結論
RTX は、航空機の電子・機械システムのコリンズ・エアロスペース、航空エンジンのプラット・アンド・ホイットニー(P&W)、ミサイル・防空・レーダーのレイセオンの 3 事業を持つ、世界最大級の航空宇宙・防衛会社である。2025 年は売上 886 億ドル、営業利益 89 億ドル(営業利益率 10.0%)、純利益 67 億ドル、FCF 79 億ドル。2026 年 4〜6 月期は売上が前年比 +14% の 247 億ドルに伸び、受注残は 2,890 億ドル(民間 1,700・防衛 1,190)と過去最高、通年の調整後売上見通しは 950〜960 億ドルへ引き上げられた。
この会社の特色は、民間航空の整備・部品(稼働機が増えるほど積み上がる)と、防衛の弾薬・ミサイル増産(受注と予算で数年先まで見える)という、性格の異なる 2 つの成長源を同時に持つ点にある。P&W の GTF エンジンの粉末金属問題による点検・費用は 2026 年もなお重いが、整備の出力は前年比 +43% まで上がり、利益率は回復の途上にある。レイセオンは 2026 年 2 月に 5 品目の弾薬で最長 7 年の増産枠組みを結び、AMRAAM は最大 207 億ドルの複数年契約が出た。
バリュー投資の観点では、事業の質と見通しの確かさは高い。問題は値段で、時価総額 2,630 億ドルは GAAP の純利益の 39 倍、調整後利益の約 27 倍、FCF 見通し(約 86 億ドル)の約 31 倍にあたり、FCF 利回りは 3.3% にとどまる。セグメントごとに市場 × シェア × 価格で積み上げると、10 年後の中立の純利益は今の約 2.8 倍に増えるが、倍率を利益ベースの正当化 PER(k 8.0%・g 4%・事業の ROE 約 18%・RONIC 約 13%・上限 17.3 倍)の 8.5 割、14.7 倍に置くと、10 年後の時価総額は今とほぼ同じ(2,729 億ドル)にとどまる。10 年待つ分と資本コスト 8.0% で割り引くと本質価値は今の値段を 3 割弱下回り(総合 −28%)、計算上はやや割高になる。ただしこの結論は k の置き方に依存し、k が 1 ポイント下がれば差は縮む。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もこの事業があるかを問う。ある。民間機は 20〜30 年飛び、エンジンと電子機器の整備権を握り続け、防衛の弾薬は各国が備蓄を増やす局面にある。堀は、GTF の問題で P&W の地位は落ちたが、全体としては広がる方向にある。
次にオーナー利益を見る。2025 年の GAAP の純利益 67 億ドルは、買収の償却(税引き後で約 17 億ドルと推定。現金の支出ではない)で押し下げられ、FCF は 79 億ドルと純利益を上回る。株式報酬は小さい。2026 年の FCF は約 86 億ドルで、時価総額に対し 3.3%。この利回りは米国債 5% を下回るが、成長と物価で増える利益が上乗せになる。成長のための再投資(設備・弾薬の増産)が要り、オーナー利益は FCF から投資の先行分を引いた水準に近い。
安全域:中立の筋書きでは、10 年後の時価総額と還元の合計は今の約 1.4 倍、年率にして 3% 台で、資本コスト 8.0% を下回る。楽観では 3.4 倍、悲観では 0.6 倍。事業の確信度は高いが、航空エンジンの耐久問題や固定価格の防衛契約のように、予測しにくい部分が残る。値段が事業の質を先取りしており、安全域は無い。
何で稼ぐ会社か
コリンズ・エアロスペース(2025 年売上約 300 億ドル・営業利益 49 億ドル)は、旅客機・軍用機の座席・内装・電源・飛行制御・アビオニクス・着陸装置・ブレーキを作る。機体メーカー向けの新造品は売上の約半分で、残りは稼働機向けの部品・修理で、保証の切れた機体が増えるほど利益率が上がる構造。会社は長期の利益率目標を 19〜20% に置く。
プラット・アンド・ホイットニー(同約 325 億ドル・利益率 7% 前後)は、エアバス A320neo 系の GTF(ギヤード・ターボファン)、ワイドボディ用 PW4000 系、軍用では F-35 の F135 と F119(F-22)を作る。エンジンは新品を薄い利益で売り、20〜30 年の部品・整備で稼ぐ。2023 年に発覚した粉末金属の汚染で GTF の数千基が点検対象となり、整備のために機体が地上に留まる(AOG)問題と補償費用で利益が削られてきた。2026 年 4〜6 月期は民間アフターマーケットが +25%、利益率が 8.3% まで戻った。
レイセオン(同約 280 億ドル・利益率 11〜12%)は、パトリオット用の PAC-3 とレーダー、SM-3・SM-6・AMRAAM・トマホーク・スティンガーなどのミサイル、宇宙の警戒センサー、サイバーを担う。顧客は米国防総省と同盟国の政府で、契約は数年単位。2026 年 4〜6 月期の受注/売上は 2.42 で、受注残は 860 億ドル。
売上の構成は、民間航空が 5 割強、防衛が 4 割強で、残りは両方にまたがる(受注残は民間 1,700・防衛 1,190 億ドル)。民間航空は景気と飛行時間で揺れるが、防衛は予算が決まれば読みやすく、互いの揺れを和らげる。
優良さと弱いところ
堀は広い。航空エンジンは規制認証と数十年の設計蓄積のため、世界で GE エアロスペース(GE Aerospace)、サフラン(CFM を GE と共同)、ロールス・ロイス、P&W の 4 陣営しかない。一度機種に採用されれば、20〜30 年の整備と部品を握る。防衛では、パトリオットの PAC-3 や SM-6 のように米国と同盟国の運用が長く、ミサイルの製造ラインと要員の認定そのものが参入障壁になる。コリンズはアビオニクス・電源・内装で機体 1 機あたりの搭載内容が大きく、機体を売った後の保守が続く。
