結論
H&Rブロックは、毎年の税務申告を専門家とソフトの両方で助ける米国の老舗である。筆者の結論はやや割高だ。納税の義務は10年先も残るが、申告の入力や確認に人を雇う必要はAIエージェントによって減る。税務知識の難しさと、申告書の誤りに責任を負う仕組みはブランドを守るが、現在の店舗網をそのまま守る理由にはならない。
2026年6月期の売上は約39.5億ドル、GAAP純利益は約7.3億ドルだった。ただし税務調査の決着による一時的な税の利益が約0.84億ドル含まれる。直営の専門家付き申告は料金が4%上がり、件数も2%増えた一方、有料オンライン申告の件数は減った。2027年6月期の会社売上見通しは41.1〜41.6億ドルと堅調である。短期の伸びと10年後に残る仕事は分けて考える必要がある。
中立では専門家付き申告が現在の7割まで縮み、料金上昇では補えない。DIYと中小企業会計の画面操作にも値下げ圧力がかかり、10年後の売上は36.2億ドル、純利益は5.3億ドルとなる。反面、配当と買い戻しを続けてきた実績があるため、期間中の正味の還元は無視できない。5つの筋書きの割引後価値は約56億ドルで、添付の株数から測る時価総額約64億ドルより約12%小さい。値段に十分な安全域があるとは言いにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、税務申告という毎年繰り返す仕事は魅力的だ。設備に何十億ドルも投じる必要はなく、顧客は正確さと安心に対価を払う。春に集まった現金を配当で受け取り、買い戻しで持ち分を増やせるなら、長く持つ株主にはよい仕組みである。2026年の営業活動による現金は約8.4億ドル、設備投資後に残った現金は約7.6億ドルと、会計利益の裏付けもある。
それでも持続するのは「税を計算する必要」であって、「各地の店舗で人が入力する必要」ではない。AIが領収書と給与明細を読み、申告書を作れるようになれば、業界に残る事業者は売上を増やせなくても利益を残すために店舗を閉めることになる。申告の責任を引き受けるブランドの価値は残るが、利用者を今の件数だけ連れて来る保証ではない。
もう一つ大切なのは資本の扱いだ。自己資本がほとんどない状態での高ROEは、堀の証拠にも利益成長の源泉にもならない。過去の買い戻しは株主への実際の還元だったが、今後は景気が悪くなっても同じ額を出せるとは限らない。筆者は中立で10年の純利益を計59億ドル、正味の還元を53億ドルと見る。現在の価格に対する安全域は薄く、買い戻しの実績だけを理由に高く評価するのは避けたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は米国の専門家付き申告である。税理士や申告担当者が書類を読み、申告内容を説明し、最終的な提出まで引き受ける。2026年6月期の米国直営部門の売上は25.6億ドルで、全社の約65%を占める。会社直営の申告件数は約910万件と推計でき、1件当たりの収入は約281ドルである。米国内の6,802の直営店舗と遠隔相談が販売窓口になり、稼働は2月から4月に極端に集中する。季節雇用と店舗賃料が、利益が出る時と出ない時を分ける。
加盟店の売上は小さいが、利益の質は違う。米国内に1,814の加盟店舗があり、加盟店の総売上の約30%をロイヤルティとして徴収する。2026年の収入は1.85億ドルで、加盟店自身が現場の給与や賃料を負担するため利幅は厚い。ところが加盟店を買い戻して直営化すると、見かけの直営売上は増え、ロイヤルティは減る。会社全体で申告が増えたと誤認してはいけない。
利用者が自分で税金を申告するDIYソフトは3.85億ドルを売り上げた。2026年のオンライン有料申告は約360万件で、デスクトップの約172万件と合計して有料件数を推計した。入力の画面と税額計算、電子提出が商品だが、AI Tax Assistはすでに有料オンライン利用者に追加料金なしで付く。AI機能の存在だけでは新たな値上げ力の証明にならない。
還付金の送金、追加保証、本人確認、プリペイドカード、申告前貸しなどの米国付帯収入は計約4.26億ドルである。海外の税務事業が約2.65億ドル、零細企業の会計・決済を扱うWaveが約1.23億ドル続く。会社の報告セグメントは一つなので、付帯サービスの取引件数と各商品の営業利益は開示されていない。本分析の内訳利益は費用構造からの推計であり、会計上の公式セグメント利益ではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が簡単には奪えない強みは、まず知名度と申告の責任にある。税務は年に一度でも間違えたくない仕事だ。H&Rブロックは申告の正確さを保証し、書類の作成から確認まで一貫して受け持つ。過年度の申告履歴と近所の相談窓口が残るため、複雑な事情を持つ人には値段以外の理由で選ばれる。2026年には直営の平均受注額が4.0%上がり、専門家付き申告のシェアも3年連続で改善した。短期の価格決定力は確認できた。
ただし堀は広いわけではない。毎年の所得税申告は義務でも、同じ事業者に依頼し続ける義務はない。顧客が申告履歴を持ち出せばソフトを乗り換えられる。規制が専業者に独占権を与えているわけでもなく、開示された年間解約率や顧客の年単位の移行費用も見当たらない。給与の記録を保管する基盤企業と同じ「記録の正本」の堀を全社に認めるのは過大だ。
資本効率は数字ほど単純ではない。添付ではROEが600%を超すが、巨額の自社株買いで自己資本が約1億ドルまで痩せた結果である。営業利益に対して運転資本や恒常設備投資が小さい点は評価するものの、将来の投資利回りをこのROEから機械的に出すことはできない。2026年はのれん約8.1億ドル、賃借店舗のリース負債約6.1億ドルを抱える。業績が縮むと、帳簿の高い資本効率より賃料の重さが先に表れる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の個人所得税申告は大きいが、件数は人口ほど速く増えない。IRSは2026年の申告シーズンに約1億6,400万件を見込み、5月初めの申告受理は約1億4,500万件だった。うち電子申告は約1億4,100万件で、税務専門家から約7,500万件、自分で作ったものが約6,600万件である。H&Rブロックの米国の申告は約1,900万件で、市場全体の約13%に相当する。ただし同社の数字には過年度申告も含むため、厳密な統計上のシェアではない。
