結論
カーチス・ライトは、潜水艦の原子力推進装置、軍用電子機器、航空機向けセンサーなど、止まれば困る部品を売る会社である。事業の堀は強いが、株主が今払う値段には十分な安全域がなく、筆者はやや割高と判断する。顧客の設計に入り込んで長年供給し、艦艇や原子炉の保守でも稼ぐため、売上の見通しは普通の産業機械メーカーより良い。
2025年の売上は35億ドル、営業利益は6.4億ドル、純利益は4.8億ドルだった。2026年4〜6月期も売上9.24億ドル、営業利益率19.3%と堅調で、会社は2026年通期の売上成長見通しを8〜9%へ引き上げた。軍用の耐環境コンピュータと原子力の保守が伸び、2025年末の受注残は40.8億ドルに達した。一方、新型原子炉の量産は政治、許認可、顧客の資金調達次第であり、構想を確定した利益として数えられない。
2035年の中立では、米海軍の艦艇整備、電子化、既設炉の寿命延長が数量を押し上げる。市場拡大の一部を競争と調達遅延で取りこぼすとみても、純利益は約10.6億ドルに育つ。ただし原子力・防衛への期待が既に現在の時価総額約175億ドルにかなり織り込まれている。5つの筋書きと今後の正味還元を資本コストで割り引くと、10年の価値は約138億ドルで、今の値段より約21%低い。会社を長く保有したい理由と、今買う理由は同じではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後も顧客が交換できない部品を作っているかが第一の問いになる。その答えはおおむね肯定的だ。原子力潜水艦のポンプや発電所の安全計装は、半導体の性能競争だけで買い替えられる物ではない。新しい会社が同じ機能を作れても、軍や規制当局が認めるまでの期間が堀になる。事業の寿命は景気循環よりはるかに長い。
第二の問いは、利益のうち本当に株主が使えるお金はいくらかだ。2025年の純利益4.8億ドルに対してFCFは5.5億ドルだった。ただし運転資金の変動や顧客の前払いで一時的に増える現金を永続利益と誤認しない。維持費用に加え、軍用電子技術の更新や原子炉の資格試験、能力増強に再投資が必要だ。増分の資本収益率が資本コストを上回る限り、還元を少し控えて投資しても合理的である。
第三は支払う価格である。2035年には中立でも純利益が倍以上に増えるが、成長が成熟した後には同じ勢いを永遠には期待できない。買い戻した株の枚数だけでは企業全体の価値は増えず、買い値を誤れば既存の株主に損が残る。負け筋では潜水艦の建造遅延、軍用規格の開放、原発新設計画の未着工が重なり、利益は今の半分以下にもなる。優れた経営と強い製品を認めても、価格を問わず買える会社ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは3つの報告部門に分かれる。航空宇宙・産業部門は2025年に約9.8億ドルを売り、民間機の翼やエンジン周辺のセンサー、電動アクチュエータ、金属表面処理、産業車両の制御装置を供給した。航空機メーカーの生産台数が増えると新品が売れ、表面処理や一部の補修は稼働中の機体から継続して受注する。産業車両は景気に敏感で、航空向けと同じ強さの堀ではない。
防衛電子機器部門は約10.2億ドルの売上で、営業利益率は27.3%と最も高い。戦闘機、無人機、艦艇、装甲車向けの耐振動コンピュータ、戦術通信、データ記録、レーダー処理が中心だ。米軍が機体を長く使うほど古い電子機器の刷新が必要になり、軍用規格に合う既採用品の置き換えには時間も試験費用もかかる。2024年の投資家説明会は、400超の機種・艦艇などの基盤と3,000超の計画に採用実績があると説明した。これは当年の納入件数ではなく、供給先の広さを示す数字である。
海軍・電力部門は約15.0億ドルで、バージニア級・コロンビア級潜水艦のポンプ、バルブ、発電装置、空母の着艦設備と保守を担う。民間では既存原発の交換部品、計装・制御、安全系、運転訓練用シミュレーターを扱い、ウェスチングハウスのAP1000向け冷却ポンプや先進小型炉の試作品も手掛ける。海軍・電力の部門受注残は2025年末に約25.8億ドルと最大だった。会社は実機器の個数や平均単価を開示しないため、数量の推計には艦艇建造、航空機納入、原発稼働基数と市場規模を使う。
優良さと弱いところ
最大の堀は、故障を許されない用途で一度選ばれた部品が、何十年も使われることにある。原子力推進装置や原子炉の計装機器は資格試験、品質記録、規制対応が厳しい。軍用電子機器も実機での耐環境試験と設計認証が必要で、顧客は少し安い部品へ簡単には替えられない。海軍装備と電子機器の納入後には改修・交換の需要が続くため、単発の受注より値上げの交渉がしやすい。ただし契約ごとの値上げ率は開示されず、値決め力を一律の独占とみなさない。
財務の質も改善している。2025年の会社公表ROICは15.9%で、資本コストを明確に上回った。3年前の12.5%から上がり、営業利益率も2023年の約17%から18%台へ伸びた。一方、同期間には生産効率改善、買収の一時費用、需要の山が混ざる。増分投資が常に20%を稼ぐ証拠ではなく、新しい工場や買収に払う金額を確認する必要がある。
弱点は、米政府関連の最終需要が売上の58%を占め、調達予算と納期に左右されることだ。2025年の純有利子負債は8億ドルと軽いが、資産の約43%はのれんと無形資産である。自己資本をそのまま換金できる財産と見てはいけない。AIエージェント代替の典型である人月請負、席課金ソフト、広告運用は主業ではない。原発シミュレーターも安全認証と実機に結び付く製品・支援が中心で、直接の代替リスクは限定的だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