弱い点も明確だ。第一に資本効率。ROE は 2025 年で 10.3%、2014 年(19.9%)には届かない。ユナイテッド・テクノロジーズとレイセオンの統合(2020 年)で自己資本が大きく積み上がり、買収に伴う無形資産の償却が GAAP の利益を削る。第二に P&W の品質。GTF の粉末金属問題は設計ではなく製造の管理の失敗で、GE の LEAP と比べた相対的な地位を落とした。第三に防衛の固定価格開発契約で、過去にレイセオンやボーイングが損失を出してきた。
経営は、2023 年の問題で約 30 億ドル規模の費用を見積もり、透明性の高い開示に転じた。2026 年は自社株買いを止めて債務を減らす姿勢で、資本配分は堅実。価格を決める力は、アフターマーケットで物価以上の値上げが通る点に表れる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
民間航空は、需要より供給が制約になる局面にある。世界の民間機受注残は約 18,100 機(稼働機の約 6 割)、ボーイングだけで 7,150 億ドル。エンジン・部品・整備士の不足が 2031〜34 年まで続くと見られ、古い機体が長く飛ぶため部品・整備の需要が強い。P&W の民間アフターが +25%、コリンズの民間アフターが +10% と、利益の質の高い所から先に伸びている。一方で、2026 年 2 月末に始まった中東の戦闘で燃料費が上がり、IATA の 2026 年の航空会社の純利益見通しは 410 億ドルから 230 億ドルへ下がった。航空会社の収益悪化が整備の先送りと退役の増加につながるかが分かれ目になる。
防衛は需要が構造的に増えている。米国の 2027 年度の国防費要求は総額 1.5 兆ドル(うち調整予算 3,500 億ドルは別の法案で、成立は未定)で、弾薬 12 品目の増産、ゴールデンドーム(ミサイル防衛)、造船が柱。欧州の NATO 加盟国も GDP 比 3.5〜5% へ向かい、パトリオットや SM 系の輸出が増える。主契約者はロッキード・マーチン、RTX、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミクス、ボーイングの寡占だが、アンドゥリル、パランティア、スペース X などの新興が、無人機・宇宙・ソフトの調達で取り分を広げようとしている。
競争の形:エンジンでは、新型の狭胴機エンジン(LEAP の次、GTF の改良、ロールス・ロイスの ULTRAFAN)をどこが取るかが 2040 年代の収益を決める。ミサイルでは、ロッキード・マーチンのパトリオット用 PAC-3 や、ノースロップ・グラマンの固体ロケットモーターが部分的に競合し、レイセオンはシーカー・レーダー・誘導で強い。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2026 年上半期の配当は 19 億ドル。2026 年 4〜6 月期の自社株買いはゼロで、会社は純負債 325 億ドル(時価総額の 12%、自己資本比率 38%)を縮めることを優先している。2023 年には GTF の費用が出た年に 129 億ドルの自社株買い(加速型)を行い、その後は買い戻しを絞った。FCF は 2025 年 79 億ドルから 2026 年は 85〜87.5 億ドルへ増える見通し。
M&A は縮小の方向で、ブルーキャニオン(レイセオンの小型衛星)を 6.2 億ドルで売り、2025 年にもコリンズなどの事業売却を進めた。大型の買収は、統合の複雑さと独占禁止当局の目から見て現実的ではなく、買われる側になることも時価総額 2,630 億ドルでは考えにくい。弾薬の増産は投資が先に出るが、政府との枠組み合意は初期の FCF を守る構造になっている。
2021 年と 2023 年の説明会で掲げた 2025 年の FCF 90 億ドルの目標は 79 億ドルで届かなかった。バリュー投資の観点では、割高な局面で買い戻しを再開しないことと、約束した FCF の達成が評価の分かれ目になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残 2,890 億ドルは売上の 3 年分を超え、しかも増え続けている(前年比 +22%)。民間では、世界の受注残が約 18,100 機と多く、エンジンと部品の供給不足が 2030 年代前半まで続くため、整備単価の物価以上の値上げが通る。P&W の民間アフターは +25%、GTF の整備出力は +43% と立て直しが進み、GTF の費用が山を越えれば、利益率は 8% 台から 12〜13% へ上がる余地がある。コリンズは保証切れの機体が増えるほど利益率が上がり、会社の 19〜20% の目標に届く。
防衛では、2026 年 2 月の 5 品目の増産合意(トマホーク 1,000 発超・AMRAAM 1,900 発以上・SM-6 500 発超の年産)が 7 年の見通しを作り、AMRAAM は最大 207 億ドルの契約が出た。ミサイルは製造ラインを増やすほど単価が下がり、利益率も上がる(レイセオンは 12.6% で、10 年で 14〜15% が見える)。欧州の防衛費が GDP 比 3.5〜5% へ向かい、ゴールデンドームが主契約者に出れば、さらに上振れる。
10 年後の純利益は 3〜4 倍、FCF は 100 億ドルを超え、債務の圧縮の後は自社株買いが再開される。倍率は成長が残る限り上限近くの 18 倍前後が付いてよい。
