結論
ナガワは、仮設事務所などに使う箱形の建物「スーパーハウス」を作って貸し、売る会社だ。筆者の結論は、事業の質は悪くないが今の値段は割高、というものだ。理由は単純で、元手に対する稼ぎが資本コストに届かないからである。
売上の 8 割はユニットハウスで、賃貸と販売がほぼ半々を占める。賃貸は一度貸せば何年も賃料が入るストック収入で、赤字の期がない。創業者の髙橋修氏が約 13% を持ち、関係会社もない単純な構造だ。会社は 2 年先に売上 410 億円、営業利益 51 億円を見込む。
問題は資本の重さだ。自己資本は 692 億円あり、純現金は 144 億円、政策保有株も上場分の帳簿で約 181 億円ある。事業に要る分を超えてためたこの資産が、ROE を 6% 台に押し下げている。同業の三協フロンテアは営業利益率で 2 ポイント、ROE で 4 ポイントほど上にいる。
10 年の中立では、賃料と販売価格が物価並みに上がり、営業利益は約 63 億円まで伸びる。ただ自己資本も積み上がり、ROE は 5% 台にとどまる。ためた利益は額面より安い価値しか持たない。この前提で測ると、10 年の価値は今の時価総額を半分ほど下回り、割高と判断する。
上に振れる道はある。政策保有株の売却と自社株買いが進み、モジュール・システム建築が軽量鉄骨ゼネコンの形になれば、利益の質は上がる。創業者の持ち株が約 13% と厚く、買収される側になる余地もある。ただ、その期待は筋書きに織り込んでいない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を持ち続けたいかを考える。事業は分かりやすく、貸し出しのストック収入は予測しやすい。赤字の期がなく、借金もない。経営も派手な買収で価値を壊す人たちではなさそうだ。ここまでは評価できる。
ただ、持ち続けるとオーナー利益、つまり株主のものになる利益がどう育つかが問題になる。ナガワは毎年の利益の半分以上を内部に残しているが、その使い道が鈍い。自己資本の 692 億円の中に、事業に要らない現金と政策保有株が 300 億円以上ある。それが稼ぐ力を薄め、ROE を 6% 台に押さえている。
筆者は、いちばんの論点を資本の使い方と見る。利益を貸出用の箱に投じたとき、投じた額以上に育つのか。ここ 10 年の ROE の中央値は 6% で、資本コストを下回り続けた。余った資本を戻すか、箱に投じて高い利益率を出すか。どちらかが見えない限り、帳簿の厚さに価値は上乗せできない。
安全域は、今の値段にはない。純現金と政策保有株を割り引いて足しても、事業の価値は今の時価総額の半分に届かない。予測のしやすい事業だが、値段が先に走っている。逆に、株価が半分になれば、資産を見て買う根拠が出てくる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「箱を作り、貸し、売る」ことだ。ユニットハウスは工場で組み立てた鉄骨の箱で、建設現場の事務所、災害時の仮設、倉庫、店舗に使われる。ナガワは 1974 年にこれを始め、累計の生産は 2025 年 3 月に 70 万棟に達した。
事業は 3 つに分かれる。ユニットハウスが売上の 8 割で、うち賃貸が 159 億円、販売が 132 億円だ。モジュール・システム建築は 51 億円で、工場・倉庫・店舗など低層の建物を軽量鉄骨で建てる。会社は「軽量鉄骨ゼネコン」の確立を掲げ、2022 年に春日部で展示場の 1 号店を開いた。建設機械のレンタルは 12 億円と小さい。
賃貸は在庫を持って貸すので、先に設備投資がかかる。2026 年 3 月期の設備投資は 53 億円で、うち貸し出し用の資産が 46 億円だった。一方で販売は、約 4 分の 3 が代理店経由だ。代理店が売りやすいように全国の展示場と工場を持ち、結城・岡山などの工場で作る。
数量と価格に直すと、稼働中の貸出棟数が約 11 万棟(筆者の推定)、1 棟あたりの年間賃料が 14 万円台だ。賃貸は設備を回収すれば利益が厚い。販売は鋼材と人件費の上昇を価格に載せる商売で、利益率は薄い。
海外は過去にブラジル・インドネシア・タイへ出たが、今は連結から外れている。国内の地道な拡大に絞った形だ。従業員は単体で 552 人、平均年齢は 38 歳台と若い。
優良さと弱いところ
質は「堅いが、効率はそこそこ」だ。自己資本比率は 87% で、有利子負債はなく、財務の不安はまずない。過去 11 年に赤字の期はなく、純現金は 60 億円から 144 億円まで積み上がった。景気が悪くても会社が潰れる姿は想像しにくい。
堀、つまり他社がまねできない強みは、規模と実績だ。1982 年に実用新案を取り、累計 70 万棟を作ってきた。全国の展示場、工場、代理店網も一朝一夕にはまねできない。ただ、特許や許認可のような法的な守りはない。大手のリース会社や地場の中小が同じ箱で戦える市場でもある。強い堀とは言わず、普通の堀とみる。