同社の需要は、民間航空の増産、軍の装備電子化、原子力発電所の保守に分かれる。エアバスとボーイングの2025年の民間機納入は合計1,393機だった。供給網が戻れば2030年代は今より多くの機体に部品が載るが、機体メーカーの品質問題や航空会社の収益悪化は逆風になる。航空・産業向けではムーグ、パーカー・ハネフィン、RTXのコリンズ、クレインなど大手が競う。各社の部品別シェアは非開示であり、全航空機市場のシェアと混同しない。
防衛電子の競争は、軍用組み込み計算機ではマーキュリー・システムズ、エルマ、コントロン、アバコなどと重なる。外部調査の2025年世界耐環境組み込みシステム市場は約45億ドルで、マーキュリーの推定シェアは約24%だ。しかしカーチス・ライトの防衛電子部門は通信や記録装置も含み、この市場だけで全売上を割ってシェアを出せない。米軍のオープン規格MOSAは採用品を広げる機会であると同時に、新規参入や価格比較を容易にする。
海軍では、米国の原子力潜水艦の建造能力が年2隻の調達目標に追いつかず、近年の実際の建造ペースは年1.1〜1.2隻程度にとどまる。ゼネラル・ダイナミクスとハンティントン・インガルスが造船を担い、同社はその中の不可欠な機器供給者である。民間原子力では世界で約417基が稼働し、延命・改修が基礎需要となる。フローサーブ、フラマトム、エマソンなどの設備・制御大手が部分的な競争相手だ。新規AP1000や小型炉は上乗せだが、開発計画から商業稼働まで長く、設計採用と最終受注の間には大きな隔たりがある。
資本政策と M&A
経営は「Pivot to Growth」の下で、増産設備、研究開発、選別した買収と還元を組み合わせる。2024年の投資家説明会では2024〜2026年の有機売上成長率年5%超、営業利益を売上以上に伸ばすこと、利益成長年10%超、FCF転換率105%超を目標にした。2026年8月の通期見通しは売上8〜9%増、調整後営業利益率19.1〜19.3%、FCF5.85〜6.05億ドルで、当面の達成可能性は高い。ただし2035年までの利益額を約束してはいない。
2024年には原子力シミュレーターのWSCと安全計装のI&C Solutions(旧Ultra Energy)を合計約2.35億ドルで取得した。2025年は新たな買収を完了せず、既存事業の成長に資金を回した。2026年7月にはペンシルベニア州拠点への0.8億ドルの複数年投資を公表した。買収ののれんが多いため、次も高値で買えば株主の利益率は下がる。
2025年の自社株買いは約4.66億ドル、配当は約0.35億ドルで、株式報酬は正味還元から控除する。2026年9月には買い枠を総額7億ドルへ広げ、同年の自社株買い約4.6億ドルを見込むと表明した。2027年1月にはCOOのケビン・レイメントがCEOに就き、前CEOは執行会長に移る予定だ。10月にはCFOの交代も始まった。継承後も過大な買収と割高な自社株買いを避けるかが、資本配分を見極める試金石になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の最大の価値は、海軍と原子力の設計に入り込むと供給が何十年も続くことである。2024年の投資家説明会は、次世代攻撃型潜水艦で従来より搭載額が増える可能性を示した。現行バージニア級でも1隻当たり約0.75億ドルの同社製品が搭載されるという目安があり、造船が年2隻へ近づけば、完成数より先に長期部品の発注が増える。空母の長期改修や原子炉の交換部品も途切れにくい。
民間原子力の上振れはさらに大きい。ウェスチングハウスのAP1000は1基につき冷却ポンプ4台を必要とし、欧州で複数の建設契約が確定すれば製品供給の年数は長い。2026年にはテラパワー向けシミュレーターの設置やX-energy向け試作の進展も公表された。これらが認証を通過して量産へ移れば、既設炉の延命だけに頼らない収益源が生まれる。防衛電子ではMOSA規格への対応と400超のプラットフォーム実績が、新型機や無人機への横展開を支える。
2026年上半期には防衛電子の受注が強く、営業利益率が高水準に保たれた。費用を抑えるだけでなく、高付加価値の電子製品や原子力部品の比率が増えれば、増収以上に利益が伸びる。買収を急がず、次世代原子炉の製造能力と海軍部品の供給能力へ資本を振り向ければ、株主に還元できる現金も膨らむ。米国・欧州の国防とエネルギーの両方が追い風になるため、会社の成長が市場平均を長期に上回る余地がある。
慎重な見方
投資家が最も過大評価しやすいのは、新設原子炉の構想を確定注文のように扱うことである。AP1000の設計選定と顧客の建設決定は違い、資金調達、規制審査、工事日程、政治的合意が欠ければ十年たっても納品できない。先進小型炉は初号機で設計が変わりやすく、試験機の受注と量産の利益率も異なる。買収した安全計装会社ののれんと無形資産は、顧客の計画が消えれば売って回収できない。
海軍も予算が増えるだけでは部品メーカーの売上にならない。ゼネラル・ダイナミクスとハンティントン・インガルスの造船現場は熟練工不足と工程遅延に悩み、調達数に生産が追いつかない。完成の遅れが数年続けば、長期受注残は現金に変わる時期が遅れる。軍は価格の引下げと供給元の複数化を求め、契約の中には費用増を十分転嫁できないものもある。
防衛電子の高い営業利益率は競争を誘う。MOSAという共通規格は採用の入口を広げる反面、マーキュリー、アバコ、コントロンなどが代替品を売りやすくする。大手顧客が一部のソフトや電子機器を内製化すれば、古いプラットフォームへの独占的な供給力は弱まる。航空向けはボーイングやエアバスの生産に左右され、産業車両は需要が止まりやすい。固定費と研究開発費は短期に削れないため、販売数量が落ちたときの利益率の低下は売上の減少より大きい。
