結論
ハベル(Hubbell)は、電力会社が送配電網に使う碍子・避雷器・接続部品・金具・開閉部品などの部材と計量・通信(公益向け、Utility Solutions)、建物・工場・データセンターに使う配線器具・接続部品・配線管理(電気ソリューション、Electrical Solutions)の 2 本で稼ぐ会社で、2025 年 12 月期は売上 58.4 億ドル、GAAP 営業利益 12.1 億ドル(20.7%)、GAAP 純利益 8.9 億ドル。売上の 63% が公益向け(36.7 億ドル)、37% が電気ソリューション(21.7 億ドル)である。
2026 年は送電・変電の大型案件と、データセンター向けの配線部材(4〜6 月期は約 +65%)が重なり、4〜6 月期の売上は +15%(オーガニック +10%)、通期の売上見通しは +16〜18% へ引き上げられた。同時に、2025 年 10 月に DMC パワー(DMC Power、約 8.3 億ドル)を、2026 年 6 月に NSI インダストリーズ(NSI Industries、約 30 億ドル)を、いずれも借入で買い、純負債は 2025 年末の約 17 億ドルから 2026 年 6 月に約 49 億ドルへ増えた。
バリュー投資の観点では、電力会社の送配電投資(2030 年までに 1.4 兆ドル以上の計画)という長い追い風の中で、部材を作る会社は規格に入った製品で選ばれ、堀は固い。ただし 2023〜2025 年に公益向けの在庫調整で売上がほぼ横ばいになった前例があり、2026〜2027 年の受注には在庫の積み増しが含まれる。
倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g)(k 7.75%・g 4.0%・事業の ROE 23%・moat=普通)の上限 19.7 倍の 8.5 割(16.8 倍)に置いた(電力会社の送配電部材は規格採用で切り替えが難しく ROE も 23〜26% と高い。NSI 買収で借金が増えた点と住宅・建物の循環だけ引いた。上限の 8.5 割にとどめた)。総合は今の時価総額に対し -18% で「やや割高」。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。電気は 10 年後も必要で、送配電網の更新・増強は長期にわたる。ハベルの部材は規格・承認の連鎖に入り、電力会社に承認された標準品の位置は今より強い確率が高い。堀は少なくとも保たれる。
次に、株主のものになる利益。成長に要る設備投資は軽く、FCF は調整後純利益の約 9 割で、営業利益率 21% 前後・自己資本利益率 23% は優良の水準である。ただし GAAP の純利益に対する倍率は約 28 倍で、成長の鈍化を見込んだ長期の倍率(本分析の式で約 20 倍)を上回っており、安く買う余地は大きくない。
経営の資本配分は小さな買収の積み重ねで定評があったが、2025〜2026 年の 2 件で 38 億ドルを借りて払い、純負債の対総資本比は 52% になった。ここは過去の姿と違う。それでも、買収先は部材のニッチで利益率が高く、返済も FCF で数年で済む。わかりやすい事業なので確信度は高く、価格転嫁の力も確認できる。
送配電投資の山と在庫調整の反動は避けられない。本分析は悲観とやや悲観を合わせて 10 年で 42% と厚く置いたうえで、本質価値は今の時価総額に対し -18% で、安全域は 無い。
何で稼ぐ会社か
ハベルは、電気を「つくる場所から使う場所まで届ける」途中の部材を作る企業で、2025 年 12 月期の売上は 58.4 億ドル。2 つの事業に分かれる。
【公益向け(Utility Solutions)】売上 36.7 億ドル(+2%)、GAAP 営業利益率 21.5%(買収無形資産の償却などを戻した調整後 24.1%)。送電線・変電所・配電線に使う碍子、避雷器、電線の接続部品、金具、断路器・開閉部品などの「グリッド・インフラ」と、電力量計や通信を担う「グリッド・オートメーション」(アクララ(Aclara)など。本分析は売上 約 5 億ドルと推定)がある。顧客は米国の投資家所有の電力会社と協同組合・公営事業で、取引は電力会社ごとの承認済み仕様と流通業者を通る。2025 年 10 月には変電・送電の接続システムを持つ DMC パワーを約 8.3 億ドルで買って、ここに加えた。
【電気ソリューション(Electrical Solutions)】売上 21.7 億ドル(前年 20.3 億ドル)、GAAP 営業利益率 19.3%(調整後 約 20%、同事業として初めて 20% に届いた)。壁面のコンセント・スイッチなどの配線器具、電気の接続部品、電線管・ケーブル管理、危険場所向けの電気設備、データセンター向けの電力・通信の接続、無線の機器(ベンテブ(Ventev)、約 0.7 億ドルで買収)を持つ。住宅・商業・産業・データセンターに売り、流通業者の在庫が需要に先行して動く。2026 年 6 月に買った NSI(電気接続・配線管理のブリッジポート・フィッティングス(Bridgeport Fittings)、ポラリス(Polaris)などの部材。2026 年の売上 約 5.7 億ドル)はここに入る。
収益の構造は、1 件あたりの単価が小さく、一度仕様に入ると他社へ替えにくい部材を、電力会社・流通業者・設計事務所の承認の連鎖で売ることにある。小さな会社の買収で製品を足し、営業の経路に乗せて売る点が、アメテック(AMETEK)などと似ている。
優良さと弱いところ
堀は 4 つある。第 1 に、規格・承認。電力会社は設備の仕様を長く決め、承認済みの部材は故障が停電に直結するため安いだけでは替わらない。ハベルのチャンス(Chance)・バーンディ(Burndy)・オハイオ・ブラス(Ohio Brass)などは各分野で古くからの標準品である。第 2 に、流通。電気ソリューションの配線器具は流通業者の棚に載り、設計と施工業者が名前で指定する。第 3 に、価格を決める力。2026 年は価格が通期で 3〜4 ポイントの売上増に効く見通しで、2025 年の売上 +2% の公益向けでも利益率は上がった(GAAP 21.5%、前年から +1.2 ポイント)。第 4 に、資本効率。営業利益率は 2014 年の 15% から 2025 年の 21% へ上がり、自己資本利益率は 23% と高い。