利益の質は、同業の三協フロンテアに見劣りする。ナガワの営業利益率は 12% 台、ROE は 6% 台。三協フロンテアは営業利益率 14〜15%、ROE は 10% 台を続ける。ナガワの自己資本には、事業に要らない現金と政策保有株が大きく乗っている。ここが ROE を下げる最大の理由だ。
経営は動き出している。2026 年 3 月期は政策保有株を 24 銘柄売り、総還元性向は 52% に上がった。60 周年の記念配当も出した。ただ、同じ期に 6 銘柄を買い増してもいる。縮減の方針と実際の動きがまだ噛み合っていない。
弱点は、レンタル資産の更新に毎年お金がかかることと、代理店への依存だ。創業者が約 13% を持つ体制は安定しているが、資本効率を急かす圧力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ユニットハウスの市場は、建設投資の裾野にある。公的な統計は見つからず、ナガワ、三協フロンテア、大和リースなど大手のリース会社、地場の中小で 1,500〜2,000 億円と筆者は推定する。ナガワのシェアは 15〜19% で、首位級の一角だ。
需要の中身は 3 つある。第 1 は建設現場の仮設事務所で、これが最大だ。人手不足で工期が延びるほど、貸す期間も延びる。第 2 は災害時の仮設で、能登半島地震でもプレハブ建築協会の会員が応急仮設の約 65% を建てた。第 3 は倉庫・店舗・スポーツ施設などの常設用途で、ここが伸びしろになる。
人口が減る中で、国内の建設投資は長い目では細る。だから稼働棟数は 10 年で 0.9〜1.05 倍が普通で、ナガワも中立では微増にとどめる。物価は賃料と販売価格に載る。ただ賃料は長期契約が多く、改定が遅れる。鋼材と人件費はすぐ上がるので、利益率は押される側に立つ。
競争は価格で決まりやすい。三協フロンテアは立体駐車装置や植物工場にも手を広げ、利益率はナガワより高い。建機レンタルの大手、たとえばニシオホールディングスやカナモトも仮設ハウスを扱う。大手が賃料で攻めれば、ナガワは下げざるをえない。
分かれ目は 3 つある。建設投資の水準、モジュール建築が常設の建物市場で根を張れるか、そして鋼材などの原価上昇を賃料に転嫁できるかだ。2028 年 3 月期から新リース会計が入るが、ナガワは貸す側が中心で影響は小さい。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、総還元性向 30% 以上という目安と、政策保有株の縮減だ。2026 年 3 月期は記念配当を含め、配当性向 35%、自社株買いも含めた総還元性向 52% になった。自己株の取得は約 8 億円だった。
政策保有株は上場分で 39 銘柄、帳簿で約 181 億円あり、自己資本の 4 分の 1 を超える。東亜建設工業、巴コーポレーション、太平電業などの建設関連が上位を占める。同じ期に 24 銘柄を約 42 億円で売ったが、6 銘柄は新たに買った。取引先との関係を理由にしつつ、売る方向に進んでいる段階だ。
M&A は小粒で、堅実だった。2009 年に九州で事業を 2 件譲り受け、2020 年に鳥海建工を買って翌年に吸収した。海外進出はブラジル・インドネシア・タイで、今は連結から外れている。失敗した過去が、大型買収に慎重な姿勢を生んだとみる。会社は M&A の推進を掲げるが、中期経営計画の数値目標は出していない。
株主では、創業者の髙橋修氏が約 13% を持つ。過去には海外の投資ファンドが 10% 台の株を持った時期があった。時価総額は 750 億円ほどで、純現金が厚く、買収される側になる可能性は小さくない。ただ創業者の意向が鍵で、筋書きには入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ユニットハウスは、建設現場の仮設事務所という崩れにくい需要の上に立っている。人手不足で工期が延びるほど貸す期間が延び、賃料は物価に連れて上がる。累計 70 万棟の実績、全国の展示場、工場、代理店の網は、新しく入る会社が短期間でまねできるものではない。赤字の期がなく、有利子負債もない。
結城工場の建て替えで溶接ロボを入れ、製造原価はこれから下がる。会社は 2 年先に営業利益 51 億円を見込み、利益は上向く。モジュール・システム建築は、展示場の増設で軽量鉄骨ゼネコンの形に近づく。小さな店舗や倉庫は、手軽さが売りで需要が厚い。
資本の面でも動いている。政策保有株は 1 年で 24 銘柄を売り、総還元性向は 52% に上がった。自己資本の 4 分の 1 を超える株を手放し、現金とあわせて還元に回せば、ROE は一気に 8% に近づく。創業者の持ち株が約 13% あり、時価総額は 750 億円ほどと買収にも手ごろだ。純現金が厚く、買い手が見つかれば価値は一段と表に出る。同業の三協フロンテアが営業利益率 14% 台で走っており、ナガワにも同じ水準へ上がる余地がある。
