグループの配電事業を取り込み、売上が一段大きくなった。
もう一つは電力外事業だ。官庁や民間の電気設備、空調・管工事、再生可能エネルギーの工事を受ける。比率は 2 割台で、入札と相見積りが中心になる。再エネは大型の受注があったが、発電所側の事情で着工が繰り延べられ、売上は伸びていない。
連結の従業員は 1,794 人で、協力会社の職人を束ねて現場を回す。北電ネットワークが 55.6% を持つ親会社で、現金は親会社の資金管理に預けている。
2026 年 3 月期の売上は 724 億円、営業利益は 49.7 億円だった。受注残は単体で 410 億円と、前の年の 373 億円より増えた。一方、会社が 2027 年 3 月期に見込む営業利益は 47 億円で、減益の予想である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、北電グループの一員であることだ。配電設備の工事は、電柱や送電線を熟知した施工班が要る。親会社の仕事は、他社が簡単には入れない。災害時の復旧にも、グループの施工力が使われる。
売上の 7 割強を一つの顧客に頼るので、受注は安定している。反面、値段は発注者の力が強い。電力外では入札で競り、価格を自分で決めきれない。堀の強さは、そこで頭打ちになる。
資本の面では、有利子負債がなく、自己資本比率は 67% と厚い。ただ、稼いだ現金は親会社の資金管理に預け、配当性向は 11% にとどまる。株主に戻す気配は薄い。株主から見た資本効率は、事業の力より低く出る。ROE は 10% まで上がったが、過去 10 年の中央値は 4% ほどだった。
人手の面では、平均年齢が 46 歳で、技能者の確保が課題だ。人手不足は単価の追い風だが、施工力が足りなければ受注を絞ることになる。
地盤が北海道だけという点も弱い。人口が減る地域で、民間の新設工事は伸びにくい。同じ領域の電力系電気工事の中でも、規模は小さい側にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
道内の電気工事は、北電の投資で決まる部分が大きい。2023 年度から、送配電の料金は、事業者の費用を見込んで上限を決める制度になった。レベニューキャップである。老朽設備の更新が計画に入り、電力サポートの工事は大きく増えた。会社も、この水準が続くと見ている。
新しい需要もある。北海道では、次世代半導体の工場やデータセンターの進出を受け、苫小牧から石狩までを産業の集積地にする構想が進む。電力の需要が増える見込みで、送電網の増強が要る。北海道と本州をつなぐ連系設備も、日本海ルートで検討が続いている。再生可能エネルギーも、道内は風力などの導入余地が大きい。
制約は人手だ。2024 年の残業上限規制の後、技能者の高齢化と不足は構造になった。道内ではゼネコンとの賃金競争も厳しく、採用が難しい。協力会社の確保が、売上の上限を決める。
10 年後を考える。レベニューキャップは 5 年ごとに見直され、次の期間で更新の山が続くかは分からない。更新は残るが、今の水準が続くとは限らない。電力外は、人口減で民間の新設が細り、官庁と再エネが中心になる。同じ領域には、きんでんや関電工など大手が並ぶが、地域が違うため直接は競わない。道内の同業の比較資料は見つからなかった。
資本政策と M&A
還元は薄い。方針は「安定配当の継続」で、配当性向の目標はない。2026 年 3 月期の配当性向は 11% だった。2027 年 3 月期も同じ配当を見込む。2022 年から 2024 年の 3 年は、今の半分の配当だった。自社株買いの実績もない。
現金は厚い。純現金は 127 億円で、時価総額の 4 割強に当たる。ただ、これは親会社の資金管理に預けた預け金が中心だ。使い道は、事実上、親会社が決める。
中期経営計画(2026〜2030 年度)は、成長投資に 150 億円ほどを充てる。M&A の調査・検討も含む。使い道は、まだ具体的に出ていない。
取引先の株は少ない。上場 5 銘柄の計上額は 21 億円で、KDDI が大半を占める。売る方針や数字の開示はない。
親会社は北海道電力ネットワークで、議決権の 55.6% を持つ。上場の子会社を、親会社が取り込む可能性はあるが、時期や条件は分からない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北海電工の工事は、北電の設備投資に支えられ、10 年先まで細らない。老朽設備の更新は、レベニューキャップの次の期間にも続く。道内では、半導体工場とデータセンターの進出に合わせ、送電網の増強が要る。北海道本州間の連系設備や風力発電など、大型の系統工事も控える。
人手不足は逆風でなく、追い風になる。親会社の工事は費用を見込んで単価が決まる面が強く、人件費の上昇は価格に乗りやすい。施工班を持つ会社は、同業にも少ない。
会社は 2026 年 3 月期の計画を大きく上回り、営業利益で 50 億円を稼いだ。受注残も増えている。中計の 2030 年度目標は保守的で、上振れる余地が大きい。2019 年度の配電事業の統合以降、効率化も進んだ。