弱い所は 3 つ。①グリッド・オートメーション(計量・通信)は 2026 年 1〜3 月期に −7% と更新サイクルの谷にあり、会社全体の足を引く。②公益向けは在庫調整に弱く、2023〜2025 年に売上がほぼ横ばいだった。③電気ソリューションの利益率は 2026 年 4〜6 月期に調整後 21.2%(前年同期 22.5%)、GAAP 16.7% と、再構築費用と買収で下がっている。
資本配分は堅実で、過去 10 年は小さな買収と自社株買い・増配を重ねてきた。2025 年 10 月の DMC パワーと 2026 年 6 月の NSI は規模が一段上がり、純負債の対総資本比は 2025 年末の 28% から 2026 年 6 月に 52% へ上がった。ここが質の判断の分かれ目である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
公益向けの需要は、米国の電力会社の送配電投資で決まる。2026 年 4 月の調査(パワーラインズ(PowerLines))では、投資家所有の電力会社の 2030 年までの設備投資計画は 1.4 兆ドル以上で、前年の 1.1 兆ドルから 2 割以上増えた。新規投資の約半分が送配電、約 3 割が発電である。原動力はデータセンターの電力需要、老朽設備の更新、山火事・暴風雨への備え、電化で、送電・変電の大型案件の受注は 2027 年まで入っている。本分析は、米国の電力会社の送配電投資を約 1,300 億ドル(2025 年・推定)として、ハベルのグリッド・インフラのシェアを約 2.4% と置いた。
ただし投資の山には反動がある。2023〜2024 年は、2021〜2022 年に積み上げた流通・電力会社の在庫の調整で、ハベルの公益向けの売上はほぼ横ばいになった。2026 年の受注は変圧器や部材の納期が長いために先行手配されている面があり、実需に比べ在庫が積み上がる可能性が高い。電気料金の負担への反発(規制当局の許可する投資額の抑制)も、2027 年以降の逆風である。
電気ソリューションは、データセンターの電力・通信の接続(4〜6 月期に約 +65%)が先頭を走り、住宅(金利 5% で弱い)と商業・産業が続く。本分析は米国の電気部材の市場を約 700 億ドル(推定)、シェアを約 3.1% と置いた。競合は、公益向けではマクリーン・パワー・システムズ、プリフォームド・ライン・プロダクツ、日立エナジー(Hitachi Energy)、計量ではアイトロン(Itron)・ランディス・ギア(Landis+Gyr)、電気ソリューションではイートン(Eaton)、シュナイダー・エレクトリック(Schneider Electric)、ルグラン(Legrand)、ABB、エヌベント(nVent)、アトコア(Atkore)がいる。ハベルは接続・配線管理で独自の位置を持つが、データセンター向けの大型の電気設備(配電盤・変圧器)は持たず、競合とは棲み分けている。
資本政策と M&A
還元は、配当が年 約 2.9 億ドル(GAAP 純利益の約 3 分の 1)、自社株買いは 2025 年に約 2.2 億ドルで、2026 年上半期は 2.0 億ドルと配当 1.5 億ドルを払った。ただし NSI の買収で純負債は EBITDA の約 2.8 倍(2026 年 6 月)まで上がり、会社は返済を優先する見込みで、本分析は 2026 年末に約 2.4 倍、2028 年に 1.8 倍、その後 1.5 倍へ戻す前提で自社株買いの再開を置いた。
買収は、2025 年 10 月に DMC パワー(変電・送電の接続システム、約 8.3 億ドル)、2026 年 6 月に NSI(約 30 億ドル、2026 年の EBITDA の約 15.5 倍、売上の約 5.3 倍、ブリッジ借入 28 億ドルから社債 19 億ドルとタームローン・CP へ)と続いた。NSI は売上 約 5.7 億ドルで EBITDA は約 1.9 億ドル(約 34%)と推定され、会社は電気ソリューションの利益率に寄与し、3 年でクロスセルと運営のシナジーが出ると説明する。償却は年 約 0.95 億ドル(推定)で、GAAP 利益では買収の効果が出るまで 2〜3 年かかる。
本分析は、2026 年の見通し(調整後の営業利益率 23.1〜23.4%、GAAP の 1 株利益 17.25〜17.55 の水準)に着地を合わせ、2027 年以降は既存事業を市場 × シェア × 価格で積み、今後の買収は「投じる現金」と「買収先の GAAP 利益」を組にして純負債・還元から差し引いた。株式の発行はない(全額借入)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力会社の送配電投資は 2030 年までに 1.4 兆ドル以上と、前年の計画から 2 割以上増えた。送電・変電の大型案件の見積もりと受注は加速し、2026 年 4〜6 月期の公益向けの受注は売上の 1.2 倍、大型案件の受注は 2027 年まで入っている。765kV の超高圧送電は 10 年で約 15 億ドルの新しい市場で、ハベルは製品の開発と生産の増強に入った。電気ソリューションではデータセンター向けが 1〜3 月期に約 +40%、4〜6 月期に約 +65% と伸び、通期の見通しは +25% 超へ引き上げられた。
価格は通期で 3〜4 ポイントの売上増に効き、DMC パワーと NSI の 2 件は、ハベルが持たなかった変電向けの接続品と電気接続部品の棚を一気に厚くする。NSI は EBITDA の約 15.5 倍で買ったが、シナジーが出れば実質の倍率は下がり、2027 年の増益幅は 2026 年の 4 倍との試算もある。純負債は FCF(年 10 億ドル近く)で 2 年ほどで EBITDA の 1.8 倍へ下がる。これが強気の見方で、楽観とやや楽観の筋書きの下敷きである。
慎重な見方
2023〜2025 年、ハベルの公益向けの売上は在庫調整でほぼ横ばいだった。2026 年の受注の山には、変圧器の納期の長さを見越した前倒しの手配と、電力会社と流通業者の在庫の積み増しが含まれる。山のあとには、2023〜2024 年のような反動が来る。電気料金の負担が上がり、規制当局が許可する投資額を抑える動きも強まる。