慎重な見方
ROE が 6% 台で、資本コストを下回り続けている。過去 10 年の中央値は 6% で、営業利益は 38 億円から 44 億円へとほとんど伸びていない。売上は伸びたが、利益率は 15% から 12% に下がった。物価が上がる 10 年は、鋼材と人件費がすぐ上がり、賃料は長期契約で後から付いてくる。利益率は押される側に立つ。
2026 年 3 月期の純利益 44 億円は、政策保有株の売却益に支えられている。会社予想の 33 億円が実力に近い。同じ期に 6 銘柄を買い増しており、縮減の方針と動きが噛み合っていない。創業者が約 13% を持つ体制では、資本効率を急かす力も弱い。
市場にも守りがない。ユニットハウスは特許や許認可で守られておらず、大手リース会社や建機レンタル大手が同じ箱で戦える。販売の約 4 分の 3 は代理店経由で、代理店が離れれば値引きしか武器がない。三協フロンテアは利益率でナガワを上回り、価格で攻める余力がある。
建設投資は人口減で長く細る。仮設需要は景気後退で真っ先に落ちる。2010 年に営業利益率が 2% まで下がった例もある。海外は 3 か国で撤退した。モジュール建築で軽量鉄骨ゼネコンを目指すと言っても、ゼネコン各社と戦う市場で、実績はまだ小さい。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の堅さでは強気の言い分が勝つ。ただ、価値は元手に対する稼ぎで決まり、その点は慎重な見方が強い。ROE は 10 年を通して資本コストを下回り、中立でも 5% 台だ。この前提では、ためた利益は額面より安い価値になる。
確率は、悲観側にやや寄せた。賃料の伸び、稼働棟数、モジュールの拡大が揃う強気の筋書きは 6% にとどめ、建設の仮設需要が細る筋書きに 25% を置いた。中立は 36%。政策保有株の売却や買収の期待は上振れとして認めるが、確率で積むと今の株価に寄せる動きになるので、筋書きの利益率と還元の額にだけ反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,294 円665 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,238 円192 億円)。 今の値に割り戻すと 3,065 円475 億円、今との差 −36.6%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,937 円1,075 億円 | 1,807 円280 億円 | +80.8% | +6.1% | 525 円81 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,701 円884 億円 | 1,549 円240 億円 | +49.9% | +4.1% | 1,450 円225 億円 |
| 中立 | 36% | 5,147 円798 億円 | 1,420 円220 億円 | +35.8% | +3.1% | 2,364 円366 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,732 円423 億円 | 968 円150 億円 | −23.5% | −2.6% | 925 円143 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,549 円240 億円 | 516 円80 億円 | −57.3% | −8.2% | 269 円42 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,294 円665 億円 | 1,238 円192 億円 | +14.4% | +1.4% | 5,532 円857 億円 |
今の株価時価総額 4,835 円749 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 仮設需要の厚みと軽量鉄骨ゼネコン化が両方当たる10年 利益 65 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 6,937 円1,075 億円
建設現場の人手不足で工期が長引き、仮設事務所の賃貸期間が延びる。災害の仮設、倉庫、店舗、スポーツ施設など新しい用途も増え、稼働棟数は 12 万棟台に乗る。