どちらに重みを置いたか
長い製品寿命と装備更新の必要性では強い見方が優勢である。構造的な追い風が複数あり、2025年の受注残と2026年上期の進捗もそれを裏付けるため、楽観・やや楽観の合計を37%とし、悲観二段階の26%より厚くした。ただし米海軍の建造能力と新設原発の受注成立は企業自身では制御できない。中立を37%と最も厚くしても、現在の価格を支える安全域は不足する。これは成長が止まるという見通しではなく、成長の果実に先回りして払いすぎていないかという判断である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 563.50 ドル212 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 145.60 ドル55 億ドル)。 今の値に割り戻すと 367.38 ドル138 億ドル、今との差 −22.8%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 13% | 1,065 ドル401 億ドル | 212.59 ドル80 億ドル | +168.4% | +11.7% | 166.08 ドル62 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 785.99 ドル296 億ドル | 193.99 ドル73 億ドル | +105.9% | +8.5% | 235.20 ドル89 億ドル |
| 中立 | 37% | 526.09 ドル198 億ドル | 146.16 ドル55 億ドル | +41.2% | +4.0% | 248.73 ドル94 億ドル |
| やや悲観 | 18% | 207.41 ドル78 億ドル | 79.72 ドル30 億ドル | −39.7% | −5.6% | 51.68 ドル19 億ドル |
| 悲観 | 8% | 55.38 ドル21 億ドル | 37.20 ドル14 億ドル | −80.5% | −17.5% | 7.41 ドル3 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 563.50 ドル212 億ドル | 145.60 ドル55 億ドル | +49.0% | +4.6% | 709.10 ドル267 億ドル |
今の株価時価総額 476.01 ドル179 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 13% 楽観:新型炉量産と艦艇の供給増で超過利益が厚くなる 利益 18 億ドル · PER 21.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,065 ドル401 億ドル
2035年、米海軍は潜水艦建造を年2隻近くまで引き上げ、バージニア級の補修に加えてコロンビア級と新しい艦艇の搭載部品を増やす。原子力発電でも既設炉の延命が広がり、欧州のAP1000の建設が複数成立する。ウェスチングハウス向け冷却ポンプと安全計装は量産へ移り、先進小型炉ではテラパワーやX-energy向けに試作から継続納入へ進む。海軍・電力の対象市場は実質570億ドルへ広がり、推計シェアも5.6%に上がる。
防衛電子は無人機と戦闘機の更新、レーダー・通信の標準化で採用装備が増え、マーキュリーやアバコに新規計画を奪われない。複合対象市場270億ドルに対してシェア7.4%を保つ。航空・産業も航空機納入の回復と制御装置の電動化で対象市場330億ドルへ伸びる。各部門は安全認証と開発実績による価格の上積みが可能で、単価は2025年の1.50倍となる。
付加価値の高い部品が増え、海軍・電力の営業利益率は22%、防衛電子は31.5%まで高まる。収益が良くても設備と開発には再投資し、10年のGAAP純利益累計約117億ドルから正味80億ドルを還元する。新設炉の正式受注と設備増強が順調に重なり、堀を広げて2035年を迎える筋書きである。
- 航空宇宙・産業:数量 16.2(航空・産業向け制御部品・表面処理の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CWの推定シェア=実質売上相当の億ドル)× 価格 150.0%(採用品1件当たりの名目単価指数、2025年=1。数量側だけに市場とシェアを入れる。)→ 売上 24 億ドル・営業利益 5 億ドル。対象市場330億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア4.90%=数量相当16.17億ドル。名目単価指数1.50倍。
- 防衛電子機器:数量 20.0(耐環境組み込み計算機・戦術通信・軍用記録装置の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.50(軍用計算機・通信装置の構成単価指数、2025年=1)→ 売上 30 億ドル・営業利益 9 億ドル。対象市場270億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア7.40%=数量相当19.98億ドル。名目単価指数1.50倍。
- 海軍・電力:数量 31.9(海軍原子力推進装置・艦艇保守・原子炉更新・工程バルブの対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.50(ポンプ・バルブ・制御系・保守契約の平均名目単価指数、2025年=1)→ 売上 48 億ドル・営業利益 11 億ドル。対象市場570億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア5.60%=数量相当31.92億ドル。名目単価指数1.50倍。