電気ソリューションの利益率は 4〜6 月期に調整後 21.2%(前年同期 22.5%)、GAAP 16.7% と、価格がコストの上昇を相殺するだけで下がっている。データセンター向けの伸びは AI 設備投資が前提で、投資が一服すれば真っ先に止まる。純負債は 2026 年 6 月に約 49 億ドル(対総資本 52%)で、NSI の償却と利息で GAAP の利益は買収の効果が出るまで伸びにくい。グリッド・オートメーションは更新サイクルの谷で 1〜3 月期に −7%。
公益向けの部材は競合(マクリーン、プリフォームド)が増産し、変圧器や開閉装置の供給が正常化すれば、納期プレミアムの価格も消える。今の GAAP 純利益に対する倍率は約 28 倍で、成熟後の倍率の式(25〜28 倍)とほぼ同じ。これが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は受注と送配電投資の長さに説得力があるが、慎重な見方の「山のあとの在庫調整と電気料金の反発」は、2023〜2025 年の実績があり無視できない。悲観側をふだんより厚く置いた。確率は 楽観 6%・やや楽観 18%・中立 34%・やや悲観 27%・悲観 15%。倍率は利益ベースの正当化 PER の内側(中立は上限の 8.5 割)に置き、総合は今の時価総額に対し -18% で「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 565.65 ドル303 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 160.41 ドル86 億ドル)。 今の値に割り戻すと 378.60 ドル203 億ドル、今との差 −17.8%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 988.60 ドル529 億ドル | 220.37 ドル118 億ドル | +162.4% | +10.1% | 72.54 ドル39 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 809.53 ドル433 億ドル | 197.76 ドル106 億ドル | +118.6% | +8.1% | 181.31 ドル97 億ドル |
| 中立 | 34% | 609.91 ドル326 億ドル | 177.76 ドル95 億ドル | +70.9% | +5.5% | 267.81 ドル143 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 493.46 ドル264 億ドル | 146.17 ドル78 億ドル | +38.8% | +3.3% | 172.70 ドル92 億ドル |
| 悲観 | 15% | 133.46 ドル71 億ドル | 77.94 ドル42 億ドル | −54.1% | −7.5% | 31.71 ドル17 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 565.65 ドル303 億ドル | 160.41 ドル86 億ドル | +57.6% | +4.7% | 726.07 ドル388 億ドル |
今の株価時価総額 460.76 ドル247 億ドル(2026-10-21)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:送配電の更新と送電網の新設が 10 年続き、買収の収益率も保たれる 利益 26 億ドル · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 988.60 ドル529 億ドル
2035 年 12 月期。売上 156.8 億ドル。公益向けは グリッド・インフラ 65.4 億ドル(営業利益率 26.0%)・グリッド・オートメーション 9.3 億ドル(22.5%)、電気ソリューションは コア 50.5 億ドル(22.5%)・NSI 11.3 億ドル(GAAP 19.0%)。送配電の更新(老朽設備・山火事対策・電化)と送電網の新設(765kV など超高圧)が 10 年続き、送配電投資の実質は年 3.3%、シェアは超高圧・変電向けの接続品で +6%、価格は物価並み。データセンター向けは電力容量の拡張とともに 10 年伸び、電気ソリューションの市場は実質年 4.1%・シェア +10%。NSI の収益率が保たれ、買い足しは累計 70 億ドルで収益率も資本コストを上回る。10 年目でも利益が年 10% 近く伸びる。今後の買収に累計 70.0 億ドルを投じ、買収先の売上 20.3 億ドル・GAAP 営業利益 3.9 億ドルが乗る。営業利益 36.5 億ドル(23.3%)、純利益 25.9 億ドル(GAAP)、純負債 64 億ドル(EBITDA の 1.5 倍)、2026 年からの還元の合計 118 億ドル(配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味)。
- グリッド・インフラ(公益向け・送配電の部材):数量 1,794(米国の電力会社の送配電投資(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.6%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 送配電投資))→ 売上 65 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場・シェア・価格
- グリッド・オートメーション(公益向け・計量と通信):数量 138(米国の計量・配電自動化・通信の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.8%(シェア × 物価指数)→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気ソリューション(コア:建物・産業・データセンター向けの配線部材):数量 1,050(米国の電気部材の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.8%(シェア × 物価指数)→ 売上 51 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場・シェア・価格