慎重な見方
株価は成長・利益率・倍率のすべてが続くことを前提にしている。GAAP の PER は 39 倍、ROE は 10% で、同じ航空エンジンでも GE(ROE が 50% 超)のような資本の軽さはない。2021 年と 2023 年の説明会で約束した 2025 年の FCF 90 億ドルは 79 億ドルにとどまり、過去の目標は外してきた。
P&W の GTF は、粉末金属の問題の次に、高温部の耐久や GTF Advantage への切り替えの遅れが続けば、補償費用が膨らみ、エアバスの機体が地上で待つ期間が長引く。2026 年 4〜6 月期でも民間新品は前年比 -8% と減っており、新型の狭胴機エンジンの競争(LEAP の次世代・ロールス・ロイスの ULTRAFAN)でシェアを落とせば、30 年の部品収益が細る。
防衛では、固定価格の開発契約で過去に損失が出てきた。弾薬の増産は、工場の拡張と部品の確保(ロケットモーター・シーカー)に先行投資が要り、増産合意が実際の契約になる前に予算が凍結される危険がある。2027 年度の調整予算 3,500 億ドルは別の法案で、成立するか分からない。アンドゥリルやスペース X が無人機・宇宙で主契約者の取り分を削る可能性もある。
景気後退では、民間の飛行時間と納入が同時に落ち、RTX の株価はリーマンで山から谷まで -48% 下げた。
どちらに重みを置いたか
事業の質と受注の見通しは強気の見方が強く、確率は楽観側にやや寄せた(楽観とやや楽観で 36%)。ただし、値段は慎重な見方が強い。倍率は k 8.0% の利益ベースの式で、10 年の中立は上限 17.3 倍の 8.5 割の 14.7 倍に置いた。悲観は 10%(GTF の構造的な失敗・固定価格の損失・景気後退の重なり)。結論は「優れた事業だが、利益ベースの倍率で測ると今の値段は高い」。k が下がれば倍率は上がるので、前提への依存がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 204.26 ドル2,771 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 66.57 ドル903 億ドル)。 今の値に割り戻すと 139.92 ドル1,898 億ドル、今との差 −28.1%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 346.95 ドル4,706 億ドル | 95.84 ドル1,300 億ドル | +127.4% | +8.6% | 53.13 ドル721 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 257.98 ドル3,499 億ドル | 77.41 ドル1,050 億ドル | +72.2% | +5.6% | 80.49 ドル1,092 億ドル |
| 中立 | 34% | 201.16 ドル2,729 億ドル | 66.35 ドル900 億ドル | +37.4% | +3.2% | 90.96 ドル1,234 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 134.19 ドル1,820 億ドル | 53.08 ドル720 億ドル | −3.8% | −0.4% | 37.46 ドル508 億ドル |
| 悲観 | 10% | 54.75 ドル743 億ドル | 33.18 ドル450 億ドル | −54.8% | −7.6% | 8.79 ドル119 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 204.26 ドル2,771 億ドル | 66.57 ドル903 億ドル | +39.1% | +3.4% | 270.83 ドル3,674 億ドル |
今の株価時価総額 194.71 ドル2,641 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:整備と弾薬の両方が積み上がり、純利益が 4 倍に 利益 260 億ドル · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 346.95 ドル4,706 億ドル
2035 年、航空エンジン市場は実質で年 +5%、P&W は GTF Advantage の採用と整備でシェア 19%、利益率 17% に達する。コリンズは年 +3.8% の市場でシェア 15.2%、利益率は目標を超えて 20.5%。レイセオンは防衛の弾薬・防空が年 +4.5% で増え、シェアは 15.5%、利益率 14.5%。価格は物価並み(10 年 1.41 倍)。売上は 2,086 億ドル、営業利益は 329 億ドル、純利益 260 億ドル(金利の変化で 6 億ドル減)。債務を返し終え、自社株買いも続く。競合と照らすと、GE が整備で利益率 25% 台を保つのに対し、P&W は 17% が上限で、コリンズの 20% 超が全体を押し上げる。
- コリンズ・エアロスペース:数量 2,904(航空機の電子・機械システム(新品+アフターマーケット)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 21.4%(コリンズのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 622 億ドル・営業利益 128 億ドル。市場 2,904 億ドル × シェア 15.2% × 価格 1.41 倍
