結論
ユアテックは東北電力グループの電気工事会社だ。東北電力が議決権の約4割を持ち、売上の約4割も東北電力ネットワーク向けである。筆者の結論は「適正、ただし割安ではない」。事業は堅いが、利益の水準が過去最高圏にあり、それ以上の伸びは見込みにくい。
稼ぎの土台は配電線・送電線・変電設備の工事だ。古くなった設備の更新と、東北と東京をつなぐ基幹送電網の増強が、10年単位で仕事を生む。ここは景気に左右されにくい。
もう一つの柱は、ビル・工場・データセンターの電気設備や空調管工事である。首都圏と海外(ベトナム)に広げているが、入札と相見積りの世界で、採算は薄い。2026年3月期の営業利益率は7.1%と過去最高だった。それでも、きんでんや関電工の水準には届かない。
筆者がいちばん気にするのは依存の構造だ。東北電力が設備投資を絞り、工事を競争発注に切り替えれば、4割の売上が直接ゆらぐ。同じ電力系でも、関西電力への依存が2割弱のきんでんとは事情が違う。
財務は強い。純現金が時価総額の約2割あり、借金の心配はない。中期経営計画は2028年度に営業利益200億円、ROE9%を掲げ、総還元性向は50〜60%を目安とする。ただ、自己資本比率が7割近い会社が、ROE9%を目標にする。その水準は、資本コストをやっと上回る程度だ。
10年後の中立の姿は、利益が今より3割ほど増え、ROEが8%前後に落ち着く会社だ。そこに見合う値段は、今の時価総額を1割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、ユアテックは「堅いが、儲からない」会社だ。10年後もこの事業は残る。配電線の更新と送電網の増強は、景気と関係なく続く。そこが強みである。
一方、持ち続けたい会社かと問われれば、答えは留保付きになる。稼ぐ力の源が、東北電力との関係に偏っているからだ。売上の約4割を預ける相手が、自社の主要な株主でもある。この関係は、守ってもらえる安心と、価格を決める力を失う不安の両方を持つ。
株主に残る利益の質も見たい。営業利益率は過去最高の7%台だが、そこから先の伸びは、人手の確保と価格転嫁にかかっている。きんでんや関電工のように、高い資本効率を実現した会社とは、まだ差がある。
安全域は厚い。純現金が時価総額の約2割あり、借金の心配は小さい。構造的に負けた悲観の筋書きでも、手元の資産が下支えになる。ただ、この厚さは経営が使い切れていない現金でもある。経営が現金を成長に回せないなら、現金は価値を生まない。
筆者の見立ては、よい会社だが安くはない、というものだ。10年の中立の姿は、利益が着実に伸びても、ROEは8%前後で資本コストと並ぶ。そこで払える値段は、今を下回る。値段が下がる、または利益率が一段上がる、いずれかが起きれば、見方を変える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は二層になっている。下の層は東北電力グループ向けの電力インフラ工事で、上の層は民間と海外の工事だ。
下の層は、配電線・送電線・変電設備の建設と保守である。東北電力ネットワークの発注が中心で、売上の約4割を占める。古い設備の更新工事と、基幹送電網の整備が、いま仕事を増やしている。同社の資料では、東北〜東京間の送電網整備に約2,000億円、東北の域内に約6,500億円の投資が必要とされる。同社が取れる売上は、直近で約100億円規模と見ている。
上の層は、ビル・工場・データセンターの電気設備、空調・管工事、情報通信工事だ。ここは首都圏への進出が柱になる。中計の資料では「東北・新潟以外」の売上を、2024年度の179億円から2028年度に288億円へ増やす計画だ。電気工事は、元請けの建設会社やデベロッパーとの入札で決まる。価格は市場が決め、採算は電力インフラより薄い。
海外はベトナムが中心だ。2028年度に売上を172億円から293億円へ増やす計画で、目標は高い。2026年3月期は、海外子会社の大型工事の受注が遅れて減収になり、のれんの償却と減損で純利益が減った。海外は伸びしろでもあり、いまは傷口でもある。
人手が足りない業界だ。同社は5年で約350名を増やす計画で、定年を65歳に延ばした。施工できる人の数が、そのまま受注の上限になる。人を確保できた会社が、価格転嫁も受注の選別もできる。
規模は売上約2,500億円。電力系の電気工事会社7社の中では、きんでんや関電工より小さく、トーエネックやクラフティアと並ぶ中堅になる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、東北電力との関係にある。東北6県と新潟の配電・送電設備を長年施工してきた技術と人員は、他社がすぐに置き換えられない。災害時の復旧に動ける体制も、電力会社にとって手放しにくい。この関係が、利益の下支えになっている。
ただし、この堀は利益率を守る堀ではない。電力会社は発注側として強く、競争発注が広がる流れもある。東北電力が持分を約4割持つ関係は、安心であると同時に、価格の主導権を相手に預けた形でもある。ここは強い堀とは見ない。