- NSI インダストリーズ(電気接続・配線管理・買収成立済み):数量 363(米国の電気接続・配線管理の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.1%(シェア × 物価指数)→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 70.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.29(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 20 億ドル・営業利益 4 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.25%)・g 4.0%(上限の内側。送配電の更新投資の実質 2〜3% + 価格 3.5% から、山の反動を見て 4% を超えない)・事業の ROE 29%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 25.9 ÷ 自己資本 89.4 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 18.4%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 20.9 倍(上限 = 純利益 25.9 億ドル × これ = 540 億ドル)。これの 1.0 割(20.4 倍)に置いた。楽観:利益の質が最も良く出る筋書きなので上限に最も近く置いた。
確率:送配電の更新・新設投資が 10 年続き、765kV など超高圧送電が実現し、データセンターの電力需要も想定どおりに増え、価格も転嫁できる必要がある。構造の追い風が全部味方する姿で 6%。
やや楽観 18% やや楽観:高成長は 2030 年前後に落ち着くが、更新需要と価格の転嫁が続く 利益 23 億ドル · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 809.53 ドル433 億ドル
2035 年 12 月期。売上 145.4 億ドル。公益向けは グリッド・インフラ 62.3 億ドル(営業利益率 25.0%)・グリッド・オートメーション 8.7 億ドル(22.0%)、電気ソリューションは コア 45.9 億ドル(22.0%)・NSI 10.3 億ドル(GAAP 18.5%)。高成長は 2030 年前後に一巡するが、老朽設備の更新と電化の需要が続く。送配電投資の実質は年 3.0%、シェアは +4%、電気ソリューションの市場は実質年 3.4%・シェア +7%、価格は物価並み。買い足しは累計 65 億ドル(買収の売上÷買収額 0.28)で、買収の倍率がやや高止まりし収益率は少し下がる。今後の買収に累計 65.0 億ドルを投じ、買収先の売上 18.2 億ドル・GAAP 営業利益 3.3 億ドルが乗る。営業利益 32.8 億ドル(22.5%)、純利益 23.2 億ドル(GAAP)、純負債 58 億ドル(EBITDA の 1.5 倍)、2026 年からの還元の合計 106 億ドル(配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味)。
- グリッド・インフラ(公益向け・送配電の部材):数量 1,742(米国の電力会社の送配電投資(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.6%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 送配電投資))→ 売上 62 億ドル・営業利益 16 億ドル。市場・シェア・価格
- グリッド・オートメーション(公益向け・計量と通信):数量 132(米国の計量・配電自動化・通信の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.6%(シェア × 物価指数)→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気ソリューション(コア:建物・産業・データセンター向けの配線部材):数量 980(米国の電気部材の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.7%(シェア × 物価指数)→ 売上 46 億ドル・営業利益 10 億ドル。市場・シェア・価格
- NSI インダストリーズ(電気接続・配線管理・買収成立済み):数量 345(米国の電気接続・配線管理の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.0%(シェア × 物価指数)→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 65.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.28(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.25%)・g 4.0%(上限の内側。送配電の更新投資の実質 2〜3% + 価格 3.5% から、山の反動を見て 4% を超えない)・事業の ROE 26%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 23.2 ÷ 自己資本 89.9 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 16.8%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 20.3 倍(上限 = 純利益 23.2 億ドル × これ = 471 億ドル)。これの 0.9 割(18.7 倍)に置いた。やや楽観:楽観より伸びと利益率が控えめなので一段下。
確率:高成長が一巡しても、老朽設備の更新・山火事対策・電化で更新需要が続く展開。強気の見方に近いが、買収の倍率が競り上がり収益率が少し下がる。
中立 34% 中立:成熟した送配電・電気部材の優良企業として、年 6% 前後(名目)で伸びる 利益 19 億ドル · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 609.91 ドル326 億ドル