- プラット・アンド・ホイットニー:数量 2,932(航空エンジン(民間+軍用、新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 26.8%(P&W のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 785 億ドル・営業利益 133 億ドル。市場 2,932 億ドル × シェア 19.0% × 価格 1.41 倍
- レイセオン:数量 3,106(防空・ミサイル・センサーの世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 21.9%(レイセオンのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 679 億ドル・営業利益 98 億ドル。市場 3,106 億ドル × シェア 15.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 25.6%(この筋書きの純利益 260.0 ÷ 自己資本 1015 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 16.8%(堀は普通:エンジンと電子機器の整備権は強いが、GTF の問題と新型エンジンの競争があり、残る割合は 1/2)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の稼働と防衛予算の数量(実質年 2%)+ 整備・部品価格の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=19.1 倍に対し、95% の 18.1 倍に置いた(GTF の費用が山を越え弾薬の増産が前倒しで進む筋書きだが、上限の 9.5 割)。時価総額=純利益 260.0 億ドル × 18.1 倍=4706 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:稼働する GTF と軍用エンジンの整備が 2030 年代に厚くなり、弾薬の増産が 7 年以上の長期契約で続き、ゴールデンドームも主契約者に出る展開。大型の事業で 10 年これが続く確率は 1 割強。
やや楽観 24% やや楽観:コリンズの利益率が目標に届き、P&W が 15% 前後へ 利益 216 億ドル · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 257.98 ドル3,499 億ドル
2035 年、航空エンジン市場は実質で年 +4.5%、P&W のシェアは 18%、利益率 15%。コリンズは利益率 19.5%(会社目標の上端に近い)。レイセオンはシェア 14.5%、利益率 13.8%。売上は 1,886 億ドル、営業利益は 274 億ドル、純利益 216 億ドル。競合と照らすと、P&W は GE・CFM に次ぐ位置を守りつつ、GTF の稼働機の整備と F135 の長期の整備で利益を積む。コリンズはハネウェル エアロスペースとサフランに対し、電源・アクチュエーションで優位を保つ。防衛では、レイセオンがロッキード・マーチンと並ぶミサイルの主力として、欧州への輸出を伸ばす。
- コリンズ・エアロスペース:数量 2,794(航空機の電子・機械システム(新品+アフターマーケット)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 20.9%(コリンズのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 583 億ドル・営業利益 114 億ドル。市場 2,794 億ドル × シェア 14.8% × 価格 1.41 倍
- プラット・アンド・ホイットニー:数量 2,795(航空エンジン(民間+軍用、新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 25.4%(P&W のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 709 億ドル・営業利益 106 億ドル。市場 2,795 億ドル × シェア 18.0% × 価格 1.41 倍
- レイセオン:数量 2,904(防空・ミサイル・センサーの世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 20.4%(レイセオンのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 594 億ドル・営業利益 82 億ドル。市場 2,904 億ドル × シェア 14.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 20.6%(この筋書きの純利益 216.0 ÷ 自己資本 1050 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 14.3%(堀は普通:エンジンと電子機器の整備権は強いが、GTF の問題と新型エンジンの競争があり、残る割合は 1/2)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の稼働と防衛予算の数量(実質年 2%)+ 整備・部品価格の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=18.0 倍に対し、90% の 16.2 倍に置いた(民間アフターが強く GTF の利益率が戻る筋書き)。時価総額=純利益 216.0 億ドル × 16.2 倍=3499 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:整備の供給制約が長く続き、防衛の予算が実質で増える筋書き。強気の見方の根拠(受注残・値上げの力)が強いため、やや厚く置いた。