民間工事は、入札と相見積りで採算が決まる。営業利益率は2020年3月期の3.3%から、2026年3月期の7.1%まで上がった。原価管理と受注の選別が効いた。ただし過去最高であり、10年この水準を保てるかは別の話だ。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は5.5%で、自己資本が純現金で膨らんで、薄まっている。会社は2028年度のROE9%を目標に掲げた。目標は妥当だが、きんでんや関電工のような高い資本効率には遠い。
経営の資本配分は、これまでは守りだった。配当性向40%以上を基本とし、自社株買いは東北電力からの取得を含めて約85億円を見込む。成長投資は5年で約800億円と、やっと積極的になった。買収の実績が浅い。海外で出たのれんの減損は、資本配分の腕前がまだ試されている最中であることを示す。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電気工事の需要は、いま追い風にある。国内の電気工事の受注高は年3.4兆円ほどで、直近の単月は前年を1割以上上回る。再生可能エネルギーの系統接続、データセンター、半導体工場、EV充電器が、既存の配電・ビル工事に積み上がっている。
電力会社の側でも、投資の波が来ている。高度成長期に建てた配電設備が寿命を迎え、更新が必要になっている。東北では基幹送電網の増強も控える。この更新と増強は、景気に関係なく10年は続く。電力系の工事会社にとって、ここが最も確かな仕事だ。
一方で、国内の人口は減る。東北・新潟の民間の新築工事は、実質でほぼ伸びない。ここが電力系の電気工事会社の共通の弱みで、各社は首都圏とデータセンターに活路を探している。ユアテックも「東北・新潟以外」を柱に掲げる。ただ、首都圏は関電工(東京電力系)の本拠地だ。きんでんも民間工事に強い。取り合いになる。
人手不足は業界全体の制約になる。残業の上限規制と技能者の高齢化で、受注があっても人が足りない。人を確保できる会社は、価格を上げ、受注を選べる。確保できない会社は、仕事を断るしかない。これは強者に有利で、中堅には厳しい。
電力会社の側の変化にも注意がいる。電力会社はコスト削減のため、系列の工事会社への随意契約を競争発注に切り替えてきた。東北電力も同じ方向にある。10年のうちに、系列の安定した受注という下支えが細る可能性は、業種のノートが示す悲観の筋書きと同じだ。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向40%以上を基本とする。中計の期間中は、自己株式の取得を含めた総還元性向を50〜60%とする。2026年3月期は配当性向40.5%の見込みだった。自社株買いは約85億円を予定し、東北電力からの取得と市場での取得の両方を使う。
成長投資は約800億円と大きい。内訳は事業投資が約280億円、設備が約270億円、人財が約150億円、IT・DXが約100億円だ。事業投資のうち買収に回る額は読めない。きんでんが同業の弘電社を約850億円で買ったように、業界は人手を買う動きに入っている。ユアテックも施工力を買う側に回るなら、のれんの重さに注意がいる。
東北電力が約4割を持つ構図は、資本政策の最大の論点だ。東北電力は持分法適用の親会社に近い存在で、ユアテックが自社株を東北電力から買うのは、持分を減らす動きとも読める。持分の整理が進めば、市場で売買される株が増える。逆に、東北電力が持分を維持するなら、他社に買収される可能性はほぼない。
政策保有株式の方針は、今回の資料では確認できなかった。海外のベトナム子会社の損失とのれんの減損は、2026年3月期の純利益を押し下げた。買収した会社の統合の実績を、数字で確認していく段階にある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東北電力との関係は、リスクではなく資産だ。東北6県と新潟の配電・送電設備を、これだけの規模で施工できる会社は他にない。古い設備の更新と基幹送電網の増強は、景気と無関係に10年続く。東北と東京をつなぐ送電網だけで約2,000億円の投資が見込まれ、同社の取り分は始まったばかりである。
首都圏の拡大は、まだ序盤にある。東北電力は自ら、データセンターの誘致構想を進めている。同社は関東圏で培った実績を持っており、誘致が当たれば電気設備の工事は連動して増える。中計では「東北・新潟以外」の売上を、2028年度に288億円へ増やす計画だ。人手不足が深刻な業界で、5年で約350名を増やし、定年を65歳に延ばした会社は、仕事を選べる側に回る。
利益率にも上がる余地がある。営業利益率は2020年3月期の3.3%から、2026年3月期の7.1%まで上がった。原価管理と受注の選別で、まだ伸びる。会社は2025年10月に、2028年度の営業利益目標を135億円から200億円へ引き上げた。上方修正した会社は、保守的な計画を立てる傾向がある。
財務の余力は大きい。純現金が時価総額の約2割あり、成長投資の約800億円と、自社株買いを同時に回せる。ROE9%の目標が実現すれば、資本効率は同業並みに近づく。持ち合い関係の整理が進めば、市場の評価も変わる。
慎重な見方
売上の約4割を預ける相手が東北電力ネットワークで、この相手が発注を変えれば、会社の形そのものが変わる。電力会社はコスト削減のため、系列の工事会社への随意契約を競争発注に切り替えてきた。東北電力だけが例外である理由はない。競争発注が広がれば、単価は止まり、採算は削られる。