最大の競合はイントゥイットのターボタックスである。同社の2026年8月公表の決算によると、ターボタックスの米国申告ユニットは3,900万件で、H&Rブロックの米国全チャネルのほぼ2倍だった。しかもターボタックス・ライブは専門家が遠隔で支援し、対面業務の高単価市場へ近づいている。低価格にはフリータックスUSAやTaxAct、地域の公認会計士、独立申告業者がいる。Waveはクイックブックスと、自動化した小規模事業者向け会計ソフトと争う。2026年春には専門家付きの市場シェアが3年続けて改善したと会社は述べており、足元の強さは認める。それでも10年にわたり専門家付き市場全体が増えるという想定には依存しない。
政策は両刃の剣である。IRSのDirect Fileは2025年秋に停止され、2026年シーズンでは提供されなかった。この事実は当面の無料化圧力を和らげる。しかし政権が変われば無料の事前記入申告は復活しうる。州の無料申告や民間の無料ソフトも既にある。税法が複雑になるほど専門家には仕事が残るが、税額計算とデータ転記の自動化は逆方向に働く。
10年後の数量は、市場の申告件数がほぼ横ばいでも、専門家に頼む割合と同社のシェアが下がると考える。直営は中立で0.70倍、加盟店も0.70倍、有料DIYは0.80倍。料金は物価の約1.41倍まで上がらず、人手型で1.30倍、画面型で1.10倍となる。今までの物価転嫁の実績だけを延長しないのが、この業界を見る上での要点である。
資本政策と M&A
経営は配当と買い戻しで利益を返してきた。2016年以降の株主還元は52億ドル超で、発行済み株式の48%超を買い戻した。2026年6月期だけでも配当と自社株買いで約7.14億ドルを払い、約1,050万株を消却した。2026年の株式報酬費用は約0.30億ドルなので、買い戻しの全額を正味の持ち分増とみなすべきではない。9年続く増配実績は強みだが、配当も税務シーズンの現金回収に頼る。
2026年8月には四半期配当を10%引き上げ、自社株買いの15億ドル枠に約6億ドルを残していた。2027年6月期の会社予想は売上41.1〜41.6億ドル、調整後EBITDA11.1〜11.4億ドル、実効税率23%である。長期の自社株買い金額を約束したわけではない。調整後の利益見通しを、株式報酬や償却を戻す前のGAAP純利益として直接使わない。
過去の加盟店買収は顧客と現場の利益を直営に取り込む取引であり、大規模な成長市場を買ったわけではない。2019年のWave買収には約4.05億ドルを使い、2020年には関連のれんを約1.06億ドル減損した。2026年も年商は約1.23億ドルで、投資の十分な収益率を確認できない。借入は2029年、2031年、2033年に満期を迎える社債が中心で、借換金利を約5.75%で見る。2026年の負債とリースを踏まえると、AIで売上が減る年には買い戻しより財務余力を優先する方針が望ましい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
所得税の申告は景気が悪くても毎年必要で、米国の納税者が一夜で申告の責任をAIに預けることはない。住宅ローンや事業所得、複数州の給与、扶養や税額控除が絡む申告では、人による最終確認を求める顧客が残る。2026年の米国直営では件数が2%増え、平均受注額が4%上がった。客が単価上昇を受け入れた事実は、税務サービスに単純な値引き競争以上の価値がある証拠である。
税務のAI支援は会社自身の生産性を高められる。店頭での書類整理や基礎的な質問を自動化できれば、少数の専門家が多くの複雑な案件を処理できる。加盟店が集めてきた顧客を直営に移す買収では、接客品質を管理しながら売上を増やすこともできる。Waveは会計、請求、決済を一体にして顧客を囲い込む余地がある。イントゥイットのライブ型が伸びることも、人を介した相談そのものの需要が消えていない証拠になる。
当初の見通しを支えるのは現金である。10年累計の利益が伸び、残余の現金を買い戻しや配当に振り向けられるなら、株主は税務申告の成熟した需要から十分な還元を受け取る。売上が50億ドル程度になり、営業利益率が28%に近づけば、会社全体の本質価値は大きく上回る。ただしこれはAIに勝った結果であって、単に物価で値段が上がるだけの姿ではない。
慎重な見方
AIは人が税務の画面を操作する価値を急速に下げる。給与明細の照合や控除額の確認をAIエージェントが直接行えば、納税者には税務申告の専門家に支払う料金が無駄に見えてくる。フリータックスUSAなど安価な競合に加え、イントゥイットには数千万件規模のユーザー基盤がある。利用者は複数のAIに回答を照合でき、ブランドの信頼も以前ほど独占的でなくなる。
店舗は税務シーズン以外にも家賃がかかり、季節要員の採用・研修は簡単には減らせない。直営の申告件数が3割減ったとき、料金を3割上げても、売上は元に戻らない。自動化で節約できる賃金と、店を閉める費用やシステムへの追加投資が相殺するおそれもある。加盟店が閉店すれば軽い利益だったロイヤルティまで失う。
DIYも安全ではない。顧客が民間AIや無料申告の仕組みに直接依頼すれば、入力画面の使用料は消える。Waveの会計機能も同じ問題を抱える。2026年の増益には一時的な税の利益が含まれ、そこを無視して稼ぐ力を高く見積もるべきではない。負債は現金を上回り、リース料という固定費もある。業績が悪化したときの買い戻し余力は限定的で、簿価の小さな自己資本は株主の安全網にならない。
どちらに重みを置いたか
税務申告の義務と専門家への信頼が残ることには同意できる。しかし、申告する人の数と専門家の工数が同じではないという反論が勝る。AIが人手の仕事を減らす中心筋をすでに数量へ入れ、同じ理由で資本コストを上げ直してはいない。さらに賃料と債務、競争によって利益率まで下がる場合に備え、やや悲観と悲観の合計を42%とした。添付の株数で測った結果は約12%のやや割高であり、予測の誤差を吸収する安全域は乏しい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 47.92 ドル62 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 34.97 ドル45 億ドル)。 今の値に割り戻すと 45.22 ドル58 億ドル、今との差 −11.9%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 102.83 ドル133 億ドル | 58.20 ドル75 億ドル | +213.8% | +15.9% | 11.27 ドル15 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 83.33 ドル107 億ドル | 52.77 ドル68 億ドル | +165.3% | +13.6% | 23.14 ドル30 億ドル |