中立 34% 中立:売上は年 7%、P&W の利益率は 13.5% で、成熟した優良企業になる 利益 186 億ドル · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 201.16 ドル2,729 億ドル
2035 年、航空エンジン市場は実質で年 +4%、P&W のシェアは 17.5%、利益率は整備の比率が上がって 13.5%。コリンズは市場が実質で年 +3%、シェア 14.5%、利益率 18.5%。レイセオンはシェア 14%、利益率 13%。価格は物価並み(10 年 1.41 倍)。売上は 1,737 億ドル(年 +7%)、営業利益は 235 億ドル、純利益 186 億ドル(今の約 2.8 倍。借り換えで利払いが 6 億ドル増える)。競合と照らすと、GE が整備の稼ぎで利益率 25% 台を維持するのに対し、P&W は新品の薄い利益と GTF の整備の遅れで 13.5% にとどまる。コリンズは電源・内装で特定の品目に偏らず、19〜20% の目標のやや下で落ち着く。レイセオンはロッキード・マーチン(利益率 11〜13%)と同水準。ここまでうまくいけば、オーナー利益は今の 2.5 倍前後になる。
- コリンズ・エアロスペース:数量 2,688(航空機の電子・機械システム(新品+アフターマーケット)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 20.4%(コリンズのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 549 億ドル・営業利益 102 億ドル。市場 2,688 億ドル × シェア 14.5% × 価格 1.41 倍
- プラット・アンド・ホイットニー:数量 2,664(航空エンジン(民間+軍用、新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 24.7%(P&W のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 657 億ドル・営業利益 89 億ドル。市場 2,664 億ドル × シェア 17.5% × 価格 1.41 倍
- レイセオン:数量 2,688(防空・ミサイル・センサーの世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.7%(レイセオンのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 531 億ドル・営業利益 69 億ドル。市場 2,688 億ドル × シェア 14.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 17.9%(この筋書きの純利益 186.0 ÷ 自己資本 1042 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 12.9%(堀は普通:エンジンと電子機器の整備権は強いが、GTF の問題と新型エンジンの競争があり、残る割合は 1/2)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の稼働と防衛予算の数量(実質年 2%)+ 整備・部品価格の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=17.3 倍に対し、85% の 14.7 倍に置いた(民間アフターと防衛の両輪で受注残 2,890 億ドルの質は高いが、GTF の整備費用が尾を引く分、上限すれすれには置かない)。時価総額=純利益 186.0 億ドル × 14.7 倍=2729 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界の中立(民間納入 年 +4.5%・整備単価 年 +4.5%、防衛予算 年 +5%)に沿う。GTF の問題が収束して P&W の利益率が戻り、弾薬の増産が実契約で続く。強気と慎重の見方の落としどころ。
やや悲観 20% やや悲観:シェアを一部失い、利益率が 11〜12% にとどまる 利益 144 億ドル · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 134.19 ドル1,820 億ドル
2035 年、P&W は新型の狭胴機エンジンの競争で劣勢で、シェア 16.5%、利益率 11%。コリンズは単価競争で 17%。レイセオンはアンドゥリルなどにシェアを一部取られ 13.5%、利益率 11.5%。市場の伸びは物価並みに近い。売上は 1,566 億ドル、営業利益は 183 億ドル、純利益 144 億ドル。競合と照らすと、LEAP の次の世代で GE とサフランが先に主導権を取り、P&W は GTF の改良型で追う形になる。ロールス・ロイスの ULTRAFAN も小型化して狭胴機に入り込む。防衛では、ロッキード・マーチンがパトリオットの PAC-3 で、アンドゥリルが低価格の無人機・巡航ミサイルでそれぞれ取り分を伸ばす。競合に負ければ純利益は今の 2 倍強にとどまる。