財務は強い。有利子負債がなく、現金が厚い。配当は 2025 年に倍増しており、東証の資本効率の要請を受けて、親会社も還元を強める可能性がある。成長投資 150 億円の一部が実を結べば、電力外も育つ。
慎重な見方
今の営業利益率 6.9% は、過去 12 年で最高だ。10 年前は 2% 前後にすぎなかった。更新工事の山と半導体工場の工事が重なった結果で、続く保証はない。会社が 2030 年度の営業利益を 45 億円と、今期より低く置いたことが、それを物語る。2027 年 3 月期も減益の予想だ。
売上の 7 割強を北電に頼る。値段を決めるのは発注者だ。北電が費用の抑制に動けば、工事は減る。レベニューキャップの次の期間で、更新の山が下がる可能性がある。
人手は足りない。技能者の確保が難しく、受注を絞る局面もありうる。電力外は入札で競り、採算が薄い。再エネは着工の繰り延べが続く。
最大の問題は現金だ。127 億円の純現金は、親会社の資金管理に預けてある。配当性向は 11% にとどまり、株主に戻る気配が薄い。現金を時価総額と並べて割安と見る向きがあるが、使い道を決めるのは親会社である。
この三つは、数字に出る前に株価を動かしやすい。
どちらに重みを置いたか
電力サポートの安定と、人手不足を価格に乗せられる構造には、実現性がある。ただ、利益率が山にあること、現金が親会社の下にあることは、割り引かざるをえない。
筆者は、中立の利益率を中計の線(5.6%)へ戻す姿に置き、現金の戻り方は半分とした。確率は、強気に 3 割強、慎重に 3 割半と、ほぼ均等に置いた。慎重な見方が少し勝つ。10 年後の価値は、今の値段を 2 割弱下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,486 円515 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 302 円62 億円)。 今の値に割り戻すと 1,357 円281 億円、今との差 −1.4%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,299 円891 億円 | 459 円95 億円 | +245.7% | +13.2% | 476 円99 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,361 円696 億円 | 376 円78 億円 | +171.6% | +10.5% | 822 円170 億円 |
| 中立 | 33% | 2,825 円585 億円 | 299 円62 億円 | +127.0% | +8.5% | 1,031 円214 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,319 円273 億円 | 232 円48 億円 | +12.7% | +1.2% | 372 円77 億円 |
| 悲観 | 11% | 622 円129 億円 | 169 円35 億円 | −42.5% | −5.4% | 87 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,486 円515 億円 | 302 円62 億円 | +102.6% | +7.3% | 2,788 円578 億円 |
今の株価時価総額 1,376 円285 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 強気:北電の工事が高止まりし、道内の大型投資も重なる 利益 59 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 4,299 円891 億円
北海道バレー構想の半導体・データセンター向け送電、北海道本州間連系、風力発電など、大型の系統工事が重なる。レベニューキャップの次の規制期間でも、老朽設備の更新が高い水準で続く。電力サポートの人員は、新規の協力会社の開拓で 1 割ほど増える。
人手不足は深まるが、親会社の工事は費用を見込んで単価が決まる面が強い。人件費の上昇は価格に乗りやすく、単価は物価をやや上回る。電力外でも官庁と再エネの工事で受注が増え、首都圏の案件も取れるようになる。
営業利益率は 6.8% と、過去最高圏を保つが、それ以上には上がらない。配当は利益とともに増える。ただし現金の多くは積み上がり、親会社の資金管理に預けたままになる。10 年後の北海電工は、道内の電力インフラを支える、安定した稼ぎ手である。
- 電力サポート事業(北電・北電NW向け):数量 1,450(技術者・技能者数(人、推定))× 価格 59(1 人当たり完成工事高(百万円、協力会社の施工分を含む))→ 売上 859 億円・営業利益 64 億円
- 電力外事業(官庁・民間・再エネ・半導体):数量 650(技術者・技能者数(人、間接要員を含む推定))× 価格 49(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 316 億円・営業利益 16 億円