首都圏の拡大は、簡単ではない。首都圏は関電工の本拠地で、きんでんも民間工事に強い。同社の「東北・新潟以外」の売上は2024年度で179億円と、全体の1割にも満たない。東北・新潟の民間需要は、人口減で伸びない。データセンターを取れる保証はない。
過去最高の営業利益率7.1%は、山の可能性が高い。2026年3月期は、売上が減ったのに営業利益が増えた。原価管理の効果と言えば聞こえはいいが、売上の勢いがない中での増益は、長続きしにくい。ROEは過去10年の中央値が5.5%で、会社が目標とする9%は、資本コストをやっと超える水準だ。
海外も不安が残る。ベトナムの子会社は、大型工事の受注遅れで減収となり、のれんの償却と減損で純利益を押し下げた。2028年度に売上を172億円から293億円へ増やす計画は、実績と並べると高い。
純現金は厚いが、使い切れていない現金でもある。買収の実績が浅い会社が、約800億円の成長投資を回すなら、資本配分の失敗が起きる余地もある。
どちらに重みを置いたか
東北電力向けの更新・増強需要は確かで、利益率が一段上がったことも事実だ。それでも、売上の4割を預ける構造と、民間工事の薄い採算は変わらない。中立の姿は、中計の目標水準を保っても、資本効率が資本コストと並ぶ程度にとどまる。
確率はやや悲観側に寄せた。電力会社の競争発注への流れは業界全体で進んでおり、東北電力向けが4割という集中は、他社より影響が大きい。一方で、更新需要と首都圏の拡大は実現性が高く、悲観が深くなる確率は低く置いた。中立に最も重みを置き、結果として本質価値は今の時価総額をやや下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,019 円2,075 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,255 円862 億円)。 今の値に割り戻すと 2,253 円1,548 億円、今との差 −7.4%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,190 円3,567 億円 | 1,601 円1,100 億円 | +179.1% | +10.8% | 679 円467 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,106 円2,821 億円 | 1,441 円990 億円 | +128.0% | +8.6% | 1,276 円877 億円 |
| 中立 | 33% | 3,251 円2,234 億円 | 1,281 円880 億円 | +86.3% | +6.4% | 1,495 円1,028 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,538 円1,057 億円 | 1,092 円750 億円 | +8.1% | +0.8% | 605 円416 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,175 円808 億円 | 815 円560 億円 | −18.2% | −2.0% | 219 円150 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,019 円2,075 億円 | 1,255 円862 億円 | +75.7% | +5.8% | 4,274 円2,937 億円 |
今の株価時価総額 2,433 円1,672 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:送電網の増強とデータセンターを取り込み、首都圏と海外が育つ 利益 245 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 5,190 円3,567 億円
東北から東京へ電気を運ぶ基幹送電網の増強が本格化し、電力インフラ工事は量も単価も伸びる。東北電力が進めるデータセンター誘致が当たり、首都圏で積み上げた実績と合わせて民間の屋内配線工事が大きく伸びる。ベトナムの海外事業は黒字で定着し、2020年代に出たのれんの重荷も消える。技能者不足を背景に価格転嫁が進み、営業利益率は今の7%台から一段上がる。増員した350名が戦力になり、リニューアル工事も着実に積み上がる。東北電力との持ち合い関係は安定を保ち、自己株式の取得も続いて資本効率が上がる。同じ地域電力系でも、首都圏と海外に足場を持つ会社として評価が変わる10年になる。
- 電力インフラ工事:数量 1,540(技術・技能者数(人、推定))× 価格 100(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,540 億円・営業利益 146 億円。送電網増強が本格化し単価も上がる
- 屋内配線・空調管・情報通信・海外:数量 3,000(技術・技能者数(人、推定))× 価格 81(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 2,427 億円・営業利益 194 億円。データセンター・首都圏・海外が育つ