- コリンズ・エアロスペース:数量 2,560(航空機の電子・機械システム(新品+アフターマーケット)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.7%(コリンズのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 505 億ドル・営業利益 86 億ドル。市場 2,560 億ドル × シェア 14.0% × 価格 1.41 倍
- プラット・アンド・ホイットニー:数量 2,466(航空エンジン(民間+軍用、新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 23.3%(P&W のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 574 億ドル・営業利益 63 億ドル。市場 2,466 億ドル × シェア 16.5% × 価格 1.41 倍
- レイセオン:数量 2,560(防空・ミサイル・センサーの世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.0%(レイセオンのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 487 億ドル・営業利益 56 億ドル。市場 2,560 億ドル × シェア 13.5% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 14.7%(この筋書きの純利益 144.0 ÷ 自己資本 977 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 11.4%(堀は普通:エンジンと電子機器の整備権は強いが、GTF の問題と新型エンジンの競争があり、残る割合は 1/2)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の稼働と防衛予算の数量(実質年 2%)+ 整備・部品価格の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=16.2 倍に対し、78% の 12.6 倍に置いた(GTF の費用が長引き民間の景気が鈍る筋書き)。時価総額=純利益 144.0 億ドル × 12.6 倍=1820 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:新型エンジンの競争で苦戦し、防衛でも新興に取り分を削られる。PER 39 倍が示す期待が外れる方向の筋書きで、2 割と厚めに置いた。
悲観 10% 悲観:GTF の構造的な失敗と防衛の固定価格の損失で、優良ではなくなる 利益 78 億ドル · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 54.75 ドル743 億ドル
2035 年、GTF の問題が構造的に長引き、新型の狭胴機のエンジンを取れない。P&W のシェアは 14%、利益率は 6%。航空会社は整備契約を競争入札に切り替え、アフターの値上げも物価に届かない。レイセオンは固定価格の開発で損失を出し、新興にも取られ、シェア 12%・利益率 9%。コリンズも 14% に落ちる。売上は 1,251 億ドル、営業利益は 103 億ドル、純利益 78 億ドル(今の 1.2 倍)。競合と照らすと、GE の LEAP の整備が稼ぐ一方で、P&W は補償と値引きで赤字に近い新品を抱え、整備の取り込みも競争入札で奪われる。防衛でも、ロッキード・マーチンやノースロップ・グラマンが主契約者の座を守り、新興が低価格で入る。ここまで負ければ RTX は特別な優良企業ではなく、景気に揺れる普通の防衛・航空部品会社になる。
- コリンズ・エアロスペース:数量 2,321(航空機の電子・機械システム(新品+アフターマーケット)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 18.3%(コリンズのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 425 億ドル・営業利益 60 億ドル。市場 2,321 億ドル × シェア 13.0% × 価格 1.41 倍
- プラット・アンド・ホイットニー:数量 2,194(航空エンジン(民間+軍用、新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 19.7%(P&W のシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 433 億ドル・営業利益 26 億ドル。市場 2,194 億ドル × シェア 14.0% × 価格 1.41 倍
- レイセオン:数量 2,321(防空・ミサイル・センサーの世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質))× 価格 16.9%(レイセオンのシェア × 価格指数(2025 年 = 1))→ 売上 393 億ドル・営業利益 35 億ドル。市場 2,321 億ドル × シェア 12.0% × 価格 1.41 倍