モジュール・システム建築は展示場の増設が効いて施工件数が 5 割増え、会社が掲げる軽量鉄骨ゼネコンの形が見えてくる。結城工場の溶接ロボは製造原価を下げ、賃貸の利益率は 2 割に届く。
10 年の営業利益は 85 億円まで伸び、利益率は 14% 台に上がって同業の三協フロンテアに近づく。政策保有株の売却と自社株買いも進み、還元は厚くなる。それでも自己資本が積み上がるため、ROE は資本コストに届かない。事業は強くなっても、資本の重さは消えない10年である。
- ユニットハウス(賃貸):数量 12.5(稼働中の貸出棟数(万棟、推定))× 価格 20(1 棟あたり年間賃料(万円))→ 売上 252 億円・営業利益 50 億円。稼働 12.5 万棟。仮設事務所と災害・倉庫需要が太る
- ユニットハウス(販売):数量 0.8(販売棟数(万棟、推定))× 価格 265(1 棟あたり販売価格(万円))→ 売上 212 億円・営業利益 17 億円。販売 0.8 万棟。展示場と代理店網が効く
- モジュール・システム建築:数量 9.5(施工件数(百件、推定))× 価格 12(1 件あたり請負額(百万円))→ 売上 113 億円・営業利益 16 億円。施工 950 件。低層の店舗・倉庫に広がる
- 建設機械レンタル:数量 0.2(稼働台数(万台、推定))× 価格 111(1 台あたり年間レンタル料(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。稼働 1,600 台
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 14.89 倍、時価総額 1,000 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働棟数の伸び、賃料の値上げ、モジュールの軽量鉄骨ゼネコン化の 3 つが同時に当たる必要がある。同業の三協フロンテアは営業利益率が 14〜15% あり、同じ形に近づく余地はあるが、3 つ揃う確度は高くない。
やや楽観 20% 賃料は物価に付き、モジュール建築が育つ10年 利益 54 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 5,701 円884 億円
賃料は物価並みに上がり、稼働棟数は緩やかに増える。ユニットハウスの賃貸が全体の稼ぎを支える構図は変わらない。
モジュール・システム建築は会社予想どおり育ち、10 年で売上は 100 億円近くに届く。展示場の増設が実り、小さな店舗や倉庫の受注が積み上がる。
鋼材と人件費の上昇は賃料と販売価格に転嫁できるが、利益率は少し改善する程度にとどまる。営業利益は 70 億円台、還元は利益の 4 割台で続く。ROE は 6% 前後と、過去の水準に戻るだけである。
強気の人は、これを堅実な上振れとみるだろう。筆者は、事業の形が変わらない限り資本の重さは残ると考える。賃貸の安定に新しい柱が少し加わっても、元手への稼ぎの効率は大きく動かない。
- ユニットハウス(賃貸):数量 11.8(稼働中の貸出棟数(万棟、推定))× 価格 20(1 棟あたり年間賃料(万円))→ 売上 233 億円・営業利益 43 億円。稼働 11.8 万棟
- ユニットハウス(販売):数量 0.8(販売棟数(万棟、推定))× 価格 259(1 棟あたり販売価格(万円))→ 売上 197 億円・営業利益 14 億円。販売 0.76 万棟
- モジュール・システム建築:数量 8.3(施工件数(百件、推定))× 価格 12(1 件あたり請負額(百万円))→ 売上 97 億円・営業利益 13 億円。施工 830 件
- 建設機械レンタル:数量 0.2(稼働台数(万台、推定))× 価格 108(1 台あたり年間レンタル料(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。稼働 1,500 台
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 805 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:賃料が物価に付き、モジュール建築が会社予想(2 年で売上 410 億円)の延長で育つ筋書き。仮設需要は読みやすく、ここまでは十分ありうる。
中立 36% 人口減と新用途が相殺し、物価分だけ育つ10年 利益 48 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 5,147 円798 億円
仮設建築の需要は景気と公共投資に左右されるが、人手不足による工期の長期化と新しい用途がそれを支える。稼働棟数は人口減の中でも微増にとどまる。
賃料と販売価格は物価並みに上がる。利益率は 12% 台で動かず、過去 10 年の姿がそのまま続く。モジュール・システム建築は小さな土台から伸び、売上は 80 億円台になる。