2035 年 12 月期。売上 127.3 億ドル。公益向けは グリッド・インフラ 57.4 億ドル(営業利益率 24.0%)・グリッド・オートメーション 7.8 億ドル(21.0%)、電気ソリューションは コア 39.4 億ドル(20.5%)・NSI 9.2 億ドル(GAAP 18.0%)。成熟した送配電・電気部材の優良企業として、年 6% 前後(名目)で伸びる。送配電投資の実質は 10 年で年 2.3%(2030 年までの高い伸びの後に年 1.5% 前後へ)、シェアは +2%、電気ソリューションの市場は実質年 2.3%・シェア +3%、グリッド・オートメーションは年 1.0%。価格は物価並みの年 3.5%(納期のプレミアムは消える)。買い足しは累計 50 億ドル(売上÷買収額 0.27、償却前の営業利益率 28%)。純負債は EBITDA の 1.5 倍を保ち、残りの FCF は自社株買いに回る。今後の買収に累計 50.0 億ドルを投じ、買収先の売上 13.5 億ドル・GAAP 営業利益 2.2 億ドルが乗る。営業利益 27.4 億ドル(21.5%)、純利益 19.4 億ドル(GAAP)、純負債 49 億ドル(EBITDA の 1.5 倍)、2026 年からの還元の合計 95 億ドル(配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味)。
- グリッド・インフラ(公益向け・送配電の部材):数量 1,638(米国の電力会社の送配電投資(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.5%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 送配電投資))→ 売上 57 億ドル・営業利益 14 億ドル。市場・シェア・価格
- グリッド・オートメーション(公益向け・計量と通信):数量 121(米国の計量・配電自動化・通信の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 6.4%(シェア × 物価指数)→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気ソリューション(コア:建物・産業・データセンター向けの配線部材):数量 875(米国の電気部材の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.5%(シェア × 物価指数)→ 売上 39 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場・シェア・価格
- NSI インダストリーズ(電気接続・配線管理・買収成立済み):数量 313(米国の電気接続・配線管理の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.9%(シェア × 物価指数)→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 50.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.27(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.25%)・g 4.0%(上限の内側。送配電の更新投資の実質 2〜3% + 価格 3.5% から、山の反動を見て 4% を超えない)・事業の ROE 23%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 19.4 ÷ 自己資本 84.1 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 15.4%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 19.7 倍(上限 = 純利益 19.4 億ドル × これ = 383 億ドル)。これの 0.9 割(16.8 倍)に置いた。中立:電力会社の送配電部材は規格採用で切り替えが難しく ROE も 23〜26% と高い。NSI 買収で借金が増えた点と住宅・建物の循環だけ引いた。上限の 8.5 割にとどめた
確率:業界ノート(電力設備)の置き方に、会社の過去の買収のペース(年 数億ドルから 10 億ドル弱)を重ねた落としどころ。
やや悲観 27% やや悲観:投資が 2030 年前後に山を越えて正常化し、増産した競合に価格を取られる 利益 14 億ドル · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 493.46 ドル264 億ドル
2035 年 12 月期。売上 104.0 億ドル。公益向けは グリッド・インフラ 49.1 億ドル(営業利益率 22.0%)・グリッド・オートメーション 6.1 億ドル(19.0%)、電気ソリューションは コア 32.9 億ドル(18.5%)・NSI 7.5 億ドル(GAAP 16.5%)。電力会社の投資が 2030 年前後に山を越え、2020 年代前半の水準へ正常化する。送配電投資の実質は 10 年で年 1.1% にとどまり、変圧器・開閉装置・部材の増産でプレミアムが消え、価格は物価を下回る年 3.3%、競合にシェアを譲る(計量・通信は 1 割減)。電気ソリューションは住宅の弱さで実質年 1.1%、利益率は 18.5%。買い足しは収益率が下がり、累計 35 億ドル(売上÷買収額 0.24)にとどめる。今後の買収に累計 35.0 億ドルを投じ、買収先の売上 8.4 億ドル・GAAP 営業利益 1.1 億ドルが乗る。営業利益 20.4 億ドル(19.6%)、純利益 14.2 億ドル(GAAP)、純負債 40 億ドル(EBITDA の 1.6 倍)、2026 年からの還元の合計 78 億ドル(配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味)。
- グリッド・インフラ(公益向け・送配電の部材):数量 1,456(米国の電力会社の送配電投資(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.4%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 送配電投資))→ 売上 49 億ドル・営業利益 11 億ドル。市場・シェア・価格