| 中立 | 34% | 54.00 ドル70 億ドル | 41.13 ドル53 億ドル | +85.4% | +8.5% | 32.34 ドル42 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 28.90 ドル37 億ドル | 24.83 ドル32 億ドル | +4.7% | +0.6% | 13.97 ドル18 億ドル |
| 悲観 | 16% | 4.28 ドル6 億ドル | 9.31 ドル12 億ドル | −73.5% | −17.0% | 2.18 ドル3 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 47.92 ドル62 億ドル | 34.97 ドル45 億ドル | +61.6% | +6.4% | 82.90 ドル107 億ドル |
今の株価時価総額 51.31 ドル66 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 専門家とAIを組み合わせて稼ぐ 利益 10 億ドル · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 102.83 ドル133 億ドル
申告の複雑さが増し、専門家の相談には引き続き料金を払う顧客が残る。無料のAIが単純な入力を引き受けても、還付や税務調査に関する責任を外部の信頼できる相手に任せたい需要はしぶとい。直営の申告件数は現状の98%を守り、1件当たり料金も物価にほぼ追いつく。店舗の再編で季節労働の無駄を減らし、利益率は27%へ上がる。イントゥイットのターボタックス・ライブとの争いでも、高い相談価値を選ぶ顧客をつなぎ留める。
加盟店も大半が残り、付帯サービスの利用率を保つ。WaveはAIを自社の請求・経理に取り込み、今の契約換算件数を守ったまま初めて採算が改善する。ただし、AI自体の新たな有料売上はまだ開示がない。数量を今より増やすほどの成功は想定しない。所得税申告の法的責任を引き受ける力がブランドの堀を保ち、直営の利益増が還元原資となる。10年間の純利益の累計は83億ドル。小型の加盟店買収を続けても、大型の株式発行はしない。
10年間の配当と買戻しの総額から、株式報酬の持分希薄化相当を差し引いた正味還元は75億ドル。新たな大型増資は想定せず、自己資本は期首1.2億ドルに期間のGAAP純利益の累計83億ドルを足し、正味還元を引いた9.2億ドルとなる。
- 米国直営の専門家付き税務申告:数量 8.9(米国の直営・専門家付き申告件数(百万件))× 価格 377(1申告当たりの直営税務作成収入(米ドル))→ 売上 34 億ドル・営業利益 9 億ドル。数量は起点の0.98倍、価格は1.34倍。営業利益率27.0%。専門家の相談件数に対するAIの代替と賃料固定を反映。
- 米国加盟店の税務申告ロイヤルティ:数量 2.1(米国の加盟店による申告件数(百万件))× 価格 113(加盟店の1申告当たりロイヤルティ等(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量は起点の0.95倍、価格は1.34倍。営業利益率66.0%。加盟店の件数と加盟契約の料率を分ける。
- 米国の有料DIY税務申告ソフト:数量 5.3(米国DIYの有料申告数(百万件、オンラインとデスクトップ合算))× 価格 82(有料DIY申告1件当たり税務ソフト収入(米ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量は起点の1.00倍、価格は1.14倍。営業利益率35.0%。有料のオンラインとデスクトップの合算。
- 米国の税務付帯商品・金融サービス:数量 16.6(米国で付帯サービスを販売し得る申告件数相当(百万件))× 価格 34(1申告件数相当の付帯サービス混合収入(米ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル。数量は起点の1.00倍、価格は1.34倍。営業利益率28.0%。本体申告件数に対する付帯利用の代理数量。
- カナダ・豪州などの税務申告:数量 3.0(海外で処理する税務申告相当(百万件))× 価格 111(海外の1申告相当のドル換算売上(米ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.95倍、価格は1.34倍。営業利益率12.0%。カナダ・豪州を主とする国際売上の代理件数。
- Waveの中小企業会計・請求・決済:数量 0.5(Waveの有料契約・決済収入の顧客換算数(百万契約))× 価格 280(有料契約換算1件当たりの年次混合売上(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の1.00倍、価格は1.14倍。営業利益率15.0%。有料契約と決済の年間換算値。
倍率:米国の資本コストk=8.25%。AIエージェント代替を織り込む10年目以降の名目g=0.0%で、普通の堀の継続割合は1/2。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)=12.12倍。事業ROICは営業利益の税後14.39×77%÷(期末自己資本9.2+純負債11.2)≒54.3%。純負債/自己資本を1倍で打ち切り、借金税後利率4.4%を用いた正常化ROEは約104.2%で、超過収益の残存率1/2からRONIC約56.2%。g=0のためRONICの多少で上限は動かない。2026年の一時的な税効果0.84億ドルを繰り返さず、株式報酬を費用に含めたGAAP利益を使う。AIの影響を再びkの寿命に加算しない。