倍率:純利益はGAAP、株式報酬は費用のまま。式のROEは10年目の純利益18.384億ドル÷自己資本62.3億ドル=29.5%(帳簿ROEが40%を超えず、増産には運転資金・設備・顧客認証が要るのでその元手を除かない)。堀はstrong、残る割合2/3。k7.75%に対しRONIC=k+2/3×(ROE−k)=22.3%。g=4.0%は2035年以後の市場数量・シェア・単価の伸びから判断(成熟した艦艇・電子機器市場の実質数量0.5〜1%と単価の名目上昇3〜3.5%の合成(4%で上限))。10年目の利益に対する正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=22.7倍。商用原子炉と次世代装備が量産へ進み、超過利益が長く続く。正当化上限の約96%とし、2025年の株価や同業倍率は使用しない。時価総額=18.3836×21.8=400.8億ドル。
確率:正式なAP1000建設、潜水艦の年2隻生産、軍用電子の採用拡大と値上げが同時に進むには顧客の投資実行が必要であり、可能性は約13%とする。
やや楽観 24% やや楽観:原子力延命と軍用電子の採用が拡大 利益 14 億ドル · PER 20.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 785.99 ドル296 億ドル
既設原発の延命と海軍の保守需要が安定して伸び、コロンビア級潜水艦の納期もおおむね進む。欧州のAP1000では一部が正式発注に進むが、先進小型炉の大量生産までは含めない。海軍・電力の対象市場は実質520億ドルとなり、長年の認証と保守網を生かしてシェアは5.3%へ少し広がる。利益率は製品構成の改善で20%へ向かう。
防衛電子ではMOSA規格に対応した計算機と戦術通信の採用が増える。ただしマーキュリー、エルマ、コントロンとの競争でシェアは約7.2%と現在よりわずかに落ちる。軍用ハードの数量増が勝り、利益率は30%を維持する。航空・産業はエアバスとボーイングの納入増を取り込み、産業車両が緩やかに回復する。値上げは概ね物価並みを少し上回る。
大型買収はせず、2024年に取り込んだ原子力計装技術を既存事業に結び付ける。高い営業キャッシュ創出力を保ちながら設備能力を増し、期間の純利益累計約96億ドルのうち正味73億ドルを還元する。堀は残るが、原子炉の新設という最大の上振れは一部にとどまる筋書きである。
- 航空宇宙・産業:数量 14.7(航空・産業向け制御部品・表面処理の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CWの推定シェア=実質売上相当の億ドル)× 価格 145.0%(採用品1件当たりの名目単価指数、2025年=1。数量側だけに市場とシェアを入れる。)→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。対象市場300億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア4.90%=数量相当14.7億ドル。名目単価指数1.45倍。
- 防衛電子機器:数量 17.3(耐環境組み込み計算機・戦術通信・軍用記録装置の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.45(軍用計算機・通信装置の構成単価指数、2025年=1)→ 売上 25 億ドル・営業利益 8 億ドル。対象市場240億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア7.20%=数量相当17.28億ドル。名目単価指数1.45倍。
- 海軍・電力:数量 27.6(海軍原子力推進装置・艦艇保守・原子炉更新・工程バルブの対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.45(ポンプ・バルブ・制御系・保守契約の平均名目単価指数、2025年=1)→ 売上 40 億ドル・営業利益 8 億ドル。対象市場520億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア5.30%=数量相当27.56億ドル。名目単価指数1.45倍。
倍率:純利益はGAAP、株式報酬は費用のまま。式のROEは10年目の純利益14.358億ドル÷自己資本48.3億ドル=29.7%(帳簿ROEが40%を超えず、増産には運転資金・設備・顧客認証が要るのでその元手を除かない)。堀はstrong、残る割合2/3。k7.75%に対しRONIC=k+2/3×(ROE−k)=22.4%。g=4.0%は2035年以後の市場数量・シェア・単価の伸びから判断(成熟した艦艇・電子機器市場の実質数量0.5〜1%と単価の名目上昇3〜3.5%の合成(4%で上限))。10年目の利益に対する正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=22.8倍。堀は維持するが新設炉の一部しか成立しない。上限の約90%として需要の時期と事業構成の不確実性を残す。時価総額=14.3581×20.6=295.8億ドル。
確率:軍用・原子力の長期プログラムは実績があり、建造制約が徐々に緩む見通しは十分あり得る。ただし新設原発の全件成立までは見込まず24%。