- グリッド・オートメーション(公益向け・計量と通信):数量 108(米国の計量・配電自動化・通信の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 5.7%(シェア × 物価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気ソリューション(コア:建物・産業・データセンター向けの配線部材):数量 784(米国の電気部材の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.2%(シェア × 物価指数)→ 売上 33 億ドル・営業利益 6 億ドル。市場・シェア・価格
- NSI インダストリーズ(電気接続・配線管理・買収成立済み):数量 275(米国の電気接続・配線管理の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.7%(シェア × 物価指数)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 35.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.24(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.25%)・g 4.0%(上限の内側。送配電の更新投資の実質 2〜3% + 価格 3.5% から、山の反動を見て 4% を超えない)・事業の ROE 18%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 14.2 ÷ 自己資本 77.6 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 13.0%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 18.5 倍(上限 = 純利益 14.2 億ドル × これ = 262 億ドル)。これの 1.0 割(18.6 倍)に置いた。やや悲観:伸びが落ち堀が削れた会社として中立より下。
確率:大型変圧器・開閉装置・部材の増産が実り、価格のプレミアムが 2030 年前後に消える。電力会社の投資が山を越えて 2020 年代前半の水準へ戻る展開を厚めの 27% とした(投資の山の反動を悲観側に厚く置く方針)。
悲観 15% 悲観:電気料金の負担と分散型の代替で送配電の部材需要が縮み、シェアも失う 利益 6 億ドル · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 133.46 ドル71 億ドル
2035 年 12 月期。売上 65.8 億ドル。公益向けは グリッド・インフラ 31.5 億ドル(営業利益率 17.0%)・グリッド・オートメーション 3.6 億ドル(13.0%)、電気ソリューションは コア 21.6 億ドル(14.0%)・NSI 5.2 億ドル(GAAP 12.0%)。電気料金の負担への反発で規制当局が投資を絞り、データセンターの電力需要の想定が過大だったことが分かり、蓄電池・分散電源で送配電の部材の需要が減る。送配電投資の実質は 2035 年に 2025 年比 −10%、競合の増産と輸入品で価格は物価の約 92%、シェアも 15% 失う。グリッド・オートメーションは AMI の更新が終わり市場が縮む。買い足しは収益率が下がり(売上÷買収額 0.20)、減損も出る。利益率は 14.8% まで下がり、もう優良ではなくなっている。今後の買収に累計 20.0 億ドルを投じ、買収先の売上 4.0 億ドル・GAAP 営業利益 0.3 億ドルが乗る。営業利益 9.7 億ドル(14.8%)、純利益 6.4 億ドル(GAAP)、純負債 26 億ドル(EBITDA の 2.0 倍)、2026 年からの還元の合計 42 億ドル(配当と自社株買いから株式報酬を差し引いた正味)。
- グリッド・インフラ(公益向け・送配電の部材):数量 1,170(米国の電力会社の送配電投資(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.7%(シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 送配電投資))→ 売上 32 億ドル・営業利益 5 億ドル。市場・シェア・価格
- グリッド・オートメーション(公益向け・計量と通信):数量 88.0(米国の計量・配電自動化・通信の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 4.1%(シェア × 物価指数)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場・シェア・価格
- 電気ソリューション(コア:建物・産業・データセンター向けの配線部材):数量 630(米国の電気部材の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 3.4%(シェア × 物価指数)→ 売上 22 億ドル・営業利益 3 億ドル。市場・シェア・価格
- NSI インダストリーズ(電気接続・配線管理・買収成立済み):数量 225(米国の電気接続・配線管理の市場(億ドル、2025 年価格))× 価格 2.3%(シェア × 物価指数)→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場・シェア・価格
- 今後の買収(投じる現金とセット):数量 20.0(2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル))× 価格 0.20(投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。投じた現金と買収先の利益