確率:7%。2026年の値上げと直営件数増は本物だが、AIだけで追加の有料売上が確立した証拠はない。対面相談がほぼ維持されるのは小さい確率とした。
やや楽観 17% 複雑な申告は残り、単価の改善が続く 利益 8 億ドル · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 83.33 ドル107 億ドル
単純な申告ほど自動化が進むが、自営業者や複数州で働く人の相談は残る。直営の件数は12%減るが、価格が約3割上がるので、単位当たりの粗利は維持できる。既存の店舗では専門家がAIを使って書類整理を短くし、予約と対面相談に時間を回す。営業利益率は25%前後を保ち、イントゥイットのライブ型商品に十分対抗できる。
税務ソフトは無料サービスとの競争で有料件数が減る。それでも過去の申告情報を使える顧客は一定数残り、DIYの収入と利益は大きく傷まない。加盟店の買い取りは直営売上を押し上げるが、連結で新しい需要を作るわけではないので買収効果を過大評価しない。カナダ・豪州は人口増に支えられ、Waveは会計と決済の併売で黒字化する。10年累計の純利益は75億ドルで、その大部分を株主へ返せる。
10年間の配当と買戻しの総額から、株式報酬の持分希薄化相当を差し引いた正味還元は68億ドル。新たな大型増資は想定せず、自己資本は期首1.2億ドルに期間のGAAP純利益の累計75億ドルを足し、正味還元を引いた8.2億ドルとなる。
- 米国直営の専門家付き税務申告:数量 8.0(米国の直営・専門家付き申告件数(百万件))× 価格 371(1申告当たりの直営税務作成収入(米ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 7 億ドル。数量は起点の0.88倍、価格は1.32倍。営業利益率25.0%。専門家の相談件数に対するAIの代替と賃料固定を反映。
- 米国加盟店の税務申告ロイヤルティ:数量 1.9(米国の加盟店による申告件数(百万件))× 価格 111(加盟店の1申告当たりロイヤルティ等(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.85倍、価格は1.32倍。営業利益率63.0%。加盟店の件数と加盟契約の料率を分ける。
- 米国の有料DIY税務申告ソフト:数量 4.9(米国DIYの有料申告数(百万件、オンラインとデスクトップ合算))× 価格 81(有料DIY申告1件当たり税務ソフト収入(米ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.93倍、価格は1.12倍。営業利益率32.0%。有料のオンラインとデスクトップの合算。
- 米国の税務付帯商品・金融サービス:数量 15.3(米国で付帯サービスを販売し得る申告件数相当(百万件))× 価格 34(1申告件数相当の付帯サービス混合収入(米ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.92倍、価格は1.31倍。営業利益率24.5%。本体申告件数に対する付帯利用の代理数量。
- カナダ・豪州などの税務申告:数量 2.9(海外で処理する税務申告相当(百万件))× 価格 109(海外の1申告相当のドル換算売上(米ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.92倍、価格は1.31倍。営業利益率10.5%。カナダ・豪州を主とする国際売上の代理件数。
- Waveの中小企業会計・請求・決済:数量 0.5(Waveの有料契約・決済収入の顧客換算数(百万契約))× 価格 275(有料契約換算1件当たりの年次混合売上(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.92倍、価格は1.12倍。営業利益率8.0%。有料契約と決済の年間換算値。
倍率:米国の資本コストk=8.25%。AIエージェント代替を織り込む10年目以降の名目g=0.0%で、普通の堀の継続割合は1/2。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)=12.12倍。事業ROICは営業利益の税後11.73×77%÷(期末自己資本8.2+純負債11.2)≒46.6%。純負債/自己資本を1倍で打ち切り、借金税後利率4.4%を用いた正常化ROEは約88.7%で、超過収益の残存率1/2からRONIC約48.5%。g=0のためRONICの多少で上限は動かない。2026年の一時的な税効果0.84億ドルを繰り返さず、株式報酬を費用に含めたGAAP利益を使う。AIの影響を再びkの寿命に加算しない。
確率:17%。過去の申告履歴、対面での安心、法令対応は残る。一方で有料DIYと加盟店の件数は減り始めており、事業の全面的な防衛までは見込まない。
中立 34% 申告は残るが、専門家の作業量は減る 利益 5 億ドル · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 54.00 ドル70 億ドル
米国の納税申告義務は続く。しかし単純な申告では、AIエージェントが書類の読み取りから送信まで引き受けるようになる。直営で人が処理する有料申告は今の7割に減る。残った顧客は相続、事業所得、控除の確認など相談が難しいため、料金を約3割上げられるが、物価上昇ほどには届かない。人件費と店舗賃料を削る速度は売上減に追いつかず、直営の営業利益率は21%へ下がる。
加盟店にも件数減が及び、徴収額は細る。DIYの有料申告数は8割、単価は1.10倍にとどまる。専門家の店に行く理由が薄れる一方、イントゥイットのターボタックスがAIと遠隔の専門家を一体で売り込み、低価格帯にはフリータックスUSAが残る。付帯金融商品の利用率も下がる。Waveの既存顧客への請求・決済は続くが、画面操作型の会計ソフトの販売は伸びない。10年累計の純利益59億ドルから正味53億ドルを還元し、残りは更新投資と自己資本の回復に使う。
10年間の配当と買戻しの総額から、株式報酬の持分希薄化相当を差し引いた正味還元は53億ドル。新たな大型増資は想定せず、自己資本は期首1.2億ドルに期間のGAAP純利益の累計59億ドルを足し、正味還元を引いた7.2億ドルとなる。