中立 37% 中立:装備と原子炉の既設需要が育つが競争も進む 利益 11 億ドル · PER 18.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 526.09 ドル198 億ドル
海軍の調達は名目で増え、潜水艦の建造ペースは徐々に改善するが、熟練工不足で年2隻に安定するまで時間がかかる。原発の延命と既存設備の交換は確実な需要となる一方、新しいAP1000は計画の一部しか建設に移らない。海軍・電力の実質対象市場は300億ドルから455億ドルへ広がり、カーチス・ライトの推計シェアは5.01%から5.15%へ小幅に上がる。
防衛電子では戦闘機や無人機への電子機器搭載が増え、市場は実質205億ドルに伸びる。ただし共通設計規格が競争を強め、シェアは7.84%から7.26%へ下がる。航空・産業は民間機の納入増と産業車両の低成長が相殺し、市場が実質265億ドルになるなかでシェアは4.65%に落ち着く。単価は各部門とも物価に沿って約1.41倍へ上昇する。
防衛電子は高付加価値製品で28%の利益率を維持し、海軍・電力は生産効率の改善で18%に達する。全社の営業利益は約14.2億ドル、GAAP純利益は約10.6億ドルとなる。期間の利益累計約77億ドルのうち55億ドルを株式報酬控除後の配当・自社株買いで還元し、成長に必要な資本も残す。
- 航空宇宙・産業:数量 12.3(航空・産業向け制御部品・表面処理の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CWの推定シェア=実質売上相当の億ドル)× 価格 141.0%(採用品1件当たりの名目単価指数、2025年=1。数量側だけに市場とシェアを入れる。)→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。対象市場265億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア4.65%=数量相当12.322億ドル。名目単価指数1.41倍。
- 防衛電子機器:数量 14.9(耐環境組み込み計算機・戦術通信・軍用記録装置の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.41(軍用計算機・通信装置の構成単価指数、2025年=1)→ 売上 21 億ドル・営業利益 6 億ドル。対象市場205億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア7.26%=数量相当14.883億ドル。名目単価指数1.41倍。
- 海軍・電力:数量 23.4(海軍原子力推進装置・艦艇保守・原子炉更新・工程バルブの対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.41(ポンプ・バルブ・制御系・保守契約の平均名目単価指数、2025年=1)→ 売上 33 億ドル・営業利益 6 億ドル。対象市場455億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア5.15%=数量相当23.432億ドル。名目単価指数1.41倍。
倍率:純利益はGAAP、株式報酬は費用のまま。式のROEは10年目の純利益10.587億ドル÷自己資本47.3億ドル=22.4%(帳簿ROEが40%を超えず、増産には運転資金・設備・顧客認証が要るのでその元手を除かない)。堀はstrong、残る割合2/3。k7.75%に対しRONIC=k+2/3×(ROE−k)=17.5%。g=4.0%は2035年以後の市場数量・シェア・単価の伸びから判断(成熟した艦艇・電子機器市場の実質数量0.5〜1%と単価の名目上昇3〜3.5%の合成(4%で上限))。10年目の利益に対する正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=21.4倍。長期調達と資格認証は強みだが、MOSAの競争と造船遅延が残る。利益ベース上限の約87%として慎重に評価する。時価総額=10.5867×18.7=198.0億ドル。
確率:2025年受注残と2026年上期の事業別の強弱、政府調達の遅れと技術の採用実績を両方踏まえ、最頻の中立を37%とする。
やや悲観 18% やや悲観:造船遅延と電子機器の価格競争 利益 6 億ドル · PER 12.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 207.41 ドル78 億ドル
国防支出は増えても、潜水艦の造船現場では設備と人手が追いつかず、調達の遅れが慢性化する。民間原子力は既設炉の寿命延長が続く一方、AP1000の大型受注は断続的で、先進小型炉は試作主体にとどまる。海軍・電力の実質対象市場は370億ドルにしか伸びず、シェアは5.0%で横ばいとなる。納期の遅れと原材料費で利益率は14.8%へ下がる。
防衛電子ではMOSAによって同等品を選ぶ機会が増える。マーキュリー、アバコ、コントロンが新規装備の採用を奪い、推計シェアは6.6%に下がる。航空・産業も航空機増産の遅れと産業車両の弱さでシェアを4.32%へ失う。値上げは顧客の固定価格契約と競争で物価より弱く、各部門の単価は1.35倍にとどまる。
防衛電子の利益率は22%へ落ちるが、長年の既採用品の交換需要が消えるわけではない。大型買収と自社株買いを抑えて現金を温存し、利益累計約54億ドルから正味30億ドルを株主に返す。企業は存続しても、成長と値決め力が想定より弱かった世界である。