倍率:利益ベースの正当化 PER:k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.25%)・g 4.0%(上限の内側。送配電の更新投資の実質 2〜3% + 価格 3.5% から、山の反動を見て 4% を超えない)・事業の ROE 9%(帳簿の自己資本 ROE:純利益 6.4 ÷ 自己資本 73.7 億ドル)・moat=普通(残る割合 0.50)。RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 8.2%、正当化 PER = (1 − g/RONIC)/(k − g) = 13.7 倍(上限 = 純利益 6.4 億ドル × これ = 88 億ドル)。これの 0.8 割(11.2 倍)に置いた。悲観:構造的に負けて優良でなくなった会社として最も下。
確率:電気料金の負担への反発で規制当局が投資を絞る、データセンターの電力需要の想定が過大だった、蓄電池・分散電源で送配電の部材の需要が減る、競合の増産と輸入品で価格とシェアを失う、のうち複数が起きる姿。10 年のうちに起きうる構造の負けとして 15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
グリッド・インフラ(公益向け・送配電の部材)
電力会社の送電線・変電所・配電線に使う碍子・避雷器・接続部品・金具・開閉部品。DMC パワー(2025 年 10 月に約 8.3 億ドルで取得)を含む。
| 数量米国の電力会社の送配電投資(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数(シェアは売上 ÷ 送配電投資) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,300 | 2.4% | 32 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,638 | 3.5% | 57 | 14 |
取り方:米国の電力会社の送配電投資を約 1,300 億ドル(推定。投資家所有の 2025 年の設備投資 約 2,080 億ドル(EEI)のうち送配電が 6 割強)、シェア約 2.4% と置いた。公益向けの 2025 年売上 36.7 億ドルのうちグリッド・オートメーションを約 5 億ドル(推定)として差し引いた 31.7 億ドル。GAAP 営業利益は公益向け 7.90 億ドル(21.5%)から 6.9 億ドル(21.8%)と按分。2026 年は価格 +3.5%・市場 +4%・DMC パワーの通年化などでシェア +4%(売上 約 35.5 億ドル、+12%)。
グリッド・オートメーション(公益向け・計量と通信)
電力量計・通信・配電の自動化(アクララなど)と水道の計量(ニコア(Nicor)、約 0.6 億ドルで取得)。更新サイクルの谷にある。
| 数量米国の計量・配電自動化・通信の市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 110 | 4.5% | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 121 | 6.4% | 8 | 2 |
取り方:米国の計量(AMI)・配電の自動化・通信の市場を約 110 億ドル(推定)、シェア約 4.5% と置いた。売上は約 5 億ドル(推定。会社は開示せず)、営業利益率 20%(推定)。2026 年 1〜3 月期は −7%、4〜6 月期は小幅の伸びに戻る見込みで、通期は 4.9 億ドル(−2%)。
電気ソリューション(コア:建物・産業・データセンター向けの配線部材)
配線器具・電気の接続部品・電線管・ケーブル管理・危険場所向け設備・データセンター向けの電力と通信の接続・無線機器。
| 数量米国の電気部材の市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 3.1% | 22 | 4 |
| 10 年後 中立 | 875 | 4.5% | 39 | 8 |
取り方:米国の配線器具・接続部品・配線管理・危険場所向け設備・データセンター向け接続の市場を約 700 億ドル(推定)、シェア約 3.1% と置いた。2025 年売上 21.72 億ドル、GAAP 営業利益 4.19 億ドル(19.3%)。2026 年は 1〜3 月期 +11%・4〜6 月期 +18%(オーガニック)にベンテブの通年化を加え、通期 25.4 億ドル(+17%)、GAAP 営業利益率 18%(再構築費用と買収費用で一時的に下がる)。
NSI インダストリーズ(電気接続・配線管理・買収成立済み)
電気接続部品・配線管理のブリッジポート・フィッティングス、ポラリスなどを持つ会社。2026 年 6 月 9 日に約 30 億ドルの現金で取得済み。電気ソリューションに入る。
| 数量米国の電気接続・配線管理の市場(億ドル、2025 年価格) | 価格シェア × 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 2.1% | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 313 | 2.9% | 9 | 2 |
取り方:2026 年の売上 約 5.7 億ドル(買収発表時の報道。2025 年は約 5.2 億ドルと推定、ハベル未保有の見込み値)、対象市場を約 250 億ドル(推定)、シェア約 2.1% と置いた。買収額 30 億ドルは 2026 年の EBITDA の約 15.5 倍(報道)で EBITDA 約 1.9 億ドル(約 34%)。ここから減価償却と買収無形資産の償却(年 約 0.95 億ドル・推定)を引いた GAAP の営業利益 0.8 億ドル(15%)。2026 年の取り込みは 6 月 9 日からの約 7 か月(売上 約 3.1 億ドル)。
今後の買収(投じる現金とセット)
ハベルが毎年行ってきた小さな部材会社の買収。2027 年以降に投じる現金の累計と、買収先の売上・利益を 1 つの塊で置く。投じた現金は還元と純負債から差し引く。
| 数量2027 年以降に買収へ投じる現金の累計(億ドル) | 価格投じた現金 1 ドルあたりの年間売上(買収倍率の逆数。売上 ÷ 買収額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.27 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.27 | 14 | 2 |