- 米国直営の専門家付き税務申告:数量 6.4(米国の直営・専門家付き申告件数(百万件))× 価格 366(1申告当たりの直営税務作成収入(米ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 5 億ドル。数量は起点の0.70倍、価格は1.30倍。営業利益率21.0%。専門家の相談件数に対するAIの代替と賃料固定を反映。
- 米国加盟店の税務申告ロイヤルティ:数量 1.5(米国の加盟店による申告件数(百万件))× 価格 110(加盟店の1申告当たりロイヤルティ等(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.70倍、価格は1.30倍。営業利益率58.0%。加盟店の件数と加盟契約の料率を分ける。
- 米国の有料DIY税務申告ソフト:数量 4.3(米国DIYの有料申告数(百万件、オンラインとデスクトップ合算))× 価格 80(有料DIY申告1件当たり税務ソフト収入(米ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.80倍、価格は1.10倍。営業利益率25.0%。有料のオンラインとデスクトップの合算。
- 米国の税務付帯商品・金融サービス:数量 13.0(米国で付帯サービスを販売し得る申告件数相当(百万件))× 価格 32(1申告件数相当の付帯サービス混合収入(米ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.78倍、価格は1.25倍。営業利益率18.0%。本体申告件数に対する付帯利用の代理数量。
- カナダ・豪州などの税務申告:数量 2.4(海外で処理する税務申告相当(百万件))× 価格 108(海外の1申告相当のドル換算売上(米ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.75倍、価格は1.30倍。営業利益率8.0%。カナダ・豪州を主とする国際売上の代理件数。
- Waveの中小企業会計・請求・決済:数量 0.4(Waveの有料契約・決済収入の顧客換算数(百万契約))× 価格 270(有料契約換算1件当たりの年次混合売上(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.80倍、価格は1.10倍。営業利益率4.0%。有料契約と決済の年間換算値。
倍率:米国の資本コストk=8.25%。AIエージェント代替を織り込む10年目以降の名目g=0.0%で、普通の堀の継続割合は1/2。正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)×(1+g)=12.12倍。事業ROICは営業利益の税後7.72×77%÷(期末自己資本7.2+純負債11.2)≒32.3%。純負債/自己資本を1倍で打ち切り、借金税後利率4.4%を用いた正常化ROEは約60.2%で、超過収益の残存率1/2からRONIC約34.2%。g=0のためRONICの多少で上限は動かない。2026年の一時的な税効果0.84億ドルを繰り返さず、株式報酬を費用に含めたGAAP利益を使う。AIの影響を再びkの寿命に加算しない。
確率:34%。申告の制度は残り、顧客の移行は10年かけて進む見通しが中心。価格上昇より件数減のほうが重いが、全顧客が一斉に無料化するとも考えない。
やや悲観 26% AIへ顧客が流れ、店舗の固定費が重くなる 利益 3 億ドル · PER 10.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.90 ドル37 億ドル
AIエージェントと安価な税務ソフトが簡単な申告を奪い、直営の利用者は現在の57%へ下がる。対面を必要とする顧客の単価は上げても、それだけで店舗の賃料と管理要員は吸収できない。会社は統廃合と営業時間の短縮を重ね、直営営業利益率は17%になる。加盟店も店舗数を減らし、新規加盟の見込みが薄れる。専門家を紹介するだけの機能なら、遠隔相談を強めるイントゥイットに顧客の一部を奪われる。
DIYはAIに直接申告させる利用者の増加で有料件数が7割になる。Waveの会計入力も無料エージェントが代替し、開発費が重く赤字へ戻る。減価償却や無形資産の減損約4億ドルを10年間の累計に含め、当初の利益をならした累計純利益は43億ドルとする。買い戻しは大幅に絞り、配当を優先しても正味の還元は32億ドルにとどまる。残した利益で簿価上の自己資本を厚くするが、それは新しい成長の証拠ではない。
10年後の時価総額は、固定費が残る構造と小さい純利益を映し、強い時期の会社より大きく低下する。
10年間の配当と買戻しの総額から、株式報酬の持分希薄化相当を差し引いた正味還元は32億ドル。新たな大型増資は想定せず、自己資本は期首1.2億ドルに期間のGAAP純利益の累計43億ドルを足し、正味還元を引いた12.2億ドルとなる。
- 米国直営の専門家付き税務申告:数量 5.2(米国の直営・専門家付き申告件数(百万件))× 価格 343(1申告当たりの直営税務作成収入(米ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。数量は起点の0.57倍、価格は1.22倍。営業利益率17.0%。専門家の相談件数に対するAIの代替と賃料固定を反映。
- 米国加盟店の税務申告ロイヤルティ:数量 1.3(米国の加盟店による申告件数(百万件))× 価格 101(加盟店の1申告当たりロイヤルティ等(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.60倍、価格は1.20倍。営業利益率48.0%。加盟店の件数と加盟契約の料率を分ける。
- 米国の有料DIY税務申告ソフト:数量 3.7(米国DIYの有料申告数(百万件、オンラインとデスクトップ合算))× 価格 77(有料DIY申告1件当たり税務ソフト収入(米ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.70倍、価格は1.06倍。営業利益率18.0%。有料のオンラインとデスクトップの合算。