- 航空宇宙・産業:数量 10.2(航空・産業向け制御部品・表面処理の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CWの推定シェア=実質売上相当の億ドル)× 価格 135.0%(採用品1件当たりの名目単価指数、2025年=1。数量側だけに市場とシェアを入れる。)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。対象市場235億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア4.32%=数量相当10.152億ドル。名目単価指数1.35倍。
- 防衛電子機器:数量 11.2(耐環境組み込み計算機・戦術通信・軍用記録装置の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.35(軍用計算機・通信装置の構成単価指数、2025年=1)→ 売上 15 億ドル・営業利益 3 億ドル。対象市場170億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア6.60%=数量相当11.22億ドル。名目単価指数1.35倍。
- 海軍・電力:数量 18.5(海軍原子力推進装置・艦艇保守・原子炉更新・工程バルブの対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.35(ポンプ・バルブ・制御系・保守契約の平均名目単価指数、2025年=1)→ 売上 25 億ドル・営業利益 4 億ドル。対象市場370億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア5.00%=数量相当18.5億ドル。名目単価指数1.35倍。
倍率:純利益はGAAP、株式報酬は費用のまま。式のROEは10年目の純利益6.071億ドル÷自己資本49.3億ドル=12.3%(帳簿ROEが40%を超えず、増産には運転資金・設備・顧客認証が要るのでその元手を除かない)。堀はstrong、残る割合2/3。k7.75%に対しRONIC=k+2/3×(ROE−k)=10.8%。g=3.0%は2035年以後の市場数量・シェア・単価の伸びから判断(調達抑制によるシェア微減−0.5%と価格上昇約3.5%の合成)。10年目の利益に対する正当化PER=(1−g/RONIC)÷(k−g)×(1+g)=15.7倍。競争で超過利益が削られ、長期名目成長gを3%に落とす。資産の簿価でなく弱い稼ぐ力から上限より低く評価する。時価総額=6.0710×12.3=74.7億ドル。
確率:MOSAの競争と造船遅延、AP1000の一部見送りは独立に起こりうるため18%。既設機の修理・交換需要があるので過半の崩壊とは分ける。
悲観 8% 悲観:共通規格化と原子炉計画の失速で堀が縮む 利益 2 億ドル · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 55.38 ドル21 億ドル
軍用電子機器は共通規格化が進み、顧客の内製化とマーキュリー、アバコ、コントロンの攻勢で新規計画の採用を失う。防衛電子の推計シェアは7.84%から5.4%へ落ち、利益率は12%に縮む。産業・航空向けでもエアバスとボーイングの増産が長期に遅れ、汎用制御装置ではムーグやパーカーとの価格競争が強まる。航空・産業の市場は実質190億ドルへ縮み、シェアも3.95%に下がる。
海軍では潜水艦の造船能力が回復せず、追加発注が先送りになる。新設AP1000の契約が本格化せず、先進小型炉も量産へ進まない。既設炉の交換需要は残るが、フローサーブやフラマトムとの競争が増し、推計シェアは4.3%になる。単価の上昇は全社で1.25倍にとどまり、原材料と熟練労働者の費用上昇を転嫁できない。
のれんの減損と一時費用が2028〜2030年の利益を押し下げる。2035年の営業利益は約3.4億ドル、GAAP純利益は約2.2億ドルにとどまり、期間の純利益累計は約30億ドルとなる。自社株買いを大幅に減らして正味14億ドルだけ還元する。部品の認証は残っても超過利潤が失われるため、かつての優良企業としての評価はできない。
- 航空宇宙・産業:数量 7.5(航空・産業向け制御部品・表面処理の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CWの推定シェア=実質売上相当の億ドル)× 価格 125.0%(採用品1件当たりの名目単価指数、2025年=1。数量側だけに市場とシェアを入れる。)→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。対象市場190億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア3.95%=数量相当7.505億ドル。名目単価指数1.25倍。
- 防衛電子機器:数量 7.7(耐環境組み込み計算機・戦術通信・軍用記録装置の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.25(軍用計算機・通信装置の構成単価指数、2025年=1)→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。対象市場142億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア5.40%=数量相当7.668億ドル。名目単価指数1.25倍。