営業利益は 63 億円、純利益は 48 億円ほど。還元は利益の半分ほど払い出すが、残りが積み上がり、自己資本は 870 億円台になる。ROE は 5% 台で、資本コストを下回る。稼ぐ力は伸びても、元手に対する効率は上がらない。
- ユニットハウス(賃貸):数量 11.5(稼働中の貸出棟数(万棟、推定))× 価格 19(1 棟あたり年間賃料(万円))→ 売上 222 億円・営業利益 39 億円。稼働 11.5 万棟。人口減を現場の長期化と新用途が相殺
- ユニットハウス(販売):数量 0.7(販売棟数(万棟、推定))× 価格 253(1 棟あたり販売価格(万円))→ 売上 182 億円・営業利益 12 億円。販売 0.72 万棟
- モジュール・システム建築:数量 7.2(施工件数(百件、推定))× 価格 11(1 件あたり請負額(百万円))→ 売上 82 億円・営業利益 10 億円。施工 720 件
- 建設機械レンタル:数量 0.2(稼働台数(万台、推定))× 価格 106(1 台あたり年間レンタル料(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。稼働 1,500 台
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 719 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2 年先の会社予想が示す増収基調が続き、その先は人口減が数量を抑えて物価分だけ伸びる。過去 10 年の売上は年 3.8% で伸びており、それと整合する。最も重く置く。
やや悲観 25% 建設の仮設需要が細り、賃料が物価に負ける10年 利益 30 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,732 円423 億円
建設投資が人口減で細り、仮設事務所の需要が弱る。稼働棟数は 10 万棟台前半に縮み、賃料は長期契約で上げにくく物価に追いつかない。
販売は代理店経由が 4 分の 3 を占め、値引き競争に巻き込まれる。モジュール建築も受注が伸びず、展示場の固定費が重くなる。
営業利益率は 10% を割り、営業利益は 40 億円まで落ちる。自己資本は厚いままなので ROE は 3% 台に下がる。還元は減るが、余った現金の一部は事業の穴埋めや的外れな投資で目減りする。
同業の三協フロンテアは地力があり、価格を下げて耐える余力もある。ナガワは賃料を守れば棟数を失い、棟数を守れば賃料を下げる。どちらを選んでも利益は削られ、建て直しには数年かかる。
- ユニットハウス(賃貸):数量 10.5(稼働中の貸出棟数(万棟、推定))× 価格 18(1 棟あたり年間賃料(万円))→ 売上 194 億円・営業利益 27 億円。稼働 10.5 万棟。建設の仮設需要が細り賃料も伸びにくい
- ユニットハウス(販売):数量 0.6(販売棟数(万棟、推定))× 価格 242(1 棟あたり販売価格(万円))→ 売上 145 億円・営業利益 7 億円。販売 0.6 万棟。値引き競争
- モジュール・システム建築:数量 5.5(施工件数(百件、推定))× 価格 11(1 件あたり請負額(百万円))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。施工 550 件
- 建設機械レンタル:数量 0.1(稼働台数(万台、推定))× 価格 101(1 台あたり年間レンタル料(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。稼働 1,300 台
倍率:ROE 3.5% は k 7% 以下で、上限は 12.5 倍。仮設需要が細る筋書きなので、稼ぐ力(純利益 30 億円 ÷ k)より低い 9.5 倍に置いた。余った現金は筋書きに額を書かないので 0.75 倍の 120 億円で、時価総額は(純利益 30 億円 − 120 億円 × 1.4%)× 9.5 + 120 億円 × 0.5。
確率:公共・民間の建設投資は人口減で細りやすい。代理店経由の販売は値引きに弱く、賃料も長期契約で上げにくい。景気後退が 1 度入る 10 年を想定すると、この確率は軽くない。
悲観 13% 大手との賃料競争と代理店離れで稼ぐ力が崩れる10年 利益 11 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,549 円240 億円
大手リース会社が賃料で攻め、地場の中小が値下げで追う。ユニットハウスの堀は規模と代理店網で、法的な保護はない。代理店が離れ、販売は薄利になる。