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 9.5%(この筋書きの純利益 78.0 ÷ 自己資本 818 億ドル。帳簿の値)は先で薄れ、RONIC=k 8.0%(基本 8.0% + quality +0.0%)+ 残る割合 0.50 ×(ROE − k)= 8.8%(堀は普通:エンジンと電子機器の整備権は強いが、GTF の問題と新型エンジンの競争があり、残る割合は 1/2)。g は 4.0%(g は 4.0%(上限)。内訳の目安=民間航空の稼働と防衛予算の数量(実質年 2%)+ 整備・部品価格の物価 3.5%。倍率の g は上限の 4% で止める)。正当化 PER=(1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)=13.6 倍に対し、70% の 9.5 倍に置いた(GTF の構造的な失敗と防衛の固定価格の損失で優良ではなくなる筋書き。2035 年の利益率が 8% 台に落ちるので、純利益 78 億ドル÷ k の稼ぐ力 975 億ドル(12.5 倍)より低い 9.5 倍に置いた)。時価総額=純利益 78.0 億ドル × 9.5 倍=743 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:GTF の耐久問題の再発と、新型機のエンジンの競争での敗北、固定価格の開発契約の損失、景気後退が重なる展開。確率は 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コリンズ・エアロスペース
航空機の電子・電源・飛行制御・内装・着陸装置と、その整備・部品(民間 7 割・防衛 3 割程度)。保証切れの稼働機が増えるほど利益率が上がる。
| 数量航空機の電子・機械システム(新品+アフターマーケット)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格コリンズのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,000 | 14.8% | 296 | 48 |
| 10 年後 中立 | 2,688 | 20.4% | 549 | 102 |
取り方:機体の電子・電源・飛行制御・内装・着陸装置・ブレーキの世界市場(新造と整備・部品、民間と防衛)を約 2,000 億ドルと推定し(調整後の売上 302 億ドルから逆算)、シェア約 15% と置いた。売上 = 市場 × シェア × 価格(価格指数は中立で 3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)。営業利益はセグメント 49 億ドルを消去・共通費で 1 億ドル調整した 48 億ドル(利益率 16.2%)。競合はハネウェル エアロスペース、サフラン、ロッキード・マーチンなどの部分的な競合で、座席・内装・電源など品目ごとに分かれる。
プラット・アンド・ホイットニー
民間エンジン(GTF・PW4000 系)と軍用エンジン(F135・F119)、および整備・部品。利益の大半は稼働中のエンジンの整備。
| 数量航空エンジン(民間+軍用、新品+整備)の世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格P&W のシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,800 | 17.8% | 320 | 23 |
| 10 年後 中立 | 2,664 | 24.7% | 657 | 89 |
取り方:業界ノートと GE の置き方に合わせ、民間エンジン(新品+整備)約 1,000 億ドルと軍用エンジン・推進装置約 800 億ドルの合計 1,800 億ドルを市場とし、P&W のシェアを約 17.8% と置いた(GE エアロスペースは同じ市場で約 25%、CFM のサフラン分は別)。2025 年の売上は約 325 億ドル(推定)から消去を引いた 320 億ドル、営業利益率は GTF の費用で約 7%。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合は GE・CFM、ロールス・ロイスの 3 陣営の寡占で、軍用は F135 で F-35 を独占し、F119・F100 も持つが、GE の F414 や T700 のように機種の幅が広い会社とは違う。
レイセオン
ミサイル(SM-3・SM-6・AMRAAM・トマホーク・スティンガー)、パトリオットの防空、レーダー、宇宙・サイバー。顧客は米国防総省と同盟国。
| 数量防空・ミサイル・センサーの世界市場(億ドル。2025 年の価格に換算した実質) | 価格レイセオンのシェア × 価格指数(2025 年 = 1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,000 | 13.5% | 270 | 31 |
| 10 年後 中立 | 2,688 | 19.7% | 531 | 69 |
取り方:米国と同盟国の防空・ミサイル・レーダー・宇宙センサーの調達と整備を合わせた約 2,000 億ドル(推定)に、シェア約 13.5% を置いた。2025 年の売上は約 280 億ドル(推定)から消去を引いた 270 億ドル、利益率は約 11.5%(2026 年 4〜6 月期は 12.6%)。売上 = 市場 × シェア × 価格。競合:ミサイルではロッキード・マーチン(PAC-3・JASSM・GMLRS)、ノースロップ・グラマン(固体ロケットモーター・IBCS)、ボーイング(JDAM・SDB)、ゼネラル・ダイナミクス(弾薬)、新興のアンドゥリル。防空レーダーではロッキード・マーチンと L3ハリスが競う。