倍率:事業の純利益 243 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)112 億円。全体の PER 14.22 倍、時価総額 3,566 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:基幹送電網の整備、東北電力のデータセンター誘致、関東・ベトナムの拡大が同時に進む組み合わせで、実現すれば利益は大きく増えるが条件は多い。
やや楽観 23% やや楽観:電力インフラ更新と民間工事の拡大が着実に利益を押し上げる 利益 205 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 4,106 円2,821 億円
高経年化した配電設備の更新と送電網の整備が、東北電力向け工事の底堅い柱になる。民間では首都圏のデータセンターとリニューアル工事が増え、屋内配線・空調管工事が伸びる。海外はベトナムの工事を絞って採算を優先し、赤字の芽は摘める。人手不足は続くが、受注を選び、単価を上げる動きが定着する。営業利益率は中計の7%台半ばを少し超える水準で落ち着き、配当性向40%以上と自己株式の取得は続く。東北電力の持分も徐々に整理が進み、市場で売買される株が増える。大きな成功ではないが、同業の中で見劣りしない10年になる。
- 電力インフラ工事:数量 1,470(技術・技能者数(人、推定))× 価格 97(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,427 億円・営業利益 126 億円。老朽設備の更新が底堅く続く
- 屋内配線・空調管・情報通信・海外:数量 2,900(技術・技能者数(人、推定))× 価格 78(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 2,259 億円・営業利益 163 億円。首都圏の民間工事とリニューアルが伸びる
倍率:事業の純利益 203 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)112 億円。全体の PER 13.35 倍、時価総額 2,821 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:老朽設備の更新と送電網整備は実現性が高く、中計の目標 200 億円を超える水準は人手の増員と価格転嫁で届く範囲にある。
中立 33% 中立:中計の目標水準を保つが、民間工事の採算は元に戻る 利益 171 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 3,251 円2,234 億円
東北電力向けの配電・送電工事は更新需要で量を保ち、単価は物価並みに上がる。民間の屋内配線・空調管工事は、首都圏のデータセンターやリニューアルで量が少し増える。ただし東北・新潟の民間需要は人口減で伸びず、競争発注が広がれば採算は圧迫される。海外は規模が小さく、利益への寄与は限られる。2026年3月期の営業利益率7.1%は過去最高で、その後は横ばい圏に落ち着く。人手の確保にお金がかかり、価格転嫁は労務費の増加を埋める程度にとどまる。配当性向40%以上の還元は守られるが、成長投資と買収に資金が回り、自己資本は静かに積み上がる10年になる。
- 電力インフラ工事:数量 1,400(技術・技能者数(人、推定))× 価格 96(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,340 億円・営業利益 107 億円。配電・送電は更新需要で量を保つ
- 屋内配線・空調管・情報通信・海外:数量 2,750(技術・技能者数(人、推定))× 価格 76(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 2,096 億円・営業利益 136 億円。民間は首都圏の増加と東北の減少が相殺
倍率:事業の純利益 169 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)112 億円。全体の PER 12.56 倍、時価総額 2,234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東北電力向けの安定した受注と民間工事の拡大が、人口減と競争の激化で相殺される、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 23% やや悲観:東北電力の設備投資が絞られ、競争発注が広がる 利益 116 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,538 円1,057 億円