取り方:2025 年末の時点では今後の買収はゼロ(成立済みは上の 4 つに入れてある)。売上 ÷ 買収額は DMC パワー(約 8.3 億ドルに売上 約 2 億ドル台)と NSI(0.19)の間の約 0.27 を基本に置く。買収先の営業利益は償却前 28% から、買収無形資産の償却(価格の約 4 割を 13 年)を引いた GAAP で置く。
リスクと懸念
送配電投資の山と在庫調整の反動
2026 年の受注には変圧器などの納期の長さを見越した前倒しの手配と、電力会社・流通業者の在庫の積み増しが含まれる。2023〜2024 年に在庫調整で公益向けの売上がほぼ横ばいになった前例があり、山のあとに同じことが起きれば、売上が 1〜2 年落ち、固定費の逆回転で利益率が 5 ポイント近く下がる。
NSI 買収の借金と統合
30 億ドルを借入で払い、純負債は 2025 年末の約 17 億ドルから 2026 年 6 月に約 49 億ドル(対総資本 52%)へ。借り換えは約 5.75% で、利息は 2025 年の約 0.6 億ドルから年 2 億ドル前後へ増え、償却(年 約 0.95 億ドル)と合わせ、買収の効果が GAAP 利益に出るまで 2〜3 年かかる。統合が遅れれば自社株買いの再開も遅れる。
電気料金の負担と規制当局の抑制
電力会社の設備投資の増加は料金に跳ね返り、規制当局が許可する投資額と料金の引き上げを抑える動きがある。公益向けは売上の約 6 割を占め、規制に認められた投資に左右されるので、料金への反発が強まれば投資計画の先送りが出る。
データセンター投資の一服
電気ソリューションのデータセンター向け(4〜6 月期に約 +65%)は AI 設備投資の継続が前提で、投資が止まれば真っ先に落ちる。大型の電気設備(配電盤・変圧器)は持たず棲み分けているが、接続部品は新設の工事の中断や遅れにそのまま直結する。
競合の増産と価格プレミアムの消失
変圧器・開閉装置・部材の供給が正常化し、マクリーン・パワー・システムズやプリフォームド・ライン・プロダクツ、輸入品が増産すれば、2026 年に通る値上げ(通期 3〜4 ポイント)が止まる。価格がコストの上昇を相殺するだけの状態(会社は価格とコストで約 1 ポイントの利益率の希薄化と説明)は続く。
グリッド・オートメーションの停滞
計量・通信(アクララなど)は 2026 年 1〜3 月期に −7% と更新サイクルの谷にあり、会社は 4〜6 月期の小幅な伸びを見込むが、遅れれば公益向けの伸びを下げる。技術の入れ替わりも早い(スマートメーターの通信方式)。
関税・部材費と為替
2026 年は関税が通期でほぼ中立と説明されるが、鋼材・銅・アルミ・電子部品の価格は物価以上に動く。転嫁が遅れる分は一時的に利益率を削り、会社が掲げる利益率の拡大の速さを落とす。買い手の交渉力が強い大型案件では、契約の価格を固定した後の部材高が利益を削る恐れもある。
今後の分かれ目
- 2026 年 10 月下旬の第 3 四半期で、公益向けの受注が売上の 1 倍を割り込み、受注残の伸びが止まる
- 山の信号。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。
- 流通業者・電力会社の在庫が 2027 年に積み上がり、売上が前年を下回る
- 2023〜2024 年の再来。10 年の悲観・やや悲観に寄せる(営業利益率 5 ポイント低下)。
- NSI の統合後の営業利益率が 2027 年に調整後 30% 台前半へ届き、費用シナジーの進みが計画どおり
- 電気ソリューションの利益率 21% 超の筋書き(楽観・やや楽観)の確率を上げる。
- ハベルが 10 億ドル超の大型買収をさらに発表する
- 純負債が再び EBITDA の 2.5 倍を超え、返済と自社株買いの再開が遅れる。やや悲観の確率を上げる。
- 765kV の超高圧送電の案件が本格的に動き、ハベルの製品が採用される
- グリッド・インフラのシェアが +6% 以上の筋書き(楽観)に寄せる。
- AI データセンターの新設が大手で見直され、電力の需要予想が下がる
- 電気ソリューションのデータセンター向けと送電・変電の大型案件が同時に落ちる。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 公益向けの受注と受注残(2026 年 4〜6 月期は売上の 1.2 倍)、大型案件(送電・変電)の見積もりと受注
- 電力会社の設備投資計画の改定(1.4 兆ドル以上)と規制当局の料金・投資の承認
- グリッド・オートメーションの売上(2026 年 1〜3 月期 −7%)と回復の時期
- 電気ソリューションのデータセンター向けの伸び(+40% → +65%)と利益率(調整後 21.2%)
- NSI の売上・利益率・シナジーの進みと、純負債(約 49 億ドル)の返済の進み・自社株買いの再開
- 価格とコストのバランス(価格 3〜4 ポイントがコストの上昇を上回るか)
- 流通業者・電力会社の在庫の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見る前に、数量 × 価格で積んだ利益から利益ベースの正当化 PER((1−g/RONIC)/(k−g)、RONIC=k+残る割合×(事業の ROE−k))で出した。10 年の中立は正当化 PER 19.7 倍(k 7.75%・g 4.0%・ROE 23%・moat=普通)の 8.5 割 = 16.8 倍。電力会社の送配電部材は規格採用で切り替えが難しく ROE も 23〜26% と高い。NSI 買収で借金が増えた点と住宅・建物の循環だけ引いた。上限の 8.5 割にとどめた。今の株価や過去の倍率に寄せて選んだ値ではなく、全筋書きが検査の上限(正当化 PER × 事業の純利益の 1.1 倍)の内側に収まっている。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.25% = 7.75%(β は使わない。決まり v2。内訳は quality_parts と quality_why)。売上の 6 割以上が景気の振れが小さい公益向けなので quality は小さく下げ、買収の借金で一部を戻した。個別のリスク(大型買収の統合・投資の山の反動・データセンターの一本足)は k に足さず、筋書きと確率で表した。長期の g は 4.0% まで、k − g ≥ 3.5% を守る。