- 海軍・電力:数量 13.3(海軍原子力推進装置・艦艇保守・原子炉更新・工程バルブの対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア)× 価格 1.25(ポンプ・バルブ・制御系・保守契約の平均名目単価指数、2025年=1)→ 売上 17 億ドル・営業利益 2 億ドル。対象市場310億ドル(2025年価格の実質)×採用品の推定シェア4.30%=数量相当13.33億ドル。名目単価指数1.25倍。
倍率:GAAP純利益を使い、2035年のROEは5.3%でk7.75%に届かない。超過利益の消滅を反映し、式における事業の長期gは市場実質数量・シェアの縮小と物価以下の価格交渉力から1%とする。再投資利回りがk以下のためPER上限は1/k=12.9倍。ROEが資本コストを下回り、再投資は株主価値を増やさない。g1%、PERは1÷kの限度12.9倍より低い9.6倍とし、売れる資産の床と比較する。時価総額=2.1710×9.6=20.8億ドル、悲観時の税後換金可能資産の床0億ドルを上回り、同じ筋書きの稼ぐ力28.0億ドルを超えない。
確率:原子炉新設の停滞、潜水艦造船の難航、軍用電子のシェア喪失が重なる構造的敗北。長期の認証・補修基盤を考慮し8%だがゼロにはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
航空宇宙・産業
民間機と軍用機向けセンサー、電動アクチュエータ、表面処理、産業車両の電力・制御機器。民間航空の増産と産業景気の混合需要。
| 数量航空・産業向け制御部品・表面処理の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CWの推定シェア=実質売上相当の億ドル | 価格採用品1件当たりの名目単価指数、2025年=1。数量側だけに市場とシェアを入れる。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.8 | 100.0% | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 12.3 | 141.0% | 17 | 3 |
取り方:2025年10-Kの報告部門売上9.768億ドル、営業利益1.662億ドル。実機の個数・平均単価は非開示。航空機納入は2025年エアバス793機とボーイング600機、産業車両・表面処理は別需要なので、航空制御部品・産業用制御・表面処理を合わせた対象市場約200億ドル(外部製品市場の概算、公式TAMではない)×CWシェア約4.88%と推定した。ムーグ、パーカー・ハネフィン、コリンズと競争するが、各社の同一定義のシェア開示はない。2025年顧客別の民間航空4.30億ドル・一般産業4.12億ドルは部門と完全一致しない。将来は航空機生産・修理と産業車両台数で市場量を変え、採用率をシェアに入れる。
防衛電子機器
戦闘機・無人機・艦艇・車両向けの堅牢な計算機、レーダー処理、戦術通信、記録装置。長期プログラム更新とMOSA規格への移行が数量を左右する。
| 数量耐環境組み込み計算機・戦術通信・軍用記録装置の対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア | 価格軍用計算機・通信装置の構成単価指数、2025年=1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.2 | 1.00 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 14.9 | 1.41 | 21 | 6 |
取り方:2025年10-Kの部門売上10.186億ドル・営業利益2.780億ドル。2024年Investor Dayは400超の装備基盤・3000超の累積計画を示すが年間製品台数は出ない。外部調査Global Market Insightsの2025年耐環境組み込み市場約45億ドルを核に、戦術通信・レーダー・記録装置の関連市場を約85億ドル加え、複合対象市場約130億ドル(アナリスト推計)×CW取り分約7.84%。マーキュリー・システムズの調査推定シェア約24%は45億ドルの部分市場のみであり、CWの複合シェアと直接比較できない。将来は装備更新対象機数と1機の電子化比率、MOSA競争によるシェア変化を数量に入れる。
海軍・電力
潜水艦・空母の原子力推進部品と保守、民間原発の安全計装、冷却ポンプ、原発シミュレーター、石油・化学向け高機能バルブ。
| 数量海軍原子力推進装置・艦艇保守・原子炉更新・工程バルブの対象市場(2025年価格の実質億ドル)×CW推定シェア | 価格ポンプ・バルブ・制御系・保守契約の平均名目単価指数、2025年=1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15.0 | 1.00 | 15 | 2 |
| 10 年後 中立 | 23.4 | 1.41 | 33 | 6 |
取り方:2025年10-Kの部門売上15.030億ドル・営業利益2.313億ドル、受注残25.797億ドル。米海軍潜水艦の近年の建造実績年1.1〜1.2隻、Investor Dayの現行艦1隻当たり約0.75億ドルのCW搭載額、世界の稼働原発約417基を物量の基準に使う。年次の総対象市場は海軍艦艇の機器・保守、原発既設炉の安全機器、工程バルブなど合算約300億ドル(アナリストの対象範囲推計、公式TAMではない)×CW推定シェア約5.01%。造船元のGD・HIIは顧客、BWXTは炉本体側、フローサーブ・フラマトムなどが製品別の競争相手。艦艇数、原発延命対象、AP1000実発注、受注残の転換を将来数量に反映する。
リスクと懸念
潜水艦の造船能力と国防予算