東北電力ネットワークが設備投資を抑え、工事の競争発注を広げる。これまで系列に回っていた受注が、他社との入札に変わり、単価の上昇が止まる。民間では首都圏のデータセンター工事を関電工などに取られ、東北・新潟は人口減で数量が細る。海外のベトナム事業は利益が出ず、のれんの償却と減損が続く。人手不足で人件費は上がるのに、価格に転嫁しきれず、利益率は2020年代前半に近い水準まで戻る。配当は維持するが自己株式の取得は止まり、東北電力の持分整理も進まない。優良さがじわじわ薄れる10年になる。中計の目標だった営業利益200億円には届かず、配当を守るために成長投資へ回す余力も細る。東北電力の持分整理も進まず、株式市場での評価は上がらないまま、地味な電気工事会社として時間が過ぎる。
- 電力インフラ工事:数量 1,330(技術・技能者数(人、推定))× 価格 93(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,234 億円・営業利益 80 億円。系列の受注が競争発注に変わる
- 屋内配線・空調管・情報通信・海外:数量 2,550(技術・技能者数(人、推定))× 価格 73(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,867 億円・営業利益 93 億円。首都圏で受注を取り切れず、海外も不振
倍率:余った現金 112 億円を分けると、事業の純利益 114 億円(現金の税後利息を除く)・事業の自己資本 1,990 億円・事業の ROE 5.75%。事業の ROE が資本コスト k 8.0% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 12.5 倍。事業の稼ぎが資本コストに届かず、増えた自己資本は価値を生まないので、上限の 6 割 8 分 の 8.5 倍に置いた。事業 114 億円 × 8.5 倍 + 余った現金 56 億円(帳簿 112 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 1,057 億円。
確率:電力会社のコスト削減と競争発注の拡大は十分起こりうる話で、東北電力向けが 4 割と高い分、影響が直接出る。
悲観 11% 悲観:構造的に受注と利益率を失う 利益 35 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,175 円808 億円
東北電力ネットワークの設備投資が大きく縮み、競争発注が定着して、系列の安定した受注という下支えが細る。同時に首都圏のデータセンターでも価格競争に敗れ、民間工事の数量が減る。単価は物価に追いつかず、人件費だけが上がって利益はほぼ消える。海外は撤退に近い整理に追い込まれ、のれんの減損が出る。東北電力は持分を手放す方向に動き、系列としての安定感を失う。配当は手元の現金を取り崩して維持するが、成長投資は止まる。優良な電気工事会社から、薄利の下請けに近い会社へ変わった10年になる。純現金の厚さだけが救いで、株主に残る価値の多くは、事業ではなく手元の資産に宿る。経営は縮小均衡の中で、現金をどこへ使うかを問われ続ける。
- 電力インフラ工事:数量 1,120(技術・技能者数(人、推定))× 価格 86(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 960 億円・営業利益 34 億円。電力会社の設備投資が縮み、競争発注が定着
- 屋内配線・空調管・情報通信・海外:数量 2,100(技術・技能者数(人、推定))× 価格 65(1 人当たり完成工事高(百万円))→ 売上 1,355 億円・営業利益 27 億円。価格競争で数量と単価が落ち、海外も整理
倍率:構造的に受注の採算が崩れ、純利益は 35 億円ほどで稼ぐ力は 440 億円にしかならない。床は売れる資産で測る。回収額から負債を払った残りが約 830 億円。今の自己資本 1,553 億円に対する PBR 0.52 倍(時価総額 808 億円)に置いた。
確率:電力会社の設備投資の縮小、競争発注の定着、海外の失敗が重なる深い負け筋。東北電力に 4 割を預ける構造上、起こりうる最悪の形として置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力インフラ工事
東北電力ネットワークなどの配電線・送電線・発変電設備の建設と更新、老朽設備の対策工事、再生可能エネルギーの系統接続。
| 数量技術・技能者数(人、推定) | 価格1 人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 71 | 1,000 | 80 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 96 | 1,340 | 107 |
取り方:東北電力ネットワーク向けが売上の約 4 割(第三者サイト集計)なので、そのうち電力インフラ工事を約 1,000 億円とみた。技術者数は開示がなく、売上を 1 人当たり約 7,100 万円で割った推定値。数量は実質の人数、価格は物価で上がる名目の単価。
屋内配線・空調管・情報通信・海外
ビル・工場・データセンターの電気設備、空調・管工事、情報通信工事、ベトナムなど海外の工事。首都圏でも展開する。