稼働棟数は 9 万棟に縮み、賃料は物価の半分も上がらない。レンタル資産の更新を続けても稼ぐ力は戻らず、減損が出る。モジュール建築は採算が合わず、ほぼ撤退に近づく。
営業利益は 16 億円まで落ち、事業の価値は純現金と政策保有株の価値に近づく。株価は事業でなく、手元の資産が支える。それでも赤字の期は少なく、堅い財務が会社を守る。
創業者が持ち株を守る限り、会社が身売りや再編に動く可能性も低い。変化を促す力が働かないまま、稼ぐ力だけが静かにやせていく筋書きである。減損で自己資本が目減りしても、事業の価値は純現金と売れる株が支える水準に近づく。
- ユニットハウス(賃貸):数量 9.0(稼働中の貸出棟数(万棟、推定))× 価格 17(1 棟あたり年間賃料(万円))→ 売上 149 億円・営業利益 13 億円。稼働 9.0 万棟。大手との賃料競争で単価が物価に負ける
- ユニットハウス(販売):数量 0.5(販売棟数(万棟、推定))× 価格 217(1 棟あたり販売価格(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 1 億円。販売 0.45 万棟。代理店が離れ薄利
- モジュール・システム建築:数量 4.0(施工件数(百件、推定))× 価格 9.78(1 件あたり請負額(百万円))→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。施工 400 件。採算ぎりぎり
- 建設機械レンタル:数量 0.1(稼働台数(万台、推定))× 価格 91(1 台あたり年間レンタル料(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。稼働 1,000 台
倍率:稼ぐ力(純利益 11 億円 ÷ k = 約 140 億円)より、純現金と売れる資産の税後(約 240 億円)が大きいので、床は資産で測る。今の自己資本 692 億円に 0.347 倍を掛けた額で、減損後の自己資本ではなく今の自己資本に掛けた。市場の PBR は使っていない。
確率:ユニットハウスの堀は特許でも許認可でもなく、規模と代理店網だけである。大手リース会社が賃料で攻め、代理店が離れると崩れる。起これば構造的だが、同時に起きる確度は低い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ユニットハウス(賃貸)
スーパーハウスを貸し出す。一度貸すと賃料が何年も入るストック収入。
| 数量稼働中の貸出棟数(万棟、推定) | 価格1 棟あたり年間賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 14 | 158 | 28 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 19 | 222 | 39 |
取り方:有報のユニットハウス賃貸収入 159 億円を、稼働棟数と年間賃料に分けた。棟数は累計生産 70 万棟のうち稼働中を約 11 万棟と置いた筆者の推定(開示なし)。営業利益はユニットハウス全体 36.6 億円を、賃貸 28 億円(率 17.7%)と販売 8.6 億円(率 6.5%)に、賃貸のほうが利益率が高いという前提で分けた。賃料は人件費・鋼材の物価分を転嫁し、中立で 10 年 1.34 倍。数量は人口減と長期工期の相殺で 1.05 倍。
ユニットハウス(販売)
スーパーハウスを代理店経由などで売る。約 4 分の 3 が代理店。
| 数量販売棟数(万棟、推定) | 価格1 棟あたり販売価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 189 | 132 | 9 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 253 | 182 | 12 |
取り方:有報のユニットハウス販売収入 132 億円を、販売棟数と平均価格に分けた。棟数は約 0.7 万棟の推定(小型 3 坪から 2 階建てまで混在)。価格は鋼材・人件費に連動し、中立で 10 年 1.34 倍。数量は微増。
モジュール・システム建築
軽量鉄骨で工場・倉庫・店舗など低層の建物を建てる。軽量鉄骨ゼネコンの柱。
| 数量施工件数(百件、推定) | 価格1 件あたり請負額(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 8.50 | 51 | 6 |
| 10 年後 中立 | 7.2 | 11 | 82 | 10 |
取り方:有報のモジュール・システム建築の売上 51 億円を、約 600 件 × 850 万円に分けた推定。営業利益 6.1 億円(率 12%)。請負額は物価並みに上がる。件数は展示場の増設で中立 10 年 1.2 倍。