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 13.6 倍、時価総額 891 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北電の投資計画が上振れ、道内の大型工事が重なる姿。受注残が増え続けるなど先行指標が出ている場合の筋書きとして、1 割を置いた。
やや楽観 22% やや強気:電力サポートが厚く残り、電力外も育つ 利益 49 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 3,361 円696 億円
老朽設備の更新と系統連系の工事が、次の規制期間にも続く。電力サポートの人員は小幅に増え、単価は物価をやや上回る。北電の発注が高止まりし、協力会社の確保もおおむね間に合う。
電力外では、官庁工事と再エネの保守が積み上がる。同業との連携や小さな買収で施工力を増やし、中計の成長投資 150 億円のうち、一部が実を結ぶ。首都圏の受注も、少しずつ取れる。
営業利益率は 6.1% で、今より少し低い。人件費と資機材の上昇を、価格にほぼ転嫁できる姿だ。配当は緩やかに増えるが、現金はなお積み上がる。親会社の資金管理に預けた分は、戻り方が半分のままである。
- 電力サポート事業(北電・北電NW向け):数量 1,380(技術者・技能者数(人、推定))× 価格 58(1 人当たり完成工事高(百万円、協力会社の施工分を含む))→ 売上 800 億円・営業利益 54 億円
- 電力外事業(官庁・民間・再エネ・半導体):数量 580(技術者・技能者数(人、間接要員を含む推定))× 価格 48(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 276 億円・営業利益 12 億円
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)105 億円。全体の PER 12.57 倍、時価総額 696 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の方向(更新工事の継続・電力外の拡大)がほぼ実現し、人手不足を単価で吸収できる姿。強気側へ 2 割強を置いた。
中立 33% 中立:電力サポートは横ばいの高止まり、利益率は中計の線へ 利益 41 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,825 円585 億円
電力サポートの工事量は、今の高い水準で横ばいに推移する。老朽設備の更新は続くが、レベニューキャップの谷間や北電の費用抑制で、伸びは止まる。人員は増やせず、売上は物価の分だけ増える。
電力外は、官庁と再エネの工事で人員が 5% ほど増える。半導体工場の工事は一巡し、首都圏の受注は小粒にとどまる。人手不足は単価を押し上げるが、入札の競りが打ち消す。
営業利益率は、今の 6.9% から 5.6% へ下がる。会社の 2030 年度目標と同じ線だ。配当は少しずつ増え、10 年で利益の 15% ほどになる。残りの現金は積み上がり、親会社の資金管理に預けたままだ。10 年後の北海電工は、追い風が弱まっても、堅実に稼ぐ会社である。
- 電力サポート事業(北電・北電NW向け):数量 1,300(技術者・技能者数(人、推定))× 価格 57(1 人当たり完成工事高(百万円、協力会社の施工分を含む))→ 売上 737 億円・営業利益 46 億円
- 電力外事業(官庁・民間・再エネ・半導体):数量 520(技術者・技能者数(人、間接要員を含む推定))× 価格 47(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 245 億円・営業利益 9 億円
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 585 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の線(2030 年度に売上 800 億円・営業利益 45 億円)を 10 年先へ伸ばした姿。最も重い筋書きとして 3 割強を置いた。
やや悲観 24% やや弱気:北電の投資が谷に入り、人手不足が重くなる 利益 29 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,319 円273 億円
レベニューキャップの次の規制期間で、北電が費用抑制に動く。老朽設備の更新が一巡し、電力サポートの工事量は 1 割ほど減る。半導体工場の工事も後ろに倒れ、系統連系の工事は思ったほど出ない。
人手不足で、協力会社が受注を絞る。単価は物価に届かず、利益率は 4.4% まで下がる。電力外は、入札で競り負ける案件が増え、再エネの着工繰り延べも続く。