- 米国の税務付帯商品・金融サービス:数量 10.8(米国で付帯サービスを販売し得る申告件数相当(百万件))× 価格 29(1申告件数相当の付帯サービス混合収入(米ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.65倍、価格は1.14倍。営業利益率13.0%。本体申告件数に対する付帯利用の代理数量。
- カナダ・豪州などの税務申告:数量 2.1(海外で処理する税務申告相当(百万件))× 価格 101(海外の1申告相当のドル換算売上(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.65倍、価格は1.22倍。営業利益率3.0%。カナダ・豪州を主とする国際売上の代理件数。
- Waveの中小企業会計・請求・決済:数量 0.4(Waveの有料契約・決済収入の顧客換算数(百万契約))× 価格 250(有料契約換算1件当たりの年次混合売上(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.70倍、価格は1.02倍。営業利益率-5.0%。有料契約と決済の年間換算値。
倍率:10年より先のg=0.0%、k=8.25%。正当化PER上限12.12倍に対し、専門家の市場支配力が下がり、店舗・Waveの採算回復も読めないので10.30倍。AI代替そのものは数量とgに反映済みで、倍率の追加減は顧客離れと固定費負担が持続する収益の質の低下に限る。SBCを戻さないGAAPの純利益を使用。参考:税後事業ROIC約15.2%。
確率:26%。専門家の工数縮小だけでなく、店舗の固定賃料とターボタックス・ライブへの乗り換えが同時に起こる危険がある。中立との違いは収益性の崩れだ。
悲観 16% 自動申告が主流になり、ブランドを守る費用が残る 利益 1 億ドル · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.28 ドル6 億ドル
政府の無料申告か民間AIエージェントが、標準的な税務申告の大半を引き受ける。税務の専門家は高難度の案件を残すだけになり、直営の件数は43%まで減る。料金も現在比では名目10%増にとどまり、10年間の物価上昇に大きく遅れる。直営の営業利益率は10%へ落ち、6,802の直営店舗を大幅に整理する。加盟店も半分以上の仕事を失い、ロイヤルティの回収が難しくなる。
DIYは無料の自動申告に置き換えられ、有料件数は48%へ下がる。Waveは開発と顧客維持の費用を賄えず赤字が残る。全社売上は現在のほぼ半分となり、最終年は固定費と借入利息を引いても小幅黒字にとどまる。途中で税務ブランドやソフト関連ののれんを約8億ドル減損し、10年累計純利益は20億ドルに圧縮される。自社株買いを停止する年が増え、配当も縮小するので、正味12億ドルの還元しかできない。存続企業としての時価総額は小さくても正で、加盟権・ブランドの譲渡可能価値から試算する控えめな資産床1億ドルは上回る。
10年間の配当と買戻しの総額から、株式報酬の持分希薄化相当を差し引いた正味還元は12億ドル。新たな大型増資は想定せず、自己資本は期首1.2億ドルに期間のGAAP純利益の累計20億ドルを足し、正味還元を引いた9.2億ドルとなる。
- 米国直営の専門家付き税務申告:数量 3.9(米国の直営・専門家付き申告件数(百万件))× 価格 310(1申告当たりの直営税務作成収入(米ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。数量は起点の0.43倍、価格は1.10倍。営業利益率10.0%。専門家の相談件数に対するAIの代替と賃料固定を反映。
- 米国加盟店の税務申告ロイヤルティ:数量 0.9(米国の加盟店による申告件数(百万件))× 価格 91(加盟店の1申告当たりロイヤルティ等(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.42倍、価格は1.08倍。営業利益率35.0%。加盟店の件数と加盟契約の料率を分ける。
- 米国の有料DIY税務申告ソフト:数量 2.6(米国DIYの有料申告数(百万件、オンラインとデスクトップ合算))× 価格 72(有料DIY申告1件当たり税務ソフト収入(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.48倍、価格は1.00倍。営業利益率12.0%。有料のオンラインとデスクトップの合算。
- 米国の税務付帯商品・金融サービス:数量 7.8(米国で付帯サービスを販売し得る申告件数相当(百万件))× 価格 27(1申告件数相当の付帯サービス混合収入(米ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.47倍、価格は1.04倍。営業利益率6.0%。本体申告件数に対する付帯利用の代理数量。
- カナダ・豪州などの税務申告:数量 1.6(海外で処理する税務申告相当(百万件))× 価格 93(海外の1申告相当のドル換算売上(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.50倍、価格は1.12倍。営業利益率0.0%。カナダ・豪州を主とする国際売上の代理件数。
- Waveの中小企業会計・請求・決済:数量 0.3(Waveの有料契約・決済収入の顧客換算数(百万契約))× 価格 245(有料契約換算1件当たりの年次混合売上(米ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。数量は起点の0.50倍、価格は1.00倍。営業利益率-25.0%。有料契約と決済の年間換算値。
倍率:10年より先のg=0.0%、k=8.25%。末期のROEは0.69億ドル÷9.2億ドル=約7.5%でk以下なので、正当化PERの上限は1/k=12.12倍。会社は辛うじて黒字を保つが、借り換えの自由度・営業利益の薄さ・店舗整理費を考慮して8.0倍とした。清算床から過去のPBRを推測しない。SBCを戻さないGAAP利益を使用。参考:税後事業ROIC約6.4%。
確率:16%。政府の無料申告拡大と民間AIの大幅進化が重なる厳しい尾部。直近ではIRSのDirect Fileが停止中なので主筋にはしないが、制度変更で収入構造が壊れる余地を残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国直営の専門家付き税務申告