建設機械レンタル
建機の貸し出し。規模は小さい。
| 数量稼働台数(万台、推定) | 価格1 台あたり年間レンタル料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 79 | 12 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 106 | 16 | 2 |
取り方:有報の建設機械レンタル売上 12 億円を、約 1,500 台 × 79 万円に分けた推定。営業利益 1.5 億円。数量は横ばい、価格は物価並み。
リスクと懸念
建設投資の細りと景気の影響
仮設事務所の需要は公共・民間の建設投資に連動する。人口減で長い目では細り、景気後退では真っ先に貸出が減る。2010 年に営業利益率が 2% まで落ちた例があり、販売の需要は特に波が大きい。
大手との賃料競争
ユニットハウスは法的な参入障壁がない。大手リース会社や建機レンタル大手が賃料を下げて攻めれば、ナガワも合わせざるをえない。同業の三協フロンテアは利益率が高く、価格で攻める余力がある。
代理店への依存
ユニットハウス販売の約 4 分の 3 は代理店経由である。代理店が他社の箱を売り始めたり、販売条件を厳しくしたりすれば、販売の数量と利益率が同時に落ちる。
資本効率の低さと資本政策の遅れ
自己資本比率は 87% で、事業に要らない現金と政策保有株が厚い。縮減の方針はあるが、同じ期に 6 銘柄を買い増している。還元を厚くしなければ、ROE は資本コストを下回り続ける。
原価上昇とレンタル資産の更新負担
鋼材・木材・人件費の上昇はすぐ原価に出るが、賃料は長期契約で後から付いてくる。貸出用の資産は毎年 46 億円ほどの更新投資がかかり、陳腐化すれば減損が出る。
創業者の持ち株と少数株主の位置
創業者が約 13% を持つ。体制は安定するが、買収・提携や大胆な資本政策の判断が創業者の意向に左右されうる。過去に投資ファンドが大株主になった時期もあり、状況は動きうる。
台風・豪雪などの異常気象
有報は、主要設備が広範囲に被害を受けるリスクを挙げる。貸出用の箱は屋外に置かれ、工場・展示場も全国にある。保険でどこまで補えるかは開示から読めない。
今後の分かれ目
- 政策保有株の売却を進め、自社株買いや増配を大きくする
- ROE が資本コストに近づき、10 年のやや楽観・楽観の筋書きが現実味を帯びる。
- モジュール・システム建築の売上が 100 億円を超え、利益率も保つ
- 軽量鉄骨ゼネコンの柱が育った証拠となり、強気の確率が上がる。
- 賃料の改定で鋼材・人件費の上昇を転嫁できず、営業利益率が 10% を割る
- 10 年のやや悲観に近づく。
- 大手リース会社が賃料を大きく下げる、または代理店が離れる
- 堀の薄さが表に出て、悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 建設投資が景気後退で急に冷える
- 販売が先に落ち、利益は一時的に急減する。財務が堅いので会社は耐えるが、評価は下がる。
- 創業者が株を売る、またはファンドが提案を始める
- 買収・再編・還元強化の可能性が出る。本質価値を超える値段が付く場面もありうる。
見ておくもの
- 稼働中の貸出棟数と賃料の改定幅(決算説明資料)
- モジュール・システム建築の売上と利益率
- 政策保有株の残高と売却・取得の動き
- 総還元性向と自社株買いの有無
- 三協フロンテアの営業利益率との差
倍率と資本コストの決め方
数量と価格を 4 つのセグメントに分けて 10 年を積み、自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流した。ROE が資本コスト 7% 以下のため、倍率は 1÷k の上限 12.5 倍の 7〜9.5 割に置いた。今の PER・PBR は使っていない。悲観は稼ぐ力より純現金と政策保有株の税後の資産で測り、床の倍率は今の自己資本に掛けた。今の株価に寄せていないことは、今の時価総額と本質価値が半分ほど離れる結果が示している。新リース会計は貸す側が中心で影響が小さく、10 年後の数字は今と同じ形(賃料を費用に含める形)でそろえた。含み益は税後 7 割の考え方で政策保有株の売却可能額を見積もったが、取得原価は不明で、半分程度と仮定した推定である。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→14.89 倍・やや楽観 PER 11.5→14.29 倍・中立 PER 11.25→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。