現金は積み上がるが、買収に使った分は失敗が混ざり、稼ぎを生まない。親会社も資金を手放さず、配当は今の水準のまま据え置かれる。山の利益が 2〜3 割削られ、2016 年から 2022 年の低い利益率に半分ほど戻る姿である。
- 電力サポート事業(北電・北電NW向け):数量 1,180(技術者・技能者数(人、推定))× 価格 55(1 人当たり完成工事高(百万円、協力会社の施工分を含む))→ 売上 649 億円・営業利益 32 億円
- 電力外事業(官庁・民間・再エネ・半導体):数量 470(技術者・技能者数(人、間接要員を含む推定))× 価格 45(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 212 億円・営業利益 5 億円
倍率:余った現金 45 億円を分けると、事業の純利益 28.2 億円(税後利息を除く)・事業の自己資本 605 億円・事業の ROE 4.7%。事業の ROE が資本コスト k 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍。利益が削られ ROE が資本コストを下回るので、上限の 7 割に置いた。事業 28.2 億円 × 8.5 倍 + 余り 22 億円(帳簿 45 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 262.2 億円。
確率:山の利益が 2〜3 割削られる姿。利益率が過去 12 年の高い水準にあるため、この筋書きには 4 分の 1 弱を置いた。
悲観 11% 弱気:北電が工事を内製・絞り込みに動き、利益が元の水準へ戻る 利益 11 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 622 円129 億円
北電が費用抑制のため設備投資を絞り、工事の一部を自社に戻す。電力サポートの工事量は 3 割近く減る。単価は物価に届かず、資機材と人件費の上昇を転嫁できない。
半導体・データセンター向けの工事は、道内への進出が計画どおり進まず、受注が育たない。電力外の官庁工事も、入札の競争で採算が崩れる。成長投資に使った現金には、失敗も混ざる。
営業利益率は 2% 前後と、2016 年から 2022 年の水準に戻る。支配株主の親会社が弱るため、厚い現金も株主に戻らない。もう優良とは呼べなくなった 10 年である。
- 電力サポート事業(北電・北電NW向け):数量 950(技術者・技能者数(人、推定))× 価格 52(1 人当たり完成工事高(百万円、協力会社の施工分を含む))→ 売上 490 億円・営業利益 12 億円
- 電力外事業(官庁・民間・再エネ・半導体):数量 380(技術者・技能者数(人、間接要員を含む推定))× 価格 42(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 158 億円・営業利益 1 億円
倍率:北電の内製化と利益率の崩れで、純利益は 11.3 億円にとどまり、稼ぐ力は 130 億円ほどにしかならない。床は売れる資産で測り、回収後に残る約 148 億円の 8 割強を、今の自己資本 369 億円に対する PBR 0.349 倍(時価総額 125.5 億円)に置いた。現金は親会社の資金管理に預けてあり、清算でない限り少数株主は使い道を決められないので、純現金を下回る値を認めた。
確率:親会社の投資縮小と内製化が重なる、構造的な負け筋。親会社の財務が重い点を見て、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力サポート事業(北電・北電NW向け)
配電線・送変電・変電所・地中線の建設と保守、老朽設備の更新工事、系統連系工事。北海道電力グループ向けの工事。
| 数量技術者・技能者数(人、推定) | 価格1 人当たり完成工事高(百万円、協力会社の施工分を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 42 | 550 | 44 |
| 10 年後 中立 | 1,300 | 57 | 737 | 46 |
取り方:単体の完成工事高 718 億円のうち北海道電力関係が 550 億円(有価証券報告書)。この 550 億円を電力サポートとし、連結従業員 1,794 人のうち現場の約 1,300 人に割り当てて 1 人当たりを逆算した。利益率は開示がなく、親会社向けは単価が費用を見込んで決まる面があり電力外より高いとみて 8.0%、残りを電力外に 3.3% で置き、合計を連結営業利益 49.7 億円に合わせた。数量(人数)は実質、価格は物価で上がる名目。
電力外事業(官庁・民間・再エネ・半導体)
官庁・民間の電気設備工事、空調・管工事、再生可能エネルギー関連工事、データセンター・半導体工場向けの設備工事。
| 数量技術者・技能者数(人、間接要員を含む推定) | 価格1 人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 494 | 35 | 174 | 6 |