直営店・遠隔面談を通じて税務の専門家が申告書を作成する。単価には顧客の申告の複雑さと専門家による対応の違いが表れる。
| 数量米国の直営・専門家付き申告件数(百万件) | 価格1申告当たりの直営税務作成収入(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 9.1 | 281 | 26 | 6 |
| 10 年後 中立 | 6.4 | 366 | 23 | 5 |
取り方:2026年6月期の米国Assisted売上25.609億ドルは10-Kの収益項目。全米Assisted約1,130万件から加盟店約220万件を引き、直営約910万件と推計した。2026年4月までの直営888.2万件と平均受注額282.30ドルを外部検証に使い、通期の1件当たり約281ドルは売上と整合する。営業利益5.90億ドルは非開示のため、現場人件費・家賃を重く配賦した分析上の推計。【AIエージェント代替:人手・工数型】人が書類を確認し申告する部分は置換されうるので、中立の件数を0.70倍、単価を1.30倍とする。
米国加盟店の税務申告ロイヤルティ
独立した加盟店が扱う専門家付き申告の売上に応じて徴収するロイヤルティ。直営事業との店舗転換は内部移転にすぎない。
| 数量米国の加盟店による申告件数(百万件) | 価格加盟店の1申告当たりロイヤルティ等(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 2.2 | 84 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 110 | 2 | 1 |
取り方:2026年6月期のロイヤルティ収入1.854億ドルは10-K。2026年4月末までの加盟店217.3万件を踏まえ、通期220万件と推定した。1件当たり約84ドルは、会社開示の加盟店による平均料金約266ドルと契約上のロイヤルティ率約30%に大筋で合う。利益1.20億ドルは店舗労務を加盟店が負担することを踏まえた推定。【AIエージェント代替:人手・工数型】請求の基礎が専門家付き申告なので、中立で件数0.70倍、単価1.30倍。
米国の有料DIY税務申告ソフト
オンラインとパソコン用税務ソフトを利用者自身が操作して申告する。無料申告ユーザーは広告や将来の有料転換余地を持つが、ここには課金売上だけを入れる。
| 数量米国DIYの有料申告数(百万件、オンラインとデスクトップ合算) | 価格有料DIY申告1件当たり税務ソフト収入(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 5.3 | 72 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.3 | 80 | 3 | 1 |
取り方:2026年6月期のDIY売上3.846億ドルは10-K。会社が開示する有料オンライン360万件と2026年4月末までのデスクトップ約172万件を足して約532万件とし、通期平均約72ドルを逆算した。オンライン有料のみの単価85.58ドルと混同しない。営業利益1.25億ドルはソフト開発・広告を差し引く仮配分。【AIエージェント代替:画面が価値のソフト】エージェントがフォームを飛ばすため、中立で有料件数0.80倍、価格1.10倍。
米国の税務付帯商品・金融サービス
還付金受け取りと申告代金の精算、追加保証、本人確認、プリペイドカード、税金還付までのつなぎ資金などを提供する。銀行パートナーとの提携も含む。
| 数量米国で付帯サービスを販売し得る申告件数相当(百万件) | 価格1申告件数相当の付帯サービス混合収入(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 16.6 | 26 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 32 | 4 | 1 |
取り方:10-Kの還付金送金1.451億ドル、追加保証0.846、身元保護0.342、米国内その他0.630、Emerald/Spruce0.688、前払い金利手数料0.307を合計した4.264億ドル。件数の独立開示はないため、直営・加盟店約1,130万件と有料DIY約532万件の計1,662万件を販売機会の代理数量とし、1件相当25.65ドルを採用。金融商品の実取引件数と同じではない。利益0.95億ドルは引受・貸倒・手数料負担を見た仮配分。【AIエージェント代替:補完型】市場の申告件数と顧客の利用率で数量が動く。
カナダ・豪州などの税務申告
米国外で直営と加盟の税務支援、DIYなどを販売する。米国と違う制度・通貨・競合に左右される。
| 数量海外で処理する税務申告相当(百万件) | 価格海外の1申告相当のドル換算売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 3.2 | 83 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 108 | 3 | 0 |
取り方:2026年6月期International売上2.654億ドルは10-K。全世界の申告等2,230万件から米国の約1,900万件を除いた約320万件を代理数量とし、平均約83ドルを推計した。実際の海外有料件数・国別平均料金は非開示であり概算。利益0.20億ドルも仮配分で、為替は共通前提で固定。【AIエージェント代替:専門家付きの人手・工数型が中心】中立の数量0.75倍、単価1.30倍。
Waveの中小企業会計・請求・決済
零細企業向け会計、請求書作成、有料プラン、給与・決済などの継続利用を収益化する。無料利用者と有料利用者が混在する。
| 数量Waveの有料契約・決済収入の顧客換算数(百万契約) | 価格有料契約換算1件当たりの年次混合売上(米ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 0.5 | 245 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 270 | 1 | 0 |