米海軍の核動力艦は一度採用されると長く部品を使うが、実際の潜水艦生産は近年年1.1〜1.2隻ほどで、年2隻の調達ペースに追いつかない。造船所の人員不足と固定価格契約の費用超過が続けば、受注残は積み上がっても現金化は遅れる。予算要求の成立を、建造能力の改善と同一視してはいけない。
原子力新設計画と許認可
AP1000と先進小型炉は冷却ポンプ、安全制御、訓練設備に大きな機会を与えるが、設計採用は最終受注ではない。欧州の政治・資金調達・規制審査に遅れが出ると設備生産の山が後ろへずれ、開発費だけが先行する。既存炉の交換部品という堅い収益と、新設炉の希望的な需要を分けて見る必要がある。
防衛電子のMOSA規格と競合
共通規格MOSAは同社の耐環境機器を新たな装備へ採用させやすくする一方、マーキュリー・システムズやアバコ、コントロンなどが競争入札へ入りやすくなる。軍需顧客によるソフトの内製化やモジュールの差し替えが増えれば、現行の高い利益率と長期の価格決定力は維持できない。
航空機と産業車両の循環
民間機の納入ペースはボーイングの品質対応、エアバスの部品不足、航空会社の設備投資によって変動する。産業車両も景気や設備投資に影響される。航空・産業部門の堀は海軍・原子力ほど厚くなく、減産時に稼働率が落ちれば価格改定だけで固定費を吸収できず、営業利益率は急落しうる。
のれん、買収、継承後の資本配分
2025年末は総資産の約43%がのれんと無形資産であり、買収した事業の計画が外れれば減損が起こる。2027年のCEO交代と2026年のCFO交代は予定された引き継ぎだが、投資規律が緩まない保証はない。株価が高いときの大規模な自社株買いも、会社全体の価値を増やさず既存株主の資本効率を損なう。
品質、サイバー、供給網
原子力安全機器や軍用制御装置の不具合は、通常の製造品より重い再検査や認証取り消しにつながりうる。半導体の調達遅れやサイバー侵害も軍の納入工程を止める。信頼と資格が競争優位の源であるぶん、一度の不具合で顧客が代替供給元を求めると修復には長い時間がかかる。
AIによる設計・戦術システムの変化
人月請負や席課金業務ソフトではないため、AIエージェント代替が主力の機器売上を直接消す可能性は小さい。ただしAIによる軍の情報処理の標準化と自動設計は、顧客側の内製化や新興供給者の参入を助ける。防衛電子の付加価値が独自ハードから汎用ソフトへ移るなら、採用品の切替障壁も弱まる。
今後の分かれ目
- バージニア級の実際の建造が年2隻に近づき、海軍・電力の受注残が売上へ順調に転換したら
- 海軍・電力の実質数量を中立より増やし、やや楽観への比重を高める。受注だけでなく納品と現金化を確かめる。
- ポーランドなどでAP1000の建設契約と冷却ポンプの正式発注が相次いだら
- 新設炉を数量に加え、海軍・電力の市場規模と利益率を上方修正する。未成立の計画は引き続き含めない。
- 先進小型炉が実証段階を越え、X-energyやテラパワー向けが継続量産受注になったら
- 研究開発の先行費用が継続売上へ変わるため、2035年の海軍・電力は楽観側に近づく。
- 防衛電子の受注が伸びても営業利益率が25%を数年下回るようになったら
- MOSA競争と製品構成悪化を疑い、基準シェアを引き下げてやや悲観の確率を増やす。
- 民間機の納入が2030年代にも年1700機前後から伸びず、産業車両も不振なら
- 航空・産業部門の実質市場成長を引き下げ、固定費吸収の悪化で全社営業利益を下げる。
- 自社株買いが年間4億ドル超で続き、ROICが資本コストに近づくなら
- 再投資先の稼ぐ力と買い戻し価格を問い直し、資本配分の評価と中立の持続利益を下げる。
- 2027年の新CEO就任後も新規買収を抑え、ROIC15%前後とFCF転換率105%超が続いたら
- 高い利益の質が確認でき、強い堀を維持したまま中立の確からしさが増す。
見ておくもの
- 海軍・電力の受注残と売上への転換、潜水艦の実際の年次建造隻数
- ウェスチングハウスAP1000の正式発注と冷却ポンプの契約、先進小型炉の試作から量産への移行
- 防衛電子の受注・営業利益率とMOSA適合製品の採用装備数
- ボーイング・エアバスの実際の年間納入機数、航空・産業部門の受注
- 会社全体のGAAP営業利益率とROIC、のれん減損の有無
- FCF、株式報酬控除後の正味還元、自社株買いの実行価格
- 2026年11月4日発表予定の第3四半期結果と2027年CEO交代後の資本配分
倍率と資本コストの決め方
まず2025年10-Kの3報告部門売上と営業利益を固定し、航空機の実納入、軍用組込電子機器の市場、海軍艦艇と原子炉の保守などの物量で2035年の実質市場を考えた。各市場は同一定義の公表TAMがないため、アナリスト推計の対象市場とシェアを区別して明示した。数量=市場×シェア、価格=名目単価指数として物価分を二重計上せず、GAAP純利益から正当化PERを導いた。kは7.75%、strongの残る割合は2/3、長期gは市場成熟後の実質数量と単価に基づき4%以下。中立のPER18.7倍は式の上限約21.4倍の87%で、株価・過去のPER・同業の市場評価で決めていない。自己資本は現在25.3億ドル+利益累計−正味還元で各筋書きに繰り越した。米国のリースはASC842で既にBSに載るため、家賃やリース債務を消してはいない。結果は現在の時価総額を約21%下回るやや割高となる。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%+quality−0.25%=7.75%。政府調達の遅れ、原子炉の未着工、買収とのれんの損失は確率と利益の下振れへ入れ、kへの追加上乗せはしない。