| 10 年後 中立 | 520 | 47 | 245 | 9 |
取り方:連結売上 724 億円から電力サポート 550 億円を引いた約 174 億円。従業員は連結 1,794 人から電力サポートの 1,300 人を引いた 494 人(営業・設計・管理の人員を含む推定)。官庁・民間・再エネは入札と相見積りで採算が薄いとみて 3.3%。数量(人数)は実質、価格は物価で上がる名目。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率 6.9% は過去 12 年で最高だ。10 年前は 2% 前後だった。更新工事の山が引けば、利益は急に細りうる。会社の 2027 年 3 月期の予想も減益で、2030 年度の営業利益の目標は今期より低い。
北電の投資計画への依存
売上の 7 割強は北電グループ向けだ。発注者が値段を決めるため、費用抑制の方針や内製化があれば、工事量と単価の両方が下がる。レベニューキャップの次の期間で、更新の山が低くなる可能性もある。
預けた現金が株主に戻らない
純現金 127 億円は、時価総額の 4 割強に当たる。ただ、中身は親会社の資金管理への預け金で、使い道は親会社が決める。配当性向は 11% で、還元の方針は「安定配当」にとどまる。
技能者の確保
平均年齢は 46 歳で、採用は難しい。道内ではゼネコンとの賃金競争も厳しい。人が足りなければ、単価が上がっても受注を絞らざるをえず、施工体制の維持に費用が膨らむ。
成長投資と M&A の実行
中計は成長投資に 150 億円ほどを充て、同業との連携や M&A も検討する。実績のない領域に厚い現金を使えば、のれんの減損や統合の失敗で資本を傷める恐れがある。
半導体・データセンター投資の遅れ
道内の次世代半導体やデータセンターの進出は、計画どおり進む保証がない。投資が遅れれば、系統連系の工事が後ろに倒れ、電力サポートの伸びが止まる。
取引の流動性の低さ
上場は札幌証券取引所だけで、売買は薄い。親会社が議決権の過半を持つので、少数株主の声は届きにくい。売りたい時に売れない可能性がある。
今後の分かれ目
- 配当性向の目標を決め、30% 超へ引き上げる方針が出たら
- 現金の戻り方を 1.0 に近づけてよい。強気側の確率を上げる。
- 親会社による完全子会社化(TOB)が発表されたら
- 条件しだいで、価値は大きく動く。現金を含めた買付価格かを見る。
- 営業利益率が 7% を超えて、安定したら
- 強気側の確率を上げてよい。更新工事の山でなく、価格転嫁が定着した証拠になる。
- レベニューキャップの次の期間で、北電の設備投資が減ると示されたら
- やや弱気・弱気側へ重みを移す。電力サポートの工事量が下がる。
- 成長投資 150 億円の使い道として、大型の買収が発表されたら
- 買収先の採算と値段を見て判断する。高値づかみなら、やや弱気側へ重みを移す。
- 北海道本州間連系や洋上風力の大型工事を、会社が受注したと開示されたら
- 強気側の確率を上げてよい。電力サポートの数量が、中立の横ばいを上回る。
見ておくもの
- 受注残高(単体)と電力サポート・電力外の比率
- 営業利益率の推移(中計の 5.6% との比較)
- 配当性向と預け金の残高
- 北海道電力ネットワークの設備投資計画(レベニューキャップの次の期間)
- 成長投資 150 億円の使い道と M&A の有無
倍率と資本コストの決め方
数量は技術者・技能者の人数(実質)、価格は 1 人当たり完成工事高(物価 3% を含む名目)で積んだ。単一セグメントの開示なので、北電関係 550 億円を電力サポート、残りを電力外とし、人数と利益率は推定である。中立の価格は両区分とも物価並みの 1.34 倍で、人手不足の価格転嫁と入札の競りが打ち消し合うとみた。利益率は今の 6.9% が過去 12 年の最高なので、中立で 5.6% へ下げ、会社の 2030 年度目標(売上 800 億円・営業利益 45 億円)と同じ線にした。同じ領域のユアテック(7.0%)・北陸電気工事(8.4%)と比べ、規模と親会社依存の強さを見て低めに置いた。倍率は k 8%・g 4% の式から置き、事業の ROE が資本コスト近辺なので、中立は上限の 8 割にとどめた。現金は親会社の資金管理に預けてあり、戻り方は 0.5。取引先株の配当は純利益に入っているので足していない。減価償却は物価で増やさず、設備投資(年 14 億円前後)の膨らみは、利益率の低下に含めた。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形でそろえた。今の株価と PER は、最後に比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。親会社への依存・現金の戻り方など個別の事情は k に足さず、筋書きと戻り方で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。