取り方:2026年6月期Wave売上1.227億ドルは10-Kで、前年比12.3%増。実際の課金顧客数と取扱決済高は開示されないため、有料換算50万契約という独立の作業仮定から、1契約当たり年245ドル相当を導いた。50万は会社公表の加入者数ではなく、決済従量課金を混ぜた換算値である。利益は製品開発・顧客獲得により▲0.10億ドルと仮配分。【AIエージェント代替:席・画面型SaaS】中立の有料換算数量0.80倍、価格1.10倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替と対面の申告件数
最も大きい不確実性は、税務申告という需要ではなく、専門家へ支払う作業料である。AIが給与・金融機関からの書類を照合し、申告書を作って直接送信するなら、申告件数は横ばいでも直営の有料案件は減る。中立で現在の70%、悲観で43%に縮む構造を考え、複雑な相談だけが最後まで残る。
DIYとWaveの画面型ソフトの料金競争
DIYは有料ユーザーが自ら画面を操作する形で価値を売り、Waveも小規模事業者に帳簿と請求の操作を提供する。AIがアプリの画面を飛ばすと、席や登録数の課金は弱くなる。税務履歴の保管だけでは排他的なデータを持つことにならず、価格と顧客数が同時に落ちる可能性がある。
ターボタックス・ライブと無料申告
イントゥイットのターボタックスは2026年に3,900万件の米国ユニットを持ち、ライブ型の専門家支援も伸ばしている。H&Rブロックが価格を上げても客が残るかは、この競争で決まる。IRS Direct Fileは2026年に停止しているが、政策変更で再び無料の事前記入申告が広がれば、業界の有料件数と付帯収入が共に細る。
店舗賃料と季節集中、固定費の下方硬直性
税務申告の収入は主に2〜4月に集まるのに、直営約6,800店舗の契約とIT費用は年間に及ぶ。2026年の賃借契約負債は約6.1億ドル、営業と変動部分を含む賃料費用は約3.5億ドル。件数減を確認してから閉店しても、賃料、設備除却、移転費用は先に出る。利益率の低下は売上の減りより大きくなる。
借換負担と自己資本の薄さ
2026年の純有利子負債は約11.2億ドルで、帳簿上の自己資本は約1.2億ドルしかない。借入の大半は固定利率の社債だが、2029年、2031年、2033年に借換を迎える。営業利益が縮む局面では利息の比率が上がる。帳簿のROEが異様に高くても、金融機関との契約条件を無視できない。
還元の持続性と買収による見かけの成長
直近10年で自社株買いは大きな価値を返したが、将来も稼いだ額の全てを買い戻せるとは限らない。フランチャイズの買い取りは直営の件数と売上を増やして見えるが、連結外から需要を生んだわけではない。Waveで投資額に対する利益がまだ確認しづらいことも注意点で、業績悪化時には増配より債務の圧縮を優先する必要がある。
税法、情報漏えいと税務上の責任
税制の簡素化や申告の事前記入が進めば有料業務の量が減る。他方で誤申告への保証、身元情報の保護、金融商品の監督は費用と損害賠償の可能性を増やす。H&Rブロックが持つ過去の申告データはサービス改善の材料であると同時に、漏えいや不正アクセスが起きれば失う信用の大きい機微情報でもある。
今後の分かれ目
- 米国直営の専門家付き申告件数が2年続けて前年比5%以上減り、平均受注額の値上げが止まったら
- 数量0.70倍の中立を下回る兆し。やや悲観の営業利益率17%が近づき、店舗閉鎖費も増えると考える。
- H&RブロックのAI Tax Assistや専門家付きサービスについて、新たな有料売上が独立して開示され、同じ利用者の料金を維持できたら
- 単にAIを無料で提供する段階から転換した証拠として、楽観の確率と直営の利益率を上方に見直す。
- イントゥイットのライブ型売上が増え続ける一方で、H&Rブロックの専門家付き申告シェアが2ポイント以上低下したら
- 顧客の移行を一時的でなく構造的と判断し、加盟店ロイヤルティも含めて数量を引き下げる。
- 政府が全国的な無料の事前記入申告を再開し、使用が広がったら
- DIY有料件数だけでなく還付金送金などの付帯率も弱くなるため、悲観側の確率を引き上げる。
- Waveの課金契約数または実際の決済高と営業損益が定期開示され、2年連続で黒字を維持したら
- 有料換算50万件の仮定を実測値に置き換え、継続課金の堀を認められるか再評価する。
- 税務シーズンの営業キャッシュフローが年5億ドルを下回り、借入契約条件や買い戻し枠に制約が出たら
- 正味還元53億ドルの中立想定は保てない。財務維持を優先するやや悲観の32億ドル以下へ修正する。
- 直営店舗数が大幅に減っても申告1件当たりの対応時間と費用が下がり、利益率が25%を超えたら
- AIによる工数削減を自社の採算改善に転じた証拠として、やや楽観の筋書きへ比重を移す。
見ておくもの
- 米国直営の専門家付き申告件数と平均受注額の前年比
- 加盟店の申告件数、買い戻しによる直営への移管量と加盟店ロイヤルティ
- 有料DIYオンライン・デスクトップと無料オンラインの申告件数
- ターボタックス・ライブの収入と米国内電子申告件数でみるシェア
- Waveの課金顧客・決済高・営業利益、開示されるかも含む
- IRSの無料申告政策と州ごとの事前記入制度
- 賃料総額、店舗数、買い戻しを引いた営業キャッシュフロー
- 社債の借換金利、正味の配当・自社株買いと株式報酬費用
倍率と資本コストの決め方
株価から先に価値を逆算していない。2026年の税務申告の実件数と会社のサービス別売上を出発点に、AIがどの作業を代替するかにより数量・単価と10年先の利益率を分けた。全社の継続成長率は名目0%とし、米国のk8.25%から正当化PERの上限12.12倍を出した。直近の市場PERや他社のPERは参照していない。GAAP純利益には株式報酬の費用と借換負担を含め、2026年の税務調査解決による一時的な税効果は継続させない。添付の株数では時価総額約64億ドルだが、別サイトの同日付は約61億ドルで、実勢株数の違いがある。台帳の基準を恣意的に変えて評価を作らなかった。米国会計では店舗リースが既に計上され、家賃を営業費用に含む同じ形で将来を比較した。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国共通の基本8.0%+事業の質による0.25%=8.25%。株価ベータや市場PERは使わない。季節収入を持つ一方、存続の前提に重大な疑義はないため、distressの上乗せは設けない。