| 数量技術・技能者数(人、推定) | 価格1 人当たり完成工事高(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,600 | 59 | 1,524 | 100 |
| 10 年後 中立 | 2,750 | 76 | 2,096 | 136 |
取り方:全社の売上 2,523 億円から電力インフラ工事を除いた残り。技術者数は開示がなく推定。民間と海外は入札と相見積りで、採算は電力インフラ工事より薄いとみた。5 年で約 350 名を増やす計画を数量の伸びの根拠にした。
リスクと懸念
東北電力への依存
売上の約4割を東北電力ネットワーク向けが占め、議決権の約4割も東北電力が持つ。東北電力が設備投資を絞る、または工事を競争発注に切り替えると、売上と採算が直接ゆらぐ。同業のきんでんが関西電力向け2割弱であるのと比べ、集中が高い。
競争発注の拡大
電力会社は系列工事の随意契約を競争発注に切り替える流れにある。系列に回っていた受注が入札になれば、単価の上昇が止まり、利益率は過去の3〜4%台へ戻りうる。電力インフラ工事の採算が民間並みに下がる影響が大きい。
過去最高の利益率の反動
2026年3月期の営業利益率7.1%は過去最高で、売上が減る中での増益だった。原価管理の効果が一巡すれば、利益は横ばいか減少に転じる。会社は2028年度の営業利益200億円を掲げるが、達成は人手の確保と価格転嫁にかかっている。
海外事業ののれんと損失
ベトナム中心の海外は、2026年3月期に大型工事の受注遅れで減収となり、のれんの償却と減損で純利益を押し下げた。2028年度に売上を約1.7倍にする計画は高く、追加の減損が出れば資本配分の力量が問われる。
首都圏での競争
首都圏は関電工の本拠地で、きんでんも民間工事に強い。データセンター工事の取り合いも新しい競争軸になった。東北・新潟以外の売上は全体の1割に満たず、計画どおり伸びなければ、東北の人口減を補えない。
人手不足と人件費
残業の上限規制と技能者の高齢化で、受注があっても人が足りない。5年で約350名を増やす計画だが、採用と育成の費用は重い。人件費の上昇を価格に転嫁できなければ、利益率は下がる。
東北・新潟の民間需要の縮小
人口減で、東北・新潟のオフィス・商業施設・住宅向けの新設工事は、実質で伸びにくい。電力インフラの更新が下支えになるが、民間工事の数量が細れば、固定費の重い人員を抱えて採算が悪化する。
今後の分かれ目
- 東北電力ネットワークが基幹送電網の増強と更新工事の発注を前倒しして拡大したら
- 楽観・やや楽観側に重みを移す。売上の4割を占める柱の量と単価が同時に伸びる。
- 営業利益率が7%台を保ったまま、東北・新潟以外の売上が計画どおり伸びたら
- 楽観・やや楽観側の確率を上げる。首都圏の拡大と価格転嫁の定着が実証される。
- 東北電力が系列工事の競争発注の比率を大きく引き上げたら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。4割の売上の採算が民間並みに下がる。
- ベトナムなど海外子会社で追加の減損や撤退が出たら
- やや悲観側に重みを移す。資本配分への評価を下げ、成長投資への信頼も落ちる。
- 東北電力が持分を大きく手放す動きに出たら
- 系列の安定感が薄れる反面、市場で売買される株が増え、他社による買収の可能性が出る。受注への影響を見て確率を動かす。
- 自己株式の取得や増配で、総還元性向が目安の上限を超えて続いたら
- ROEが上がり、中立の倍率の根拠が強まる。やや楽観側に重みを移してよい。
見ておくもの
- 東北電力ネットワークの設備投資計画と競争発注の比率
- 首都圏のデータセンター受注と東北・新潟以外の売上の伸び
- 営業利益率が 7% 台を保てるか(2028 年度に営業利益 200 億円)
- 海外子会社ののれん償却・減損と黒字化
- 東北電力の持分(約 4 割)の整理と自己株式の取得
倍率と資本コストの決め方
数量は技術・技能者の人数(実質、推定)、価格は1人当たり完成工事高(物価3%を入れた名目)で積んだ。電力インフラは東北電力向けが売上の約4割という集計から約1,000億円と置き、民間・海外はその残りとした。中立の価格は電力インフラで物価並みの1.34倍、民間は入札で競るため1.30倍に置いた。2026年3月期の営業利益率7.1%は過去最高で、中立ではその水準を保つが、さらに上げることはしていない。倍率は利益で決め、RONIC=k+1/2×(ROE−k)、k=基本7.5%+quality0.5%、g4%から出した正当化PERに、中立は10割、楽観側は9割台後半で置いた(事業のROEが資本コストを超えるので、ためた利益は帳簿並みを下回らない)。やや悲観は事業のROEが資本コスト以下なので、1÷kの7割弱とした。悲観は谷の利益でなく、総資産の回収額から負債を払った残り(約830億円)を床にした。今の株価と同業の倍率は最後に比べただけで、結論は今の時価総額を1割ほど下回る「適正」。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。理由は quality_why。個別のリスク(東北電力への依存・海外の損失など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。