リスクと懸念
GTF の点検・補償費用
粉末金属の汚染による GTF の数千基の点検は 2026 年も続き、機体が整備で地上に留まる(AOG)。整備の出力は +43% まで上がったが、補償費用が想定を超えるか、GTF Advantage への切り替えが遅れると、P&W の利益率の回復が遅れ、エアバスとの関係も悪化する。
固定価格の防衛契約と先行投資
弾薬の増産合意(5 品目・最長 7 年)は工場の拡張と部品の確保に先行投資を要する。固定価格の開発契約では、過去に損失が出てきた。ロケットモーターやシーカーの供給が詰まれば、増産が遅れて利益率が 12% 台から上がらなくなる。
防衛予算の遅れ
2027 年度の要求 1.5 兆ドルのうち調整予算 3,500 億ドルは別の法案で、成立は未定。つなぎ予算になると、新規の調達や増産の契約が先送りされ、RTX の防衛の売上の伸びが数量より時期のずれとして遅れる。
航空需要の循環と燃料高
2026 年の中東の戦闘で燃料費が上がり、IATA の航空会社の純利益見通しは 410 億ドルから 230 億ドルへ下がった。景気後退が重なれば飛行時間と納入が同時に落ち、RTX の株価はリーマンで山から谷まで -48%、コロナで -37% 下げた。
新型エンジンの競争
LEAP の次世代、ロールス・ロイスの ULTRAFAN、GTF の改良のうちどれが次の狭胴機に載るかが、2040 年代の部品・整備収益を決める。P&W が採用で負ければ、GTF の稼働機の整備は残るが、その先の成長が細る。
新興勢の台頭
アンドゥリル、パランティア、スペース X が無人機・宇宙・指揮統制のソフトで調達を取り、主契約者の取り分が削られる可能性がある。ゴールデンドームが宇宙新興と分割されれば、レイセオンの上振れが小さくなる。
高い期待と過去の目標未達
GAAP の PER は 39 倍で、FCF 利回りは 3.3%。2021 年と 2023 年に掲げた 2025 年の FCF 90 億ドルは 79 億ドルにとどまった。2026 年の FCF 85〜87.5 億ドルの達成と、その後の増加が続かなければ、倍率が縮む。
今後の分かれ目
- P&W の GTF の民間アフターが 2 桁の伸びを続け、GTF の整備日数が縮み続けたら
- P&W の利益率が 12% 台へ戻る道が見え、中立の利益を 5〜8% 上げて見る。
- GTF Advantage の耐久に問題が出る、または追加の補償費用が数十億ドル出たら
- P&W の利益率の回復が遅れ、やや悲観・悲観の確率を上げる。倍率も 2〜3 倍下げて見る。
- 弾薬の増産合意が実契約に移り、AMRAAM のような複数年契約が SM-6・トマホークでも続いたら
- レイセオンの利益率が 13〜14% へ上がる可能性が高まり、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 2027 年度の調整予算 3,500 億ドルが成立せず、つなぎ予算が長引いたら
- 防衛の売上の伸びが 1〜2 年遅れる。受注残が厚いため、悲観の深さは限られる。
- 航空会社の収益悪化で整備の先送りと機体の退役が増えたら
- 民間アフターの伸びが鈍り、P&W とコリンズの利益が 1〜2 年遅れる。中立の確率を悲観側へ動かす。
- 株価が下がり、調整後利益の 15 倍前後になったら
- FCF 利回りが 6〜7% になり、安全域が出る。債務が減っていれば自社株買いの再開の効果も大きく、評価が上がる。
見ておくもの
- P&W の民間アフターの伸び率・GTF の整備出力・AOG の機数・GTF の費用の残り
- 民間新品エンジンの納入数(GTF・F135)と、A320neo の機体の生産との整合
- レイセオンの受注/売上・利益率(12.6% から 13% 以上へ)・弾薬 5 品目の年産の実績
- 調整予算 3,500 億ドルの成立と、ゴールデンドームの契約の割り方
- FCF(2026 年 85〜87.5 億ドル)と純負債の推移、自社株買いの再開の時期
- IATA の見通しと世界の出発数、燃料価格
- コリンズの利益率(目標 19〜20%)と民間アフターの伸び
倍率と資本コストの決め方
今の PER 39 倍を見る前に、セグメントごとに市場(実質)× シェア × 物価指数で売上を積み、利益率を置いて純利益を出した。倍率は利益ベースの正当化 PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 8.0%=基本 8.0% + quality 0%、g 4%、RONIC=k+1/2×(事業の ROE−k)、moat 普通)の 7〜9.5 割(10 年の中立は上限 17.3 倍の 8.5 割で 14.7 倍)に置いた。P&W の GTF の整備費用が尾を引くので上限すれすれにはしていない。純利益は GAAP(償却を戻さない)で、倍率でも足し戻さない。純負債は 1 ドルで引いた。今の 39 倍や過去の PER には寄せていない。結果は今の値段を 3 割弱下回る。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 0.60 × 5%。k=基本 8.0% + quality 0% = 8.0%。民間の循環の上乗せ +0.25% を、整備・部品の値決めの力 −0.25% で打ち消した。GTF の費用・固定価格契約・予算の遅れ・新型エンジンの競争は k に足さず、筋書きと確率(やや悲観・悲観 30%)で表した。